カテゴリー: ピレリ

  • 2025年F1 カナダGP:ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット&タイヤ解説

    2025年F1 カナダGP:ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット&タイヤ解説

    2025年F1 カナダGPが、6月13日(金)~6月15日(日)の3日間にわたってジル・ヴィルヌーヴ・サーキットで開催される。公式タイヤサプライヤーのピレリが2025年のF1世界選手権 第10戦 カナダグランプリのタイヤについて解説した。

    カナダGPは今季第10戦目であり、マイアミに続く北米での2戦目となる。モントリオールはF1カレンダーの定番の一つであり、長年にわたりこの地域唯一の開催地だった。

    地元ファンの熱狂により、このグランプリには常に特別な熱気があり、ドライバーやチームからも人気を集めている。開催週にはケベック州の都市全体がグランプリ関連のイベントで活気づく。

    表彰式では、今年もトップ3フィニッシャーにピレリがデザインした特別仕様の「ピレリ・ポディウム・キャップ」が贈られる。デニス・デコヴィッチが手がけたこのキャップはブラウンを基調としたデザインで、ピレリ・デザインによるこの第7弾モデルはすでに専用のEコマースサイト(https://store.pirelli.com/)にて販売されている。

    カナダGP F1
    タイヤの構成
    今季3度目となる最も柔らかい3種類のコンパウンドが使用される。イモラとモナコに続き、C6が登場し、C5がミディアム、C4がハードという構成となる。これは昨年のC3、C4、C5という構成よりも1段階柔らかい選択だ。

    今回の週末では、すでに2戦で得られたC6に関する情報とデータを活用することができる。ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットでは、タイヤにかかる横方向の力は中~低程度であり、縦方向の力はそれよりやや厳しいが、特に高いわけではない。これは、強い減速と鋭い加速が交互に繰り返されるレイアウトに起因している。

    路面は非常に滑らかで摩耗性も低く、グランプリ開催週末以外にレースで使用されることはない。特に金曜のフリー走行では「グレイニング」が発生する可能性があるが、路面がゴムで覆われていくにつれ、影響は小さくなる。ラップタイムはセッション中だけでなく日を追うごとにも急激に短縮されていく。

    加えて、このモントリオールで特徴的なのが予測不能な天候であり、過去にも幾度となくレース展開を混乱させてきた。気温の変化が激しい点もこのイベントの特徴だ。

    カナダGP F1 2025年のF1世界選手権カナダグランプリ

    2024年を振り返る
    昨年のレースはウエットコンディションでスタートし、18人のドライバーがインターミディエイトタイヤを選択。一方、ハースの2台はフルウエットを履いてスタートし、序盤の見せ場を提供した。特にマグヌッセンは14番グリッドからわずか3周で4番手に浮上した。

    しかし、路面は急速に乾いていき、2台は最初にピットインしてインターミディエイトへ交換せざるを得なかった。後半では、雨と晴れが交互に訪れる中、再びグリーンバンドのCinturato(インター)が鍵となった。

    1回目のセーフティカー導入時(開始から約40分)に大多数が2セット目のインターへ交換する中、オコン、角田裕毅、ボッタスの3人は、タイヤを持たせてドライコンディションまで耐えるというギャンブルに出た。サウバーのボッタスは42周目まで粘り、アルピーヌのオコンとレーシングブルズの角田裕毅はさらに2周引っ張った。この3人のみが1ストップで完走した。

    スリックが使えるようになってからは、14人がミディアム(ウォームアップ性能を重視)、5人がハード(摩耗への耐性を優先)を選択。これはフリー走行中にミディアムがグレイニングの傾向を見せたことも影響していた。

    カナダグランプリ F1

    サーキット情報
    ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは、サン・ローラン川に浮かぶ人工島ノートルダム島に建設されたセミパーマネントのサーキットで、かつて1967年の万国博覧会や1976年のモントリオール五輪の競技会場でもあった。

    昨年全面的に再舗装されたが、路面の低摩耗性や低グリップという特性はそのまま残っている。全長は4.361km、左右合計14のコーナーを持ち、ストレートとタイトなシケインが連続する「ストップ・アンド・ゴー」型レイアウトとなっている。ブレーキング時の安定性と加速時のトラクションが重要となる。

    DRSゾーンは3箇所設けられており、特に最終ストレートの終わりにあるシケイン進入はオーバーテイクポイントとして知られる。その手前のDRSアクティベーションを活かして進入するこのコーナーでは数々のアクシデントが発生しており、1999年にはデイモン・ヒル、ミハエル・シューマッハ、ジャック・ヴィルヌーヴの3人の世界王者が壁にクラッシュしたことから「ウォール・オブ・チャンピオンズ」の異名を持つ。

    カナダグランプリ 2025年のF1世界選手権

    キーワード:水
    カナダGPはサン・ローラン川に囲まれており、1976年五輪で使用された人工ボートコースに隣接しているが、F1においても最も雨の影響を受けやすいレースの一つだ。昨年のレースでも、インターミディエイトとフルウエットの両方が使われた。

    各グランプリ週末には、ピレリは各ドライバーにインターを5セット、フルウエットを2セットずつ供給する。インターは時速300kmで1秒間に最大35リットルの水を排水でき、フルウエットは最大85リットルの排水能力を持つ。

    2025年仕様のフルウエットは、トレッドブロックの剛性を高め、熱を抑える設計にアップデートされている。また、現代F1マシンの高いダウンフォースに対応するため構造も変更され、オーバーヒートや熱劣化のリスクが抑えられている。開発テストによって性能も向上し、インターとの差がやや縮まった一方で、排水性能は従来と同様に保たれている。

    なお、2023年以降、フルウエットタイヤのプリヒート(加熱)は禁止されており、インターは60℃で加熱が可能だ。

    統計データ
    今年で第54回目を迎えるカナダGPは、1967年に初開催された。これまでに開催された場所はモントリオール以外に、トロント近郊のモスポート、モントランブランのスキーリゾートがある。

    最多勝利数はミハエル・シューマッハとルイス・ハミルトンが7勝で並び、ポールポジション獲得数も両者が6回で最多。ファステストラップではシューマッハとキミ・ライコネンが4回で最多だが、表彰台回数はシューマッハが12回で単独最多となっている。最多勝チームはマクラーレンの13勝で、以下フェラーリ(12勝)、ウィリアムズ(7勝)が続く。

    なお、2011年のカナダGPは、4時間4分39秒537というF1史上最長のレースとして記録されている。セーフティカー6回が導入され、さらに激しい豪雨による長時間の赤旗中断もあり、この年までレース時計が停止しないルールが適用されていたことがその背景にある。このレースでは、37周目に最後尾まで落ちたジェンソン・バトンがマクラーレンで逆転優勝を飾っている。

  • 角田裕毅 バルセロナで2026年F1タイヤテスト参加 150周を走破

    角田裕毅 バルセロナで2026年F1タイヤテスト参加 150周を走破

    角田裕毅はバルセロナで行われたピレリの2026年F1タイヤ開発テストに参加し、150周を走破した。

    レッドブルのマシンを用いて2日目に走行した角田裕毅は、1分16秒839のベストタイムを記録し、メルセデスから参加したアンドレア・キミ・アントネッリとともに、最も硬いコンパウンドを中心とした評価走行を行った。

    ピレリは2026年に導入予定のF1タイヤに向けた開発プログラムの一環として、カタロニア・サーキット(バルセロナ)で2日間のテストセッションを実施した。タイヤへの負荷が大きいこのトラックを舞台に、各種構造と最も硬いドライコンパウンドの比較評価が行われた。

    2日目:角田裕毅とアントネッリが150周ずつ走行
    2日目となる水曜日には、メルセデスAMGペトロナスF1チームからアンドレア・キミ・アントネッリ、オラクル・レッドブル・レーシングから角田裕毅が参加。両者はそれぞれ150周を走破し、イタリア人ルーキーのアントネッリは1分14秒903の最速タイムを記録、角田は1分16秒839をマークした。

    角田裕毅 F1 タイヤ

    ピレリ・モータースポーツディレクターのマリオ・イゾラは、以下のようにコメントしている。

    「今回のテストは、我々の開発プログラムの決定的な段階に差し掛かっていることを示している。構造のホモロゲーションは9月1日までに、コンパウンドの決定は12月1日までに行う必要がある。ここバルセロナでは最も硬いコンパウンドの評価を行い、7月のイギリスGP後に予定されているシルバーストンでのテストで、そのデータを検証する予定だ。トリプルヘッダー直後にテストに協力してくれた3チームとドライバーたちに心から感謝している」

    初日:ラッセルとハジャーが合計282周を走行
    火曜日の初日には、メルセデスからジョージ・ラッセル、レーシングブルズからアイザック・ハジャーが参加。両者はそれぞれのチームの2024年型マシンをベースにした「ミュールカー」を使用し、ラッセルは136周(ベスト1分16秒920)、ハジャーは146周(ベスト1分18秒334)を記録した。

    特にラッセルはスペインGP直後にもかかわらず精力的な走行をこなし、ハジャーも3戦連続ポイント獲得中の勢いを活かして着実なデータ収集に貢献した。

    アイザック・ハジャー F1 タイヤ

    次回テストは6月19・20日、フェラーリがウェットタイヤを担当
    次回の2026年向けピレリ開発テストは6月19日と20日にフェラーリの本拠地であるフィオラノで実施される予定で、ここではウェットタイヤのプロトタイプが評価される見込みだ。

  • 角田裕毅 F1スペインGP後にレッドブルとピレリの2日間テストで巻き返しへ

    角田裕毅 F1スペインGP後にレッドブルとピレリの2日間テストで巻き返しへ

    角田裕毅は今週、F1スペインGPでの失望を受け、状況の立て直しと問題の洗い出しに貴重な時間を費やすことができた。日本人ドライバーは水曜にかけて、バルセロナ=カタルーニャ・サーキットで2日間にわたる走行を実施。1日はレッドブルと、もう1日はピレリとのテストに参加した。

    ここ最近、角田裕毅は厳しいレースが続いており、スペインでの予選では最下位に沈み、マシンのペース不足に「困惑した」と語った。

    日曜の決勝では、レッドブルがRB21に変更を加えたことでピットレーンからのスタートとなったが、レースでは順位を大きく挽回することはできず、最終的に14位でチェッカーを受けた。終盤のセーフティカーがレース展開を狂わせ、ポイント獲得のチャンスも潰えてしまった。

    それでも、最終的に角田裕毅が最大の懸念としていたのは、RB21の深刻なペース不足だった。

    「今回のグランプリでは、どういうわけかペースが大きく落ち込んでしまって、自分のパフォーマンスを発揮することができなかったのが本当に残念です」

    「正直、このグランプリに関しては、本当に本当に奇妙な感覚でした」

    レッドブルRB19を使用したターゲットテスト
    火曜日には、レッドブルの2023年型マシンRB19を改修した車両を用いた「過去車両テスト(TPC)」を1日かけて実施。通常のレース週末とは異なり、TPCテストではセッティングの自由度が高いため、レッドブルは角田裕毅がマシンのパフォーマンスレンジをより深く理解し、セットアップのばらつきを解消するうえで重要な機会と位置付けている。

    このテストは当初、4月にシルバーストンで予定されていたが、天候不良で中止されていたものの代替実施となった。レッドブルは当時、貴重な走行距離を無駄にしないため、天候が悪化した中での実施を見送っており、今回のスペインでの晴天を生かす形で挽回が果たされた。

    角田裕毅 レッドブル F1

    ピレリの2026年タイヤ開発と将来に向けた準備
    水曜日も引き続き角田裕毅はサーキットに残り、今度はピレリの2026年タイヤ規定に向けた開発プログラムに参加した。

    この日はRB19をベースにした2026年仕様のミュールカーをドライブ。『The Race』の報道によれば、メルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリと共に、将来のレギュレーションに向けたコンパウンド評価を行ったという。

    この種のテストは、チームがタイヤ開発の名目でパフォーマンス上の利得を得ることがないよう厳しく規制されているが、それでも角田裕毅にとってはレッドブルのマシンで多くの周回を重ね、感覚を取り戻す貴重な機会となった。

    これらのテストの結果が今季のパフォーマンスに直接影響を与えることはないが、特に自由度の高いTPCセッションで得られたデータは、ここ最近角田裕毅を苦しめていた不振の原因をレッドブルが特定し、解決するための重要な材料となる可能性がある。

  • 2025年F1 スペインGP 決勝:持ちタイヤ数&タイヤ戦略予想

    2025年F1 スペインGP 決勝:持ちタイヤ数&タイヤ戦略予想

    2025年F1 スペインGP 決勝で各ドライバーが使用可能な持ちタイヤ数と予想されるタイヤ戦略を公式タイヤサプライヤーのピレリが発表した。

    今週末、パパイヤカラーに彩られたマクラーレン陣営には明らかに自信がみなぎっていた。そして土曜午後、オスカー・ピアストリとランド・ノリスがそれを証明するような圧巻の予選パフォーマンスを披露し、マクラーレンにとってバルセロナで1998年以来となるフロントロー独占をもたらした。

    だが先週末とは異なり、このグランプリの勝敗は土曜日では決しない。最後まで勝負は続く。まさに「ゲームは始まったばかり」だ。

    ポールポジションは有利、だが勝敗を決めるのは戦略
    長年の統計では、バルセロナではポールポジションからの勝利が非常に多い。34回中24勝、さらに5回のリタイアを含めれば、ポールスタートの有利さは揺るがない。

    しかし近年の傾向として、このレースは「戦略で勝つ」レースになっている。

    タイヤのデグラデーション(熱劣化)は非常に高く、マルチストップが主流。アンダーカットは強力だが、それ以上に重要なのは「規律」、つまりロングランでタイヤ差を築くことにある。スタート位置よりも、適切な戦略こそがスペインGPを制する鍵だ。

    2025年のF1世界選手権 スペインGP

    昨年はどうだった?
    スペインGPの特徴は、デグラデーションが高いにもかかわらず、ハードタイヤ(C1)があまり使われない点にある。C1はハイ~超高速コーナーでのグリップが不十分で、滑りやすく、C2と同じくらい劣化が早い割にラップタイムも出ないため、2024年はほとんど使われなかった。

    昨年の上位3人――マックス・フェルスタッペン、ランド・ノリス、ルイス・ハミルトン――はいずれも「ソフト>ミディアム>ソフト」の2ストップ戦略を採用。優勝したフェルスタッペンは17周目と44周目にピットイン、3位のハミルトンはそれぞれ1周早い16周目と43周目にストップした。

    2位のノリスは少し異なる戦略を採り、1回目のスティントを長く引っ張ってタイヤ差を築き、23周目にピットイン。その後のペース優位を活かして35周目に当時のリーダー、ジョージ・ラッセルをオーバーテイクした。

    ラッセルは15周目に最初のストップを済ませた後、36周目にハードタイヤに交換する戦略に切り替えた。この「ソフト>ミディアム>ハード」のパターンは他のドライバーにも採用され、ラッセルは4位、カルロス・サインツは6位、ピエール・ガスリーとエステバン・オコンはそれぞれ9位と10位でフィニッシュした。

    シャルル・ルクレール(5位)とピアストリ(7位)はノリスと似た構成でレースを組み立て、唯一3ストップを選択したのは8位のセルジオ・ペレスだった。ペレスは11番手スタートから「ソフト>ソフト>ミディアム>ソフト」で13・31・49周目にストップを行い、各スティントをほぼ均等に分けた。

    今年の最速戦略は?
    金曜のロングラン走行からは、昨年と似た傾向が見て取れた。ハードタイヤは依然としてグリップ不足とバランス難があり、ミディアムとソフトの方がレース向きだと評価されている。

    ピレリのモータースポーツ・ディレクター、マリオ・イゾラは「ハードは滑りやすく、オーバーヒートもする」と指摘。「ミディアムと同じようにオーバーヒートするが、グリップレベルが低い」という。したがって、今年も「ソフト>ミディアム>ソフト」が基本戦略となりそうだ。ピレリのシミュレーションによると、理想的なピットイン周回は13~19周目と42~48周目。

    スペイングランプリ

    上位勢に残された選択肢は?
    トップ10のほとんどは、ミディアムとハードの新品が1セットずつしか残っておらず、基本的には上記の戦略にロックされている。

    もしソフトタイヤの劣化が予想以上に早い場合や、アンダーカットの効果が極端に大きいと判断された場合には、2回目のスティントにハードを投入する「ソフト>ミディアム>ハード」も選択肢に入る。この場合のピットウインドウは10~16周目と32~38周目。

    ハードは速さでは見劣りするが、持ちは良い。イゾラは「ソフトのデグラデーションと摩耗には不確定要素がある」とし、「特にフロントレフトの摩耗が高く、走行距離には限界があるが、その限界はセッティングやマネジメント能力、路面の進化にも左右される」と話す。

    ただし、ルクレールにはもう1つの選択肢がある。トップ10の中で彼だけがミディアムを2セット残しており(後方のハース勢も同様)、7番手スタートから早めに動いてアンダーカットを仕掛ける可能性がある。この場合、2回目のストップを36~42周目に早める戦略が適している。

    スペインGP F1

    後方グリッドの戦略は?
    この時点で例年であれば「奇跡を狙う1ストップ戦略」が話題に上がるが、今年の路面温度・舗装の荒さ・タイヤへの負荷を考慮すると、1ストップはほぼ不可能。3ストップも理論上はやや遅いとされる。

    そのため後方勢は、何かしら「違うことをする」しかない。中でも有力とされるのは「ミディアム>ハード>ソフト」の順番で走る戦略だ。第1スティントは16~22周、第2スティントは47~53周まで引っ張り、最後はソフトで一気に攻める構成。

    この戦略は理論上は最速ではないが、最後尾スタートの角田裕毅が展開を動かすために選択する可能性もある。1列前からスタートするカルロス・サインツも、大観衆の声援を背に何か奇跡を起こそうとするかもしれない。

    天気は?
    予報では、決勝はドライ確定。雨の可能性はゼロとされている。ただし予選時のように、山の上には不穏な雲がかかっていたことも事実。

    決勝で影響しそうなのは「熱」と「風」だ。路面温度は48℃に達する見込みで、タイヤのデグラデーションを一層加速させるだろう。さらに南風が時速35~40kmの突風を吹かせる見込みで、これは観客にとってはありがたいが、ドライバーにとっては悪夢。特に高速右コーナーでの追い風は、リアタイヤのスライドとオーバーヒートを誘発する。

    エンジニアから「リアタイヤをいたわれ」と言われる中で、どこまで風と熱に耐えて走り切れるか。タイヤマネジメントと戦略眼、そして冷静な判断が問われる90分になりそうだ。

    2025年のF1世界選手権 スペイングランプリ

  • 2025年F1 スペインGP:バルセロナ=カタロニア・サーキット&タイヤ解説

    2025年F1 スペインGP:バルセロナ=カタロニア・サーキット&タイヤ解説

    2025年F1 カナダGPが、5月30日(金)~6月1日(日)の3日間にわたってバルセロナ=カタロニア・サーキットで開催される。公式タイヤサプライヤーのピレリが2025年のF1世界選手権 第9戦 スペイングランプリのタイヤについて解説した。

    今季2回目のトリプルヘッダーは、1991年から毎年スペイングランプリを開催してきたクラシックなF1サーキット、バルセロナ=カタロニア・サーキットで締めくくられる。

    このコースは技術的にあらゆるチャレンジが詰まった「最も完成された」トラックのひとつであるため、以前は最も人気のあるテストコースだった。つまり、「ここで速ければどこでも速い」とされていた。

    今週末には、ウイングの柔軟性に関するFIAの新たなテクニカルディレクティブ(技術指令)が適用される。これにより、マシンのパフォーマンスに影響が出る可能性があると考える専門家もいる。さらに、バルセロナはチームが大型アップグレードを持ち込む伝統的な場でもあり、厳しいコースでの実地評価の意味合いもある。

    また、スペイングランプリの表彰台に上がったドライバーには、カタルーニャ地方の陽光にインスパイアされたオレンジ色のスペシャルエディションの「ピレリ・ポディウムキャップ」が授与される。これは、デニス・デコヴィッチがデザインしたピレリ・デザインによる今季6種類目の限定キャップで、専用ECサイト(https://store.pirelli.com/)にてすでに販売中だ。

    スペインGP

    タイヤのコンパウンド
    このコースはマシンにとってもタイヤにとっても非常に厳しい。直近2戦ではピレリのラインナップで最も柔らかい3種類が使われていたが、バルセロナでは例年通り最もハードな組み合わせ、すなわちC1(ハード)、C2(ミディアム)、C3(ソフト)が選ばれている。これらは昨年から改良されており、特にC2の性能が見直されたことで、3種間の性能差はより均等になった。このため、レースではミディアムとソフトが選ばれる可能性が高い。

    ターン3や最終2コーナーなどの高速コーナーにより、タイヤには中~高レベルの横方向の力が加わる。右コーナーが多いため、特にフロント左タイヤに大きな負荷がかかる。

    現在ではシーズン中のテストやプレシーズンテストの機会が減ったため、チームはこのサーキットでの走行を頻繁には行わないが、それでもバルセロナは依然として重要な評価の場だ。このため、ピレリは2024年9月、2025年1月に続き、6月3日(火)と4日(水)にもここで今後の開発用タイヤのテストを実施する。メルセデスが両日協力し、レーシングブルズが初日、レッドブルが2日目に参加する。

    スペイングランプリ

    2024年の戦略
    モントメロでは長年にわたり2ストップ戦略が主流となっており、昨年もその流れは変わらなかった。アレックス・アルボン(ピットレーンスタートでミディアム)を除く全ドライバーが第1スティントにソフトを選択し、そのうち12名が3種類すべてのコンパウンドを使用。最後のスティントでは多くがハードを投入した。なお、トップ3のマックス・フェルスタッペン、ランド・ノリス、ルイス・ハミルトンは、最終スティントに2セット目のソフトを使ってフィニッシュしている。

    バルセロナ=カタロニア・サーキット

    サーキット情報
    1991年の初開催以来、このサーキットは特に最終セクションで幾度も改修され、オーバーテイク機会の創出が試みられてきた。2007年には最終コーナー前に極端に遅いシケインが追加され、ラップタイムは4秒以上も増加。だが2023年にはこの変更が撤回され、最終2コーナーが再び連結されてハイスピードでのピットストレート進入が可能に。これはF1カレンダーでも有数の長さを誇るストレートのひとつだ。

    レースは1周4.657kmのコースを66周で争われ、コーナー数は14(右8、左6)。中でもターン3と9は、最も高いダウンフォースが必要とされる高速右コーナーだ。

    2025年F1 スペインGP

    キーワード:路面特性
    F1マシンにおけるタイヤのグリップレベルを測定することは、イベントに向けた準備において極めて重要であり、チームだけでなくタイヤサプライヤーにとっても性能と摩耗の観点から欠かせない。

    ピレリは毎戦初めにトラック路面の特性を測定し、そのデータをシミュレーションモデルに反映させて精度向上を図っている。各サーキットで代表的な地点を3D撮影し、長年のデータを蓄積することで、表面の状態、すなわち「ミクロ粗さ」と「マクロ粗さ」の変化を把握している。

    ・ミクロ粗さは、路面を構成する石粒子そのもののザラつき具合。数値が高ければ粒子が粗く、低ければ滑らか。

    ・マクロ粗さは、ミリ~センチ単位で目視・体感できる凹凸(小さなバンプやへこみ)の程度。高ければ粒子の間に大きな隙間があり、タイヤの接地性に影響を与える。逆に低ければ非常に滑らかな表面を意味する。

    2025年F1 スペイングランプリ

    統計コーナー
    今年で通算55回目を迎えるスペイングランプリ。現在のバルセロナ=カタロニア・サーキットの前には、4つの異なる会場で開催されており、その中にはカタルーニャ市内のストリートコースも含まれている。ペドラルベスでは1951年と1954年、モンジュイック・パークでは1969~1975年の奇数年に開催。その他、マドリード郊外のハラマでは1968年、1970年、1972年、1976~1979年、1981年、アンダルシアのヘレスでは1986~1990年に開催された。

    スペインはヨーロッパGPも7回開催しており、うち2回がヘレス(1994年と1997年)、残り5回がバレンシア市街地(2008~2012年)だった。

    最多勝はミハエル・シューマッハとルイス・ハミルトンの6勝。シューマッハは1994年のヘレスでのヨーロッパGP勝利も含め、スペインでの最多勝記録保持者だ。ポールポジション回数はシューマッハが7回、ハミルトンが6回。表彰台回数でも両者がトップ(12回)。チームではフェラーリがスペイングランプリで12勝、バレンシアでのヨーロッパGPも含めると14勝。さらにポール14回、表彰台38回と、いずれも最多記録を保持している。

    スペイングランプリで初優勝を挙げたドライバーは、ニキ・ラウダ(1974年)、ヨッヘン・マス(1975年)、パストール・マルドナド(2012年)、そしてマックス・フェルスタッペン(2016年)の4人。

  • 2025年F1 モナコGP 決勝:持ちタイヤ数&タイヤ戦略予想

    2025年F1 モナコGP 決勝:持ちタイヤ数&タイヤ戦略予想

    2025年F1 モナコGP 決勝で各ドライバーが使用可能な持ちタイヤ数と予想されるタイヤ戦略を公式タイヤサプライヤーのピレリが発表した。

    F1モナコGP予選では、ランド・ノリスは今季2度目のポールポジションを獲得したが、それを実現するには、モナコ市街地コースでこれまでどのマシンよりも速く走る必要があった。シャルル・ルクレールは最前列の“内側”を逃し落胆していたが、チャンピオンシップリーダーであるオスカー・ピアストリの前には出ることができた。

    イモラで勝利を挙げたばかりのマックス・フェルスタッペンにとって、P5(ルイス・ハミルトンのペナルティによりP4に繰り上がり)はさほど話題にならない結果だが、メルセデス勢がP14とP15に沈んだことを思えば、ずっとマシだったと言えるだろう。彼らにとっては、記憶から消し去りたいような予選セッションだった。

    モナコは評判ほどには“隊列走行”ではないが、通常の年であれば、グリッド後方に沈んだメルセデスや他のチームにとって、この状況は相当に深刻だったはずだ。だが今年のモナコには、新しい要素が加わっている。

    おなじみの戦略はお蔵入りとなり、タイヤ規定の変更によって、不確実性が持ち込まれた。日曜日のレースで何が起きるか、誰にも分からない。ピレリのモータースポーツディレクター、マリオ・イゾラは土曜の夜にこう語った。「明日何が起きるか分かる人がいたら、それは戦略エンジニアじゃない、天才だ」

    モナコGP F1

    モナコ2025のルールとは?
    ドライコンディションのレースでは、ドライバーは最低2回のピットストップが義務づけられている。さらに、3種類のスリックタイヤのうち少なくとも2種類を使用しなければならない。

    このルールが発表されると、F1チームは例によって抜け道を探し始めた。予想通り、赤旗中のタイヤ交換は有効なピットストップとしてカウントされる。一方で、フォーメーションラップ終了時のピットインは2回のストップには含まれず、使用済みのタイヤを再装着しても1回とは見なされない。ただし、これらの行為は従来通り認められている。

    昨年はどうだった?
    2025年の新ルールを踏まえると、昨年のモナコGPはあまり参考にはならないが、なぜ変化が必要だったのかを示す良い例ではある。

    昨年のレースは、セルジオ・ペレスと2台のハースが1周目に激しく衝突して赤旗中断となった。赤旗中に、ミディアムでスタートしたドライバーはハードに、ハードでスタートしたドライバーはミディアムに交換。トップ5を含む多くのマシンは、その後77周を無停止で走り切った。

    後方の数台は、後続とのギャップが十分に開いたタイミングで再度ピットインし、ファステストラップを狙った。

    今年の各チームのタイヤ残数は?
    今週末、3階建てのガレージから白煙が立ち昇っているのを見かけたなら、それはチームの戦略担当者の脳から出ている蒸気かもしれない。それほどまでに考慮すべき変数が多く、例年のようなタイヤ配分の共通理解は完全に崩れた。

    マクラーレン、アストンマーティン、ルイス・ハミルトンは「4-1-2」(ソフト4、ミディアム1、ハード2)構成で予選へ。ルクレール、アルピーヌ、ハース、ウィリアムズは「4-2-1」。レッドブル、レーシングブルズ、ザウバーは「5-1-1」、メルセデスは「3-2-2」となっている。2020年にピレリが固定配分を導入して以来、これほどのバラつきは初めてだ。

    モナコグランプリ F1 2025年のF1世界選手権

    戦略図は存在しない:理由は“すべてが可能性”
    …残念ながら、今回はそれが存在しない。なぜなら、すべての選択肢があり得るからだ。2ストップレース自体は珍しくない。数週間前のバーレーンでは2ストップが主流だったし、来週のバルセロナも同様になるかもしれない。

    だが、モナコは摩耗が非常に少なく、オーバーテイクも非常に困難なコースだ。まったく別の“鍋の魚”だ。

    マリオ・イゾラはこう言う。「明日の戦略を予測するのは、ほぼ不可能だ。どんな組み合わせも起こりうる。どれがベストなのかは本当に分からない。戦略エンジニアたちはあらゆる可能性を検討している。これは完全に新しい挑戦で、彼らにとっても、我々にとっても初めてのこと。だからこそ、エンジニアの手に負えない状況になると、レースが面白くなるんだ」

    モナコGP F1 2025年のF1世界選手権

    リーダーたちはどんな戦略を採る?
    モナコの通常のドライレースでは、首位のマシンがペースを落として後続を引き連れ、集団走行に持ち込む戦術が定番だ。アンダーカットが強力だからだ。だが、2ストップレースではこの戦法は通用しない。なぜなら、後方のマシンも勝負に絡んでくるからだ。

    たとえば、グリッド後方に沈んだメルセデス勢は、早めにピットに入り、空いたスペースで自由に走れる展開を狙うかもしれない。

    モナコでは摩耗が少なくても、1ストップ戦略ではタイヤマネジメントが必要だった。だが、2ストップならたとえソフトタイヤを履いても問題にならず、通常よりもアグレッシブな走りが見られるだろう。

    先頭集団の理想的な戦略は、後続に対してギャップを築き、その差をコントロールすることだ。

    誰かが“奇策”に出る可能性はある?
    ある。注目されているのは、1周目終了時にピットインして“第1ストップ”を済ませる戦略だ。その後はクリーンエアで“実質的な1ストップ”のように走り抜く。

    だが、もっと奇抜な案としては、1周目と2周目に連続でピットインし、2回のストップを一気に消化してしまうというものがある。昨年のデータでは、C4タイヤは摩耗の心配なしにフルレースを走り切れることが示されている。

    ただし、イゾラはこう警告する。「私の見解では、それは現実的な戦略ではない。モナコではセーフティカーやVSC、赤旗が非常に頻繁に出る。序盤に2回ストップしてしまってからセーフティカーが出れば、何のメリットも得られずに不利になるだけだ」

    モナコグランプリ

    セーフティカーがレース展開を左右するか?
    当然ながら、大きく展開が変わる可能性がある。特に、長めのセーフティカーランが入った場合、全車が同時に2ストップを済ませようとするかもしれない。

    通常、セーフティカー中のピットインは、レース中盤以降であれば各車の間にタイムギャップがあるため混乱は少ない。だが、スタート直後の段階でセーフティカーが出て、全車が一団でピットインすれば、モナコの狭いピットレーンでは混雑必至だ。

    チームが“ダブルスタック”を行うと、2台目のマシンがファストレーンを塞ぎ、ラスカス方面まで渋滞が伸びる可能性もある。こうなると、レースディレクターが赤旗を出す判断を下すかもしれない――そんな想定を各チームの戦略担当者は巡らせている。

    天気はどうなりそう?
    稀に見る混沌を“秩序立ててくれる”要素となるのが雨だが、今回はその可能性は極めて低い。天気予報では、降水確率は0%。モンテカルロは快晴に恵まれそうだ。

  • 2025年F1 モナコGP:モンテカルロ市街地コース&タイヤ解説

    2025年F1 モナコGP:モンテカルロ市街地コース&タイヤ解説

    2025年F1 モナコGPが、5月23日(金)~5月25日(日)の3日間にわたってモンテカルロ市街地コースで開催される。公式タイヤサプライヤーのピレリが2025年のF1世界選手権 第8戦 モナコグランプリのタイヤについて解説した。

    F1カレンダーの中でも最も象徴的で格式あるイベントの1つであるモナコGP。その魅力は長い歴史だけでなく、特別な雰囲気に包まれていることにある。初開催は1929年で、ル・マン24時間、インディ500と並び「モータースポーツの三冠」を構成するレースの1つでもある。

    狭い市街地コース、タイトなコーナー、急な上り坂と下り坂、そして港へと続く有名なトンネルなど、このサーキットならではの特徴が揃っている。パワーよりも精密さが重要で、ミスの許されない舞台だ。

    また、モナコGPは単なるレースではなく、スポーツと優雅さ、華やかさが融合した特別な社交イベントでもある。技術面では非常に複雑で、マシンは最大限のダウンフォースで走行し、オーバーテイクが極めて難しいことから、予選順位が勝敗を大きく左右する。モナコはF1の純粋かつ壮観な本質を祝う象徴的な存在だ。

    今年も表彰台に上がったドライバーには、デニス・デコヴィッチがデザインしたモナコ国旗カラーの特別仕様ピレリ・ポディウムキャップが贈られる。このキャップは2025年シーズンで5番目のバージョンで、ピレリの公式オンラインストア(https://store.pirelli.com/)で購入可能だ。

    モナコグランプリ

    タイヤコンパウンドと新ルール
    2戦連続でピレリは2025年レンジの中で最もソフトな3種類のタイヤを選定。イモラに続き、C4がハード、C5がミディアム、C6がソフトで、そのうちハードとミディアムがレース中の義務使用コンパウンドに指定されている。

    そして今週末、モナコGP限定で大きなルール変更が導入される。それは「決勝レース中に2回のピットストップを義務化する」というもの(詳細は「キーワード」欄に記載)。FIAとF1は、昨年のように単調になりがちなモナコGPに戦略的な変化を加え、レース展開に刺激を与えることを狙っている。

    この変更に伴い、全ドライバーにはフルウェットタイヤが通常の2セットに加えて追加で1セット配布され、雨天時でも2ストップ義務を実施可能にしている。

    これにより、戦略の多様化が見込まれる。ピットウインドウが固定されないことで、後方スタートのドライバーがクリーンエアを活かして順位を上げるチャンスも広がる。

    また、モナコではもともとタイヤのデグラデーションが少ないため、2ストップが義務化されることで、特に終盤にセーフティカーが出た場合など、ソフトタイヤの使用が増える可能性もある。

    モナコGP F1

    昨年のモナコGP
    通常、モナコGPでは1回のピットストップが主流だが、昨年は決勝スタート直後の赤旗により、理論上20台中わずか6台しかレース中に実際のピットストップを行わなかった。これは再スタート前に全車が異なるコンパウンドへ変更し、ルール要件を満たしたためだ。再スタート後に実際にピットしたのは6台のみ。周冠宇はソフトタイヤを選んだが、最下位のままであり、戦略的な利得はなかった。結果として、トップ10は予選順位通りにゴールし、退屈なレース展開となった。

    モンテカルロ市街地コース

    モンテカルロ市街地コースの特徴
    モナコの市街地コースは、普段は一般車両が通行している道路で構成されており、全長3.337kmのコースを78周する。19のコーナーは非常に狭く、ランオフエリアはほとんど存在しないため、ドライバーはしばしばバリアすれすれを走行する。

    ターン12からターン3まで、約半分の区間が再舗装されており、最初のプラクティスセッションではグリップ不足やグレイニングが発生する可能性があるが、走行を重ねて路面にラバーが載ることで改善されていくと見られている。なお、コースは毎日走行終了後に一般開放される。

    モナコグランプリ F1

    キーワード:スポーティング・レギュレーション(競技規則)
    このイベント専用に変更された新レギュレーションは、条項30.5(m)で明記されている。要点は以下の通り。

    「モナコGPでは、各ドライバーが3種類以上の異なるタイヤ(ドライまたはウェット)を使用しなければならない。インターやウェットを使用しない場合は、少なくとも2種類のスリックコンパウンドを使用し、そのうち1種類は義務コンパウンド(ハードまたはミディアム)でなければならない。レースが中断され再開不能とならない限り、このルールに違反したドライバーは失格となる。違反した場合は30秒のタイム加算が課される。」

    モナコGP F1 2025年のF1世界選手権

    統計コーナー
    モナコGPは1950年のF1世界選手権第2戦として初開催され、スクーデリア・フェラーリが初めて参戦したレースでもある(フェラーリはF1全レースに参戦している唯一のチーム)。

    これまで開催されたモナコGPは70回(1951~1954年および2020年は未開催)。「モナコの王子」とも称されるアイルトン・セナが最多6勝で最多ポール(5回)・最多表彰台(8回)記録も保持。次いでグラハム・ヒルとミハエル・シューマッハが5勝。

    コンストラクター別では、マクラーレンが最多の15勝、フェラーリが10勝で続き、ロータスとレッドブル・レーシングが7勝で並ぶ。ポールポジション数ではフェラーリ(13回)、マクラーレン(11回)、ロータス(9回)の順。フェラーリは表彰台獲得数でもトップで57回、2位マクラーレンの28回を大きく上回る。

    優勝者のうちポールスタートは32人(約45.7%)、2番グリッドからは16人(約22.7%)と、予選が決勝結果に与える影響が極めて大きいことが分かる。なお1996年にはオリビエ・パニスが14番手スタートから優勝という極めて珍しい快挙を成し遂げている。

  • F1エミリア・ロマーニャGP分析 ピレリC6投入で戦略多様化も想定外の展開

    F1エミリア・ロマーニャGP分析 ピレリC6投入で戦略多様化も想定外の展開

    ピレリがイモラで導入した新たな最軟タイヤC6は、C5およびC4との組み合わせで戦略の幅を広げようとしたものだったが、想定外の展開も引き起こした。それでも最終的には、戦略の多様化という目的を果たしたといえる。

    ピレリの狙いは、C6を「予選専用タイヤ」として位置付け、残るC4とC5では1ストップ作戦が厳しいように構成することで、より興味深い2ストップ戦略を促すことだった。

    しかし、実際にはC5の方がC6より予選に適していた可能性が高く、各ドライバーにはC5(この週末ではミディアム)が3セット、C6(ソフト)が8セット、C4(ハード)が2セットのみ与えられていたため、タイヤ選択には難しい判断が求められた。

    昨年のイモラではC5が最も柔らかいコンパウンドとして使用されたが、レースでは誰も使おうとはせず「柔らかすぎる」とされていた。それにもかかわらず、今年は複数のドライバーがC5でスタートし、29周目にVSC(バーチャル・セーフティカー)が出るまで走り切った。残り34周はC4ハードで対応できる見込みも立ち、1ストップ戦略が現実的となった。

    エミリア・ロマーニャGP F1 タイヤフェルナンド・アロンソとチームメイトのランス・ストロールは、土曜の予選でC5ミディアムを効果的に使用した

    予選においては、C5の方がC6より速いという誘惑も明らかだったが、レース用に少なくとも1セットは確保しておく必要があった。多くのチームはC6を消化し、ライバルも同じ選択をすることに期待した。

    しかしアストンマーティンは異なる選択をした。FP3でC6が1ラップのタイムでC5に劣ることが明確になった時点で、彼らはそれを踏まえたタイヤ戦略を立てた。

    なぜなら、FP3ではアストン以外のほぼ全チームがミディアムで1周走行した後、ソフトタイヤ(C6)でタイムを出そうとしたが、大半がC6の方が遅かったからだ。中には一度冷却した中古C6でタイムをわずかに改善したドライバーもいたが、多くはタイムを出せなかった。

    C6は熱を持ちすぎてしまい、コンパウンドの動きが大きく、高速コーナーでドライバーに不安定な感触を与えていた。

    予選に臨む段階で、アロンソとストロールはそれぞれハード1セット、ミディアム2セットを保持。一方、他チームの多くはハード2セット、ミディアム1セットという状況だった。

    エミリア・ロマーニャGP F1 タイヤ ピレリC6ジョージ・ラッセルも予選でミディアムを使い、3番グリッドを獲得したラップを記録

    予選Q1では、ストロールが他車がC6を履く中、最初にC5を投入して走行。彼のタイムはこのセッションの4番手に入った。アロンソはC6で3番手のタイムを記録。

    彼は2回目の走行でC5を履いたが、コラピントのクラッシュによる赤旗でタイムを比較する機会は得られなかった。

    Q2ではアストン勢はまずC6(ソフト)で走行し、2回目はC5(ミディアム)に切り替えたが、その方が明らかに速かった。ただし、トラックのグリップも増していたため、ソフトを2回使った他のドライバーも多くが自己ベストを更新していた。それでもアストンはP6とP7でQ3進出を果たした。

    Q3ではアストン勢はまず新品のC6(ソフト)で走行し、2回目は中古のC5(ミディアム)を使用。ストロールはタイムを更新できなかったが、アロンソは改善し、5番グリッドを獲得した。

    メルセデスのジョージ・ラッセルも同様の戦略を採り、最後の走行でC5を投入。もしアウトラップでの遅れがなければ、ポールポジションを獲得していた可能性もある。

    決勝日、ほぼ全車がC5でスタート。戦略は分かれた。リーダーのマックス・フェルスタッペンを追うオスカー・ピアストリは右フロントの摩耗が進み、徐々に遅れをとって13周目にピットインし、2ストップ戦略に切り替えた。

    ラッセルもランド・ノリスの攻撃を防ごうとしてタイヤを痛め、数周前にピットへ。シャルル・ルクレールも同様に早めのピットを強いられた。

    一方、フェルスタッペンとノリスはタイヤに問題なく、長く引っ張ることができた。結局、エステバン・オコンのマシンストップによるVSCのタイミングで多くがピットイン。C4(ハード)への交換が行われた。C4でスタートしていたルイス・ハミルトンは、ここでC5に交換。

    早めにストップしたドライバーは、1ストップ勢の後方で詰まってタイムロス。一方、ステイアウト組は10秒の“得”となるピット交換ができ、これがフェルスタッペンのアドバンテージをさらに広げた(特にノリスはVSCの1周前にピットインしていたため不利だった)。

    その後のセーフティカーはポジションを再びシャッフルしたが、ピアストリ、ルクレール、サインツには不利に、フェルスタッペン、ノリス、アレックス・アルボン、ハミルトンには有利に働いた。タイヤの摩耗度とグリップの差が混在したことで、ピット戦略で順位を落としたドライバーたちが後半に猛攻を仕掛ける展開に。ピアストリ対ノリス、アルボン対ルクレール、ハミルトン対ルクレールといった激しいバトルが繰り広げられた。

    つまり、ピレリの目論見は最初の意図通りには進まなかったが、結果的にはレースに戦略の多様性をもたらすことに成功したといえる。

  • 2025年F1 エミリア・ロマーニャGP 決勝:持ちタイヤ数&タイヤ戦略予想

    2025年F1 エミリア・ロマーニャGP 決勝:持ちタイヤ数&タイヤ戦略予想

    2025年F1 エミリア・ロマーニャGP 決勝で各ドライバーが使用可能な持ちタイヤ数と予想されるタイヤ戦略を公式タイヤサプライヤーのピレリが発表した。

    ピレリは、イモラ・サーキットにC4(ハード)、C5(ミディアム)、そして初登場のC6(ソフト)というレンジで最も軟らかいコンパウンドをノミネートしている。決勝がドライな場合、、2種類のコンパンドを使うことが義務付けられる。

    イモラの5月は喜びに満ちている。あらゆるものが咲き誇り、空気には糸杉の香りが濃く漂い、陽光はサンテルノ川の淡い緑の水面にきらめきを落とす。こうした穏やかな風景は、狭くてバンピーな、極めてオールドスクールなオートドロモ・インテルナツィオナーレ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリとは対照的だ。

    そんなタイトで狭いサーキットでは、トラックポジションが極めて重要となり、ポールシッターのオスカー・ピアストリがまずは優位に立つことになる。しかし彼のライバルたちは皆、夜を徹してあらゆる数字を分析し、打開策を見出そうとするだろう。では、F1エミリア・ロマーニャGPで考えられる戦略とは?

    昨年はどうだった?
    昨年のエミリア・ロマーニャGPは、あらゆる予想を裏切って波乱なく進行し、天候やセーフティカーの影響もなく、規定通りの1ストップレースとなった。1位から6位、さらに9位と10位のドライバーは、いずれもミディアム→ハードの戦略を選択した。

    トップ3はマックス・フェルスタッペン、ランド・ノリス、シャルル・ルクレールの順でスタート順位通りにフィニッシュ。ピットストップのタイミングはそれぞれ24周目、22周目、25周目で、ノリスは最後までフェルスタッペンを追い続けた。その背後では、オスカー・ピアストリがアンダーカットを成功させた。彼は23周目にピットインし、27周目までステイアウトしていたカルロス・サインツJr.を抜いて4位に浮上。

    メルセデスのジョージ・ラッセルは唯一2ストップでポイントを獲得したドライバーで、ミディアム→ハード→ミディアムの順。2回目のピットは想定外の判断で、摩耗を懸念したチームが予防的に実施した。ラッセルは21周目に最初のピット、52周目に2回目のピットを行い、最終的にチームメイトのルイス・ハミルトンに1ポジション譲って7位となった。

    一方、8位のセルジオ・ペレスは唯一のハード→ミディアム戦略でのポイント獲得者で、37周目まで引っ張ってからピットインしている。

    ソフトタイヤでのスタートを試みたのはフェルナンド・アロンソとピエール・ガスリーの2人のみだったが、いずれも成功せず、それぞれ7周目と8周目での早期ピットインとなった。全体的に、ハード寄りのコンパウンドではデグラデーション(摩耗)は低く、ピットウインドウも非常に広かった。

    エミリア・ロマーニャGP F1

    今年の最速戦略は?
    今年のピレリは、タイヤのコンパウンドを1段階柔らかく設定しており、これは4戦中3戦目となる。ジェッダとマイアミでは、それでも1ストップが主流となったが、どちらも非常に難しい1ストップだった。

    ではイモラはどうか?可能性はあるが、それでも最も有力なのはミディアム→ハード戦略と見られている。ただし、今年はピットウインドウが昨年よりも狭くなる見込みで、ピレリのシミュレーションでは19~25周目の間が最適なピットインタイミングだとされている。

    トップ10の別の選択肢は?
    過去のこのレースでは、1ストップが純粋に速かったわけではない。むしろ、ピットストップによるタイムロスが大きく、オーバーテイクが非常に困難なために、ポジションキープを優先する戦略が主流だった。たとえ新しいタイヤでアドバンテージがあっても、1つしかないDRSゾーンではそれを活かすのが難しい。

    しかし今年は、ピレリの最も柔らかいタイヤが使われており、この傾向が問われることになりそうだ。理論上は、ミディアム→ハードの1ストップと、ミディアム→ハード→ハードの2ストップに大きな差はない。ギャンブルを好むドライバーが別の戦略に出る可能性もあるが、ピレリはそれでも後者は「第二選択」だと見ている。

    ピレリのモータースポーツディレクター、マリオ・イゾラはこう語る。

    「シミュレーション上では、ミディアム→ハードとミディアム→ハード→ハードの総レースタイムの差はせいぜい2~3秒といったところだ。ただ、ピットインで27秒も失うとなれば、無理にリスクを冒す理由は見当たらない]

    ミディアムをきちんとマネージすれば、最初のスティントをしっかり走りきれるし、そこからハードで最後まで持たせるのは十分に現実的だ。わざわざ二度止まる必要はない、というのが我々の見立てだ」

    誰がそれを試すかは、スタート後の順位に左右される。例えば4番グリッドからスタートするランド・ノリスが序盤で順位を上げられなかった場合、クルマに十分なペースがあると感じれば、アンダーカットや2ストップ戦略に打って出る可能性はある。

    エミリア・ロマーニャGP F1 2025年

    後方グリッドの選択肢は?
    よりオーソドックスな代替策としては、例年通りのハード→ミディアム戦略があり、少なくとも1台のフェラーリがこれを試してもおかしくない。キミ・アントネッリや角田裕毅も後方グリッドから何かを仕掛けるには魅力的な戦略だ。

    この戦略では38~44周目が理想的なピットウインドウとされている。採用する側としては、レース中盤にセーフティカーやVSC(バーチャル・セーフティカー)が出ることを期待するだろう。そして今週末のセッション内容を見る限り、レース中断は十分に起こりうる。

    もし序盤にセーフティカーが出れば、全体が2ストップに動く可能性がある。中盤ならハード→ミディアム勢に有利に働き、終盤なら、2ストップを選んで新しいタイヤを持っているドライバーがいれば、展開を大きく揺るがすことになる。

    ところで天気は?
    天気予報は、サポートレースが快晴のなか行われた土曜日と似た傾向を示しており、メインレースの時間帯には雲がかかる見込みだ。

    雨の確率は高くないとされているが、アペニン山脈の麓には局地的なにわか雨が潜んでおり、もしそれがイモラに届けば、かなり激しくなる可能性もある。

    また風も強まり、時速35kmに達する突風が予想されている。予選を見てもわかる通り、このサーキットでは、ほんのわずかでもラインを外されると大きな影響が出る。風がレースを左右する可能性は十分にある。
    2025年のF1世界選手権 エミリア・ロマーニャGP

  • ピレリC6がもたらすF1戦略革命 エミリア・ロマーニャGPで見えた光と影

    ピレリC6がもたらすF1戦略革命 エミリア・ロマーニャGPで見えた光と影

    ピレリは今季、新たにC6コンパウンドをラインナップに加えた。市街地サーキット用のスーパーソフトとして設計されたこのタイヤだが、現在ではF1の戦略を活性化させるための鍵と見なされており、イモラでの予選を通じてその可能性が示された。

    「C6タイヤを理解するのは難しかった」と、エミリア・ロマーニャGPの予選で7番手を獲得したアレックス・アルボンは語った。

    だが、それこそが今回の投入の狙いでもあった。F1チームは毎年、莫大な予算を研究とシミュレーションに投じて不確実性を排除しようとするが、予測可能であることはレースを面白くなくする敵でもある。

    ピレリがC6コンパウンドをラインナップに追加したのは今季の始まり。従来のC5よりもさらに柔らかい選択肢として、当初はモナコでのデビューが予定されていたが、初回投入がうまくいけばカナダ、シンガポール、ラスベガスへの展開も視野に入っていた。

    しかし状況は変わった。他のコンパウンドの性能と寿命が接近しすぎていたため、一貫して1ストップ戦略が最適解となっていたのだ。ピレリはこれを受けてC6の投入を前倒しし、イモラでの導入に踏み切った。開幕戦以降、昨年よりも柔らかめの構成にシフトしつつあったことも背景にあるが、最大の狙いは今後のレースで「コンパウンドスキップ」戦略を実現できるか試すことだった。

    ピレリ、F1、FIAが目指すのは、戦略の選択肢に幅が生まれ、1ストップと2ストップの差が不明瞭になり、コンパウンドの違いを使った「オフセット戦略」が成り立つ世界だ。理想は、最後の数周で新しいタイヤを履いたドライバーが前を追い詰める“ピークエンド効果”を観客に提供することだ。

    だがその実現には繊細なバランスが求められる。柔らかすぎれば、最も柔らかいタイヤが予選専用になるだけだ。

    今回のイモラでは、まさにその懸念が現実になったようにも見える。アストンマーティンの2台とメルセデスのジョージ・ラッセルはミディアムタイヤ(C5)を選び、性能では上回るがレースでは不利となる可能性を受け入れた。

    とはいえ、これはピレリがまさに演出したかった状況のひとつでもある。ただし、理想的な形ではなかった。というのも、C6が1周もたないほどグリップの低下が激しかったためだ。

    「ここ最近のサーキットではずっとそうだった」とアルボンは話す。「低速コーナーでは柔らかいタイヤの方がいいんだけど、例えば鈴鹿のセクター1(中高速域)では今年はハードの方が良かった。だからある程度トレードオフがある」

    「イモラのようなコースではC6は少し行き過ぎている。高速コーナーが多すぎて、タイヤが耐えられない。繊細すぎるんだ」

    「でもそれも不思議じゃない。F1としてはレース中のデグラデーション(性能劣化)を作ろうとしてるから、タイヤは柔らかい方へ向かってる。とはいえ、今のC6は予選ですら厳しくなってきている」

    エミリア・ロマーニャGP F1 タイヤ

    C6のパフォーマンス低下が大きすぎたため、ミディアムの方が良かったのではないかという声が、ドライバーやチーム代表からも多く聞かれた。しかし現在のF1レギュレーションでは、1戦あたり使用できるスリックタイヤは全13セット(週末3種類のコンパウンドから)に限られており、ミディアムに賭けるのは大きな賭けでもある。

    アストンマーティンのフェルナンド・アロンソは、ミディアムを使用した予選戦略についてこう語った。

    「週末を通じて、ソフトとミディアムのどっちがいいのか分かりにくかった。それで我々は予選の各セッションでソフトとミディアムを1本ずつ使う戦略にした」

    「これであらゆる可能性をカバーしたわけだけど、正直どちらでも競争力はあったと思う」

    「でも何にでも代償はある。これを予選でやるにはハードを1本諦めなきゃいけなかった。明日のために皆ハードを2本持ってるけど、我々は1本しかない。とはいえ、それも賭けだ」

    「ここはオーバーテイクが難しいコースだから、土曜重視で正解だったかもしれない。明日結果が出るかどうか見てみよう」

    リスクとリターンのバランスは、結局のところ視点の違いによって変わる。C6で2番手を獲得したマックス・フェルスタッペンは、その賭けに乗らなかった。

    「それはやりたくなかった。明日に向けて正しいタイヤを確保しておきたかったから」とフェルスタッペン。「今年は何度かポールを取ってるけど、そこから先があまり意味をなさなかった。だからレースでポイントを稼ぐのが最優先だ」

    イモラのレイアウト上の要因も、ピレリの狙う“戦略多様性”を阻む。ピットストップで約28秒を失うロングピットレーンは、実質的に1ストップを最適解にしてしまう。

    フェラーリのカルロス・サインツはこう語る。

    「Q3に入る段階で、何台かがC5(ミディアム)を使ってくるのは分かっていた。C5の方が速いから。フェルナンドやラッセルがそうだったし、彼らは本来の位置より良い順位を取っていた。つまり、C5の方が単発ではデグラが少なくて速いって証明だ」

    「ただ、それをやるにはC5を1本犠牲にしないといけないし、レースを考えるとそれは厳しい。我々にはC5を温存する方が大事だった」

    「僕は使いたかったけど、チームは冷静に判断してそれを止めた。でも今日のベストはP5で、C5を履いても0.3~0.4秒速くなって1つ前に行けるだけだった。それならしょうがない」

    ピレリはすでに、当初予定されていたサーキットに加えてバクーにもC6を持ち込む方向で検討している。さらに“コンパウンドスキップ”戦略の本格展開も視野にある。仮に今回C5を犠牲にしてグリッド順位を上げたチームが、決勝で何のデメリットも受けなかったとすれば、その判断が定着する可能性も出てくる。