カテゴリー: FIA(国際自動車連盟)

  • FIAが2026年F1レギュレーション再検証へ ベアマン事故受け見直し議論開始

    FIAが2026年F1レギュレーション再検証へ ベアマン事故受け見直し議論開始

    2026年F1日本GPで発生したオリバー・ベアマンの大クラッシュを受け、FIAは現行レギュレーションに関する公式声明を発表した。スプーンカーブでの事故では、前走車との極端な速度差が引き金となり、回避行動の末にコース外へ飛び出してバリアに激突。衝撃は約50Gに達したとされる。

    事故の背景には、2026年レギュレーション特有のエネルギーマネジメントによる“クロージングスピードの増大”があると見られており、FIAはこの点を踏まえて運用面の検証を進める方針を明らかにした。

    事故の背景には、2026年レギュレーション特有のエネルギーマネジメントによる“クロージングスピードの増大”があると見られており、FIAはこの点を踏まえて運用面の検証を進める方針を明らかにした。

    FIA「データに基づき最適化される設計」
    FIAは声明の中で、2026年レギュレーションが導入以来、チーム、パワーユニットメーカー、ドライバー、FOMとの間で継続的に議論されてきたと説明した。

    「これらのレギュレーションは設計上、特にエネルギーマネジメントに関して複数の調整可能なパラメータを含んでおり、実際のデータに基づいて最適化できるようになっている」

    とし、現行規則が柔軟な調整を前提としていることを強調した。

    シーズン序盤後に正式レビューへ
    また、関係者の間ではシーズン序盤終了後に体系的なレビューを実施することで一致していると明かした。

    「十分なデータを収集・分析するため、開幕フェーズ後に構造的な見直しを行うことはすべての関係者の共通認識である」

    この方針に基づき、4月には複数の会議が予定されており、新レギュレーションの運用状況と改善の必要性が評価される。

    国際自動車連盟 F1レギュレーション

    エネルギー管理の変更は慎重に判断
    FIAは特にエネルギーマネジメントに関連する変更について、慎重な対応が必要であると強調した。

    「いかなる調整も、慎重なシミュレーションと詳細な分析を必要とする」

    とし、即時のルール変更ではなく、データ主導での段階的な判断を行う姿勢を示した。

    さらに、

    「現時点で変更内容について推測するのは時期尚早である」

    と述べ、具体的な改訂には踏み込まなかった。

    “速度差問題”が議論の焦点に
    今回のベアマンの事故は、前走車に対して約50km/h近い速度差が発生した状況で起きたとされ、2026年マシン特有のエネルギー回生・放出の非対称性が改めて問題視される形となった。

    高速域でのエネルギー回収や“スーパークリッピング”によって、ストレートおよびコーナー進入で急激な速度変化が生じる現象は、すでにドライバーからも懸念が示されている。

    FIAは今後も関係者と連携しながら検証を進め、「安全性は常に最優先事項である」と強調。今回の事故を契機に、2026年F1の競技バランスと安全性の両立に向けた議論が本格化する見通しだ。

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  • メルセデスF1フロントウイング論争 FIAが違反否定「悪意も性能影響もない」

    メルセデスF1フロントウイング論争 FIAが違反否定「悪意も性能影響もない」

    2026年F1中国GPで話題となったメルセデスのフロントウイングを巡る論争について、FIAの技術責任者ニック・トンバジスが見解を示した。問題視されたのは、本来は単一の滑らかな動きであるべき構造が、二重の動きを見せていた点だ。

    しかしFIAはこれを違反とは判断せず、スチュワード(コミッショナー)への付託も行わなかった。トンバジスは「悪意はなく、パフォーマンスへの影響もない」と明言し、問題の深刻性を否定している。

    FIAは「違反ではない」と明確化
    ニック・トンバジス(FIA技術責任者)は今回の件について次のように説明した。

    「我々は新しいレギュレーションに対処している。適応期間が存在するのは自然なことであり、すべてのチームに対して一貫したアプローチを取っている」

    今回のフロントウイングの挙動についても、不正行為とは見なしていないことを強調している。

    「小さな不規則性について議論する場合、すぐに全員をスチュワードに持ち込むのが正しいアプローチではない」

    “警告ベース”で運用するFIAの姿勢
    トンバジスは、FIAがこうしたケースにどう対応しているかについても言及した。

    「不正がないと確信できる場合、我々はチームと協力して対応し、スチュワードに持ち込むことはしない。小さな問題から大きな前例や問題を生まないためだ」

    今回の件は視覚的に分かりやすかったことで注目を集めたが、その重要性は限定的だったと説明している。

    「目に見えるものだったため皆が気づき、騒ぎになった。しかし、これほど強調されるべきものではなかった」

    また、違反の扱いについても明確な基準を示した。

    「すべてのチームは理解しているはずだが、パラメータが守られていない場合、我々はまず警告を与える。繰り返されれば、その時はスチュワードに持ち込まざるを得ない」

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    複雑化するレギュレーションの現実
    今回の問題の背景には、近年のF1レギュレーションの複雑さがあるとトンバジスは指摘する。

    「現在のF1マシンは極めて複雑であり、レギュレーションにも多くの細部が存在する。それらは時間とともに発見されていくものだ」

    さらに、すべてを厳格に取り締まった場合の現実についても率直に語った。

    「もし毎週末すべてに対して厳密に対応すれば、マシンの半分がスチュワード送りになるだろう」

    今回のメルセデスの件は、2026年レギュレーション時代における“グレーゾーン”の扱いを象徴する事例となった。FIAは厳罰主義ではなく、段階的な是正とチームとの協調を優先する姿勢を改めて示した形だ。

  • F1日本GP FIAの鈴鹿予選ルール変更にドライバー困惑「遅くなるだけ」

    F1日本GP FIAの鈴鹿予選ルール変更にドライバー困惑「遅くなるだけ」

    FIA(国際自動車連盟)は2026年F1日本GPを前に、予選におけるエネルギー運用に関するルールを変更した。鈴鹿サーキットではエネルギー回収量の上限が引き下げられたが、この決定はドライバーの間で賛否が分かれている。

    今回の変更は、過度なエネルギーマネジメントによって予選の迫力が損なわれているとの懸念を受けたものだが、一部からは逆にパフォーマンス低下を招く可能性が指摘されている。

    エネルギー回収上限を9MJから8MJへ引き下げ
    FIAは木曜朝、鈴鹿での予選においてエネルギー回収の上限を9.0MJから8.0MJへと削減すると発表した。

    これはリフト・アンド・コーストやスーパークリッピングといったエネルギー回収行為を抑制し、ドライバーの純粋なパフォーマンスをより引き出す狙いがある。

    2026年の新レギュレーションでは、内燃機関と電動出力がほぼ50対50で構成されており、これによりドライバーは従来のように全開で走り続けることが難しくなっている。

    ベアマン「むしろ遅くなる」
    オリバー・ベアマンは今回の変更について、懐疑的な見方を示した。

    「単純に僕たちはさらに遅くなるだけだと思う」

    「確かにリフト・アンド・コーストをしなくてよくなるのはいい面もある。でも結局はエネルギーを回収しないといけない」

    「シミュレーターよりも1MJ少ない状態で走ることになるから、エネルギーがない時間が増えてしまう」

    「同じ目的を達成するなら、もっと良いやり方があると思う。例えば全開時でもマイナス350キロワットで回収できれば、もっと楽になるはずだ」

    「これも一つの解決策ではあるけどね」

    さらにベアマンは、鈴鹿の特徴的な高速コーナーにも影響が及ぶ可能性を指摘した。

    「このサーキットの魅力のいくつかは、今年は弱まるかもしれない」

    「デグナー1やスプーンでエネルギー回収をしなければならない状況になるからだ」

    「デグナーはグリップではなくパワー制限のコーナーになるかもしれない。それは少し残念だ」

    ノリスは慎重姿勢「走ってみないと分からない」
    一方でランド・ノリスは、実際に走行するまでは評価を保留する姿勢を示した。

    「変化はあると思う。でもまずは走ってみないと分からない」

    「何かがなくなる一方で、別の要素が変わることになる」

    「サーキットによっては良くなるところもあるし、あまり変わらないところもあると思う」

    「ここ鈴鹿では少し良くなるはずだと思うけど、劇的に変わるわけではない」

    また、鈴鹿の魅力そのものについては否定した。

    「このコースが台無しになることは絶対にない」

    「ただ、これまでほどスペクタクルにはならないと思う」

    「例えばスプーンではこれまで信じられないスピードで進入していたけど、今は違う走り方になる」

    「それでも予選で限界まで攻める感覚は変わらないし、素晴らしいコースであることに変わりはない」

    FIAの意図はエネルギー管理の過度な影響を抑えることにあるが、実際には「速さ」や「見応え」にどのような影響を及ぼすのか。鈴鹿での走行が、その答えを示すことになりそうだ。

  • F1日本GP FIAが緊急ルール変更 予選エネルギー制限を8MJに引き下げ

    F1日本GP FIAが緊急ルール変更 予選エネルギー制限を8MJに引き下げ

    2026年F1シーズンで議論を呼んでいるエネルギーマネジメント問題を受け、FIAとパワーユニットメーカーは日本GPに向けて予選ルールの緊急変更を決定した。

    予選での“全開アタック”が損なわれているとの懸念が高まる中、今回の措置は鈴鹿サーキット特有のエネルギー事情にも対応したものとなる。

    予選のエネルギー回収量を8MJへ引き下げ
    FIAと各メーカーの協議、およびシミュレーションの結果、日本GPの予選では1周あたりの回生エネルギー上限が従来の9MJから8MJへ引き下げられることが決まった。

    これにより、全体のエネルギー使用量は減少し最高速はやや低下する見込みだが、ドライバーが過度にエネルギー回収を意識する必要が減ると見られている。

    特に問題視されていたのが“スーパークリッピング”と呼ばれる現象で、フルスロットル状態から回生モードに切り替えることでバッテリーを充電する代わりに速度が落ちる挙動だ。

    今回の変更により、このスーパークリッピングの必要性は1周あたり最大で約4秒分削減されると見込まれている。

    FIAは声明で次のように説明した。

    「この調整は、予選を純粋なパフォーマンス勝負として維持する重要性を強調してきたドライバーやチームからのフィードバックを反映したものだ」

    「2026年レギュレーション下での最初の数戦は運用面では成功しており、今回の変更は実戦データをもとに最適化を進める通常のプロセスの一環である」

    「今後数週間にわたり、エネルギーマネジメントに関するさらなる議論を続けていく」

    日本グランプリ

    鈴鹿は“エネルギー不足サーキット”
    今回の措置の背景には、鈴鹿サーキットの特性がある。

    鈴鹿は高速コーナーが連続するレイアウトで、強いブレーキングポイントが少ないためバッテリー回生が難しい“エネルギー不足型”のサーキットとされている。

    そのため、ドライバーはラップ中に意図的に速度を落として回生する必要があり、純粋なアタックラップの質が損なわれる懸念があった。

    マクラーレンのパフォーマンス担当テクニカルディレクター、マーク・テンプルは次のように述べた。

    「メルボルンに近い状況になると考えている」

    「鈴鹿は象徴的なコーナーを持つ非常にユニークなサーキットだが、エネルギー面では厳しいコースだ」

    「ターン1進入など、いくつかの区間ではエネルギー回収の影響が現れるだろう。シャシーやタイヤと同様に重要な最適化ポイントになる」

    また、ウィリアムズのチーフエンジニア、ポール・ウィリアムズも次のように指摘した。

    「鈴鹿では低燃料・高燃料の両方でスーパークリッピングの影響が大きくなると予想している」

    「高速で流れるようなコース特性によりコーナリング時間が短く、結果としてエネルギーマネジメントの負荷が高くなる」

    「そのため、リフト・アンド・コーストを使ってエネルギーを管理するチームも出てくるだろう」

    今回の措置はあくまで暫定的な対応であり、より抜本的な改善策はマイアミGP以降に向けて検討が進められている。

  • 2026年F1カレンダー激変か イラン情勢で最大6戦消滅の可能性

    2026年F1カレンダー激変か イラン情勢で最大6戦消滅の可能性

    2026年F1シーズンは、イラン情勢の緊迫化によりさらなる開催中止のリスクに直面している。すでにバーレーンGPとサウジアラビアGPが4月開催を見送ることが決まっており、影響は中東全体に広がりつつある。

    パドックでは、シーズン後半のグランプリにも影響が及ぶ可能性が懸念されている状況だ。

    バクー開催に警戒感 イラン隣接が懸念材料
    オーストリア紙の報道によれば、特に注視されているのがアゼルバイジャンGPだ。

    同国はイランと国境を接しており、チームやドライバーの間で安全面への懸念が高まっているとされる。報道では「さらなるグランプリ開催が可能かどうかを懸念している」とされ、現場の警戒感は日に日に強まっている。

    カタール・アブダビも影響圏内 シーズン終盤に暗雲
    影響はバクーにとどまらない可能性がある。

    報道では、シーズン最終戦を含むカタールGPとアブダビGPも監視対象となっており、情勢次第では開催が危ぶまれる状況だと伝えられている。

    現時点でF1側は具体的な中止判断には至っていないものの、パドック全体は「エスカレーションは排除できない」との見方で一致しており、慎重な姿勢が続いている。

    財政面にも打撃 すでに1億ユーロ規模の損失
    経済的な影響も無視できない。

    バーレーンとサウジアラビアの開催見送りにより、F1の商業権保有者には約1億ユーロの損失が発生したとされている。また、短期的に代替開催地を用意することは難しい状況だ。

    もしアゼルバイジャン、カタール、アブダビまで開催不能となれば、年間カレンダーはわずか17戦に縮小する可能性がある。

    2026年F1カレンダーは不確実性の中へ
    現時点では各レースの開催可否は流動的だが、地政学リスクがシーズン全体に影を落としているのは明らかだ。

    F1はこれまでも様々な危機を乗り越えてきたが、今回の情勢は中東ラウンド全体を揺るがす規模となっており、今後の判断が注目される。

  • ニューウェイの“誇張”逆効果 FIAがアストンマーティン・ホンダF1救済を拒否

    ニューウェイの“誇張”逆効果 FIAがアストンマーティン・ホンダF1救済を拒否

    アストンマーティンとホンダが抱えるパワーユニット問題をめぐり、FIAが即時の救済措置に動く気配はないと報じられた。報道では、エイドリアン・ニューウェイが問題の深刻さを強調して早期対応を促そうとしたものの、FIAの判断には大きな影響を与えなかったとされている。

    アストンマーティンはシーズン序盤から厳しい状況に置かれており、ホンダ製パワーユニットのさまざまな問題によって出遅れを強いられているという。

    うしたなか、次戦F1日本GPが行われる鈴鹿で、ホンダが最初の本格的な改善策を投入する可能性も伝えられている。

    FIAはADUO前倒し適用に即応せず
    アストンマーティンはホンダとの関係において難しい立場に置かれているとされる。パワーユニットに発生している数々の問題が、開幕からチームを苦しい状況に追い込んでいるという。

    そのなかで報じられたのは、エイドリアン・ニューウェイの対外的な発言が、チーム内部でも波紋を広げているという点だ。アストンマーティン内には、ニューウェイのコメントがホンダとの関係を悪化させたと見る向きもあるとされた。

    さらに記事では、流れを変えるためにアストンマーティンがエイドリアン・ニューウェイに代えてジョナサン・ウィートリーをチーム代表に据えたとも伝えている。一方で、ニューウェイがFIAに働きかける形で問題の大きさを“誇張”し、ADUOの早期適用を引き出そうとした試みは、思惑通りには進まなかったという。

    英オートスポーツ誌のアンドリュー・ギャリソンの情報として、次のように報じられている。

    「エイドリアン・ニューウェイはメルボルンで、ホンダの問題を誇張して見せることでADUOの早期適用を引き出そうとしたようだが、これはほぼ無視され、FIAもホンダに対してADUOを承認する即時の兆候を示さなかった」

    「ただし、FIAは2戦の中止を受けて、ADUOの初回適用を早めることを検討しているようだ。私はそれは合理的な措置だと思う」

    報道によれば、FIAがアストンマーティンの問題に対して直ちにADUOを認める兆候は見られないという。ただ、バーレーンGPとサウジアラビアGPの中止を受け、制度全体の初回適用時期を前倒しすることについては検討が進んでいるようだ。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    鈴鹿でホンダが“最初の本格対応”に動く可能性
    この判断はアストンマーティンにとって大きな痛手になり得るが、次戦のF1日本GPでは状況が変わる可能性もあるようだ。

    同じくギャリソンは、ホンダおよびアストンマーティンの関係者筋の話として、ホンダが鈴鹿でパワーユニットに大きな改善を持ち込む見通しだと伝えている。

    「さくらの施設とシルバーストンをよく知るベテランたちから、ホンダの最初の本格的な一手は母国GPの鈴鹿になる見込みだと聞いている」

    「もしそうなら心強い。一方で、ニューウェイやシャシー側のチームが、たとえ2〜3センチでも余裕を持たせるようなパッケージ変更をホンダのパワーユニットに対して行ったという話は聞こえてきていない」

    もっとも、このホンダ側の見通しがどこまで正確なのかはまだ不透明だ。記事では、ホンダは中国GP前にもパワーユニット問題への対策を約束していたものの、それは実現しなかったとしている。

    実際に、上海でのフェルナンド・アロンソのオンボード映像は、チームが抱える振動問題の深刻さを映し出していたとも報じられた。

    鈴鹿はホンダにとってホームレースであり、ここで大幅な改善を実現できるかどうかは、アストンマーティンの2026年シーズン序盤を左右する大きな焦点になりそうだ。

    Source: F1 OVERSTEER

  • ADUOとは何か?ホンダF1を救う可能性があるFIAの救済制度

    ADUOとは何か?ホンダF1を救う可能性があるFIAの救済制度

    2026年F1レギュレーションでは、パワーユニットの基本設計がホモロゲーションによって封印される一方、性能差が固定化されるリスクも高まっている。そうした中でFIAが導入したのが、出遅れたメーカーに追加開発の余地を与える「ADUO」という救済制度だ。

    これは、メルセデス、フェラーリ、レッドブル・パワートレインズ、ホンダ、アウディの5メーカーのうち、基準性能から大きく遅れたメーカーに対し、通常より多くのアップグレード機会やテストベンチ使用枠などを認める仕組みである。

    2026年からの厳しい開発制限下で、勢力差を是正する“安全網”として機能することが期待されている。

    ADUOは「Additional Development and Upgrade Opportunities」
    ADUOは「Additional Development and Upgrade Opportunities」の略で、日本語にすれば「追加開発・改良機会」といった意味になる。

    2026年から導入される新世代パワーユニットは、1.6リッターV6という基本構成こそ維持されるものの、従来のパワーユニットとは中身が大きく異なる。MGU-Hは廃止され、内燃機関と電力の比重はこれまで以上に拮抗したものとなる。

    この新ルール下では、2026年3月1日に各メーカーが設計をFIAへ提出し、ホモロゲーションを受けたうえで基本仕様が封印される。性能向上のための自由な開発は大きく制限されるため、もし初期設計で出遅れれば、その不利を長期間引きずるおそれがある。

    そこでFIAは、著しく後れを取ったメーカーに対し、通常より多くの改良機会を与える仕組みとしてADUOを用意した。

    どんなメーカーがADUOの対象になるのか
    ADUOの対象となるかどうかは、各メーカーのレース結果や順位ではなく、FIAが継続的に測定するエンジン性能によって判断される。

    具体的には、各メーカーのパワーユニットに搭載された内燃機関について「ICE Performance Index」が算出される。これはメーカー自身とカスタマーチームから提出されるデータや補足情報をもとに作られる指標で、この数値によって各社の性能差が比較される。

    ここで重要なのは、オン・トラックでの成績は判断材料にならないという点だ。つまり、仮にあるメーカーが実戦で速さを隠したり、戦略上の事情で目立たない結果に終わったとしても、FIAは純粋なICE性能を見て判断するため、優位性を“偽装”することはできない。

    ADUOで認められる追加措置
    ADUOが認められたメーカーには、いくつかの追加措置が与えられる。

    まず、規定されたコンポーネントについて通常より多いホモロゲーションアップグレードが可能になる。さらに、パワーユニット用のテストベンチ使用時間を延長できるほか、コストキャップ報告において一定の下方調整も認められる。

    対象となる部品はかなり広く設定されており、ほぼ大半のパワーユニット構成部品が含まれる。一方で、燃料ポンプやインジェクター、ノックセンサー、各種温度・電気・規制関連センサーなど、一部は対象外とされている。

    どの程度遅れていると追加アップグレードを得られるのか
    基準は、最も優れたICEに対してどれだけ劣っているかで決まる。

    ICE Performance Indexが最良のエンジンより2%以上4%未満低いメーカーには、シーズンNに1回、さらに翌年のシーズンN+1に1回、追加のホモロゲーションアップグレード機会が与えられる。

    一方で、4%以上低い場合には、シーズンNに2回、シーズンN+1にも2回の追加アップグレード機会が与えられる。

    ただし、この権利はシーズン内で累積しない。FIAが最初にADUO対象と認定した時点で付与される仕組みであり、そのシーズン中に使わなかった分は失効する。

    いつアップグレードを投入できるのか
    各シーズンは4つの等分された評価期間に分けられる。2026年は本来24戦カレンダーを想定しており、6戦ごとに区切って評価する形だ。

    各評価期間の終了後、ADUO対象と判断されたメーカーは、その次の期間の最初のレースからアップグレードを投入できる。

    たとえば2026年最初の6戦終了時点で追加アップグレード権を得た場合、新仕様を投入できるのは第7戦からとなる。12戦終了後に権利を得たなら、第13戦から使える。

    記事時点では、バーレーンGPとサウジアラビアGPの中止により、マイアミGPとカナダGPの間に置かれていた既存のADUO判定タイミングを維持するかどうかが議論されている。

    F1レギュレーション 国際自動車連盟 ホンダ

    MGU-Kを例にするとどうなるのか
    ADUOの実際のイメージをつかむには、MGU-Kの例が分かりやすい。

    MGU-Kは定義リスト上の26番目の項目で、通常ルールでは2028年シーズン開幕時と2030年シーズン開幕時にしか変更できない。

    しかし、仮にあるメーカーが最初の判定時点でADUOによる追加アップグレード権を得ており、そのメーカーがMGU-Kの性能不足を問題視していた場合、2028年まで待たず、次の投入可能タイミングで改良版MGU-Kを導入できる。

    つまりADUOは、通常の開発凍結によって生じる“待ち時間”を短縮し、後れを取ったメーカーに巻き返しの余地を与える制度だと言える。

    変更時に必要な手続き
    メーカーがADUOによる変更、または通常の開発許可に基づく変更を行う場合には、使用する最初のレースウイークエンドの少なくとも14日前までに、更新版のホモロゲーション資料をFIAへ提出しなければならない。

    また、信頼性、安全性、コスト削減、供給問題への対応といった限定的な目的であれば、ごく小規模な更新も認められる場合がある。さらに、ブランド変更、サプライヤー変更、部品番号変更など、機能や信頼性にほとんど影響しない修正も許可対象になり得る。

    ホンダにとってADUOは何を意味するのか
    ADUOは、2026年の新規則で苦戦したメーカーを完全に見捨てないためのFIAの救済策である。

    もしホンダが新世代パワーユニットで序盤に遅れを取ったとしても、ICE Performance Indexで一定以上の差が確認されれば、通常より早い段階で改良部品を投入できる可能性がある。しかも対象はエンジン本体だけでなく、多くのパワーユニット関連部品に広がっている。

    その意味でADUOは、単なる技術規定の細則ではなく、2026年以降の勢力図を固定化させないための重要な“保険”であり、ホンダを含む後発・苦戦メーカーにとっては大きな生命線になり得る。

  • FIAがF1レギュレーション変更を検討 中東2戦中止でPU開発評価に影響

    FIAがF1レギュレーション変更を検討 中東2戦中止でPU開発評価に影響

    2026年F1シーズンのカレンダーに大きな変動が生じたことで、FIAがパワーユニット開発に関する重要な評価スケジュールの見直しを検討している。バーレーンGPとサウジアラビアGPが中東情勢の影響で開催見送りとなり、エンジン開発の進行に直接的な影響が及んでいるためだ。

    これにより、メルセデスが築く優位性を他メーカーがどのタイミングで是正できるかという構図にも変化が生じる可能性がある。特にフェラーリやアウディといったライバル勢にとっては、開発機会の前倒しが焦点となっている。

    ADUO制度の評価タイミングにズレ
    FIAは、ADUO(追加開発・アップグレード機会)制度の運用スケジュールについて調整を検討していると報じられている。

    現行レギュレーションでは、シーズンを通じて4つの観測期間が設けられ、6戦ごとに内燃エンジンの性能評価が実施される。この評価は複数の指標をもとにしたパフォーマンスインデックスで判断される仕組みだ。

    当初、この最初の重要な評価はマイアミGP(第6戦)で行われる予定だった。しかしバーレーンとサウジアラビアの2戦が消滅したことで、マイアミは第4戦へと繰り上がり、評価タイミングはモナコGP(6月)まで後ろ倒しとなる見込みだ。

    この遅延は、開発の遅れているメーカーにとって大きな不利となり得る。

    メルセデス優位とライバルの焦り
    ADUO制度は、トップからの性能差に応じて開発支援が段階的に付与される仕組みとなっている。

    トップから2%以上遅れているメーカーには追加の開発機会が与えられ、4%以上の差があればさらに優遇措置が拡大する。対象は84のコンポーネントに及び、通常は年間1回のアップデートに制限されるが、該当メーカーにはアップグレード回数やダイノ使用時間、予算制限の緩和が認められる。

    このため、現時点で基準となるパワーユニットを持つメルセデスに対し、フェラーリやアウディなどのライバル勢は評価タイミングの前倒しを強く望んでいる。

    エンジン開発はシャシー開発よりもサイクルが長く、ホモロゲーションの制約も厳しいため、ADUOの適用が遅れるほど差を詰める機会は限られてしまう。

    国際自動車連盟 F1レギュレーション

    FIAはスケジュール修正を提案か
    こうした状況を受け、FIAはカレンダー変更に合わせた評価期限の見直しを提案する可能性が高いとされている。

    この案が実現すれば、開発が遅れているメーカーにとっては追い上げのチャンスが早まることになる。一方で、現在優位に立つメルセデスのみが反対に回る可能性があるものの、全体の合意形成は比較的容易と見られている。

    なお、今回のレース中止によってもチームの予算上限に変更はなく、現行規定では「24戦以下」であれば2億1500万ドルの上限は据え置かれる。カレンダーが24戦を超えた場合にのみ増額が適用される仕組みだ。

  • アストンマーティン・ホンダF1 FIAが介入か 日本GPで出力制限の可能性

    アストンマーティン・ホンダF1 FIAが介入か 日本GPで出力制限の可能性

    アストンマーティン・ホンダの2026年シーズン序盤の苦戦に対し、FIAが介入する可能性が浮上している。中国GPでのフェルナンド・アロンソの走行映像をきっかけに、安全面への懸念が急速に高まっている。

    問題となっているのは、ホンダ製パワーユニットに起因するとされる深刻な振動だ。チームはすでに信頼性の問題に直面しているが、今回のケースはそれを超え「ドライバーの身体的安全」に関わる領域へと発展している。

    アロンソの異例行動が波紋
    中国GPのレース中、フェルナンド・アロンソはストレート上で複数回ステアリングから手を離す様子が確認された。これは振動による負担を一時的に軽減するための行動であり、通常では考えられない異例の対応だ。

    アロンソは32周目にリタイアするまでに、手や足の感覚が失われつつあったとされる。シーズン開幕前にはエイドリアン・ニューウェイが「連続周回を重ねれば神経に永久的なダメージを与えるリスクがある」と警告しており、その懸念が現実味を帯びた形だ。

    FIAがテレメトリーを精査
    この状況を受け、FIAはアロンソおよびランス・ストロールのテレメトリーデータの詳細な分析に着手した。報道によれば、問題が単なる信頼性を超え「身体的安全を脅かす」と判断された場合、FIAには介入義務があるとされる。

    その結果次第では、日本GPに向けてホンダに対しエンジンマッピングの制限、あるいは出走停止措置が求められる可能性もある。もし実現すれば、ホームレースでの大きな打撃となる。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    日本GPでの屈辱的シナリオも現実味
    仮に出力制限が課された場合、鈴鹿のような高速セクションを持つサーキットではパフォーマンス低下は避けられない。一方で、安全確保が最優先である以上、FIAが強硬な判断を下す可能性は否定できない。

    振動の原因が短期間で解決されなければ、アストンマーティンは競争力だけでなく参戦継続そのものが問われる状況に直面する。

    ニューウェイ体制にも影響か
    こうした混乱の中で、エイドリアン・ニューウェイの役割にも注目が集まっている。チーム代表と技術責任者を兼任する体制については、負担の大きさを懸念する声が上がっている。

    すでにチームオーナーのローレンス・ストロールが体制見直しを検討しているとの報道もあり、今後は現場指揮を担う新たなリーダーの登用も選択肢となる可能性がある。

    ホンダのパワーユニット問題、そしてそれに伴う安全性の議論は、単なる技術課題を超えチーム全体の構造にまで波及しつつある。日本GPは、その分岐点となる重要な一戦になりそうだ。

    Source: F1 OVERSTEER

  • FIA 2026年F1レギュレーション変更はマイアミ以降 中国GPを高評価

    FIA 2026年F1レギュレーション変更はマイアミ以降 中国GPを高評価

    F1中国GPの週末は、2026年F1レギュレーションに対する即時の是正措置を不要と判断させる内容になった。統括団体側は、上海で行われたスプリントと決勝を十分に見応えのあるものと受け止めており、少なくともマイアミまでは技術規則とスポーティングレギュレーションに手を加えない見通しとなった。

    開幕戦オーストラリアのあとには、FIA(国際自動車連盟)のシングルシーター部門責任者ニコラス・トンバジスが、中国GP後に規則の一部を即座に修正するための会議が開かれる可能性に言及していた。

    しかし上海の週末を経て、そのシナリオはいったん後退した。

    上海のあとに緊急会議は行われず
    オーストラリアでの開幕戦のあと、FIA技術部門トップのニコラス・トンバジスは、中国GP後に技術規則およびスポーティングレギュレーションの一部を直ちに見直すための会議が開かれる可能性があると語っていた。

    だが、上海での週末を終えた時点で、この見通しは少なくともマイアミまで先送りされた。

    F1レギュレーション 国際自動車連盟

    F1首脳陣は拙速な対応を回避
    『ザ・レース』の報道によると、F1のガバナンス側は、現行規則に介入する場合でも、より慎重に行動計画を練ったうえで判断するのが望ましいと考えている。

    そのため、中国GP直後に何らかの修正を断行するのではなく、いったん状況を見極める方向へと舵を切った。

    中国GPは“懸念された失敗”にはならず
    上海で行われたスプリントと決勝は、こうした判断を下す立場の関係者から見て、十分にスリリングなレースだったと評価された。

    シーズン開幕前に一部で懸念されていたような“惨事”には程遠い内容だったため、2026年F1レギュレーションに対する即時の介入は見送られることになった。