アストンマーティンF1のチーム代表を務めるエイドリアン・ニューウェイは、グランプリの現場に姿を見せる機会が少なく、サーキットを訪れた際にもメディアの前で発言することはほとんどない。その背景には、開幕戦オーストラリアGPで行われた記者会見での率直すぎる発言があるという。
ニューウェイはもともと表舞台に立つことを好まず、チーム代表として対外的な役割を担うよりも、マシン設計に集中するスタイルを取っている。
そのため不在時には、チーフ・トラックサイド・オフィサーのマイク・クラックやアンバサダーのペドロ・デ・ラ・ロサが、苦戦するチームの主なスポークスマンを務めている。
ニューウェイの「極めて批判的」な会見で広報戦略を変更
ニューウェイは2026年F1開幕戦オーストラリアGPで、シーズン最初のチーム代表記者会見に出席した。しかし、その場での発言がアストンマーティンにとって広報上の問題になったとされている。
ニューウェイは、レッドブル時代に成功を支えたホンダF1のパワーユニット技術者について、その一部が「ソーラーパネルか何かの仕事に移ってしまった」と明かした。
しかもアストンマーティン側がその状況を把握したのは、シーズン開幕のわずか5カ月前に日本を訪問した際だったという。
さらにニューウェイは、バッテリーの損傷率について「恐ろしい」と表現。問題への対応によってチームのエネルギーが奪われ、メカニックたちが「疲弊しきっている」と率直に語った。
ニューウェイの発言については、ホンダF1に対するコストキャップ上の救済措置をFIAから引き出すため、意図的に厳しい状況を公にしたとの見方もある。
しかし、少なくともアストンマーティンの広報部門にとって、その率直さは想定外だったとされる。通常、F1チーム代表はこうした問題について、より慎重かつ外交的な表現を選ぶ。
スペインのAutoNocionによると、この「極めて批判的」な記者会見を受け、アストンマーティンはニューウェイを「マイクの前に立たせない方がいい」と判断したという。
その後、ハンガリーGPでニューウェイがメディア対応を行った際には、オーストラリアでの会見とは対照的に、はるかに控えめな内容となった。
また、ニューウェイ自身からの情報発信についても、現在はチームの公式チャンネルを中心に行われている。アストンマーティンの公式サイトに掲載されるロングインタビューなど、発言内容を管理しやすい形が中心となっている。

ライバル勢はホンダF1の2027年の進歩に懐疑的との報道
一方、アストンマーティン内部ではホンダF1の開発状況に対する懸念も伝えられている。
チームの匿名の「上級幹部」が、ホンダF1の進歩の遅さにいら立ちを強めているとされる。F1オランダGPで投入された待望のパワーユニットのアップグレードについても、その成果は期待を下回ったと受け止められているという。
ホンダは10月1日付でF1パワーユニット開発体制を変更する。LPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)は角田哲史から、現在アシスタントLPLを務める深尾洋一郎へ交代する予定で、パワーユニット開発の加速と次世代への移行を図る。
また、ローレンス・ストロールが将来のパワーユニット供給を巡ってメルセデスやレッドブル・パワートレインズと接触したとの報道もあり、今回の体制変更との関連も取り沙汰されている。
ライバルチームの間では、ホンダF1が2027年に大幅な性能向上を実現できるかについて「懐疑的」な見方もあるという。過去にマクラーレンと組んだ際も、競争力のある水準に到達するまでには数年を要したことが、その根拠として挙げられている。
FIA会長のモハメド・ビン・スライエムは、ホンダF1を支援するための規則面での対応について言及しており、その背景にはフェルナンド・アロンソをF1に引き留めたいという意向も示している。
メルセデスのトト・ヴォルフも、公平性が保たれる範囲であれば調整を受け入れる姿勢を示しており、レッドブル側からも救済措置への支持が伝えられている。
開幕時にホンダF1の置かれた状況を極めて率直に語ったニューウェイだが、その発言を境にアストンマーティンはメディア対応の方法を変えたとされる。2027年に向けてホンダF1の競争力が大きな焦点となるなか、ニューウェイ自身は表舞台で多くを語るのではなく、マシン開発に集中する姿勢を続けている。
