メルセデスF1のヴォルフがV8エンジン復活を支持「純粋主義者として好きだ」

メルセデスF1のヴォルフがV8エンジン復活を支持「純粋主義者として好きだ」

メルセデスF1のチーム代表トト・ヴォルフが、将来のF1パワーユニット(PU)規則で検討されているV8エンジン復活を支持した。「純粋主義者として好きだ」と語り、内燃エンジンの比重を再び高める方向性に賛同している。

2014年に始まったターボハイブリッド時代で最大級の成功を収めてきたメルセデスを率いる人物の発言だけに興味深い。

さらにヴォルフは、2027年と2028年に予定されている現行PUの出力配分変更についても説明し、2027年により大幅な内燃エンジン出力増加を目指した案をフェラーリが阻止したことを明かした。

V8復活を支持するトト・ヴォルフ
FIA会長モハメド・ビン・スレイエムは、次世代PUについてV8エンジンを軸としながら電動化を残す構想を推進している。導入時期として2030年または2031年が議論されている。

RacingNews365の独占インタビューで、ヴォルフはFIAやF1、他のPUメーカーとの協議がすでに進んでいると説明した。

「僕はFIA会長のモハメド・ビン・スレイエムと話しているし、F1のCEOであるステファノ・ドメニカリ、それから他のエンジンメーカーとも話している」

「現在のエンジンはとても複雑だ。そして僕たちもようやく理解し始めているところだけど、それによってレースそのものが変わった。日曜日のレースを好きな人もいる。オーバーテイクが多いからね。一方で好きではない人もいる。でも、最も適応できるドライバーが勝つ」

ヴォルフが特に不満を示したのが、現在のPUが生み出す音だった。

「スタート前にグリッドでマシンが10秒間エンジンを回しているのは耐えられない。火災報知器みたいな音がする」

さらに、新しいPU特性への適応がドライバーのパフォーマンスにも影響していると指摘する。

「ルイス(ハミルトン)を見てみればいい。彼は変わったし、パフォーマンスも大きく変わった。キミ(アントネッリ)はとてもうまくやっている。他のドライバーたちも適応しなければならなかった」

「80対20」で1000馬力 V8+小型バッテリー構想
ヴォルフによれば、中長期的には現在よりも内燃エンジンへの依存度を大幅に高める方向へF1が進む可能性が高い。

「中長期的に考えると、現時点では3〜4年先ということになるけど、僕たちは再び内燃エンジンがパフォーマンスの50%以上を占めるところへ戻っていく」

その有力案が、ビン・スレイエムが推しているV8エンジンだ。

「ビン・スレイエムは8気筒のV8を望んでいる。いい音がするエンジンだ。それに、より小さなバッテリーを組み合わせる」

「出力配分は内燃エンジンとバッテリーで80対20くらいになると思う。そして出力は1000馬力だ」

自然吸気になるか、ターボなどの過給システムを残すかについては決まっていないという。

「自然吸気になるかどうかは分からない。でも、現時点ではF1はこの方向へ進んでいると思う。僕は純粋主義者だから、これは好きだ」

2027年はICE出力20kW増 フェラーリが50kW案を阻止
ただし、V8時代へ移行する前にも現在のPU規則には段階的な変更が予定されている。

2026年規則では内燃エンジンと電動側の出力を大幅に接近させたことが大きな特徴だったが、2027年以降は燃料流量を増やすことで、再び内燃エンジン側の比重を高めていく方向となっている。

ヴォルフは、その変更にはハードウェア側の対応も必要になると説明した。

「来年もう1年やって、その次にさらに進める。でも、エンジンを再設計する必要がある」

「燃料流量を増やせば、今まさに僕たちがやっているように馬力が増える。そうなると、それに対応するために変更しなければならないハードウェアも出てくる」

そしてヴォルフは、2027年にメルセデス側がさらに大きな変更を望んでいたことを明かした。

「僕たちは来年、エンジン出力を50kW増やしたかった。でもフェラーリがそれを阻止した」

「だから20kW増というステップになり、その後2028年に50kW増というステップになる」

つまりF1は、V8復活という次世代規則を待つだけではなく、2027年と2028年にも段階的に内燃エンジン側の比重を引き上げていくことになる。

F1 V型8気筒エンジン

ドメニカリCEOも「シンプルなF1」を要求
F1のステファノ・ドメニカリCEOも、将来規則では複雑さを減らすことが重要だとの考えを示している。

「技術規則について最終決定権を持っているのはFIAだ。ただ、メーカー、ファン、チーム、ドライバーも含めて行っている議論は正しい方向にあると思う」

ドメニカリが掲げるキーワードは「シンプルさ」だ。

「将来の規則における最大の目標は、可能な限り物事をシンプルにすることだと思う。より軽いマシンをF1に導入し、持続可能燃料を使用し、もちろん電動化も残す」

「そして何よりも、特定のモードではドライバーが可能な限り全力でプッシュできるようにしたい。それはF1ドライバーたちが常に求めてきたことでもある」

具体的な技術仕様についてはFIAに委ねながらも、2026年末までには将来の方向性をまとめたいとしている。

「今年末までには、議論できるパッケージを用意できると思っている」

「現在、多くの良い話し合いが進んでいる。当然ながら、それぞれが異なる理由から異なる方向性を求めている。でも年末までには、将来に向けた適切なパッケージを用意できると思う」

2014年以来、メルセデスは複雑なターボハイブリッド技術を最大の武器としてF1を支配してきた。そのメルセデスを率いるヴォルフ自身が、よりシンプルで内燃エンジンを中心としたV8時代への回帰を歓迎している。

2027年、2028年と段階的にICEの比重を高め、その先にV8と小型バッテリーを組み合わせた約1000馬力のPUを導入する――。F1の次世代エンジン構想は、具体的な出力配分まで含めた議論へと進み始めている。