カテゴリー: F1マシン

  • アイルトン・セナ 母国F1ブラジルGP初優勝マシン『MP4/6-1』がオークション

    アイルトン・セナ 母国F1ブラジルGP初優勝マシン『MP4/6-1』がオークション

    アイルトン・セナが1991年のF1ブラジルGPで悲願の初母国優勝を果たしたマシン「マクラーレン MP4/6-1(ホンダV12)」が、12月にRMサザビーズのオークションに出品される。

    セナにとって地元インテルラゴスでの勝利は特別な意味を持つものだった。デビュー以来10度目の挑戦で初めて母国の頂点に立ったこの一戦は、彼のキャリアの中でも最も感情的で象徴的な瞬間として知られる。

    極限の肉体的限界でつかんだ歓喜のチェッカー
    当時すでに2度のF1ワールドチャンピオンだったセナは、世界的な人気を誇るレーサーとして母国ファンの熱狂の中にいた。しかし、レース終盤には豪雨とギヤボックスの故障という過酷な試練が襲う。6速ギヤのみが残された状態で、彼は71周を走り切るためにクラッチを滑らせながらコーナーを立ち上がり、減速にはブレーキだけを頼るという極めて繊細なコントロールを強いられた。

    強烈な痙攣と疲労の中、セナは当時最先端のマシン、ウィリアムズFW14・ルノーを駆るリカルド・パトレーゼをわずか2.9秒差で振り切って優勝。レース後は力尽きてステアリングを握れず、チームクルーの助けを借りて表彰台に立つほどだった。

    マクラーレン・ヘリテージから再び公の場へ
    このMP4/6-1はその後も複数のグランプリで使用され、セナは同年このマシンの後継シャシーで3度目、そして最後のタイトルを獲得。シーズン終了後、シャシーNo.1はマクラーレン・ヘリテージ・コレクションに収蔵され、2020年にプライベートセールで現オーナーの手に渡った。

    現オーナーの購入条件として「走行可能な状態での引き渡し」が求められ、イギリスのマクラーレン専門業者ポール・ランザンテ社によって整備を受けたうえで、今回の出品に備え再始動が確認されている。

    RMサザビーズは落札価格を1,200万〜1,500万ドル(約18億〜22億円)と見積もっており、入札は12月8日から11日にかけて行われる予定だ。

    セナ神話を象徴する「最後のホンダV12」
    このMP4/6は、マクラーレンとホンダの黄金時代を象徴する1台だ。自然吸気V12エンジンを搭載した最後のホンダF1パワーユニットであり、セナのフィジカルと精神力の極限を物語るマシンでもある。

    オークション市場では、マクラーレンMP4シリーズの実走可能個体が出品されるのは極めて稀であり、とりわけ「セナ初の母国優勝」という歴史的背景を持つこの車両は、世界中のコレクターにとって“伝説の象徴”として高値が付くことは確実だ。

    このマシンの落札結果は、今後の「F1ヘリテージ市場」における価格基準をも左右するとみられている。

    アイルトン・セナ マクラーレン MP4/6-1マクラーレン・ホンダ MP4/6-1ホンダ V12 F1エンジン

  • アウディ 2026年F1エンジン開発で出遅れ?メルセデスとの差は約30馬力

    アウディ 2026年F1エンジン開発で出遅れ?メルセデスとの差は約30馬力

    アウディF1が2026年のF1世界選手権でのデビューに向けて準備を進める中、その新型パワーユニットがメルセデス製エンジンに対して最大で31bhp(約31馬力)劣っているとの報道が浮上した。

    2026年からザウバーF1チームは正式に「アウディF1」へと名称を変更し、ドイツの自動車メーカーが完全買収したスイス拠点のチームとして新時代を迎える。

    アウディはメルセデス、フェラーリ、ホンダ、そして新規参入のレッドブル・パワートレインズ=フォードと並び、5つのF1エンジンメーカーの一角を担う。

    メルセデスが571bhp、アウディは540〜550bhpとの報道
    伊『Motorsport.com』によると、メルセデスの2026年仕様エンジンは420kW(約571bhp)を達成している一方、アウディは「400kWの壁を突破」した段階にあり、540〜550bhpの範囲にとどまっているという。

    その差はおよそ21〜31bhp。比較対象として、FIAが2023年に実施したパワーユニット解析では、最も非力とされたルノー製エンジンでさえ、先頭グループに対して20〜33bhpの差に収まっていた。

    報道によれば、こうした情報は「開発現場の空気を感じ取っている関係者」から漏れ伝わったもので、現在も各メーカーがエンジンダイナモ上で開発テストを進めている最中だとされる。

    「信頼性重視の段階」─ウィートリー代表が最新状況を説明
    ザウバーF1チーム代表のジョナサン・ウィートリーは先月のアゼルバイジャンGPで、アウディのエンジン開発が「スケジュール通り進行中」と説明。現在はパフォーマンスよりも信頼性の確立に重点を置いており、エンジンとシャシーを初めて統合テストするのは12月になると明かした。

    「パフォーマンスを語るのはまだ早すぎる」としながらも、アウディが次世代エンジンの信頼性確保を優先していることを強調した。

    フェラーリからの技術者流入で巻き返しへ
    アウディの開発体制には今後、フェラーリからICE開発責任者のヴォルフ・ツィンマーマンとその副責任者ラース・シュミットが加わる見通し。両名は2026年用フェラーリエンジンの開発完了後に移籍すると報じられており、チーフオペレーティング兼テクニカルオフィサーを務めるマッティア・ビノットの下で再びタッグを組むことになる。

    なお、フェラーリではツィンマーマンが提案した「スチール製シリンダーヘッド案」が信頼性の問題で採用されず、「極秘吸気システム」に開発の焦点を移しているという。

    2026年の新ルールと各メーカーの課題
    2026年はF1史上最大級の技術改革期となり、エンジンとシャシーのレギュレーションが同時に刷新される。新型パワーユニットは電動化比率50%、持続可能燃料の採用、アクティブエアロの導入など、従来の概念を大きく変える。

    メルセデスのトト・ヴォルフ代表は、フルパワー時に「時速400kmに達する可能性がある」と述べており、同チームの開発が他メーカーより進んでいることを示唆した。

    一方で、FIAは少なくとも1社が開発面で大きな遅れを取っていることを認め、「追加開発・アップグレード機会制度(ADUO)」を導入。コストキャップの緩和やベンチテスト時間の追加など、遅れているメーカーを支援する仕組みを整備する。

    アウディの課題は“パワーより成熟”
    現時点での馬力差は懸念材料ではあるが、アウディの開発ロードマップを見る限り、焦点は「信頼性」と「効率性の最適化」にある。

    2026年は電動化率の高さゆえ、単純なICE出力よりもエネルギーマネジメント能力が重要になる。初年度からメルセデス並みのパフォーマンスを発揮するのは難しいが、豊富な人的リソースとフェラーリ出身エンジニア陣の加入により、中期的な競争力強化の見込みは十分にある。

    一方、メルセデスが2014年に示したように、新レギュレーション初年度での技術的優位はタイトルを左右する要素になり得る。
    アウディがこの差をどこまで短期間で埋められるか──それが2026年シーズン最大の注目点のひとつとなりそうだ。

  • レッドブルF1 RB21 進化分析:新フロントウイングとフロアが導いた復活

    レッドブルF1 RB21 進化分析:新フロントウイングとフロアが導いた復活

    マックス・フェルスタッペンのアメリカGP優勝は、過去4戦で3度目の勝利となった。サマーブレイク以降の5戦では表彰台を外しておらず、一時は終わったかに見えたタイトル争いにも再び火がついた。では、レッドブルはどのようにしてこの復活を成し遂げたのか。

    シーズン後半戦に入ってから、RB21は生まれ変わったかのように活気づいている。その中心となったのは、新しいフロントウイングとアンダーフロアを軸とした一連のアップデートだ。

    RB21の空力哲学と改良の狙い
    新しいフロントウイングは、広いフラップ面積を持ち、従来よりも「エアロ・エラスティック(空力弾性)」に仕上げられている。これは5月のスペインGP以降に導入された静的荷重テストの新基準を満たしながら、速度域に応じて従来よりも空力的に柔軟性が高まっていると考えられている。

    その結果、車速が上がるにつれてフロントウイングの角度がわずかに寝るように変形し、低速域では高い回頭性を確保しつつ、高速域では安定性を維持するという理想的なバランスを実現した。

    以前のフェルスタッペンは、一部のサーキットではコーナー速度域全体でのバランス調整に苦戦していた。特にハイダウンフォースのサーキットでは、リアウイングの負荷が大きくなるため、その傾向が顕著だった。低速コーナーでは鈍くアンダーステア傾向が強く、逆にセットアップを変えてそれを補うと、高速コーナーの進入でリアが不安定になるという二律背反を抱えていた。

    レッドブル・レーシング RB21オースティン仕様(左)と以前の仕様(右)を比較したリアの冷却出口。出口部分がより低く広くなり、ボディワークとリアウイング下面の間にスペースが生まれている。

    より大型のフロントウイングは、低速では強力なダウンフォースを発生しつつ、高速域では荷重が大きくなるにつれて角度がしなやかにたわみ、攻撃的すぎない形状へと変化する。その結果、速度が上がるほどダウンフォースが過剰に増えすぎることを防ぎ、低速での応答性を確保しつつ、高速での不安定さを抑える狙いが達成されている。

    これは速度が上がるにつれて空力中心が後方に移動することを意味する。すべてのF1マシンがある程度この性質を持っているが、その移動量が大きいほど理想的であり、より広い速度域でバランスを取ることができ、ドライバーが攻めやすくなる。

    モンツァで新フロアが投入され、シンガポールではさらなるフロントウイング調整とともに、エンジンカバーの形状変更も行われた。ジョルジョ・ピオラの技術スケッチによると、リヤ冷却出口の再設計が車体後部の輪郭を大きく変化させている。

    オースティン仕様では、冷却出口が従来よりも低くワイドで楕円形となり、リアウイング下部との間により広い空間を確保。このことでリアウイングの効率を高め、空力中心をさらに後方へ移動させる効果が得られている。

    さらに、サイド部分にえぐれた形状を作り出すことで、冷却出口からの温風をウイング下面の気流から遠ざけ、乱流の影響を最小限に抑えている。

    レッドブルF1 RB21より楕円形になった冷却出口がボディワーク後端を広がった形状にしている。側面のえぐれ形状によって気圧が低下し、排熱された空気をリアウイング下面の気流から外側へ引き離す効果がある可能性がある。

    これら一連のアップデートは、ピエール・ワシェ、エンリコ・バルド、ベン・ウォーターハウスの技術チームによってサマーブレイク前から準備が進められていた。チーム代表のローラン・メキースも、この開発が2026年マシンへのリソース配分に影響していることを認めている。しかし、タイトルの可能性が残されている以上、その価値はあると判断された。

    一方、マクラーレン代表のアンドレア・ステラはオースティンで、今季残りのレースではMCL39に新しい開発パーツは投入しないと明言した。どちらのアプローチが正しいかは、時間が証明するだろう。

    フェルスタッペンの復調は「空力中心の後退」が鍵
    フェルスタッペンが再び手にした“乗りやすいマシン”は、単なるアップデートの積み重ねではなく、空力哲学そのものの微調整によって実現された。速度域全体でのバランス変化を滑らかにすることで、ドライバーが限界まで攻められる“可変型空力ウインドウ”を作り出したのだ。

    この方向性は、2025年後半戦だけでなく、2026年以降の新レギュレーション下でも重要な布石となる可能性がある。レッドブルは再び、空力制御の「アート」を取り戻したといえる。

  • 2026年F1エンジン規定改訂 新制度「ADUO」で出遅れメーカー救済

    2026年F1エンジン規定改訂 新制度「ADUO」で出遅れメーカー救済

    FIA(国際自動車連盟)は、2026年から施行されるF1新レギュレーションにおいて、パワーユニット(PU)メーカーの開発機会を拡大する新制度「ADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities/追加開発・アップグレード機会)」を導入することを正式に承認した。

    この改訂は、木曜日に行われた世界モータースポーツ評議会(WMSC)の会合で決定されたもので、ロンドン・ナイツブリッジに新設されたFIAオフィスからビデオ会議形式で開催された。

    ADUOコンセプトとは何か
    「ADUOコンセプト」は、2026年の新PU時代において、他メーカーよりも性能面で遅れを取ったサプライヤーに対し、追いつくための追加的な開発機会を与える仕組みだ。これにより、FIAは競争バランスを保ちながら、各PUメーカーが公平な環境で進化を続けられるようにする狙いがある。

    F1の2026年型エンジンは現行の1.6リッターV6ターボを基礎にしつつ、MGU-Hの廃止と電動出力比率の大幅増加によって、内燃機関とハイブリッド系の出力をほぼ等分にする全く新しいフォーミュラとなる。来季のPUサプライヤーはフェラーリ、メルセデス、レッドブル・パワートレインズ、ホンダ、そしてアウディの5社だ。

    FIAによる進捗評価と支援プロセス

    FIAはシーズン中の特定の節目で各メーカーのPU性能を評価する。評価ポイントは、シーズン6戦目(25%時点)、12戦目(50%)、18戦目(75%)の3段階で設定されており、そこで性能不足が認められたメーカーには以下のような支援策が適用される:

    ■ PUのホモロゲーション(公認)変更の追加許可
    ■ コストキャップ(予算上限)の緩和措置
    ■ PUベンチテストでの追加開発時間の付与

    また、信頼性に深刻な問題を抱えるPUメーカーには、特別なコストキャップ緩和が別途認められる。これは開発凍結下での信頼性修復が財政的に過大な負担となるのを防ぐための措置だ。

    “失敗を救済する安全網”としての新制度
    これらの新ルールは、開発に出遅れたメーカーに対して「安全網(セーフティネット)」を提供するものだ。成功したメーカーが優位を保てる期間は短縮され、逆に苦戦するメーカーは改善の機会を得る。これにより、F1が2014年にハイブリッドPUを導入した際のような極端な性能差(当時のメルセデスの独走)を防ぐ狙いがある。

    2014年当時は、異なる仕様のハードウェア/ソフトウェアを顧客チームに供給できたことや、開発トークン制が導入されていたことが競争の偏りを生み、メルセデスの長期支配を許す結果となった。FIAは今回の「ADUOコンセプト」により、こうした格差の再発を未然に防ぐ構えだ。

    Source: PlanetF1

  • 2026年F1マシン 見た目が同じ「退屈なデザイン」懸念広がる

    2026年F1マシン 見た目が同じ「退屈なデザイン」懸念広がる

    2026年シーズンから導入される新レギュレーションにより、F1はパワーユニットと空力の両面で大きな転換期を迎える。

    新時代のマシンはどのような姿になるのか、かつてのようにチームごとに個性が際立つのか、それとも似通った“退屈なデザイン”が並ぶのか注目が集まっている。

    2022年の多様性から4年、設計は収束へ
    現行のグラウンドエフェクト時代が始まった2022年当初、フェラーリの「バスタブ型」サイドポッド、レッドブルの「ランプ形ラジエターカバー」、そしてメルセデスの「ゼロポッド」など、各チームが大胆なコンセプトを競い合った。

    独自性に満ちたデザインが並んだあの年は、「技術ファンにとって黄金期だった」と『Auto Motor und Sport』は評している。

    しかし4年の歳月を経て、フォーミュラ1カーの外観は収束の一途をたどっている。

    メルセデスのアンドリュー・ショブリンは「2022年と比べると、ディテールの自由度はまったく違う。今では多くの領域で同じ形にならざるを得ない」と語り、「多様性が見られるのは最初の発表時だけだろう」と指摘する。

    一方で、現在アストンマーティンの2026年型マシンを設計するエイドリアン・ニューウェイは、異なる見解を示す。

    「マシンがみんな同じように見えるのは退屈だ。塗装でしか見分けがつかないのはつまらない。2026年はきっと違う解決策が見られるはずだ」と語り、再び“多様性の時代”が訪れる可能性を示唆した。

    技術規制の中で問われる創造性
    2026年の新レギュレーションでは、空力構造やエネルギー回生システムなどの設計領域が細かく定義され、チームが自由に発想を広げられる範囲はこれまでよりも狭くなる。

    サイドポッドやフロア形状の自由度が制限されることで、極端な違いを持つマシンを作ることは難しくなるとみられている。

    それでも、開幕当初は各チームが独自の哲学を持ち込み、2022年初期のような形状の多様化が一時的に見られる可能性がある。

    だが最も効率的なコンセプトを見つけたチームが現れれば、それが基準となり、他チームが短期間で模倣する流れは避けられない。

    ショブリンが言う「最初の発表時の多様性」は、この短い設計探索期を指していると考えられる。

    ニューウェイが理想とする「違いが見えるF1」とは、単なる見た目の差ではなく、各チームの思想が造形に現れる“哲学の競演”である。

    ホンダとワークス体制を組むアストンマーティンをはじめ、設計者の発想力が試される2026年シーズンは、個性と効率のせめぎ合いの年になるだろう。

    最終的に、2026年F1のマシンが“退屈”かどうかを決めるのは規則ではなく、限られた自由度の中で創造性を発揮できるかという、エンジニアたちの想像力にかかっている。

    Source: GMM

  • 2026年F1レギュレーション 各チームを悩ませる「変わり続けるターゲット」

    2026年F1レギュレーション 各チームを悩ませる「変わり続けるターゲット」

    2026年から施行される新レギュレーションは、F1チームにとってかつてない複雑さを伴う大改革となる。パワーユニットの大幅な電動化、アクティブエアロの導入、車重の軽量化、さらにはタイヤの仕様変更と、開発現場は多くの変数を抱えている。

    メルセデスのアンドリュー・ショヴリンは、シミュレーションでさえ予測が難しく「動く標的」と表現される状況に直面していると説明。各チームは依然として明確な指標を持てず、バーチャルカーの性能を見極めながら来年1月のシェイクダウンに向けた開発を進めている。

    あと4か月で、F1チームは2026年型の新車を完成させ、1月末にバルセロナで行われるシェイクダウンテストに持ち込む。その開発を効率化するためには、プレシーズンでの性能予測を今この時点で正しく行う必要がある。

    シャシーとパワーユニット両面での大規模な規則変更により、史上最も困難なレギュレーションシフトに直面しているといえる。チームは、従来よりも大幅に電動化が進み、電気エネルギーと内燃パワーがほぼ50/50の割合となる効率的なハイブリッドエンジンに合わせて、新しいシャシーを設計しなければならない。

    すでに全チームが2026年に焦点を移して開発を進めているが、1月の期限が近づく中で、空力開発のスピードは依然として速く、常に動く標的を追いかけるような状況となっている。シミュレーター上でバーチャルカーを走らせながら、冬季テストでのダウンフォース水準を予測する作業に追われているのだ。

    「クルマは週ごとに進化していて、性能が変わればシミュレーションの結果も変わる」と、メルセデスのトラックサイド・エンジニアリングディレクターであるアンドリュー・ショヴリンは説明する。

    「シャシーパッケージをエンジンとパワーユニットに最適化しようとする中で、複雑さが生じている。今年は難しい年になるだろう。シミュレーターで走らせるバーチャルなクルマがあるが、4か月後のダウンフォース水準を予測しなければならない。実際に走らない仕様で作業しても意味がないからだ。我々がローンチする仕様を代表するもので作業する必要がある」

    2026年には、改訂されたパワーユニットとECU、グラウンドエフェクトから離れてアクティブエアロを取り入れるシャシー規則が導入される。さらにピレリはタイヤ幅を狭め、最低重量は800kgから768kgへと削減されるが、バッテリー重量は増加する。F1は持続可能燃料にも移行しており、車同士のレースが成立するようにエンジンのデプロイメントパラメータを確定させる作業も残されている。

    変数が膨大で、さらにパドックに漂う煙幕や駆け引きもあるため、2026年シーズン開幕時にどのチームが好調かは、2月にバーレーンで行われる公式テストまで明らかにはならないだろう。

    その一例が、シャルル・ルクレールが7月に「シミュレーターで試した2026年型フェラーリの操縦感覚が気に入らなかった」と明かしたことだ。これは、スクーデリアの開発がまだ初期段階にあるか、あるいはルクレールが試したバーチャルモデルが未成熟だったことを示すものだと、ウィリアムズ代表のジェームス・ボウルズは指摘した。

    アンドニュー・ショブリン

    ショヴリンによれば、ピレリもチームから様々なダウンフォース水準の報告を受けており、それがコンストラクションやコンパウンド決定に影響を与えているという。

    「ピレリはストレートエンドでの荷重に関して、全く異なる数値を各チームから受け取っていると言っている」とショヴリンは明かす。

    「だが我々は孤立して開発していて、他チームがどう進めているかは全くわからない。だから多様性が最も顕著に現れるのは、新車を走らせ始める瞬間だろう。実際には好調なチームもあればそうでないチームもある。そして特に調子がいいチームは自分たちの状況を控えめに見せたがるかもしれない。ある者は将来到達するつもりの水準を提示し、別の者は現状を提示しているのだろう」

    ただしショヴリンは、2026年序盤にパフォーマンス差が極端に広がるという懸念は否定した。パワーユニット性能、空力、そして厳しい最低重量制限への対応に違いが出るとしても、差はそれほど大きくならないと見ている。

    「規則の仕組みからして、ローンチ時点での差は大きくはならないと思う」と彼は述べ、現行規則と同様に、表面上は厳密なルールでも細部では多くの工夫の余地があると指摘した。

    「今と同じで、塗装を全て同じ色にしてもクルマを見分けられるだろう。規則に自由度が少ない部分では、どのクルマも似通った外観になるはずだ。そして時間が経つにつれてチームは特定の領域を突き詰め、より多くのディテールを加えていく」

  • エンツォ・オゼッラ 86歳で逝去 F1参戦とスポーツカーでの功績

    エンツォ・オゼッラ 86歳で逝去 F1参戦とスポーツカーでの功績

    イタリアのレーシングカー製造者エンツォ・オゼッラが86歳で永眠した。彼のスポーツカーは数え切れないほどの勝利を収めたが、F1では北イタリア出身のオゼッラにとって必ずしも成功ではなかった。

    イタリアからの訃報によると、カンビアーノ(ピエモンテ州)出身のエンツォ・オゼッラが9月27日にトリノで逝去した。享年86歳。彼の手がけたレーシングカーはヨーロッパ選手権や国内選手権で数多くのタイトルを獲得した。

    オゼッラ・エンジニアリング(旧オゼッラ・コルセ)は、ヴィンチェンツォ(エンツォ)・オゼッラによって設立され、F2やF1ではオゼッラ・スクアドラ・コルセとして参戦した。

    スポーツカーではサーキットやヒルクライムで長年にわたり圧倒的な強さを誇った一方で、F1への挑戦は成功とは言いがたかった。1980年南アフリカGPから1990年オーストラリアGPまで132戦に参戦し、最高成績は1982年イモラでジャン=ピエール・ジャリエが記録した4位。コンストラクターズ選手権では1984年の12位が最高だった。最高グリッドは1990年フェニックスでオリビエ・グルイヤールが記録した8番手だった。

    オゼッラのF1マシンは長年「不格好で重い」「資金不足」「競争力不足」と言われた。しかし彼の活動はF1を超えてイタリアのモータースポーツ史に大きな足跡を残した。

    エンツォ・オゼッラは父が営んでいたトリノ中心部の工場でモータースポーツへの情熱を育んだ。最初はラリーでコ・ドライバー、その後ドライバーとして経験を積んだ。

    若きオゼッラの転機となったのは、カーロ・アバルトが将来の販売代理店向けに開講した講座に参加したことだった。この出会いがオゼッラの人生を大きく変えることになった。

    1971年、フィアットに吸収されたアバルトのレーシング部門をオゼッラが引き継ぎ、トリノ郊外ヴォルピアーノにオゼッラ・コルセを設立。フォーミュラ・フォード、F3、F2を経て、1980年にエディ・チーバーを起用してF1に参戦。2年後のサンマリノGP(イモラ)でジャン=ピエール・ジャリエがチーム史上最高の4位を記録した。

    チームは1990年までF1に参戦し、その後1992年に資金提供者ガブリエレ・ルーミに売却され、フォンタルメタルの名で活動したが資金難で撤退。しかしオゼッラ・コルセはスポーツカーを作り続けた。

    1990年代初頭、オゼッラはEUの助成金による条件で、拠点をトリノから南イタリアのポテンツァ県アテッラに移転。風洞やシミュレーターを備えた新工場を建設し、数々の成功したスポーツカーを開発した。

    2010年代初頭に社名をオゼッラ・エンジニアリングへ変更し、ピエモンテに戻り、トリノ郊外ヴェロレンゴに工場を開設した。

    スポーツカーレースはオゼッラの柱であり、ワークスやプライベートチームによって欧州選手権やヒルクライムで使用された。1980年代にはマウロ・ネスティがオゼッラ車で山岳欧州選手権を6連覇するなど、数百勝・数十タイトルを獲得した。

    エンツォ・オゼッラ F1
    1982年モントリオール:最も暗い瞬間
    オゼッラは自ら設計したマシンに強い誇りを持っていたが、1982年カナダGP(モントリオール)で最も悲しい瞬間を迎えた。このレースで若きオゼッラのドライバー、リカルド・パレッティが命を落としたのだ。享年23。

    レーススタートでディディエ・ピローニ(フェラーリ)がストールし、後方のパレッティは前方を確認せずにシフト操作に集中していたため、そのまま追突。炎上するオゼッラのマシンから意識のないパレッティを救出することはできなかった。母親が現場に駆け寄り、燃えるマシンに飛び込もうとするのを、チーム代表のエンツォ・オゼッラが必死に止めた。

    パレッティは大動脈断裂と脚の複数骨折により死亡。現場は悲劇に包まれた。当時、わずか1か月前にジル・ヴィルヌーヴがゾルダーで亡くなっており、F1界は二重の衝撃に見舞われた。

    その後、パルマ県ヴァラーノのサーキットは1983年から「アウトドローモ・リカルド・パレッティ」と改名され、彼の名を今に伝えている。

  • F1ドライバー不満 DRS効果減少でオーバーテイク困難に

    F1ドライバー不満 DRS効果減少でオーバーテイク困難に

    F1ドライバーたちは、追い抜きが再び難しくなっていることに不満を募らせており、エンジニアたちも、かつて強力だったDRS(ドラッグ・リダクション・システム)の効果が薄れつつあることを認めている。

    バクーでは、2.2kmにわたる全開区間を持つにもかかわらず、51周のレースで記録されたオーバーテイクはわずか24回──そのうち7回はリスタート時のものだった。その後はレースが大きく膠着し、より速いマクラーレンやフェラーリでさえ、前のマシンを抜くのに苦戦した。

    2022年に導入されたグラウンドエフェクト規定は、追走を容易にすることを目的としていた。当初は確かにその効果があった。

    しかし、メルセデスのエンジニア、アンドリュー・ショヴリンによれば、その後の開発によってバランスが変化したという。

    「マシンはますます効率的になっている」と彼は説明した。

    「だから、前のクルマが後ろのクルマに対して空気の穴を大きく残さなくなっている。スリップストリームの効果は小さくなっているんだ」

    F1 ドラッグ・リダクション・システム

    同じ傾向はDRSの効力をも鈍らせている。より多くのダウンフォースがフロアから生み出されるようになったことで、リアウイングは小型化された。かつて「モナコ仕様のウイング」と呼ばれたものは、ハイダウンフォースのサーキットでさえほとんど見られなくなっている。

    小さなウイングは、通常走行時のドラッグが少ないことを意味する。そしてDRSを開いたときに削れるドラッグも少なくなる。

    「モンツァでは、DRSはほとんど効果がなかった。というのも、ウイングがアップライトの状態ですでにほとんどドラッグを発生していなかったからだ」とショヴリンは認めた。

    「DRSが壊せるものは何もない」

  • ホットウィール F1ミニカー新製品ライン発表 9月下旬より日本発売決定

    ホットウィール F1ミニカー新製品ライン発表 9月下旬より日本発売決定

    マテル・インターナショナルは、世界的ダイキャストカーブランド「ホットウィール」から、コレクター向けF1ダイキャストカーおよび、家庭でF1のスリルを楽しめる2種類のプレイセットを発売する。日本では2025年9月下旬より順次販売開始となる。

    2024年に初めて数量限定で発売されたホットウィールのF1カーは大きな成功を収め、さらにF1との複数年ライセンス契約の締結を背景に、2025年1月24日、米国カリフォルニア州エル・セグンドにて新製品ラインが発表された。

    今回日本で展開されるのは、精巧なディテールが施された「ホットウィール プレミアム レースアソートメント」と、F1のスピード感を体感できる「Formula 1スプリントレース サーキット」と「Formula 1グランプリ サーキット」の2種類のプレイセットだ。

    ホットウィールレースアソートメントは、金属製のボディとシャーシ、実際のチームのカラーリング、ピレリブランドのタイヤが特徴でコレクターも納得の仕様となっており、プレイセットはF1のスピード感を味わいながら、家族や友人と本格的なレースが楽しめる。

    ホットウィール Formula 1スプリントレースサーキットのトラックセットは手動のブースターで加速を楽しむことができ、ホットウィール Formula 1 グランプリ サーキットは、マシンのスピード走行に加え、手動の装置を使ってオーバーテイクを楽しむことができる。

    ■ホットウィールとマテルの車両&ビルディングセット部門のグローバル責任者、ロベルト・スタニチ氏のコメント
    「ホットウィールとF1の発表以来、世界中のファンから熱烈な反応をいただいており、非常にうれしく思う。今後のパートナーシップは、ホットウィールとF1の世界観をかつてない形で融合させ、ファンに新たな体験と製品を提供することにフォーカスしている。そして、これは始まりに過ぎない」

    ■フォーミュラ1のチーフ・コマーシャル・オフィサー、エミリー・プレイザー氏のコメント
    「ホットウィールF1コレクションが店頭に並ぶのを見るのは素晴らしいことだ。F1への情熱をさらに高めていただけるよう、これらの精密にデザインされた車は、ファンが自宅でF1の興奮とドラマを手のひらの中で体感できるアイテムとなるだろう」

    ■ホットウィール 新製品ラインナップ(2025年9月下旬発売)

    ホットウィール プレミアム レース アソートメント
    メーカー希望小売価格は各1,300円(税込1,430円)。発売日は2025年9月下旬で、対象年齢は14才以上。パッケージサイズはW13.3×D5.1×H16.5(cm)。

    このシリーズは金属製ボディとシャーシ(Metal/Metal仕様)、リアルライダーズ製ゴムタイヤを搭載した高品質な1:64スケールF1カーで、実車を忠実に再現している。ディスプレイ用台座と特別パッケージも付属し、コレクション性を高めている。

    Metal/Metal仕様は金属製のボディとタイヤ、リアルライダーズ製タイヤはゴム製のリアルなつくりを意味する。お気に入りのF1チームを選ぶのも、すべてをコレクションするのもおすすめだ。

    <9月発売予定>
    オラクル レッドブル・レーシング RB20
    BWT アルピーヌ F1 チーム
    マネーグラム ハース F1 チーム

    <10月発売予定>
    オラクル レッドブル・レーシング RB20
    マクラーレン フォーミュラ1チーム
    ウィリアムレーシング FW46
    キックザウバーF1チーム

    <11月発売予定>
    オラクル レッドブル・レーシング RB20
    マクラーレン フォーミュラ1チーム
    VisaキャッシュアップRB F1チーム
    メルセデスAMGペトロナスF1チーム

    各商品は別売りで、在庫状況により販売されていない場合がある。スタイルやカラー、装飾は異なる場合がある。

    F1 ホットウィール プレミアム レース アソートメント

    ホットウィール Formula 1 スプリントレース サーキット
    メーカー希望小売価格は7,000円(税込7,700円)。発売日は2025年9月下旬で、対象年齢は4才以上。パッケージサイズはW44.45×D8.89×H33.02(cm)。

    手動の加速ブースターを搭載し、S字カーブ、インナートラック分岐、ラップカウンターなどを備える。臨場感あるレース体験が可能で、マクラーレンF1チーム、BWT アルピーヌ・レーシング、VisaキャッシュアップRBチームの車両がフィーチャーされている。

    F1 ホットウィール Formula 1 スプリントレース サーキット

    ホットウィール Formula 1 グランプリ サーキット
    メーカー希望小売価格は13,000円(税込14,300円)。発売日は2025年9月下旬で、対象年齢は5才以上。パッケージサイズはW71.12×D10.16×H33.02(cm)。

    3レーン・ブースターによる高速走行と手動式DRSを活用したオーバーテイクが可能なリアルなプレイセット。180度ターンに設けられた「オーバーテイク・ウォール」では、2レーンから1レーンへ合流して首位を奪還するシーンを再現できる。

    最大25周まで計測可能な2レーン対応ラップカウンターを搭載し、周回数を確認しながら本格的なレースを体験できる。「インフィニティモード」に切り替えると、制限なく自由に走行を楽しむことができる。

    ホットウィール Formula 1 グランプリ サーキット

    ■ホットウィールについて
    ホットウィールは、現在までに80億台を製造している販売台数世界一のダイキャストカーブランドだ。マテル社の創業者、RuthとElliot Handlerによって、バービーに次いで子どもたちの創造力を刺激する次なる商品を世に送りだそうと考えて作られたブランドだ。1968年以来、1,000車種・2,000モデル以上の商品が登場している。ホットウィールは毎週800万台以上の商品を製造し、全世界にて1秒に16台販売している、子どもから大人まで、世界中で幅広く人気があり販売されているブランドだ。

    ■マテル社について
    マテルは、世界をリードするおもちゃとファミリーエンターテイメント企業であり、世界で最もアイコニックなブランドポートフォリオを展開している。バービー、ホットウィール、フィッシャープライス、きかんしゃトーマス、UNO、マッチボックス、MEGA、ポリーポケット、マスターズ・オブ・ジ・ユニバースなどを通じて、おもちゃ、コンテンツ、消費者製品、デジタルおよびライブ体験を提供している。マテルは1945年の創業以来、信頼されるパートナーとして、だれしもが子どもの頃に熱中していた好奇心をずっと持ち続けられるよう、誇りをもって取り組んでいる。

  • ホンダも同意? F1 V8エンジン復活案は当初計画通り2031年を軸に進行

    ホンダも同意? F1 V8エンジン復活案は当初計画通り2031年を軸に進行

    F1で議論が続いていた「持続可能燃料で駆動するV8エンジン」復活案は、2029年導入が正式に消滅し、2031年以降に先送りされる見通しとなった。モンツァでFIA会長モハメド・ビン・スライエムがメーカー会合の中止を通知したことで、当初想定されていた妥協案の2030年導入も実現の可能性が低下。ホンダやアウディを含む大半のメーカーがコスト負担や開発リスクの観点から早期移行に消極的な姿勢を示し、F1の将来のエンジン規則は当初計画通り2031年を軸に進むことになる。

    F1のエンジンメーカーたちは、モンツァでFIA会長モハメド・ビン・スライエムが2029年のV型8気筒エンジン導入に関する会合をキャンセルしたと通知し、不意を突かれた。

    数カ月にわたり、次世代のターボハイブリッドから持続可能燃料で駆動するV8エンジンへと移行する枠組み合意をまとめようと議論が続けられてきた。そのため、最近数週間では何らかの合意に至れるのではないかという見通しがあった。

    実際、『The Race』が独占的に報じたように、ビン・スライエムは9月11日にロンドンでメーカーたちを集め、合意に向けて話を進める会合を招集していた。

    もちろん、メーカー間にはまだ意見の相違が残っていた。しかし、だからこそ全員を一堂に集め、その場で議論して解決する意味があった。

    基本的な「2.4リッターV8内燃機関」コンセプトは広く支持されていたが、多くの細かい点では見解が分かれていた。

    ターボ要素を含めるかどうかもそのひとつだった。また、すべての自動車メーカーが何らかのバッテリーハイブリッド要素は不可欠と認識していたが、その全体出力への寄与度をどの程度にするかは意見が割れていた。

    10%で良いと考える者もいれば、30%を望む者もおり、数値にあまりこだわらない者もいた。

    しかし最も論争を呼んだのは、導入時期の問題だった。

    いつ導入するのかという問題
    ビン・スライエムは2029年に新エンジンを導入することを望んでいた。そうすれば、彼が懸念する2026年からの新世代ターボハイブリッドにかかる巨額コストを3シーズンだけ負担すれば済むと考えたからだ。

    しかし、このタイムラインは大多数の自動車メーカーには支持されなかった。

    レッドブルとキャデラックはこの日付に賛成していたとされるが、他のメーカーはそうではなかった。メルセデスとフェラーリは2030年がより現実的だと理解していた。

    そしてホンダとアウディは、2030年末まで新しいターボハイブリッドを維持するという現行計画を変更することには特に関心を示していなかった。

    F1のパワーユニット・ガバナンス協定では、「抜本的」な変更──新しいエンジンの導入のようなもの──を2031年以前に行うにはメーカーの「スーパー・マジョリティ」が必要とされる。

    関係者によると、この承認を得るには4メーカーの支持が必要だった。

    決定の対象となる年によって、支持が必要な母数は2026年から参入する5社(フェラーリ、メルセデス、レッドブル、ホンダ、アウディ)のうち4社、または2029年に参入予定のキャデラックを加えた6社のうち4社ということになる。

    ホンダとアウディが強く反対し、メルセデスとフェラーリが2030年以前の導入を望まなかったため、2029年案が成立する可能性はなかった。

    しかし、2030年であれば不可能ではなかった。フェラーリ、メルセデス、レッドブル、キャデラックがそのタイムラインを支持すれば、理論的には合意に進むことができ、さらにホンダかアウディのいずれかを説得できる可能性もあった。

    だが、ロンドン会合を利用して2030年での妥協に向かう余地があったにもかかわらず、ビン・スライエムはすべてを中止した。

    彼の視点では、2029年に変更が支持されないことが明らかになった以上、ロンドン会合を行う意味がなかった。

    しかし驚くべきことに、チームに送られた通知では「2029年が消えた以上、次は2030年の準備」という話にはならなかった。焦点は2031年に向けたルール作りに移るとされたのだ。

    つまり、当初の計画通り、新しいターボハイブリッド規則の5年間を全うすることになる。

    感情か、それとも理性か?

    「2029年か、さもなくば2031年」という姿勢は、なぜこうした判断が下されたのかとメーカーたちの間に興味を呼んだ。

    これは、巨額コストを回避することにメーカーが関心を示さないことに対するビン・スライエムの苛立ちが噴出したものなのか。彼は以前、よりシンプルで安価なV8エンジン構想について「彼らは受け入れなければならない、だってそれが常識だからだ」と語っていた。

    それとも、より論理的で現実的な理由があったのか。

    上層部の情報筋によれば、「2029年か2031年か」という判断は感情的反応ではなく、メーカーが直面している状況を踏まえた現実的な判断だったという。

    2029年に変更すれば、新ターボハイブリッドにかかるコストを2年間分節約できる。しかし2030年に変更した場合は、わずか1シーズンしか恩恵がなく、拙速すぎると見なされたのだ。

    ある情報筋は『The Race』に「たった1年のために本当にそれをやる価値があったのか?」と語った。

    2029年末までに新しいエンジン技術(特にバッテリー)が成熟し、財政的効率性がシステムに根付くと期待されている。そのため、1シーズンだけのルール改訂では大きな利益が得られず、2031年からしっかりと導入する方が合理的と判断された。

    さらに、メーカーたちがビン・スライエムに返した反応の中で、「世界は変わった」という認識が広がっていた。

    米国大統領ドナルド・トランプによる関税、各国政府によるEV政策の揺れ、中国経済の減速がメーカーの財務に重くのしかかった。

    その結果、F1参戦メーカーたちは、ターボハイブリッドとV8の二重開発プロジェクトに資金を投じる意欲を持たなくなった。

    メルセデス代表トト・ヴォルフは「ほとんどのOEM(自動車メーカー)は『2年以内に新エンジンを開発しなければならない二重コストプログラムは望まない』と言っている。我々も同じだ」と『The Race』に語った。

    F1 V型8気筒 エンジン / ホンダ(本田技研工業)

    適切なタイミングを選ぶ
    一部メーカーが表明していた懸念は、V8移行を急ぎすぎているという感覚だった。

    将来のエンジンロードマップは、時間をかけて適切に検討すべき問題だと多くが考えていた。

    2029年変更案を終わらせたことにより、メーカーが財務状況やF1で何を望むのかをじっくり考える余地が生まれた。

    また、2026年規則で犯した失敗を避けられる。

    翌年導入される規則については、完璧ではないエンジンルールを作ってしまったことで、シャシー規則を妥協せざるを得ない状況に陥り、不確実性を招いた。

    エネルギー回生やエネルギー投入がレースに与える影響には依然として疑問があり、可動式エアロの全面導入も結局はエンジン出力不足を補うための応急処置にすぎない。

    したがって一部メーカーからすれば、V8+ハイブリッドという新規則を急いで決定するのは理想的ではなかった。

    むしろ、F1の車両がどうあるべきかについて総合的な議論を行うべきだと考えている。重量、寸法、パワーウェイト比、どのようなレースをF1が目指すのか。そして、顧客チームのコストなど、メーカーにとって重要な課題も含まれる。

    こうした答えは、数時間のロンドン会議から生まれるものではなく、関係者を交えて数カ月にわたる詳細な議論からしか得られない。

    V8の次のステップ
    2029年のV8移行案は完全に消えたが、その後の状況はまだ明確ではない。

    現在の計画は、2031年に向けて正しい手順を検討する作業を続けることだ。FIA、FOM、メーカーは今後数カ月間協議を続け、このプロセスを前進させる。

    理論的にはFIAが2031年以降のルールを独自に定めることも可能だが、そうすればメーカーが好まない道をF1が進むリスクを伴う。

    したがって、すべての当事者が合意し、受け入れられる形でルールをまとめる方が理にかなっている。

    「V8+ハイブリッド+持続可能燃料」という構想自体は、大多数が受け入れられる案として残っている。

    ただし、2030年が完全に消えたわけではない。2026年規則がどのような結果をもたらすか次第である。

    もし懸念されるような大失敗にはならなければ、2031年以前に変更する可能性はほぼ消えるだろう。

    だが、もし問題が起こり、レースやコスト、技術面で規則があまりにマイナスに作用する場合は、2030年が再び俎上に載る可能性がある。

    イタリアGPでこの件について語ったヴォルフは、F1の将来に向けた大まかな方向性は定まったと述べた。ただし、要素を確定し、最終パッケージをまとめるにはまだ時間が必要だとした。

    「最終的にV8が最良の妥協点だった。高回転で回る自然吸気、依然として性能差を生むエネルギー回生システム、持続可能燃料──そのすべては一致している。

    今はモハメド(ビン・スライエム)、ステファノ(ドメニカリ)と対話し、『今後どうするか?』をメーカー全員で話し合う段階だ。

    利害の一致があると思う。我々がしている会話は非常にバランスが取れていて、理性的だ」

    F1の過去を彩ったV8は、未来においてもその中心となりそうだ。ただし、それは当初望まれていた2029年ではなく、2031年以降になる見通しである。