カテゴリー: トヨタ

  • 小松礼雄 ハースF1失速の責任は自らに「環境を整えられなかった」

    小松礼雄 ハースF1失速の責任は自らに「環境を整えられなかった」

    2026年シーズン序盤に好スタートを切ったハースF1だが、シーズンが進むにつれて開発競争でライバル勢に後れを取り、順位を落としている。

    チーム代表の小松礼雄は、その原因はスタッフの能力ではなく、限られた人員や設備といったチーム環境にあると説明。十分な開発環境を提供できなかった責任は自分にあると認めた。

    序盤の躍進は「予想をはるかに超えていた」
    2026年にF1は大幅なテクニカルレギュレーション変更を迎えたが、ハースは開幕戦オーストラリアGPでオリバー・ベアマンが7位、中国GPでは5位に入るなど、期待以上のスタートを切った。

    小松礼雄は、この結果について次のように振り返った。

    「今シーズンここまでの流れは、このチームの良い面も悪い面もすべて表していると思います。シーズン序盤のあれほど強いスタートは、僕の予想や期待をはるかに超えるものでした」

    「今回は史上最大規模のレギュレーション変更でした。グリッドで最も小さなチームである僕たちは、新規参戦のキャデラックを除けば最後尾付近から始まると本気で思っていました」

    そのうえで、基本を徹底したことが好結果につながったと説明した。

    「僕たちは基本に集中しました。予定どおりマシンを完成させ、すべてのテストを消化し、信頼性を確保しながらできる限り多くを学ぼうとしました。走らなければ学べませんからね」

    「その基本は非常にうまくできました。一方で、途中でいくつかミスもありました。それでも開幕戦までには、自分たちの持っているパッケージを最大限引き出す理解は十分にありました」

    さらに、小松は与えられた力を確実に結果へ結び付けることの重要性を強調した。

    「僕はいつも『チャンスを生かせる位置にいなければならない』と言っています。5位を争えるクルマなら5位を獲るべきですし、それが10位や15位のクルマでも、その位置にいなければいけません」

    「15位のクルマでも前で何が起きるかは分かりません。だからこそ基本をしっかりやる必要があります。序盤の好スタートは、それを実践したチーム全員のおかげです。本当に素晴らしい仕事でした」

    小松礼雄(ハースF1チーム)

    開発競争で後退した原因は「環境」にある
    しかし、開幕6戦で5度の入賞を記録した後、ハースはアップデート競争でライバルに追い抜かれた。

    小松は、その責任はスタッフではなく、自身が整えられなかったチーム環境にあると語る。

    「その後の開発競争で起きたことは、僕たちが置かれている制約の多い環境を示しています」

    「人数も、使えるツールも、利用できるリソースも限られています。その制約の中でも、みんなは本当に素晴らしい姿勢を見せてくれています」

    「問題から目を背けることなく、オープンで透明性のある形で向き合い、できるだけ早く改善しようとしています」

    そして、自らの責任について率直に認めた。

    「彼らが本来の力を発揮できる環境を、僕がまだ提供できていないということです」

    「だからこそ、できるだけ早くその環境を整えたいと思っています。開発競争で後れを取ったことは、決してスタッフの能力を反映したものではありません」

    「問題は彼らが置かれている環境であり、それは僕の責任です。彼らが本当のポテンシャルを発揮できるよう改善を進めています。約400人という規模で、これだけの成果を上げていること自体が本当に驚くべきことです」

    「激しい開発競争は想定内だった」
    一方で、小松は現在の状況そのものには驚いていないという。

    「これは完全に予想していました。新しいレギュレーションでは、どのチームにも改善の余地が大きく残っています。だから開発競争がこれほど激しくなることは分かっていました」

    「僕たちが追いつき続けるのは非常に厳しい戦いになるとも分かっていました。制約がある以上、すべてが完璧でなければなりません。しかし現実には、すべてを完璧にはできません」

    「だから今の位置にいるのです。しかし、開発競争がこれほど熾烈だったこと自体は、まったく驚きではありません」

    今回の発言からは、ハースの成績低下をスタッフの能力不足ではなく、組織規模や設備といった構造的な制約によるものと捉えていることがうかがえる。小松は責任を自ら引き受け、チームが本来の力を発揮できる環境づくりを最優先課題として進めていく考えを示した。

  • トヨタがタイトルスポンサーでも資金不足 ハースF1が抱える“予算上限”の現実

    トヨタがタイトルスポンサーでも資金不足 ハースF1が抱える“予算上限”の現実

    2026年からTOYOTA GAZOO Racing(TGR)をタイトルスポンサーに迎えたハースF1。しかし、チーム代表の小松礼雄は「予算上限まで使える状況にはない」と明かし、依然として資金面がチーム最大の課題であることを認めた。

    世界最大級の自動車メーカーであるトヨタとの提携によって、ハースF1は大きな後ろ盾を得たように映る。しかし、その実態は一般的なタイトルスポンサー契約とは異なり、技術・人材育成を重視したパートナーシップが中心となっている。

    そのことは、先日富士スピードウェイで実施されたTPC(Testing of Previous Cars)にも表れていた。

    小松礼雄代表「予算上限まで使えない」
    ベルギーGPのメディアデーで、小松礼雄代表はチームの現状について率直に語った。

    「このチームが予算上限まで運営できるだけの資金を確保することが、私の仕事の最優先事項のひとつです」

    2026年のF1では、ドライバー給与などを除いた年間予算上限は2億1500万ドル(約344億円)に設定されている。

    しかしハースF1は、その水準まで予算を投入できていないという。

    さらにチームの規模も約400人とされ、多くのライバルチームが1000人以上のスタッフを擁する中で戦っている。

    「スタッフは両手を縛られた状態で戦っているようなものです」

    小松のこの言葉は、資金だけでなく人員面でも厳しい状況に置かれている現実を物語っている。

    トヨタとの提携は「技術協力」が軸
    では、なぜタイトルスポンサーとなったトヨタの存在が、資金不足の解消にはつながっていないのだろうか。

    その理由は、トヨタとハースの提携内容にある。

    2024年に締結された提携は、設計・製造・シミュレーター・人材育成などを柱とする技術協力が中心だった。トヨタとハースは「People(人材)」「Product(技術)」「Pipeline(育成)」をキーワードに掲げ、ドライバーだけでなくエンジニアやメカニックも含めた協力体制を構築してきた。

    2026年からはTOYOTA GAZOO Racingがタイトルスポンサーへ昇格したものの、その基本方針は変わっていない。

    つまり、トヨタは巨額のスポンサー料を提供する存在というよりも、技術や人材、設備などを通じてチームを支えるパートナーという色合いが強い。

    富士TPCが示した提携の方向性
    その象徴とも言えるのが、7月末に富士スピードウェイで行われたTPCだった。

    坪井翔と福住仁嶺が2025年型VF-25をドライブしたこのテストは、日本では「国内トップドライバーがF1マシンを走らせる姿を見ることができた」と歓迎された一方で、「若手育成の機会に使うべきではないか」という議論も巻き起こった。

    しかしハースは、このTPCについて「ドライバー育成だけでなく、エンジニアやメカニックを含めたチーム全体の育成プログラム」であることを強調している。

    実際、TPCでは走行データの取得だけでなく、ピットオペレーションやチーム運営の確認も重要な目的となる。

    つまり、このプログラム自体が「人材育成」を重視するトヨタ・ハース提携の考え方を象徴する取り組みだったと言える。

    トヨタ ハースF1チーム

    MoneyGram時代より資金は減ったのか
    一方で、多くのファンが気になるのはスポンサー収入だろう。

    ハースは2023年からMoneyGramをタイトルスポンサーとして迎えていた。

    海外メディアでは、この契約規模は年間2500万~3500万ドル(約40億~56億円)と報じられている。

    対して、トヨタとのタイトルスポンサー契約の金額は公表されていない。

    そのため、小松礼雄代表が今回「予算上限まで使えない」と明言したことで、「トヨタからの現金スポンサー料はMoneyGram時代より少ないのではないか」と推測する声も出始めている。

    ただし、そのような見方を裏付ける公式情報や報道は現時点では存在しない。

    むしろ、これまでの発表内容を見る限りでは、トヨタとの提携は現金よりも技術や人材への支援に重点が置かれている可能性が高い。

    技術支援と資金力は別の課題
    小松礼雄代表は、ハースが開発競争で苦戦している原因について「スタッフの能力ではない」と繰り返し強調している。

    「スタッフには十分な能力があります。ただ、彼らが実力を発揮できるだけの武器を、私がまだ与えられていません」

    開幕直後にはコンストラクターズランキング4位につけるなど健闘したハースだったが、ライバル勢が大型アップデートを続ける中で徐々に後退した。

    トヨタとの提携によって技術や人材育成の環境は着実に強化されている。その一方で、小松礼雄代表が語ったように、F1の予算上限まで運営できるだけの資金を確保するという課題は依然として残されている。

    富士TPCが示した「技術・人材育成」という提携の姿と、小松代表が明かした「資金不足」という現実。その両方を合わせて見ることで、トヨタとハースのパートナーシップは、単なるタイトルスポンサー契約ではなく、長期的なチーム強化を目指す取り組みであることが見えてくる。

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    ハースF1富士TPCで見えた坪井翔と福住仁嶺起用の賛否 議論を分けたTPCの役割

    TGRハースF1チームが7月28日から29日にかけて富士スピードウェイで実施したTPC(Testing of Previous Cars)は、日本のモータースポーツファンにとって特別な2日間となった。

    2025年型VF-25を使用した今回のテストでは、坪井翔と福住仁嶺がF1マシンをドライブ。日本人ドライバーが母国で最新世代に近いF1マシンを走らせる機会は極めて珍しく、平日の開催にもかかわらず多くのファンが富士スピードウェイを訪れ、その走りを見守った。

    しかし、今回のTPCを巡る議論は、単純な賛否では語れないものだった。

    日本では「国内トップドライバーがF1マシンに乗る姿を見られた」という喜びが広がる一方で、「TPCは本来、若手育成のための制度ではないのか」という疑問も投げかけられた。そして海外では、坪井翔や福住仁嶺という個人以上に、「トヨタとハースはTPCをどのような育成プログラムとして運用していくのか」という点が大きな論点となった。

    一見すると、日本は歓迎、海外は批判という構図にも見える。

    だが、実際に交わされていた議論を追っていくと、対立していたのは坪井翔と福住仁嶺の評価ではなかった。

    議論の中心にあったのは、「TPCを何のための制度と考えるのか」という認識の違いである。

    日本では、国内トップカテゴリーで実績を積み重ねたドライバーがF1マシンへ乗ること自体に大きな価値が見いだされた。一方、海外ではTPCをF1への育成プロセスの一部と捉える見方が強く、限られた走行機会を誰へ与えるべきかという議論へ発展していった。

    同じ出来事でありながら、評価の出発点は大きく異なっていたのである。

    TPCとは何か 今回の議論を理解するための前提
    今回の反応を理解するうえで、まず整理しておきたいのがTPCという制度の位置付けだ。

    TPC(Testing of Previous Cars)は、FIAが認める旧型F1マシンによるテスト制度である。原則として使用できるのは2年以上前のマシンだが、2026年はレギュレーションが全面的に変更されたことから、前年型となる2025年型マシンの使用が特例として認められた。

    現在のF1では、現行マシンによるプライベートテストは厳しく制限されている。そのためTPCは、若手ドライバーへF1マシンを経験させる場として活用されるだけでなく、リザーブドライバーの走行機会やチームスタッフの育成、オペレーション確認、各種システムの習熟など、多くの目的を担うプログラムとなっている。

    ハースも今回の富士テストについて、ドライバー育成だけではなく、エンジニアやメカニックを含めたチーム全体の育成プログラムであることを強調していた。

    つまりTPCは、単なるデモランでもファンサービスでもない。

    一方で、将来のF1ドライバー候補へ経験を積ませる役割も期待されていることから、「誰を起用するのか」が常に議論の対象となる制度でもある。

    今回の富士テストも、その二面性が色濃く表れたケースだった。

    トヨタとハースは2025年から技術提携を進め、その一環としてTPCを活用してきた。平川亮や宮田莉朋、小林可夢偉、そして坪井翔もこれまでテストへ参加しており、今回初めて福住仁嶺が加わった。

    そのため、今回の起用は単独の出来事ではなく、「トヨタ・ハース提携がどのような育成プログラムを目指しているのか」を示す一つの材料として受け止められたのである。

    ハースF1チーム 富士スピードウェイ

    日本では「F1に乗る姿」そのものが歓迎された
    日本国内で最も目立ったのは、坪井翔と福住仁嶺の起用を歓迎する声だった。

    その多くは、「F1デビューへ近づいた」という期待よりも、「国内トップドライバーがF1マシンを走らせる姿を日本で見られる」という事実そのものを喜ぶものだった。

    平日開催にもかかわらず、「2日とも富士へ行く」「仕事を調整してでも見たい」「日本でF1マシンの本格走行を見られる機会は貴重だ」といった声が相次ぎ、現地からは走行写真や動画、ガレージ周辺の様子が次々と発信された。

    イベントとしての注目度の高さは、TPCという制度の認知度以上に、「F1マシンが富士を走る」という特別感の大きさを物語っていた。

    福住仁嶺の起用には、とりわけ感慨深いという反応が多かった。

    GP3でランキング3位に入り、欧州でF1を目指した経験を持ちながら、その夢は叶わなかった。それでも帰国後はSUPER GTやスーパーフォーミュラで第一線を走り続け、日本を代表するドライバーの一人としてキャリアを築いてきた。

    そうした歩みを知るファンからは、「ようやくF1マシンへ乗る姿を見ることができた」「長年応援してきたので本当にうれしい」「努力が報われた瞬間だった」といった声が多く聞かれた。

    坪井翔についても同様である。

    スーパーフォーミュラ王者、SUPER GT王者という国内最高峰カテゴリーでの実績を考えれば、「国内でこれだけ結果を残したドライバーがF1マシンへ乗るのは当然」「トップカテゴリーを戦ってきた証しだ」と受け止める意見が目立った。

    現地ではガレージ前へ姿を見せた福住に拍手が送られたという報告や、坪井を含めてサインを求めるファンの列ができたという投稿も見られ、会場全体が2人を温かく迎える雰囲気に包まれていたことが伝わってくる。

    ここで印象的なのは、多くのファンが今回のTPCを「F1昇格への選考」ではなく、「国内モータースポーツで積み重ねてきたキャリアが最高峰カテゴリーで評価された瞬間」と受け止めていたことだ。

    もちろん、年齢や現在の立場を考えれば、今回の走行がそのままF1レギュラーシートにつながると考えているファンは多くない。

    それでも、「F1へ乗る価値」と「F1へ昇格する可能性」は別の話だという見方が、日本では広く共有されていた。

    国内最高峰で結果を残したドライバーが、世界最高峰のマシンを操る。その姿を見ること自体に意味がある――。

    そう考えるファンが多かったからこそ、今回のTPCはまず歓迎ムードで受け止められたのである。

    しかし、その一方で、「だからこそ別の選択肢もあったのではないか」という声も確かに存在した。

    その議論は、坪井や福住の実力を疑問視するものではなく、TPCという制度の目的そのものへ向けられていくことになる。

    歓迎一色ではなかった国内 「若手を乗せるべき」という声はなぜ上がったのか
    歓迎ムードが広がる一方で、日本国内ではもう一つの議論も静かに広がっていた。

    それは、「TPCは本来、誰のための制度なのか」という問いである。

    「坪井も福住も素晴らしいドライバーだと思う」

    「2人の実績に異論はない」

    そう前置きしたうえで、「それでもTPCは若手へ経験を積ませる場ではないのか」という意見が少なからず見られた。

    「育成プログラムというなら、将来F1を目指す若いドライバーへ機会を与えた方がいい。」

    「国内トップドライバーへの評価としては理解できるが、育成とは少し意味が違う。」

    「限られた走行日数だからこそ、将来につながる投資に使ってほしい。」

    こうした声は、坪井や福住を否定するものではなく、TPCという制度の運用方法に対する問題提起だった。

    実際、「坪井が日本で最速クラスのドライバーであることは誰もが認めている」「福住にもF1マシンへ乗る資格は十分ある」と評価するコメントと、「それでも若い世代へ機会を与えるべきではないか」という意見は矛盾なく共存していた。

    つまり、日本で起きていた議論は「起用された2人がふさわしくない」という話ではなく、「TPCという限られた機会を、どのような目的で使うべきか」という制度論だったのである。

    その背景には、トヨタとハースの提携に対する期待の大きさもある。

    2025年に両者の技術提携が発表された際、多くのファンは「日本人ドライバーがF1へ近づく新たなルートができるのではないか」と期待を寄せた。

    宮田莉朋がF2へ参戦し、平川亮がリザーブドライバーとして活動するなど、少しずつF1との接点は増えていたものの、「トヨタからF1ドライバーが誕生する」という明確な道筋は、まだ見えているとは言い難い。

    だからこそ、TPCにも「未来への投資」という役割を期待する声が生まれた。

    もし将来的にF1を目指す若手がいるのであれば、その経験を少しでも早く積ませるべきではないか――。

    そうした考え方は決して否定的なものではなく、トヨタ・ハース提携への期待が大きいからこそ生まれた意見でもあった。

    もっとも、その一方で、「TPCを若手だけの制度と考える必要はない」という反論もあった。

    ハース自身が説明しているように、TPCはドライバーだけではなく、エンジニアやメカニックを含めたチーム全体の育成プログラムでもある。

    そうした環境では、経験豊富なドライバーが的確なフィードバックを返すことに大きな意味がある。

    マシンの挙動を正確に伝えられるドライバーであれば、エンジニアにとっても貴重なデータが得られる。レースオペレーションを確認するうえでも、安定して走行できるベテランドライバーを起用するメリットは小さくない。

    そのため、「育成とは若手だけを意味するものではない」「チーム全体を育てるというTPC本来の目的を考えれば、今回の人選は十分理解できる」という意見も少なくなかった。

    つまり、日本国内でも議論は単純な賛成と反対には分かれていない。

    「国内トップドライバーへの評価」という考え方と、「未来のF1ドライバーへの投資」という考え方。その二つの価値観がTPCという制度の中で交差し、「誰を乗せるべきだったのか」という議論につながっていったのである。

    ハースF1チーム トヨタ

    海外では最初から論点が違っていた
    海外でも、坪井翔と福住仁嶺の起用は大きな話題となった。

    しかし、日本とは異なり、議論の出発点は2人への評価ではなかった。

    多くのファンにとって最初の疑問は、「彼らは誰なのか」という点だった。

    スーパーフォーミュラやSUPER GTを日常的に追っている海外ファンは決して多くない。坪井の名前を初めて目にしたという反応も珍しくなく、福住についても「GP3時代は知っているが、その後はどういうキャリアを歩んだのか」という質問が目立った。

    そのため、SNSや掲示板では、日本のファンが2人の実績を紹介し、それを受けて「国内でそこまで成功しているドライバーなら理解できる」というやり取りが数多く見られた。

    ただ、海外ではそこで議論が終わらない。

    2人の経歴を理解した後、多くのファンが関心を向けたのは、「では、なぜ今この2人だったのか」という点だった。

    「TPCは将来のF1ドライバーへ経験を積ませる場ではないのか。」

    「もっと若い育成ドライバーを起用する選択肢はなかったのか。」

    「このプログラムはトヨタのF1育成戦略の一部なのか。」

    こうした疑問が次々と挙がり、議論は自然とトヨタとハースの提携全体へ広がっていった。

    特にRedditなどでは、「actual young drivers(本当に若い育成対象のドライバー)」という表現が繰り返し使われ、TPCを将来のF1候補へ経験を積ませる制度として捉える意見が目立った。

    一方で、「経験豊富なドライバーから得られるフィードバックはチームにとって非常に重要だ」「TPCはオーディションではなく、チーム全体の開発と育成を目的とした制度だ」と擁護する声もあり、海外でも意見は決して一方向ではなかった。

    興味深いのは、ここでも議論の中心が坪井や福住個人ではなく、TPCという制度の使い方に置かれていたことである。

    海外が注目したのは「トヨタはF1への道筋を描けているのか」
    海外で交わされた議論は、やがてTPCという制度そのものから、トヨタの育成戦略全体へと広がっていった。

    繰り返し見られたのが、「このTPCは、トヨタがF1ドライバーを育成するプロジェクトの一部なのか」という問いだった。

    トヨタとハースは2025年から技術提携を開始し、TPCやシミュレーター、エンジニア交流などを含む協力関係を築いてきた。しかし、その先にどのような育成ロードマップがあるのかは、まだ明確には示されていない。

    そのため海外では、「TPCの先に何があるのか」という視点から提携を評価する声が少なくなかった。

    「この経験はFP1につながるのか。」

    「リザーブドライバーへの昇格を見据えたものなのか。」

    「最終的にF1レギュラーシートまで到達できる仕組みが用意されているのか。」

    こうした疑問は、今回の起用だけに向けられたものではなく、トヨタがF1とどう向き合おうとしているのかという、より大きなテーマへと発展していった。

    その過程で、しばしば比較対象となったのがホンダだった。

    ホンダは長年にわたり、若手ドライバーを欧州へ送り出し、F3、F2を経てF1へ挑戦する環境づくりを続けてきた。もちろん、そのすべてが成功したわけではないが、「F1へ向かうルート」が見えやすかったことは事実である。

    一方、トヨタは国内モータースポーツへの関与が非常に深く、スーパーフォーミュラやSUPER GTとの結び付きも強い。そのため、欧州のジュニアカテゴリーを軸とするホンダとは育成の考え方自体が異なっている。

    海外ファンの中には、「トヨタは国内カテゴリーを重視しすぎているのではないか」という見方もあれば、「国内で経験を積んだドライバーへF1マシンを経験させることにも十分な価値がある」と評価する声もあった。

    つまり、ホンダとの比較は優劣を論じるものではなく、「トヨタはどのような方法でF1を目指す人材を育てようとしているのか」という関心の表れだったのである。

    だからこそ、「path to the grid(F1グリッドへの道筋)」という言葉が繰り返し使われた。

    海外ファンが知りたかったのは、坪井翔や福住仁嶺がF1へ行けるかどうかではない。

    TPCという取り組みが、将来の日本人ドライバーをF1へ送り出す仕組みの一部として機能するのかどうかだった。

    「ご褒美」という言葉が映し出した評価軸の違い
    今回のTPCを巡る議論を象徴する出来事の一つが、トヨタタイムズが福住仁嶺の初めてのF1走行を紹介した際に用いた「ついに”ご褒美”の日がやってきた」という表現だった。

    日本では、この言葉に共感する反応が多く見られた。

    F1という夢を追い続けながら叶わず、それでも国内トップカテゴリーで結果を残し続けてきた福住の歩みを知るファンにとって、「ご褒美」は長年の努力が報われたことを表す自然な言葉だった。

    「ここまで頑張ってきたからこそ得られた機会だ。」

    「長く応援してきたファンとして本当にうれしい。」

    「キャリアへの最高の評価ではないか。」

    そうした受け止め方は、国内ファンの間で広く共有されていた。

    一方で、「TPCは育成プログラム」という視点に立つ人たちは、この表現に少し違った印象を抱いていた。

    もしTPCが将来のF1ドライバーを育てる場なのであれば、「ご褒美」ではなく、「挑戦」や「次のステップ」といった意味合いの方が強いのではないか――。

    そんな考え方である。

    もっとも、この言葉自体が強い批判を受けたわけではない。

    むしろ印象的だったのは、「ご褒美」という一言が、それぞれのファンがTPCへ期待している役割を映し出していたことだった。

    TPCを国内トップドライバーへの評価と捉える人にとっては、「ご褒美」はしっくりくる。

    一方で、TPCをF1育成のプロセスと考える人にとっては、「未来への投資」というイメージの方が強い。

    同じ言葉であっても、TPCという制度をどう理解しているかによって、その響きは大きく変わっていた。

    TPCが残したもの
    今回の富士TPCは、イベントとして見れば大きな成功だったと言える。

    平日開催にもかかわらず多くのファンが富士スピードウェイへ集まり、日本人ドライバーがF1マシンを走らせる姿に歓声を送り、その様子は国内外で広く共有された。

    トヨタとハースの提携によって、日本でF1マシンが走る機会が増えたこと自体を歓迎する声も多く、日本のモータースポーツファンに新たな夢を示したことは間違いない。

    一方で、育成プログラムとしての評価は、今回のTPCだけで結論づけられるものではない。

    ここで得た経験がFP1出走やリザーブドライバーとしての活動、さらにはF1への挑戦へどうつながっていくのか。その積み重ねがあって初めて、トヨタ・ハース提携の育成プログラムは評価されることになる。

    今回の議論から見えてきたのは、日本と海外で賛否が真っ二つに分かれていたという単純な話ではなかった。

    日本では「国内トップドライバーへの評価」として歓迎され、海外では「将来のF1育成」という観点から議論された。その評価軸は異なっていたものの、どちらにも共通していたのは、トヨタとハースの提携が日本人ドライバーに新たな可能性をもたらしてほしいという期待だった。

    だからこそ、富士で行われた2日間のTPCが投げかけた問いは、「坪井翔と福住仁嶺を起用したことは正しかったのか」ではない。

    トヨタ・ハース提携は、日本人ドライバーをF1へ送り出す新たな道となり得るのか。

    今回交わされた数多くの議論は、その未来への期待の大きさを物語っていた。

  • ハースF1 富士TPCに7900人 坪井翔と福住仁嶺が2日間を完走

    ハースF1 富士TPCに7900人 坪井翔と福住仁嶺が2日間を完走

    7月29日(水)、静岡県の富士スピードウェイでTGRハースF1チームによるTPC(Testing of Previous Cars/旧型車テスト)が終了した。2日間にわたるテスト最終日は好天に恵まれ、坪井翔と福住仁嶺が2025年型マシン『VF-25』で精力的に周回を重ねた。

    初日は雨の影響で走行時間が制限されたものの、2日目は朝からドライコンディションとなり、気温・路面温度ともに高い厳しい環境のなかでプログラムを消化。

    2日間合計では100周を大きく超える周回を重ね、2025年マシンのデータ収集とドライバー評価を進めた。

    坪井翔が2日間最速タイムを記録
    午前のセッション3では、前半2時間を坪井、後半2時間を福住が担当。両者ともハードタイヤで走行を開始した後、新品ミディアムタイヤを装着してアタックランを実施した。

    坪井はセットアップ変更やスタート練習を挟みながら徐々にタイムを更新し、最終的に1分17秒914を記録。このタイムが2日間を通じた最速タイムとなった。

    一方、福住は最高速336.449km/hを記録しながら1分18秒442をマーク。セクター1では坪井のベストを上回る区間タイムを刻んだものの、高い路面温度の影響もあってセクター2、3でタイムを伸ばし切れず、コンマ5秒差となった。

    今回のベストタイムは昨年のTPCで記録された1分17秒470には届かなかったが、今年は真夏の高温コンディションでタイムが出にくい状況だったことが大きく影響した。坪井も「コンディションが整っていれば1分16秒台には十分入れた」と手応えを語っている。

    また、今回のテストではタイヤ温度の管理も大きな課題となった。アタックラップ後はピットでブロワーを使用してタイヤを冷却し、「プッシュラップ→インラップ→アウトラップ→プッシュラップ」というサイクルで走行を繰り返した。

    坪井は「リヤタイヤの温度管理が難しく、冷却しないと2周目はフロントとリヤのバランスがまったく合わずアタックできなかった」と振り返っている。

    午後はロングランでレースシミュレーション
    午後の最終セッション4は14時30分から17時まで実施され、午前とは異なりロングランを中心としたプログラムが組まれた。

    最初にステアリングを握った福住は、アタックランを終えた後に18周の連続走行を実施。1分24秒前後の安定したペースを維持し、レース距離を想定した走行データを収集した。

    その後、シート交換などを経て坪井が走行を担当。1分19秒133を記録した後、連続走行へ移行し、前半は1分23秒台、終盤は1分22秒台を中心に周回を重ねた。

    午後だけで2人は合計48周を走破し、2日間にわたるTPCの全プログラムを完了した。

    ハースF1チーム 富士スピードウェイ

    F1マシンで得た大きな収穫
    2日間のテストでは、スーパーGTとスーパーフォーミュラで活躍する坪井、そして今回がF1マシン初ドライブとなった福住が、ともに多くの経験を積んだ。

    福住は「1分18秒2くらいまでは見えていた。もう少しまとめられた部分はあったが、この暑いコンディションの中で攻め切れたので悔いはない」と振り返った。

    一方の坪井も、高温コンディションでもF1マシンのポテンシャルを十分に引き出せたことに手応えを示しており、日本を代表するトップドライバー2人にとって充実した2日間となった。

    なお、今回のTPCには2日間合計で7900人が来場。昨年から127.4%増となる観客が富士スピードウェイを訪れ、日本で近代F1マシンが走る貴重な機会を楽しんだ。ハースF1チームのTPCは、日本のモータースポーツファンの関心の高さを改めて示すイベントとなった。

  • ハースF1 富士TPC初日終了 福住仁嶺がF1初走行で77周を走破

    ハースF1 富士TPC初日終了 福住仁嶺がF1初走行で77周を走破

    ハースF1チームは7月28日、富士スピードウェイでTOYOTA GAZOO Racing(TGR)とのドライバー育成プログラムの一環として実施しているTPC(Testing of Previous Cars/旧型車テスト)の初日を終了した。

    この日は午前・午後の2セッションが行われ、福住仁嶺がF1マシンでの初走行を含めて計77周を走破。午後は天候の変化に翻弄されながらも、2025年型マシン『VF-25』で貴重な走行距離を積み重ねた。

    午前はF1初ドライブで54周を走破
    当初3時間で予定されていた午前セッションは、午後からの天候悪化が予想されたため1時間延長され、9時から13時まで実施された。

    ウエットコンディションでスタートしたセッションでは、まず昨年に続いてTPCへ参加する坪井翔が15周を担当。その後、マシンは福住へ引き継がれ、シートやペダル類の調整を終えた福住が自身初となるF1マシンでの走行に臨んだ。

    福住はウエットタイヤで走行を開始すると、路面の乾燥に合わせてスリックタイヤへ変更。1プッシュ・2クールダウンを繰り返すプログラムを消化しながら徐々にペースを上げ、DRSも使用した走行でベストタイム1分18秒080を記録した。最高速度は336.449km/hに達し、午前だけで54周を走破した。

    午後は雨待ちの展開 終盤にはオーバーランも無事帰還
    午後のセッションは、午前の延長に伴い予定より1時間遅れの14時30分にスタートした。

    昼過ぎから再び雨が降り始めたものの、水量がウエットタイヤには不足していたため、福住は序盤に9周を走行したあと約1時間の待機を強いられた。

    その後、雨脚が強まったタイミングで走行を再開すると、ベストタイムを1分33秒745まで更新。さらに終盤にもコースへ戻ったが、雨が強くなったGRコーナー(第1コーナー)でオーバーランを喫した。幸いマシンはバリアなどへの接触はなく、そのままピットへ戻り、午後の走行を終えた。

    午後は福住のみが23周を走行し、予定されていた坪井の走行は行われなかった。

    ハースF1チーム トヨタ

    2日目も福住と坪井がセッションを分担
    富士TPC初日は、午前のドライコンディションと午後の不安定な天候という対照的な条件のなかで終了した。

    福住は初めてF1マシンをドライブしながら1日で77周を走破。チームにとっても車両やタイヤ、各種システムのデータを収集する充実した一日となった。

    29日の2日目は、午前のセッション3を福住、午後のセッション4を坪井が担当する予定となっている。

  • 【動画】福住仁嶺 ハースF1初走行へシート合わせ完了「富士への準備完了」

    【動画】福住仁嶺 ハースF1初走行へシート合わせ完了「富士への準備完了」

    ハースF1チームは、福住仁嶺が富士スピードウェイで実施されるTPC(Testing of Previous Cars:旧型F1マシンテスト)に向けてシート合わせを行う動画を公開した。

    SNSでは「Seat fit for @Nirei_Fukuzumi We’re ready for Fuji (福住仁嶺のシート合わせ完了。富士への準備は整った)」と投稿し、テストへの準備が順調に進んでいることを報告した。

    福住は7月28日と29日に富士スピードウェイで開催される「Haas+ Fans First」のTPCイベントで、初めてF1マシンをドライブする予定となっている。

    公開された動画には、笑顔でシート合わせを進める福住の様子が収められている。小松礼雄代表が「すごいスケジュールで来たよね」と声を掛ける場面もあり、福住も笑顔で応じるなど、初のF1ドライブを前にした現場の和やかな雰囲気が伝わる内容となっている。

    今回のTPCでは、スーパーフォーミュラとSUPER GTで活躍する福住と坪井翔がステアリングを担当。坪井は昨年に続いて2年連続の参加となる一方、福住にとってはキャリア初のF1マシン走行となる。

    福住は2016年にGP3へ参戦し、翌2017年にはランキング3位を獲得。2018年にFIA F2へ参戦した後、日本へ活動の場を移し、スーパーフォーミュラとSUPER GTで実績を重ねてきた。2019年にはSUPER GT GT300クラスでタイトルを獲得し、今季は鈴鹿でスーパーフォーミュラ初優勝も記録するなど好調を維持している。今回のF1初走行は、「TGR Haas Driver Development Program」の一環として実現した貴重な機会となる。

    「Haas+ Fans First」では、F1マシンの走行に加え、ピット作業を間近で見学できる「激感ピット」やファンミーティングなど、さまざまなプログラムが予定されている。福住にとって念願のF1初ドライブとなるだけに、その走りに大きな注目が集まりそうだ。

  • 平川亮 F1ハンガリーGPでハースからFP1出走「今回はプッシュラップを走れる」

    平川亮 F1ハンガリーGPでハースからFP1出走「今回はプッシュラップを走れる」

    TGRハースF1チームは、2026年F1第11戦ハンガリーGPのフリー走行1回目(FP1)で、リザーブドライバーの平川亮がオリバー・ベアマンに代わってVF-26をドライブすると発表した。

    平川亮にとって今季2度目のFP1出走となる。前回のオーストリアGPでは空力テストや赤旗の影響で十分な走行機会を得られず、タイムアタックを行うことができなかったが、今回はハンガロリンクでマシンの限界を探る走行に意欲を見せている。

    平川亮「今度はプッシュラップを走れる」
    平川亮は、再びVF-26をドライブする機会を得られたことへの感謝を述べるとともに、チームへの貢献を誓った。

    「まずは、TOYOTA GAZOO RacingとTGRハースF1チームに、ハンガリーGPのFP1で再びマシンをドライブする機会をいただけたことに感謝しています」

    「オーストリアでは空力テストや赤旗の影響があって、プッシュラップを十分に走ることができず、難しいセッションになりました」

    「今回はプッシュラップを走るチャンスがあるので、とても楽しみにしています。このコースはコンパクトで幅が狭く、低速から中速コーナーが多い、とてもチャレンジングなサーキットです」

    「限界まで攻めて走ることができればうれしいですし、チームへ良いフィードバックを提供して、FP2以降に向けたセットアップ作業に貢献したいと思います」

    平川亮(TGRハースF1チーム)

    小松礼雄代表「理解をさらに深めたい」
    チーム代表の小松礼雄は、ベルギーGPで得た知見をハンガリーGPでも発展させたいと説明。FP1では新たなテスト項目に取り組む予定であり、平川亮の走行にも期待を寄せた。

    「スパではVF-26のパフォーマンスを理解し改善するという点で前進することができましたが、日曜日の結果は非常に残念なものとなりました」

    「シーズン前半最後のレースとなるハンガロリンクは、スパとはまったく異なる特性を持つサーキットです。金曜日にはさらなる理解を深めるためのテスト項目を予定しています」

    「FP1では平川亮がオリバー・ベアマンに代わって走行します。シュピールベルクでの初走行を踏まえ、どのような成長を見せてくれるのか楽しみにしています」

    「競争は非常に激しいですが、夏休み前最後のレースで持てる力を最大限発揮したいと思っています」

  • ハースF1小松礼雄代表 予算不足認める「予算上限まで使えないのは我々だけ」

    ハースF1小松礼雄代表 予算不足認める「予算上限まで使えないのは我々だけ」

    ハースF1チームの小松礼雄代表は、F1のコストキャップ(予算上限)時代において、自チームだけが上限額まで予算を投入できていない現状を明かした。ライバル勢との開発競争で後れを取っている背景には、技術力ではなく資金面の制約があると説明している。

    シーズン序盤は好調だったハースだが、中団ライバルが大型アップデートを次々と投入したことで競争力は低下。

    小松代表は、チームの能力には自信を示しながらも、「スタッフに十分な武器を与えられていない」と責任は自身にあると語った。

    ハースだけが予算上限未満で運営
    ベルギーGPのメディアデーで小松礼雄代表は、現在のF1で予算上限額まで資金を投入できていないチームはハースだけだと明かした。

    「もちろん、予算上限まで使いたいです。でも、現状ではそうなっていません」

    「私の仕事の優先事項のひとつは、このチームが予算上限まで使えるだけの資金を確保することです。それがまず達成すべき最低ラインだと思っています」

    ベアマン「開発競争の速さについていけない」
    オリバー・ベアマンは、2026年マシンの開発スピードが前年とは比較にならないほど加速しており、その流れにハースが対応できていないと分析した。

    「昨年はレギュレーションが非常に成熟していて、シーズンを通して大きな性能向上はありませんでしたが、アップデートを投入するタイミングは良かったですし、他のチームも小さな改善を積み重ねていました」

    「でも今年は開発のペースがまったく違います。トップチームは毎週のように大規模なアップデートを投入していますし、その開発スピードには驚かされます」

    「まず、僕たちにはそれができません。そしてライバルと比べても開発競争で追い抜かれてしまいました。投入したアップデートの量が足りませんでしたし、持ち込んだものも期待どおりには機能しませんでした」

    「今年のように開発競争が激しい時代になると、僕たちの弱点がより露わになります。昨年は開発スピードが今の4分の1程度だったので、そこまで問題にはなりませんでした」

    ハースF1チーム

    小松礼雄代表「能力ではなく資金の問題です」
    小松礼雄代表は、アップデートが機能しなかったというベアマンの見方には異論を示したものの、開発競争で後れを取っているという点については認めた。

    その一方で、原因はスタッフの能力不足では決してないと強調している。

    「それはスタッフの能力不足を意味するものではありません。皆、本当に素晴らしい仕事をしてくれています。チームの規模やリソースを知っている人なら、今の成果がどれだけすごいことか理解してもらえると思います」

    「スタッフには十分な能力がありますし、チームワークも良く、コミュニケーションも取れています。誰かを責める文化ではなく、チームとして機能する文化もできてきています」

    「ただ、彼らが実力を発揮できるだけの武器を、私がまだ与えられていません」

    序盤の好調は「予想以上でした」
    小松礼雄代表は、レギュレーションが大きく変わった2026年シーズン序盤にハースが好成績を残したこと自体が予想以上だったと振り返る。

    「シーズン序盤のパフォーマンスは、本当に予想以上でした」

    「これだけ大きなレギュレーション変更があった年に、F1で最も小さなチームがあのような走りを見せるとは普通は期待できません」

    一方で、その状態を維持するのは難しかったとも認めた。

    「これはスタッフの責任ではありません。私自身の責任です。チームの収益をもっと増やして、スタッフが力を発揮できる環境を整えなければいけません」

    「スタッフにもドライバーにも十分な力があります。環境さえ整えられれば、必ずまた競争力を取り戻せると信じています。ただ、それには時間が必要です」

    シュタイナー時代から続く課題
    ハースは2016年のF1参戦以来、フェラーリ製コンポーネントを積極的に採用する独自の運営モデルを続けてきた。一方で、チームオーナーのジーン・ハースが十分な投資を行っていないのではないかという議論は以前から続いており、それが前代表ギュンター・シュタイナーとの決別につながった要因のひとつともされている。

    小松礼雄代表は、できるだけ早く予算上限まで資金を投入できる体制を実現したい考えを示した。

    「取り組み始めたばかりというわけではありません。ずっと続けていますし、今も非常に前向きな話し合いができています」

    「でも正直に言えば、今の制約はスタッフにとってフェアではありません。両手を縛られた状態で戦っているようなものです」

    それでもチーム内には責任転嫁する雰囲気はないという。

    「マイアミやバルセロナ、シュピールベルク、シルバーストンで苦戦した時も、誰も隠れたり責任逃れをしたりはしませんでした。『何が問題だったのか』『なぜこうなったのか』『どう改善するのか』という話ばかりです。その姿勢は本当に尊敬しています」

    「だから私は、スタッフが本来ふさわしい環境で仕事ができるようにすることだけを考えています」

    ハースは2026年序盤に中団争いで存在感を示したものの、ライバル勢の積極的な開発によって競争力を失いつつある。小松礼雄代表は、その原因はスタッフの能力ではなく予算面の制約にあると強調し、予算上限まで運営できる体制の実現こそがチーム再浮上への鍵になるとの考えを示した。

  • ハースF1チーム 坪井翔と福住仁嶺が富士TPC参加 日本でファンイベント開催

    ハースF1チーム 坪井翔と福住仁嶺が富士TPC参加 日本でファンイベント開催

    TGRハースF1チームは6月25日、日本のファン向けイベント「Haas+ Fans First」を7月28日と29日に富士スピードウェイで開催すると発表した。イベントではTPC(Testing of Previous Cars:旧型F1マシンテスト)が実施され、スーパーフォーミュラで活躍する坪井翔と福住仁嶺がステアリングを握る。

    昨年に続く開催となる今回のイベントでは、F1マシンの走行に加え、ファンがチームをより身近に体験できる2日間の特別プログラムを用意。

    富士山を望む富士スピードウェイを舞台に、チームへの特別アクセスや各種オフイベントが実施される。

    坪井は2年連続 福住はF1初ドライブ
    坪井にとっては、TGRハースF1で富士を走るのは昨年に続き2回目となる。一方、福住は今回がF1マシン初ドライブとなり、「TGR Haas Driver Development Program」の支援によって実現した。

    2024年スーパーフォーミュラ王者であり、SUPER GT GT500クラスを4度制した坪井は、トヨタの育成プログラム出身ドライバー。昨年の富士TPCでTGRハースF1デビューを果たし、この1年間は同プログラムの一員として活動してきた。

    福住は2016年にGP3へ参戦し、2017年にはランキング3位を獲得。2018年にFIA F2へ参戦した後、日本へ戻りスーパーフォーミュラとSUPER GTで活躍してきた。2019年にはSUPER GT GT300王者に輝き、現在はGAZOO Racing/ROOKIE Racingから参戦。今季は鈴鹿でスーパーフォーミュラ初優勝も挙げており、ROOKIE RacingとTGRハースF1の提携によって育成ルートがさらに強化されている。

    ピット至近で観戦できる人気企画も復活
    来場者は2日間にわたり、両ドライバーによるF1走行を間近で観戦できるほか、さまざまな限定コンテンツを楽しめる。

    昨年好評だった「激感ピット(Gekikan Pit)」も再び設置され、TGRハースF1のガレージすぐ横からF1マシンの走行や作業風景を体感できる。

    また、元F1ドライバーでル・マン24時間レース3勝を誇る中嶋一貴(TOYOTA RACING GmbH副会長)もイベント期間中を通じて参加。「TGR Haas Driver Development Program」の中心人物として両ドライバーをサポートするとともに、ファンミーティングやサイン会、ステージイベントにも登場する予定だ。

    小松礼雄代表「日本のF1熱を再び感じられる」
    小松礼雄代表は今回のイベントについて次のようにコメントした。

    「TPCプログラムを通じて、今年も日本のファンの皆様にF1をお届けできることを大変誇りに思います。昨年のイベントでは、日本のF1ファンの皆様の素晴らしい情熱を実感しました。今年も再び富士スピードウェイで皆様をお迎えできることを楽しみにしています」

    「坪井翔選手が再び参加し、さらに福住仁嶺選手が初めてF1マシンをドライブする機会を得られることは、『TGR Haas Driver Development Program』のおかげで実現した特別な機会です。非常に思い出深いイベントになるでしょう」

    トヨタ自動車の豊田章男会長も、日本人ドライバーへの支援の意義を強調した。

    「まずはジーン・ハース氏、小松礼雄代表、そしてTGRハースF1の皆様に心より感謝申し上げます。日本人ドライバーが世界最高峰のモータースポーツであるF1へ挑戦する機会を得られることは、日本のモータースポーツ界にとって大きな希望です」

    「昨年の坪井翔選手に続き、今年は福住仁嶺選手もステアリングを握ります。二人には自分自身のためだけでなく、世界を目指す次世代の夢を後押しする存在として全力で挑戦してほしいと思います。モータースポーツの本当の価値は、人々に夢や挑戦する勇気を与えることにあると信じています。会場に足を運んでくださる皆様には、坪井選手、福住選手だけでなく、その後に続こうとする日本の挑戦者たちにも温かい声援を送っていただければ幸いです」

    チケットはHaas+会員向け割引を用意
    チケットは公式ファンプラットフォーム「Haas+」を通じて購入すると、前売り価格から500円割引となる。

    ■ Haas+会員価格
    ■ 7月28日入場券:大人2,500円
    ■ 7月29日入場券:大人2,500円
    ■ 2日間通し券:4,000円

    ■ 一般前売価格
    ■ 7月28日入場券:大人3,000円
    ■ 7月29日入場券:大人3,000円

    15歳以下は無料で入場でき、家族連れでもF1を身近に体験できるイベントとなる。詳細なスケジュールや追加情報は、今後「Haas+」で発表される予定だ。

    今回のTPCイベントは、日本のトップカテゴリーで活躍する坪井翔と福住仁嶺がF1マシンをドライブする貴重な機会となるだけでなく、日本のファンがF1を間近で体感できる特別なイベントとして開催される。TGRハースF1とトヨタによる育成プログラムの取り組みを広く紹介する場にもなりそうだ。

  • 角田裕毅のF1復帰にヴィルヌーヴが否定的見解「十分な時間を得た」

    角田裕毅のF1復帰にヴィルヌーヴが否定的見解「十分な時間を得た」

    角田裕毅の2027年F1復帰の可能性が報じられるなか、1997年F1ワールドチャンピオンのジャック・ヴィルヌーヴは、角田裕毅はすでに十分なチャンスを与えられており、再びグリッドに戻るべきではないとの見解を示した。

    2025年限りでレッドブルのレースシートを失った角田裕毅は、2026年シーズンをレッドブルのリザーブドライバーとして過ごしている。だが、トヨタとの提携を強化したハースが日本人ドライバー獲得を検討しているとされ、2027年の復帰候補として名前が浮上している。

    ヴィルヌーヴ「角田裕毅は十分な時間を得た」
    GPblogによると、ハースはトヨタとの関係強化を背景に日本人ドライバーの起用を検討しており、2026年末で契約満了を迎えるエステバン・オコンの後任候補として角田裕毅に関心を示しているという。

    しかしヴィルヌーヴは、Sky Sports F1の番組内で角田裕毅のF1復帰には否定的な見方を示した。

    「彼はもう十分に時間を与えられたと思う。レッドブルで求められていたのも、ある意味ではホンダの後押しがあったからだし、そこで輝くことはできなかった」

    「彼は何年F1にいた? 4年か5年か。それだけ長くいたのだから十分だ。際立った結果を残せなかった。彼の時代は終わったんだ」

    「実際にF1でチャンスを得られたことを幸運だと思うべきだ。多くのドライバーはその機会すら得られないのだから」

    角田裕毅は2021年にF1デビューし、2025年途中からレッドブルへ昇格したものの、マックス・フェルスタッペンとの比較で苦戦。2025年は22戦で30ポイント、トップ10フィニッシュは7回にとどまった。

    フェラーリはラファエル・カマラの起用を希望
    一方で、角田裕毅のハース入りには強力なライバルも存在する。

    Auto Motor und Sportによると、フェラーリは自らの育成ドライバーでF2に参戦するラファエル・カマラを2027年にハースへ送り込みたい考えを持っているという。

    オリバー・ベアマンはフェラーリとの関係もあり、2027年もハース残留が有力視されている。そこで契約満了を迎えるオコンの後任として、フェラーリはカマラの起用を強く望んでいると報じられている。

    フェラーリ陣営は、カマラがすでにF1昇格の準備が整っていると評価しており、ハースに優先的な起用権を与える方針だという。

    カマラ自身も、まずはハースで経験を積みながらF1キャリアをスタートさせることを望んでいるとされ、角田裕毅にとっては大きな障害となりそうだ。

    チャンドックは角田裕毅の実力を擁護
    これに対し、元F1ドライバーのカルン・チャンドックは異なる見方を示している。

    チャンドックは、もし角田裕毅が2025年にレーシングブルズへ残留していれば評価は大きく変わっていた可能性があると指摘した。

    「僕は少し違う見方をしている。もし角田裕毅がレーシングブルズに残り、レッドブルがリアム・ローソンとの交代を行わなかったなら、彼はローソンより良いシーズンを送っていたと思う。そうなれば今の議論も違ったものになっていたはずだ」

    さらにチャンドックは、角田裕毅のF1復帰ルートとしてアストンマーティンの可能性にも言及した。

    「ひとつ気になるのは、もしフェルナンド・アロンソが契約を更新しなかった場合だ。ホンダが角田裕毅をアストンマーティンのシートに押し込めるだろうか」

    「アロンソが引退するのであれば、それが唯一の復帰ルートになるかもしれない」

    評価が分かれる角田裕毅の2027年復帰論
    角田裕毅を巡っては、トヨタとの関係を重視するハース、育成ドライバーを送り込みたいフェラーリ、そして2027年以降のアストンマーティンの動向など、複数の要素が絡み合っている。

    ヴィルヌーヴのように「十分なチャンスを得た」と見る声がある一方で、チャンドックのように「環境次第で再評価されるべきドライバー」と考える関係者も少なくない。

    2027年のドライバー市場が本格的に動き始めれば、角田裕毅の将来を巡る議論はさらに活発になりそうだ。

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