2026年全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦の決勝後、勝敗を大きく左右したセーフティーカー(SC)の運用が焦点となった。優勝した福住仁嶺(NTT docomo Business ROOKIE)自身が「ちょっとフェアじゃないな」と語り、2位の岩佐歩夢(TEAM MUGEN AUTOBACS)もSC中の隊列整理が想定とは異なっていたと証言。3位に終わったイゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)は、チームが抗議する可能性を明らかにした。
8月9日にスポーツランドSUGOで行われた第8戦では、27周目に阪口晴南(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)がSPコーナー外側にマシンを止め、ロマン・スタネック(ナビクル Buzz MK RACING)もレインボーコーナーでスピンアウト。これを受けてSCが導入され、そのタイミングとその後の隊列整理によって順位が大きく入れ替わった。
優勝した福住仁嶺「実質トップと言われて、どういうこと?」
SC導入前、まだタイヤ交換を行っていなかった福住は7番手スタートから上位へ進出していたものの、優勝できるとは考えていなかったという。
「30分の朝のフリー走行の段階だと、そこそこペースはありそうかなという手応えはあったのですが、それを踏まえても上位が速いことも分かっていたので、展開や戦略とかで、いけても表彰台かなと考えていました。まさか、こういうかたちで優勝がめぐってくるとは思っていなかったです」
SC導入の可能性を察知したPONOS NAKAJIMA RACINGは、暫定トップを走っていたフラガを27周目にピットへ呼び込んだ。フラガはピット出口で野尻智紀(TEAM MUGEN AUTOBACS)と太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)の前に出ることに成功した。
一方、福住と岩佐はその周にはピットへ入らず、SCがコースインする前に次の周回へ。その後にタイヤ交換を行ったことで、隊列整理を経て福住がトップ、岩佐が2番手、フラガが3番手となった。
しかし福住自身も、ピットアウトした時点では自分が首位に立つとは理解していなかった。
「いざSCが入って、その時、僕と岩佐選手が同時に入ったんですけれども、無事に作業を終えて岩佐選手の前で戻って『実質、今トップだよ』と言われた時は『どういうこと?』って思いました」
「先に入ったクルマもいますし、結構、離れたところにイゴール選手とかほかの選手もいたので、『どうして、そうなったんだろうな』というふうに、その時は分からず、とりあえず自分のタイヤを温めることに集中したという感じでした」
そして、SC走行中にチームから状況を説明された福住は、率直な感想を口にした。
「SC中に状況を説明してもらって、『ちょっとフェアじゃないな』と思いました」
結果的に福住はリスタート後も首位を守り切り、今季2勝目を獲得した。ただし、その勝利について手放しでは喜んでいない。
「最後に岩佐選手に追い詰められましたし、SCの影響で前に出て優勝したというだけなので、正直、素直には喜べないですね」
「自力で優勝するためには、もう少し何か変えていかないと足りないなという感じはあるので、優勝はできましたけど、今後に向けてすごく課題が残ったレースだったかなと感じています」
さらに福住は、SCがなければ誰が勝っていたと考えているかについても明確だった。
「今日、普通にレースをやっていれば優勝したのはイゴール選手だと思っています」
2位岩佐歩夢「2回目、3回目と送り出しがあったことには驚いた」
9番グリッドから2位まで順位を上げた岩佐も、SCによって恩恵を受けたことを認めた。
「セーフティカーに関してはラッキーでしたね」
岩佐は福住と同じタイミングでタイヤ交換を行い、その後は福住に続く実質2番手となった。ピットアウト後にはチームから、自分たちの前にいるマシンの位置関係について説明を受けていた。
「自分がピットアウトした後のインフォメーションは『福住選手の前のマシンがすべてバックマーカーで、SCの後ろにトップ集団がいる状況』だと聞いていました」
ただし、岩佐が想定していたのとは違ったのが、その後の隊列整理だったという。
「僕の認識だったり、エンジニアも無線で言っていたんですけど、送り出しのルールというか、決まっていることとしてはおそらく1回のみというふうになっていたと思うので、それが1回のみではなく、2回目、3回目と送り出しがあったことには驚きました」
「自分が想像していたSC中の展開ではなかったですね」
一方、岩佐は今回の2位について、SCだけによって得られた結果とは考えていない。
「今日に関しては9番手からいいスタートを切って、コース上でも1台オーバーテイクして、戦略でもできることをやった結果がこの2位だと思うので、僕自身はすごく嬉しい2位ですし、チームみんなでもぎ獲った2位なんじゃないかなと感じています」
ただ、純粋な速さについては課題が残ったと認めた。コンディション変化に対するマシンのパフォーマンスの振れ幅が大きいとして、次戦富士までの約2カ月で改善を目指す。
3位フラガ「僕らが絶対トップだったはず」
一方、SCによって最も大きな影響を受けたのがフラガだった。
フラガは序盤から野尻と太田に続く3番手を走行。先行する2台がタイヤ交換を済ませた後もコース上に残り、クリーンエアのなかで好タイムを記録していた。
「僕らとしては完璧なレースをこなしていたと思います。ファーストスティントで前の太田選手のタイヤがタレてきて、みんながピットに入った後、僕は残りましたが、そこからのペースもすごく良かったです」
当初は早めのタイヤ交換も検討していたというフラガだが、実際にレースが始まると想定以上のペースがあり、戦略を変更して第1スティントを延ばした。
そして27周目のアクシデント発生を受け、チームはSC導入を予測してフラガをピットへ。タイヤ交換も完璧だったという。
「チームも多分“過去イチ”ぐらいの完璧なタイヤ交換をやってくれて、セーフティカーが出た後に、野尻選手がギリギリSCラインを超えるかどうかのところで前に出ることができて、これでトップでリスタートできるんじゃないかなと思っていました」
ところが、SCによる隊列整理を終えると、フラガの順位は3番手になっていた。
「なのに、SCの送り出しで、気づいたら3番手だったと」
フラガ自身はSC運用の詳細を把握していないとしたものの、チーム側の反応は明確だったという。
「僕は詳細はよく分からないんですけど、チームからの無線は『あり得ない』という感じで、『僕らが絶対トップだったはずだ』という感じでした」
さらに、PONOS NAKAJIMA RACINGが正式なアクションを起こす可能性にも言及した。
「多分、抗議はチームから出ると思うんですけど、しっかり動いていかないと、あまり変わらないまま、このままの動きで続いてしまうかもしれないと思っています」
「僕らとしてはドライバーズミーティングなどでいろいろ訴えていることはあるんですけど、改善しているということはあまりないので、ちゃんと抗議を出して、しっかり対応してもらいたいなと思っています」
フラガは最終的に福住から0.939秒差の3位でフィニッシュ。前を走るマシンがいるとペースを発揮しにくいSUGOでありながら、最後までトップ2に食らいついたことには手応えを示した。
勝者も疑問を抱いた異例の表彰台会見
福住、岩佐、フラガ。表彰台に立った3人は、それぞれ立場こそ異なるものの、そろってSC導入後の展開について驚きや疑問を口にした。
福住は「ちょっとフェアじゃない」、岩佐は「2回目、3回目と送り出しがあったことには驚いた」と発言。そして、トップでリスタートできると考えていたフラガは「僕らが絶対トップだったはず」とするチームの見解を明かし、抗議の可能性にも言及した。
正式結果では福住の優勝、岩佐の2位、フラガの3位が発表されている。しかし、勝者を含めたトップ3全員がSC中の運用について疑問や戸惑いを示す、異例のレース後会見となった。













