カテゴリー: F1マシン

  • F1がV8回帰で得るかもしれない利益とは? FIA会長スライエムの構想

    F1がV8回帰で得るかもしれない利益とは? FIA会長スライエムの構想

    F1が再び自然吸気エンジンに回帰する可能性が、今、静かに議論され始めている。

    FIA(国際自動車連盟)会長モハメド・ビン・スライエムは、次世代パワーユニットにV8エンジンの導入を検討すべきだと提言しており、この動きがF1にとって思いがけない追い風となる可能性がある。

    EV万能論からの揺り戻し
    自動車業界では長らく「完全電動化」が潮流とされてきたが、最近ではその勢いに陰りも見え始めている。高額な価格、充電インフラの未整備、そして一部消費者の心理的な抵抗感──こうした要因が、内燃機関の再評価を促しているのだ。とりわけ欧州では、中国から流入する安価なEVに対抗する術を模索する中で、従来型エンジンへの依存を完全に断ち切ることのリスクも再認識されつつある。

    この潮流の中、F1が持つ象徴的な意味合いも変化しようとしている。現行レギュレーションでは2026年から電動化と内燃比率を50:50に設定するが、これはチームやファンからの評価が分かれている。FIAは将来的にこの比率を80:20あるいは90:10で内燃寄りに変更する案も視野に入れており、そこにV8エンジンという「折衷案」が浮上してきた。

    現実的なV8回帰のシナリオ
    かつてのV10やV12エンジンに比べ、V8は依然として多くの市販車メーカーが採用する現実的な構成だ。コスト面でも利点があり、パフォーマンスと魅力的なエンジンサウンドを維持しつつ、持続可能燃料との組み合わせによってカーボンニュートラルを実現できる可能性もある。

    こうした動きの中、ホンダ・レーシングの渡辺康治社長は、F1の将来のパワーユニット規定に関する議論について「現在は一時的に停止している」と語り、メーカーとしてはまず2026年の新レギュレーションに向けた準備に集中していると明らかにした。

    FIAは今年4月、持続可能な燃料で駆動するV10エンジンなども視野に入れた将来的な技術規定の検討に向け、各エンジンメーカーとの非公開会合を実施。その後、少なくとも2029年までは現行の持続可能性重視の方針を維持することが発表されていた。

    これを受けて渡辺氏は、日本の報道機関の取材に対し、今後の議論が完全に終了したわけではないとしつつも、当面は2026年に導入される電動化と内燃機関が半々となる新規定への対応が最優先であると述べた。

    またホンダとしては、F1が今後もモータースポーツの最高峰であり続けることを望んでおり、そのために「どのようなパワーユニットの形がふさわしいのか」を引き続き考えていく姿勢を示した。

    FIAのシングルシーター部門を率いるニコラス・トンバジスも、「持続可能性と技術の自由度のバランスを取ることは容易ではないが、コスト削減を常に最優先に考えるべきだ」と述べ、メーカー各社にも合理化の提案を求めている。

    スライエム会長はこの構想について「準備には3年かかる。2029年には導入可能な形にしたい」と語っており、実現には中長期的な調整が必要とされるが、すでにFIA内では具体的な議論が進められているという。

    モハメド・ビン・スライエム FIA(国際自動車連盟)会長

    統一部品によるコスト削減
    エンジン構造だけでなく、ギアボックスやハイブリッドシステムの標準化も議論の俎上に上っている。これにより、設計・開発・製造にかかるコストを大幅に抑えることが可能になる。過去にもECU(エンジン制御装置)の共通化が実現されており、その際に懸念された性能差や不公平は現実には起こらなかった。

    ただし、ハイブリッド関連の部品については、ブランドごとの独自性や研究投資を重視するメーカーの抵抗が予想される。とはいえ、それが観客の目に触れる技術ではない以上、コスト削減の大義が支持を集める可能性は高い。

    燃料供給の一本化とその難しさ
    さらに、スライエム会長は「燃料の一社供給」案も示している。これは持続可能燃料の高騰(現在1リットルあたり約275〜300ドル)を背景に、コスト負担の軽減を目指した提案だ。だが、燃料メーカーにとってはパフォーマンスとの結びつきがブランド訴求の要であり、反発も予想される。

    たとえばフェラーリと長年提携するシェルは、同社のV-Powerブランドの技術力をF1で実証してきた。もし燃料が他社製に置き換われば、表面上は提携を継続していても、実態との乖離がブランドイメージに影響を及ぼしかねない。

    変革の本質は「備え」にある
    F1は今、人気・商業ともに絶頂期にある。だが、スライエム会長が繰り返し強調するのは「だからこそ、今が備えるべき時だ」という視点だ。地政学的リスクや経済の先行き不透明さを踏まえれば、F1が安定性と柔軟性を兼ね備えた技術構成へと移行することは、将来への強固な布石となる。

    V8回帰の構想は、単なる郷愁ではない。コスト、サウンド、技術バランス、そして持続可能性──そのすべてを見据えた上での、戦略的な選択肢である。F1がその道を選ぶとき、かつての「熱狂」は再び現代の現実と結びつくことになるかもしれない。

  • F1 空力テスト制限がリセット 2026年新レギュ対応に向け勢力図に影響も

    F1 空力テスト制限がリセット 2026年新レギュ対応に向け勢力図に影響も

    2025年後半のF1選手権に向けて、FIAは空力テスト制限(ATR:Aerodynamic Testing Restrictions)をリセットし、新たなスライディングスケールを適用した。これは2026年に導入される抜本的な技術レギュレーション変更に向けた開発競争において、各チームの準備スピードに大きな影響を与える可能性がある。

    ATRは、選手権順位に応じて各チームの空力開発量を調整する制度で、トップチームは制限され、下位チームには開発促進の猶予が与えられる。

    今回のリセットは、2025年オーストリアGP直前のランキングを基準として行われた。

    ■今回の“勝者”と“敗者”
    主な勝者:
    ■ アルピーヌ(115%):ランキング最下位に沈んだことで、最大のテスト枠を獲得。風洞時間・CFDともに全チーム最多。
    ■ アストンマーチン(105%):前半戦の不振により、前年よりも多い開発リソースを確保。ニューウェイ加入で反撃の余地あり。
    ■ ザウバー(110%):下位に甘んじた代償として、ATR上ではボーナスを得た。
    ■ キャデラック(115%):新規参戦準備チームとして、最大限のテスト権利を与えられている。

    主な敗者:
    ■ ウィリアムズ(90%):今季の躍進により、前半よりも大幅に削減された最大の“減少組”。
    ■ メルセデス(75%):2位浮上による削減で風洞時間は60時間に減少。開発の効率が問われる。
    ■ マクラーレン(70%):首位キープの代償として、最も少ない開発枠に制限された。

    自動車競技 F1 2025年のF1世界選手権

    ■マクラーレン(順位:1位)
    圧倒的なパフォーマンスで首位を守るマクラーレンは、当然ながら最も厳しい制限を受ける立場にある。テスト枠は全体の70%に制限され、風洞テストは224回、CFDも1,400件に留まる。
    ここまでの快進撃を支えた開発力に陰りが見える兆候はないが、2026年の新車開発では“リソース不足”が懸念材料となる。限られたデータから最大限の成果を引き出す効率性が問われる。

    ■メルセデス(順位:2位)
    グラウンドエフェクトカー時代の苦戦から回復し、再びトップ争いに返り咲いたメルセデスは、テスト枠が75%に削減される。
    前半シーズンでは68時間の風洞時間が与えられていたが、後半は60時間に減少。復調の鍵となった技術開発スピードにブレーキがかかる形だ。
    2026年に向けた完全新車の準備と、今季のタイトル争いの両立が同時進行となる中で、極めて効率的な開発が求められる。

    ■フェラーリ(順位:3位)
    開幕からアップダウンの激しいシーズンを送るフェラーリは、3位での折返しによりテスト枠は80%。
    256回の風洞テストと1,600件のCFDは十分な量に思えるが、マクラーレンやメルセデスの台頭に対抗するには苦しい数字だ。
    新たに技術部門を強化しつつあるフェラーリにとって、限られた開発資源で競争力を維持することが課題となる。

    ■レッドブル(順位:4位)
    長らく頂点を維持してきたレッドブルは、ついにトップ3から陥落。とはいえ、85%のテスト枠を維持しており、依然として強力な開発体制を有している。
    272回の風洞テストと1,700件のCFDを活用し、2026年に向けた新コンセプトマシンの構築に注力すると見られる。
    ただし、クリスチャン・ホーナー解任後の体制再編が続く中で、開発の方向性に一貫性を保てるかがカギとなる。

    ■ウィリアムズ(順位:5位)
    2024年の苦戦が嘘のように、2025年は中団上位に定着したウィリアムズ。だがその代償として、テスト枠は90%に引き下げられた。
    特に風洞ラン数は352回から288回に減少。今季前半の飛躍を支えた開発スピードが鈍化する可能性がある。
    この削減に対し、どこまで効率化と分析精度でカバーできるかが今後の分かれ目となる。

    ■ハース(順位:6位)
    2025年は着実にポイントを積み重ねているハース。95%のテスト枠を維持しており、依然として比較的多くの開発機会がある。
    今後は、2026年に向けた中長期戦略と今季中のアップグレード投入のバランスが焦点だ。大手に食らいつくには、限られた資源をどう使うかが勝負。

    ■レーシングブルズ(順位:7位)
    ランキング7位と“中間”の位置にいるレーシングブルズは、100%の標準的な開発枠を与えられている。
    チームとしては2026年の新レギュ導入に向け、他チームに遅れを取らぬよう開発速度を維持したいところ。今後はレッドブル本隊との技術連携が注目される。

    ■アストンマーチン(順位:8位)
    エイドリアン・ニューウェイの加入で注目が集まるアストンマーチン。2025年前半は苦戦したが、ATR再設定により105%の枠を獲得。
    336回の風洞テストと2100件のCFDにより、失速した今季の挽回と、2026年新車への集中という選択肢が広がった。ニューウェイの投入でどこまで“奇跡”を起こせるか。

    ■ザウバー(順位:9位)
    来季からアウディブランドとしてF1に参戦する予定のザウバーは、9位という成績により110%の枠を手にした。
    352回の風洞テスト、2200件のCFDは十分なリソースであり、新オーナー体制下での“最後のザウバー期”をどう締めくくるかが注目される。

    ■アルピーヌ(順位:10位)
    最下位に沈んだアルピーヌだが、ATRでは最大の恩恵を受ける。115%という枠により、368回の風洞テスト、2300件のCFDが可能となる。
    これを今季の立て直しに使うか、来季マシンへの集中に充てるかは今後の戦略次第。ルノー本社の意向も絡む重要な分岐点だ。

    ■キャデラック(参入前)
    2026年からF1に参戦予定のキャデラックは、FIAから最大値の115%のテスト枠を与えられている。アルピーヌと同等の368回の風洞ラン、2300件のCFD枠を使い、ゼロからの開発を進めている。
    GMの支援を受ける中で、F1の複雑な技術基盤にどれだけ早く順応できるかが今後の焦点となる。

    ■各チームのテスト制限一覧(2025年後半)

    順位 チーム名 テスト倍率 風洞ラン 風洞時間(h) CFD件数
    1 マクラーレン 70% 224 56 1400
    2 メルセデス 75% 240 60 1500
    3 フェラーリ 80% 256 64 1600
    4 レッドブル 85% 272 68 1700
    5 ウィリアムズ 90% 288 72 1800
    6 ハース 95% 304 76 1900
    7 レーシングブルズ 100% 320 80 2000
    8 アストンマーチン 105% 336 84 2100
    9 ザウバー 110% 352 88 2200
    10 アルピーヌ 115% 368 92 2300
    ー キャデラック 115% 368 92 2300

    2026年の新レギュレーション導入まで残り約半年。今回のATRリセットは、各チームの戦略に大きな影響を与える。果たして、恩恵を最大限に活かせるのはどのチームか──注目が集まる。

  • 2026年F1マシンへの懸念 逆にドライバー技量が際立つ展開となる可能性

    2026年F1マシンへの懸念 逆にドライバー技量が際立つ展開となる可能性

    2026年に導入されるF1の新レギュレーションに対して、多くのドライバーが「運転が楽しくない」「レースが奇妙になる」と懸念を示しているが、皮肉にもその変化はドライバーの腕前をより際立たせる結果をもたらすかもしれない。

    2026年から適用されるF1の技術レギュレーションは、車体およびパワーユニットの両面で大幅な変更が施される。FIAはラップタイムが現状比で約1秒遅くなると見込んでいるが、その性能特性は大きく様変わりする。

    最大の変化は空力性能の抑制とブレーキングゾーンの拡大だ。これによりストレートでの効率性が重視され、コーナーはこれまでより長く遅くなる。こうした挙動変化に対して、マックス・フェルスタッペン、シャルル・ルクレール、ランス・ストロールらがシミュレーター走行の時点で「グリップが足りず、コーナリング性能が低い」「回生重視の走りがつまらない」と不満を口にしている。

    特に議論を呼んでいるのが「エネルギーマネジメント」の扱いだ。パワーユニットの電動化比率が高まることで、1周を通して電力をいかに効率よく使うかが重要になる。そのため、異常なシフトダウンや不自然な高回転維持といった“極端な戦術”を避けるべく、どのタイミングでどれだけ電力を使用・回収できるかのルール調整が重ねられている。

    FIAのシングルシーター部門責任者ニコラス・トンバジスはこう語る。

    「ドライバーは今の最適化されたマシン挙動に慣れており、そこから外れると違和感を覚えるのは当然だ。エネルギーマネジメントの要素は確かに大きいが、我々はドライバーの操作にとって透明でわかりやすい仕組みにしようと取り組んできた」

    「これまでの技術ルールに対しても、空力の弾性変形への対応や、エネルギー管理の改善をかなり進めている。初期のバージョンをドライブしたドライバーもいれば、最近の仕様を試したドライバーもいる。中には『それほど問題ない』と話す者もいた」

    こうした中で注目されているのが、むしろこの新レギュレーションが「ドライバーの差をより明確に浮き彫りにする」可能性だ。

    フォーミュラ1カー

    現在のF1では強大なダウンフォースによって高速コーナーが「全開当たり前」となり、コプス(シルバーストン)やカンプサ(バルセロナ)といった名物コーナーでの“腕の差”が出にくくなっている。これは現行のグラウンドエフェクトカーの特徴であり、高速コーナーでは優れている一方で、低速では重くバランス変化が大きいため操縦性が悪化している。

    しかし2026年以降は空力性能の抑制により、こうした高速区間も難所へと変貌する。あるチーム代表は、コプスやアビー/ファーム、マゴッツ/ベケッツの入りが「実質3つのコーナーになる」と述べている。

    「全開で突っ切れるコーナーが“本当のコーナー”になるのは、我々も同意している。それはドライバーの技量にとって明らかに好ましい傾向だ」(トンバジス)

    さらにスローコーナーでは滞在時間が長く、そこでは腕の差がより明確に現れる。2026年マシンではその傾向がさらに強まり、これまで失われつつあった「アジリティ(俊敏性)」も若干取り戻される見込みだ。車重も若干軽くなる予定で、この点でもドライバー側の不満を和らげる可能性がある。

    それでもドライバー側が「魅力的」と感じることは少ないだろう。速さが落ち、ダウンフォースが減り、バランスが崩れるというのは、感覚的にネガティブな変化に映る。

    「コーナリング性能が低下したマシンを前にして、『これが好きだ』と口にできるドライバーはいない。ただ、2022年の時も同様の不満があった。我々は批判を軽視するつもりはないし、エネルギーマネジメントの改善も彼らの声を受けて行ってきた」

    「すべてが完璧だという評価はおそらく得られないだろう。しかしこれは変化なのだ。その変化に慣れるには時間が必要だ」(トンバジス)

    2026年のF1は、これまでとは異なる形でドライバーの腕を際立たせる舞台になるかもしれない。少なくとも「つまらないマシン」と切り捨ててしまうには、早計すぎる要素が潜んでいそうだ。

  • マクラーレンF1:MCL39の優位性を支えるメカニカル&空力パッケージの統合

    マクラーレンF1:MCL39の優位性を支えるメカニカル&空力パッケージの統合

    マクラーレンMCL39が今季ライバル勢に対して示しているアドバンテージの核心には、同マシンのメカニカルおよび空力パッケージの統合された洗練性がある。

    フロントサスペンションのレイアウト──ハブに対して分離された下部ウィッシュボーンの接続構造、およびブレーキへと導かれる気流の流し方──は、フロントタイヤの温度コントロール性能において重要な役割を果たしていることはほぼ間違いない。

    F1マシンにおいては、タイヤを素早く適正な作動温度まで引き上げ、その後は過加熱させずに安定させ続けることが課題となる。

    これには、ブレーキダクトとホイールリムを通じて流れる気流に対し、極めて精密な流量と方向のコントロールが要求される。

    さらに、フロントサスペンションの極端なアンチダイブ設計により、低速域でも車体前部を低く保ちつつ、リアのライドハイト上昇を最小限に抑えることが可能となっている。これらのメカニカルおよび空力的システムが連携してタイヤ温度を制御しつつ、広い速度域で高いダウンフォースを発生させることこそが、パフォーマンスの鍵となっている。

    マクラーレン F1 図解左は部分組み立て状態の最新ブレーキダクト、右は標準的なアウタードラムを装着した完成状態。

    こうした中で、新たなフロントウイングがモントリオールで試験され、次戦オーストリアGPでの導入に向けた準備が進められた。この際、マシン設計の高い統合性ゆえに、ウイング単体だけでなく、サスペンションフェアリングやブレーキダクト周辺の細部に至るまで、いくつかの補完的な変更が必要となった。

    「今回のアップグレードはフロントエンドの空力システムを全体として進化させるものであり、フロントウイングと一体化したサスペンション改良を施している」と語るのは、エンジニアリング技術ディレクターのニール・ホールディ。

    「カナダで試験したフロントウイングとサスペンションフェアリングは、ひとつのパッケージとして開発されているんだ」

    このフロントウイングには、新たなエレメント形状とエンドプレートが採用されており、フロントタイヤ外側へのアウトウォッシュ(外向きの気流)をより強力に生み出す設計がなされている。加えて、“マーメイドテール”と呼ばれるボルテックス生成構造によってそのアウトウォッシュを加速。タイヤ上部と周辺の乱流を抑えるフィンも再設計されている。

    これらの変更は、チームによれば「さまざまな車両姿勢における空力性能を向上させること」を狙ったものだという。

    マクラーレン MCL39 ブレーキダクト左が旧型のブレーキダクト、右が新型。見た目はよく似ているが、内部の流路が異なっており、ホイール周辺の乱流抑制フィンも再プロファイリングされている。

    また、サスペンションアームを覆うカーボン製の「サスペンションフェアリング」も再設計されている。「気流の整流性能を改善し、それにより空力性能の向上を図る」という目的である。こうした整流性能を最大限に活用するために、フロント周辺の空力デバイスも新たに導入された。

    今季を通じて、ブレーキダクトにも微妙な変更が加えられている。ブレーキディスクおよびキャリパーの周囲には、全チーム共通の標準アウタードラム(外装カバー)が装着されているが、その内側にはマクラーレン独自設計の内部シールドが存在する。この内部構造には可動式のパネルが設けられており、サーキットの特性に応じてブレーキの露出量を調整可能となっている。冷却空気の流路は非常に緻密に設計されている。

    ダクトの吸気口から内部に至る冷却気流の流れは青い矢印で、2つのドラム間で熱の移動を制御するシーリング壁の位置は赤い矢印で示されている。

    そしてマクラーレンは、このアップグレードを経たオーストリアGPおよびイギリスGPで今季最大となる圧倒的勝利を挙げた。チーム代表アンドレア・ステラは、これらの結果においてフロントエンドのアップグレードが大きく貢献したとみている。

  • ランス・ストロール 2026年レギュレーションに苦言「F1らしさが失われている」

    ランス・ストロール 2026年レギュレーションに苦言「F1らしさが失われている」

    ランス・ストロールが2026年から導入されるF1の新レギュレーションについて、公然と懸念を表明した。アストンマーティンのシミュレーターでプロトタイプ車をすでに試したというカナダ人ドライバーは、「F1らしさが失われてしまう」と率直な思いを口にしている。

    新規則では、出力の最大50%を電力で賄う新型パワーユニットの導入や、直線とコーナリングで空力特性を調整する可変エアロが特徴。また、全体的なダウンフォースも大幅に削減される予定だ。

    これらの変更はF1をより持続可能なスポーツとするための動きだが、ストロールはその方向性に否定的だ。

    「F1が電動化の道を歩み、バッテリーのためにダウンフォースを失わなければならないというのは、ちょっと残念だ」と、Racefansに語っている。

    「もっと軽くて、俊敏で、速くて、ダウンフォースがたくさんあるクルマを見たい。もっとシンプルにして、“エネルギー・バッテリー・チャンピオンシップ”ではなく、“F1レース・チャンピオンシップ”にすべきだと思う」

    ランス・ストロール F1 フォーミュラ1カー アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    FIAは「軽量で俊敏なマシン」を強調するが…
    FIAは、最低重量の引き下げやパッケージの見直しを通じて「俊敏なマシンコンセプト」を掲げているが、現時点では目標が達成できるかは不透明。ストロールの発言は、F1の伝統的な魅力が失われることへの懸念を反映している。

    「もっと大きな音がして、ちょっと軽くて、あまりエネルギーやバッテリーに依存しないクルマの方がワクワクするよ。それがレースってものじゃないのかな」

    「政治的に発言できないドライバーもいる」
    フェラーリのシャルル・ルクレールも、シミュレーターでのテストを踏まえて「楽しいクルマとは言えない」とコメントしているが、ストロールは他にも不満を抱えているドライバーがいると示唆する。

    「僕はこの方向性が好きじゃない。でももし僕たちのクルマが速くて、競争力があって、ライバルよりも良いパフォーマンスができていれば、誰も文句は言わないだろうね」

    「多くのドライバーが僕と同じ意見だと思うよ。政治的な理由で本音を言えない人もいるだろうけど」

    公平な競争という側面には理解も
    2026年の規則改定にはマックス・フェルスタッペンも懸念を示しており、とくにエネルギー回生とその管理がレースの中心になってしまう点を問題視している。

    一方でストロールは、全チームが同じ条件で戦うという点では前向きに捉えている。

    「来年はすべてのチームにとって同じ条件だし、誰がそれを一番うまくやれるかが勝負になる。きっと、それが得意なチームはこの新レギュレーションを気に入るんじゃないかな」

    F1が持続可能性と伝統的なレースの魅力の間でバランスを模索する中で、ストロールの発言は現場の率直な声として注目を集めそうだ。

  • F1 2029年にV8エンジン復活? FIA会長「目標は50%以上のコスト削減」

    F1 2029年にV8エンジン復活? FIA会長「目標は50%以上のコスト削減」

    FIA会長のモハメド・ビン・スライエムは、F1が2029年シーズンにも大幅にコストを抑えたV8エンジン規定へ移行すべきだと改めて主張した。また、F1グリッドに12番目のチームが加わる可能性についても語っている。

    シルバーストンで開催されたF1イギリスGPの週末、ビン・スライエムはFleet Streetのジャーナリストに対し、より安価なエンジンフォーミュラへの早期移行が必要であり、それは2029年にも実現可能だとの見解を示した。2026年に導入される次世代パワーユニットからわずか3年後の見直しとなる。

    「我々にとって、V8は実現に向けて進んでいる」とビン・スライエムは述べた。

    「チーム側も前向きだし、私は非常に楽観的で満足している。FOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)も協力的で、チームもこれが正しい道だと認識しつつある」

    「早く進めなければならない。準備には3年かかる。だから2029年には何かしらの形で実現していたい。ただし、燃料は非常に高価だし、それにも注意を払う必要がある。ギアボックスも非常に高額だ」

    「今のエンジンはとにかく複雑で、信じられないほどコストがかかる。R&D(研究開発費)は2億ドルに達しており、エンジン単体でもおよそ180万~210万ドルかかっている。だからこそ、シンプルなV8に移行すればどうなるか見てみたい」

    FIA 国際自動車連盟 F1 V型8気筒 エンジン

    この発言は、今季序盤にFIA幹部が主張した「安価なエンジンの必要性」と一致している。当時はバーレーンで現行および将来のパワーユニットメーカーが集まり、話し合いが行われた。

    その会合では、F1の将来のエンジン規定において電動化の要素と持続可能な燃料は継続すべきという認識が共有され、具体的なフォーミュラは今後の協議に委ねられた。ただし、それ以降は正式な議論は行われていない。

    なお、将来的なパワーユニットの変更にはFIAとFOM(商業権保有者)の合意に加え、メーカー間の「スーパー・マジョリティ(特別多数決)」の支持が必要だ。

    当初はV10エンジンを望んでいたビン・スライエムだが、より実用性が高く軽量なV8エンジンに小規模なハイブリッドシステムを組み合わせる案の方が現実的と考えを改めている。これにより、最低重量のさらなる削減にもつながる可能性がある。

    「多くの自動車メーカーがV8エンジンを市販車にも使っているので、商業的にも理にかなっている」とビン・スライエムは説明した。

    「目指すのはすべてにおいて50%以上のコスト削減だ」

    さらに、F1のグリッドに12番目のチームが加わる可能性についても触れた。FIAはかつてゼネラルモーターズ(GM)とキャデラックによる2026年参入を目指す動きを後押ししていたが、現在は中国からの参戦に期待を寄せているという。ただし、現時点では具体的な申請はない。

    「タイミングが整えば、改めて“エクスプレッション・オブ・インタレスト(EOI)”を公募することになるだろう」とビン・スライエムは述べた。

    「我々は既存チームを混乱させるためにやるわけではない。単に枠を埋めるためでもない。F1ビジネスを維持・発展させる価値をそのチームが持っているかが重要なんだ」

  • F1王者と名車が集結 2025年グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード

    F1王者と名車が集結 2025年グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード

    2025年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードは史上最も暑いもののひとつとなった――文字通りの意味でもそうで、藁のベールが燃え上がる場面さえあった――そしてこれまでにない数のF1マシンが集結した。

    F1ドライバーズ・ワールドチャンピオンシップ75周年を祝うことが、今年の「ザ・ウイニング・フォーミュラ――チャンピオンズ&チャレンジャーズ」というテーマの中心に据えられていたが、実質的にはラリーやスポーツカー、バイク、ドリフト、さらには一部はこれまで公の場に姿を見せたことのなかったロードカーまで、あらゆる形態のモータースポーツが網羅されていた。

    例年通り、偉大なドライバー、ライダー、デザイナーといった多くの大物たちも登場した。すべてのハイライトを挙げるのはほぼ不可能だが、ここでは4日間にわたる特別な日々の中で際立った出来事をいくつか紹介する。

    グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード

    F1チャンピオンたちが主役に…
    7人のF1ワールドチャンピオンが、合計14タイトルを引っさげて土曜日の主役を飾った。ジャッキー・スチュワート卿、エマーソン・フィッティパルディ、マリオ・アンドレッティ、ナイジェル・マンセル、アラン・プロスト、ジャック・ビルヌーブ、ミカ・ハッキネンが、驚くべきカバルケードの後、グッドウッド・ハウスのバルコニーでカルン・チャンドックによるインタビューに応じ、集まった大勢の観客を前に語り合った。

    ジャッキー卿の息子であるポールとマーク・スチュワートが、選手権を制したティレル003と006シャシーでスタートラインからハウスまで走行し、その後にフィッティパルディがロータス72で、アンドレッティがロータス79で続き、さらにビルヌーブがニキ・ラウダが駆った1974年型フェラーリ312B3で、マンセルが1986年型ウイリアムズFW11で、プロストが選手権を制したMP4/2Bで、ハッキネンが1998年の初タイトルを獲得したマクラーレンMP4-13で登場した。

    ドライバーたちは、バーニー・エクレストンやマクラーレンのザク・ブラウンともバルコニーで合流し、イベントや思い出、そして一部は互いについても語り合った。最も大きな歓声は、観客人気の高いマンセルに向けられた。

    翌日、マンセルは自身のタイトル獲得マシンFW14Bを再びドライブし、週末には1992年のチームメイトだったリカルド・パトレーゼも同マシンを走らせた。

    グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード F1 アラン・プロスト

    …そして日曜日にはプロストが主役を奪う
    プロストは、MP4/2Bと、1988年に7勝を挙げたMP4/4をドライブしたほか、日曜日には自らのバルコニーモーメントを迎えた。

    息子ニコラが1983年にプロストが王座にあと一歩まで迫ったルノーRE40をドライブし、プロスト自身はMP4/4でハウスまで走行。その後、彼は自分のグローブを1人の幸運な若いファンに手渡し、再びバルコニーに登場。そこでは、MP4/2を設計したジョン・バーナードがサプライズで登場し、プロストを驚かせた。

    「こうして自分の古いエンジニアやメカニック――そしてドライバーたち――に囲まれてこれらのクルマをドライブできるのはとても素晴らしい」と、通算51勝を挙げた現在70歳のプロストは語った。「我々はこのモータースポーツという情熱を共有している」

    「彼はタイヤの扱いが本当にうまかった」と、バーナードは言った。「しばしば、彼は最初の10周を慎重に走っていたので、我々は『彼は何をしているんだ?』と思ったものだった。しかし彼は、他のドライバーたちがタイヤを使い果たす中で順位を上げていった」

    「1984年から1986年が、自分にとっておそらく最高のレースの時期だった」

    プロストのハイライトは、フランス国旗の三色を引くレッドアローズのフライパスで締めくくられた。

    グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード F1 エステバン・オコン

    F1の壮観なエクストラバガンザ
    6つのカテゴリー――「プロローグ(世界選手権以前の挑戦者たち)」「パイオニア」「イノベーター」「アンダードッグ」「チャンピオン」「チーム」――に分けられたF1 75周年の特別展示には、100台を超えるマシンが集まり、あらゆるファンの“推しマシン”を網羅する内容となった。

    ジャッキー・イクスは、1969年のカナダGPで勝利したブラバムBT26Aをドライブし、ジャック・ビルヌーブは父ジルが戦った時代のライバル車、ウイリアムズFW07に搭乗。フェリペ・マッサは、わずか1ポイント差でタイトルを逃した2008年のF2008に乗った。

    トム・クリステンセンとダリオ・フランキッティは、V10エンジンを搭載したフェラーリF399の圧倒的なパワーに驚嘆。人気の高いブラバムBT52は、かつてのチームメイトであるリカルド・パトレーゼとマルク・ズールによって走行された。

    興味深い比較も可能となり、特に印象的だったのは、1954~55年のメルセデスW196(選手権マシン)が2022年型W13と一緒に登坂し、そのサイズの違いが際立った場面や、革新的なターボマシン、ルノーRS10とアルピーヌの2023年型A523がペアで走った場面などだった。

    最も迫力ある走行のひとつは、現役ハースドライバーのエステバン・オコン(2024年型VF-24)とオリバー・ベアマン(2023年型VF-23)による共演だった。彼らは“どちらがよりタイヤを痛めつけられるか”という対決に乗り出し、ドーナツターンやバーンアウトの応酬を披露。その勝敗については、観客の間では引き分けという見方が多かったようだ。

    エイドリアン・ニューウェイは、フェラーリ312/69と自ら設計したロータス49、そしてレイトンハウスCG901をドライブしたが、今回は別の設計界のレジェンドが主役となった。ゴードン・マレーの設計60周年を祝う特集が組まれ、彼の南アフリカ時代のIGM-Ford T.1から、現在のT.33やT.50スーパーカーに至るまでの驚異的なマシン群が集結。もちろん有名なBT46B“ファンカー”も登場し、1970~80年代のブラバムF1マシンが一堂に会した。

    グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード F1 画像

    デュマ、シュートアウトで4勝目
    サンデー・シュートアウトは、前3日間の各クラスから最速タイムを記録したマシンが集まる、フェスティバルの競技的クライマックスだ。昨年の勝者ロマン・デュマは、フォードの凶暴なF-150スーパートラックで予選から圧倒的な速さを見せ、今年も見事に通算4勝目を挙げた。

    2022年にマックス・チルトンがマクマートリー・スピアリング“ファンカー”で記録した39.08秒には届かなかったが、デュマは電動マシンを43.23秒で走らせ、週末最速タイムを記録。ゴールライン通過時の速度は157mph(約252km/h)だった。

    「いい走りだった」とデュマ。「あと少し足りなかったね――43秒を切りたかったから、明日また戻って来るかも!」

    元F1ドライバーのスコット・スピードが、スバル・プロジェクト・ミッドナイトで45.03秒を記録し、唯一デュマに迫るタイムを出した。

    イギリスのヒルクライムスター、アレックス・サマーズは、カンナムのシャドウDN4で最初に50秒の壁を破り、47.88秒の気迫あふれる走行を披露。2024年のBTCCチャンピオン、ジェイク・ヒル(ホールデン・コモドア)や耐久レースで活躍するサラ・ボビー(ポルシェ911 GT3-R)の猛追を受けたが、最終的にジェームス・ウォリスに表彰台を譲ることになった。

    ポルシェのジュニアドライバーであるウォリスは見事な走行を見せ、彼の911 GT3カップカーはしばしば四輪すべてが路面を離れるほどで、46.74秒を記録して3位を獲得した。

    土曜日のプレウォークラスではジュリアン・マジュブのマセラティ・ティーポ26Mが勝利したが、日曜日にはマーク・ギリーズがERA R3Aで逆転を果たした。

    グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード F1 画像2

    その他のチャンピオンと挑戦者たち
    F1だけがグッドウッドの全体テーマを祝ったわけではなく、ヒルクライムに挑んだ特別なクルマやドライバーも数多く登場した。

    ジョン・コブがブルックランズ・アウターサーキットで平均時速143mph超という最終ラップレコードを打ち立てたナピア=レイルトンは、ブルックランズ博物館の協力により登場。ディンド・カペロは1989年にアメリカのモータースポーツシーンに強いインパクトを与えたアウディ90クワトロIMSA GTOを走らせた。

    アメリカンモータースポーツのファンにとってさらに大きなハイライトとなったのは、1985年のインディ500で優勝したマシン、ペンスキー運営のマーチ85Cをダニー・サリバンが走らせたことだ。サリバンは、アンドレッティを抜いて首位に立った直後にスピンするも、その後リカバリーして2.5秒差で再び首位に立ち勝利した、あの有名なレースの当事者である。

    耐久レースのファンは、1995年のル・マン24時間でヤニック・ダルマス&関谷正徳とともに勝利したF1 GTRを駆るJJ・レートをはじめ、グループCポルシェやカール・ヴェンドリンガーが登坂したメルセデスC11など、魅力的なマシンの数々に歓喜した。

    「アルティメット・ツーリングカー」カテゴリーのハイライトには、バサースト5勝のスティーブン・リチャーズが父ジム・リチャーズが1990年の豪州ツーリングカー選手権で使用した日産スカイラインHR31 GTS-Rで走行する姿があった。リチャーズJrはその後、日曜のシュートアウトで10位に入り、3つ上の7位には2003年バサースト24時間でピーター・ブロック、ジェイソン・ブライト、トッド・ケリーとともに優勝したホールデン・モナロ427Cを駆るグレッグ・マーフィーが入った。

    グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード F1 コリン・マクレー

    コリン・マクレー、世界タイトルから30周年を祝う
    コリン・マクレーはラリー界を超えた存在であり、1995年のWRCタイトル獲得から30年という節目を迎えた今年、彼の偉業が壮大なスタイルで称えられた。

    マクレーのラリーカーが多数集結し、ヒルクライムとラリーステージに挑んだ。その中には1995年のタイトル獲得車であるスバル・インプレッサや、2001年にリチャード・バーンズとタイトルを争ったフォード・フォーカスも含まれていた。

    兄アリスター・マクレーがインプレッサとフォーカスを運転するという栄誉を担い、父ジミー、娘のホリー、そしてヨーロッパラリー選手権に参戦しているアリスターの息子マックスも出席していた。

    「間違いなく、とても意味のあることだ」と、1995年に英国ラリー選手権を制したアリスターは語った。「長い時間が経ったようにも感じるが、それでもそんなに経っていないようにも感じる。だから、ここでこうして祝うことができて本当に素晴らしい」

    ホリーは、1995年の“L555 BAT”に乗ったジョン・アームストロングに同乗走行させてもらいながらこう語った。「みんな、コリンのことについてそれぞれ違うストーリーを持っていて、私自身もまだ全く新しい話を聞くことがある。それって本当にすごいことだと思う。お父さんがWRCでタイトルを取ってから30年経っても、今なお彼の名前が頻繁に語られているなんて、本当にクール」

    WRCポイントリーダーのエルフィン・エバンスも、現在のトヨタGRヤリス・ラリー1でヒルを走り、マクレーに敬意を表した。「自分の最初のラリー観戦の記憶は、コリンが登場して完全に横向きで走ってくる場面だ。本当に印象的だった」

    「我々みんな、コリンが英国ラリー界だけでなく世界のラリー界にとってどれほど重要だったかを知っている。彼がステージで見せたことは伝説的だったし、ビデオゲームなどを通してスポーツをまったく新しい次元に引き上げてくれた。そういうことすべてを覚えておくことが本当に大切なんだ」

    グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード F1 エステバン・オコングッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード F1 リアム・ローソン

    オコンとローソン、F1カーからWRCマシンに乗り換え
    オコンとリアム・ローソンはF1でグラベルトラップを避けようと日々努めているが、グッドウッドではその“ルーズな世界”を全面的に受け入れ、初めてラリー1カーをドライブした。

    ハースはトヨタと提携しており、オコンはタイトル獲得マシンであるトヨタGRヤリス・ラリー1に乗り、ハンヌ・ミッコラが設計したグッドウッド・ラリーステージに挑戦した。最初はトヨタのワークスドライバー勝田貴元がドライブし、その後オコンとシートを交代。

    「これはいつか実現したいと夢見ていたことで、一生に一度の経験だった。モータースポーツで最高の体験のひとつだ」とオコン。「貴元が隣にいてくれたことで、最高のアドバイスをもらえた。本物のラリーステージの感触を味わえたし、それは本当に素晴らしかった。このクルマはまったく別次元」

    「貴元にもF1カーに乗ってもらえるように全力で頼み込むつもりだ。今回は実現しないかもしれないけど、絶対に将来的に彼にも体験してもらうよ」

    レーシングブルズのローソンもまた、ラリーへの夢を実現させ、Mスポーツのフォード・プーマ・ラリー1をドライブ。レギュラードライバーのジョシュ・マクアーリンからのレクチャーを受けたうえでの挑戦だった。

  • 2025年F1 イギリスGP:主要チームの技術アップグレードまとめ

    2025年F1 イギリスGP:主要チームの技術アップグレードまとめ

    2025年F1イギリスGPを目前に控え、各チームは最新の空力アップデートをFIAに提出した。

    今回の変更点は、主にフロア関連の構造に集中しており、多くのチームが局所的なダウンフォースの向上や流れの整流性改善を目的とした設計変更を施している。

    特に高速コーナーが連続するシルバーストンでは、車体下の空力効率がマシン全体の競争力に直結する。各チームは、それぞれの技術的アプローチで空力性能を最大化し、週末の戦いに向けて準備を整えてきた。以下に、今回発表された主なアップデート内容をチームごとにまとめた。

    アストンマーティン:フロア全体にわたる空力最適化を実施
    アストンマーティンは、フロアボディ、フロアフェンス、フロアエッジ、そしてエンジンカバー上面に至るまで大規模な空力アップデートを投入。各部位の形状を微調整することでフロア下の気流を改善し、ローカルダウンフォースを増加させてパフォーマンス向上を図っている。
    イギリスグランプリ F1 アストンマーティン

    マクラーレン:吸引再分配による空力性能の全体強化
    マクラーレンはフロア形状を全面的に改修し、吸引効果の再配分を実施。これにより空力バランスが最適化され、マシン全体の効率が向上している。さらにリアコーナーではブレーキダクトインレットを改良し、冷却性能との両立を図る。
    イギリスグランプリ F1 マクラーレン

    レッドブル・レーシング:圧力分布の最適化でさらなるダウンフォースへ
    レッドブル・レーシングはフロアボディとフロアフェンスの形状・配置を調整。フロア全体における圧力分布をより均一にしつつ、流れの安定性を保ちながらダウンフォースを引き出す改良を施している。
    イギリスグランプリ レッドブル・レーシング

    ハース:グラウンドエフェクトと流れ整流性の両立へ改良
    ハースは、フロア全体の拡張率調整、フェンスの再配置、小型化されたフロアエッジに加え、サイドポッドインレットとミラー形状も見直した。これによりアンダーフローの管理効率が向上し、横Gのかかる状況下での安定性とコーナリング性能を引き上げる狙いだ。
    イギリスグランプリ ハースF1チーム

    キック・ザウバー:前方フロアとフロントウイングをイベント仕様に調整
    キック・ザウバーは、前方フロア形状をさらに発展させ、効率的なダウンフォース獲得を狙う。また、シルバーストン向けに設計された低ダウンフォース仕様の新型フロントウイングフラップも投入されている。
    イギリスグランプリ ザウバーF1チーム

    レーシングブルズ:低バランス向けフロントウイングで戦略対応力を強化
    レーシングブルズは、今回および今後のイベントでの低バランス要件に応えるべく、より小型化されたフラッププロファイルのフロントウイングを導入。バランス調整幅を広げることにより戦術の柔軟性を高めている。
    イギリスグランプリ ビザ・キャッシュアップ・RB・フォーミュラワン・チーム

    ウィリアムズ・レーシング:フェンス形状の3D化で下流性能を改善
    ウィリアムズ・レーシングは、フロアフェンスの内側形状に大きく手を加え、リーディングエッジをさらに内側に設定。より立体的な形状にすることで流れの分布を改善し、車両後方の空力効率向上を目指している。
    イギリスグランプリ ウィリアムズ・レーシング

  • 伝説的F1デザイナーのゴードン・マレー 2024年に食道がんと診断も手術成功

    伝説的F1デザイナーのゴードン・マレー 2024年に食道がんと診断も手術成功

    伝説的カーデザイナー、ゴードン・マレーが2024年初頭に食道がんと診断され、同年7月にロボット支援による内視鏡手術を受けて成功していたことが明らかになった。

    F1史上最も象徴的なマシンをいくつも手がけたマレーは、英『Telegraph Sport』のインタビューで次のように語った。

    「この15年間、毎年内視鏡検査と生検を受けてきた。その中の一回で見つかったんだ。食道がんは、症状が出るのが遅いから発見が難しい。だからこそ生存率も非常に低いんだ」

    長年にわたり逆流性食道炎に悩まされていたマレーは、定期的な検査を受けていたことで早期発見につながったという。

    「抗がん剤治療の前に、腫瘍内科医が僕と妻に副作用の説明をしてくれたんだけど、その通り全部出たよ」とマレーは苦笑しながら振り返る。

    報道によれば、79歳のマレーは2024年7月に「ダ・ヴィンチXI」手術ロボットを用いた腹腔鏡手術を受け、英サリー州の医師ショーン・プレストン教授が執刀した。

    「このロボットシステムでは、肉眼以上に拡大された3D映像を見ながら腹部や胸部内を操作できる。まるで体内に入り込んで手術しているような感覚だ」とプレストン教授は説明する。

    マレーは、F1マシンの開発になぞらえてこう語る。

    「医者は部屋の向こう側で、まるでプレイステーションみたいな機械を操作して、僕はベッドに寝ていてロボットが全部やってくれる。まるでレーシングカーの試作みたいなものだよ。アイデアを出して、実際に走らせる前に開発する。その過程が一番楽しい」

    2025年、ゴードン・マレーは設計者としてのキャリア60周年を迎える。これを記念し、7月10日から開催される英グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、自身が手がけた17台のマシンが特別展示される予定だ。

    そのラインアップには、伝説的な1978年のブラバムBT46B“ファンカー”や、1988年のマクラーレンMP4/4、2024年に発表されたトラック専用のGMA T.50sニキ・ラウダXP1などが含まれる。

    マレーはこの節目についてこうコメントしている。

    「60年間もレースカーとロードカーを設計・開発してきたなんて、自分でも信じられない。グッドウッドで何千人ものファンと再会して思い出話ができるのを楽しみにしているよ。その翌月には、Gordon Murray Special Vehiclesのダブル・デビューも控えている。これまでのオーナーにも、これからの顧客にも、クルマとドライビングを称えるこの祝祭に参加してもらいたい」

  • 2026年F1プレシーズンテスト バルセロナで異例の5日間開催へ

    2026年F1プレシーズンテスト バルセロナで異例の5日間開催へ

    F1とFIAは、2026年シーズン開幕前に実施される3回のプレシーズンテストの日程と開催地を正式に発表した。また、アゼルバイジャンGPの日程変更も併せて明らかにされた。

    2026年から導入される新レギュレーションでは、マシンのシャシーとパワーユニットに大幅な変更が加えられ、F1の歴史の中でも最大級の技術刷新が行われる。このため、プレシーズンのテスト日数も2025年の3日間から大幅に増加し、合計9日間が予定されている。

    テスト初回は1月26日(月)から30日(金)までの5日間にわたり、カタルーニャ・サーキットで非公開テストとして実施される。。ただし、各チームはこのうち3日間のみ走行可能で、残り2日間は参加できない仕組みとなっている。これは過去に例のある悪天候による中断(2018年の雪など)への対策として設けられたものである。

    この初回テストでは、2026年型パワーユニットへの理解を深めることが期待されている。新PUはMGU-Hが廃止され、350kWの電力を発生させる強化型エネルギーシステムや、100%持続可能な燃料を搭載するなど、大きく刷新される。

    バルセロナでのテストの後は、2回の3日間テストがバーレーン・インターナショナル・サーキットで実施される。1回目は2月11日(水)~13日(金)、2回目は2月18日(水)~20日(金)の日程で、それぞれチームが自由に走行を行える通常形式のテストとなる。

    テスト終了後、F1は3月8日(日)に開幕戦を迎える予定で、舞台はオーストラリアGP(メルボルン)となる。

    また、カレンダーに関する追加の更新として、2026年F1アゼルバイジャンGPが当初の9月27日(日)から9月26日(土)に1日前倒しされることが決定された。この変更は、現地プロモーターおよび政府関係者からの要請に基づくもので、同国の祝日に配慮したものとなる。

    この日程変更により、現地でのイベントは全日程が1日ずつ前倒しとなる。すべてのF1チームにはすでにこのスケジュール変更が通達されている。

    2026年はF1にとって転換点の年でもある。キャデラックがフェラーリ製パワーユニットを搭載する新チームとして参戦を果たすほか、アウディもザウバーを買収し、ワークスチームとしてF1に本格参入する。これにより、2026年のパワーユニットメーカーはフェラーリ、メルセデス、レッドブル・パワートレインズ、ホンダ(復帰)、アウディの5社体制となり、ルノーは2025年限りで撤退する見込みだ。

    フォーミュラ1カー

    ■2026年F1プレシーズンテスト日程

    第1回テスト:バルセロナ
    日程:2026年1月26日(月)~1月30日(金)
    ※各チームは上記期間中、3日間のみ走行可能(2日間は休み)

    第2回テスト:バーレーン
    日程:2026年2月11日(水)~2月13日(金)

    第3回テスト:バーレーン
    日程:2026年2月18日(水)~2月20日(金)

    2026年のF1世界選手権