メルセデスF1代表のトト・ヴォルフは、2026年F1タイトル争いで大きなリードを築くアンドレア・キミ・アントネッリについて、その速さを生み出している攻撃性に苦笑しつつ、シーズン終盤には予想外の出来事によって状況が一変する可能性があると警戒している。
F1スペインGPで今季8勝目を挙げたアントネッリは、ランキング2位のチームメイト、ジョージ・ラッセルに81ポイント差をつけて首位に立っている。
それでもヴォルフは、タイトルが決まったかのように考えることを避け、「ブラックスワン」のような予測困難な事態を念頭に置く必要があると語った。
「白線を越えるな」と何度も念押し
アントネッリはF1スペインGP終盤、十分なリードを築いていたにもかかわらずプッシュを続け、エンジニアのピーター・ボニントンに無線でウォールに接触した可能性を伝え、マシンにダメージがないか確認を求めた。
ヴォルフによれば、こうした限界まで攻め続ける姿勢はアントネッリにとって珍しいものではないという。
「ちょうど彼の父親とその話をしていたんだが、それがキミなんだ」
「我々は彼に、白線を越えてはいけないと何度も頭に叩き込まなければならなかった。2024年のモンツァのFP1でも、白線を越えてクラッシュしたからね」
「私は彼に『マシンから外が見えていないのか? トラックリミットが分かるように、もっと高い位置から見えるようにする必要があるのか?』と言ったんだ」
「それについては一緒に笑った。そして今回のスペインGPでも、残り6周かそのくらいのところで『マシンをチェックしてくれ。ウォールに擦った』と言ってきた」
アントネッリの大胆なドライビングは、チーム代表にとって気が気ではない部分もある。
「この白髪は彼のせいだよ。でも、おそらく彼はそういうドライバーなんだろうし、それが彼をあれほど速くしている理由なのかもしれない」

81ポイント差でもタイトルを意識せず
アントネッリはF1スペインGP終了時点で267ポイントを獲得し、201ポイントのラッセルに81ポイント差をつけている。
20歳のアントネッリが2026年のF1ワールドチャンピオンに輝けば、セバスチャン・ベッテルが2010年に記録した史上最年少F1王者の記録を3年以上更新することになる。
しかし、ヴォルフによれば、本人はタイトル争いをほとんど意識していない。
「もちろん、彼はそれについて考えていない。この子には物事を切り分ける能力がある。普段は若者として過ごし、マシンに乗れば成熟したレーシングドライバーになる」
「だからキミが『チャンピオンシップのことは考えていない』と言うなら、本当に考えていないんだ」
ヴォルフが警戒する「ブラックスワン」
一方でヴォルフは、現在のポイント差だけを見てタイトル獲得を当然視することには慎重な姿勢を示した。
そこで持ち出したのが「ブラックスワン」という言葉だ。一般的には、事前にはほとんど予測できず、発生すると大きな影響を及ぼす出来事を意味する。
「ブラックスワンのような出来事はある。それは起こり得る。そして最後になって、失う可能性などないと思っていたものを失うことだってある」
アントネッリは今季、速さだけでなく安定した結果を積み重ねてポイントリードを拡大してきた。一方で、限界まで攻め続ける姿勢はヴォルフを悩ませる要素でもあり、その攻撃性こそが20歳の速さを支えている可能性もある。
残る2026年F1シーズンでメルセデスに求められるのは、アントネッリの持ち味を損なうことなく、不測の事態による大量失点を避けることになる。
