セルジオ・ペレスは、自身のF1キャリアについて「あと3年くらい」との見通しを示した。36歳のペレスにとって、キャデラックを競争力のあるチームへと成長させることが、F1で取り組む最後の大きなプロジェクトになる可能性が高いという。
2024年末にレッドブル・レーシングのシートを失ったペレスは、1年間の休養を経て2026年にF1へ復帰。新規参戦したキャデラックでバルテリ・ボッタスとコンビを組んでいる。
経験豊富な2人には、単にマシンを走らせるだけでなく、新チームの技術面や組織づくりを前進させる役割も求められている。
キャデラック育成がF1最後の大きな挑戦
ペレスが現在のプロジェクトに魅力を感じている理由のひとつが、完成されたチームに加入するのとは異なり、自らチームの方向性に影響を与えられることだ。
キャデラックのF1プロジェクトを成長させることは、ペレスにとってキャリア終盤の重要な目標となっている。一方で、いつまでF1を続けるのかについても考え始めているという。
ペレスはF1公式ポッドキャスト『Beyond The Grid』で、ドライバーが引退を考える基準について、年齢そのものよりも競争に対する意欲が重要だと説明した。
「ある年齢になると衰え始める部分はあると思う。でも、僕が重要だと思うのは自分の内側にある原動力だ。意欲のことだよ。マシンに乗っていないときに、エンジニアやマシンのことをどれだけ考えているかということだ」
サーキットを離れてからレースについて考える時間が減り始めることが、ひとつの兆候になるという。
「サーキットを離れて、そのことをだんだん考えなくなってきたら、それが最初の警告だと思う。何かが失われ始めているということだからね」
「若いころは、次に何があるのか、どうすればもっと速く走れるのか、どんな違うテクニックを使えるのか、そういうことばかり考えている」
「フェルナンドは60歳まで走るかもしれない」
ただし、そうした変化が訪れる時期はドライバーによって大きく異なるとペレスは考えている。その象徴として挙げたのが、40代になってもF1で戦い続けるフェルナンド・アロンソだった。
「ドライバーによって違う。20代後半でそうなる人もいれば、30代半ば、40代半ばの人もいる。それに、フェルナンドは60歳まで走っているかもしれないね! 彼は今でも非常に高いレベルで走っている。でも、フェルナンドは特別だと思う」
「彼には今でも内側にその原動力がある。チャンスがあるとき、何かを利用できる状況になったときには、必ずそれをつかもうとする。それが見ていて分かる。でも、人それぞれなんだ」
ペレスはアロンソのモチベーションを高く評価する一方、自分自身が同じ年齢までF1を続けることは考えていない。
「フェルナンドがこのスポーツで成し遂げてきたことと、彼が持っているモチベーションを僕は本当に尊敬している。でも、僕の場合はそこまで長くはならない。F1以外にもやりたいことがあるからね」
引退を決めるのは年齢ではなく自分自身
ペレスは、F1ドライバーに一律の「引退年齢」が存在するとの考えには否定的だ。
「何歳という数字があるとは思わない。F1はとてもフィジカルで要求の厳しいスポーツだけど、サッカーやテニスのような他のスポーツと違って、トレーニングそのものが限界になるわけではない。F1では、むしろ脳や視覚の部分の方が大きいと思う」
それ以上に難しいのは、自分自身の競争力が十分ではなくなったことを認めることだという。
「同時に、ドライバーにとって『もう十分だ』『自分が望むほど競争力がなくなった』『もうやめるべきだ』と自分で気づくのは本当に難しいと思う。ドライバーとしてその決断を下すのは簡単ではない」
「でも最後には、自分自身に対してすごく正直にならなければならない。そして、すべてを始めた子どものころの自分に感謝して、『今が別のことをする時だ』と言えるようにならなければならない」

「あと3年くらい」キャデラックの成長を見届けたい
もっとも、ペレス自身はまだその段階には達していないと感じている。具体的な引退時期を決めているわけではないが、現在の感覚ではF1で戦う時間は残り数年になると見ている。
「数字を言うのは難しい。もちろん、それほど多くの時間が残っているわけではない。そうだね、あと3年くらいかな。このプロジェクトが成長していくところを見たいんだ。それにはもう少し時間が必要だと思う」
この発言からは、単にあと3年間ドライバーを続けたいというより、キャデラックがF1チームとして成長するまでの時間を自身の残されたキャリアと重ね合わせていることがうかがえる。
新規参戦チームが上位勢との差を縮め、組織やマシン開発の基盤を確立するには時間が必要になる。ペレスにとって、そのプロセスに深く関与すること自体が現在のF1参戦の大きな意味となっている。
2027年に向け他チームから接触も「何も変わっていない」
一方、ペレスをめぐっては2027年に向けて他チームとの接触も取り沙汰されている。本人も、複数のチームと何らかのやり取りがあったことは認めた。
「もちろん、他のチームと多少の話はあったし、いくつかのチームから連絡もあった。でも、僕の側では何も変わっていない。このプロジェクトを自分のプロジェクトだと思っているし、キャデラックの冒険の一員でいたい。本当にこのプロジェクトを信じている」
そして、キャデラックとの関係を1年限りのものとして考えていないことを強調した。
「これは1年だけのプロジェクトだとは考えていない。僕が関わっていたい長期的なプロジェクトなんだ。もちろん話し合いはあるだろうけど、僕がいたいのはここだし、僕の側では何も変わっていない」
レッドブル離脱と1年間のF1不在を経て、ペレスが選んだのは既存のトップチームで結果を追う道ではなく、新たなチームを一から育てる仕事だった。残されたF1キャリアを「あと3年くらい」と見積もる36歳のペレスにとって、キャデラックをどこまで成長させられるかが、グランプリでの勝敗と並ぶ最後の大きな挑戦になりそうだ。
