カテゴリー: F1モナコGP

  • F1モナコGP:2回以上のピット義務ルールが2026年も継続へ 批判の声止まず

    F1モナコGP:2回以上のピット義務ルールが2026年も継続へ 批判の声止まず

    2026年F1スポーティングレギュレーション最新版で、モナコGPにおける2回以上のピットストップ義務付けルールが維持された。チームやドライバーからの批判にもかかわらず、FIAは方針を変えなかった。

    このルールは今年初めて導入されたもので、正式には第6.36条として規定され、レース中に最低3種類の異なるタイヤを使用することを義務付けている。狭く曲がりくねった歴史的市街地サーキットで、しばしば「最も退屈なレース」と評されるモナコGPに戦略的変化と興奮をもたらす狙いがあった。

    しかし、5月のレースでは狙いが裏目に出た。オーバーテイクや迫力ある展開は増えず、むしろチームは疑問の残る戦術に走り、1台を意図的に減速させてもう1台の順位をピット作業中に守るといった行為が見られた。

    顕著な例はウィリアムズで、アレックス・アルボンが大きく減速し、チームメイトのカルロス・サインツがポジションを落とさずにピットインできるよう援護。この結果、メルセデスのジョージ・ラッセルが不利を被った。

    ラッセルはレース後、この駆け引きについて率直に批判した。

    「モナコでの解決策について本気で考える必要がある。今年2回ストップを試したことは理解するが、明らかにまったく機能しなかった」

    モナコグランプリ F1

    ウィリアムズ代表「キャリアで最も不快な瞬間だった」
    ウィリアムズ・レーシング代表のジェームス・ボウルズは、この戦略を擁護しつつも、倫理的な不快感を認めた。

    ボウルズによれば、この戦略は事前に計画したものではなく、レースの展開に応じたやむを得ない判断だったという。

    「はっきりさせておくと、我々が最初にやったわけではない。レースの流れに対応せざるを得なかった。正直、好きではなかった。システムを利用してポイントを取るのではなく、正々堂々と戦ってポイントを稼ぎたい」

    「それでも、我々がやらざるを得なくなった時点では残り1ポイントしか可能性がなかった。そうなれば選手権やポイント獲得を考慮せざるを得ない」

    「このルールがより良いレースを生んだのかどうか、その答えはファンに委ねたい。個人的には、このルールが生む“クリーンではないレース”は好きではない」

    協議なき継続に懸念
    ボウルズによると、2026年規則におけるこの義務化継続は、全10チームの代表が集まるF1コミッションでの協議を経ていないという。彼はこの点を懸念し、FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスに直接問題提起する意向を示した。

    このまま規則が固定されれば、次回のモナコGPまでにチームやドライバーの圧力で再検討が行われるかどうかは不透明だ。現時点では、F1の統括団体は「実験」を継続する姿勢を崩していないが、その効果には疑問が残っている。

  • フェルナンド・アロンソ F1モナコGPを擁護「批判しても結局来年も盛り上がる」

    フェルナンド・アロンソ F1モナコGPを擁護「批判しても結局来年も盛り上がる」

    フェルナンド・アロンソは、今季も批判を浴びたF1モナコGPに対し、その特異性こそがレースの本質だと擁護する発言を行った。

    今季のモナコGPでは、ランド・ノリスがポールポジションから優勝を果たし、地元の英雄シャルル・ルクレールが2位に続いたが、今年も追い抜きの少なさや義務的な2回のピットストップルールが機能しなかったことに対して、ドライバーやチーム代表たちから不満の声が相次いだ。

    モナコのレイアウト、現代F1マシンの大型化による影響、そしてピット戦略の在り方など、改善策を求める声が広がる中で、アロンソはむしろその制約がモナコらしさだと強調する。

    「モナコは昔からずっとモナコだ。今は期待値がすごく高くて、メディアも多いし、SNSやネットの影響もあって、F1に関するいろんな議論が生まれている」とアロンソはメディアに語った。

    「みんなショーを求めているし、オーバーテイクが見たいし、家のソファに座ってスポーツを良くしたいって思ってる。でも、月曜日になるとモナコに対するネガティブなコメントが出るのを見るたびに驚くんだ。心配しなくていい。来年の水曜日になれば、みんなまたモナコを楽しみにしてるから」

    「これが現実だよ。すべてのカードを土曜日に出し切る。それが良いこともあれば、悪いこともある。でも、そんな性質のサーキットは他にもある」

    「今はグリッド全体がすごく競争的だけど、それでもこういう状況は起こる。2~3年前には、マックスとレッドブルがほとんどのレースを勝っていたし、90年代にはマクラーレンがそうだった。それがF1だ」

    「それでもこのスポーツはナンバーワンだし、僕たちはその姿を受け入れている」

    モナコGP F1 フェルナンド・アロンソ モナコグランプリ

    アロンソは「モナコに修正は不要」とも発言しており、レイアウト変更やルール改革を求める声に対しては慎重な姿勢を見せた。

    「ランス(ストロール)がニコ(ヒュルケンベルグ)を最終ラップで抜いた。モナコでは3年に1回見られるようなオーバーテイクだよ。でも、それがモナコの本質なんだ」

    「だけど、みんなは“悪い”ということばかりに焦点を当てて、“良い”ことを語ろうとしない。これがモナコなんだ」

    「もちろん、関係者みんなでモナコについてアイデアを出し合うこともできるかもしれない。でも、何かを変える必要があるとは思わない。結局は、今は“コンテンツ”がたくさん求められていて、僕たちドライバーは“良い人すぎる”から、全部の質問に答えてしまうだけなんだよ」

    「もし40年前にアイルトン・セナやアラン・プロストにモナコについて聞いていたら、今の僕たちほど礼儀正しくはなかったと思う」

  • 2025年F1 モナコGPパワーランキング:角田裕毅はランク外

    2025年F1 モナコGPパワーランキング:角田裕毅はランク外

    2025年F1 モナコGPでは、ランド・ノリスがポール・トゥ・ウィンを達成する完璧なパフォーマンスを披露した。だが、狭く曲がりくねったモナコ市街地で印象的だったのは彼だけではない。最新のパワーランキングと年間総合スコアをチェックしてみよう。

    レース展開が限られるモナコでは、予選順位が決定的となる中、抜け目のない戦略と冷静な判断が光ったドライバーたちが評価を高めた一方で、静かな週末に終わった選手たちはランク入りを逃すことに。

    レッドブル・レーシングの角田裕毅は、17位フィニッシュに終わり、ポイント獲得もならず。レーシングブルズのアイザック・ハジャーとリアム・ローソンがダブル入賞を果たした中、週末を通して流れを掴めず、パワーランキング入りも見送られた。

    F1パワーランキングは、F1.comの5人の審査員がグランプリ終了後に各ドライバーを評価し、週末を通してのパフォーマンスに応じて10点満点で採点。専門家のスコアを平均してレーススコアを作成し、そのスコアは総合パワーランキングのリーダーボードでシーズンを通して集計される。

    1.ランド・ノリス(マクラーレン)
    モナコGP特有の性質として、スタート時点のポジションがそのままゴール位置を決定づけることが多い。ランド・ノリスはこの事実を理解し、予選ではトラックレコードを更新する走りで見事ポールポジションを獲得。スタート直後の第1コーナーでの軽いロックアップにも動じず、地元の英雄シャルル・ルクレールからの激しいプレッシャーを受けながらも冷静にレースを展開。終盤にはさらにファステストラップを連発し、勝利に花を添えた。

    2.アイザック・ハジャー(ビザ・キャッシュアップ・RB・フォーミュラワン・チーム)
    レーシングブルズのアイザック・ハジャーは、F1マシンでのモナコ市街地走行という難題にもひるまず、今季自己最高の6位入賞を果たした。予選では5番手に食い込み、レースではチームメイトのリアム・ローソンと共にトップ10を維持するチームプレイを披露。「完璧な週末だった」と自身も振り返る。

    3.シャルル・ルクレール(スクーデリア・フェラーリ)
    母国GPでの2連勝を逃したシャルル・ルクレールにとっては悔しさが残る結果だったが、週末を通してフェラーリを限界までプッシュし、その差は想定よりも小さいことを証明した。全てのプラクティスをトップで終え、予選ではノリスにわずか0.1秒差まで迫った。決勝でも勝利への可能性を最後まで追い続け、観衆を魅了した。

    4.エステバン・オコン(ハースF1チーム)
    ハースにとって今季はサーキットごとのパフォーマンス差に悩まされてきたが、モナコではついにすべてが噛み合った。エステバン・オコンはQ3に進出し、決勝では1つ順位を上げて7位フィニッシュ。チームにとって貴重な6ポイントをもたらし、改めて“リードドライバー”としての存在感を示した。

    5.マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)
    低速コーナーに弱さを抱えるレッドブルにとってモナコは苦戦が予想されたが、マックス・フェルスタッペンはそれでも予選でトップ5に入り、ルイス・ハミルトンのペナルティにより決勝では4番手からスタート。オスカー・ピアストリへのリスクあるオーバーテイクを回避しつつ堅実な走りで12ポイントを獲得し、タイトル争いで踏みとどまった。

    6.オスカー・ピアストリ(マクラーレン)
    そのピアストリは、週末を通してモナコの狭さに苦しめられ、バリアに接触し、サン・デボーテでタイヤバリアに突っ込む場面も。だが、ノリスとほぼ同等のペースを保ち、ルクレールを最終盤に追い詰める走りでマクラーレンに再び大量得点をもたらした。ランキング首位もキープしている。

    7.リアム・ローソン(ビザ・キャッシュアップ・RB・フォーミュラワン・チーム)
    話題をさらったのはリアム・ローソンの戦略だ。シーズン初ポイントとなる8位フィニッシュを果たしただけでなく、後続を抑え込むことでハジャーのピットストップをサポート。ドライバー仲間からは好意的に見られなかったが、レーシングブルズにとっては両者揃ってのトップ10入りという成果につながった。

    8.フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)
    フェルナンド・アロンソにとってモナコは“あと一歩”のレースだった。今季まだノーポイントの中、予選では素晴らしい走りで6番手グリッドを獲得。だが、ポイント目前のレース中盤、エンジンから煙が立ちのぼり、無念のリタイア。チームのパフォーマンスと運に見放される形となった。

    9.アレクサンダー・アルボン(ウィリアムズ・レーシング)
    ウィリアムズにとっては、9位と10位という結果に対し「物足りなさ」を感じられるほどに進歩が見られた。アレックス・アルボンは好調を維持し、Q3進出を果たすと、チームメイトとのダブル入賞を演出。これで今季5度目のダブルポイントとなり、中団グループでの存在感をさらに強めた。

    10.ルイス・ハミルトン(スクーデリア・フェラーリ)
    予選でフェルスタッペンの進路を妨害したとして3グリッド降格となったルイス・ハミルトンだが、モナコについては「ここ最近で最高のマシン」と高評価。FP3ではクラッシュもあったが、決勝では2つポジションを上げて5位でフィニッシュ。前方集団には届かなかったものの、堅実なレースで意地を見せた。

    11.カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ・レーシング)
    カルロス・サインツは、ウィリアムズがレーシングブルズ同様の戦略を採用する中、ペースをコントロールして後方とのギャップを調整。本人は「やりたい役割ではなかった」と語ったが、4戦連続のポイント獲得を果たし、チームをランキング5位に導いている。

    惜しくもランク外
    ニコ・ヒュルケンベルグはQ2進出を果たし、キック・ザウバーにポイント獲得の希望をもたらしたが、あと一歩でランク外。ジョージ・ラッセルやハースの新人オリー・ベアマンも、健闘及ばずトップ10入りは逃した。

    2025年のF1世界選手権 モナコグランプリ

  • 2025年F1 モナコGP WINNERS & LOSERS:角田裕毅 レッドブルは敗者選出

    2025年F1 モナコGP WINNERS & LOSERS:角田裕毅 レッドブルは敗者選出

    ランド・ノリスが、すべてのF1ドライバーが憧れるモナコGPを制し、見事な走りでトップチェッカーを受けた。

    マクラーレンにとっては2008年以来のモンテカルロ制覇であり、ノリス自身にとってもキャリア初のモナコ勝利となった。チームメイトのオスカー・ピアストリも表彰台に立ち、マクラーレンの勢いを印象づける週末となった。

    その一方で、角田裕毅にとっては厳しい週末だった。予選Q2敗退から決勝では17位フィニッシュに終わり、チームメイトのフェルスタッペンが4位でポイントを重ねる中、明暗が分かれた。F1公式サイトのローレンス・バレット記者が、モナコの市街地を舞台にした“勝者”と“敗者”を振り返る。

    勝者:ランド・ノリス
    今回の週末は、ノリスがワールドチャンピオン争いにおける自身の実力を証明する上で大きな意味を持った。

    25歳のノリスは、モナコで自身初のポールポジションを獲得し、母国レースで勝利を狙うシャルル・ルクレールの猛追を退け、見事な初優勝を飾った。

    これがオーストラリアGP以来となる今季2勝目で、通算6勝目。ポール・トゥ・ウィンはこれで5回目となり、チームメイトのオスカー・ピアストリとのポイント差をわずか3に縮めた。

    敗者:オスカー・ピアストリ
    今季最も乱れた週末となったピアストリだが、それでも7戦連続の表彰台を死守した。
    これで34戦連続のポイント獲得となり、歴代3位の記録に到達。今季の全レースでトップ4以内の予選成績を維持している。

    しかし、モナコを終えてチャンピオンシップリードは13ポイントから3ポイントに縮まり、流れはノリスに傾いた。

    モナコGP F1 マクラーレン両マクラーレンのドライバーがモナコで表彰台を獲得

    勝者:シャルル・ルクレール
    地元モナコでポールを逃したことが勝機を逸する要因になったとルクレールは語った。
    2位フィニッシュに表情は曇っていたものの、これは彼にとってモナコでのキャリア2度目の表彰台であり、フェラーリにとっても今季最高成績となった。

    開幕から苦戦を強いられたフェラーリにとっては悪くない結果であり、これでルクレールはランキングでメルセデスのジョージ・ラッセルとの差を20ポイントにまで縮めた。

    モナコGP F1 シャルル・ルクレール2位はルクレールにとって今季ベストリザルト

    敗者:フェルナンド・アロンソ
    今季2度目のQ3進出を果たすなど、アロンソはモナコでも健在ぶりを示した。ハミルトンのペナルティで6番手スタートとなり、序盤は6位圏内を快走していた。

    しかし、ラ・ラスカスでエンジンにトラブルが発生し、無念のリタイア。今季8戦を終えて未だノーポイントという、過去10年間で最悪の開幕を迎えている。

    勝者:アイザック・ハジャー
    F1ルーキーのハジャーは、これまでで最も完成された週末を送った。F1モナコ初走行の金曜にはクラッシュも経験したが、予選ではキャリアベストの6番手を記録。

    決勝では、チームメイトのリアム・ローソンが巧みに後続を抑える戦略的な支援を行い、2回のピットストップを無料で実行。結果、自己最高位の6位入賞を果たした。

    モナコGP F1 フェルナンド・アロンソアロンソはPUトラブルで早々にリタイア、依然ノーポイント

    敗者:アルピーヌ
    ピエール・ガスリーはキャリアワーストの17番手からのスタート。フランコ・コラピントは初めてQ1最下位に沈むなど、週末全体を通じて厳しい展開となった。

    日曜も明るい材料はなく、ガスリーは角田裕毅のブレーキングに反応しきれず接触、リタイアを喫した。

    コラピントは18番手スタートから5つポジションを上げて13位で完走。加入後初めてチェッカーを受けた。

    モナコGP F1 ピエール・ガスリーガスリーは序盤で角田と接触しリタイア

    勝者:エステバン・オコン
    2023年にアルピーヌでモナコ表彰台を獲得したオコンが、ハース移籍後も再び輝きを見せた。

    予選ではモナコでのハース最上位となる8番手を獲得し、決勝では1つ順位を上げて7位フィニッシュ。これにより3戦ぶりのポイント獲得となった。

    モナコGP F1 エステバン・オコンオコンは堅実な走りでモナコ7位、3戦ぶりの得点

    敗者:メルセデス
    メルセデスにとっては、2024年オーストラリアGP以来となるノーポイントの週末となった。
    ラッセルとアントネッリはいずれもQ3進出を逃し(ラッセルにとっては今季初)、レース中に順位を上げたものの、ポイントには届かず。

    コンストラクターズランキング2位は維持したものの、3位レッドブルとは4ポイント差、4位フェラーリとは5ポイント差に迫られている。

    勝者:リアム・ローソン
    今季ベストパフォーマンスとなったローソンは、モナコに適したレーシングブルズのマシンを最大限に活かした。

    2025年初のQ3進出を果たすと、決勝ではチームメイトのハジャーを助けるために後続を巧みに抑え、ハジャーの2回ストップをアシスト。

    自身もキャリアベストの8位でフィニッシュし、2019年以来となる両ドライバーのモナコ同時得点をチームにもたらした。

    モナコGP F1 リアム・ローソンローソンは戦略を完璧に遂行し、両ドライバーの得点を支援

    敗者:レッドブル
    モナコではマクラーレンとフェラーリに戦略でもスピードでも後れを取り、フェルスタッペンは4位でフィニッシュするのが精一杯だった。

    過去7戦で4度目の表彰台逸となり、ランキング首位のピアストリとは25ポイント差。

    角田裕毅は予選で力を発揮できなかったことを認め、決勝でも苦戦して17位。チームはマクラーレンに176ポイント差をつけられ、7戦分以上の差を背負う苦しい展開となった。

  • ルイス・ハミルトン「怒ってるのか?」無線沈黙にフェラーリF1が釈明

    ルイス・ハミルトン「怒ってるのか?」無線沈黙にフェラーリF1が釈明

    2025年のF1モナコGPは、ルイス・ハミルトンとエンジニアのリカルド・アダミとの間の無線交信における緊張が再び浮き彫りとなり、フェラーリがレース後に火消し対応に追われる展開となった。

    ハミルトンは5位、チームメイトのシャルル・ルクレールは2位でフィニッシュし、フェラーリとしては今季のスプリント非開催週末としては最高のダブル入賞だった。それでも、レース後の雰囲気は決して祝賀ムードではなかった。特にハミルトンは明らかに落胆し、口数も少なかった。

    ルクレールは土曜の予選でポールを狙える走りを見せていたこともあり、より上位を期待していたかもしれない。そしてハミルトンにとっては、Q1でマックス・フェルスタッペンの接近をチームが誤って伝えたことで妨害行為が発生し、3グリッド降格のペナルティを受けたことが痛手となった。

    このミスにより、ハミルトンはレース中「どっちつかずの状態(no man’s land)」に追いやられることになり、さらにレース中の無線では、彼とエンジニアのアダミのやり取りにおいて、苛立ちを感じさせる場面が再び現れた。

    レース後、フェラーリのチーム代表フレデリック・バスールは、両者の間に摩擦があるという見方を否定した。

    「ドライバーがターン1からターン3の間に何かを尋ねた場合、我々はトンネルに入るまで返答を待つようにしている。コーナー中に話しかけないよう、事前に決めているんだ」とバスールは説明した。

    「我々が寝ているとか、ピットウォールでビールを飲んでるわけじゃない。単に話しかけるタイミングを決めているだけなんだ」

    「正直に言えば、これは緊張なんかじゃない。ドライバーは壁の間を300km/hで走っていて、常にプレッシャーの中にいる。私は彼(ハミルトン)とレース後に話をしたが、まったく怒っていなかった」

    この説明は理屈としてはもっともだ。実際、ドライバーがタイトなコーナー区間で情報を受け取るのを嫌うことはよくある。しかし、今回最も奇妙だったのはレース後のやり取りだった。

    アダミはクールダウンラップで「5位フィニッシュだ。トラフィックでかなりの時間を失った。あとの部分は分析が必要だ。ピックアップ(タイヤカス拾い)も頼む」と無線で伝えた。

    これに対してハミルトンは「まずは土曜のクラッシュ後にマシンを直してくれたメカニックたちに感謝したい。週末は簡単ではなかったけど、また次がある。だから…うん」と応じた。

    しかしその後、無線は一時沈黙し、ハミルトンがこう問いかけた。「なんか俺に怒ってる?」。この問いかけにも返答はなかった。

    こうしたやり取りは、F1のTV放送でドラマ性を高めるために切り取られることもあるが、今回は実際にこのままの形で交わされたとされている。

    加えて、レース終盤にはハミルトンが「前のグループ――フェルスタッペン、ノリス、ルクレール、ピアストリ――って、まだほぼ1分先にいるのか?」と無線で尋ねた。

    アダミは「シャルルはミディアム、マクラーレン勢はハードで、ターン16で接近してバトルしている」と返答したが、ハミルトンは不満げに「質問に答えてない。まあいいけど。1分差があるのかどうかを訊いただけなんだけど…」と応じた。

    そしてようやく「48秒差だ」と返ってきた。

    ルイス・ハミルトン スクーデリア・フェラーリ F1

    こうしたやり取りは、ハミルトンが実際にどのセクターを走っていたかとは無関係に起きており、もし彼がレース後に「全然怒っていなかった」とバスールが言う通りなら、少なくともメディア対応時よりもずっと気分が落ち着いていたのは確かだろう。

    ハミルトンは優勝したランド・ノリスから51.387秒差、ルクレールからは48.256秒差でチェッカーを受けた。この差はハミルトンにとっては大きな屈辱だったに違いない。特に、Q1でのフェルスタッペン接近に関する誤情報によって、そもそもそのような位置からレースを始める羽目になったことを考えればなおさらだ。

    ペナルティにより、彼はスタート直後にアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)とフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)の後ろにつくこととなり、彼らが14周目と16周目にピットインするまで前に出ることができなかった。

    そこから2周のクリアエアでオーバーカットに成功したものの、その時点ですでにルクレールに12秒差をつけられており、先頭集団(ノリスら)がタイヤマネジメントを抑え気味に走っていたのに対し、ハジャーがギャップを広げるためにペースを落としていたことも影響していた。

    以後も差は広がる一方で、33~39周目にかけては1~3秒ずつルクレールに遅れていた。56周目のピットイン周とアウトラップでも大きなロスがあった。

    これらの損失の一部は、トラフィックの影響と考えられる。特に、レーシングブルズやウィリアムズが採った“1人が隊列を抑えてもう1人をフリーピットさせる”戦術によって、57周目には11位アレックス・アルボンと18位ニコ・ヒュルケンベルグの差がわずか11秒しかなかった。

    先頭集団が周回遅れにする際にはスムーズに譲ったが、ハミルトンが追いついた際にはペースを落とすのが遅れた場面もあった。

    とはいえ、ハミルトンの48秒差の多くは、まだSF-25をルクレールほど速く操れていないことに起因する。彼自身は、フェラーリ固有の性能特性への理解不足が原因と見ているが、「コンマ3秒ずつの差」も積もれば大きな差となる。

    予選後、ハミルトンはこう語っていた。「今週末は本当に急な学習曲線だった」

  • F1モナコGPの未来は?「抜けないサーキット」の限界と提案される改革案

    F1モナコGPの未来は?「抜けないサーキット」の限界と提案される改革案

    F1関係者たちは再び、モナコGPという疑わしいショーをどうすべきか頭を抱えている。

    2024年の極端にスローでプロセッショナルな展開のあと、今年のモナコGPでは強制的な2ストップ制が導入された。

    メルセデスF1代表のトト・ヴォルフは「むしろ悪化した」と認める。

    現世界王者マックス・フェルスタッペンはViaplayに笑いながら語った。

    「すごく面白かったよ。本当に楽しめた。とても素晴らしかった」

    「来年は3回ピットストップにすれば?いや、4回でも5回でもいい。少なくともチームはピット作業の練習にはなる」

    「僕に関しては、4回ピットに入っても4位で終われただろう。僕たちフロント勢にとっては、あまり意味がなかった」

    実際、上位陣こそ本当のレースをしていたが、それ以外のグループは列を意図的に減速させていたか、そうした列に詰まっていた。

    ジョージ・ラッセルはアレクサンダー・アルボンの“移動式シケイン”を避けるため、港のシケインをショートカットして抜き、30秒のペナルティを受けた。

    「どうせポイント圏外だったし、ただモナコを全力でプッシュして楽しみたかった」とラッセルは語った。

    「皮肉だけど、25周分の予選ラップを決勝で走って、ペナルティを受けなかった場合より上でフィニッシュできた。つまり、この仕組み自体が破綻しているんだ」

    ニコ・ヒュルケンベルグも同意した。

    「2ストップ制という試み自体は評価するけど、まったく機能しなかった」

    「いろいろ戦略的なことは起きていたけど、それはレースとはまったく別物だった」

    カルロス・サインツJr.はDAZNに対して語った。

    「このレースとF1というスポーツ全体に本当に腹が立っている」

    「15年前なら、レース操作に対してペナルティがあった。でも今では、レース全体が操作されている」「あんなにゆっくり走るのは本当に嫌だった。けど(リアム)ローソンのせいで自分たちは後方スタートだったし、やらざるを得なかった」

    2ストップ制が失敗だったという点で一致した今、次はどうするべきか?

    フェルスタッペンは冗談交じりに提案する。

    「マリオカートみたいにバナナを投げるってのはどう?」

    「どうせここではレースできない。1回でも10回でもピットインしても変わらない。今のマシンじゃ、F2カーしか追い抜けないよ」

    ポールポジションから優勝したランド・ノリスは、モナコGPの日曜に“ショー”を求める風潮自体に疑問を投げかけた。

    「勝つべきレースをした人が勝てばいいんだと思う」「なぜ皆がそんなに期待してるのか分からない。これはエンタメじゃなくて、スポーツだよ」

    実はフェルスタッペンはかなり遅くまでピットインせず、赤旗によって“フリーピットストップ”が得られる展開を狙っていた。

    「こういうやり方を続ければ、いつかそういう結果が出るかもしれない」とオスカー・ピアストリは語った。

    「でも、それって本当に望む光景なのか?」

    レッドブルF1代表のクリスチャン・ホーナーは、唯一の解決策はモナコのレイアウト自体を変えることだと主張する。

    「トンネル出口や第1コーナーにブレーキングゾーンを作るようなことを検討すべき」「今のマシンは大きすぎて、前のマシンを抜くチャンスがない」

    ヴォルフは「あるいは最大ラップタイム制限を導入して、戦略的な減速行為を封じる手もある」と提案した。

    日曜に意図的にスローペースをとったアルボンは観客に謝罪し、ホーナーの意見に同意した上で「F1とモナコはレイアウトの変更を検討すべき」と述べた。

    マクラーレンF1代表のアンドレア・ステラは「必要なのはもっと小さく軽いマシンだ」と語った。

    モナコGP F1 モナコグランプリ

    レーシングブルズのCEOピーター・バイエルは、日曜の“戦略ゲーム”を実行した側のひとりだが、2ストップ制の導入はF1コミッションで真剣に議論された結果だと主張する。

    「次に何をすべきかは正直思いつかない」とSky Deutschlandに語り、「もしサーキット自体を変えられないなら、レギュレーションで介入するしかなかった」

    「C6やソフトタイヤ限定といった案もあるが、現実としてここでは追い越しは不可能。どんなに速くても、今のマシンじゃ抜けない」

    「モナコの週末は、チームやF1にとって非常に重要だ。ファンやパートナー企業も愛してくれている。我々はスポーティング面の改善に取り組む必要がある」

    元F1ドライバーのラルフ・シューマッハは警告する。

    「このままでは観客が離れて、GPそのものが終わりを迎える可能性がある」

    元F1ドライバーのニック・ハイドフェルドも提案を加える。

    「“ジョーカ―ラップ”のような仕組み――レース中に1~2回だけショートカットを使えるような仕掛けを検討してもいいかもしれない」

    一方ヴォルフは、「モナコはユニークなままでいい」との立場で、「オーバーテイク至上主義の批判者は、年に1回くらい“レース用メガネ”を外すべきだ」と皮肉った。

    そしてヒュルケンベルグはこう締めくくった。

    「モナコに来てる人の99%は、ヨットでシャンパンを飲むために来てる。レースの中身なんて気にしてないさ」

  • アイザック・ハジャー Sky Sports F1出演直前にファンと一触即発

    アイザック・ハジャー Sky Sports F1出演直前にファンと一触即発

    レーシングブルズのアイザック・ハジャーは、F1モナコGP週末にSky Sports F1のインタビューを受ける直前、ファンと緊張状態に陥っていたことが明らかになった。

    フランスとアルジェリアにルーツを持つルーキーのハジャーは、モンテカルロで今季自己最高の6位フィニッシュを果たし、マクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリ、フェラーリのシャルル・ルクレールとルイス・ハミルトン、レッドブルのマックス・フェルスタッペンに続く順位でゴールした。

    この結果は、予選6番手を記録した後、ハミルトンがフェルスタッペンを妨害したことでペナルティを受け、ハジャーが1つポジションを上げたことで確定したものだった。

    予選後のメディア対応を終えたハジャーは、Sky Sports F1のサイモン・レイズンビー、ジェンソン・バトン、ナオミ・シフが待つテレビクルーの元へと向かっていた。

    しかしその直前、ハジャーは現場で1人のファンと口論する様子が目撃された。

    映像には、ハジャーがその男性ファンに怒りの表情を向ける場面が映されており、その後ドライバーはモナコ港にあるレッドブルのホスピタリティユニットへと続く橋の方向にその人物を追って歩き出す姿が確認されている。

    カメラはその後すぐに画面を切り替えたが、ハジャーは数秒後にSky Sports F1のクルーと共に画面に登場し、インタビューが始まると依然として険しい表情を浮かべていた。

    この件について、関係者の証言によると、事の発端はハジャーがメディアペンを出た直後、ファンが写真を求めた際の「誤解」によるものだったという。

    そのファンはその後、ハジャーに対して無礼な発言をし、両者の間で短い口論が交わされた後、それぞれがその場を離れたとされている。

    アイザック・ハジャー ビザ・キャッシュアップ・RB・フォーミュラワン・チーム

    この出来事は、ちょうど1週間前にレッドブル・レーシングの角田裕毅が、エミリア・ロマーニャGPでアルピーヌのフランコ・コラピントと接触した後に、ネット上で差別的な言葉を含む誹謗中傷の標的となった件に続くものである。

    FP1中、ヴィルヌーヴシケインでコラピントに進路を妨害された角田は、怒りを表すジェスチャーを見せており、それがきっかけでネット上で激しい非難を受けた。

    この一件に対しては、アルピーヌF1チームやFIA会長であるモハメド・ビン・スライエムも声明を出し、角田への誹謗中傷を非難している。

    イモラでメディアに対応した際、角田とコラピントの両者は「冷静さを保つよう」呼びかけていた。

    さらにコラピントはモナコでも同様の姿勢を示し、「攻撃的なコメントをするユーザーはブロックする」と明言した。

    「F2時代からSNSではたくさんの批判を受けてきた」と語るコラピントは、「僕たちはアスリートとして、自分でコントロールできる部分に集中すべきだ」と述べた。

    「人が他人をどのように扱うかは、自分の手では変えられない。でも、僕自身のファンを含め、一定の線を越えた人々に対しては、できる限りブロックしている。まだ取り組み途中ではあるけどね」

    「中には過剰反応する人もいるし、ものすごく情熱的な人たちもいる。でも、時にその情熱は攻撃的な形で表れてしまう。そういう現実がある」

    「僕の側としては、ベストを尽くすしかない。多くの人がヘイトを受けているし、僕もそうだった。だからこそ、そういったことはレース中には頭から排除して、運転に集中するようにしている」

  • エイドリアン・ニューウェイ F1モナコGPでマクラーレンMCL39を注視

    エイドリアン・ニューウェイ F1モナコGPでマクラーレンMCL39を注視

    F1モナコGPの決勝前、グリッド上でアストンマーティンのエイドリアン・ニューウェイが、今季絶好調のマクラーレンMCL39を熱心に観察する姿が目撃された。

    F1史上最も成功を収めた設計者であるニューウェイにとって、これはアストンマーティン加入後初のサーキット現地視察であり、昨年レッドブルを離れて以来初のレース現場でもある。

    66歳のニューウェイは、開幕戦オーストラリアGPの約2週間前に「マネージング・テクニカル・パートナー」という新設ポジションで正式にアストンマーティン入りし、チームの株主にもなっている。現在は2026年のF1新レギュレーション下でのマシン開発を主導している。

    今回のモナコ訪問では、これまで数か月にわたってシルバーストンのファクトリーで学んできたアストンマーティンのオペレーションを、実戦で確認する貴重な機会となった。

    グリッド上でノート片手に他チームのマシンをじっくり観察するのは、ニューウェイの“お家芸”とも言えるルーティンだ。PlanetF1.comの現地記者トーマス・マーは、決勝直前にオスカー・ピアストリの駆るマクラーレンMCL39に目を留め、興味深そうに眺めるニューウェイの姿を捉えたという。

    その後、ニューウェイはレッドブルF1のチーム代表クリスチャン・ホーナーと談笑する姿も見られた。両者はレッドブル在籍時代、約20年にわたって共に成功を築き上げてきた間柄だ。なおホーナーはモナコGP週末の早い段階で、「ニューウェイがアストンマーティンの緑の制服を着ているのを見るのはまだ慣れない。まるで“巨大な鼻くそ”みたいだ」とジョークを飛ばしていた。

    エイドリアン・ニューウェイ アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    マクラーレンMCL39は今季8戦中6勝を挙げており、多くのF1技術者やライバルチームの関心を集めている。マイアミGP後にはFIAによる徹底的な車体検査が行われたが、技術規則に完全準拠していることが確認された。

    PlanetF1.comによるザク・ブラウンCEOの独占インタビューでは、ライバルからの“技術的トリック”疑惑について尋ねられたが、同氏は一蹴している。

    「気にしていない」とブラウンは語り、こう続けた。

    「探してもらってかまわない。見つかるのは、ただマクラーレンの素晴らしい男女スタッフが作り上げた、良いレースカーだけだ。みんな本当によくやっている」

    「マシンのどこかに“魔法の弾丸”があるわけじゃない」

    「でも他のチームがそれを信じて探し続けるなら、それはそれでいい。そんなゴーストを探すのに時間を費やすより、自分たちのクルマを開発する方が建設的だと思うけどね」

    「何もないものを見つけようと必死になるのなら、それはむしろ我々にとって都合がいいよ」

  • F1モナコGPとインディ500 最後の同日開催でのマクラーレンの24時間体制

    F1モナコGPとインディ500 最後の同日開催でのマクラーレンの24時間体制

    F1モナコGPとインディアナポリス500。これはモータースポーツ界における2大レースであり、今世紀に入ってからの多くの年で同じ日に開催されてきた。

    このスケジュールによって、5月最後の日曜日はレースファンにとっての祝日となった。アメリカでは、F1マシンがモンテカルロの街中を走る様子をコーヒーとクロワッサンを片手に楽しみ、その後バーベキューの準備をしながらインディアナポリス・モーター・スピードウェイでのグリーンフラッグを迎えることができる。

    これは祝うべき一日だ。なぜなら、この2つのレースは約7,200キロ離れて開催されるからだ。1日でインディ500とNASCARのコカ・コーラ600を完走する「ダブルデューティ」は聞いたことがあるかもしれないが、大西洋がモナコとインディを隔てている限り、1人のドライバーが同日に両方を走ることは現実的ではない。

    だが、チームであれば話は別だ。

    2020年以降、マクラーレンはF1とインディカーの両シリーズに参戦している。チーム運営はそれぞれイギリス・ウォーキングとアメリカ・インディアナポリスに拠点を構え分かれているが、マクラーレン・レーシングCEOのザク・ブラウンという存在によってつながっている。53歳のカリフォルニア出身の彼は、両シリーズのパドックに頻繁に姿を見せる存在だ。

    ここ3年、ブラウンは常にある決断を迫られてきた。レース当日、彼はモナコにいるべきか、それともインディにいるべきか。

    マクラーレン F1 ザク・ブラウン

    しかし、このジレンマも今後は訪れない。F1とモナコとの契約延長により、開催日が6月へと変更されたからだ。つまり、2025年のこの日曜日が、モナコGPとインディ500が同日に行われる最後の機会となる。

    ESPNはこれを記念して、モンテカルロとインディアナポリスの両地に記者を派遣。この2つの伝統的なレースに同時参戦する唯一のチーム、マクラーレンの1日に密着した。

    F1の設計思想をインディアナへ
    インディアナポリスでは、朝7時45分(現地時間)にF1モナコGPがスタートしたが、アロウ・マクラーレンのガレージではすでに作業が始まって2時間が経過していた。

    「もちろん、あっち(モナコ)のことは気にしてる。ボスがいるからね」と語ったのは、アロウ・マクラーレンのチーム代表トニー・カナーン。「でも、あまり見過ぎるわけにはいかない。こっちにもたくさん仕事があるから。あっちの様子は、あのテレビで流れてるよ」

    カナーンが指差したのは、インディ名物「ガソリン・アレー」にあるチームのオフィス。ドアには「チームメンバー専用」と書かれた紙が貼られていた。

    その中では、スポンサー関係者、ピット作業を終えたクルー、そして1970年代にマクラーレンでインディ500を2勝したジョニー・ラザフォードらが、コーヒーとモナコ中継を求めて集まっていた。

    「F1の仲間たちがどうしてるかは、いつも気にしてる」と語るのは、6度目のインディ出場となったパト・オワード。「F1と僕らは違う世界だけど、どちらもレースであることに変わりはない。F1チームがあそこまで成長したのを見て、僕らも必ずそこに行く。そして、彼らもそれを望んでる」

    マクラーレンは今や24時間稼働するチームだとカナーンは言う。「我々が寝ている間に、向こうは働いている。そしてその逆もある。F1とインディのエンジニアたちは、両方のシリーズを常にモニタリングしている。車がどこかで走っていれば、マクラーレンのレースコントロールは必ず見ている」

    マクラーレン インディ500

    同じチームでF1とインディを同時に戦うというのは、まさに現代マクラーレンの特徴だ。NASCARとの「ダブルデューティ」に挑むカイル・ラーソンも、こう語る。「このチームにいて学んだのは、誰もがレースを愛してるということ。F1からインディへのフィードバックが可能なら、逆もしかり。ザクはそこを真剣に考えてる」

    昔のマクラーレンでは考えられなかったという。ジョニー・ラザフォードは言う。「昔は完全に別物だった。F1はF1、インディはインディ。何が互いに助けになるのか、まったく分からなかった」

    だが今は、F1とインディの両方を支える技術連携が現実のものになっている。今年4月の中国GPではノリスとピアストリが1-2を達成。インディカーでも同時期にオワードとルンガーが2-3位に入り、あと少しで1976年5月以来となる同日勝利の再現だった。

    シャンパン片手にモナコ観戦
    ランド・ノリスがモナコでのポールを獲得すると、ザク・ブラウンの迷いは消えた。彼はそのままモナコに留まり、妻とともに祝勝会に参加した。

    「モナコで勝てるチャンスがあるなら、俺はここにいる。ないならインディに行く。両方で勝ってるのに、どっちにもいなかったなんて最悪だろう?」とブラウンは語った。

    そしてノリスがモナコGPを制した瞬間、それは正しい選択だったと証明された。

    マクラーレン F1 モナコGP

    F1ではレースが終わってようやく、インディ500への関心が高まる。だが、モナコがイモラとバルセロナに挟まれた3連戦の真ん中にある今、マクラーレンの多くのスタッフはレース直後にニース空港に向かっていた。ターミナルでiPad越しにインディを見るのが関の山だ。

    「ホテルで見るつもり」とブラウンは語ったが、「観戦者としては? いや、全然ダメ。落ち着いて見られないよ」と苦笑いを浮かべた。

    実際、マクラーレンにとってインディの結果は複雑だった。オワードは4位に入ったが、勝者はマクラーレンとの契約トラブルを抱えるアレックス・パロウだった。

    モナコ在住のピアストリは、「家のソファで見るつもり」と語り、ノリスに向かって「招待してくれれば行くけど」と冗談を飛ばした。

    だがノリス自身は、インディ500に出るつもりはないと明言した。

    「やらないよ、絶対に。今ここで言っておく。全然興味ない。自分の趣味じゃない。でも、向こうのドライバーたちには大きな敬意を抱いてる。F1でもやれるような実力者もいると思う」と語ったうえで、こう付け加えた。

    「でもね、俺は右にも曲がるのが好きなんだよ。それが一番の理由だね」

  • F1モナコGPの抜本改修案をGPDA会長が提案「ヌーヴェルシケインを動かせ」

    F1モナコGPの抜本改修案をGPDA会長が提案「ヌーヴェルシケインを動かせ」

    GPDA会長でサーキットデザイナーのアレックス・ヴルツは、先週末の退屈なレースを受けて再燃したモナコGPに対する批判の中で、この伝統あるサーキットをどのように変革すべきかについていくつかの提案を示した。

    義務付けられた2回のピットストップにもかかわらず、先週末のレースではオーバーテイクはわずか2回しか発生せず、マクラーレンのランド・ノリスを先頭としたトップ4のドライバーはスタート順位のままフィニッシュした。

    ヴルツは、自身のトラック設計会社「Wurz Design」(2027年からサウジアラビアGPの開催地となる予定のキディヤ・スピードパークを設計)を通じて、ソーシャルメディアに投稿した動画で、F1で最も象徴的なイベントに必要なダイナミズムを注入し、オーバーテイクの機会を切り開くことを狙った3つの回収案を示した。

    ヌーヴェルシケインをより下流へ移動させる
    元F1ドライバーであるヴルツの最初のアイデアは、モナコで実質的に唯一オーバーテイクが可能な場所とされるヌーヴェルシケインへの進入を強化することに焦点を当てている。彼の提案は、オーバーテイクの可能性を高めるためにシケインをタバココーナー寄りに移動させるというものだ。

    「シケインを後方に動かせば、オーバーテイクを準備したり仕掛けたりする確率が高くなる」とヴルツは説明した。「現在このコーナーは、ディフェンスが非常に容易なんだ。キンクやバンプの影響で守りやすい構造になっているからね。だけど、これを難しくすることができる」

    重要なのは、この提案はモナコの限られた空間内でも実行可能であるとヴルツが考えている点だ。鍵となるのは、コースを少し広げ、縁石を調整し、彼がカレンダー上で最も好きだと語るコーナーの性格を維持することにある。

    「タバコは私の好きなコーナーだ。本当に難しい。いまだに全開では走れず、少しブレーキを踏む必要がある――その感覚が大事なんだ。その特徴を残しつつタイミングを調整することが必要なんだ」

    飛び込みバトルのために再構成されたラスカス
    ヴルツが注目するもうひとつのボトルネックはラスカスだ。コーナーの頂点を2~3メートル外側にずらすことで、袋小路のようなこの場所を戦場へと変貌させられると彼は主張する。

    「もっと大胆な飛び込みができるようにコーナーが開ける」と彼は説明した。「つまり、前にいるドライバーは守るか、ドアを開けるかの選択を迫られる」

    「守ろうとすれば、コーナー出口では大きく減速することになるから、後続に列ができ、全体としてプレッシャーが高まるんだ」

    「これはちょっとした工夫に過ぎないけれど、実現は比較的簡単で、もっと激しい戦い、より強いプレッシャー、そしておそらくはオーバーテイクに繋がるんだ」

    この調整は全面的な再設計を必要とせず、しかしながらスペースが限られたこの区間でレースを左右する局面を生む起爆剤となりうるとヴルツは考えている。

    F1モナコGP ラスカス

    有名なフェアモント・ヘアピンの拡幅
    最後にヴルツが提案するのは、F1で最も遅く、おそらく最も象徴的なコーナーであるフェアモント・ヘアピンに対する控えめながらも重要な変更だ。彼の案は、主に内側の縁石を取り除くことでこのコーナーを約2.4メートル拡幅し、利用可能なアスファルトを最大限に活用するというものである。

    「このコーナーのキャラクターを変えることなく、オーバーテイクのための飛び込みを可能にする」と彼は語った。

    「このヘアピンは非常にタイトだから、右側のスペースも拡張して、縁石を失くし、物理的な壁までアスファルトで覆う必要がある。そうすれば回頭半径が広がるんだ」

    「仮に飛び込みが失敗しても、追加されたアスファルトが救済になる。その結果、守りの動きが増えてフィールド全体に波及効果が生まれる」

    この変更はヘアピン自体の改善にとどまらず、その先の改良されたヌーヴェルシケインへと繋がるレース展開をセットアップするポイントにもなるとヴルツは見ている。

    F1モナコGP フェアモント・ヘアピン

    モナコの魂を守り、レース性を高める
    ヴルツにとって、この提案の目的はモナコのDNAを書き換えることではなく、その伝統を尊重しつつ、現代F1の要求に適応させることにある。

    ヌーヴェルシケイン、ラスカス、フェアモント・ヘアピンという3つの重要な箇所に手を入れることで、ヴルツは、モナコGPがその華やかさにふさわしいオン・トラックの戦いを提供できるようになると信じている。

    F1およびFIA、さらにはモナコ自動車クラブが彼のビジョンを採用するかどうかは今後次第だが、変革を求める声は日に日に高まりつつあり、経験と実現性に基づいた彼の青写真はその先駆けとなるかもしれない。