ホンダF1 人材不足解消「レッドブル時代の重要エンジニアも復帰」

ホンダF1 人材不足解消「レッドブル時代の重要エンジニアも復帰」

ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長は、2026年F1シーズン序盤の苦戦につながった要因のひとつだった人材面の問題について、現在はすでに解消したと明かした。さらに、レッドブルとのプロジェクトで成功を支えた重要なエンジニアもF1プロジェクトに復帰しているという。

アストンマーティン・ホンダは、新レギュレーションが導入された2026年に厳しいスタートを切った。

ホンダは新型パワーユニット(PU)の開発開始でライバルに後れを取り、その背景には2021年末のF1撤退に伴う開発体制の縮小もあった。

しかし、渡辺康治社長は現在のHRCについて「人数という意味でも、能力という意味でも十分なエンジニアを採用することができた」と説明。2027年に向けた巻き返しへの体制は整ったとの認識を示している。

2021年のF1撤退で生じた開発の空白
ホンダは2021年限りでF1への正式参戦を終了。当時F1プロジェクトに所属していた多くのエンジニアは、量産車や先進技術などホンダ社内の別部門へ異動した。

その後もHRCを通じてレッドブルへのPU供給と技術支援を継続したものの、F1プロジェクト自体は以前より大幅に縮小されていた。

渡辺康治社長は以前、2022年3月末にエンジニアをホンダの各部門へ戻し、2023年4月にF1復帰が承認されてから再び人材を集め始めたため、体制を100%まで戻すには時間が必要だったと説明している。

新規則に向けて早い段階から開発を続けていたライバルに対し、この空白期間はホンダにとって大きなハンデとなった。

渡辺康治社長は今回、2026年シーズン序盤の苦戦について、その事実を改めて率直に認めた。

「私たちは開発を始めたのが非常に遅かったので、その遅れを取り戻す必要があります」

「遅れを取り戻すのは簡単ではありません。予算制限がありますし、それ以外にもさまざまな制約があります」

2023年からPUメーカーにもコストキャップが導入されたことで、単純に人員や予算を投入してライバルとの差を埋めることもできない。

人材不足「今はもう問題ではありません」
しかし、F1復帰当初に抱えていた人材面の問題については、すでに状況が大きく変わっている。

「はい、以前は問題がありました。しかし、今はもう問題ではありません」

「人数という意味でも、能力という意味でも、十分なエンジニアを採用することができました。ですから、今は大丈夫です」

ホンダは2026年F1復帰に向けて社内から経験者を呼び戻すだけでなく、新たなエンジニアの採用も進めてきた。英国にもHRC UKを設立し、アストンマーティンの本拠地であるシルバーストンとの連携を強化する体制を構築している。

レッドブル時代の重要エンジニアが復帰
さらに注目されるのが、レッドブルとのF1プロジェクトを経験したエンジニアの復帰だ。

ホンダはレッドブルとのパートナーシップでF1世界選手権を制し、マックス・フェルスタッペンのタイトル獲得を支えるなど大きな成功を収めた。

その時代にプロジェクトを支えた人材が、現在のアストンマーティン・ホンダのF1プロジェクトにも戻ってきているのかと問われた渡辺康治社長は認めた。

「はい、そうです」

ただし、レッドブル時代のスタッフ全員が復帰したわけではない。

「全員ではありません。ただ、当時そこで仕事をしていた重要な人たちはF1プロジェクトに戻ってきています」

ホンダにとって重要なのは単純な人数だけではない。F1のPU開発や実戦運用を経験し、レッドブルとともにタイトルを争った経験を持つ人材が戻ったことで、新たに加わったエンジニアへノウハウを伝えていくことも可能になる。

「私たちは完全に準備できています」
人員の再構築を進めてきたHRCについて、成功を目指すために必要な体制は整ったのか。

渡辺康治社長の答えは明確だった。

「もちろんです。私たちは完全に準備できています」

一方で、組織を立て直したからといって、すぐにトップメーカーとの差を埋められるわけではないとも強調する。

「すべてのチームが毎日進化しています」

「追いつくということは、相手よりも速いペースで進化しなければならないということです。それは簡単なことではありません」

ホンダが追いかけているライバルも開発を続けている。現在存在する性能差を縮めるためには、ライバルを上回る速度で開発を進めなければならない。

ホンダ・レーシング

スペック2は「最初の一歩」
その巻き返しに向けた具体的な一歩となったのが、F1オランダGPで投入された新仕様PUだ。

ホンダは2026年シーズン序盤からPUの性能やドライバビリティなどで苦戦してきたが、ザントフォールトでアップデートを投入した。

ただし、渡辺康治社長は今回のスペック2を完成形とは位置づけていない。

「もちろんです。今回のスペック2は、状況を改善するための最初の一歩です」

「そして、毎年少しずつ近づいていきます。私たちの目標は勝つことです」

つまり、今回のアップデートは一度でライバルとの差を埋めるためのものではなく、今後続いていく開発のスタート地点という位置づけだ。

ADUOを活用してライバルを追撃
ホンダが差を縮めるうえでもうひとつ重要になるのが、ADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)だ。

ADUOは、F1のPUメーカー間に一定以上の性能差が確認された場合、後れを取っているメーカーに追加の開発機会を認める仕組みである。

渡辺康治社長も、この制度を利用して開発を加速させる必要があると語った。

「もちろん、ADUOのレギュレーションを活用しながら開発を加速させて、近づいていかなければなりません」

FIAが公表した最初の2回のADUO評価では、レッドブル・パワートレインズが基準となり、ホンダは4%を超える性能差があるカテゴリーに入ったことで追加開発機会を得ている。

ホンダにとってADUOは単なる救済措置ではなく、開発開始の遅れによって生じたギャップを取り戻すために活用すべき重要な機会となる。

2027年は「はるかに上」に
では、人材面の立て直しを終え、スペック2を投入し、ADUOによる追加開発機会も得たホンダは、2027年にどこまで前進できると考えているのか。

渡辺康治社長は、まず目の前の課題をひとつずつ解決していく必要があるとしながらも、来季について強い期待を示した。

「その後、一歩ずつトップチームに近づいていきます」

「ですから来年は、もちろん現在の状況と比べれば、はるかに、はるかに上のところにいるはずです」

2021年のF1撤退によって生じた人材と開発の空白は、2026年のホンダに大きな影響を残した。しかし、HRCはその問題を認めたうえで組織を再構築し、現在は人数と能力の両面で必要なエンジニアを確保したとしている。

さらに、レッドブルとともにF1タイトルを戦った時代の重要なエンジニアもプロジェクトに復帰した。

スペック2の投入は渡辺康治社長が語るように、あくまで「最初の一歩」だ。人材不足を解消した新たな開発体制とADUOによる追加開発機会を生かし、ホンダは2027年に現在より「はるかに上」の位置へ進むことを目指している。