アウディF1は2026年からワークスチームとしてF1に参戦し、現時点ではパワーユニット(PU)の性能面でトップとの差を抱えている。しかし、元フェラーリのレースエンジニアであるロブ・スメドレーは、ドイツ・ノイブルクに構えるPU開発施設を「他の追随を許さない」と高く評価し、長期的な飛躍につながる可能性を指摘した。
ザウバーを完全にワークスチームへと移行させたアウディにとって、2026年は大規模なF1プロジェクトの本格的なスタートとなった。
スメドレーは、現在の成績だけでは見えない規模の投資が進められているとして、その将来性に期待を寄せている。
「ここ2、3年のザウバーはひどかった」
スメドレーは、ジェイク・ハンフリーが司会を務め、元アルピーヌF1代表のオトマー・サフナウアーも出演した『High Performance Racing』ポッドキャストで、アウディF1について語った。
まず、アウディによる本格的な変革が始まる以前のザウバーについて、スメドレーは厳しい評価を下している。
「ザウバーは、ここ2、3年はかなり悲惨だった。とにかくひどかった。それ以外に言いようがない」
これに対しサフナウアーは、その時期にはすでにアウディがチームを所有しており、十分な資金力に加えて一定水準の技術インフラも備えていたと指摘した。
スメドレーも、スイス・ヒンウィルのザウバーが以前から優れた風洞を所有していたことは認めている。ただし、現在ドイツで進められているPU部門への投資は、それとはまったく異なる規模だという。
「彼らは以前から非常に優れた風洞を持っていた。かなり長い間そうだったと思う。でも今、ドイツにある彼らの施設、エンジン施設、パワーユニット施設を見れば、他の追随を許さないレベルだ。それでもまだ建設と拡張を続けている」
「だから、これは彼らにとって巨大なプロジェクトだ。F1施設としてのヒンウィルには、少し物足りない部分もあるかもしれない。でも、そこも拡張していて、将来どこまで持っていきたいのかという計画もある。彼らにとって本当に重要なプロジェクトなんだ」
ノイブルクのPU施設を「他の追随を許さない」と評価
アウディは2026年の新しいF1パワーユニット規則への参入にあたり、既存メーカーからPUの供給を受けるのではなく、独自のPUをゼロから開発する道を選んだ。
その中核となっているのが、ドイツ・ノイブルクに置かれたPU開発拠点だ。スメドレーによれば、アウディはすでに非常に高い水準の設備を整えているだけでなく、現在もさらなる拡張を続けている。
一方で、初年度となる2026年の競争力という点では、アウディはまだトップメーカーに追いついていない。
FIAが新たに導入した追加開発・アップグレード機会(ADUO)の最初の評価では、アウディのPUは基準となったレッドブル・フォードのPUに対して4%以上の性能差があると判定された。
その結果、アウディはフェラーリ、ホンダとともに最大限の開発優遇措置を受ける対象となった。2026年と2027年にそれぞれ2回の追加ホモロゲーション機会が与えられるほか、テストや開発費についても追加枠が認められる。

ADUOの追加開発機会も追い風に
F1で独自PUを立ち上げたばかりのアウディにとって、この追加開発機会は大きな意味を持つ。
現在はレッドブル・フォードに対して明確な性能差を抱えているものの、PUそのものを改善する余地が通常より多く与えられるため、ノイブルクの充実した設備と豊富なリソースを実際の性能向上へと結びつけるチャンスが増える。
また、アウディのF1プロジェクトはPU部門だけで完結するものではない。スメドレーが指摘したように、シャシー開発の本拠地であるヒンウィルについても拡張計画が進められており、ワークスチームとして組織全体の能力を引き上げようとしている。
スメドレーの評価を踏まえれば、現在のアウディF1が抱える性能差は、プロジェクトの将来性をそのまま示すものではない。ノイブルクのPU施設への大規模投資とヒンウィルの強化、さらにADUOによる追加開発機会を生かせるかどうかが、アウディがF1のトップ争いへ近づくうえで重要な鍵となりそうだ。
