カテゴリー: FIA(国際自動車連盟)

  • ジョージ・ラッセル FIAのF1レギュレーション協議を高評価「声を聞いてくれた」

    ジョージ・ラッセル FIAのF1レギュレーション協議を高評価「声を聞いてくれた」

    ジョージ・ラッセルが、2026年F1レギュレーションを巡るFIA(国際自動車連盟)との協議について「これまでで最も協力的だった」と異例とも言える高評価を与えた。

    FIAは2026年F1パワーユニットレギュレーションに対する懸念を受け、4月を通じてドライバー、チーム、関係者を交えた会合を実施。バーレーンGPとサウジアラビアGPの中止によって生まれた空白期間も利用され、議論が本格化した。

    “ドライバー不在”だった2026年レギュレーション策定
    今回の議論で焦点となったのは、2026年F1マシンで問題視されていた極端な速度差だった。

    特に日本GPで発生したフランコ・コラピントとオリバー・ベアマンの場面は、電力回生やエネルギー配分の影響によって、接近速度が危険なレベルに達する可能性を示したケースとして関係者の間でも議論になっていた。

    GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の理事を務めるラッセルは、もしドライバーが当初からレギュレーション策定に関与していれば、こうした問題は事前に予見できたと指摘する。

    「FIAと何人かのドライバーの間で本当に良い話し合いができたと思うし、彼らは懸念に耳を傾けてくれた」

    「この件に関して言えば、これまでで最も協力的だったと思う。それはポジティブなことだ」

    “閉鎖的なFIA”からの変化
    FIAとドライバー側の関係は近年、必ずしも良好とは言えなかった。

    特に2026年F1レギュレーション策定では、メーカーや技術側の議論が優先され、実際にマシンを走らせるドライバー側の意見が十分に反映されていないとの不満が以前から存在していた。

    そのため、ラッセルがここまで明確にFIAの姿勢を評価したこと自体が、現在の協議体制の変化を象徴している。

    「将来のレギュレーション策定でも、もっと我々を関与させたいという結論になった」

    「我々なら、実際に問題が起きる前に、いくつかの課題を予見できたかもしれない」

    今回マイアミGPから導入される修正では、過度なエネルギーハーベストによる速度差を抑制する方向へ調整が進められている。

    ラッセルも、その効果に一定の期待を示した。

    「主な目的は、フランコ・コラピントとオリバー・ベアマンの件で見られたような大きな接近速度をなくすことだった」

    「この新しいルールなら、あのインシデントは起きなかったと思う。それはポジティブなことだ」

    2026年F1レギュレーションは“完成形”ではない
    今回の動きは、2026年F1レギュレーションが依然として“調整段階”にあることも浮き彫りにしている。

    FIAはすでにマイアミGPでエネルギー運用ルールを一部修正しており、さらに2027年以降には内燃エンジン比率拡大や電動出力縮小など、より大規模な見直し案も議論されている。

    その中で重要になっているのが、“実際に運転する側”の視点だ。

    FIAがドライバーをレギュレーション議論に本格的に組み込もうとしている現在の流れは、2026年F1の混乱を受けた軌道修正とも言える。今後のレギュレーション議論では、これまで以上にGPDAの存在感が増していく可能性がありそうだ。

    Source: RacingNews365

  • サウジアラビアGP“復活開催”に含み F1とFIAの判断を尊重も開催意欲は不変

    サウジアラビアGP“復活開催”に含み F1とFIAの判断を尊重も開催意欲は不変

    サウジアラビアは、イラン情勢の影響で中止となった2026年F1ジェッダGPについて、今季中の開催復活の可能性を依然として諦めていない姿勢を示した。

    独『ビルト』紙によれば、F1側も当初予定していた年間24戦体制を維持することを依然として模索しており、ジェッダGP復活案を完全には放棄していないという。

    サウジ側が「開催準備は完全だった」と強調
    2027年ダカールラリーのルート発表会がパリで行われた際、サウジアラビア自動車連盟会長のハーリド・ビン・スルタン・アル・アブドゥラー・アル・ファイサル王子が地域情勢について言及した。

    「現在我々が置かれている状況や、この地域で起きた出来事を無視することはできない」

    「疑問を生んだ出来事ではあったが、同時に答えも示された」

    「サウジアラビアが安定していること、我々の体制が強固であること、国境が安全に守られていること、そして我々が国民保護と地域安定への貢献に集中し続けていることが証明された」

    また、F1開催に向けた準備は完全に整っていたと強調した。

    「ここ数週間で明確に示された」

    「我々はジェッダでF1を開催する準備ができていた。他のイベントについても同様だ。完全に準備は整っていた」

    「レースを実施しない決定はF1とFIAによるものだった。我々はそれを尊重している。しかし、我々の開催意欲は変わっていない」

    「むしろ今回の状況によって、イベント運営だけでなく、スポーツが持つ意味そのものへのコミットメントはさらに強まった」

    F1は24戦維持を模索か
    今回の発言は、サウジ側がジェッダGPの年内復活開催に依然前向きであることを明確に示すものとなった。

    現時点で代替開催日程は発表されていないものの、F1側も24戦体制維持を望んでいるとされており、今後の中東地域情勢やカレンダー調整次第では復活案が再浮上する可能性も残されている。

    王子は国内の通常運営も強調した。

    「サウジアラビア王国の生活は続いており、スポーツも継続している」

    「全国のスタジアムには毎週ファンが集まり続けている」

    「それは人々が安全を感じているからであり、スポーツが王国の日常生活の不可欠な一部だからだ」

    Photo:Red Bull Content Pool

  • F1“ヨーヨー現象”を防止へ FIA技術責任者が2027年修正を説明

    F1“ヨーヨー現象”を防止へ FIA技術責任者が2027年修正を説明

    2026年F1シーズンで導入された新世代パワーユニット規則に対する批判が強まるなか、FIA(国際自動車連盟)シングルシーター部門責任者ニコラス・トンバジスが、2027年に向けて進められているルール修正の狙いを説明した。

    現在の2026年規則では、内燃エンジンと電動システムの出力比率をほぼ50対50とする構成が採用されたが、実戦では“ヨーヨー現象”とも呼ばれる不自然なエネルギーマネジメントが問題視されている。

    “ヨーヨー現象”の背景にあるエネルギー不足
    2026年F1マシンでは、ストレート途中でバッテリー残量が尽きるケースが発生し、ドライバーは次の周回へ向けてエネルギーを温存するためアクセルを戻さざるを得ない状況に追い込まれている。

    その結果、ドライバー同士がストレートで一度接近し、その後に減速と回生を繰り返す“ヨーヨー”のような展開が生まれ、従来のF1とは異なるレーススタイルへの批判が噴出していた。

    こうした問題を受け、FIAはマイアミGPから緊急的な調整を導入。さらに2027年以降に向けて、内燃エンジン出力を約50kW引き上げる一方で、電動出力を同程度削減する方向で各メーカーと原則合意に達している。

    トンバジス「防御的な走りだけにはしたくない」
    ニコラス・トンバジスは独『Auto Motor und Sport』に対し、今回の修正が“ハイブリッド放棄”ではないと強調した。

    「当初のエネルギー配分では、特定条件下で非常に早い段階でバッテリーを使い切ってしまう可能性があると認識した」とトンバジスは説明した。

    「2027年以降は内燃エンジンに少し余裕を持たせることで、エネルギーマネジメントをより安定したものにできる」

    さらにトンバジスは、現在のF1で問題視されている“防御的なレース”を避けたい考えを示した。

    「我々の目的はハイブリッドコンセプトを薄めることではない」

    「しかし、システムが完全に防御的に機能するだけの状態ではなく、ドライバーがストレートで攻め続けられる状況を確保する必要がある」

    「次の周回のためにエネルギーを残そうとして、ストレート途中でアクセルを戻さなければならないような状況は避けたい」

    2026年への前倒しは見送り
    一方で、こうした変更が2026年シーズン中に前倒し導入される可能性については否定した。

    トンバジスは「2026年用の設計はすでに大部分が凍結されている」と説明している。

    「2027年向けの調整によって、メーカーは十分な準備期間を得ながら、それぞれのコンセプトを最適化できる」

    「これは急進的な改革ではなく、進化的な改良だ」

    Photo:Alpine

  • FIAが2026年F1サーキット別“エネルギー上限”公開 モンツァは5MJ

    FIAが2026年F1サーキット別“エネルギー上限”公開 モンツァは5MJ

    2026年F1シーズンの新レギュレーションを巡っては、開幕直後から「エネルギー回生量が多すぎる」「ストレートで失速する」などの懸念が各方面から噴出していた。

    その中でFIAはマイアミGPから予選時のエネルギー回生上限を調整する新運用を導入。だが、一見すると“7MJに削減”と発表されたにもかかわらず、マイアミでは実際には「8MJ」が適用されたことで混乱も広がっていた。

    今回、『The Race』が明かした内容によって、その仕組みの全体像が見えてきた。

    「7MJ化」の正体は“基準値引き下げ”だった
    FIAは当初、2026年レギュレーションで予選時の回生上限を1周あたり8.5MJに設定していた。

    しかしコースごとの特性差が非常に大きく、サーキットによっては十分な回生が不可能になるケースが発生。特に高速サーキットでは、回生不足を補うために不自然な“充電走行”が必要になる懸念があった。

    そのためFIAは以前から、一部サーキットでは8MJまで引き下げ可能としていた。

    今回の変更は、その“引き下げ基準”自体をさらに1MJ削減し、8MJ→7MJへ変更したというものだ。

    つまり、マイアミで8MJだったのは「減っていない」のではなく、もともと9MJ想定だったものが8MJへ下げられていた形になる。

    FIAはサーキットごとに回生量を調整
    FIAは現在、各コースのブレーキング特性や部分負荷領域を分析しながら、イベントごとに予選回生上限を個別設定している。

    これは2026年型PUの最大の特徴である「電動50%・内燃50%」構造を成立させるためでもある。

    固定値にしてしまうと、モンツァのような回生が難しいコースでは極端なエネルギーマネジメントが必要になり、逆にモナコのような低速コースでは余裕が生まれすぎる。

    FIAはそのバランスを取るため、サーキット別の“エネルギーランキング”を構築している状況だ。

    2026年F1 予選エネルギー回生上限ランキング
    現時点でFIAが想定している各GPの最大回生上限は以下の通りとなっている。

    ■ モナコGP:9MJ
    ■ ハンガリーGP:9MJ
    ■ シンガポールGP:9MJ

    ■ アゼルバイジャンGP:8.5MJ
    ■ メキシコGP:8.5MJ

    ■ マイアミGP:8MJ
    ■ ベルギーGP:8MJ
    ■ スペインGP:8MJ
    ■ アメリカGP:8MJ
    ■ カタールGP:8MJ

    ■ イギリスGP:7.5MJ
    ■ オランダGP:7.5MJ

    ■ バルセロナGP:7MJ
    ■ アブダビGP:7MJ

    ■ ブラジルGP:6.5MJ

    ■ カナダGP:6MJ
    ■ オーストリアGP:6MJ
    ■ ラスベガスGP:6MJ

    ■ イタリアGP(モンツァ):5MJ

    モンツァが最低値となっているのは、高速レイアウトゆえに回生機会が極端に少ないためだ。

    一方でモナコやシンガポールは低速区間とブレーキングが多く、エネルギー回収が容易なため最大9MJまで許容されている。

    FIAは“充電レース化”回避を最優先
    今回の調整で最も重要なのは、FIAが「回生ゲーム化」を強く警戒している点だ。

    2026年レギュレーションでは、電動比率拡大によって“どこでエネルギーを使うか”がラップタイムを大きく左右する。

    しかし回生量が不足すると、ドライバーが本来のアタックではなく“バッテリー充電のための走行”を強いられる可能性がある。

    FIAはそれを避けるため、各コースに応じて柔軟に回生上限を変更する方向へ舵を切った。

    実際、規則には「過度な回生戦略が必要になる場合は5MJまで引き下げ可能」と明記されており、今後さらに調整が進む可能性もある。

    2026年F1は“PU性能”だけでは戦えない時代へ
    この新システムによって、2026年F1では単純なパワーユニット出力だけでなく、“エネルギー運用効率”そのものが勝敗を左右する時代に入った。

    特にモンツァ、カナダ、ラスベガスのような回生不利コースでは、PUメーカーごとの差がより露骨に表れる可能性がある。

    逆にモナコやシンガポールでは、エネルギーマネジメント性能を持つチームが大きな武器を得ることになる。

    FIAはすでに2027年以降のさらなる調整も検討しており、2026年F1レギュレーションは今後も“進化型ルール”として変化を続けていきそうだ。

  • BARホンダ “隠し燃料タンク”で2戦出場停止 F1史に残る異例処分

    BARホンダ “隠し燃料タンク”で2戦出場停止 F1史に残る異例処分

    2005年5月12日、BARホンダがF1史上でも異例の2戦出場停止処分を科されてから、ちょうど21年を迎えた。“隠し燃料タンク”問題として知られるこの騒動は、現在でもF1界で語り継がれる代表的な技術規則違反のひとつとなっている。

    発端となったのは、2005年F1サンマリノGP後の車検だった。ジェンソン・バトンが3位、佐藤琢磨が5位でフィニッシュしたBARホンダだったが、FIAは車両内部に残された約15リットルの燃料を問題視。最低重量規定を巡る解釈が大きな波紋を呼ぶことになった。

    「空」とされたタンクに残っていた約15リットルの燃料
    問題は、BARホンダが燃料タンクを完全に空にしたと主張した後に発覚した。FIAはその後、タンク内の隠された区画に約15リットルの燃料が残っていることを確認した。

    この燃料を除いた状態でジェンソン・バトンのマシンを計量すると、重量は594.6kgだった。当時の最低重量である600kgを5.4kg下回っており、FIAはBARホンダが最低重量規定を実質的に回避していたと判断した。

    当時のFIA会長マックス・モズレーは、この件について厳しい見解を示した。

    「彼らはタンクに15リットルを残したまま、それが空だと我々に伝えた」

    BARホンダ側は燃料システムの構造上、その燃料は通常使用できないものだと主張したが、FIAの判断は覆らなかった。結果として、チームはサンマリノGPから失格となり、続くスペインGPとモナコGPの2戦を欠場することになった。

    技術的解釈と規則違反の境界線
    この一件が特異だったのは、単なる重量不足ではなく、燃料システムの設計そのものが問題視された点にある。燃料を搭載した状態では最低重量を満たしていても、実際には燃料を抜いた車体重量が規定を下回っていたため、FIAは競技上の優位性につながる重大な違反と見なした。

    F1では技術的な創意工夫が競争力の源泉となる一方で、その解釈が規則の限界を超えた場合には厳しい処分が下される。BARホンダの“隠し燃料タンク”問題は、その境界線を象徴する事例となった。

    ジェンソン・バトンと佐藤琢磨がポイント圏内でフィニッシュしたサンマリノGPの結果は取り消され、BARホンダはシーズン序盤の貴重な2戦を失った。チームにとっては競争力を示し始めた矢先の大きな痛手であり、F1史に残る異例の出場停止処分として記憶されている。

  • FIA F1複数チーム所有問題を調査 レッドブル/レーシングブルズ体制に波紋

    FIA F1複数チーム所有問題を調査 レッドブル/レーシングブルズ体制に波紋

    FIA(国際自動車連盟)がF1における“複数チーム所有問題”の調査に着手した。発端となっているのは、レッドブルが長年維持してきた2チーム体制、そしてメルセデスがアルピーヌ株式取得に関心を示しているとされる新たな動きだ。

    FIA会長のモハメド・ビン・スライエムは、複数チーム所有について「スポーツの公平性」を損なう可能性があるとして、現在FIA内部で法的・倫理的観点から検証を進めていることを認めた。

    今回の問題は、F1の将来的なガバナンスやレギュレーション投票権にも関わるテーマとして、パドック内で急速に注目を集めている。

    レッドブル体制が再び議論の中心に
    長年にわたり、レッドブルはレッドブル・レーシングとレーシングブルズの2チームを保有してきた。しかし、その“独立性”については以前から疑問視されていた。

    特に昨年、クリスチャン・ホーナーの解任後に、レーシングブルズ代表だったローラン・メキースが即座にレッドブルへ昇格したことで、両チーム間の人材共有や運営関係に再び注目が集まった。

    こうした状況について、マクラーレンCEOのザク・ブラウンは以前から強く批判してきた。

    「現代の主要スポーツのほとんどでは共同所有は禁止されている」

    「スポーツの公平性を損なう重大なリスクがある」

    ブラウンは以前からそう主張しており、F1でも複数チーム所有を禁止すべきだという立場を鮮明にしている。

    メルセデスのアルピーヌ株取得観測が火種に
    今回、この問題が再燃した背景には、アルピーヌ株式取得を巡る動きがある。

    アルピーヌ株の24%を保有するOtro Capitalは、2023年に約2億ユーロで株式を取得したが、現在は約8億ユーロ規模の価値になっているとみられている。

    この株式には、メルセデスが関心を示していると報じられており、さらに元レッドブル代表のクリスチャン・ホーナーも取得に興味を持っているとされる。

    もしメルセデスがアルピーヌ株を保有する形になれば、F1の競争構造やレギュレーション投票への影響が問題視される可能性がある。

    レッドブル・レーシングとビザ・キャッシュアップ・RB・フォーミュラワン・チーム

    FIA会長「スポーツ精神を失えば支持は消える」
    モハメド・ビン・スライエムは、複数チーム所有について個人的には否定的な見解を示した。

    「2チームを所有することについては、“正しい理由”である限り理解できる部分もある」

    「だが、その“正しい理由”とは何なのか?」

    「他人に取得させたくないから保有するのか、あるいはレギュレーション投票で影響力を持つためなのか。そうであれば問題だ」

    さらにFIAが現在調査を進めていることを認めた。

    「我々はこの問題を調査している。非常に複雑な領域だからだ」

    「可能なのか? 許されるのか? それは正しいことなのか? 我々のスタッフに検討を進めさせている」

    そして最後には、スポーツ性を最重視する姿勢を強調した。

    「スポーツ精神を失えば、人々の支持も失われる」

    「だから私は、この仕組みを100%支持しているわけではない」

    F1の政治構造そのものを揺るがす議論へ
    この問題は単なる“株式保有”の話では終わらない可能性がある。

    現在のF1では、レギュレーション変更や商業面の意思決定において、各チームの政治力が極めて重要になっている。

    その中で、複数チームに影響力を持つオーナーが存在することは、公平性や投票バランスに直接影響を及ぼしかねない。

    2026年F1レギュレーションや将来的なエンジン規則を巡って政治的対立が激化する中、FIAがこの問題に正式に踏み込んだ意味は小さくない。

    レッドブル体制を巡る議論だけでなく、今後は“チーム所有のあり方”そのものがF1の新たな争点になっていきそうだ。

  • フェルスタッペンの要求でF1が動いた? 2027年規則修正の危うい前例

    フェルスタッペンの要求でF1が動いた? 2027年規則修正の危うい前例

    2026年F1シーズンを通じて続いてきたパワーユニット論争は、FIAが2027年に向けてエンジン出力比率の見直しを認めたことで、大きな転換点を迎えた。

    電動と内燃の比率を事実上「60対40」に修正する今回の決定は、マックス・フェルスタッペンをはじめとするドライバー側の強い反発が、FIAを動かした形とも受け取られている。しかし、この“譲歩”は今後のF1に別の問題を生む可能性も指摘されている。

    FIAが初めて“ドライバー側に折れた”意味
    FIAとF1は、2026年から導入された新世代パワーユニットについて、一貫して擁護姿勢を崩してこなかった。

    特に電動比率を大幅に高めた新規則については、「エネルギーマネジメント偏重」「全開区間の減少」「バッテリー温存レース」など、ドライバーから不満が噴出していた。

    その中心にいたのがマックス・フェルスタッペンだった。

    フェルスタッペンは、2026年型F1マシンについて繰り返し批判を展開。さらにはV8エンジン回帰論にも踏み込み、「この方向性のままならF1を去る可能性もある」と示唆してきた。

    当初、FIA側はそうした批判に耳を貸さず、「方向性は正しい」と繰り返していた。しかし最終的には、2027年に向けてICE比率を増やす修正を正式決定。結果として、ドライバー側の圧力が実際に規則変更を引き出した格好となった。

    “前例”が今後の対立を激化させる可能性
    今回の変更は、FIAが現場の声を聞いた柔軟な対応として評価することもできる。

    一方で、問題はその“次”にある。

    もし今後、ドライバー側が別のレギュレーションや安全問題、競技運営に対して強い不満を示した場合、FIAが以前ほど柔軟に応じなくなる可能性があるからだ。

    長期間にわたって「現行規則に問題はない」と擁護してきたにもかかわらず、最終的に変更へ踏み切ったことで、FIA内部には「押し切られた」という空気が残る可能性もある。

    さらに、FIA側としては「ドライバーが強く反発すれば規則を変えられる」という前例を作りたくない思惑もあるはずだ。

    その結果、将来的にはドライバー側の要求に対して、より強硬姿勢を取る可能性も否定できない。

    マックス・フェルスタッペン F1 レギュレーション

    再び浮上する“対立構造”
    今回の記事が指摘している最大のポイントは、FIAとGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の関係悪化リスクにある。

    現在のF1では、ドライバーの政治的発言力は1980年代よりもはるかに大きい。SNS、メディア露出、グローバル人気の拡大によって、トップドライバーの影響力はFIAにとって無視できない存在になっている。

    だからこそ、今回のような“譲歩”は単なる技術規則変更以上の意味を持つ。

    記事では、もし将来的に双方が一歩も引かない状況になれば、1982年南アフリカGP以来となる「ドライバーストライキ」の可能性すらゼロではないと指摘している。

    当時はニキ・ラウダ主導でドライバーたちがスーパーライセンス制度に反発し、最終的にはバーニー・エクレストン側が譲歩する形となった。

    しかし現在のF1は、商業規模も放映契約も当時とは比較にならないほど巨大化している。

    もし現代F1で同様の対立が発生すれば、シーズン短縮や開催中止といった深刻な事態に発展する可能性もある。

    “60対40”修正は終着点ではない
    今回の2027年ルール修正は、一見するとフェルスタッペンとドライバー側の勝利にも見える。

    しかし実際には、これはF1内部の力関係が変化し始めたシグナルとも言える。

    特に2026年以降のF1は、PUメーカー政治、電動化路線、V8/V10回帰論、コスト問題、安全性議論など、多くの対立要素を抱えている。

    その中で今回の“譲歩”が、「対話の入口」になるのか、それとも「次の対立の火種」になるのか。

    F1は今、その分岐点に差しかかっている。

    Source: F1 OVERSTEER

  • F1中東戦消滅の可能性も FIA会長がトルコGP代替案を示唆

    F1中東戦消滅の可能性も FIA会長がトルコGP代替案を示唆

    FIA会長モハメド・ビン・スライエムが、2026年F1シーズンの中東ラウンド開催について深刻な懸念を認めた。イラン戦争の影響で今季のバーレーンGPとサウジアラビアGPはすでに中止となっており、今後はカタールGPとアブダビGPの開催可否にも不透明感が漂っている。

    その中でFIAは、情勢悪化が続いた場合に備え、イスタンブール・パークでのトルコGP開催を現実的な代替案として検討していることを明かした。

    2027年復帰予定だったトルコGPが前倒しの可能性
    トルコGPはすでに2027年から5年間の開催契約を結んでいるとされているが、中東情勢の悪化によって復帰時期が前倒しされる可能性が浮上している。

    モハメド・ビン・スライエムは、カタールGPについて日程変更案も検討していることを認めた。

    「カタールについては、1週間延期して全体を後ろへずらすことも可能だ」

    「そうでなければ、ホモロゲーションが完了し、その他の条件が満たされれば、今年トルコで開催する可能性もある」

    FIAとF1は現在、複数のシナリオを並行して検討しているという。

    FIAは“物流面”とスタッフ負担を重視
    モハメド・ビン・スライエムは、単純に代替地を決めるだけではなく、輸送や運営体制全体への影響も重要な判断材料になっていると説明した。

    「物流面から見れば、最良のシナリオを決定することが重要になる」

    「我々はプロモーターと協議している」

    「最善の選択肢を定義することが重要だ。我々は物事を容易にしようとしているが、スタッフに過度な負担をかけるつもりはない」

    2026年シーズンはすでにバーレーンGPとサウジアラビアGP中止によってカレンダー調整を迫られており、終盤戦にも影響が及ぶ可能性が現実味を帯びている。

    “スポーツより人命” FIA会長が強調
    モハメド・ビン・スライエムは、今回の問題について「モータースポーツより重要なものがある」と強調した。

    「モータースポーツより大きな問題がある」

    「それは我々の生活様式であり、その地域で起きている変化であり、ストレスだ」

    「スポーツは待つことができる。より重要なのは何か? 人々か、モータースポーツか? 常に人々が優先される」

    さらに、湾岸諸国の対応についても言及した。

    「政府指導部の対応について言えば、報復しなかったことは非常に賢明だった」

    「そうしないというのは大きな強さが必要だ」

    F1が中東開催断念の可能性も
    今回の発言で特に注目されるのは、FIA会長が「秋まで戦争が続けば開催できない」と明言した点だ。

    「神に願うが、もし10月や11月まで続くようなら、我々は行くことができなくなる」

    「なぜなら、安全が最優先だからだ」

    F1は近年、中東市場への依存度を急速に高めてきた。だが、2026年は地政学リスクがカレンダーそのものを揺るがす異例のシーズンとなっている。

    その中で、2020年のコロナ禍にも代替開催地として機能したイスタンブール・パークが、再びF1救済役として浮上する可能性が高まっている。

  • 2027年F1エンジン規則大転換に賛否 4戦で“50対50”崩壊に業界は何を見た?

    2027年F1エンジン規則大転換に賛否 4戦で“50対50”崩壊に業界は何を見た?

    F1は2027年に向けて、パワーユニット規則の大幅な方向転換に踏み出した。内燃エンジンと電動要素による“50対50”出力配分を事実上見直し、より現実的な60対40に近い構成へ移行する方針で原則合意したことで、業界内では早くも賛否両論が巻き起こっている。

    2026年シーズン開幕からわずか4戦。F1がここまで早い段階で理念の修正に動いたことは、現在のパワーユニット規則が抱える問題の深刻さを示すものでもある。

    『The Race』は、この決定について複数の記者による論評を掲載し、「現実的な修正」と歓迎する声がある一方で、「最初から問題は見えていた」とF1側の対応を疑問視する意見も出ている。

    “物理法則には勝てなかった”という現実
    The Raceのスコット・ミッチェル=マルムは、今回の変更を「絶対に必要だった修正」と評価した。

    現行規則では、バッテリー容量やMGU-Kの制約に対して、回生・放出要求が過大になっており、エネルギー管理とレース性能が両立できていなかったという。

    「F1は巨大な総合出力を掲げながら、それを予選ラップの一部でしか使えない状況に陥っていた」と指摘し、現在の複雑なエネルギーマネジメントは“ナンセンス”だったと断じた。

    さらに、問題点は数年前から議論されていたにもかかわらず、十分な修正が行われなかったと批判。「もっと早く対応できたはずだった」と振り返っている。

    エド・ストローも同様に、「結局は物理法則そのものが、このコンセプトの成立を許さなかった」と指摘した。

    「細かな調整では解決できなかった。数字そのものが成立していなかった」とし、“50対50”という理念自体に無理があったとの見方を示している。

    “ようやく常識が勝った”という歓迎論
    一方で、今回の方向転換を強く歓迎する声も多い。

    ベン・アンダーソンは、「常識が勝利した」と表現。“50対50”構想を「粗悪なエンジンコンセプト」とまで表現し、現在のF1はドライバーがデプロイメントアルゴリズムに縛られ、本来の“攻める走り”ができなくなっていたと指摘した。

    特に問題視されたのは、エネルギー不足による“スーパークリッピンング”だ。ストレート途中で出力が尽きる現象や、コーナー進入で回生を優先しなければならない状況が、ドライバーの自由なアタックを妨げていた。

    アンダーソンは、「フェルスタッペンの批判は単なる不満ではなかった」とも語っており、現場側でも現在のレギュレーションに対する危機感が強まっていたことを示唆している。

    グレン・フリーマンも、「最悪なのは、ミスを認めず問題を放置することだ」としたうえで、わずか4戦で修正に動いたF1の対応には驚きもあると評価した。

    F1 エンジン 国際自動車連盟

    F1は“失敗”したのか それとも“柔軟”だったのか
    今回の議論で興味深いのは、単純な“失敗論”だけでは終わっていない点だ。

    ジャック・ベニオンは、「F1にはPR上の勝機もあった」と指摘する。

    問題を認め、シーズン序盤で方向修正に踏み切ったこと自体は、本来なら“柔軟な統治”として評価できるはずだったという。

    しかしその一方で、F1首脳陣がここまで問題を軽視するようなメッセージを発してきたことには強い違和感を示している。

    「ファンは、彼らが考えている以上に理解力がある」

    そうした言葉からは、F1側が批判を“過剰反応”として扱ってきたことへの不満もにじむ。

    実際、2026年F1レギュレーションは導入当初から、“エネルギー不足”“ストレート失速”“回生優先走行”といった問題が繰り返し指摘されてきた。

    それでもF1は当初、「新時代のレースを受け入れるべきだ」という姿勢を崩してこなかった。

    だからこそ、わずか4戦で“50対50”の理念を実質的に修正する今回の動きは、業界内でも極めて大きなインパクトを持って受け止められている。

    “誰がF1を動かしたのか”という新たな焦点
    今回の急転換を受け、業界内では「誰がこの変更を主導したのか」にも注目が集まっている。

    ドライバーなのか、パワーユニットメーカーなのか、それともテレビ局やプロモーターなど外部勢力なのか。

    The Race記者陣の間でも、「ファンの反発を無視していたF1が、なぜここまで早く動いたのか」という疑問は共通している。

    現時点では詳細な技術内容は今後の協議に委ねられているが、“50対50”という2026年F1規則最大の象徴が、わずか1年で事実上見直される流れになったことだけは間違いない。

    そしてその背景には、“理想”よりも“実際にレースとして成立すること”を優先せざるを得なかった現実がある。

  • ホンダF1は何を得る? ADUO改定で230時間テストと約30億円支援

    ホンダF1は何を得る? ADUO改定で230時間テストと約30億円支援

    FIA(国際自動車連盟)は2026年F1パワーユニット規則に導入されたADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)の改定を正式承認した。

    今回の変更によって、2026年F1シーズン序盤に苦戦しているホンダは、大規模な追加開発支援を受けられる可能性が高まった。追加されるのは、ベンチテスト時間だけではない。予算面でも総額約30億円規模の支援が認められる可能性があり、アストンマーティンとのプロジェクト立て直しに向けた重要な後押しとなる。

    ホンダに追加される230時間のベンチテスト
    今回のADUO改定で最大の変更点となったのは、「基準エンジンより10%以上遅れているメーカー」に対する新カテゴリーの追加だ。

    これまでの規則では、8%以上遅れているメーカーに対して190時間の追加ベンチテストが認められていた。しかし改定後は、新たに10%以上のカテゴリーが設けられ、最大230時間まで拡大された。

    現時点で、この新カテゴリーに該当するとみられているのがホンダだ。

    FIAはADUOの評価において、パワーユニット全体ではなく、内燃エンジン単体の性能を基準としている。現在の基準はメルセデスで、550馬力を超える出力を持つとされる。

    一方、ホンダは内燃エンジンで60〜70馬力不足していると報じられており、10%以上の差に達している可能性がある。

    そのため、新設された230時間枠は、事実上ホンダを想定した救済措置だとの見方が強まっている。

    総額約30億円規模の追加支援
    ADUO改定では、財務面の支援も大幅に拡張された。

    10%以上遅れているメーカーには、今後2年間で1100万ドル(約17億1600万円)の追加予算枠が認められる。

    さらにFIAは、2026年限定の特例措置として、追加で800万ドル(約12億4800万円)の開発予算を使用できるルールも導入した。

    合計では1900万ドル、日本円で約29億6400万円規模の追加支援となる。

    コストキャップ時代のF1において、これは非常に大きな金額だ。エンジン開発競争への影響も小さくない。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    FIAは“救済しすぎ”を警戒
    The Raceによると、FIAと各PUメーカーは先週からホンダ支援策について議論を重ねていた。

    ライバルメーカー側も、「大手メーカーが最後尾で苦戦し続ける状況はF1全体にとって好ましくない」として、一定の支援には理解を示していたという。

    しかし一方で、支援制度が“最後尾から一気にトップへ跳ね上がるための武器”になってしまうことへの警戒感も強かった。

    そのため、マイアミGP週末には一度採決が延期され、FIAが支援内容を再精査する事態となった。

    最終的にFIA世界モータースポーツ評議会は改定案を承認。ホンダ向けの支援を拡大しながらも、“過剰救済”にならない水準へ調整した形となった。

    最初のADUO判定はカナダGP後
    FIAは同時に、ADUO評価タイミングの変更も正式承認した。

    当初、最初の判定は第6戦後に行われる予定だった。しかしバーレーンGPとサウジアラビアGPの中止によって、第6戦がモナコGPへ変更されたため、「支援開始が遅すぎる」という問題が浮上した。

    その結果、初回判定は第5戦カナダGP後へ前倒しされた。

    今後の判定タイミングは、

    ■ 第5戦カナダGP後

    ■ 第11戦ハンガリーGP後

    ■ 第18戦メキシコGP後

    となる。

    2026年F1シーズン序盤、アストンマーティンとともに厳しい戦いを強いられているホンダだが、今回のADUO改定によって巻き返しに向けた開発余地は大きく広がることになる。

    Source: The Race