カテゴリー: FIA(国際自動車連盟)

  • F1モナコGPでアクティブエアロ禁止 FIAが“ストレートモードなし”を決定

    F1モナコGPでアクティブエアロ禁止 FIAが“ストレートモードなし”を決定

    2026年F1モナコGPでは、今季から導入されたアクティブエアロの「ストレートモード」が使用されないことが明らかになった。

    FIA(国際自動車連盟)はモナコ市街地コースにストレートモードゾーンを設定せず、安全性を優先する判断を下した。これにより、2026年シーズンで初めてストレートモードが全面的に使用されないグランプリとなる。

    アクティブエアロとは何か
    2026年の新レギュレーションでは、従来のDRS(ドラッグ・リダクション・システム)に代わり、可動式のフロントウイングとリアウイングを活用するアクティブエアロが導入された。

    ドライバーは指定された「ストレートモードゾーン」に入ることでウイング形状を変化させ、空気抵抗を減らして最高速度を向上させることができる。

    ただし、FIAは各サーキットごとに安全性やコース特性を評価した上でゾーンを設定している。

    モナコで禁止された理由
    モナコGPでは、スタート・フィニッシュストレートを含め、ストレートモードゾーンは一切設置されない。

    FIAはコース内の加速区間やブレーキング区間において、ストレートモード作動時にマシンの安定性へ悪影響を及ぼす可能性があると判断した。

    また、FIAの基準ではストレートモードの作動区間は最低3秒間継続する必要があるが、モナコにはその条件を満たす区間が存在しないとみられている。

    特に市街地コース特有の狭さやガードレールとの距離を考慮し、安全性が最優先された格好だ。

    モナコグランプリ

    オーバーテイクモードは使用可能
    一方で、2026年マシンに搭載されている「オーバーテイクモード」はモナコでも使用可能となる。

    作動ポイントは最終コーナー付近に設定されており、ドライバーは追加の電力を利用して前車への攻撃を試みることができる。

    ただし、アウディのガブリエル・ボルトレトは、モナコではエネルギー回生量が多くバッテリー不足に陥りにくいことから、大きな効果は期待しづらいとの見方を示している。

    「正直に言えば、モナコでオーバーテイクするのは難しいと思う。モナコでは回生が非常に多いから、エネルギー不足に悩まされることはほとんどない」

    「ストレートモードも使えないと理解しているので、ウイングの効果もなくなる」

    「昨年より少しでもレースが面白くなればいいと思うが、今のF1マシンは依然として大きく、オーバーテイクは簡単ではない。過去と大きく変わるとは思わないが、間違っていることを願っている」

    2025年導入の2ストップ義務も廃止
    なお、昨年のモナコGPで導入された義務的な2ストップルールは、ドライバーから賛否両論の評価が寄せられたことを受けて2026年は廃止された。

    そのため今年のモナコGPは、ストレートモードなし、2ストップ義務なしという形で開催されることになる。

    アクティブエアロという2026年最大の技術革新のひとつが封印されることで、モナコは他のグランプリとは異なる特殊なレースウイークとなりそうだ。

  • FIAが11人の現役ドライバーをアンバサダー任命 AI運転評価企画を推進

    FIAが11人の現役ドライバーをアンバサダー任命 AI運転評価企画を推進

    FIA(国際自動車連盟)は、2026年の「FIAスマート・ドライビング・チャレンジ」に参加する11名のプロレーシングドライバーをアンバサダーとして発表した。

    この取り組みは、安全で持続可能な運転を促進するグローバル企画で、日常的にクルマを運転する一般ドライバーがアプリを通じて参加し、運転の安全性や環境性能を競う。

    モータースポーツ界の11名が一般ドライバーを支援
    今回アンバサダーに任命されたのは、FIA世界選手権を含む幅広いカテゴリーで活躍する11名のドライバーだ。

    WECからはイーフェイ・イェ、マルテ・ヤコブセン、フォーミュラEからはエドアルド・モルタラが参加。WRC勢ではヨアン・ロッセル、テイラー・ギル、ロメット・ユルゲンソン、さらにワールド・ラリーレイド選手権からアリーヤ・コロツが名を連ねた。

    このほか、レーシングドライバー兼コンテンツクリエイターのハナ・バートン、DTMおよびGTで活躍するケルビン・ファン・デル・リンデ、ラリーのカイェタン・カイェタノビッチ、INDY NXTのティメック・クハルチクも加わっている。

    アンバサダーは、FIAスマート・ドライビング・チャレンジのアプリ内で一般ドライバーのチームを率い、参加者に向けて限定コンテンツや助言、専門的な知見を提供する。参加者はアプリやSNSを通じて、自身が選んだアンバサダーから運転データの分析や改善のヒントを受け取ることができる。

    AI技術で安全性と環境性能を評価
    8年目を迎えるこのチャレンジでは、グレーター・ザンの人工知能技術を活用し、スマートフォンと車両を接続して運転パフォーマンスを測定する。

    参加者はアプリをダウンロードし、Bluetoothで車両と接続するだけで、安全性と持続可能性に関するリアルタイムのフィードバックを受け取れる仕組みだ。

    FIAの自動車モビリティ・持続可能性・観光担当事務総長であるウィレム・グルーネワルドは、この取り組みについて次のように述べた。

    「FIAスマート・ドライビング・チャレンジは、日常的に運転する人々とモータースポーツ界のトップレベルの人物を結びつけ、世界中でより安全で持続可能なモビリティの実現を支援するという点で独自のものだ」

    「最新のAI技術とエリートドライバーの専門知識を組み合わせることで、このチャレンジは、運転中の小さな変化を道路上の大きな違いへと変える力を個人に与えている」

    97か国が参加した前年大会ではCO2削減効果も
    昨シーズンは97か国のドライバーが参加し、平均でバッテリー使用量またはCO2排出量を9%削減した。優勝者は約30%の削減を達成している。

    また、参加者は一般的なドライバーと比較して、リスクレベルが37.5%低いことも示された。

    2026年のチャレンジは12月まで実施され、7つのヒートを経て上位20名がプレーオフに進出する。最終的に2名のファイナリストがライブ形式の直接対決に臨み、「世界で最もスマートなドライバー」の称号を争う。

  • カルロス・サインツJr. 2027年F1規則でFIAに要求「反対勢力に屈するな」

    カルロス・サインツJr. 2027年F1規則でFIAに要求「反対勢力に屈するな」

    カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ)は、2027年F1パワーユニット規則を巡る議論について、FIAに対して強いリーダーシップを発揮するよう求めた。

    現在、FIAとFOM(フォーミュラワン・マネジメント)は、2026年から導入された新世代パワーユニットの電動依存を緩和するため、2027年から内燃エンジンと電力の出力配分を現行の50対50から60対40へ変更する案を協議している。

    しかし、アウディとフェラーリが反対姿勢を示しており、実現には高いハードルが残されている。

    サインツ「FIAは強い姿勢を示すべき」
    サインツは、FIAが競技の利益を最優先に考え、必要であれば反対意見を押し切るべきだと主張した。

    「チームが投票権を持つ委員会があるけれど、僕がFIAとFOMに言いたかったのは、計画を押し進めて、その方針を貫いてほしいということだ」

    「もし彼らが『こうあるべきだ』と言えば、不満を持つチームや完全には同調していないチームも、それに従う以外に選択肢はなくなると思う」

    「もちろん全員の合意は必要だ。でも、それがスポーツやレース、そしてショーのためになるなら、統治する側が非常に強いアプローチと明確な立場を取るべきだと僕は思っている」

    2027年変更案を支持する理由
    サインツは、提案されている変更が現在のレギュレーションの弱点を改善できると考えている。

    「提案されている内容には、このエンジンやレギュレーションを改善する余地があると思う」

    「今年のうちにできることは多くないと思うし、僕自身はもう不満を言うのをやめようと決めた。なぜなら、今年の状況が理想的ではないことは明らかだし、それが大きく変わることもないからだ」

    「でも来年については非常に期待している。どれだけ変わるのか楽しみだ」

    アウディとフェラーリが反対する構図
    今回の議論は、2027年以降のF1の方向性を左右する重要な政治問題となっている。

    現在の情報では、ホンダ、メルセデスHPP、レッドブル・パワートレインズは60対40案を支持する方向とみられている一方、アウディとフェラーリは反対している。

    パワーユニット諮問委員会で規則変更を成立させるには、5メーカー中4社に加え、FIAとFOMの賛成が必要な「スーパー・マジョリティ」が求められる。そのため、アウディとフェラーリが反対を維持する限り、現行ルールでは可決は困難な状況だ。

    サインツの発言は、こうした膠着状態に対する苛立ちを示すものでもある。2026年レギュレーションでは電力依存の大きさが以前から課題視されており、2027年の修正案はフェルスタッペンの将来や各メーカーの開発戦略にも影響を及ぼすテーマとして注目を集めている。

  • FIA会長 ビン・スライエムが“任期制限撤廃”提案 長期政権化へ波紋

    FIA会長 ビン・スライエムが“任期制限撤廃”提案 長期政権化へ波紋

    モハメド・ビン・スライエムが、FIA(国際自動車連盟)会長職の任期制限撤廃を提案していることが明らかになった。BBCが報じている。

    現在のFIA規約では会長任期は4年で、再選は2回まで。最大12年間までしか在任できない。しかし、来月のFIA総会で審議・採決予定の新提案では、この制限そのものを撤廃する方向だという。

    64歳のモハメド・ビン・スライエムは2021年12月にFIA会長へ就任。昨年行われた会長選では、選挙規則の影響で対立候補が正式に立候補できず、無投票で再選を果たしていた。

    FIA広報担当者はBBCに対し、今回の規約変更について次のように説明した。

    「世界評議会(ワールドカウンシル)や上院ですでに適用されているものと同様に、FIA全組織における在任期間の扱いを統一する提案が提出された」

    「この提案は世界評議会および総会の承認を必要とする。FIA機関は引き続き民主的に役職者を選出する完全な権限を保持している」

    今回の提案では、FIA会長職だけでなく、アンチドーピング委員長やF1コストキャップ委員会トップなど、現在任期制限が設定されている他ポストにも影響が及ぶ見通しとなっている。

    現在の「3期12年制限」は、前FIA会長ジャン・トッドの時代に導入されたものだった。トッドは2009年、F1チームとの対立を経て退任を決めたマックス・モズレーの後任としてFIA会長に就任している。

    一方で、なぜ「他ポストにも任期制限を新設する」のではなく、「既存の任期制限を撤廃する方向」なのかについてBBCが質問したところ、FIA側は明確な説明を示さなかったという。

    ただしFIA側は、NFLコミッショナーのロジャー・グッデルを例に挙げ、「2006年からNFLを率い、スポーツを世界的ブランドへ発展させ、優れた統治実績を残している」と説明した。

    これに対し、昨年ビン・スライエムへの対抗馬として立候補を模索していたティム・メイヤーは強く反発している。

    「任期制限は単なる官僚的な細則ではない」

    「権力集中を防ぎ、リーダーシップ刷新を促し、組織が奉仕すべき対象への説明責任を維持するための、極めて重要なガバナンス上の安全装置だ」

    メイヤーはさらに、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長が、規約変更による続投の可能性を拒否したことにも言及。「IOCは任期制限をガバナンスの核心原則として扱っている」と指摘した。

    今回の改正案には、会長選候補者への新たな条件追加も含まれている。

    ■ FIA加盟団体またはFIA組織内での「十分な経験」を義務化
    ■ 副会長候補リスト提出期限を「選挙49日前」から「100日前」へ延長

    この変更により、将来的にビン・スライエムへ対抗する候補者が立候補しづらくなるとの見方も広がっている。

    昨年のFIA会長選では、候補者が世界6地域すべてから副会長候補を選出しなければならない規則が存在していた。しかし南米地域では、ブラジル出身のファビアナ・エクレストン(元F1最高責任者バーニー・エクレストンの妻)がすでにビン・スライエム陣営に加わっていたため、他候補は南米担当副会長候補を確保できず、立候補自体が不可能となっていた。

    なお、この選挙制度を巡っては、出馬を検討していたローラ・ヴィラーズが現在フランス裁判所でFIAを提訴している。

    FIAを巡っては近年、統治体制や透明性を巡る議論が相次いでおり、今回の“任期制限撤廃”提案はF1パドック内外でさらなる波紋を広げそうだ。

  • ステファノ・ドメニカリ F1のV8エンジン回帰を“1000%支持” PU内戦が激化

    ステファノ・ドメニカリ F1のV8エンジン回帰を“1000%支持” PU内戦が激化

    2026年F1レギュレーションを巡る“内戦”が、カナダGPを経てさらに激化している。電動化比率を大きく高めた現行PU規則に対し、ドライバーや一部チームから不満が噴出する中、F1 CEOステファノ・ドメニカリは将来的なV8自然吸気エンジン回帰を「1000%支持する」と明言した。

    2027年以降に電動比率を現在より抑えた「60:40」構成へ変更する議論が進む一方で、フェラーリやアウディは慎重姿勢を崩していないとされる。

    そこへマックス・フェルスタッペン、ルイス・ハミルトン、カルロス・サインツらも現行規則への不満を改めて表明し、F1の将来像を巡る政治的対立が表面化している。

    ハミルトンとストロールが現行PUに不満
    ルイス・ハミルトンは、カナダGPで2位表彰台を獲得したにもかかわらず、現在のF1マシンに違和感を隠さなかった。

    「モータースポーツ本来の姿には感じない」とハミルトンは語った。

    「ストレートの最後までエンジンを回し切って、ずっと伸び続ける感覚があった。V8やV10時代はそうだった」

    アストンマーティンのランス・ストロールはさらに踏み込んだ。

    「僕に決定権があるなら、バッテリーなんて一切いらない」とストロールはコメント。

    「運転するのはドライバーだけど、ルールを決めるのはメーカー側なんだ」

    ウィリアムズのカルロス・サインツも、現在検討されている“60:40”案ですら十分ではないとの考えを示した。

    「電動部分は補助的な存在であるべきだ。今みたいに依存するものではない」とサインツは語った。

    「60:40でも、ドライバー視点ではまだ十分じゃない。でも2030年に“本当のレーシング”と“本物のエンジン”が戻るまでの繋ぎにはなるかもしれない」

    マクラーレンとレッドブルは規則変更を支持
    一方で、マクラーレンとレッドブルは早期のルール修正を支持している。

    マクラーレンF1代表アンドレア・ステラは、各メーカーが自チームの利益だけでなくF1全体を考える必要があると強調した。

    「これは個人的利益よりも優先されるべき“共有の利益”だ」とステラは述べた。

    「良いスポーツでなければ、F1のビジネス価値を守れなければ、最終的に全員が損をする」

    表向きにはメルセデスも妥協に前向きな姿勢を見せている。しかしカナダGPで再び高い競争力を示したことで、パドック内では“現行規則維持を最も望んでいるのはメルセデスではないか”との見方も強まっている。

    ラッセルは新世代PUを擁護
    そんな中で、新規則を最も強く擁護したのがジョージ・ラッセルだった。

    ラッセルはカナダGPでアンドレア・キミ・アントネッリと激しいバトルを展開し、それこそが新世代F1の成果だと主張した。

    「こんなバトルは何年も経験していない」とラッセルは語った。

    「2014年のルイスとニコ以来だと思う。この新しいマシンだから可能なんだ。このエンジンだから可能なんだ」

    さらにラッセルは、フェルスタッペンを名指しこそ避けたものの、なぜそこまで急いで規則変更を求めるのか理解できないとも発言した。

    「なぜ誰かがルールを変えたがるのか分からない」とラッセルはコメント。

    「メルボルンでも良いバトルがあった。中国でもそうだった。そして今週末もキミと素晴らしい戦いができた」

    ドメニカリはV8回帰を全面支持
    こうした議論が続く中、F1 CEOステファノ・ドメニカリは、2030年または2031年に自然吸気V型8気筒エンジンへ回帰する構想を改めて支持した。

    「私は1000%V8に賛成だ」とドメニカリは仏『レキップ』紙に語った。

    ドメニカリは、軽量化されたマシンとシンプルなエンジンこそが「モータースポーツの純粋な本質」だと説明している。

    元F1王者エマーソン・フィッティパルディも、将来的な大音量エンジン復活を支持した。

    「F1は常にF1だ」とフィッティパルディは語った。

    「これほど大きな技術変革なのだから、改善すべき部分があるのは当然だ」

    そして、かつての時代で最も恋しいものを問われると、フィッティパルディは即答した。

    「自然吸気エンジンだ。あの素晴らしいサウンドが今は少し失われている」

  • FIAがF1カナダGPにレインハザード宣言 日曜決勝は雨の可能性

    FIAがF1カナダGPにレインハザード宣言 日曜決勝は雨の可能性

    FIA(国際自動車連盟)は、モントリオールで行われるF1カナダGP決勝に向けて、レインハザードを宣言した。公式気象サービスは、レース中のいずれかの時点で降水確率が40%を超えると予測している。

    第5戦の週末はここまでジル・ヴィルヌーヴ・サーキットにドライで晴れたコンディションが続いていたが、日曜には状況が大きく変わる見通しとなっている。

    一転して雨予報となったモントリオール
    カナダGPを前にした大きな話題は、天候予報がグランプリに向けて完全に変化したことだった。イベント期間中のパドックは乾いた晴天に恵まれていたが、日曜にはその状況が大きく変わるとみられている。

    雨は日曜を通じて予報されており、特に強い雨になるとは見込まれていないものの、モントリオールでは決勝日にわたって一貫して降り続く可能性がある。

    レインハザード宣言はFIA規則に基づく措置
    FIAによるレインハザード宣言は、FIA F1レギュレーションの第B1.5.11条に基づくもの。公式気象サービスが、レース中のいずれかの時点で降水確率が40%を超えると予測したことを受けて発令された。

    2026年F1マシンは新たな技術規則の下で運用されており、ウェットコンディションでの実戦データは限られている。日曜の決勝が雨絡みとなれば、タイヤ選択、エネルギーマネジメント、視界、セーフティカー判断を含め、各チームの対応力が大きく問われる展開になりそうだ。

    【関連】
    ・2026年F1に新ルール「レインハザード」発動条件は降水確率40%

  • F1の“60:40構想”は2028年へ延期? 2027年はレース短縮含む妥協案を議論

    F1の“60:40構想”は2028年へ延期? 2027年はレース短縮含む妥協案を議論

    FIA(国際自動車連盟)が推進する2027年以降のF1パワーユニット規則見直しについて、早くも“妥協案”が議論されているようだ。2028年から内燃機関と電力の比率を「60:40」に変更する構想は維持しつつも、2027年はより穏やかな変更にとどめる方向で調整が進んでいるという。

    当初FIAは、2027年から燃料流量を増加させる一方で電動比率を引き下げ、現在の“50:50”構造を見直す方針を示していた。

    しかし、各PUメーカーやチーム側には依然として慎重論が強く、最終合意には至っていない状況だ。

    メルセデスとレッドブルのみが支持
    FIAは5月8日の会合後、「FIA、FOM、チーム、PUメーカー間で合意に達した」と説明していたが、その後の協議では足並みの乱れが表面化している。

    現時点で変更案を支持しているのはメルセデスとレッドブルのみとされる。一方、フェラーリはADUOシステムとの整合性を理由に懸念を示しており、アウディもコスト面から疑問視しているという。

    さらにAuto Motor und Sportによれば、PUメーカーだけでなく各チーム側も強い警戒感を抱いている。燃料流量を大幅に増やした場合、燃料タンク容量や冷却設計の変更が必要となり、新たなシャシー開発が避けられない可能性があるためだ。

    特に複数チームは、2026年用シャシーをベースに2027年も継続使用する前提で計画を立てていたとされ、追加コストは数百万ドル規模に達する可能性も指摘されている。

    2027年は“中間案”で着地か
    こうした反発を受け、FIAはすでに段階的な妥協案を協議テーブルに提示しているという。

    その案では、2027年は燃料流量の増加を“限定的”な範囲に抑え、既存シャシーや燃料タンクを大幅変更せずに済む仕様とする一方、レース距離を数周短縮することでエネルギーマネジメント問題を緩和する方向が検討されている。

    そして2028年から、本来FIAが目指していた「60:40」構成へ完全移行する二段階方式が有力視されている。

    “V10回帰”議論とも絡むFIAの思惑
    今回の議論の背景には、モハメド・ビン・スライエムFIA会長が進める“内燃機関回帰”の流れもある。

    FIA内部では将来的なV8・V10エンジン復活構想も取り沙汰されており、2026年レギュレーションで強化された電動依存を早期に修正したい思惑が透けて見える。

    ただし現実には、PUメーカーごとの開発状況や投資額の差が大きく、政治的な駆け引きはさらに激化している。今回浮上した“段階的妥協案”は、そうした対立を回避しながら次世代F1の方向性を探る現実路線とも言えそうだ。

  • クリスチャン・ホーナーの新F1チーム構想 BYD計画にFOMが慎重な理由

    クリスチャン・ホーナーの新F1チーム構想 BYD計画にFOMが慎重な理由

    クリスチャン・ホーナーと中国EV大手BYDの接触が明らかになったことで、F1パドックでは「12番目のチーム」誕生への期待が再び高まり始めている。しかし、その構想は話題性や資金力だけで実現できるほど単純なものではない。

    ホーナーはレッドブルF1離脱後、F1復帰に向けた複数の選択肢を模索しているとされるが、BYDとの新規チーム構想はその中でも最も野心的なシナリオだ。ただし、現在のF1には、新規参入を歓迎する空気と同時に、“これ以上チームを簡単には増やせない”という現実も存在している。

    FIAは前向きでもFOMは慎重姿勢
    BYDは現在、F1参入について検討を進めているとされ、ホーナーは同社副社長のステラ・リーと複数回にわたって会談を行ったと伝えられている。

    FIA会長モハメド・ビン・スライエムは以前から、中国メーカーによるF1参入に前向きな考えを示してきた。

    「中国からチームが来るとしよう。FOMが承認すれば、私は100%承認すると考えている。中国が加われば、より多くの収益を生むのではないか。私はそう思う」

    FIAにとって、中国メーカー参入は商業面でも大きな意味を持つ。世界最大級の自動車市場を抱える中国は、F1にとって依然として重要な成長領域であり、BYDのような巨大メーカーが加わる意義は小さくない。

    一方で、FOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)の姿勢はより慎重だ。

    F1グループCEOのステファノ・ドメニカリは、新規チームについて「極めて重要な意味を持つ申請だけを評価する」と明言している。

    現在のF1は24戦体制へ拡大し、輸送やパドック運営はすでに限界に近づいている。単純にチーム数を増やせば済む段階ではなくなっているのが実情だ。

    既存10チームが警戒する“収益分配”問題
    新規参入が簡単ではない最大の理由は、既存チームの商業的利益に直結するからだ。

    F1の賞金や商業収益は現在の参戦チーム間で分配されているため、新たなチームが加われば、各チームが受け取る取り分は減少する。

    特に近年は、F1チームそのものの企業価値が急騰している。かつては経営難に苦しんでいたチームが、現在では数十億ドル規模の資産として扱われるようになり、既存チーム側は“価値希薄化”を強く警戒している。

    ドメニカリも以前、「投資家は新規参入より既存チーム買収に関心を示している」と語っていた。

    その流れの中で注目されているのが、アルピーヌF1チームの株式を保有するオトロ・キャピタルの持ち分問題だ。

    ホーナー自身もこの案件に関連して名前が挙がっており、メルセデスも関心を示しているとされる。既存チームへの関与であれば、新規参入ほど強い反発を受けにくいからだ。

    BYDが持つ“中国市場”という最大の武器
    BYD側も、F1を単なる広告媒体としてではなく、ブランド価値と技術力を示す場として捉えている。

    副社長のステラ・リーは、F1への関心について次のように語っている。

    「F1が好きなのは、情熱と文化があり、人々がF1にいることを夢見るからだ」

    さらにリーは、F1参入について「議論している」と認めたうえで、自社技術を試す場としても魅力を感じていることを明かしている。

    BYDは現在、EVと新エネルギー車分野で急成長を続けており、中国を代表する巨大メーカーへと成長している。高性能ブランド「仰望(ヤンワン)」では、量産車の最高速記録やニュルブルクリンクでのEVスポーツカー記録も打ち立てている。

    F1側にとって重要なのは、単に資金を持つ企業かどうかではない。

    ■ 新たな市場を開拓できるか
    ■ グローバルブランドとしてF1価値を押し上げられるか
    ■ 技術面でF1と結びつけられるか
    ■ 長期的に継続参戦できるか

    こうした“付加価値”が問われている。

    その意味で、中国市場、EV技術、巨大資本を持つBYDは、FIAとFOMにとって無視しにくい候補であることも事実だ。

    ホーナーが求めるのは“チーム代表”以上の役割
    ホーナーにとっても、BYD構想には大きな意味がある。

    レッドブルF1を黄金時代へ導いたホーナーは、単なるチーム代表ではなく、所有権や株式を伴う形での復帰を望んでいるとされる。

    既存チームへ雇われる立場ではなく、新たなプロジェクトを立ち上げ、自ら経営面にも関与する。その条件に最も近いのが、BYDとの新規参入構想というわけだ。

    もちろん、現時点では正式なFIA新規参入プロセスは存在していない。さらに、既存チーム側の抵抗、FOMの慎重姿勢、物流問題など、越えなければならない壁は多い。

    それでも、F1が今後さらにグローバル市場拡大を目指す中で、中国メーカーとホーナーという組み合わせは、単なる噂話で片付けられないだけの説得力を持ち始めている。

  • フェラーリF1代表 FIAのスタート手順“土壇場変更”を批判「フェアではない」

    フェラーリF1代表 FIAのスタート手順“土壇場変更”を批判「フェアではない」

    フェラーリF1代表のフレデリック・バスールは、2026年シーズン開幕直前にFIAが導入したスタート手順変更について「フェアではない」と不満を示した。フェラーリは新世代パワーユニットの弱点を見越して独自の技術的アプローチを採用していたが、その優位性が“安全上の理由”によるルール変更で失われたと考えている。

    2026年型F1パワーユニットではMGU-Hが廃止され、ターボの回転維持が難しくなったことで、スタート時のレスポンスが大きな課題となっていた。

    フェラーリはこの問題を重視し、最高出力の一部を犠牲にしてでも発進性能を優先する設計を選択。その結果、開幕戦からシャルル・ルクレールやルイス・ハミルトンが好スタートを見せ、ハースF1チーム勢も一定の恩恵を受けていた。

    フェラーリが選んだ“スタート優先”の技術的妥協
    フレデリック・バスールによると、フェラーリは2026年型パワーユニット開発の段階で、スタート性能を最重要テーマとして扱っていたという。MGU-H廃止によってターボラグが増大し、エンジン始動や発進時の加速性能に影響が出ることを早い段階から想定していたためだ。

    そのためフェラーリは、より小型のターボを採用し、立ち上がり性能を優先する方向へ舵を切った。ピークパワーでは不利になる可能性を受け入れつつも、グリッド上でポジションを守ることを重視した形だ。

    「スタートは断トツで最も重要なテーマだった」とバスールはThe Raceに語った。

    「妥協案はこうだ。1周あたり0.1秒を得るか、それともスタートで5ポジション失うか。エンジニアたちに聞けば、“なら良いスタートを選ぶ”という話になる」

    実際、冬季テストやシーズン序盤では、フェラーリ勢が他チームよりも安定してスタートを決めていた。これは偶然ではなく、レギュレーションを踏まえたうえで意図的に構築された設計思想だった。

    FIAが導入した“青色ランプ”延長手順
    しかしFIAは開幕直前、スタート前に青色ランプを5秒間点滅させる追加手順を導入した。これは各チームがターボ回転を維持しやすくするための措置であり、スタート時のエンジン失速や発進不能リスクを軽減する狙いがあった。

    バスールは、この変更によってフェラーリが積み上げてきた優位性が失われたと考えている。

    「この青いライトがなければ、中国GPのグリッドにはまだ止まったままのマシンがいたはずだ」

    一方でバスールは、安全上の判断である以上、最終決定権がFIA側にあることも認めている。

    「安全上の理由を持ち出すことはできる。それはFIAの権利であり、我々は受け入れるしかない」

    「最終的には安全を理由にした決定だった。彼らの管轄だ。たとえ全員が反対していても、彼らは決めることができる」

    “ルールに合わせてクルマを作れ”との矛盾
    バスールが特に不満を抱いているのは、この問題が“グレーゾーン活用”ではなく、フェラーリがルールを正面から解釈した結果だった点にある。

    フェラーリは以前からFIA側とこの問題について議論しており、その際に返ってきたのが「クルマをルールに合わせるべきであり、ルールをクルマに合わせるべきではない」という説明だったという。

    「私は1年前にFIAへ行き、この件について話をした。スポーティング諮問委員会でも、パワーユニット諮問委員会でも議論した」

    「その時のFIAの返答は、“ルールに合わせてクルマを設計すべきであり、あなたのクルマのためにルールを作るべきではない”というものだった。我々はその考え方を評価していた」

    だがその後、多くのチームが危険性を主張し始めたことで状況が変わった。

    「グリッドの半分、40%ほどのチームが“非常に危険だ”と騒ぎ始めた。政治的にはうまいやり方だったが、フェアプレーではなかった」

    フェラーリが感じる“後出し変更”への不満
    バスールは今回の件について、安全性向上そのものを否定しているわけではない。ただ、シーズン直前の変更によって、フェラーリが意図的に行った技術的妥協が無意味になったことに強い不満を抱いている。

    「我々にとってはかなり厳しい話だった」

    「安全上の理由で彼らが行ったことは理解している。しかし別の方法として、“危険だと判断されるならピットレーンスタートにする”という選択肢もあったはずだ」

    「我々は特定の基準を持ってエンジンを開発した。そしてある意味では、彼らは土壇場でルールを変えたんだ」

  • FIA会長スライエム 2026年F1新V6批判を一蹴「文句を言うのは負けている側」

    FIA会長スライエム 2026年F1新V6批判を一蹴「文句を言うのは負けている側」

    FIA(国際自動車連盟)のモハメド・ビン・スライエム会長が、2026年から導入された新世代V6ハイブリッドPUへの批判に反論した。FIAは今季開幕後から電動エネルギー運用ルールの修正を重ねているが、依然としてレース内容や予選での挙動に対する不満の声は続いている。

    一方で、モハメド・ビン・スライエムはそうした批判の背景に「競争力の差」があると主張。さらに2031年からのV8回帰構想についても改めて言及し、2030年終了後にはFIAが投票なしでエンジン規定を主導できると明かした。

    「不満を言っているのは負けている側だけ」
    モハメド・ビン・スライエムは『Forbes』に対し、2026年PUレギュレーションは十分な準備期間を経て導入されたと強調した。

    「我々はPUメーカーとも協議したし、チームとも協議した」とモハメド・ビン・スライエムは語った。

    「私が就任したのは2022年で、このレギュレーションは2022年8月に署名された。しかし、これは8か月で決まったものではない」

    「18か月にわたって全チームと集団的に議論を行い、その後に導入された。2022年8月から、今年バルセロナで最初のテストを行うまで、全員にとって十分な時間があった」

    そのうえで、現在の混乱は各チームごとの問題にすぎないと指摘した。

    「あるチームはマシンに問題を抱え、別のチームはPUに問題を抱え、さらに別のチームはシャシーに問題を抱えている」

    「だが興味深いのは、後方にいる者たちだけが不満を言っていることだ。メルセデスやフェラーリが不満を言っているのを聞いたか? もちろん聞いていない。これはサイクルなんだ」

    「今は非常に強い者がいて、他の全員がその座を奪いたがっている。それが競争というものだ。しかし批判は、自分たちが正しく対応できなかった側からしか出てこない」

    FIAは開幕後もルール修正を継続
    FIAは開幕戦後から2026年レギュレーションの見直しを続けており、マイアミGPではエネルギーマネジメント関連を中心に複数の修正が導入された。2027年レギュレーションについても、すでに変更作業が進められている。

    モハメド・ビン・スライエムは、ドライバー側の意見も反映して改善を進めていると説明した。

    「オーストラリアの後に議論を行い、技術部門とシングルシーター委員会とも協議した。その後、ドライバーたちにも意見を求めた」

    「我々は電動化の適用方法や安全性についてドライバーたちと協議した。そして今では、状況は改善しているように見える」

    「これを行うことがFIAの責任だ。我々は思いつきで決定を下しているわけではない。我々は関係者と協議し、情報を集め、そのうえで一つのチームではなく、全体にとって最善のものを選んでいる」

    2031年V8回帰構想を再び主張
    モハメド・ビン・スライエムは、以前から主張しているV8エンジン回帰案についても再び言及した。今回は「決定事項」ではなく、「ますますそう考えている」とトーンを変えつつも、2030年終了後にはFIA主導で新PU規定を決定できると説明している。

    「新しいエンジンについては、V8の話をしてきた。そして私は、ますますV8を復活させる方向に傾いている」

    「2030年シーズン終了時点で、FIAは投票を経ることなくエンジン設計の権限を取り戻すことになる」

    「ただ我々としては、それを1年前倒しで実現したいと思っている」

    現在の2026年PUは、“50対50”のハイブリッド比率や大幅な電動化を特徴としている。しかし開幕後には、エネルギー不足による失速やレース中のマネジメント偏重が問題視され、FIAはすでに修正対応に追われている。

    その状況下でのV8回帰発言は、現行規則への不満をかわしつつ、将来的な方向転換への支持を集める狙いも透けて見える。