カテゴリー: F1マシン

  • 2026年F1マシン ホイールカバーが規制部品から設計自由度のある要素へ

    2026年F1マシン ホイールカバーが規制部品から設計自由度のある要素へ

    2026年F1の技術レギュレーション刷新という大きな流れの中では、パワーユニットや空力思想の変化が注目されがちだが、一見すると細部に思える要素にも重要な変化が含まれている。そのひとつがホイールカバーだ。

    ホイールカバーは近年、ファンの間で評価が分かれる存在となってきた。視覚的なインパクトを評価する声がある一方で、従来のホイールデザインに戻ることを望む意見も少なくない。

    さらに2026年からは、ホイール自体が完全な標準部品ではなくなり、オープンソース化される予定で、2025年シーズン後のアブダビテストでは、すでにいくつかのチームが異なる解釈を試し始めている。

    ホイールカバーは2022年に再導入された際、全チーム共通の標準部品として位置付けられていた。その目的は、タイヤ周辺で発生する乱流を抑え、後続車が追従しやすい空気の流れを作ることにあった。これは、ブレーキ周辺の構造を利用して、ホイール内部から外側へ空気を排出するような空力的トリックを禁止した、FIA(国際自動車連盟)の方針とも一致していた。

    この時代のホイールカバーは、いわば空力的な「栓」として機能する存在であり、形状も役割も厳しく定義されたものだった。しかし2026年に向けて、その位置付けは大きく変わりつつある。

    2025年10月以前のレギュレーション草案では、ホイールカバーは非常に厳密に規定されていた。各ホイールには、内径310mmと明確に定められた穴を持つディスクを装着しなければならず、事実上、中央に決まった大きさの開口部を持つ固定形状の部品として扱われていた。このため、FIAやF1が公開してきたレンダリングでも、ほぼ同一形状のディスクが描かれていた。

    フォーミュラ1カー

    ところが、2025年末にかけて更新された最新の草案では、この記述が大きく変更された。もはや「内径が定められたディスク」という表現は使われず、「環状(アニュラー)ディスク」とのみ記されている。つまり、内部開口部の大きさについて、FIAが具体的な数値を指定しなくなったのだ。

    一見すると小さな文言変更だが、設計の自由度という観点では決定的な違いを生む。安全面や特定の体積を侵害しないといった制約は依然として存在するものの、チームはこれまでよりも柔軟に、ホイール周辺の空力処理を考えることが可能になる。

    この新しい方向性を示唆する最初の実例は、2026年F1参戦を控えるAudiが、先週バルセロナで行ったフィルミングデーで確認された。公開されたマシンのホイールカバーは環状構造を維持しつつも、内側が閉じられた形状となっており、従来のFIAレンダリングに見られた「完全に開いた中央部」とは異なるアプローチが採られている。

    この変更がどこまで空力的な意味を持つのか、また他チームがどのような解釈を打ち出してくるのかは、今後のテストや開幕戦を通じて徐々に明らかになっていくだろう。少なくとも、2026年のホイールカバーはもはや単なる共通部品ではなく、各チームの設計思想と創意工夫が反映される、新たな競争領域のひとつになりつつある。

  • 2026年F1マシンに潜む新たな危険 MGU-K回生が招くリアブレーキ問題

    2026年F1マシンに潜む新たな危険 MGU-K回生が招くリアブレーキ問題

    2026年F1マシンは、MGU-Kが運動エネルギー回収の中核を担い、ハイブリッドシステムに必要な出力のすべてを供給する存在となる。

    このコンポーネントが過剰に使われることを考えると、リアの機械式ブレーキが適正な作動温度を維持できなくなる大きなリスクが生じる。これはブレーキング局面において決して小さくない問題を引き起こす可能性がある。以下、その仕組みを詳しく見ていく。

    FIAが前輪MGU-K回生を禁止した理由
    2026年F1レギュレーションにおいて明確にしておくべき重要な点がある。それは、MGU-Kというモーター・ジェネレーターを通じてエネルギーを回収するブレーキシステムの扱いだ。次世代F1のパワーユニットには、排気ガスのエンタルピーを利用してエネルギーを生み出していたMGU-Hが存在しない。

    MGU-Hは、周回全体にわたって安定したエネルギー供給を行い、もう一方のモーター・ジェネレーターを支える極めて重要な役割を果たしていた。これが廃止されることで、その負担はすべてMGU-Kにのしかかる。しかもMGU-Kは、内燃機関と同等の出力を発揮することになる。本来、このような役割分担は想定されていなかった。

    MGU-H廃止後の基本的な構想は、ブレーキング時の運動エネルギーを前後両軸で回収するというものだった。しかし、F1の政治的判断が介入し、この可能性は排除された。2026年F1が疑似的な四輪駆動(4WD)になることへの懸念があったためだ。とりわけ、FIA前会長ジャン・トッドは、この構想を強く嫌っていた。

    その結果、FIAは代替策として、燃料を燃やしてバッテリーを充電する手法や、ストレートでのドラッグを減らして消費エネルギーを抑えるアクティブエアロダイナミクスを導入する道を選んだ。ここで重要になるのが、ハイブリッド領域における細かな調整と、走行中の充電フェーズをいかに最適化するかという点である。

    MGU-Kによるリア回生が生む新たな課題
    新世代F1マシンでは、MGU-Kが走行中のさまざまな局面でエネルギーを蓄積する必要がある。バッテリー容量は従来よりも大きく、回収可能なエネルギー量も大幅に増える。レギュレーションでは、バッテリー容量、すなわちデルタ・ステート・オブ・チャージ(ΔSoC)が4メガジュール(MJ)と定められ、1周あたり最大8.5MJまで回生・使用できる。

    このため、2026年F1マシンはバッテリーパックを連続的に充放電できなければならない。すでに「バーン・フォー・チャージ」と呼ばれる手法が議論されているが、これは内燃機関に意図的に余分な負荷をかけ、エンジンを“制動”することでエネルギーを回収し、ハイブリッドシステムを支援する考え方だ。

    しかし、最大の回生はブレーキング局面で行われる。ドライバーがペダルを踏んで減速する際、MGU-Kがドライブシャフトを制動し、結果としてリアアクスルを減速させる。つまり、これは回生ブレーキそのものである。ただし実際には、この方式によってリアの機械式ブレーキの使用頻度は大きく低下する。ここに問題の芽がある。

    フォーミュラ1カー F1 2026年のF1世界選手権

    MGU-Kが引き起こすリアブレーキ温度の問題
    リアブレーキがあまり使われなければ、温度は低下する。これは極めて危険な状態だ。2026年F1では、状況に関わらず作動させなければならないケースも存在するが、冷えた状態でドライバーがブレーキペダルを踏めば、事故のリスクは非常に高くなる。そのため、引き続き採用されるブレーキ・バイ・ワイヤが、電気ブレーキと機械ブレーキの最適なバランスを探る役割を担う。

    この制御によって、ブレーキシステムは正常作動に必要な温度レンジを維持することになる。電子制御、特にソフトウェアの重要性は飛躍的に高まり、開発余地も非常に大きい。電気ブレーキだけを使った場合、制動力は必要量の約6分の1程度にすぎない。

    その不足分を補うのが機械式ブレーキであり、電動では賄えない巨大な制動力のギャップを埋める存在だ。もしバッテリーが温度限界に達する、あるいは完全に満充電(ΔSoC到達)となった場合、リアの制動力はすべて機械式ブレーキに委ねられる。バッテリーの状態に関係なく確実に減速できること、それが機械式ディスクの最大の役割である。

    2026年仕様では、MGU-Kは350kW、約475馬力相当の制動力を発生させる。一方で、コースによっては多くのコーナーが中〜低レベルの制動力、すなわち250kW以下で済む場合もある。その場合、可能な限り回生を行う戦略が採られるが、機械式ブレーキは使われず、温度が下がってしまう。その後、周回後半で強いブレーキングが必要になった際、大きな危険が生じる。

    このため、リアブレーキディスクは暖まりやすくする目的で小径化されるが、それでもデプロイメント戦略は重要なテーマとして残る。無数の細かな状況判断がエネルギー回収システム全体に影響を及ぼし、回生を最も効率よく行えるチームは、1周を通じて大きなアドバンテージを手にすることになる。

  • 2026年F1パワーユニット FIAの政治主導でMGU-K前輪回生を禁止

    2026年F1パワーユニット FIAの政治主導でMGU-K前輪回生を禁止

    2026年F1レギュレーションには、FIAによる数多くの妥協が潜んでいる。その象徴が、前輪軸からのエネルギー回生を放棄した判断だ。

    この決定の背景には二つの懸念があった。ひとつは四輪駆動化への恐怖、もうひとつは国際連盟がしばしば示してきた「過度な民主性」である。その結果として生まれたのは、物理よりも政治を優先した意思決定の産物とも言える、効率の低いパワーユニットだった。

    FIAの政治判断が混乱させた2026年規則の土台
    F1の技術革命は常に妥協とともに始まるが、2026年に向けた変革は「失われた好機の時代」として記憶される可能性がある。次世代パワーユニットの誕生過程を振り返ると、政治的介入が技術的完成度を薄め、本来あり得た姿とは異なる方向へ導いたことが見えてくる。

    かつて国際連盟の会長は、規則を途中で見直すための後退も辞さない構えを見せていた。しかし一部チームの反対を受け、既定路線を進みながら修正で対応する方針が取られた。この時点で、決定権が立法機関に移行したことにより、技術的整合性と政治的配慮の間に明確な乖離が生じた。

    シャシーとアクティブエアロダイナミクスは前進と評価できる一方、パワーユニットのアーキテクチャは、多数の利害関係者を満足させようとした「委員会方式」の産物となった。その結果、設計の純度は損なわれ、当初想定されていた調和の取れた構成とは異なるものが形になった。

    FIAの原罪 2026年パワーユニットを縛った政治的起源
    批判の的となっているのは、規則策定の手法そのものだ。2022年には、FOMが厳格かつ技術主導のビジョンを押し通し、個々のチーム事情を排してでもレースの質を優先した。それに対し、2026年周期では、再び「民主的」運営が前面に出ることとなった。

    狙いはアウディやフォードといった新規メーカーの誘致だったが、その代償として既存チームに過度な発言力が与えられた。2026年規則の出発点には、MGU-Hの撤廃という大きな決断がある。排気ガスから常時エネルギーを回収できるこの装置は、熱効率の要でありながら、複雑さとコスト削減を理由に切り捨てられた。

    しかし物理には空白が存在しない。MGU-Hを失ったことで、エネルギー収支には大きな穴が生まれた。本来その穴を埋めるはずだったのが、前輪軸からの回生という明確な工学的解決策だった。ブレーキング時に前輪へ集中する荷重移動を活用すれば、十分なエネルギーを回収できたはずである。

    この仕組みが実現していれば、強化された電動システムを無理なく支え、全体として均衡の取れた構成になっていた。しかし実際には、後輪側のMGU-Kのみに依存する設計が採用され、内在的に「エネルギー不足」のパワーユニットが誕生した。直線の途中で電動パワーが尽きるリスクを抑えるため、燃料を使って充電する「バーン・フォー・チャージ」という苦肉の策が導入されるに至っている。

    国際自動車連盟 F1

    四輪駆動への誤解と前輪回生への政治的拒否
    この一連の流れの裏には、技術的誤解が大きな影響を及ぼしたエピソードがある。前輪軸へのモータージェネレーター搭載案は、単一メーカーの反対と、当時のFIA首脳部による誤った解釈によって退けられた。

    本来の提案は、前輪をあくまでブレーキング時の回生専用とし、駆動トルクを与えないものだった。つまり、WECのような四輪駆動とは本質的に異なる。しかし「隠れた4WD」に発展するのではないかという恐怖が先行し、提案は封殺された。この懸念は当時のFIA会長も共有していた。

    その結果、FIAはエネルギーに乏しいパワーユニットを前提に、燃料を燃やして発電する仕組みや、ドラッグ低減を狙ったアクティブエアロダイナミクスといった複雑な補助手段を次々と導入せざるを得なくなった。これらは根本的解決ではなく、場合によっては問題を悪化させる可能性すらある。

    もし前輪回生が認められていれば、こうした対症療法は不要だったはずだ。2026年F1のパワーユニットが抱える歪みは、技術ではなく政治が主導した判断の帰結として、今後も議論の的であり続ける。

  • 2026年F1マシンで変わるリア空力 フラップ規制がもたらす新たな難題

    2026年F1マシンで変わるリア空力 フラップ規制がもたらす新たな難題

    2026年F1レギュレーションは、パワーユニットや可動エアロといった分かりやすい変化だけでなく、リア周辺の空力設計にも大きな影響を及ぼしている。グラウンドエフェクトの廃止とフラットボトムへの回帰により、ディフューザー周辺の流れをいかに制御するかが、これまで以上に重要なテーマとなった。

    その中で見落とされがちなのが、リアブレーキダクトに設けられてきたフラップのカスケードに対する新たな規制だ。

    ホイール周辺の乱流を整え、ディフューザーの効率を支えてきたこの領域は、2026年規則によって構造的な制約を受けることになり、後方空力の安定性とダウンフォース確保に新たな難題を突きつけている。

    フラップのカスケードが変わる 後方空力はさらに複雑化
    俊敏なマシンは、あらゆる側面に及ぶレギュレーション上の革命の象徴だ。注目はパワーユニットや前後ウイングの可動エアロダイナミクスに集まりがちだが、性能定義において極めてデリケートな領域に及ぶ他の新要素も見逃してはならない。

    アウディは金曜日にバルセロナで行われたフィルミングデーで、2022年から2025年まで主流だったグラウンドエフェクトカーに代わり、今年から登場する「俊敏なマシン」がどのような姿になるのか、その第一印象をF1界に示した最初のチームとなった。

    この変化を語るうえで「規則の革命」と表現するのは正しい。チーフデザイナーたちは2025年型マシンからほとんど何も引き継ぐことができなかった。規則変更はモノコックから末端部品に至るまで、マシンのあらゆる要素に及んでいるからだ。最初に出回ったスパイ写真からも、RS26では全長・全幅・重量といった寸法が変わり、ピレリのタイヤも細くなっていることが確認できる。

    現在、議論が激化しているのがメルセデスのパワーユニットに関する解決策だ。ブリックスワース製V6が、周囲温度で最大16:1と規定される検査条件を満たしつつ、実走行時に圧縮比を高められる可能性があるというものだ。星のマークを掲げる陣営は、10馬力以上の出力向上、1周あたり0.2~0.25秒のアドバンテージを得られると見積もられている。

    これは重要な空力開発に匹敵する効果だ。フェラーリ、ホンダ、アウディが警戒を強めるのも当然で、1月22日に予定されているテクニカルコミッションでは、すでに合法と認められたハイウェル・トーマス率いる技術陣の解決策について、国際自動車連盟がどう対応するのかが問われることになる。

    ただし、注目すべき要素はこれだけではない。今季を通して、規則変更がマシン全体に及んだことを実感する場面は数多く現れるだろう。MGU-Kが充電問題により1周分の電力を供給できないことから、立法側は議論を呼ぶ選択を余儀なくされ、技術者たちの仕事は一層複雑になっている。

    フォーミュラ1カー

    あらためて指摘しておきたいのは、この規則上の混乱は、このレギュレーションサイクルでF1の主役になろうとした自動車メーカーの首脳陣自身が決めたものだという点だ。当時はエコロジー転換と電動化の義務に縛られていたが、それは想定以上に困難であることが明らかになりつつある。欧州の自滅的な政策による強引な後押しにもかかわらずだ。

    消費者は混乱し、強制に背を向けている。その結果、欧州自動車産業は深刻な危機に陥り、低価格と高度な技術を武器に中国メーカーが各市場へ浸透しやすい状況を生んでいる。

    政治的な考察はここまでにして技術面に話を戻すと、さらに興味深い要素が浮かび上がる。後続車が前走車の乱流の中に入った際のダウンフォース低下を抑え、限られた電力を有効活用できる高い空力効率を目指して、FIAは前後ウイングの可動化を導入し、グラウンドエフェクトを廃止してフラットボトムへ回帰した。

    これまであまり注目されてこなかったが、特定のダウンフォース量を再現するうえで難易度を高める要素も存在する。そのひとつが、長年リアのブレーキダクトを特徴づけてきたプロファイルと小翼のカスケードだ。この部分は、回転するタイヤが生む乱流にさらされる戦略的エリアであり、フローを整え、ダウンフォースを生み出すために不可欠だった。

    2026年規則では、FIAがこのデリケートな領域にメスを入れた。フラップのカスケードはディフューザーからの空気抽出を助け、損失を抑え、垂直荷重を生む役割を担ってきた。つまり、性能を生むゾーンである。新規則では、ホイール中心線より下に位置するフラップはディフューザーに固定され、上側に取り付けられるものは引き続きブレーキダクトに属することが求められる。

    一見すると些細な変更に思えるかもしれないが、少なくとも俊敏なマシンの開発初期には一定の影響が出る。ディフューザーに取り付けられた小さな空力プロファイルは、これまでのようにホイールの動きに追従せず、ブレーキダクト側の要素だけが従来通りの挙動を続けるからだ。

    その結果、空力的な不安定さが生じる可能性があり、現在は風洞作業で検証が進められている。目立たないが、追いかけて分析する価値のある領域が、またひとつ増えたと言えるだろう。

  • FIA、2026年F1マシンで義務化した“金属製スキッド”の真意

    FIA、2026年F1マシンで義務化した“金属製スキッド”の真意

    2026年F1レギュレーションにおいて、FIA(国際自動車連盟)はフロア下面の「プランク(中央パティーノ)」に極めて厳格な制約を課した。狙いは明確で、フロアを意図的に削り、柔軟に“使い捨てる”ことでダウンフォースを稼ぐ手法を完全に封じることにある。

    特に注目すべきは、前端部に金属製スキッドの装着を義務化した点だ。これは単なる材質指定ではなく、2026年F1における車高管理と空力設計の思想そのものを変える規定である。

    C3.6条が定める“2mmの地雷原”
    技術規則C3.6.1条では、プランクアッセンブリーは基準面(Z=0)に完全に一致して設置されなければならないと明記されている。取り付け角の工夫や弾性マウントは認められない。

    プランクの公称厚は10mm±0.2mm。そしてレース後の検査で許容される最小厚は8mmだ。
    つまり、使える摩耗マージンは全レースを通してわずか2mmしかない。

    この値を、計測用ホール周辺のどこか一箇所でも下回れば即失格となる。検査はスキッドを取り外したうえで、直径6.35mmのアンビルを備えたマイクロメーターで行われ、解釈の余地は存在しない。

    前方スキッド金属化が義務となった理由
    C3.6.3条では、プランクがもはや単一の複合材ブロックではなく、金属スキッドを組み合わせたシステムであることが規定された。

    中央部および後方の測定ホール周辺では金属スキッドは任意だが、最前方ホール(forward-most hole)周辺のみ金属スキッドが必須とされた。

    背景にあるのは過去の事例だ。特にフェラーリが経験したように、前方の柔らかいプランク材を意図的に削らせることで、静的な車高規定を守りつつ、走行中はより攻撃的なレイク角を得る手法が存在していた。

    前端にチタンや鋼を配置すれば、こうした“計画的摩耗”は成立しない。金属は削れず、触れれば即座に限界に達するからだ。FIAは物理的な方法で、この抜け道を完全に閉じにきた。

    国際自動車連盟 F1 フォーミュラ1マシン

    チタンか、鋼か。素材選択の戦略
    FIAは素材選定にも厳しい制限を設けた。スキッドは削り出し加工のみが認められ、鍛造や溶接は不可。使用可能な材質は次の2種類に限定される。

    ・Ti-6Al-4V チタン合金
     軽量で高強度。接触時に白い火花を生むことで知られる。

    ・17-4PH ステンレス鋼
     重量は増すが、硬度は37HRC未満に制限され、摩耗耐性に優れる。

    各チームはサーキット特性に応じて選択を迫られる。重量が致命的なレイアウトではチタンが有力だが、摩耗が激しい路面では、あえて重くても“粘る”鋼を選ぶ可能性もある。プランクはもはや受動部品ではなく、戦略要素となった。

    安全思想:ボルトを“ヒューズ”にする
    C3.6.4条では、プランク固定用のM6高強度スチールボルトについて、ボルトの軸部がアセンブリーで最も弱い部分になるよう設計せよと規定されている。

    これはフェイルセーフ思想そのものだ。縁石や路面に強くヒットした際、ボルトが先に破断してプランクが脱落することで、衝撃がサバイバルセルに伝わるのを防ぐ。部品を犠牲にして、モノコックとドライバーを守るという考え方である。

    2mmが分ける、勝利と失格
    2026年F1では、車高を極限まで下げ、空力効果を最大化する誘惑は今まで以上に強まる。しかし同時に、許される摩耗は2mmだけという現実が突きつけられる。

    プランクはもはや単なる木片ではない。
    それは、レース後の車検という“最後の関門”に直結する、極めてシビアなエンジニアリング領域だ。

    その2mmをどう管理するか。
    そこに、2026年F1の勝敗を分ける細く危険な境界線が存在する。

  • アウディF1、2026年マシンでダブル・プッシュロッド採用が判明

    アウディF1、2026年マシンでダブル・プッシュロッド採用が判明

    アウディF1の2026年型マシンに、ダブル・プッシュロッド式サスペンションが採用されていることが明らかになった。これは、フェラーリやレッドブルも2026年の新車で同様の開発方針を採ると噂される中で浮上した情報だ。

    アウディは金曜日、2026年F1マシン「R26」を用いたフィルミングデーをバルセロナで実施し、2026年型マシンとしては最初にコース走行を行ったチームとなった。

    この走行は最大200km、周回数にして約42周に制限されており、舞台は名称が変更されたバルセロナ・カタルーニャGPの開催地だった。

    当日は、コースサイドで観戦していたファンが撮影した映像がSNS上で広く拡散され、オールブラックのリバリーをまとったアウディF1マシンが走行する姿が確認された。

    そしてPlanetF1.comのテクニカルエディターであるマット・サマーフィールドは、R26がフロントおよびリアの両方にプッシュロッド式サスペンションを採用していることを確認した。

    2026年F1は技術的転換のシーズンに
    ダブル・プッシュロッド式サスペンションは、2022年から2025年まで使用されてきたグラウンドエフェクトカーからの転換に伴い、2026年シーズンの主要な技術トレンドのひとつになると見られている。

    2026年に向けてF1のテクニカルレギュレーションは大幅に刷新され、シャシーとパワーユニットの両方が同時に変更されるという、極めて珍しい改定が行われる。

    この新時代では、電動化比率が50%に引き上げられ、完全な持続可能燃料の導入、さらにアクティブエアロダイナミクスが採用される。

    プッシュロッド式サスペンションは、新レギュレーション下においてプルロッド式よりもハンドリングの予測性に優れていると考えられており、加えて複雑化する新型パワーユニットのパッケージング面でも利点があるとされている。

    アウディ F1 R26

    昨年11月には、フェラーリが2026年の新車にダブル・プッシュロッド式サスペンションを採用する見通しであることが明らかになっていた。

    これが事実であれば、2026年型フェラーリ「SF-26」は、2010年にフェルナンド・アロンソとフェリペ・マッサがドライブしたF10以来、リアにプッシュロッド式サスペンションを採用する初のフェラーリF1マシンとなる。

    一方、先月イタリアで報じられた内容によれば、レッドブルも2026年型「RB22」でダブル・プッシュロッド方式を採用する見込みだという。

    2026年の新時代に向けて、より多くのチームがプッシュロッド式サスペンションを採用すると予想されている。

    アウディの金曜日のシェイクダウン走行は、1月26日から30日にかけて非公開で実施されるF1最初のプレシーズンテスト(バルセロナ)よりも17日早いタイミングで行われた。

    ドイツの自動車メーカーであるアウディは、1月20日にベルリンで開催されるイベントでR26を正式に発表する予定だ。

  • 2026年F1で注目すべきは“燃料” シェルが明かす新レギュレーションの盲点

    2026年F1で注目すべきは“燃料” シェルが明かす新レギュレーションの盲点

    2026年F1レギュレーションでは、パワーユニットやアクティブエアロといった分かりやすい変化の裏で、もうひとつ重要な要素が静かに存在感を高めている。それが「燃料」だ。

    持続可能燃料の義務化に加え、化学エネルギーのフローを直接制限する新規則によって、燃料は単なるエネルギー源ではなく、マシン設計そのものを左右する要因になりつつある。

    その盲点を指摘するのが、シェルのモータースポーツ技術責任者ヴァレリア・ロレッティだ。彼女は、2026年以降のF1では燃料の「密度」が車重、燃料搭載量、さらには燃料タンクの配置やマシン形状にまで影響を与えると説明する。エンジン性能だけでなく、シャシーや空力設計とも密接に結びつく燃料開発は、新時代F1の見えにくい勝負どころになろうとしている。

    シェル 2026年F1で燃料がマシンを形作る
    2026年F1レギュレーションの大変革において、燃料は最も重要な要素のひとつとなる。理由は2つある。ひとつは、燃料が高度な持続可能性を求められ、もはや化石由来原料から合成できないこと。もうひとつは、技術規則そのものが、従来とは異なる要素に重点を置くようになったことだ。

    エンジンに投入できるエネルギーフローが制限されることで、勝負の鍵は燃料の「密度」に移る。車重や車体サイズを抑えるための重要なファクターであり、この点についてヴァレリア・ロレッティ(シェル モータースポーツ・テクノロジー・マネージャー)は、FormulaPassionに対して次のように説明している。

    密度の重要性
    従来、燃料で最も重要だった指標はエネルギー含有量、すなわち燃焼によって放出され、駆動力へと変換できる化学エネルギーだった。旧世代のパワーユニットでは、この値は非常に狭い範囲に制限され、さらに単位時間あたりに噴射できる燃料量にも上限が設けられていた。

    しかし2026年規則では、燃焼室に噴射される燃料そのものではなく、化学エネルギーの流量が直接制限される。これにより、フェラーリF1 のパートナーでもあるシェルを含め、燃料サプライヤーにとって優先順位が大きく変わった。

    「エネルギー含有量だけでなく、密度も重要です」とロレッティは語る。「燃料の質量流量は規制されていません。つまり、一定の体積の中に含まれるエネルギーが少なければ、より多くの燃料が必要になり、その分重量が増えるということです」。

    エネルギー密度が高ければ、同じエネルギーフローを確保するために必要な燃料量は少なくて済む。その結果、タンクを小型化でき、重量配分や空力的パッケージングに有利となる。

    燃料がマシン形状を左右する可能性
    「理論的には、さまざまな解決策が考えられます」とロレッティは続ける。「燃料の作り方次第で、マシンの形状、たとえば燃料タンクの配置そのものを変えるという発想にまで踏み込めるのは、これが初めてだと思います」。

    高いエネルギー密度は、グランプリの全距離を走り切るために搭載する燃料量を減らすことにもつながる。レース仕様での車重が軽くなり、消費量もさらに抑えられる。「少なければ少ないほど良い」とシェルのデリバリー・マネージャーは断言する。「エネルギーフローに上限がある以上、高密度の燃料は確実にアドバンテージになります」。

    F1レギュレーション スクーデリア・フェラーリ シェル

    2026年は大きなチャンス
    ロレッティは、2026年燃料の開発が密度だけにとどまらないことも強調する。

    「温度、燃焼圧力、空燃比……燃料とエンジンの関係を定義するすべてのパラメータが重要です。私たちは化学者として、分子構造、燃焼化学、燃焼速度、効率といった知識を基に特別な燃料を開発しますが、それだけでは足りません。エンジニアの知識と組み合わさる必要があります。燃焼特性の違いが、エンジン側にどんな影響を与えるのかを理解しなければならないのです」。

    新しいパワーユニットはV6という基本構成こそ従来と同じだが、その内部で起きていることは大きく異なる。2026年規則では圧縮比やターボ圧の制限が変更され、点火は従来の最大5回から1回へと簡略化される。燃焼の様相そのものが変わり、その制御方法も一新される。

    「レギュレーションが変わり、燃焼の熱力学に手を入れられるたびに、私たちにとっては改善と再構築のチャンスになります」とロレッティは語る。「エンジニアがどこを目指し、どのパラメータを変えたいのかを共有してくれることで、私たちは燃料の配合をどう始めるべきかが見えてくるのです」。

    進化する開発手法
    2026年は、シェルとフェラーリが75年にわたる協力関係を継続する新たなサイクルでもある。その間、燃料開発の手法は大きく変化してきた。

    「2000年代初頭までは、すべてがラボ作業でした。経験豊富な人たちが感覚で配合を決め、パラメータを測定していました。30~40種類の候補を作り、その中から10種以下に絞り込み、エンジンテスト用に量産していたのです」。

    現在はエンジンテスト自体が制限され、デジタルモデルが主役となった。「モデルを使って、特定の性能面で最大の成果を出せる可能性が高い候補を選び、パラメータごとに最適化できます」。

    空力開発と同様、燃料でも重要なのは仮想モデルの相関性だ。ロレッティはこう締めくくる。「実際にレースで使っている燃料を選ぶために、私たちは100万回以上のシミュレーションを行いました。それでも最終的には検証テストが必要です。モデルが常に正しいとは限らないからです。これは、シェルのモデルとフェラーリのエンジニアが使うモデルが相互に影響し合う、終わりのない循環なのです」

  • レッドブル、2026年F1マシン「RB22」でPUではなく空力主導の攻めた開発

    レッドブル、2026年F1マシン「RB22」でPUではなく空力主導の攻めた開発

    レッドブル・レーシングは、2026年F1シーズンに向けて開発中の新型マシンRB22において、パワーユニット性能に全面的に依存するのではなく、空力コンセプトを軸とした攻めの開発戦略を採っている。

    月末に予定されているバルセロナでの非公開テストでは、機能確認を主目的としながらも、初期段階から完成度の高い空力仕様を投入する方針だ。

    このアプローチは、2026年の新レギュレーション下で複雑化する電動エネルギー管理やアクティブ・エアロダイナミクスへの対応を見据えたものであり、シーズン序盤から集中的な空力開発を進めるための基準づくりとして位置づけられている。レッドブルはRB22を通じて、PU性能一辺倒ではない独自の競争力構築を目指している。
    2026年シーズンを前に、F1の動きは徐々に慌ただしさを増している。アウディがバルセロナで撮影日走行を行い、続いてレッドブルとレーシングブルズがデトロイトで新シーズン用リバリーを公開する予定だ。ミルトンキーンズを拠点とするレッドブルは、RB22の完成に向けて開発作業を加速させており、このマシンは月末に同地で行われるクローズドテストで初走行を迎える。

    関係者によれば、ローラン・メキース率いるチームの2026年に向けた取り組みは極めてアグレッシブなものとなっている。とりわけ準備段階において、他チームの開発プログラムとは一線を画す内容が採られているという。

    RB22は、初期テストの段階では純粋なラップタイムの追求を主目的としていない。最初の走行は、パワーユニットを制御する電子システムの作動確認や、アクティブ・エアロダイナミクス、バッテリー残量管理といった新要素にドライバーが順応するためのシェイクダウンとして位置づけられているからだ。

    それでも、RB22はバルセロナにかなり完成度の高い初期空力仕様を持ち込む予定とされている。この仕様は、その後のバーレーンで行われる公開テストに向けて、段階的かつ非劇的な進化を遂げる見通しだ。

    このような方針は、開発の停滞を意味するものではない。むしろ、レッドブルにとっては戦略の中核を成す考え方だ。初期段階で空力コンセプトの完成度を高めることで、その後に投入されるアップデートを評価・承認するための明確な基準を確立できる。

    情報筋によれば、この基準を起点として、シーズン前半にかけて極めて集中的な開発が計画されているという。こうしたプログラムは以前から構想されており、人員の強化や、風洞データを正確に検証・相関させるための計算・シミュレーション環境の充実も含まれている。

    レッドブル・レーシング 2026年のF1世界選手権 フォーミュラ1カー

    空力を軸に据えた継続的開発
    レッドブルの風洞施設は段階的なアップグレードが施されてきたものの、現在ミルトンキーンズで建設中の新施設はまだ稼働していない。このため、エンリコ・バルボが率いる空力部門では、数カ月にわたって専門技術者の集中的な採用が進められてきた。

    採用対象は、空力パフォーマンスエンジニアやデータ相関の専門家にとどまらず、CFDやダイナミックシミュレーション部門の責任者クラスにまで及んでいる。この体制強化は、初期コンセプトを基準とした高頻度のアップデートを支えるための土台となる。

    2026年、レッドブルはレッドブル・パワートレインズがフォードと共同開発したパワーユニットを搭載して戦うことになる。チームはこのPUを前提としつつも、車両側の継続的な進化によって総合性能を高める方針を明確にしている。

    これは、比較的新しいPUプロジェクトに起因する潜在的な課題を補完する意味合いも持つ。とりわけ、電動エネルギーのデプロイメント管理や、アクティブ・エアロダイナミクスの運用は、すべてのチームにとって習熟が必要な領域となる。

    レッドブルは、こうした過渡期において空力開発を武器に競争力を引き出し、PU関連の課題や運用面の不確実性が残る局面で優位に立つことを狙っている。

    2026年のF1は、パワーユニット性能がすべてを決定づけるカテゴリーになると見る向きも多かった。しかしレッドブルは、空力コンセプトを集中的に磨き上げることで、異なる形のアドバンテージを築けることを示そうとしている。

    ミルトンキーンズでは、過去と同様に既存の成功例を踏襲するのではなく、独自の解釈と道筋を選び取る姿勢が貫かれている。RB22は、その哲学を体現する存在として、2026年シーズンの幕開けを迎えることになりそうだ。

  • マクラーレン、2026年F1マシンを2月9日に公開

    マクラーレン、2026年F1マシンを2月9日に公開

    マクラーレンは、2026年シーズンの新車発表日を正式に確定させた。昨シーズン、ドライバーズおよびコンストラクターズ両タイトルを制したチームとしては意外なことに、11チーム中で最後の発表となった。

    ウォーキングを拠点とするマクラーレンは、2026年型マシンを2月9日にバーレーン・インターナショナル・サーキットで公開する。これは、バーレーンで行われる2回の3日間テストのうち、最初のテストを前にしたタイミングとなる。

    マクラーレンは、2026年のF1世界選手権からマスターカードをタイトルスポンサーに迎え、マクラーレン・マスターカードF1チーム(McLaren Mastercard F1 Team)として参戦する。

    マクラーレン 2026年のF1世界選手権 フォーミュラ1カー

    マクラーレンは、2024年と2025年に連続してコンストラクターズタイトルを獲得し、2年連続王者として新シーズンに臨む。もっとも、その2つのタイトルは、内容としては大きく異なるものだった。

    2024年は、フェラーリをわずか14ポイント差で抑え込む接戦の末に王座を手にした。一方、2025年は状況が一変し、ライバル勢を圧倒。メルセデスが「ベスト・オブ・ザ・レスト」となったものの、その差は実に364ポイントにも及んだ。

    さらにマクラーレンは、2008年にルイス・ハミルトンが達成して以来となるドライバーズタイトルも獲得した。2025年シーズンは最終局面までもつれ込む激闘となり、ランド・ノリスがレッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンをわずか2ポイント差で退け、チャンピオンに輝いた。

    ノリスのチームメイトであり、長期間にわたって選手権首位を走っていたオスカー・ピアストリは、最終的にノリスから13ポイント差のランキング2位でシーズンを終えている。

  • ミハエル・シューマッハF1初勝利のベネトンB192がオークションへ

    ミハエル・シューマッハF1初勝利のベネトンB192がオークションへ

    ミハエル・シューマッハがF1で初勝利を挙げたマシン、ベネトンB192-05がオークションに出品される。オンラインで開催されるこのオークションを手がけるのは、オークションハウスのBroad Arrowだ。1992年ベルギーGPで歴史的勝利を挙げたこの個体は、800万ユーロ超の評価額が見込まれている。

    Broad Arrowは、自社オークション「Global Icons: Europe」において、極めて名高いF1マシンをラインアップに加えた。

    それが、1992年8月にスパ・フランコルシャンで行われたベルギーGPで、ミハエル・シューマッハがF1キャリア初勝利を挙げたベネトンB192-05である。

    このマシンは、2026年1月23日から30日にかけて開催される「Global Icons: Europe」シリーズのオンラインオークションで競売にかけられる。これほど由緒あるF1マシンが一般公開の形で売りに出されるのは初めてで、コレクターや富裕層のモータースポーツファンにとって極めて魅力的な存在となる。

    ベネトンB192-05は、エンジニアのロリー・バーンが設計し、当時としてはまだ珍しいマニュアル・ギアボックスを採用していた。公式リリースでは、これは単にシューマッハ時代のベネトンを入手する機会ではなく、「F1の歴史が転換した瞬間そのものを手に入れること」だと説明されている。

    「F1で初めてミハエル・シューマッハを表彰台の最上段に導いたベネトンB192-05を、史上初めて一般に提供できることを、これ以上ないほど光栄に思っている」と、ブロード・アローの車両スペシャリストであるイヴ・ボワテルは述べている。

    「このマシンは、F1史上でも疑いなく最も有名なクルマのひとつだ。史上屈指のキャリアの始まりを告げただけでなく、トップレベルのモータースポーツにおけるマニュアル・ギアボックス時代の終焉を象徴する存在でもある」

    「我々のオンラインオークション『Global Icons: Europe』における出品は、世界中のトップコレクターから大きな関心を集めると期待している。『アイコニック』という言葉はしばしば乱用されるが、このクルマに関しては、特別な修飾すら必要ない」

    シューマッハは1992年ベルギーGPで、44周にわたる緊迫したレースの末に勝利を収めた。ライバルにはアイルトン・セナ、ナイジェル・マンセル、ミカ・ハッキネンといった当代随一のドライバーが名を連ね、激しい雨に見舞われるなど、スパらしい過酷なコンディションの中での勝利だった。

    “カイザー・シューミ”の愛称で知られるシューマッハのこのマシンは、ベネトン買収後にエンストンのルノー本社に保管され、2015年までルノーのクラシック部門コレクションの一部を成していた。その後、1990年代から2000年代のF1マシン管理を専門とするローラン・ルドン所有のLRSフォーミュラに売却されている。

    ミハエル・シューマッハ F1 ベネトンB192

    2024年にルドン自身が署名した売買証明書によれば、B192-05はLRS在籍期間中に完全なレストアが施され、シャシーの見直しとともにエンジンおよびギアボックスも再構築され、走行可能な状態に戻されている。

    ブロード・アローの予想では、このベネトンは850万ユーロを超える価格に達する見込みだ。同オークションには他にも、シューマッハに関連するコレクターズアイテムとして、1994年のベネトン純正ヘルメット(直筆サイン入り、推定2万〜3万ユーロ)、1995年のベネトン製レーシングスーツ(推定1万5,000〜2万5,000ユーロ)、1995年ベネトンF1用ステアリングのサイン入りレプリカ(推定2,000〜2,500ユーロ)などが出品される。

    「F1で勝利を挙げたミハエル・シューマッハのベネトンB192-05は、間違いなく史上最も象徴的なレーシングカーのひとつであり、我々の“アイコン”というテーマに完璧に合致している」と、ブロード・アローでEMEA地域のセールス担当副社長を務めるジョー・トワイマンは語っている。