F1スペインGPの舞台として初開催を迎えたマドリンクで、金曜日にFP1とFP2が行われた。シミュレーターだけでは把握できなかった新コースの特徴が明らかになり、ドライバーからは高速域で壁に迫るスリルと難しさを評価する声が相次いだ。
一方で、タイヤのグレイニング、異なる性格のセクションを両立させるセットアップ、エネルギーデプロイ、そして追い抜きの難しさなど、決勝に向けた課題も浮き彫りになった。ジョージ・ラッセルは、その危険度について「スピードを考えればモナコよりマージンが少ない」と表現している。
ジョージ・ラッセル「モナコよりマージンが少ない」
FP1でトップタイムを記録したジョージ・ラッセルが強調したのは、マドリンクではミスをした際の逃げ場がほとんどないことだった。
「純粋にスピードを考えれば、モナコよりもマージンが少ないサーキットだと思う」
「モナコは壁がもっと近いけど、スピードが低い。ミスをしてもすぐ壁に突っ込むわけではないし、場合によっては立て直すこともできる。ロックアップで済むこともある。でも、ここはもっとマージンが少ない」
特に問題になるのが、高速コーナー外側のバリアの形状だという。
「すごく速いコーナーがたくさんあるけど、バリアがコース側に戻ってくるような場所がある。ワイドになって壁に当たると、マシンと同じ方向に壁が伸びているわけじゃない。壁のほうから自分に向かってくるような感じなんだ」
マドリンクは市街地コースでありながら高速区間が多い。ピエール・ガスリーも「ジェッダとモナコを組み合わせたような感じ」と表現し、壁が急速に迫ってくる独特の緊張感を評価した。
「本当に気に入った。すごくエキサイティングだったよ。アドレナリンが出るコースだ。どのコーナーでも壁がものすごい速さで迫ってくるから、ラインとコーナーへのコミットメントをものすごく正確にしないといけない」
ラ・モニュメンタル(La Monumental)が最初の難所に
マドリンクを象徴するのが、ターン12のラ・モニュメンタルだ。約500mにわたって最大24度のバンクが設けられ、ドライバーは約6秒間にわたってこの区間を走行する。
初日の走行では、単純なコーナリング以上にトラフィックが問題になった。ブラインド区間で低速走行するマシンに追いつく場面が相次ぎ、FP1ではカルロス・サインツJr.とルイス・ハミルトンが危うく接触しかけた。FP2ではフェルナンド・アロンソもアタック中に低速のキャデラックに追いつき、不満を示した。
ターン5、ターン7、ターン17も難所として挙げられている。特にターン17ではフェラーリ勢が苦戦し、ハミルトンとシャルル・ルクレールが何度もワイドになりながらバリアとの接触を回避した。
「ものすごく難しいサーキットだ」とハミルトンは語った。
「これまで経験した新しいコースの中では、ここかサウジアラビアが、マシンを理解して正しいラインを見つけるという意味で最も難しかったと思う」
セットアップは「何を犠牲にするか」の戦い
マドリンクは公道区間と専用に建設された区間を組み合わせたハイブリッド型サーキットであり、その性格の違いがセットアップを難しくしている。
アストンマーティンのマイク・クラックは、高速区間、バンク、縁石への対応を1台のマシンで両立させる必要があると説明した。
「非常に大きな妥協が必要だ。高速区間に対して必要なもの、バンクに必要な硬さ、縁石に対して必要な柔らかさがある」
「どこを犠牲にして、別の場所で何を得るのかを最適化する作業になる。これで実走データが得られたので、さらに最適化できる部分がある」
アウディのスポーティングディレクター、イニャキ・ルエダも同様の問題を指摘する。高速コーナーでは空力性能を引き出すために車高を低くして硬いマシンにしたい一方、ターン2などでは縁石を積極的に使う必要がある。
「主なトレードオフは、空力のために低く硬く走らせることと、縁石を越えることの間にある」
「ターン2では縁石を使うことがかなりのラップタイムにつながる。使わないという選択肢はない。でも、そのためには車高を上げて、もっと動くマシンにしたい。そこがトレードオフで、答えを見つけるのは難しい」

予想以上のグレイニング タイヤが最大の不確定要素
初日にチームを驚かせたもうひとつの要素がタイヤだった。新しい舗装でグレイニングが発生する可能性は予想されていたものの、FP1では想定以上に激しく、各チームはFP2に向けてセットアップ変更を迫られた。
ラッセルは、その状況を冗談交じりに表現した。
「可能性はあると思っていた。新しい舗装ではよくあることだからね。グリップはすごく高いけど、かなり激しくスライドする。FP1のデグラデーションだったら、6ストップが一番速いレースになるんじゃないかと思ったくらいだよ!」
「FP2では少し良くなったし、日曜日のレースではさらに改善すると思う。でも、ここが最大の疑問点だ」
オスカー・ピアストリもロングランについて「タイヤのグレイニングを管理するのは悪夢だった」と振り返っている。
金曜日にC2ハードを使用したのはアウディだけで、多くのチームが2セットを温存した。決勝ではハードタイヤが重要な役割を担う可能性が高い。
「マシンキラー」の片鱗を見せたリンドブラッドのクラッシュ
週末を前にウィリアムズ代表のジェームス・ボウルズはマドリンクを「マシンキラー」と表現し、赤旗が頻発する可能性を警戒していた。
しかし、金曜日のF1走行は予想以上に落ち着いた展開となった。FP1では赤旗が一度も出ず、FP2で初めてセッションを止めたのがレーシングブルズのアービッド・リンドブラッドだった。
リンドブラッドはターン13でリアを失い、横向きになってバリアに衝突。フロントとリアのサスペンション、さらにフロントウイングにも大きなダメージを負った。
高速域が多いマドリンクでは、小さなミスが軽微な接触では終わらない可能性がある。その意味では、リンドブラッドのクラッシュはボウルズが指摘していた「マシンキラー」としての一面を初めて示す出来事となった。
追い抜きは「非常に難しい」 予選が週末の鍵
初日の走行でもうひとつ明確になったのが、追い抜きの難しさだ。
アレクサンダー・アルボンは、ブレーキングゾーンの多くが直線的ではなく、コーナーへの進入と組み合わされていることを問題視した。
「ブレーキングゾーンをもう少し違った形にして、あまり角度をつけなければよかったと思う」
「複合的なコーナーが多いから、日曜日の追い抜きを考えると守るのはかなり簡単そうだ。コースの真ん中にマシンを置けば、相手はなかなか横に並べない」
「だからブレーキングで抜くというより、バッテリーのデプロイを使って抜く形になると思う」
ラッセルも初日の終了後、追い抜きについて「非常に難しい」と予想した。
ルクレールはFP2で実際に前車を抜こうとしたものの、大きなペース差があっても困難だったと明かしている。
「予選が間違いなく週末の鍵になる。特にFP2では追い抜きを試してみたけど、かなり大きなペース差があっても、抜くのはものすごく難しいか、不可能だった」
初走行を終えたマドリンクは、ドライバーから走る楽しさを評価される一方、高速域での壁との距離、タイヤのグレイニング、セットアップの妥協、そして追い抜きという複数の難題を突きつけた。決勝で順位を上げることが難しいのであれば、土曜日の予選でどこまで前のグリッドを確保できるかが、初開催のF1スペインGPを左右する最大のポイントになりそうだ。
