カテゴリー: F1レギュレーション

  • ホンダF1救済のADUO規則修正案 投票が直前で停止 暗雲漂う

    ホンダF1救済のADUO規則修正案 投票が直前で停止 暗雲漂う

    2026年F1シーズンにおけるパワーユニット規則の焦点となっているホンダ救済策が、予想外の形で足踏みを強いられている。アストンマーティンとの新体制で苦戦が続く中、追加開発機会を与えるための規則修正案が検討されていたが、その採決が直前で停止されたことが明らかになった。

    この問題は単なる技術論争ではなく、各メーカーの利害が絡む政治的な駆け引きの様相も呈している。

    ホンダの苦戦は広く認識されている一方で、ライバルに有利となるルール変更への慎重姿勢が、今回の決定に影響を与えた可能性が高い。

    ホンダ救済の柱 ADUO規則緩和案の中身
    議論の中心となっているのは、ADUO(追加開発・アップグレード機会)制度の見直しだ。

    現行レギュレーションでは、ADUOによるアップグレードはシーズン内で累積できず、FIAが適格と判断した最初の1回に限って付与される仕組みとなっている。

    「ADUOのホモロゲーションアップグレードはシーズン内で累積されず、本条項の基準に従ってFIAが適格と判断した最初の機会にのみ付与される」と規則には明記されている。

    今回の提案は、この制限を緩和することで、ホンダに複数回の開発機会を与えるというものだった。これにより段階的な改善が可能となり、シーズン中の巻き返しを現実的なものにする狙いがあった。

    特に重要視されていたのがコストキャップ面での緩和であり、追加リソース投入によって開発の自由度を高める効果が期待されていた。

    PUAC投票は異例の「集計後停止」
    この規則修正案は、F1のパワーユニット諮問委員会(PUAC)で投票にかけられていた。

    PUACはFIAとFOMが合わせて1票を持ち、これに各エンジンメーカー(キャデラックを含む)が加わる構成となっている。

    規則変更には“スーパー・マジョリティ”が必要であり、FIA/FOMの賛成に加え、メーカー側では1社を除くすべての支持が求められる。

    当初、この投票結果はマイアミGP週末に公表される見込みだった。

    その中で、ホンダのトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアである折原慎太郎は、状況について次のように語っている。

    「我々はFIAの決定を待っている。最終的な判断には従うことになる」

    しかし、その後に明らかになったのは、メーカー側にも予期されていなかった展開だった。投票はすでに集計された後で停止され、公表自体が見送られたという。

    支持不足か 再調整の可能性
    この異例の判断について公式な説明は出されていないが、関係者の間ではいくつかの見方が浮上している。

    ひとつは、提案が必要な支持を得られなかった可能性だ。

    一部メーカーが現行案に難色を示し、修正なしでは賛成に回れない状況だったとみられている。

    これは、ホンダ救済の必要性が理解されつつも、競争バランスを崩すリスクへの警戒が依然として強いことを示している。

    ADUO適用タイミングも揺らぐ
    今回の問題は、ADUO制度全体の運用にも影響を及ぼしている。

    そもそも、どのメーカーにADUOが適用されるかを判断する最初の基準時期についても確定していない。

    カナダGP後まで延期される可能性と、当初の「第6戦終了後(現在はモナコGP)」を維持する案が並存している状況だ。

    この不確定要素は、開発スケジュールを左右する重大な問題であり、ホンダにとっては巻き返しのタイミングそのものが揺らいでいることを意味する。

    規則変更が実現するかどうか、そしてその内容がどこまで踏み込んだものになるのか。今回の投票停止によって、ホンダ救済を巡る議論は新たな局面に入った。

    Source: The Race

  • マックス・フェルスタッペン F1レギュレーション変更は「くすぐり程度」

    マックス・フェルスタッペン F1レギュレーション変更は「くすぐり程度」

    マックス・フェルスタッペンは、2026年F1レギュレーションをめぐって導入された一連の変更について、自身や他のドライバーが抱える懸念に対する対応としては「くすぐり程度」にすぎないと語った。

    FIAとF1は、予選をより全開走行に近づけること、そして決勝中の速度差を抑えることを目的に複数の技術的調整を行った。しかし、フェルスタッペンは現在の変更だけでは不十分だとし、来年に向けてより大きな見直しが必要だと訴えている。

    フェルスタッペン「本当に必要なものではない」
    レッドブルのマックス・フェルスタッペンは、新しいF1マシンについて以前から強い懸念を示してきた。2026年型F1をレーシングゲームの「マリオカート」に例えたこともあり、「ステロイドを打ったフォーミュラE」と表現したこともある。

    今回のルール変更について、フェルスタッペンは次のように語った。

    「くすぐり程度だ。本当にフラットアウトにするために必要なものではまだない。前にも言ったように、すべてを合意させるのは複雑だ。来年に向けて、本当に大きな、大きな変更ができることを願っている」

    フェルスタッペンは、新しいマシンが自身のF1での将来を考えさせるものになっているとも語ってきたが、現時点で決断は下していない。

    「まだ時間はあるし、自分の時間をかけている」

    ノリスは一定評価「ドライバーとして満足すべき」
    一方で、マクラーレンのランド・ノリスは、今回の変更に一定の評価を与えた。

    「これ以上大きく進めるのは難しい。ルールの範囲内でできることには限りがある。僕たちは皆、今回進んだ方向にもっと進んでほしかった」

    「レースは実際にはそこまで大きく変わらない。だから、変わらない部分もある。ただ、予選はもう少しフラットアウトの予選らしいラップになるはずで、それはいいことだ。ドライバーとして望んでいることだから、彼らが行った変更量には満足しなければならないと思う」

    ノリスは、今回の修正は改善の一歩だとしながらも、今後さらに大きな変更が必要になるとの見方を示した。

    「物事を改善しようとして、僕たちはいい仕事をした。将来もっと望んでいる大きなことについては、もっと時間をかけて取り組むことになる」

    焦点はエネルギーマネジメントと速度差
    2026年F1の新型パワーユニットは、内燃エンジンと電動パワーの比率がほぼ50対50に近づき、エネルギーマネジメントの重要性が大きく高まっている。

    今回の変更は、予選でバッテリーを充電するためにコーナー手前でリフト・アンド・コーストを行うような「直感に反する」ドライビングを減らすことを狙ったものだ。

    もうひとつの焦点は、片方のマシンが350kW、約470馬力の電動パワーをすべて展開している一方で、別のマシンがバッテリー充電のために展開していない場合に生じる速度差を減らすことにある。

    ただし、マクラーレン代表のアンドレア・ステラとレッドブル代表のローラン・メキースはいずれも、エネルギーマネジメントの必要性をさらに減らすには、エンジン側のハードウェア変更が必要だと見ている。

    具体的には、内燃エンジンと電動パワーの比率を変えるため、燃料流量の引き上げなどによってエンジン出力を増やすことが想定されている。ただし、これは現行エンジンの信頼性に影響するため今年中には実施できず、5社のパワーユニットメーカーのうち4社に加え、FIAとF1の合意も必要になる。

    ストロール「根本的に欠陥がある」
    アストンマーティンのランス・ストロールは、新レギュレーションについてさらに踏み込んだ表現で批判した。

    「このルールは根本的にかなり欠陥がある。僕たちはまだ本来のF1マシンから遠く離れているし、バッテリーのことを考えずにフラットアウトで攻めるところからも遠い」

    F1では将来的な理想のレギュレーションをめぐる議論も広がっている。FIA会長のモハメド・ビン・スライエムは2年前、自然吸気のV8またはV10エンジン復活を推していたが、当時はエンジンメーカー側がその構想を退けた。

    メルセデスのジョージ・ラッセルは、V8復活論には魅力があるとしながらも、問題は単純ではないと説明した。

    「V8に戻るという話はたくさんある。それは明らかにかなりクールだろうし、サステナブル燃料というテーマは素晴らしいものだ。F1にとっても素晴らしいと思う」

    「マシンをさらに小さくする方法を見つける必要がある。マシン重量の削減は、レースやドライバビリティ、互いに接近して戦えることに対してポジティブな影響を与えている」

    「20年前のF1の“栄光の時代”を見ると、誰もがあれが史上最高のマシンだったと言う。僕も2000年代初期のマシンは、おそらくF1で見た中で最もクールなマシンだったと思う。でも、オーバーテイクはまったくなかった。だから、次を考えるうえで、それは覚えておく必要がある」

    雨のマイアミGPに残る安全面の懸念
    マイアミGP決勝日には雨や雷雨の予報があり、ドライバーたちはウェットコンディションでの安全性にも懸念を示している。

    F1とFIAは天候を注視しているが、現時点でスケジュール変更に関する本格的な議論は行われていない。ただし、可能性としては常に残されている。

    今回のルール変更には、ウェット時の速度差への懸念に対応するため、電動パワーの最大展開量を抑える措置も含まれている。それでも、雨による視界不良のなかで速度差が生じることへの不安は消えていない。

    フェラーリのシャルル・ルクレールは、ウェット時の新型F1マシンについて次のように語った。

    「このマシンのウェットで奇妙なのは、ウェットコンディションのストレート終端で、ドライコンディションよりもずっと速くなる可能性があることだ。エネルギーをあまり使わないから、エンジンカットが入らない」

    「特にドライバーごとにパワーユニットの戦略が違う場合、難しい状況に陥る可能性がある。視界はほとんどない。そこがこのルールの難しさで、そこから抜け出す方法を理解する必要がある。ウェットでは、僕たちは本当に乗客のようなものだ」

    「雨では、勇敢かどうかの問題ではない。フラットアウトのまま走り、前にいるマシンが自分より遅くないことを願うだけだ。そして、相手も自分と同じスピードだと仮定する」

    「これまでは、そう仮定するのはある意味簡単だった。今はもうそうではない。だから僕たちはフラットアウトで行って、どうなるかを見ることになる。あまりいい感覚ではない。これは、まだ回避策を見つける必要があるものだ」

    フェルスタッペンが「くすぐり程度」と表現した今回の変更は、予選の全開走行化と速度差の抑制に向けた応急処置に近い。ドライバー側が求める本質的な改善は、電動パワーと内燃エンジンの比率そのものを見直す領域に踏み込む必要があり、F1は早くも2026年F1レギュレーションの根幹を再検討する段階に入りつつある。

  • ホンダF1救済へADUO規則見直し 「1回制限」撤廃案が浮上

    ホンダF1救済へADUO規則見直し 「1回制限」撤廃案が浮上

    ホンダF1が、2026年F1シーズン序盤の苦境から立て直すため、追加開発機会をさらに得られる可能性が浮上している。The Raceによると、F1首脳陣とパワーユニットメーカーの間で、ADUO(追加開発・アップグレード機会)の運用を見直す議論が進められている。

    アストンマーティンとの新体制で開幕を迎えたホンダは、振動問題によってパフォーマンスと信頼性の両面で苦しんでいる。

    現行のADUO規則でも一定の救済措置は用意されているが、ホンダの遅れが大きい場合、それだけでは十分な回復につながらない可能性がある。

    ホンダだけを助けるべきとの空気
    F1は極めて競争の激しい環境であり、ライバルを助ける規則変更には本来慎重な姿勢が強い。それでもパドック内では、ホンダを現在の位置に留めておくことに誰も利益を得ないとの見方が広がっているという。

    メルセデスのチーム代表であるトト・ヴォルフも先週、アップグレード制度について、実質的にホンダだけが対象になるべきだとの考えを示した。

    「私には、問題を抱えているエンジンメーカーが1社あるように見える。我々はそこを助ける必要がある」

    「だが、それ以外はほぼ同じ範囲にいる」

    ADUOの“1回限り”規定が焦点
    現行規則では、パワーユニットメーカーがシーズン中の指定された評価期間で基準値から遅れていると判断された場合、追加開発機会が認められる。

    内燃エンジンがベンチマークから2%遅れていれば、2026年に1回、2027年に1回のアップグレードが可能になる。遅れが4%以上であれば、2026年に2回、2027年にさらに2回のアップグレードが認められる。

    さらにADUOの対象となったメーカーには、パワーユニットのコストキャップ上の追加支出枠や、ベンチテストの自由度も与えられる。

    ただし現行規則では、ADUOはシーズン中に累積しない。つまり一度追加開発機会を得たメーカーは、そのシーズン中に再び同じ救済を受けることはできない。

    ホンダF1 本田技研工業

    追加救済ならホンダの回復幅が拡大
    今回議論されているのは、この上限を見直す案だという。これにより、大きく遅れているメーカーが、1度の救済だけで回復を制限される状況を避けられる可能性がある。

    たとえばホンダが2026年の第2評価期間でも4%以内の性能差に収まらなかった場合、再び開発機会とコストキャップ上の自由度を得られる可能性がある。そうなれば、さらなるアップグレード投入も認められることになる。

    ただし、この規則変更にはパワーユニット諮問委員会での特別多数の支持が必要となる。現在の5メーカーのうち4社に加え、FOMとFIAの支持が必要とされる。

    マイアミGPでは短期対策を投入
    ホンダはADUO規則の見直しを待つ一方で、短期的な改善作業も続けている。

    ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアである折原伸太郎は、日本GP後にアストンマーティンAMR26の1台をさくらの研究開発施設に残し、振動問題の理解を進めたことを明らかにした。

    「いくつか進展があり、マイアミ、そしてシーズン後半に向けてさらなる対策を実施できるようになりました」

    「現実的には、この進展がトラック上でのパワーユニット性能に目に見える影響を与えることはありません。ですから、ここで大きな前進を期待すべきではありません」

    ホンダにとって、マイアミGPでの対策はあくまで信頼性と問題理解に向けた一歩にとどまる。より大きな回復には、ADUO制度の運用見直しを含めた中長期的な開発機会が鍵になる。

  • 2026年F1レギュレーション変更 チームの“快適圏”を越えた合意と緊急調整

    2026年F1レギュレーション変更 チームの“快適圏”を越えた合意と緊急調整

    2026年F1レギュレーションを巡る混乱を受け、FIA(国際自動車連盟)はマイアミGPを前にパワーユニットと車体規則の一部を修正する手続きを進めている。FIAシングルシーター部門責任者のニコラス・トンバジスは、この議論の中で一部の関係者が「快適圏」から出る必要があったと認めた。

    今回の変更は、予選での全開ラップの復活、安全面で懸念されていた速度差、低速スタート、雨天時の出力レベルなどを対象としたものだ。

    背景には、2026年F1規則が導入からわずか3戦で大きな見直しを迫られたという異例の状況がある。

    トンバジス「一定の措置が必要なのは明らかだった」
    FIAは先週、マイアミGPを前に複数の規則修正を承認する方向で動いた。電気エネルギーの回生量と使用量を調整し、予選での全開走行を取り戻すとともに、安全面の懸念にも対応する狙いがある。

    ニコラス・トンバジスはPlanetF1.comなど招待メディアに対し、今回の協議について次のように説明した。

    「一定の措置を取る必要があることは、かなり明らかだった」

    「こうした議論の一部では、人々が快適圏から出る必要があることもかなり明らかだった」

    「安全のために実施されるものもあったので、人々はそれを理解していた。だが全体として言えば、人々はかなり建設的だったと思うし、到達したものは本物の合意水準だったと思う」

    安全上の強制ではなく合意で進んだ修正
    今回の規則変更は、パワーユニット諮問委員会で特別多数により可決された。F1コミッションに加え、技術諮問委員会やスポーティング諮問委員会などからの意見も反映された。

    FIAは、鈴鹿でのオリバー・ベアマンの50Gクラッシュを受け、安全上の理由で修正を押し通す権限も持っていた。しかし実際には、その権限を使う必要はなかった。

    「チームやパワーユニットメーカーとの会議は、当然ながら常にかなり複雑なものになる。人々は自然に、スポーツにとって何が最善かという見方と、自分たちのチームのパフォーマンスにとって何が最善かという見方を混ぜ合わせるからだ」

    「我々はそれが起きることを想定している。だから、どんな水準であれ合意に到達することは常に少し難しくなる」

    F1レギュレーション 国際自動車連盟

    焦点は予選、スタート、速度差、雨天時出力
    4月を通じた一連の会議では、規則変更が解決すべき課題が整理された。具体的には、予選、低速スタートの危険性、接近速度、そしてドライバー側から提起された雨天時の出力レベルの4項目だった。

    トンバジスは、合意に至るまでの流れを次のように語った。

    「オーストラリアの前にチーム代表との会議があり、その後、中国の後にも会議があった」

    「それから、テクニカルディレクター、チームの代表者、パワーユニットメーカーの代表者との技術会議がいくつかあった」

    「日本の後には、ドライバーたちとも良い議論があり、彼らからもフィードバックを得た」

    「それを基に、我々はパッケージをまとめた。およそ10日前には、妥当な合意水準を得られるだろうと分かった」

    「そして1週間前、再びチームとパワーユニットメーカーの責任者との会議を開き、このパッケージを提示した」

    「その一部は安全に関わるものだったため、承認水準を必要としなかった。その他のものは安全に関わるものではなかったため、パワーユニットメーカーの特別多数による承認が必要だった」

    「そして我々はこれらの承認を得た。現在はワールドカウンシルの手続きを通過しているところだが、承認され、マイアミで導入される可能性はかなり高いと確信している」

    マイアミGPから即時導入へ
    FIA世界モータースポーツ評議会は、規則変更を正式化するうえで最後の手続きとなる。承認されれば、今回の修正は既存規則の解釈を示すテクニカルディレクティブではなく、レギュレーションそのものの一部として即時に組み込まれる。

    マイアミGPはスプリント週末として行われるが、各チームが変更に対応できるよう、フリー走行1回目は通常より30分延長される予定だ。2026年F1規則は開幕直後から批判と擁護が交錯してきたが、今回の修正は、その不安定な出発点を現実的に調整する最初の大きな試みとなる。

    Source: PlanetF1.com

  • ナイジェル・マンセル F1新規則に苦言「オーバーテイクが完全に偽物」

    ナイジェル・マンセル F1新規則に苦言「オーバーテイクが完全に偽物」

    1992年のF1ワールドチャンピオンであるナイジェル・マンセルが、2026年F1レギュレーションによって生まれている新たなレース展開に強い懸念を示した。バッテリー回生と電力配分が追い抜きに大きく影響する現状について、マンセルは「完全に偽物」のように見えるオーバーテイクがあると指摘した。

    2026年F1では、新型V6ハイブリッド・パワーユニットと電力使用の比重増加により、リフト・アンド・コーストやエネルギー回生がレース展開の中心的要素となっている。

    これに対してはマックス・フェルスタッペンやフェルナンド・アロンソら現役ドライバーからも批判が出ており、ファンの反応も分かれている。

    マンセル「一部のオーバーテイクは完全に偽物」
    現役時代にアグレッシブなレーススタイルで知られたマンセルは、英オートスポーツ誌に対し、現在のF1で見られるオーバーテイクの一部に違和感を覚えていると語った。

    「これを言ったら撃たれるかもしれないが、残念ながら一部のオーバーテイクは完全に偽物だ」

    「素晴らしく見えるオーバーテイクもある。だが次のコーナーを出ると、片方のクルマが一気に吹き上がって抜き返し、もう一方のクルマは後ろに下がっていく。コンピューターが正しくないタイミングで追加パワーを与えているからだ。ドライバーがそれをコントロールしているわけではない。もし自分で選べるなら、そこで使ってはいなかったはずだ」

    マンセルは、ランド・ノリスが高速コーナー手前で意図せずオーバーテイクする形になった場面にも触れ、現在のF1ではドライバーの意思と実際のオーバーテイクが一致しないケースがあると指摘した。

    「ランドだったと思うが、『シケインに向かう高速コーナーで彼を抜きたかったわけではない。でも選択肢がなかった』と言っていた。コーナーを出たところで相手がリフトし、その後ストレートでまた一気に抜き返していく」

    「非常に慎重にならなければならない。私のことなどどうでもいい。だが世界中のファンのことを考えれば、多くのファンがかなり不満を持っているのを私は知っている。そして公平に言えば、私はそのファンたちに同意する」

    1980年代の燃費管理とは「まったく違う」
    F1のステファノ・ドメニカリCEOは最近、現在のリフト・アンド・コーストについて、1980年代にも同様の燃費管理があったと説明していた。しかし、1980年にF1デビューし、1990年代前半まで戦ったマンセルは、その比較に明確に異を唱えた。

    「いや、我々はそんなことはしていなかった。リフトしてコーストするというのは、誰かのスリップストリームに入っていて、オーバーテイクしないと判断したときにスロットルを少し抜くようなものだった。それは燃料を節約するための繊細な操作であり、賢いやり方だった」

    「コンピューターがクルマの走行を引き受け、バッテリーのために回生させるというのは、まったく別のものだ。我々は最速コーナーに入るところで50〜70km/hも減速するようなことはしていなかった。だから、それを比較するのはかなり無理がある」

    日本GPのベアマン事故は「運が良かっただけ」
    2026年F1日本GPでは、オリバー・ベアマンが低速走行していたフランコ・コラピントのアルピーヌに接近し、接触を避けた末に大クラッシュを喫した。ベアマンに怪我はなかったが、速度差の大きさは新レギュレーションの危険性を浮き彫りにした。

    マンセルは、この事故についても強い危機感を示した。

    「質問されたわけではないが、私はドライバーたちに大いに同情している。現時点では非常に危険だと思う。我々はすでに日本でひどい事故をひとつ免れた。あれは運が良かっただけだ。彼は本当にひどい怪我をしていた可能性があった」

    F1はマイアミGPを前に、予選での極端なリフト・アンド・コーストを抑えるための調整を導入している。しかし、エネルギー回生とソフトウェア制御による電力配分は2026年F1の根幹であり、マンセルの発言は、現在の議論が単なる懐古論ではなく、安全性と競技性の両面に関わる問題であることを示している。

  • FIA「メーカーの人質にはなれない」F1次期エンジン規則で主導権確保へ

    FIA「メーカーの人質にはなれない」F1次期エンジン規則で主導権確保へ

    FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスは、将来のF1パワーユニット規則について、メーカー側の意向に左右されすぎるべきではないと強調した。

    2026年F1レギュレーションで導入された内燃機関と電動要素の50対50配分は、当時の自動車業界における電動化の流れを反映したものだったが、開幕から数戦を経た段階で早くも次世代規則の議論が始まっている。

    F1では今週末のマイアミGPから小規模なルール修正が適用される一方、2031年以降を想定した次のパワーユニット規則では、持続可能燃料を前提にV8エンジンへ回帰する案にも勢いが出ている。

    トンバジスは、自動車業界の政治的・経済的な状況が変化したことを認めつつ、F1はメーカーの参入・撤退に脆弱な構造であってはならないと語った。

    電動化前提で決まった2026年F1規則
    2026年F1パワーユニット規則は、内燃機関とMGU-Kによる電動要素の出力配分をほぼ50対50に近づける方向で設計された。この変更は、自動車業界全体で電動化への圧力が強かった時期に合意されたものであり、アウディのF1参入を促す狙いも大きかった。ホンダも、この新しい規則を前提として正式復帰を決断した。

    しかし、新世代パワーユニットは期待されたほど成功しているとは言い難く、すでに次の規則セットに向けた議論が進んでいる。理論上、次の大きな変更は2031年まで導入されないが、パワーユニット開発には長いリードタイムが必要となるため、FIAは早期の議論が不可避だと見ている。

    トンバジスは月曜日に、当時と現在では状況が変わったと認めた。

    「まず第一に、政治的な状況が変わったのは事実だ」

    「現在のレギュレーションを議論していた当時、自動車メーカーは非常に深く関与していて、彼らはもう二度と新しい内燃機関を作ることはない、と我々に言っていた」

    「内燃機関を段階的に廃止し、何年までには完全に電動化する、というような話だった。もちろん、それは起こらなかった。世界的に電動化が重要であることを軽視するわけではないが、私が言ったほどには進まなかった」

    持続可能燃料は成果として評価
    トンバジスはその一方で、2026年F1規則によって完全持続可能燃料に移行した点は、見えにくいながらも重要な成果だと語った。

    「第二に、あまり頻繁に議論されない話だと思う。目に見えるものではないからだが、我々は完全持続可能燃料へ進んだ。そして、それはかなり良い成果だったと思う」

    F1はこれまで、ロードカーとの関連性を理由に電動化比率を高めてきた。しかし現在は、電動化への一方向の流れが以前ほど強くなくなり、持続可能燃料を軸に内燃機関へ再び重点を置く可能性が現実的な選択肢として浮上している。

    「メーカーの人質にはなれない」
    トンバジスは、将来のF1規則がメーカーの希望だけで形作られるべきではないと強調した。メーカーはF1にとって重要な存在だが、参入と撤退を繰り返す存在でもあるため、競技全体がその判断に依存しすぎることは避けなければならないという考えだ。

    「将来どこに向かいたいのかという点では、我々は世界のマクロ経済状況からこのスポーツを守る必要がある」

    「つまり、自動車メーカーが我々のスポーツに参加するかどうかを決めることの人質にはなれない、ということだ」

    「我々は彼らにこのスポーツの一部でいてほしい。それは間違いない。そのために、新しいメーカーを参加させるべく懸命に取り組んできた」

    「しかし、彼らが参加したくないと決めた場合に、我々が突然脆弱な立場に置かれるような状況にもなってはならない。そして、コスト削減にも取り組み続ける必要がある」

    この発言は、2026年F1規則がアウディやホンダといったメーカーの参入・復帰を促す一方で、競技側が長期的にメーカー主導の規則設計から距離を取る必要性を示している。

    国際自動車連盟 フォーミュラ1エンジン

    次期規則の議論は「すぐに始める必要がある」
    トンバジスは、2026年F1シーズンが始まってまだ数戦しか経っていない段階で将来の規則を議論することは奇妙に見えるかもしれないとしながらも、パワーユニット開発の時間軸を考えれば自然な流れだと説明した。

    「次のサイクルに向けて何かを変えるのであれば、我々は非常に早く議論を始める必要がある」

    「パワーユニットやエンジンなどを作るには、かなり長い時間がかかるからだ」

    「だから、始まって数レースしか経っていない段階でこうした問題を議論するのは少し奇妙に聞こえるかもしれないが、それが議論を行うべき自然なサイクルなのだ」

    2031年以降のF1パワーユニット規則では、V8エンジンへの回帰、持続可能燃料のさらなる活用、コスト削減、メーカー依存からの脱却が主要な論点になりつつある。

    大音量の内燃機関復活に懸念なし
    トンバジスは、V8時代の最終年だった2013年以降にF1を見始めた新しいファンが、より大きなエンジン音に慣れていないことを懸念しているかと問われると、問題にはならないとの見方を示した。

    「正直に言えば、懸念はない」

    「音が大きすぎる場合には、可能であれば音を下げるのは常に簡単だ。その逆、つまり音が小さすぎる場合に大きくする方がより難しい」

    「だから、過去のマシンがグランプリの日曜朝などに時折走ると、多くの人々の間にある種の感情を呼び起こす。私はそれが問題になるとは思わない」

    2026年F1規則は、電動化と持続可能性を両立させる狙いで導入された。しかし、実際の競技面ではバッテリー管理や速度低下といった課題が浮上し、マイアミGPからは修正が入る。FIAは当面の不具合に対応しつつ、次の時代に向けてF1がどの技術軸を選ぶべきかを早くも再検討し始めている。

  • アレクサンダー・アルボン F1新規則を評価も課題指摘「すべては解決しない」

    アレクサンダー・アルボン F1新規則を評価も課題指摘「すべては解決しない」

    2026年F1レギュレーションの調整を受け、ウイリアムズのアレクサンダー・アルボンがその効果について見解を示した。エネルギーマネジメントやスーパークリッピングを巡る議論が続く中、F1は4月のレース間インターバルを利用して複数の修正を実施している。

    こうした変更はオーバーテイクの増加や安全性の改善を狙ったものだが、ドライビングの本質が変化しているとの指摘も根強い。

    アルボンは前向きな評価を示しつつも、現行規則が抱える根本的な問題について慎重な見方を示した。

    エネルギー管理と安全性を巡る課題
    新世代マシンではエネルギーマネジメントの重要性が大きく増しており、ドライバーは単純に限界まで攻めるだけでは最速ラップを刻めなくなっている。

    特に速度差の拡大は深刻な問題とされており、鈴鹿でのオリバー・ベアマンのクラッシュはその危険性を象徴する出来事となった。低速車両を回避する中でコントロールを失い、バリアに激突する事故は、現在のレギュレーションがもたらす副作用のひとつとされている。

    こうした状況を受け、F1はブースト出力を+150kWに制限し、速度差の抑制を図る対策を導入した。

    スーパークリッピング対策の具体的変更
    予選で「全開で攻められない」というドライバーの不満にも対応が行われた。最大エネルギー回収量は7メガジュールに制限され、スーパークリッピングの発生時間を短縮する狙いがある。

    同時に最大出力は350kWへと引き上げられ、エネルギーの再充電時間短縮も図られた。スーパークリッピングとは、フルスロットル中にMGU-Kが回収モードへ切り替わり、パワーを吸収する現象を指す。

    これによりラップ中のエネルギー運用はよりシンプルになることが期待されているが、完全な解決には至っていない。

    アルボンの評価「正しい方向だが限界もある」
    アルボンは今回の修正について一定の評価を示している。

    「それは確かにポジティブだし、間違いなく正しい方向に進んでいる」

    一方で、すべての問題が解消されるとは考えていない。

    「すべての問題を解決できるのか?おそらくそうではない。でも、どれだけ解決できるかが重要だ」

    さらに、ドライビングの本質が変化している点にも言及した。

    「僕たちはカート時代から、とにかくできるだけ速く走ることをしてきた。でも今年は明らかに違う。アクセルを緩めた方が速くなる場面がある。そういう意味では、純粋なレースからは少し離れてしまっている」

    “純粋な速さ”と現代F1のギャップ
    今回のレギュレーション調整は、安全性と競争のバランスを取るための現実的な妥協とも言える。

    ただし、アルボンの指摘が示すように、現代F1は「いかに速く走るか」ではなく「いかに効率的に走るか」へと軸足を移しつつある。

    この方向性が長期的にファンやドライバーに受け入れられるのか──今回の修正は、その是非を占う過渡的なステップとなりそうだ。

  • ジョージ・ラッセル 新F1レギュレーションを擁護「ポジティブな要素は多い」

    ジョージ・ラッセル 新F1レギュレーションを擁護「ポジティブな要素は多い」

    2026年F1シーズンに導入された新レギュレーションとマシンをめぐり、ドライバー間で評価が大きく分かれている。その中で、メルセデスのジョージ・ラッセルは、批判的な声に対して一定の距離を取りつつ、現行F1のポジティブな側面を強調した。

    セルジオ・ペレスが「誰も理解していない」と指摘するなど複雑さが議論を呼ぶ一方で、ラッセルは競技としての魅力やレース内容の進化に注目している。

    ラッセルが語る新F1の“ポジティブ”
    ラッセルはBBCのインタビューで、現在のF1に対する評価がネガティブに偏りすぎていると指摘した。

    「僕たちは物事のポジティブな面を忘れて、ネガティブな部分ばかりに目を向けがちだ。でも、この新しいレギュレーションとマシンには多くの良い点がある」

    「個人的にはこのクルマをとても楽しんでいる。パワーユニットやエンジンは大きく変わったけど、最適化には少し調整が必要なだけだ」

    「それによって、より多く戦えるようになったし、レースもずっと接近戦になっている」

    現行のエネルギーマネジメント中心のマシンは扱いが難しい一方で、バトルの増加という明確なメリットがあると評価している。

    “ヨーヨー現象”への見解
    近年議論となっている“ヨーヨー現象”(抜いても抜き返される展開)についても、ラッセルは否定的ではない。

    「ルイスも言っていたが、カートレースではコーナーで抜けば次のコーナーで抜き返される。それを誰も“マリオカート”とは呼ばない。我々はそれを純粋なレースだと呼ぶ」

    「ドライバーが意図的に遅く走っているわけではない。FIAが修正しようとしているのは非常に複雑な部分で、ファンがすべてを理解する必要はない」

    「今回の変更によって、予選ではストレートで全開走行ができるようになり、エネルギー管理のためにアクセルを戻す必要もなくなる」

    マイアミGPから導入される調整によって、現行F1の弱点とされてきた“持ち上げ走行”の改善にも期待を示した。

    過去のF1との比較で見える変化
    さらにラッセルは、過去のF1と現在のF1を比較しながら、記憶のバイアスにも言及している。

    「20年前のF1を見ていたとき、エンジン音は素晴らしかったが、オーバーテイクはほとんどなかった」

    「確かに純粋なF1だったかもしれないが、レース自体は退屈だったと思う」

    「人は過去の良い部分だけを覚えて、今の悪い部分ばかりを見る傾向がある」

    また、過去のドライバーとの会話を引き合いに出し、技術的な課題は時代ごとに存在してきたと説明した。

    「80年代や90年代のドライバーは“ブーストボタン”で300馬力を追加できたが、ストレートの終わりには燃料が尽きていたと言っていた」

    「問題は昔から常に存在していた。今は形が違うだけだ」

    新時代のF1は確かに複雑さを増しているが、その裏でレースの競り合いという本質的な魅力はむしろ強まっている。ラッセルの発言は、議論がネガティブに傾きがちな現在のF1像に対し、別の視点を提示するものとなっている。

  • セルジオ・ペレス「誰も理解していない」 2026年F1規則に困惑拡大

    セルジオ・ペレス「誰も理解していない」 2026年F1規則に困惑拡大

    2026年F1レギュレーションと、マイアミGPに向けた調整内容を巡り、ドライバーや関係者の間で混乱が広がっている。エネルギーマネジメントの変更を含む最新の調整が発表されたものの、その複雑さはむしろ増しているとの指摘が相次いでいる。

    FIAは最大回生量を8MJから7MJへ削減し、いわゆる“スーパクリップ”のピーク出力を350kWに引き上げるなどの修正を提示した。しかし、こうした変更が理解しづらい構造そのものを改善するには至っていないとの見方が強い。

    ドライバーと関係者が口を揃える「理解不能」
    元F1ドライバーのクリスチャン・クリエンは、この状況に警鐘を鳴らした。

    「これを読めばわかるが、特にFIAの英語で書かれた内容は、もはやファンには理解できないものになっている」

    キャデラックF1のセルジオ・ペレスも同様の見解を示した。

    「今のF1は間違いなくこれまでとまったく違うものだし、現実として誰も理解していない。エンジニアも、僕たちドライバーもだ」

    「昔のように楽しいクルマではなくなっているのは事実だ。前のクルマより80〜90km/hも速く走っているのに、なぜそうなっているのか分からない瞬間がある」

    さらに、マクラーレンのオスカー・ピアストリも困惑を認めている。

    「自分より賢い誰かに説明してもらう必要があると感じている」

    複雑化への懸念と“理解不要論”の対立
    クリエンは、F1が複雑になりすぎるリスクを指摘する。

    「すべてがかなり抽象的になっている。視聴者にとって複雑すぎるものにしないよう注意しなければならない」

    一方で、すべてのドライバーが問題視しているわけではない。メルセデスのジョージ・ラッセルは、こうした批判に同意しない姿勢を示した。

    「僕はまったくその意見には同意しない。個人的にはこのクルマをとても楽しんでいる」

    「これは非常に複雑な細部の話であって、正直なところファンがすべてを理解する必要はない」

    さらにラッセルは、マイアミGPでの調整が状況改善につながるとの見通しも語った。

    「このレースからは、予選ラップ中のストレートでは常にフルスロットルで走れるようになるし、エネルギー管理のためにアクセルを戻す必要もなくなる」

    マイアミでの適応時間拡大が意味するもの
    FIAは今回の変更に対応するため、マイアミGPのフリー走行1回目を90分に延長する措置も決定した。これはチーム側の適応時間を確保する狙いがあるが、裏を返せば現行のレギュレーションがいかに扱いづらいものであるかを示している。

    ドライバー自身が「理解できない」と口にする状況は異例であり、2026年F1が抱える構造的な課題は依然として解消されていない。今後の調整が、競技としての分かりやすさと魅力をどこまで取り戻せるかが問われている。

    Source: GMM

  • ホンダF1に逆風?2026年F1レギュレーション修正で不利拡大の可能性

    ホンダF1に逆風?2026年F1レギュレーション修正で不利拡大の可能性

    2026年F1レギュレーションに対する不満を受け、FIAはマイアミGPからエネルギーマネジメントに関する重要な修正を導入する。スーパークリッピング時間の短縮や回生レートの引き上げなど、これまで問題視されてきた“奇妙な減速”や速度差の是正を狙った措置だ。

    しかし、この変更はすべてのメーカーにとって同じ意味を持つわけではない。特にパワーユニット性能に依存する回生領域では差が顕在化する可能性があり、ホンダにとってはむしろ不利が拡大するとの見方も出ている。

    マイアミで導入される主な変更点
    スーパークリッピング(エネルギー回収)時間は1周あたり2〜4秒に短縮され、ピーク回生レートは250kWから350kWへと引き上げられる。また、バッテリー上限は8MJから7MJへ引き下げられた。

    これらの変更は、これまで問題視されてきたリフト・アンド・コーストの頻発や、速度差の拡大といった課題の軽減を目的としている。

    ホンダにとっての懸念点
    一方で、この「350kW回生」という変更がすべてのメーカーにとって有利とは限らない。

    ベテランジャーナリストのマーク・ヒューズは、Motor Sport Magazineのポッドキャストで次のように指摘している。

    「すべてはリアアクスルの逆トルク低減に関係していて、それが回生の速さを決める。だからホンダにとっては、さらに不利になる可能性がある」

    新レギュレーションではMGU-Hが廃止されており、回生とエネルギー制御の負担はMGU-Kに集中している。これにより、ターボラグ補填や出力制御も同時に担う必要がある。

    その中で、内燃エンジン(ICE)の性能が重要な鍵となる。

    ICE性能差が生む影響
    現在、ホンダのICEはメルセデス勢と比較して出力面で劣ると見られている。

    出力が低いエンジンは、回生に使えるエネルギーも限られる。その結果、350kWという高い回生レートに到達するまでに時間がかかる、あるいは維持できない可能性がある。

    つまり、同じバッテリー量を充電するために、より長いスーパークリッピング時間が必要となる可能性がある。

    これは本来「短縮」を狙った規則変更の意図と逆行する。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダF1

    勢力図への影響とメルセデス優位の可能性
    この変更は、結果として各メーカーに異なる影響を与える。

    メルセデスのように高出力ICEを持つ陣営は、350kWで効率的に回生できるため、短時間でバッテリーを充填できる。一方でホンダや、トルクに余裕のないメーカーは同じ恩恵を受けられない可能性がある。

    つまり、今回の調整は“中立的な修正”ではなく、勢力図を動かす要因になり得る。

    それでも一定の改善は期待される
    ただし、すべての変更が偏った影響をもたらすわけではない。

    バッテリー容量の削減(8MJ→7MJ)や、エネルギー展開制御の見直しは、メーカーを問わずリフト・アンド・コーストの減少に寄与する見込みだ。

    また、ブースト制限の調整も、鈴鹿でのオリバー・ベアマンのクラッシュのような危険な速度差の抑制を狙ったものだ。

    結果として、今回の規則変更は一定の改善をもたらしつつも、その中核である「回生レート引き上げ」は、チーム間の格差を広げる可能性を孕んでいる。実際の影響は、マイアミでの走行を経て初めて明らかになることになる。