カテゴリー: アストンマーティンF1チーム

  • フェルナンド・アロンソに迫る時間 ホンダF1エンジンがトップに並ぶのは2028年?

    フェルナンド・アロンソに迫る時間 ホンダF1エンジンがトップに並ぶのは2028年?

    フェルナンド・アロンソがアストンマーティンで再びF1の頂点を目指すうえで、「時間」が大きなテーマになりつつある。

    2026年7月に45歳を迎えたアロンソに対し、アストンマーティンのワークスパートナーであるホンダは、パワーユニット(PU)がトップレベルに到達する目標時期として、2027年後半から2028年初頭という時間軸を示している。

    アロンソが2028年シーズンまでF1を続ければ、その途中で47歳を迎えることになる。

    45歳のアロンソに残されたタイトル挑戦の時間
    アロンソがアストンマーティンに加入した大きな目的のひとつは、F1で再び勝利を挙げ、2005年と2006年に続く3度目のワールドチャンピオン獲得に挑戦することにある。

    その期待を大きくしたのが、2026年から始まったホンダとのワークスパートナーシップと、エイドリアン・ニューウェイの加入だった。

    しかし、新レギュレーション初年度となった2026年は期待通りには進んでいない。AMR26はシャシーとPUの双方に課題を抱え、アストンマーティンはシーズン前に期待されたトップ争いから大きく離された。

    アロンソにとって問題なのは、単に2026年が苦戦していることだけではない。競争力を取り戻すまでにどれだけの時間が必要なのかという点だ。

    ホンダF1「2027年初めも最高のPUではない」
    ホンダ・レーシング(HRC)のF1プロジェクトでチーフエンジニアを務める折原慎太郎は、ホンダがトップレベルへ戻るまでには、まだ時間が必要だという現実的な見通しを示している。

    ホンダはオランダGPで内燃機関(ICE)を中心としたアップデートを投入し、2027年にはさらに大きなステップを計画している。

    「夏休みが終わったら、またレースの現場に戻ります。そしてファクトリーでは、2027年にさらに大きなステップを持ち込めるよう懸命に取り組んでいます。ただ、やはり現実的に考える必要があります」

    そのうえで折原慎太郎は、2027年開幕時点でホンダが最強PUになっているとは考えていない。

    「2027年の初めの段階では、おそらくまだ最高のパワーユニットにはなっていないと思います。ただ、トップの競争相手にはもっと近づいているはずです」

    「そこからさらにプッシュを続けて、2027年、あるいは2028年にはトップコンペティターになりたいと思っています」

    ホンダの時間軸とアロンソの年齢
    この「2027年あるいは2028年」という時間軸は、アロンソにとって特に重要な意味を持つ。

    アロンソは現在45歳。ホンダがトップコンペティターになる目標として挙げた最も遅い時期である2028年には47歳になる。

    もちろん、ホンダが2028年まで競争力を持たないという意味ではない。折原慎太郎は2027年にはトップとの差を縮め、より大きな性能向上を実現することを目標としている。

    それでも、アロンソが3度目のタイトルを狙える時間が限られていることを考えれば、ホンダとアストンマーティンにとって2027年の進歩は極めて重要になる。

    2027年は燃焼性能をさらに向上
    ホンダはすでに2027年型PUの開発に重点を移している。

    2027年には燃料流量に関するF1レギュレーションが変更されるが、基本的な開発方針は変わらない。最大の焦点となるのはICEの燃焼性能だ。

    「2027年には燃料流量について少し異なるレギュレーションになりますが、僕たちの開発プログラム自体は変わりません。燃焼性能をさらに改善していく必要があります」

    「そのため、引き続き内燃機関の性能向上に集中します。2027年にはそこで、より大きなステップを持ち込みたいと考えています。それが僕たちの主な重点項目です」

    さらにホンダは、単純なPU単体の性能だけではなく、アストンマーティンの2027年型シャシーとの統合にも力を入れている。

    「新しいシャシーに僕たちのパワーユニットをよりうまく統合するため、アストンマーティンとは緊密に話し合っています」

    「今は2027年に向けて良いエンジンを開発することに集中していますし、その裏側ではアストンマーティンとも密接に協力しています」

    フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    それでもアロンソはホンダを信じている
    興味深いのは、厳しい2026年を経験しても、アロンソ自身はアストンマーティンの将来性に対する信頼を失っていないことだ。

    アロンソはハンガリーGPで、ニューウェイについて「遅かれ早かれグリッドで最高のマシンを届けてくれることに疑いはない」と語り、ホンダについても同様の信頼を示している。

    「パワーユニットについても疑いはない。ホンダが問題を解決するのは時間の問題だと思っている。彼らは過去40年間、モータースポーツでそうしてきたからだ」

    アロンソの言葉と折原慎太郎の発言には、実は共通する部分がある。

    ホンダが現在の問題を解決できるかどうかではなく、「いつ解決できるのか」が焦点になっているということだ。

    アロンソはホンダが最終的に競争力を取り戻すことを信じている。一方、ホンダはその到達点について2027年から2028年という現実的な時間軸を示している。

    45歳のアロンソにとって、その差は決して小さくない。

    アストンマーティンとホンダのプロジェクトが成功するまでアロンソのF1キャリアが続くのか。それとも、アロンソが現役でいる間にホンダとニューウェイが勝てるパッケージを完成させるのか。2027年は、アロンソ最後のタイトル挑戦の可能性を左右する重要なシーズンになりそうだ。

  • エイドリアン・ニューウェイに「終焉」説 アストンマーティンF1苦戦で浮上

    エイドリアン・ニューウェイに「終焉」説 アストンマーティンF1苦戦で浮上

    アストンマーティンF1は2026年シーズン、エイドリアン・ニューウェイを中心とする新体制とホンダとのワークス提携で大きな期待を集めたが、ここまでその期待に応える結果を残せていない。

    元F1ドライバーのジョニー・ハーバートは、この苦戦を受け、ニューウェイがキャリアの「下降スパイラル」に入り始めた可能性があるとの大胆な見方を示した。

    一方で、アストンマーティンはF1ハンガリーGPで大幅改良型のAMR26Bを投入し、フェルナンド・アロンソがQ2進出、決勝ではランス・ストロールが13位、アロンソが14位でフィニッシュした。

    さらにホンダもオランダGPで新スペックのパワーユニットを投入する予定であり、チームが復調への足掛かりをつかみつつある段階でニューウェイの「終焉」を論じるのは、時期尚早ともいえる。

    ハーバートが唱えるニューウェイの「下降スパイラル」
    2026年からアストンマーティンのチーム代表を務めるニューウェイは、F1史上屈指のデザイナーとして知られている。これまで関わったマシンはドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権を合わせて計26回のタイトル獲得に貢献してきた。

    しかし、3度のF1優勝経験を持つハーバートは、アストンマーティンの現状について疑問を投げかけた。

    「アストンマーティンが揃えたものを見てみれば、エイドリアン・ニューウェイがいて、新しいファクトリーがあって、さらにフェルナンドもいる。それなのに、なぜこれほどまでうまくいかなかったのか理解するのは難しい」

    「理由が何であれ、エイドリアンは彼らが目指しているものに対して、優れたマシン、あるいは少なくともある程度競争力のあるマシンを作れるチームをまとめ上げることができていない」

    そしてハーバートは、ニューウェイ自身のキャリアが転換点を迎えている可能性にまで言及した。

    「興味深いのは、これがエイドリアン・ニューウェイの終焉なのかということだ。彼が下降スパイラルに入り始めた最初の兆候なのだろうか?」

    「スポーツでは、最高の人間にだってそういうことは起こる。いつかは必ず起きることだった。まだその時ではないとしても、いずれそういう時点はやって来る」

    AMR26の開発方針が前半戦の低迷につながる
    ただし、アストンマーティンの2026年前半戦の低迷を、単純にニューウェイの能力低下と結びつけることには慎重になる必要がある。

    アストンマーティンとホンダは2026年の新レギュレーション導入に合わせてワークス体制をスタートさせたが、AMR26は開幕当初から期待された競争力を発揮できなかった。

    ニューウェイは小規模なアップデートを連続して投入するのではなく、マシンの根本的な問題に対応する大規模な改良パッケージに開発リソースを集中させる方針を選択。その結果、アップデートを待つ間にライバルとの差が広がり、シーズン前半にはグリッド後方へと沈んだ。

    その大規模改良の成果としてハンガリーGPに登場したのがAMR26Bだった。

    アロンソは予選でQ2に進出し、決勝ではストロールが13位、アロンソが14位。ポイント獲得には届かなかったものの、従来型AMR26と比較してマシンの挙動や競争力には改善が見られた。

    ハーバートの発言はアストンマーティンの期待値の高さを反映したものではあるが、AMR26Bの投入によってニューウェイが進めてきた開発の方向性がようやく形になり始めたタイミングでもある。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    ホンダの新スペックPUでオランダGPから次の段階へ
    さらにアストンマーティンは、オランダGPで復調に向けた次のステップを踏み出す予定だ。

    ホンダはハンガリーGP終了後、ハンガロリンクでAMR26を使用してアップグレード版パワーユニットの走行テストを実施。ホンダ側は新スペックが社内で設定していた目標を達成したことを確認しており、オランダGPでの正式投入を予定している。

    ニューウェイ自身も、シーズン序盤に課題を抱えていたホンダとの関係について、改善が進んでいることを強調している。

    「ホンダとの関係という点では、我々が進めている進歩に非常に満足している」

    さらに、オランダGP以降に向けてニューウェイはこう付け加えた。

    「通常、関係が改善すれば、パフォーマンスも改善するものだ」

    アストンマーティンとホンダが目指している最終的な目標は、F1世界選手権のタイトル獲得である。2026年のスタートが期待を大きく下回ったことは事実だが、AMR26Bとホンダの新スペックPUという2つの大きなアップデートが揃うのはこれからだ。

    ハーバートが指摘するニューウェイの「下降スパイラル」が本当に始まっているのか、それとも2026年前半の苦戦が新体制構築に伴う一時的なものだったのか。アストンマーティンの今後のパフォーマンスが、その評価を大きく左右することになりそうだ。

  • ホンダF1 2027年の燃料流量増加を警戒「信頼性への要求はかなり大きい」

    ホンダF1 2027年の燃料流量増加を警戒「信頼性への要求はかなり大きい」

    ホンダは、2027年のF1パワーユニット開発において信頼性の確保が大きな課題になると見ている。HRC(ホンダ・レーシング)の折原慎太郎チーフエンジニアは、燃料流量の変更と内燃エンジンの性能向上を同時に進めることで、パワーユニットに対する要求がさらに厳しくなると説明した。

    2026年からアストンマーティンのワークスパートナーとしてF1に復帰したホンダは、シーズン序盤にパワーユニットの性能と信頼性で苦戦した。

    一方で、夏休み明けのF1オランダGPでは改良型の「スペック2」を投入する予定であり、2027年に向けてはさらに大きな性能向上を目指している。

    2027年F1で燃料流量変更 信頼性への負荷が増大
    2027年にはF1のパワーユニット規則が変更され、内燃エンジン側の比重が高まる。ホンダにとって重要になるのが、燃焼効率をさらに向上させながら信頼性を確保することだ。

    「2027年は燃料流量について若干異なるレギュレーションになりますが、開発プログラムそのものは変わりません。燃焼性能をさらに改善する必要があります」

    「ですので、引き続き内燃エンジンの性能向上に重点を置き、2027年にはもう少し大きなステップを持ち込みたいと考えています。そこが私たちの主な重点項目です」

    折原慎太郎は、その性能向上に伴って最大の課題となるのが信頼性だと説明する。

    「最も難しいポイントは、おそらく信頼性になると思います。仮に燃料流量が変更されなかったとしても、性能を向上させれば、こちら側では信頼性の開発が必要になります。それ自体は当然想定していることです」

    「ただ、今回は燃料流量も増えるため、信頼性に対する要求はかなり大きくなります。私たちとしては燃焼を改善し、それに加えて燃料流量の増加にも対応しなければなりません」

    出力向上を狙えば、燃焼室をはじめとする内燃エンジンの各部にはより大きな負荷がかかる。そのため、単純に性能を追求するだけではなく、耐久性との両立が重要になる。

    ホンダF1 / ホンダ・レーシング

    FIAの段階的な規則変更をホンダは評価
    一方、折原慎太郎は、FIAが変更を一度に実施せず段階的なものとしたことを評価している。

    「信頼性にとって非常に大きな要求になりますし、開発期間もかなり短いです。ですので難しいポイントになると思います。ただ、FIAが妥当なステップにしてくれたことには感謝しています」

    「もし1年間で非常に大きな数値の変更を求められていたら、大きな問題になっていたと思います。しかし、今回は2段階に分けられています。ショーのことも考慮する必要がありますし、パワー向上という意味でも妥当な数字だと思います」

    「それでも信頼性については難しい挑戦になりますが、良い判断だったと思います」

    ホンダにとって2027年は、2026年型パワーユニットを単純に熟成させるシーズンではない。燃料流量に関する規則変更に対応しながら、内燃エンジンそのものについても大幅な性能向上を図る必要がある。

    ホンダは2027年か2028年のトップ争いを目標
    ホンダとアストンマーティンがトップレベルの競争力を手にする時期について、折原慎太郎は慎重な見通しを示している。

    「F1では自分たちのパフォーマンスが常にライバルとの相対比較になるので、正確なタイムスケールを示すのは難しいです」

    「夏休み明けにはレースの戦いに戻りたいと考えています。そしてファクトリーでは、2027年にさらに大きなステップを持ち込むために懸命に取り組んでいます。ただ、そこについても現実的に考える必要があります」

    そのため、2027年の開幕時点でホンダがただちに最強のパワーユニットを手にしているとは考えていない。

    「2027年の初めには、まだ最高のパワーユニットにはなっていないかもしれません。ただ、トップの競争相手にはもっと近づいていると思います」

    「そこからさらにプッシュを続けて、2027年か2028年にはトップの競争相手になりたいと思っています」

    2026年序盤に苦戦したホンダにとって、まず重要になるのはスペック2によって現在のパワーユニットがどこまで改善されるかだ。その先では2027年に向けて燃焼性能をさらに引き上げながら、増大する負荷に耐えられる信頼性を作り込む必要がある。

    アストンマーティンもエイドリアン・ニューウェイを中心にマシン開発を進めており、車体とパワーユニットの双方で競争力を高めることが求められる。ホンダは2027年をさらなるステップアップの年と位置づけ、その先の2028年までを視野にトップレベルへの復帰を目指している。

  • アストンマーティンF1 アラムコの2027年支援凍結報道 中東情勢が影響

    アストンマーティンF1 アラムコの2027年支援凍結報道 中東情勢が影響

    アストンマーティンF1チームの将来計画に、中東情勢を巡る新たな懸念が浮上した。サウジアラビア側が2027年に向けて予定していたスポンサー支援の拡大計画を凍結したと、F1のビジネス事情に詳しいジャーナリストが報じている。

    報道のポイントは、アラムコとの既存契約が打ち切られたという話ではなく、2027年に向けて検討されていた支援拡大が保留になったとされていることだ。

    アストンマーティンとアラムコはいずれも現時点で公式発表を行っておらず、確定情報としてではなく、関係者からの情報に基づく動きとして見る必要がある。

    2027年のスポンサー拡大計画が凍結か
    F1のビジネス分野を取材し、『Business Book GP』を手掛けるマルク・リマッハーによると、サウジアラビアは数カ月にわたる協議を経て、2027年のアストンマーティンF1チームに対するスポンサー計画を凍結したという。

    リマッハーは、サウジアラビア側がアラムコによるスポンサー支援を増額するとともに、新たに3社目となるスポンサーをチームのポートフォリオへ加える計画だったと伝えている。

    しかし、その計画は現在ストップしているという。

    「サウジアラビアは数カ月にわたる協議の末、2027年のアストンマーティンF1チームへのスポンサーシップを凍結した」

    リマッハーはさらに、その背景について「イランでの戦争によってプロジェクトが遅れている」と説明している。

    中東情勢の緊迫化によってサウジアラビア政府を取り巻く経済的、戦略的な優先順位が変化し、F1を含む国際的なマーケティング投資にも影響が及んでいる可能性がある。

    ただし、今回報じられたのはあくまで2027年に向けたスポンサー計画の「凍結」であり、アラムコがアストンマーティンから撤退することが決まったわけではない。

    アラムコは2028年までタイトルパートナー契約
    アラムコはアストンマーティンにとって重要なパートナーだ。2023年末には契約延長が発表され、2024年から「Aston Martin Aramco Formula One Team」の名称が使用されている。

    契約は2028年までとされており、アラムコは単なるスポンサー以上の役割を担っている。

    特に重要なのが、2026年からスタートしたホンダとのワークス体制だ。

    アストンマーティンは2026年からホンダのパワーユニットを独占的に使用するワークスチームとなった。新しいパワーユニット規則では100%持続可能な燃料が導入されており、アラムコはホンダとの技術協力の一環として燃料や潤滑油の開発にも関与している。

    そのため、アラムコとの関係はチームの広告収入だけでなく、アストンマーティン、ホンダ、アラムコによって構築された技術プロジェクトにも結び付いている。

    スポンサー問題と技術提携は切り分けて考える必要
    一方で、今回の報道からアラムコによる技術支援まで停止すると判断するのは早計だ。

    元記事では、スポンサー資金が凍結された場合に燃料供給を含む技術面にも影響する可能性が示されているが、リマッハーが伝えている中心的な内容は2027年のスポンサー計画についてだ。

    既存の2028年までのタイトルパートナー契約や、ホンダと進めている燃料・潤滑油開発が変更されたとの公式発表は出ていない。

    したがって現段階では、「アラムコが撤退する」「燃料供給が止まる」といったところまで話を広げるのではなく、2027年に予定されていた追加投資が中東情勢によって保留されている可能性がある、と捉えるのが適切だ。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    大型投資を続けるアストンマーティンへの影響
    アストンマーティンはローレンス・ストロールの下で、F1世界選手権制覇を目標に大規模な投資を続けてきた。

    シルバーストンには新たなAMRテクノロジーキャンパスを建設し、自社風洞を含む最新設備を整備。さらにエイドリアン・ニューウェイをはじめとする有力な技術者を獲得し、2026年からはホンダとのワークス体制へ移行した。

    こうした長期プロジェクトを進めるうえで、スポンサー収入の拡大は重要な要素となる。

    特に2027年にアラムコからの支援増額と新スポンサーの加入が計画されていたのであれば、その延期はチームの中長期的な財務計画に一定の影響を与える可能性がある。

    ただし、F1にはコストキャップが存在するため、スポンサー収入の減少がそのままマシン開発費の減少につながるわけではない。チームの設備投資やマーケティング、組織運営など、コストキャップ対象外を含めた事業全体への影響として考える必要がある。

    中東情勢がF1ビジネスにも波及
    今回の報道が事実であれば、アストンマーティン固有の経営問題というより、地政学的な情勢がF1のスポンサー市場に直接影響を及ぼしたケースとなる。

    アラムコは2028年までアストンマーティンのタイトルパートナーを務める契約を結んでおり、ホンダとの技術プロジェクトにも関与している。それだけに、2027年に向けた追加支援がどの程度の規模で計画され、今回の凍結がどこまで影響するのかが焦点となる。

    現時点ではアストンマーティン、アラムコともに報道について公式なコメントを発表していない。既存契約や技術提携の変更も確認されておらず、まずは2027年に向けたスポンサー拡大計画が中東情勢を理由に保留されたとの報道段階にある。

    アストンマーティンがホンダとのワークス体制を本格化させるなか、アラムコとの関係が今後どのように推移するのか。チームの競争力だけでなく、長期的なF1プロジェクトを左右するビジネス面の動きとしても注目される。

  • アストンマーティンF1は4秒差から1秒差へ モントーヤが語るニューウェイの「奇跡」

    アストンマーティンF1は4秒差から1秒差へ モントーヤが語るニューウェイの「奇跡」

    アストンマーティンF1は、ハンガリーGPで投入したAMR26Bをきっかけに復調への兆しを見せている。

    元F1ドライバーのファン・パブロ・モントーヤは、その変化をエイドリアン・ニューウェイの影響力を示すものと評価し、さらにホンダのアップデートによってトップとの差が縮まると予想した。

    モントーヤは、シーズン序盤に最大4秒規模だった差が、今後は「1秒」程度まで縮まる可能性があると分析。AMR26Bを事実上ニューウェイが本格的に手掛けた最初のマシンと位置づけ、2027年にはアストンマーティンとホンダがさらに大きな飛躍を遂げると期待している。

    AMR26Bで流れが変わったアストンマーティン
    2026年の新レギュレーション導入とともに始まったアストンマーティンのシーズンは、当初の期待とは大きく異なるものとなった。

    ニューウェイの加入、ホンダとのワークス体制、新ファクトリーと新風洞。勝利を狙うための条件を揃えたように見えたが、AMR26は開幕から深刻な競争力不足に苦しんだ。

    しかし、ハンガリーGPで大幅にアップデートされたAMR26Bが投入されると状況に変化が生まれた。まだトップ争いに加われる段階ではないものの、マシンの挙動や競争力には明確な改善が確認されている。

    この変化を高く評価しているのが、ウィリアムズやマクラーレンで活躍したモントーヤだ。かつてマクラーレンでニューウェイと仕事をした経験を持つモントーヤは、67歳の英国人デザイナーがアストンマーティンの将来にとって極めて重要な存在だと考えている。

    「アストンマーティンは最後尾から競争できるところまで来た。それはニューウェイの影響が実を結び始めていることを示している」

    「これがニューウェイの最初の本当のマシン」
    モントーヤは、AMR26Bについてニューウェイの思想が本格的に反映された最初のアストンマーティンだと評価する。

    「これがニューウェイにとって最初の本当のマシンだと思う。エイドリアンが加入したときには、すでに多くのことが決まっていた。それは彼が望んでいたものではなかった。だから、すでに決められていたものを使って仕事をするしかなかったんだ」

    ただし、この点については実際の開発経緯とは若干異なる。

    ニューウェイ自身が明かしているように、2025年3月1日にアストンマーティンへ正式加入した時点で、2026年型マシンの開発はむしろ十分に進んでいなかった。

    他チームがFIAの規定に従って1月1日から2026年型マシンの空力開発を開始していたのに対し、アストンマーティンは出遅れていた。さらに、新しい風洞の稼働を待ったことで実質的な作業開始は遅れ、ニューウェイは短期間で設計をまとめる必要に迫られた。

    ホンダ側も、ニューウェイの加入後に多くの設計変更を求められ、パワーユニットについても修正が必要になったことを明かしている。

    つまり、AMR26の問題はニューウェイが既存の完成されたコンセプトを引き継いだことよりも、開発開始そのものが遅れ、十分な検証時間を確保できなかったことにあった。

    その意味では、シーズン途中まで開発を重ねたAMR26Bこそ、ニューウェイが落ち着いた環境で方向性を定め、現在の技術陣とともに作り込んだ最初の仕様と見ることができる。

    ホンダの新パワーユニットがザントフォールトで投入へ
    モントーヤが期待しているのはシャシーだけではない。ホンダも夏休み明けにパワーユニットのアップデートを投入する予定であり、これがアストンマーティンのさらなる前進につながると考えている。

    「これからさらに新しいものが入ってくる。次のザントフォールトでは新しいエンジンが投入される。それがまた一歩前進になるはずだ」

    そして、シーズン後半にはポイント争いへ加わることも可能だと予想した。

    「マドリードやマレーシアの頃になれば、彼らがポイントを獲得していても驚かないよ」

    ホンダが準備している新仕様は、ICEを中心に燃焼効率やフリクション、ターボなどを改善したものとなる。アストンマーティンはハンガリーGP後にテストを実施しており、夏休み明けのオランダGPで正式投入される見通しだ。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダF1

    「4秒差だった。それが1秒になる」
    モントーヤは、ホンダが一度のアップデートですべての問題を解決するとは考えていない。それでも、パワーユニットの競争力は大きく改善すると予想している。

    「エンジンにはまだ問題が残ると思う。でも、パワー面での差は半分くらいまで縮められるんじゃないかな」

    そして、アストンマーティン全体の改善幅について具体的な数字を挙げた。

    「それでも1秒くらいは離されると思う。でも以前は4秒だったんだ」

    モントーヤが強調するのは、単純なラップタイムだけではない。2026年の新レギュレーションで多くのチームがマシン開発に苦戦するなか、ニューウェイが短期間でアストンマーティンの方向性を修正した点を評価している。

    「ニューウェイがやっていることは、ウィリアムズやアルピーヌ、ハースが苦しんでいる状況を見るとよく分かる。この人がやって来て、最初のマシンですでに大半のチームより良いものを作っているんだからね」

    本当の勝負は2027年
    一方、モントーヤはアストンマーティンが夏休み明けから直ちに優勝争いを始めるとは考えていない。

    2026年後半はAMR26Bとホンダの新パワーユニットによって着実に差を縮め、その成果を2027年につなげることが重要だと見ている。

    「夏休み明けにはアストンマーティンが一歩前進すると期待している。でも、本当の大きなジャンプは来年になると思う」

    ホンダにとっても、2026年シーズンを通じて得られる実戦データは大きな意味を持つ。

    「ホンダには今、2027年に向けてさらに大きなステップを踏むための時間がある。ホンダとアストンマーティンは素晴らしい物語を作ると思うよ」

    アストンマーティンにとってAMR26Bは、単なるシーズン途中のアップデートではなく、ニューウェイ主導の開発体制が本格的に機能し始めたことを示す最初の試金石となる。

    モントーヤが示した「4秒から1秒」という数字はあくまで本人の見立てだが、夏休み明けにはホンダの新パワーユニットも加わる。2026年後半でどこまで差を縮められるかが、ニューウェイとホンダによる2027年のアストンマーティンF1の競争力を占う重要な指標となりそうだ。

  • フェルナンド・アロンソ F1続行でも引退でも「アストンマーティン」とデ・ラ・ロサ

    フェルナンド・アロンソ F1続行でも引退でも「アストンマーティン」とデ・ラ・ロサ

    フェルナンド・アロンソのF1での将来について、アストンマーティンのアンバサダーを務めるペドロ・デ・ラ・ロサが見解を示した。アロンソが現役を続行する場合も、F1ドライバーとして引退する場合も、アストンマーティンとの関係を継続することになるという。

    45歳のアロンソを巡っては、古巣アルピーヌへの復帰を含め、2027年以降の去就がF1ドライバー市場の注目材料となっている。

    しかし、デ・ラ・ロサによれば、アロンソが今後下す決断は「どのチームで走るか」ではなく、アストンマーティンでドライバーを続けるか、それとも別の役割に移るかというものになるようだ。

    「いずれにせよ、彼は僕たちと一緒にいる」
    アロンソは2024年にアストンマーティンとの契約を延長。当時は2026年末までの複数年契約と発表されたが、Sky Sports F1の実況を務めるデビッド・クロフトは、実際には5年間に及ぶ契約が結ばれていると伝えている。

    その契約については、アロンソが最初の期間をF1ドライバーとして過ごした後、現役を退いた場合にはアンバサダーなど別の役割でアストンマーティンとの関係を継続できる内容になっている可能性も指摘されている。

    デ・ラ・ロサはイタリアの『Automoto』に対し、アロンソの将来について次のように語った。

    「彼がチームに残ってくれれば素晴らしい。でも、それは非常に個人的な決断だ。彼には考えなければならないことがたくさんあるし、どんな選択をしても僕たちは尊重する。僕たちが口を挟むこともない」

    「僕たちにできるのは、彼に可能な限り最高のマシンを用意することだけだ。彼は今後数カ月のうちに決断するだろう。だからこそ、今それを与える必要がある」

    そのうえで、デ・ラ・ロサはアロンソがアストンマーティンを離れて別のF1チームへ移籍する可能性を事実上否定した。

    「いずれにせよ、彼は僕たちと一緒にいる。ドライバーとしてなら素晴らしい。でも、アンバサダーになることもできるし、別の役割を担うこともできる」

    この発言通りであれば、アロンソにとって2027年以降の選択肢は、アストンマーティンでF1ドライバーを続けるか、現役を退いてチーム内で別の役割を担うかということになる。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    2027年F1の方向性も現役続行の判断材料
    アロンソが現役を続けるかどうかを左右するのは、アストンマーティンの競争力だけではない。2026年に導入された新世代F1マシンのドライビング特性について、アロンソはこれまで厳しい意見を繰り返してきた。

    特に新パワーユニットでは電動側の比重が大幅に高められたことに不満を示しており、F1がドライバーにとって純粋に楽しめるカテゴリーであり続けることの重要性を訴えている。

    F1では2027年に向けてレギュレーションの調整が進められており、パワーユニットについてもバッテリーへの依存度を抑える方向で変更が検討されている。

    デ・ラ・ロサは、こうした今後のF1の方向性もアロンソの決断に影響すると考えている。

    「彼には残ってほしい。彼は特別なドライバーであり、素晴らしいリーダーだからだ」

    「彼は現代のマシンをドライブすることを楽しみたいと思っている。だからこそ、今後数年間に予定されている変更によって、将来のF1がどのようなものになるのかを知ることは有益だろう」

    アストンマーティンの競争力も重要な要素
    アロンソにとって2026年シーズンは厳しい戦いが続いている。ここまで獲得したのは1ポイントで、ドライバーズランキング19位。F1キャリア23シーズン目を迎えたベテランにとって、ルーキーイヤー以来となる低い順位に沈んでいる。

    予選でも苦戦が続き、第11戦ハンガリーGPでようやく今季初めてQ2進出を果たした。一方、アストンマーティンはハンガリーで大幅にアップデートされたAMR26Bを投入。さらにHondaもオランダGPに向けて改良版パワーユニットを準備しており、シーズン後半の巻き返しに期待がかかっている。

    デ・ラ・ロサが「可能な限り最高のマシンを用意することだけ」と語ったように、アストンマーティンが今後どこまで競争力を高められるかは、アロンソの現役続行を後押しする重要な要素となる。

    ただし、今回の発言でひとつの方向性は明確になった。アロンソがF1ドライバーとして走り続ける場合も、引退を決断する場合も、その将来はアストンマーティンと結びついている。今後数カ月で下されるという決断は、移籍先を選ぶものではなく、アストンマーティンでどのような役割を担うかを決めるものになりそうだ。

  • アストンマーティンF1 AMR26失敗の原点 ニューウェイ「開発はほぼ未着手だった」

    アストンマーティンF1 AMR26失敗の原点 ニューウェイ「開発はほぼ未着手だった」

    アストンマーティンF1は、2026年シーズン前半に深刻な苦戦を強いられたAMR26について、その開発の出発点から大きな問題を抱えていた。テクニカル・マネージング・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイは、自身がチームに加入した時点で2026年マシンの作業がほとんど進んでいなかったことを明かしている。

    ハンガリーGPでは大規模アップデートを施したAMR26Bを投入し、ようやく改善の兆しを見せ始めたアストンマーティン。

    しかし、そこに至るまでの約半年間は苦難の連続だった。67歳のニューウェイは、2026年マシンの失敗につながった背景として、新レギュレーションへの準備不足に加え、新風洞への移行に伴う開発開始の遅れがあったと振り返った。

    ニューウェイ加入時には2026年マシンの開発がほとんど進まず
    2026年のF1では、シャシーとパワーユニットの双方で大幅なレギュレーション変更が導入された。各チームは2025年1月1日から、風洞やCFD(数値流体力学)を使用した2026年マシンの本格的な空力開発を開始することが認められていた。

    ニューウェイがアストンマーティンで正式に仕事を始めたのは2025年3月1日。ライバルチームがすでに2カ月にわたって新規則に基づく空力開発を進めていた時期だった。

    だが、ニューウェイがシルバーストンで目にした状況は、期待していたものとは異なっていた。

    「2026年のマシンについては、ほとんど作業が進められていなかった」

    ニューウェイは2025年6月にそう明かしている。

    「もちろん、それまでに行われていた作業にも役立つ部分はあった。ただ、それ以降の方がはるかに大きな進歩を遂げている。これほど広範囲で根本的なレギュレーション変更に取り組むのは大きな挑戦だし、期限というものは思っている以上に早く迫ってくる」

    ニューウェイは、自身の加入が3月だったことだけを出遅れの理由にはしていない。正式なレギュレーションが確定する以前から、各チームには準備を進めるだけの情報があったと考えている。

    「レギュレーションの最終版が出たのは1月1日だった。ただ、それ以前でも、きちんとした仕事を進められるだけのことは十分に分かっていたと思う。実際、多くのチームはそうしていたはずだ」

    「だから、そこから少なくとも4カ月遅れてしまえば、どうしても追いつこうとする立場になる。ただ、それが我々の置かれていた状況だった」

    新風洞を待つために開発開始をさらに2週間延期
    アストンマーティンの出遅れには、もうひとつ大きな要因があった。シルバーストンの新ファクトリーに建設した自前の風洞が、2026年マシンの開発開始時点ではまだ使用できる状態になっていなかったことだ。

    それまでアストンマーティンは、ブラックリーにあるメルセデスの風洞を借りて開発を行っていた。

    そのため、まずブラックリーでAMR26の開発を始め、シルバーストンの新風洞が完成した段階で移行することも可能だった。しかし、チームは別の道を選択した。

    ハンガリーGPでAMR26Bを投入した後、ニューウェイは改めて当時の状況を説明した。

    「現実として、私が加入したときには、すぐに作業を始められるようなモデルが何も準備されていなかった」

    さらにアストンマーティンは、メルセデスの風洞を短期間だけ使用するのではなく、自前の設備が完成するまで待つことを決断した。

    「正しい判断だったのか、間違っていたのかは分からない。ただ、我々は自分たちの風洞が使えるようになるまで、さらに2週間ほど開始を遅らせることにした」

    「ブラックリーでごく短期間だけ作業を始め、その後でもう一度シルバーストンへ移すよりは、その方がいいと判断したということだ」

    この判断には理由があった。

    異なる風洞を短期間で切り替えれば、それぞれの設備から得られるデータの相関を確認する必要がある。2026年のような大規模なレギュレーション変更では、マシンの基本コンセプトを決める重要な時期に、設備間の差を検証するための時間を費やすことになりかねない。

    新しい風洞も完成すれば終わりではなかった
    さらに、新風洞は完成した瞬間から最大限の能力を発揮できるわけではない。

    実際の開発に使用しながらデータの精度や再現性を検証し、CFDや実車との相関を構築する必要がある。ニューウェイによれば、アストンマーティンでも新設備を本格稼働させるまでに相当な作業が必要だった。

    「かなり大掛かりな立ち上げ作業だった。そういう意味では、すべてが最初から少し後手に回った状態で始まった」

    「そうなれば、できることをやるしかない。そして、そのまま前へ進んでいく。それだけだ」

    ニューウェイの言葉からは、当時の状況を誰かの責任として断定するというより、すでに発生していた遅れを現実として受け入れ、その中で可能な限り開発を進めてきたという姿勢がうかがえる。

    しかし結果として、2026年マシンの空力開発そのものが遅れていたうえ、新風洞の完成を待つためにさらに時間を失い、その設備を立ち上げるための作業も必要になった。

    アストンマーティンは、新レギュレーションへの対応でライバルを追いかけるところからAMR26の開発を始めることになった。

    開幕後に露呈したAMR26の問題
    その影響は2026年シーズンが始まると明確になった。

    AMR26は期待された競争力を発揮できず、アストンマーティンはシーズン前半を通じて厳しい戦いを強いられた。新しいホンダ製パワーユニットにも課題があり、車体側だけに原因を求めることはできないものの、シャシーについても基本的な開発方向を修正する必要に迫られた。

    特に大きかったのは、開発期間そのものが不足していたことだ。

    新規則の初年度は、各チームが異なるコンセプトを模索するため、初期段階で選択した方向性がその後の開発余地を大きく左右する。スタートが遅れれば、単純に風洞で試せるパーツの数が減るだけではなく、失敗したコンセプトを検証して修正するための時間も少なくなる。

    ニューウェイが語った「常に追いつこうとする立場」という言葉は、AMR26が置かれていた状況を端的に表している。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    ハンガリーで投入したAMR26Bが反撃への第一歩
    それでも、アストンマーティンはシーズン中の開発を継続した。

    ハンガリーGPでは16項目に及ぶ変更を盛り込んだAMR26Bを投入。細かなパーツ変更にとどまらず、マシンの基本的な挙動を改善することを狙った大規模なアップデートとなった。

    決勝ではランス・ストロールが13位、フェルナンド・アロンソが14位に終わり、ポイント獲得には届かなかった。それでもアロンソはアップデート後のマシンについて、以前より挙動を予測しやすくなったと評価している。

    チーム側も、AMR26Bによってようやく開発の方向性に手応えを得始めた。

    ニューウェイの説明を踏まえれば、AMR26Bには単なる通常のシーズン中アップデート以上の意味がある。

    開発初期の遅れによって十分に検証できなかったマシンを理解し、問題点を洗い出しながら、本来あるべき開発方向へと戻していく。その成果がようやく形になり始めたのがハンガリーだったと見ることができる。

    2027年はニューウェイが最初から関与するマシンへ
    AMR26の苦戦を、ニューウェイ加入以前の準備不足だけで説明することはできない。

    2026年からワークス体制を組むホンダの新パワーユニットにも複数の課題があり、新しいファクトリーやシミュレーション設備など、アストンマーティンという組織そのものが大きな変革の途上にある。

    それでも、ニューウェイ自身が指摘するように、2026年マシンの開発がライバルより遅れた状態で始まったことは大きなハンディキャップとなった。

    現在は状況が異なる。

    シルバーストンの新風洞は稼働し、ニューウェイも開発体制の中心にいる。2026年シーズンを通じて得られる実戦データも、翌年のマシン開発へ直接生かすことができる。

    何より、加入時に「ほとんど作業が進められていなかった」というAMR26とは違い、2027年マシンではニューウェイが開発の早い段階から深く関与できる。

    AMR26Bで見え始めた改善がシーズン後半にどこまで進むのか。そして、開発初期からニューウェイの思想を反映できる2027年マシンがどこまで競争力を高めるのか。

    AMR26で露呈した出遅れを繰り返さないことが、アストンマーティンにとって最初の条件となる。2026年の苦戦を経て開発環境がようやく整った今、2027年こそニューウェイ加入の真価が問われるシーズンとなる。

  • ランス・ストロール モナコで5億円超の希少アストンマーティンをドライブ

    ランス・ストロール モナコで5億円超の希少アストンマーティンをドライブ

    アストンマーティンF1のランス・ストロールが、夏休み中のモナコで極めて希少な「アストンマーティン DBR22」を運転する姿が目撃された。

    世界でわずか22台しか生産されなかったオープンコックピットのV12スピードスターで、現在の市場価値は最大300万ポンド(約5億9000万円)とも推定されている。F1で苦しいシーズンを送るストロールだが、束の間の休暇を特別な1台とともに過ごしているようだ。

    世界22台限定のアストンマーティン DBR22
    ストロールがモナコの公道で運転していたのは、アストンマーティン DBR22。2022年、同社のビスポーク部門「Q by Aston Martin」の設立10周年を記念して発表されたモデルだ。

    デザインの着想源となったのは、1959年のル・マン24時間レースで総合優勝を飾った名車DBR1。フロントウインドスクリーンを最小限に抑えたオープンコックピットを採用し、アストンマーティンのレーシングヘリテージを現代的に再解釈している。

    搭載されるのは5.2リッターV12ツインターボエンジンで、最高出力705馬力、最大トルク752Nmを発生する。0-60mph(約96km/h)加速は3.5秒、最高速度は198mph(約319km/h)に達する。

    生産台数はわずか22台。新車時の価格はカスタマイズ費用を除いて約150万ポンドだったが、その希少性から現在では250万~300万ポンドの価値があると推定されている。

    ストロールが所有する高級車コレクション
    27歳のストロールは、DBR22以外にも複数の高性能車を所有しているとされる。

    VIP Fortunesによれば、そのコレクションにはアストンマーティン・ヴァンテージ、メルセデスAMG GT R、フェラーリ・カリフォルニア、ランボルギーニ・ウラカンなどが含まれている。

    その中でもDBR22は、生産台数とブランドの歴史的背景を考えれば別格の存在だ。単純な高級車というだけではなく、アストンマーティンのレーシング史を象徴するモデルをモチーフとしたコレクターズカーでもある。


    F1では苦戦が続くストロールとアストンマーティン
    一方、ストロールが所属するアストンマーティンは、2026年のF1世界選手権で厳しい前半戦を強いられている。

    今季からホンダとのワークス体制がスタートし、エイドリアン・ニューウェイの指揮下で初めて開発されたマシンとしてAMR26には大きな期待が寄せられていた。

    しかし、開幕後はマシンとパワーユニットの双方で問題に直面。フェルナンド・アロンソとストロールを合わせ、シーズン前半だけでグランプリにおけるリタイアまたは完走扱いとならなかったケースが11回に達した。

    状況を改善するため、アストンマーティンはハンガリーGPで大幅に改良されたBスペックのマシンを投入。ハンガロリンクではストロールが13位、アロンソが14位でフィニッシュし、一定のパフォーマンス向上を示した。

    それでも、アストンマーティンはコンストラクターズ選手権で1ポイントにとどまり10位。新規参戦のキャデラックを上回っているだけという厳しい位置にいる。

    夏休み明けにはさらなる巻き返しが求められるストロールだが、その前にモナコでは、F1マシンとはまったく異なる希少なV12マシンのステアリングを握り、ひとときのオフを楽しんでいる。

  • ニューウェイが狙う「300mm」の規則変更 アストンマーティンF1反撃の鍵

    ニューウェイが狙う「300mm」の規則変更 アストンマーティンF1反撃の鍵

    2027年のF1技術レギュレーションに盛り込まれる変更について、アストンマーティンのチーム代表兼マネージング・テクニカル・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイが、最大の注目点としてフロア前方の見直しを挙げた。

    2026年に導入された新世代マシンは本来、2027年に向けて大きな基本思想を維持しながら発展していくと考えられていた。

    しかしFIAは、エネルギーマネジメントや空力面で明らかになった課題への対応として複数の規則変更を決定。なかでもフロア前方の構造変更はマシンの車高設定と空力特性に直接影響するため、ニューウェイは各チームに新たな開発競争をもたらす可能性があるとみている。

    アストンマーティンにとっては、2026年型マシンで得た経験をいったんリセットし、ニューウェイの空力設計能力をより生かせる機会にもなり得る。フェルナンド・アロンソが2027年もF1で戦う場合、その競争力を左右する重要な規則変更となりそうだ。

    2027年F1規則は「小変更」では済まない
    F1は2026年にシャシーとパワーユニットの双方で大規模な技術規則変更を実施した。当初、翌2027年はそのコンセプトを成熟させるシーズンになるとみられていた。

    しかし、実際にはFIAがフロア、リアウイング、パワーユニットなど複数の領域に修正を加えることになった。

    ニューウェイは、2027年に向けた変更について「燃料量の増加、エネルギーの貯蔵と配分に関するいくつかの変更、それにもう少し細かな調整がある」と説明している。

    背景にあるのが、2026年型パワーユニットで大きなテーマとなったエネルギーマネジメントだ。電動出力への依存度が高まったことで、コーナーでエネルギーを大量に使用した後、ストレート終盤で電力を使い切るケースが発生した。

    FIAは2027年に向けて内燃エンジン側の比率を再び高める方向で規則を修正し、ドライバーがバッテリー残量を過度に意識しなければならない状況を緩和しようとしている。

    一方、ニューウェイがより大きな技術的可能性を感じているのはパワーユニットではなくシャシー側だ。

    ニューウェイが「重要」と考えるフロア前方の変更
    2027年規則では、フロア前方に設けられているプランクの構造が見直される。前方部分が短縮されることで、その先端位置は現在より約300mm後方へ移動することになる。

    一見すると限定的な寸法変更だが、マシンのセットアップと空力に与える影響は小さくない。

    現在の構造では、フロントの車高を極端に低くするとプランクの摩耗が問題となる。前方部分が短くなれば、チームはこれまでよりフロントを低く走らせることが可能になり、マシン全体の空力マップを再構築する余地が生まれる。

    ニューウェイは、この部分こそ2027年規則の重要なポイントだと指摘する。

    「これによって、異なる空力特性が生まれることになる」

    「僕たちにとって重要な変更はフロア前方だ。これは全チームにとって、これまでとは違った空力上の課題になる」

    単純にダウンフォース量を増減させる変更ではない。マシンの前後車高、フロア下の気流、空力バランスなどを含め、基本的な設計思想そのものに影響する可能性がある。

    ニューウェイがこの変更を重視している理由もそこにある。

    300mmの変更がマシン設計を変える可能性
    グラウンドエフェクトを利用する現在のF1マシンでは、フロアと路面の距離が空力性能を大きく左右する。

    特にフロント側の車高をどこまで下げられるかは、フロアへ流れ込む空気やマシン後方までの気流構造に影響する。したがって、プランク前端が約300mm後退することは、数字以上に大きな意味を持つ。

    各チームは2026年型マシンで蓄積した空力データをそのまま発展させるだけではなく、2027年仕様に合わせて最適な車高とフロア形状を探り直す必要が出てくる。

    これはアストンマーティンにとってチャンスにもなる。

    2026年の序列を決定づけた既存コンセプトの成熟度だけでなく、2027年の変更を誰が最も早く理解し、新しい空力パッケージへ落とし込めるかが競争力を左右するためだ。

    ニューウェイはレッドブル時代を含め、規則変更時に新しい空力コンセプトを構築してきた経験を持つ。アストンマーティンが2026年にライバルへ後れを取っていたとしても、2027年の変更は差を縮めるための新たな開発ポイントになり得る。

    エイドリアン・ニューウェイ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    リア周辺ではFIAが空力の「抜け道」を整理
    2027年にはマシン後方にも変更が加えられる。

    リアウイングはダウンフォースを抑制する方向で寸法や構造が変更される一方、新しい補強部材が認められることで、各チームがその周辺で新たな空力処理を模索する可能性もある。

    さらにFIAは、2026年に各チームが開発を進めたエキゾースト周辺の空力デバイスやリアウイング周辺の一部ソリューションを規制する。

    ニューウェイはこれについて、「FIAは、各チームがエキゾーストやリアウイング周辺で使ってきたいくつかのトリックを排除した」と説明する。

    フロア前端のデバイスについても数が削減されるため、2027年型マシンでは2026年に開発された細かな空力処理の一部が使えなくなる。

    つまりFIAは、既存の開発競争を単純に継続させるのではなく、一部を整理したうえで新たな設計条件を与えようとしている。

    アストンマーティンにとって2027年は巻き返しの機会
    ニューウェイが指摘しているのは、規則の文言を利用した単純な「抜け穴」というより、規則変更によって生まれる新たな設計自由度だ。

    特にフロア前方の変更によってフロントの車高設定に新しい可能性が生まれれば、そこからフロア全体、ディフューザー、リアウイングまで含めた空力コンセプトを組み直すことができる。

    これは既存マシンを完成させているチームだけが有利になる状況を崩す可能性がある。

    アストンマーティンはニューウェイを技術部門の中心に据え、ホンダ製パワーユニットとの組み合わせで新時代のF1に挑んでいる。2026年に直面した問題を解決するだけでなく、規則が再び動く2027年を次の大きな機会として捉えていることは明らかだ。

    わずか300mmの変更でも、F1の空力設計ではマシン全体の考え方を変えるきっかけになり得る。ニューウェイがそこからどのような解答を導き出すのか。そして、そのマシンをフェルナンド・アロンソがドライブすることになるのか。2027年に向けたアストンマーティンの開発で、フロアは最大の注目点のひとつとなりそうだ。

  • フェルナンド・アロンソ 9億円のランボルギーニでモナコを走行 世界63台限定

    フェルナンド・アロンソ 9億円のランボルギーニでモナコを走行 世界63台限定

    フェルナンド・アロンソが、約590万ドル(約9億円)とされる希少なランボルギーニ「シアン FKP 37」を運転してモナコの街を走る姿が目撃された。

    F1は現在サマーブレイクに入っており、各チームとドライバーはシーズン後半戦に向けて束の間の休暇を過ごしている。45歳のアロンソもそのひとりだが、モナコでの休日を彩ったのは、世界でもわずか63台しか生産されていない特別なランボルギーニだった。

    ナンバープレートには「14」 アロンソ所有車と判明
    SNSに投稿された映像には、ランボルギーニ・シアン FKP 37がモナコ公国の道路を走行する様子が収められている。

    映像だけでは運転席に座っている人物を明確に確認することは難しい。しかし、ナンバープレートにはアロンソがF1で使用しているカーナンバーと同じ「14」が掲げられており、アロンソが所有する車両であることを示す大きな手掛かりとなっている。

    シアン FKP 37はランボルギーニが2019年9月に発表した限定モデルだ。クーペはわずか63台、ロードスターも19台しか生産されず、いずれもすでに完売している。

    「シアン」という名称はボローニャ地方の方言で「稲妻」を意味し、ランボルギーニにとって電動化時代への第一歩を象徴するモデルでもある。

    807馬力を発揮 0-100km/h加速は2.8秒
    シアン FKP 37は、ランボルギーニのV12エンジンに電動システムを組み合わせたハイブリッド・スーパーカーだ。

    最高出力は602kW(807馬力)に達し、登場当時はランボルギーニ史上最もパワフルな市販モデルだった。0-100km/h加速はわずか2.8秒、最高速度は355km/hに達する。

    「FKP 37」という名称は、長年フォルクスワーゲン・グループを率い、ランボルギーニの発展にも大きな影響を与えたフェルディナント・カール・ピエヒのイニシャルと、生誕年である1937年に由来している。


    アロンソが所有する数億円規模のスーパーカーコレクション
    2度のF1ワールドチャンピオンであるアロンソは、熱心な自動車コレクターとしても知られている。

    シアン FKP 37は、アロンソが所有する数百万ドル規模のカーコレクションの一台にすぎない。

    コレクションには、現在所属するアストンマーティンが開発したハイパーカー「ヴァルキリー」をはじめ、フェラーリ・エンツォ、マクラーレン・エルヴァなど、希少価値の高いモデルが含まれている。

    F1でルノー、フェラーリ、マクラーレン、アルピーヌ、アストンマーティンなど複数のメーカー系チームを渡り歩いてきたアロンソだけに、そのガレージもF1キャリアを思わせる多彩な顔ぶれとなっている。

    45歳アロンソ F1での将来にも注目
    一方、アロンソを巡っては、スーパーカーだけでなくF1での将来も大きな注目を集めている。

    アストンマーティンは2026年、エイドリアン・ニューウェイの加入とホンダとの新たなワークスパートナーシップによって大きな期待を集めた。しかし、シーズン前半は期待された競争力を発揮できず、厳しい戦いを強いられている。

    グリッド最年長のアロンソについては、2026年限りでF1を離れる可能性も取り沙汰されてきた。ただし最近では、アストンマーティンとの関係を継続する可能性が高まっている。

    ハンガリーGPでは、アストンマーティンのチーム首脳がアロンソの重要性について語った。

    「もちろん、フェルナンドは素晴らしいドライバーだ。フィードバックという面でも、ドライバーとしての能力という面でも、チームにもたらしてくれるものは非常に大きい」

    「だから、もちろん我々にとって彼は重要な存在だ。フェルナンドは我々と過ごす時間を楽しんでいると思っているし、この関係を今後も続けていけるとかなり自信を持っている」

    2026年シーズン後半、アロンソにはアストンマーティンとホンダの新プロジェクトをどこまで前進させられるかという重要な仕事が待っている。その前に、モナコで世界63台限定のV12ランボルギーニを走らせる時間は、45歳のベテランにとって貴重なサマーブレイクのひとときとなった。