レッドブル・レーシングは、2027年からトム・マッカローがチームに加入し、コンペティションディレクターに就任することを発表した。アストンマーティンで長年にわたりF1の現場を支えてきた経験豊富なエンジニアを迎え、マクラーレンへの移籍が決まっているジャンピエロ・ランビアーゼの後任とする。
50歳のマッカローは2027年シーズン開幕から新たな役職に就く。レッドブル・レーシングでは近年、黄金期を支えた主要スタッフの離脱が相次いでおり、今回の人事は技術・レース運営組織の再構築に向けた重要な一手となる。
レッドブルがマッカロー加入を正式発表
レッドブル・レーシングはマッカローの加入について声明を発表した。
「2027年初頭にトムをチームに迎えられることをうれしく思う。この役職において、彼の豊富な経験と専門知識を生かせることを楽しみにしている」
マッカローはF1で豊富な経験を持つ。シルバーストンを拠点とするチームに10年以上在籍し、フォース・インディア、レーシング・ポイント、そしてアストンマーティンへとチームが変遷するなかで、主にトラックサイドのパフォーマンス部門を担当してきた。
しかし、2025年シーズン序盤に行われたアストンマーティンの経営・技術組織再編に伴い、F1チームの第一線から外れた。その後は、アストンマーティンの高性能技術事業を担うアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズでパフォーマンスディレクターを務めていた。
レッドブルは、マッカローが持つ長年のトラックサイド経験とF1チーム運営への深い理解を評価し、今後の組織で重要な役割を託すことを決めた。
ランビアーゼはマクラーレン移籍へ
マッカローは事実上、ジャンピエロ・ランビアーゼが担ってきたレースエンジニアリング部門の責任を引き継ぐことになる。
ランビアーゼは2024年10月にコンペティションディレクターへ昇格しながら、マックス・フェルスタッペンのレースエンジニアも引き続き担当してきた。フェルスタッペンとの無線で知られる存在である一方、レッドブルのレース運営全体でも重要なポジションを担っている。
そのランビアーゼは、遅くとも2028年までにマクラーレンへ移籍する予定となっている。ただし、実際の加入時期が前倒しされる可能性も残されている。
マクラーレン・レーシングCEOのザク・ブラウンは今年5月、将来的に直接のライバルへ移ることが決まっているスタッフを長期間チームに残すことの難しさを認めていた。
「我々はこの世界がどういうものか分かっている。ある時点では、ライバルチームへ行くと分かっている人間を抱えていることが、おそらく居心地の悪い状況になるだろう」
一方でブラウンは、他チームへの移籍を望むスタッフを無理に引き留める考えもないとしている。
「私の基本的な考え方としては、誰かが去りたいのであれば、適切な形で進めるべきだ。ただ、もう私のチームにいたくないという人について、他のチームにスタッフを盗まれたと考えるタイプではない」
「ドライバーでもスポンサーでも同じだ。失うこともあれば、彼らが別のものに興味を持つこともある」
契約は2028年まで 前倒し移籍の可能性も
ランビアーゼとレッドブルとの現在の契約は2028年まで残っており、現時点ではそれがマクラーレン加入時期を決める基準となっている。
ブラウンはランビアーゼの加入時期について次のように説明している。
「2028年まで契約がある。それが必要なのであれば、我々は待つ。もっと早く何かできるのであれば、もちろん興味はある。ただ、現時点では全員が2026年に集中していると思う」
レッドブルにとっては、ランビアーゼがいつ実際にチームを離れるのかも今後の焦点となる。マッカローが2027年初頭から加入することで、少なくとも一定期間は両者が同じ組織に在籍する可能性があり、引き継ぎを含めた体制構築を進める余地が生まれる。

黄金期の主要スタッフ流出が続くレッドブル
マッカローの招聘は、レッドブルが進めている組織刷新の一環でもある。
近年のレッドブルでは、長年にわたってチームの成功を支えてきた主要人物が相次いで組織を離れており、ランビアーゼもその流れに加わることになる。新たな技術レギュレーションの下で競争力を維持するうえで、マシンそのものの開発だけでなく、レース週末を運営する技術組織の再構築も重要な課題となっている。
その点でマッカローは、ランビアーゼとは異なるキャリアを持つ。ひとつのシルバーストン拠点の組織でフォース・インディアからレーシング・ポイント、アストンマーティンへと変化する過程を経験し、限られたリソースで戦った時代から大規模投資による拡張期までを知る人物だ。
特にトラックサイドでのパフォーマンス管理に長く携わってきた経験は、レース運営と技術部門を結ぶポジションを担ううえで大きな強みとなる。
2027年加入でランビアーゼ後の体制構築へ
今回の人事は、F1のトップチーム間で激しさを増す人材獲得競争を象徴する動きでもある。新レギュレーション時代ではマシンやパワーユニットだけでなく、それらを最大限に機能させる技術者と組織力が競争力を左右する。
レッドブルにとって重要なのは、ランビアーゼの離脱による影響を最小限に抑えながら、マッカローを中心とした新たなレース運営体制を構築することになる。
マッカローが正式に仕事を始めるのは2027年。それまでランビアーゼはレッドブルで職務を続ける予定であり、一方のマクラーレンは2028年まで待つのか、それとも早期移籍に向けた合意を取り付けるのかという判断を迫られる。
黄金期を築いたスタッフが徐々に入れ替わるなか、経験豊富なマッカローの招聘は、レッドブルが次の時代を見据えて進める組織再編の重要なピースとなる。
























