カテゴリー: FIA(国際自動車連盟)

  • FIA 2026年F1オーバーテイクモード調整の可能性を示唆

    FIA 2026年F1オーバーテイクモード調整の可能性を示唆

    2026年F1シーズンからDRSに代わって導入された「オーバーテイクモード」について、FIAのシングルシーター部門ディレクターであるニコラス・トンバジスが、必要に応じて強化・弱体化の調整を行う可能性があると明かした。

    新レギュレーション下でのエネルギー運用は大きな議論を呼んでいるが、FIAは拙速な変更を行うつもりはない姿勢も強調している。

    オーバーテイクモードは“強すぎても弱すぎても調整”
    2026年F1では、従来のDRSが廃止され、代わって「オーバーテイクモード」が導入された。

    このモードは、前車の1秒以内に接近した場合にのみ使用可能で、追加で0.5メガジュールのエネルギーをバッテリーに供給し、より長く高い速度を維持できる仕組みとなっている。

    しかし、バーレーンで行われた2回のテストセッションでは各チームが独自のプログラムを実施していたため、実際のレース状況での有効性はほとんど検証されなかった。

    トンバジスは現時点での評価について次のように語っている。

    「サーキットによるところが大きい。現時点では、ここでそれを評価する機会はあまりなかった。明らかに各チームがそれぞれのプログラムをこなしているし、テストでリスクを取ることも望んでいないからだ」

    「だからオーバーテイクについて結論を出すのはまだ早いと思う。ただし、もし弱すぎると感じれば強化できるし、強すぎると感じれば必要に応じて弱めることも可能だ」

    国際自動車連盟 F1

    “拙速な変更はない” オーストラリア前の改訂を否定
    2026年レギュレーションには批判的な声も少なくない。マックス・フェルスタッペンは、新世代マシンのフィーリングについて懸念を示している。

    それでもトンバジスは、開幕戦オーストラリアGP前に急な変更を行う可能性を否定した。

    「現実的に考えて、オーストラリア前に何らかの変更を加えるのは非常に難しいだろう。そして、拙速に反応する理由があるとも思っていない」

    「我々は関係者と議論したいと考えている。我々がすぐに介入して何かを変えるつもりはない。基本的には良いプロダクトを持っていると考えているが、適切にフィードバックを集め、分析したい。ゲームは長い。1戦や2戦で決まるものではない」

    エネルギー配分が鍵を握る2026年F1。その中核を担うオーバーテイクモードは、シーズン序盤の実戦を経て真価が問われることになる。

  • 2026年F1パワーユニット 3月1日で何が決まる?ホモロゲーション期限を解説

    2026年F1パワーユニット 3月1日で何が決まる?ホモロゲーション期限を解説

    2026年F1レギュレーションにおける重要な節目として、3月1日がパワーユニットのホモロゲーション提出期限となる。5社のパワーユニットメーカーは、この日までにFIA(国際自動車連盟)へ正式な申請書類を提出しなければならない。

    2026年から2030年まで続く新レギュレーションサイクルの根幹を成す制度であり、この日を境に各メーカーの設計は“凍結”状態へと入る。

    ホモロゲーションとは何か
    ホモロゲーションとは、各メーカーが設計したパワーユニットが技術規則に完全適合していることをFIAが公式に承認する手続きである。

    付録C5に定められた規定に基づき、FIAに登録されたすべてのパワーユニットメーカーは、参戦初年度の3月1日までに「ホモロゲーション・ドシエ(技術提出書類)」を提出しなければならない。

    この制度は2026年から2030年まで有効であり、途中参入メーカーにも適用される。たとえば2029年にゼネラルモーターズ製パワーユニットで参戦予定のキャデラックF1チームは、2029年3月1日までに提出義務を負う。

    2026年に参戦する5社、フェラーリ、メルセデス・ハイパフォーマンス・パワートレインズ、アウディ、レッドブル・パワートレインズ、ホンダは、2026年3月1日が提出期限となる。

    提出が求められる主要構成要素
    ドシエには、パワーユニットを構成するすべての主要要素の技術仕様と詳細説明が含まれなければならない。

    対象となる主な要素は以下の通りである。

    ■ 内燃エンジン(ICE)
    ■ コントロールエレクトロニクス(PU-CE)
    ■ 排気システム(EXH)
    ■ ターボチャージャー(TC)
    ■ エナジーストア(ES/バッテリー)
    ■ MGU-K

    さらに各要素に付随する細部部品の完全な内訳と補足資料も必要となる。

    FIAは提出後最大14日以内に審査を行い、承認されたパワーユニットは封印される。封印は不正改造防止および検証容易化を目的とする。

    一部の消耗部品(フィルター、スパークプラグ、センサーなど)は非封印扱いとなるが、基本構造の変更は認められない。

    ホモロゲーションを取得していないパワーユニットは2026年F1選手権で使用することはできない。

    4月1日の追加義務
    承認後、各メーカーは参戦初年度の4月1日までに、全要素を含む「基準パワーユニット」をFIAへ提出する義務がある。

    これは提出書類の物理的参照個体として保管され、以後の比較検証に用いられる。

    カスタマーチームへの適用
    ホモロゲーションはメーカー単位で行われるため、供給先チームすべてに同一仕様が適用される。

    例えばメルセデスは自社チームに加えマクラーレン、ウィリアムズ、アルピーヌへ供給し、フェラーリはフェラーリ、ハースF1チーム、キャデラックF1チームへ供給する。

    レッドブル・パワートレインズはレッドブル・レーシングとレーシングブルズへ、アウディは自社チームのみ、ホンダはアストンマーティンへ供給する。

    技術仕様、制御ソフト、運用条件、オイルや燃料仕様も原則として統一されなければならない。

    カスタマーチームが独自の燃料・オイル供給元を希望する場合、その旨をドシエ内で明示する必要がある。

    また、2026年参戦チームに対しては、2025年8月1日までに物理インターフェース位置、熱排出量推定値、エンジン剛性などの情報提供が義務付けられている。

    ホンダF1 エンジン/パワーユニット

    アップグレードは可能か
    2026〜2030年の5年間で、性能向上を目的とした開発機会は厳しく制限されるが、完全凍結ではない。

    信頼性向上を目的とする変更は、FIA承認を経て可能である。

    また、配線、ウエストゲート位置、ターボ配置、吸気系、ホース、バルブなどの軽微な変更も条件付きで許可される。

    いかなる変更であっても、導入予定日の14日前までに更新版ホモロゲーション書類を提出しなければならない。

    3月1日が意味するもの
    3月1日は単なる提出期限ではない。

    それは2026年F1勢力図の土台が確定する日であり、5年間続く技術競争の出発点である。

    アクティブエアロ、50/50ハイブリッド配分、新世代バッテリーを軸とする2026年F1時代において、パワーユニットの設計思想が事実上固定される瞬間でもある。

    ここから先は、限られた開発ウインドウの中で、いかに効率よく改善を重ねられるかが勝敗を分けることになる。

  • F1とFIA 中東情勢の緊張激化を受けバーレーンとサウジアラビアを注視

    F1とFIA 中東情勢の緊張激化を受けバーレーンとサウジアラビアを注視

    F1とFIAは、中東での軍事的緊張が高まるなか、バーレーンGPおよびサウジアラビアGPへの影響について状況を綿密に監視している。現時点で、両イベントは予定通り開催される見通しだが、情勢の推移が注目されている。

    イランによる中東地域のアメリカ軍基地への軍事攻撃を受け、地域の緊張は急速に高まっている。

    バーレーンでは、マナーマのジュファイア地区にあるアメリカ海軍施設がイランのミサイル攻撃を受けたとされる。同地区は、湾岸ラウンド期間中にパドック関係者の多くが滞在するエリアでもある。

    アメリカのドナルド・トランプ大統領は、米国がイランに対して「大規模な戦闘作戦を開始した」と発表した。

    一方、イラン側も声明を発し、米国およびイスラエルによるイラン都市への攻撃に対し「歴史的な教訓を与える」として、さらなる緊張の可能性を示唆している。

    F1とFIAが情勢を監視

    F1およびFIAは状況を継続的に監視している。

    フォーミュラワン・マネジメントは声明で次のように述べた。

    「我々の次の3戦はオーストラリア、中国、日本であり、中東ではない。これらのレースはまだ数週間先だ」

    「我々は常にこのような状況を注意深く監視し、関係当局と緊密に連携している」

    タイヤテスト中止と移動への影響
    マクラーレンとメルセデスは、ピレリの2日間タイヤテストのためバーレーン入りする予定だったが、テストは中止となった。現地入りしていた関係者は英国への帰国、または開幕戦オーストラリアへの移動を検討している。

    バーレーンGPはシーズン第4戦として4月12日に開催予定であり、パドック関係者の多くは4月7日から8日にかけて現地入りする見通しだ。

    情報筋によれば、シーズン開幕戦に向けてオーストラリアへ向かう一部の関係者は、中東経由を避けるため代替便を模索しているという。

    通常、ヨーロッパからメルボルンへのフライトはドーハ、ドバイ、アブダビのいずれかを経由するケースが多い。

    国際自動車連盟

    過去にも影響を受けたF1
    今回が初めてではない。F1は過去にも地域紛争の影響を受けてきた。

    2011年には、国内の反政府運動が続くなかでバーレーンGPが開催された。

    また2022年のサウジアラビアGPでは、ジェッダ市街地サーキット近郊のアラムコ施設がミサイル攻撃を受けた。当時は現地当局からの安全保証を受け、大会は継続された。

    さらに昨年6月には、ドーハ郊外のアル・ウデイド空軍基地がイランのミサイル攻撃の標的となったが、その後のカタールGPは11月30日に予定通り開催されている。

    今後の展開は不透明
    最新の報道では、アブダビでイランの攻撃による破片落下で1名が死亡したと伝えられている。また、イラン国営メディアは南部地域でのミサイル攻撃により女子学生5人が死亡したと主張しているが、詳細は確認されていない。

    地域では緊急警報が発令され、「最寄りの安全な建物に直ちに避難し、窓やドア、開放空間から離れるように」との指示が出されている。

    2月9日にはバーレーンで緊急システムのテストが実施され、その前夜には同国の空域が一時閉鎖された。この影響で移動中のF1関係者の一部は目的地変更や数時間の足止めを余儀なくされた。

    公式には視界不良が理由とされたが、周辺では米空軍の活動も確認されていた。

    先週のF1プレシーズンテスト後には、出国時の遅延が懸念されたが、大きな混乱は報告されなかった。

    今後数週間で中東情勢がどのように推移するかは不透明であり、F1とFIAは引き続き状況を注視していく構えだ。

  • F1エンジン圧縮比ルール妥協の舞台裏 メルセデスが“賛成”した理由

    F1エンジン圧縮比ルール妥協の舞台裏 メルセデスが“賛成”した理由

    2026年F1パワーユニットを巡る圧縮比論争は、最終的に政治的妥協という形で決着した。フェラーリ、アウディ、そしてホンダは、メルセデスがレギュレーションの“隙”を突いて有利を得ていると主張。これを受けてFIAは測定方法の見直しに踏み切った。

    だが、皮肉なことに、この新測定方式でもメルセデスは影響を受けない。むしろ他メーカーが2027年に向けて巻き返しやすくなる内容だという。

    圧縮比16:1を巡る対立
    問題の核心は圧縮比の測定方法だった。2026年レギュレーションでは圧縮比は16:1を超えてはならないと定められている。

    フェラーリ、アウディ、ホンダは、メルセデスのパワーユニットがエンジン暖機後に部品が膨張する設計となっており、ピストンがよりシリンダー上端に近づくことで実質的に圧縮比が上昇していると主張した。

    これにより出力向上と燃費改善が両立される可能性があるというのだ。

    当初FIAは常温でのみ圧縮比を測定していたため、稼働状態での数値はチェック対象外だった。この点が、メルセデス勢にアドバンテージを与えているとの不満を招いた。

    6月1日からの新測定方式
    数か月に及ぶ協議の末、FIAは妥協案を提示。6月1日以降、圧縮比は常温だけでなく稼働状態でも測定されることになる。

    一見するとメルセデスに不利な変更のように見えるが、実情は異なる。

    新方式では、他メーカーが常温時により高い圧縮比でエンジンを設計する余地が生まれる。これにより、稼働時・常温時の両方で16:1規定を満たしながら、実質的な性能向上を図ることが可能になる。

    つまり、この妥協はメルセデスの強みを削ぐものではなく、他メーカーが2027年に向けて改良を進めやすくするための“政治的調整”という側面が強い。

    圧縮比 F1 メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    なぜメルセデスは賛成したのか
    さらに注目すべきは、メルセデスがこの規則変更に賛成票を投じた点だ。

    その理由は単純だ。6月1日から適用される新テスト方式においても、メルセデスの現行パワーユニットはすでに適合しているという。

    つまり、何も変更する必要がない。

    FIAの発表によれば、メルセデスはこの“遅れて行われたルール変更”を支持した。メーカーにとって実質的な不利益がない以上、反対する理由はなかったというわけだ。

    F1政治の典型例
    今回の圧縮比騒動は、F1における技術論争と政治力学がいかに密接に絡み合っているかを示す好例となった。

    レギュレーションの文言、測定方法、その解釈を巡る駆け引き。そして最終的には、全陣営が“損をしない形”での妥協点が見出される。

    メルセデスは進路を変える必要がなく、フェラーリ、アウディ、ホンダは2027年に向けた開発余地を確保した。

    騒動の末に残ったのは、F1が依然として“サーキット上だけで戦われる競技ではない”という現実だった。

  • F1エンジン圧縮比問題に決着 FIAが6月1日から高温検査導入を承認

    F1エンジン圧縮比問題に決着 FIAが6月1日から高温検査導入を承認

    2026年F1シーズン開幕を目前に控え、プレシーズンを通して議論の的となってきたパワーユニットの「圧縮比」問題が制度的な決着を迎えた。FIAと全5メーカーは検査方法の修正に合意し、新たな高温条件での検査を2026年6月1日から導入することを承認した。

    今回の変更は、圧縮比16:1の測定方法を巡る論争を受けたもので、FIAは全会一致での承認を強調している。

    圧縮比16:1を巡る測定条件の問題
    2026年F1レギュレーションでは、V6内燃エンジンの圧縮比は16:1に制限されている。これは新規参入メーカー、とりわけアウディの参戦を後押しするための基本設計思想の一つだった。

    従来、FIAは圧縮比を冷間・静止条件で測定していた。しかし一部メーカーが、冷間条件では16:1を満たしながら、実走行時の高温作動状態では圧縮比を拡大できる設計を実現しているのではないかとの指摘が浮上した。

    報道ではメルセデスがこの手法を活用しているとされ、アウディを中心にホンダ、フェラーリが測定方法の是正を求めたと伝えられている。圧縮比の差による性能向上は最大13馬力、ラップあたり0.3〜0.4秒に及ぶ可能性があるとの見方もあった。

    一方でメルセデス側は、性能差は数馬力に過ぎないと主張し、パワーユニットは完全に合法であるとの立場を崩していない。

    6月1日から冷間+高温の二重検査へ
    議論を経て、FIAは5メーカー(メルセデス、フェラーリ、ホンダ、アウディ、レッドブル・フォード)による電子投票を実施。10日間の審議期間を経て、妥協案は全会一致で承認された。

    新ルールでは、2026年6月1日から圧縮比は以下の条件で管理される。

    ■ 冷間条件
    ■ 高温作動条件(130度)

    そして2027年以降は、検査は高温作動条件(130度)のみで実施される。

    FIAは声明で次のように説明している。

    「圧縮比というテーマに対し、重要な努力が払われた。このパラメータは新規参入を促進するための基本目標のひとつであり、規則上は冷間条件で16:1に制限されている。」

    「FIAは妥協案を策定し、2026年6月1日からは冷間および高温条件の双方で管理し、2027年以降は130度の作動条件のみで管理する。」

    当初は8月1日導入案もあったが、今回の決定により6レース前倒しとなった。日程上はカナダGPとモナコGPの間で適用が開始される。

    2027年の高温単独検査がもたらす設計自由度
    今回の決定で注目すべきは、2027年から冷間検査が廃止される点にある。

    一般的にパワーユニットは温度上昇に伴い圧縮比が低下する傾向にあるとされる。しかし報道では、ある設計においては高温状態で圧縮比が上昇する構造が実現されている可能性が指摘された。

    2026年は冷間と高温の双方で16:1を満たす必要があるため、設計上の自由度は限定される。しかし2027年以降は高温条件のみでの検査となることで、各メーカーが高温作動域に最適化した設計を追求しやすくなる。

    これは一部の優位性を抑制する側面を持ちながら、長期的には設計アプローチの再均衡を促す可能性もある。

    国際自動車連盟 圧縮比 フォーミュラ1カー

    メキース「求めているのは明確さ」
    2026年から自社製パワーユニットを投入するレッドブル陣営のローラン・メキースは、次のように語った。

    「我々が求めているのは明確さだ。何が許されているのかを示してほしい。それが分かれば十分だ。重要なのは、許容範囲を明確に理解することだ。そのうえで各競技者は、自分たちが最善だと考える方法で結果を目指すべきだ。」

    「これはパワーユニットに限らず、すべてに当てはまる。」

    各メーカーにとっては性能差以上に、規則の透明性が重要であるとの姿勢を示した。

    エネルギーマネジメントも継続評価へ
    FIAはまた、2026年型パワーユニットにおけるエネルギーマネジメント戦略についても、プレシーズンテストおよび序盤戦のデータをもとに技術評価を続けると明らかにした。

    2026年レギュレーションは近年最大級の変更と位置づけられており、電動比率の大幅な増加により、ドライバーはより高度なエネルギーマネジメントを求められる。

    FIAは声明で「2026年のレギュレーションは近年最大級の変更であり、プレシーズンテストおよび初期ラウンドから得られる知見を踏まえ、さらなる評価と技術チェックを継続する」と述べている。

    圧縮比問題は制度的には収束した。しかし、実際の競争力への影響が明らかになるのは6月以降だ。高温検査導入が2026年F1の勢力図にどのような変化をもたらすかは、今後の開発戦争の行方を左右する重要な焦点となる。

  • デビッド・クルサード 2026年F1圧縮比問題でFIAの対応を問題視

    デビッド・クルサード 2026年F1圧縮比問題でFIAの対応を問題視

    2026年F1レギュレーションを巡るエンジン論争が続く中、元F1ドライバーのデビッド・クルサードがFIAのルール策定姿勢を強く批判した。

    焦点となっているのはパワーユニットの圧縮比だ。従来は18:1だった圧縮比は、2026年F1レギュレーションで16:1へと引き下げられた。しかし2025年12月、メルセデスが測定条件の抜け穴を利用し、実走行時により高い圧縮比を実現している可能性があると報じられた。

    問題視されているのは、圧縮比の測定が車両停止時かつ常温状態でのみ行われている点だ。エンジンが高温・高負荷状態にある実走行中の条件は想定されていないとされる。

    この抜け穴を塞ぐため、シーズン中のレギュレーション変更案が提案されており、パワーユニットメーカー、FIA、そしてF1の承認を経て投票にかけられる予定だ。

    メルセデスのチーム代表トト・ヴォルフは、同チームのエンジンは合法であり、設計はFIAの承認を受けていると強調している。

    そうした中、クルサードはポッドキャスト番組でFIAの姿勢に疑問を呈した。

    「問題はここだ。あなたはFIA、つまり国際自動車連盟について言及した。彼らはF1の統括団体だ。最近こう言っていたのを読んだ。“我々は20人ほどでルールを書いているが、F1チームには何百人もいる。だから抜け穴を見つけられなかったし、閉じることもできなかった”と」

    さらにクルサードは次のように続けた。

    「率直に言って、もしルール策定者がF1マシンの作動ウインドウをより深く理解していれば…。F1マシンの作動ウインドウは、常温のガレージ内ではない。コース上だ。エンジンは110度、あらゆるものが限界状態で、ブレーキは1000度を超える。そうした環境こそが、ルールとレギュレーションを設計すべき基準だ」

    2026年F1シーズンは新時代の幕開けと位置づけられているが、技術的な解釈を巡る攻防はすでに激化している。今回の圧縮比問題は、レギュレーション策定とその運用の在り方を改めて問う事例となっている。

  • FIA フェルスタッペンの2026年F1マシン批判に回答「調整はあり得る」

    FIA フェルスタッペンの2026年F1マシン批判に回答「調整はあり得る」

    FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスは、2026年F1レギュレーションに対するマックス・フェルスタッペンの批判に応じ、エネルギー展開の運用について小規模な調整を行う可能性があると認めた。

    今季からF1は、内燃エンジンと電力出力をほぼ50対50で分配する新たなパワーユニットとシャシー規則へ移行。電気エネルギー生成量は従来より大幅に増加し、ドライビングスタイルにも大きな変化が生じている。

    「我々は、このスポーツには多くのステークホルダーがいることを常に忘れてはならないと思う」とトンバジスはバーレーンで語った。

    「もちろんドライバーは極めて重要だ。彼らはスターだ。しかし、このスポーツはメルセデス、アウディ、フェラーリ、キャデラックのような大手自動車メーカーも引きつけているという事実も忘れてはならない」

    フェルスタッペンは新世代マシンについて「フォーミュラEにステロイドを打ったようだ」と表現し、バッテリー依存を減らして「本来のF1仕様のエンジン」に戻すべきだと主張していた。

    これに対しトンバジスは、2026年レギュレーションはより大きな全体像の一部であると説明する。

    「50対50のパワー配分には課題があることは2022年の時点から分かっていた。これは新しい問題でも驚きでもない」

    「このエネルギーをどう展開するかについては膨大な作業を行ってきた。私の見解では、妥当な地点に到達するための作業の90%は完了している」

    マックス・フェルスタッペン フォーミュラ1カー

    エネルギー消費の大きい高速サーキット、例えばアルバート・パーク、ジェッダ市街地、モンツァなどでは、走行中にMGU-Kを十分に回収できない可能性が懸念されている。

    その点についても、FIAは柔軟な姿勢を示している。

    「我々はドライバーのコメントを考慮している。多くの質問を投げかけ、フィードバックを求めている」

    「チームやパワーユニットメーカーも非常に建設的だ。今後数か月で若干の調整が必要になる可能性はあるが、大規模な変更が必要だとは考えていない」

    トンバジスは、昨年夏や秋にシミュレーター段階で示されていた懸念と比べれば、現在の評価は大きく改善していると強調する。

    「すべての懸念が解消されたかといえば、そうではない。まだ議論が続いている項目もある」

    「ドライバーは最大限のパフォーマンスを引き出すことに慣れているし、一定の運転スタイルも持っている。適応が必要だ。その過程でのフィードバックは当然のことだ」

    FIAは今後、統治プロセスを経た上でエネルギー展開方法の細部を見直す可能性を残している。歴史的とも言える大規模レギュレーション変更はすでに“合理的な地点”に近づいているが、最終的な完成形にはまだ微調整の余地がある状況だ。

  • 2026年F1 開幕前に緊急判断 スタート時の可動ウイングを禁止

    2026年F1 開幕前に緊急判断 スタート時の可動ウイングを禁止

    2026年F1レギュレーション下で議論となっていたスタート時の可動ウイング使用について、F1コミッションで禁止する方針が承認された。最終的な発効にはFIA世界モータースポーツ評議会での承認が必要となるが、パドック内では広く合意が形成されている。

    今回の決定は、スタート手順の見直しと並行して議論されてきたものだ。

    MGU-H廃止により、ターボを適正な作動ウインドウへ導く作業が従来以上に難しくなったことを受け、スタートシーケンス開始前に5秒間の事前通知を設ける改訂もすでに合意されている。

    2026年規則では、電力使用抑制の観点から可動ウイングの使用が大幅に自由化された。従来のように「1周目以降」といった制限条項が存在せず、理論上はグリッドから1コーナーまでの区間でも開閉が可能となっていた。この規定の空白が、安全面の観点から問題視された。

    スタート直後は最大限のメカニカルグリップとダウンフォースが求められる局面だ。特に50km/hまでは電動出力が使用できないため、後輪には大きなトルクが集中する。一方で、長いスタートストレートを持つサーキットでは、ある速度域以降にウイングを開くことで最高速を高め、エネルギー消費を抑えられる可能性も指摘されていた。

    しかし、懸念は複数あった。まず、タイヤが十分に温まっていない状態でダウンフォースを抜くことによるトラクション低下。そして車両が密集する局面で速度が一段と高まることによる接触リスクである。さらに1コーナー進入時には、ブレーキやタイヤが理想温度に達していない状況でより高い速度に到達することになり、ロックアップや追突事故の可能性も高まる。

    2026年のF1世界選手権

    マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラはF1コミッションでの議論について次のように語った。

    「F1コミッションでは4つ目の議題があった。それはグリッドから1コーナーまでの区間でストレートモードを使用するかどうかという点だった。我々は、これらのポイントが受け止められ議論されたことに全体として満足している。スタート手順に関して進められている作業は非常にポジティブだ」

    さらにステラは、方向性について明言した。

    「グリッドから1コーナーまでのストレートモード使用については、使わないという決定になった。最終的な承認はFIAによる手続きが必要だが、パドック内では広く合意があると理解している」

    提案は水曜日に開催されたF1コミッションで承認されたが、正式発効にはFIA世界評議会での承認が必要となる。2026年F1シーズン開幕を前に、エネルギーマネジメントと安全性のバランスを巡る議論は、依然として重要なテーマであり続けている。

  • FIAがメルセデスF1圧縮比問題で投票実施へ なぜ今“決着”を急いだのか

    FIAがメルセデスF1圧縮比問題で投票実施へ なぜ今“決着”を急いだのか

    2026年F1開幕を前に、パドックで最も頻繁に語られてきた言葉のひとつが「圧縮比」だった。メルセデスのパワーユニットが静的検査では16:1の上限を満たしながら、実走時にはより高い圧縮比に到達できる可能性があるとライバル勢が察知して以降、この問題は技術論争から政治的テーマへと発展した。

    トト・ヴォルフはバーレーンで、メルセデスが新型パワーユニットの開発過程で常にFIAを関与させてきたと説明し、合法性に疑問はないと強調。「コップの中の嵐」に過ぎないと語った。

    しかしFIAはそれでも投票という手続きを選択した。その背景には、単なる合法・違法の問題を超えたレギュレーションの「意図」を巡る論点があった。

    「この種の問題には常に多くのニュアンスがある。レギュレーションの意図も重要だ。16:1の圧縮比を維持することは、2022年に全メーカーと議論した際の重要な柱のひとつだった」とFIAシングルシーター部門責任者ニコラス・トンバジスは説明した。

    「規則の文言をどう解釈するかという問題もある。現行の条文に基づけば、より高い圧縮比を実現する方法が存在することが明らかになった」

    トンバジスは、これは不正行為の問題ではないと明言する。

    「誰かが違法行為をしたという立場をFIAが取ったことは一度もない。だが規則が本来の目的を完全に達していないなら、我々は修正を試みる。意図とは異なる方向に解釈が広がることを望んでいない」

    FIA内部の少人数が、各チームの何百人ものエンジニアと向き合う構図は避けられないという。

    「新しい規則では、チームが意図を超える解決策を見つけるのは避けられない。我々はこの投票によってこの問題に終止符を打ちたい」

    8月導入案と“130度テスト”の意味
    現在の提案は、圧縮比16:1の確認方法を8月1日から変更するものだ。従来の外気温下でのチェックに加え、130度という実走を想定した温度条件での追加検査を導入する。

    可決には5社中4社のパワーユニットメーカーに加え、FIAおよびフォーミュラワン・マネジメントの賛成が必要となるスーパー・マジョリティ方式が採られる。承認後はワールド・モータースポーツ・カウンシルの正式承認を経て発効する。

    トンバジスは、シーズン開幕前の変更は不公平である一方、2027年まで放置するのも妥当ではないと説明した。

    「違法ではないが、意図を超えている。我々はその中間点を探った」

    また、変更が導入されたとしてもエンジン改修は大規模ではないと述べる。

    「圧縮比の差をシリンダー径やストロークに換算すれば、極めて小さな数値だ。すべてを作り直す話ではない」

    ただし、もしメーカーが後半戦に向けて改修を行う場合、そのコストはPU予算上限の対象となる。

    圧縮比 メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    実は“勝者”はメルセデスか
    一方で、イタリア側の見方はやや異なる。パワーユニット諮問委員会(PUAC)は来週初めにも8月からの130度テスト導入案を採決するとみられているが、可決はほぼ確実との見方が強い。

    しかし重要なのは、メルセデスが130度条件でも適合しているとされる点だ。先週、HPPブリックスワース拠点で115度の予備検査が行われ、各シリンダーに二重マイクロチャンバーを持つ内燃機関が規定内であることが確認された。

    小さな2ccの副燃焼室に通じる微小孔は、より高温・高圧条件下で閉塞し、ユニットは18:1の圧縮比で作動可能になるとされる。この構造が現行規則の範囲内で設計されている点が、議論の核心だ。

    したがって、もし130度テストが導入されてもメルセデスが大幅な改修を強いられる可能性は低いと見られている。むしろ他メーカーがADUO(追加開発機会)を活用し、マイアミGP後に出力差が2%認定されればアップグレードを申請する構図が現実味を帯びる。

    8月というタイミングは偶然ではない。理論上、追随側が対応策を準備する時間を確保するための猶予期間と解釈できる。

    燃料と“18:1”の戦略的意味
    さらに注目されるのが燃料の問題だ。メルセデスのパートナーであるペトロナスはe-fuelのホモロゲーションをまだ取得していないとされる。圧縮比問題の結論を待って最終仕様を決める戦術的判断だった可能性も指摘されている。

    18:1条件で最大熱効率を引き出せる燃料を投入できれば、出力向上と燃費改善の両立が可能となる。搭載燃料を減らせば車両重量が軽減され、ロングランでのタイヤマネジメントにも利点が生じる。

    トト・ヴォルフはこれを「コップの中の嵐」と表現したが、FIAはシーズン開幕を前に論争を終わらせる必要があったと見る。

    トンバジスは最後にこう語っている。

    「この問題は重要ではあるが、何カ月も騒ぐほどのものかと言われれば、正直そうは思わない」

    FIAが選んだ投票というプロセスは、法的判断ではなく政治的均衡を取るための手段だった。その均衡の中で、少なくとも現時点ではメルセデスが最も有利な位置に立っていると見る向きは少なくない。

  • F1で浮上したリフト&コースト問題 FIAがMGU-K出力100kW削減を検証

    F1で浮上したリフト&コースト問題 FIAがMGU-K出力100kW削減を検証

    2026年F1バーレーンテスト最終日、FIA(国際自動車連盟)は各チームに対し、MGU-Kの出力を一時的に引き下げた状態での走行テストを要請した。目的は、電力回生のために直線で長時間アクセルを戻す「リフト&コースト」を減らし、レースダイナミクスとオーバーテイク機会の改善につなげることにある。

    現在のレギュレーション下では、バッテリー再充電の制約がドライバーに大きな影響を与えており、F1コミッションでもその是正が議題に上った。FIAとチームは、短期間で導入可能な対策の検討を開始している。

    バーレーンで行われているテストでは、MGU-Kの最大出力を350kWから250kWへ100kW削減した構成で複数のランが実施されている。あるチーム代表は「我々は250kW仕様で走行している。200kWでのランも試し、違いを評価する予定だ」と明かした。

    出力を下げることで必要な再充電量が減少し、標準モードとオーバーテイクモードの出力差を拡大できる可能性がある。これはバーレーンで課題として浮上したテーマのひとつだ。

    並行して、バッテリーの回生能力そのものを引き上げる案も検証されている。現行規則では、ハーベスティング(内燃エンジンによる回生)時のMGU-K出力は250kWを上限としている。

    国際自動車連盟 F1

    マクラーレンは、回生出力を350kWまで維持できるモードを提案し、実走テストを行っている。現状では、リフト&コースト時には350kWでの回生が可能である一方、通常のハーベスティングは250kWに制限されている。両者を同等とすれば、リフト&コーストの必要性は低減されると見られている。

    関係者の一部は、これらの修正がメルボルン開幕戦前に導入される可能性もあると指摘する。アルバート・パークは年間カレンダーの中でもエネルギー回生面で特に厳しいサーキットとされるためだ。

    しかしFIAは慎重な姿勢を崩していない。FIAシングルシーター部門の責任者ニコラス・トンバジスは次のように語った。

    「最初の本当の試金石はメルボルンの週末になる。我々がどの段階にあるのかを見極め、最初の評価を行う。介入が必要であれば、スポーツの利益のために決断する。これは短距離走ではなくマラソンだ。我々には5年という時間と、行動するための明確な手段がある」

    さらにトンバジスはこう続けた。

    「作業の90%は完了していると考えているが、追加で10%の調整が必要かもしれない。我々は介入する準備ができている。これは極めて張り詰めた綱渡りだ。ショー、ドライバー、そしてこのスポーツに巨額を投資する人々を満足させなければならない。正しいバランスを見つけるのは簡単ではない」