アウディF1は、2026年型マシン「R26」の開発を継続し、アゼルバイジャンGPで大規模な空力アップデートを投入する。チーム内部からは、バクーではマシンが「完全に異なる」外観になるとの声も出ている。
すでに開発リソースの多くは2027年型マシンへ移行しているが、現在4戦連続でポイントを獲得しているアウディは、R26でつかみ始めた技術的な方向性をさらに追求する方針だ。その前段階として、今週末のF1イタリアGPでは約24週間をかけて準備したギア比の変更も導入する。
7戦連続ノーポイントから4戦連続入賞へ
アウディの2026年シーズンは序盤から順調だったわけではない。7戦連続でノーポイントに終わる厳しい時期を経験したが、その後は4戦連続でポイントを獲得。R26の競争力は徐々に改善している。
前戦オランダGPでもポイントを獲得し、単発の好結果ではなく、パフォーマンスそのものが上向いていることを示した。
アウディのコンペティションディレクターを務めるアラン・マクニッシュは「ザントフォールトでは良いペースを示し、4戦連続でポイントを持ち帰ることができた。これは常に励みになることだが、もちろん、まだ改善できる領域はある」と語った。
ただし、モンツァはザントフォールトとは性格が大きく異なる。長いストレートと低ダウンフォースが特徴の高速サーキットであり、現在のR26が抱える弱点が表面化する可能性もある。
「モンツァは、サーキットそのものにも、その周囲にも多くの歴史があり、いつ行っても特別な場所だ」
「今週末はこれまでとは異なる挑戦になる。最近続いているポイント獲得を維持するのが難しいコースになる可能性もある。それでも我々は実行力に集中し、手元にあるものから最大限を引き出して、今季最後の欧州連戦を良い形でスタートさせたい」
イタリアGPで24週間かけたギア比変更を投入
アウディはモンツァに向けて、R26のトランスミッションにも重要な変更を加える。
シーズン序盤の実戦データを分析した結果、エンジニアは1速が短すぎる一方で、8速が長すぎることを確認した。そこでギア比を変更し、パワーユニットの特性と各サーキットの要求に、より適した状態へと修正する。
この変更には約24週間の開発期間を要した。F1の技術規則では、一定の条件下でシーズン中にギア比を変更する機会が認められており、アウディはその制度を利用する。
ギア比だけでなく、スタート性能もシーズン序盤から改善対象となってきた。スペインGPで小型ターボチャージャーを投入したことで一定の進歩を果たしたものの、クラッチについてはハードウェアと電子制御の両面で、なお改善の余地が残されている。
モンツァで導入する変更は、単純な最高速対策だけではない。パワーユニットの出力特性をより効率的に利用するためのものであり、アウディがR26全体のパッケージを細部から見直していることを示すアップデートでもある。
バクーでR26に大規模空力アップデート
さらに大きな変化が予定されているのが、その後のアゼルバイジャンGPだ。
アウディはすでに開発リソースの大部分を2027年型マシンへ振り向けているものの、R26の開発を完全に打ち切ってはいない。バクーには、これまでのアップデートを大きく上回る規模の空力パッケージを投入する計画だ。
チーム内部の情報では、その変更によってR26は「完全に異なる」外観になる可能性があるという。
具体的な変更箇所は明らかになっていないが、外観そのものが大きく変わるほどの規模とされていることから、単独のウイングやフロア部品を更新するだけではなく、複数の空力コンポーネントを連動させたパッケージになるとみられる。
このアップデートが重要なのは、単に2026年シーズンの成績を改善するためだけではない。
アウディはF1参戦初年度となる今季、序盤に苦戦しながらも開発を続け、直近では4戦連続入賞まで競争力を引き上げてきた。そこで得られた空力開発の方向性やマシンへの理解は、規則が変更される2027年型マシンの開発にもつながる。

ヒュルケンベルグ「正しい方向に進んでいる」
ニコ・ヒュルケンベルグも、最近の結果以上にチームの進歩そのものを評価している。
「ザントフォールトの日曜日も、僕たちにとって満足できる形で終わった。またポイントを獲得できたし、それ以上に重要なのは、チームとして正しい方向に進んでいることを確認できたことだ。次のレースでも、この実行レベルを維持することが目標になる」
一方で、中団争いは依然として極めて僅差だ。小さなミスやセットアップの違いだけで、ポイント圏内から大きく順位を落とす可能性がある。
「モンツァに戻るのはいつだってうれしい。多くの情熱的なティフォシがいる、本当の意味でのクラシックサーキットのひとつだし、F1マシンを走らせるのが本当に楽しい場所だ」
「中団は相変わらず信じられないほど接近している。だから、もう一度クリーンな週末をまとめて、それでどこまで行けるかを見てみたい」
ボルトレトもR26のペースに手応え
ガブリエル・ボルトレトも、オランダGPでは結果以上にR26のパフォーマンスに手応えを感じていた。
「日曜日のザントフォールトは混乱したスタートもあって、望んでいた結果ではなかった。でも、マシンには快適さを感じていたし、良いペースもあった。それは休み明けのレースとして明らかにポジティブだった」
ボルトレトにとってモンツァは個人的にも特別な場所だ。ジュニアカテゴリー時代にはイタリアを拠点として活動し、モンツァでも好成績を残してきた。
「モンツァは僕にとっていつも特別な意味を持つ週末だ。ジュニアカテゴリーでレースをしていた間はずっとイタリアに住んでいたし、ここ数年はここで良い結果も残している」
「何より『スピードの殿堂』でレースをするのは、いつだって楽しみにせずにはいられない。最近のレースでは僕たちは競争力を発揮できているので、今週末もその勢いを維持して、良い結果を残せればと思っている」
モンツァからバクーへ R26開発は次の段階に
7戦連続ノーポイントという状況から4戦連続入賞まで盛り返したアウディにとって、イタリアGPからアゼルバイジャンGPにかけては、R26の開発がさらに一段進む重要な局面となる。
まずモンツァでギア比を変更し、パワーユニットとトランスミッションの使い方を最適化する。そしてバクーでは、マシンの外観が「完全に異なる」と表現されるほどの大規模空力パッケージを投入する。
2027年型マシンの開発を優先しながらも、アウディは2026年型R26をまだ完成形とは考えていない。直近4戦で示した上昇傾向が本物なのか。そしてバクーの大型アップデートによって中団争いの勢力図をさらに動かせるのか。アウディF1の参戦初年度は、ここから新たな開発段階に入る。
