2026年F1第13戦イタリアGPでは、新世代マシン特有のエネルギー管理がこれまで以上に大きな焦点となる。長いストレートが連続するモンツァは電気エネルギーの消費量に対して回生機会が少なく、マックス・フェルスタッペンは「かなり苦痛」、オスカー・ピアストリは決勝が「カオスになる」と予想している。
2026年F1マシンでは、ストレートで電気エネルギーをどこまで使い、どこで温存するかがラップタイムだけでなくバトルにも直結する。
モンツァではその特徴が極端に表れる可能性があり、従来のようにアクセル全開でブレーキングポイントまで加速し続ける「スピードの殿堂」の走り方そのものが変わろうとしている。
モンツァで顕在化する2026年F1のエネルギー問題
モンツァは4本の長いストレートを持つ一方、コーナー数が少ない。つまり、ストレートで大量の電気エネルギーを使うにもかかわらず、それを補充するための回生機会が限られている。
ドライバーは必要な場所で最大限のエネルギーを展開しながら、重要な局面で電力を使い果たさないよう管理しなければならない。
マックス・フェルスタッペンは、木曜日の段階ですでに厳しい週末になることを覚悟している。
「そうだね、かなり苦痛だと思う。とにかくエネルギー効率がすごく悪い。でも、これについてあまりネガティブなことばかり言いたくはない。そういうものだからね」
「僕はもう精神的には受け入れている。少し違った週末になることに備えているよ。ずっと全開でプッシュすることはできない。言ってみれば、アクセルペダルを優しく扱わなければならない」
重要なのは、これが決勝だけの問題ではないことだ。予選でも、従来のモンツァで象徴的だった全開加速と限界まで遅らせたブレーキングという組み合わせが成立しにくくなる可能性がある。
ルクレール「以前とはまったく違うサーキットになる」
フェラーリのシャルル・ルクレールも、シミュレーターで確認したデータから大きな変化を予想している。
「変化は大きいと思う。本当にかなり大きい。データを見て、シミュレーターでも走ってみたからね」
一方で、ルクレールは実際にコースを走れば印象が改善する可能性も指摘した。
「スパとシルバーストンを振り返ると、データやシミュレーターを見た段階では、あの2つのサーキットでのマシンのフィーリングについて少し懐疑的な状態で週末を迎えた。でも、実際にコースを走ってみると、予想していたよりずっと良かった」
「だから、ここでも同じようになることを願っている。ただ、机上では以前とはまったく違うサーキットになるように見える」
この発言が示しているのは、単純な最高速不足ではない。エネルギーをどのストレートで使い、どこで温存するかによって、1周の組み立てそのものが変化するということだ。
モンツァでも大きなリアウイングを使える2026年F1
もうひとつ従来のモンツァと大きく異なるのが空力設定だ。
かつてのモンツァでは、ドラッグを極限まで減らした専用のローダウンフォース仕様のリアウイングが象徴的だった。しかし2026年F1マシンでは、ストレートモードによって直線区間でドラッグを減らせるため、コーナーでより大きなダウンフォースを確保する設定が可能になっている。
ルイス・ハミルトンは、その結果としてモンツァ特有の感覚まで変化すると説明する。
「ここに来てこういう状況になるのは、ちょっとクレイジーだね」
「例えばストレートではドラッグ低減システムを使えるから、前戦で使ったのと同じようなウイングを走らせることができる。そのため、コーナーでは昨年よりダウンフォースが大きいかもしれない」
「もちろんストレートではドラッグを減らすシステムがあるから速い。でも、その後にパワーを失っていく。コーナーへの進入では、過去より20~30km/hくらい遅い速度で到達するかもしれない。それには少し慣れる必要があると思う」
ブレーキングポイントに届く前にシフトダウン
ハミルトンが特に違和感を覚えているのは、ストレート終盤で加速が鈍っていくことだ。
「以前はここに来ると、ストレートの最後までエンジンが叫ぶような音を立てて、ブレーキングポイントまでずっと加速し続けるのを感じられた。それが本当に素晴らしかった」
「今週末はそうならないだろうね。おそらくドライバーはブレーキングゾーンに到達する前からシフトダウンすることになる。僕にとって、それが最高の感覚だとは今でも思えない。でも、これが今あるものだからね」
さらに、2026年F1ではアクセル操作そのものがエネルギー戦略と密接につながっている。
「アクセルをどう踏んでフルパワーに持っていくか、そしてシステムをどう作動させるかを最適化しなければならない。すごく技術的で難しい。でも、全員が同じ問題に直面している」
つまりドライバーは単純にアクセルを踏み続けるのではなく、電気エネルギーを最大限有効に使えるよう、加速の仕方まで調整する必要がある。

ピアストリは決勝序盤の「カオス」を予想
ドライバーにとって複雑な状況は、一方でレースを劇的なものにする可能性がある。
各車が異なる場所でエネルギーを展開すれば、あるストレートでは攻撃側だったマシンが次のストレートでは防御側に回るといった展開が起こり得る。さらにモンツァではスリップストリームの効果も大きく、エネルギー残量との組み合わせによって抜きつ抜かれつの展開が増える可能性がある。
マクラーレンのオスカー・ピアストリは、特に決勝序盤が激しくなるとみている。
「決勝はカオスになると思う。特に序盤はね」
「ここは明らかにものすごくエネルギーが不足するサーキットだし、エネルギーを使えるストレートもたくさんある。レースはかなり特別なものになる可能性があると思う。どうなるか見てみよう」
実際にどのようなエネルギー配分が最適になるかについては、フリー走行で各チームが確認していくことになる。
「それまでに走行時間はたくさんあるから、みんながどんなデプロイメントを使うのか、最終的にどう落ち着くのかを見ることになる」
「でも、かなりカオスでエキサイティングなものになると予想しているよ。それをどちらの視点で見るかは自由だけど、いずれにしても何かが起きるレースになると思う」
「スピードの殿堂」がエネルギー戦略の舞台へ
2026年F1イタリアGPでは、モンツァの代名詞だった純粋な最高速とは異なる能力が問われることになりそうだ。
フェルスタッペンが語るようにアクセルを「優しく」扱い、どのストレートで電力を使うかを判断する必要がある一方、その判断はライバルとの位置関係によって刻々と変化する。温存したマシンが次のストレートで攻撃し、先に電力を使ったマシンが防御に回るという展開も考えられる。
予選では1周を通じたエネルギー配分、決勝ではスリップストリームと他車のデプロイメントまで含めた駆け引きが重要になる。「スピードの殿堂」モンツァは、2026年F1のエネルギーマネジメントがレースそのものをどこまで変えるのかを測る、これまでで最も厳しい試金石となりそうだ。
