メルセデスは2026年F1オランダGPでキミ・アントネッリが2位、ジョージ・ラッセルが3位に入り、ダブル表彰台を獲得した。しかし、華々しい結果とは裏腹に、W17にはチーム側でも原因を完全には説明できないパフォーマンス低下が発生していた。
優勝したランド・ノリスには11秒以上の差をつけられ、さらに後方からはフェラーリのルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレールが接近。
メルセデスのトラックサイド・エンジニアリングディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンは、特にザントフォールトの高速コーナー区間で現れた弱点について詳細な調査が必要だと明かした。
ターン7〜9で顕著だったW17の弱点
メルセデスが最も問題視しているのが、ザントフォールトのターン7、8、9と続く高速セクションだ。この区間ではW17とマクラーレンのMCL40との差が特に大きくなっていた。
「調査しなければならないパフォーマンス上の疑問がいくつかある」とショブリンはNu Silver Arrows Podcastで語った。
「特にターン7、8、9で弱かった。この高速セクションでは左側のタイヤにも継続的に大きな負荷がかかるが、なぜそこで苦戦したのか、まだ完全には理解できていない」
メルセデスには原因についていくつかの仮説があるものの、今季の他のサーキットでは同様の現象が確認されていないという。
「いくつか考えていることはあるが、今シーズンの他の場所では遭遇していない問題だ。単純に速度だけが原因ではなく、右コーナーが連続するレイアウトそのものが関係している可能性もある」
「最も高速なコーナーで少しペースが不足していて、その後のコーナーに進むにつれて問題が大きくなっていった。それ以外のラップについてはしっかりしていた」
つまりW17が高速コーナー全般で単純に遅かったわけではない。高速右コーナーが連続し、左側タイヤに負荷が蓄積していくザントフォールト特有の条件で弱点が表面化した可能性がある。
予選で改善すると別の場所に悪影響
メルセデスは予選に向けて問題の改善を試み、アントネッリのマシンでは一定の成果を得た。しかし、それも完全な解決策にはならなかった。
「決勝グリッドを決める予選では、キミについてその部分を少し改善することができた。ただ、そこで得たものによって、別の場所では何かを失ったように見えた」
これはセットアップ変更によって単純に解消できる問題ではなかったことを示している。特定区間にW17を合わせれば、ラップの別の部分で性能を犠牲にするというトレードオフが生じていた。
スティントごとに変化したマシンバランス
さらにメルセデスを悩ませたのが、72周の決勝を通じてW17の挙動が一定ではなかったことだ。
「スティントごとのペースにも変動があった。ジョージは最初のスティントがその後と比較して比較的弱かった一方、キミは序盤が強く、その後にペースが落ちていった」
通常であれば、セットアップや電子制御などを大きく変更すればマシンバランスが変化することは説明できる。しかし、今回はそうではなかった。
「電子制御の設定やフラップ角を大きく変更していたわけではない。それにもかかわらず、スティントごとにバランスが違って感じられた」
タイヤのコンディションや燃料搭載量などはレース中に変化するが、ショブリンが問題として挙げているのは、それだけでは説明しきれないほどW17のバランスが変化していた点だ。

ラッセルはアンダーステア アントネッリはオーバーステア
さらに興味深いのは、同じW17を走らせた2人のドライバーが、レース終盤には正反対ともいえるバランスを抱えていたことだ。
「2人のドライバーは最終的に対照的なバランス特性になっていた。ジョージはよりアンダーステアが強く、キミはよりオーバーステアが強かった」
「なぜこれほど大きな違いが生じたのかを理解する必要がある」
同じサーキット、同じレースでありながら、ラッセルとアントネッリで異なる症状が発生した。この点も、メルセデスが単純なセットアップ上の問題として片付けられない理由になっている。
ダブル表彰台でも「頭を悩ませる必要がある」
結果だけを見れば、オランダGPはメルセデスにとって成功した週末だった。アントネッリが2位、ラッセルが3位に入り、大量得点を持ち帰った。
一方で、ノリスのマクラーレンには明確な差をつけられ、ハミルトンはラッセルからわずか0.8秒差、ルクレールもさらに0.5秒後方まで迫った。少なくともザントフォールトの決勝では、マクラーレンだけでなくフェラーリに対しても余裕のある状況ではなかった。
ショブリンは、それでも本来の力を発揮できない週末にダブル表彰台を確保したことを前向きに評価している。
「それでも、ベストの状態ではないときに多くのポイントを獲得できたことは励みになる。日曜日のレースは楽しめたし、ピットウォールは素早く判断しなければならなかった。そしてチームはその状況にしっかり対応した」
「良い結果だった。ただ、少し頭を悩ませる必要がある」
モンツァで行われる次戦イタリアGPは、ザントフォールトとは性格が大きく異なる超高速・低ダウンフォースのサーキットとなる。そのため今回の弱点がそのまま再現されるとは限らない。
それでも、高速右コーナーの連続でなぜ性能を失ったのか、なぜスティントごとにバランスが変化したのか、そしてなぜラッセルとアントネッリでアンダーステアとオーバーステアという異なる症状が現れたのか。ダブル表彰台の裏で残された複数の疑問を解明することが、メルセデスにとって今後のW17の競争力を左右する重要な課題となる。
