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  • ホンダF1 PU開発責任者を交代 深尾洋一郎が新LPL「開発加速と次世代への移行」

    ホンダF1 PU開発責任者を交代 深尾洋一郎が新LPL「開発加速と次世代への移行」

    ホンダ・レーシング(HRC)は9月14日、F1パワーユニット(PU)の開発体制を変更し、2026年10月1日付で開発責任者(LPL)を交代すると発表した。

    これまでF1パワーユニット開発を牽引してきた角田哲史に代わり、現アシスタントLPLでF1プロジェクト副責任者、ソフトウェア部門責任者を務める深尾洋一郎が新たなLPLに就任する。HRCは今回の人事について、PU開発のさらなる加速と次世代へのスムーズな移行を目的としたものだと説明している。

    ホンダF1が10月から新たなPU開発体制へ
    ホンダは2026年からアストンマーティンとワークスパートナーシップを組み、新しいF1パワーユニットレギュレーションの下で参戦している。

    HRCによれば、今回の責任者交代は現在の状況を受けた突発的なものではなく、「次世代への確実な技術継承を見据えた計画的な移行」と位置づけられている。

    「2026年に導入された新レギュレーションに続き、2027年以降もさらなる規則変更への対応が求められる中、早期に新体制へ移行することで、競争力の高いPUを目指し、強固な開発体制を構築してまいります」

    2027年以降のF1ではパワーユニット規則にもさらなる変更が予定されており、ホンダにとって現行PUの競争力向上と将来仕様への開発を並行して進める重要な時期となる。

    深尾洋一郎は2002年からF1開発に携わる
    新LPLに就任する深尾洋一郎は、2002年に本田技研工業へ入社。同年から本田技術研究所の栃木研究所でF1プロジェクトのエンジン・ギアボックス制御システム開発に携わった。

    2009年には量産ハイブリッドシステム開発を担当したほか、朝霞研究所でMotoGPプロジェクトの制御システム開発にも従事。2011年に再び量産ハイブリッドシステム開発を担当した。

    ホンダがF1復帰に向けて準備を進めていた2014年にはF1プロジェクトの制御システム開発責任者に就任。2017年からはF1プロジェクト副責任者、制御システム開発責任者に加え、Sakura Mission Room(SMR)の責任者も務めた。

    2022年のHRC体制移行後もF1プロジェクト副責任者、制御システム開発責任者、SMR責任者を担当しており、長年にわたってホンダF1のパワーユニット開発、特に制御領域の中核を担ってきた人物となる。

    ホンダ・レーシング

    現行PUの競争力向上と2027年以降を見据えた人事
    ホンダにとって2026年は、アストンマーティンとの新たなF1プロジェクトがスタートした重要なシーズンである。一方で、新世代パワーユニットは実戦投入後も継続的な性能向上が求められている。

    今回、シーズン終了を待たず10月1日というタイミングで新LPLへ移行するのは、現行パワーユニットの開発を進めながら、2027年以降の規則変更にも早期から対応できる体制を整える狙いがある。

    角田哲史から深尾洋一郎への交代を「計画的な移行」と明確に説明したHRC。アストンマーティンとともに戦うホンダF1は、現行PUの競争力向上と次世代への技術継承を同時に進めるため、10月から新たな開発体制へ移行する。

  • ホンダF1 初開催マドリンクのバンクを警戒「潤滑システムへの挑戦」

    ホンダF1 初開催マドリンクのバンクを警戒「潤滑システムへの挑戦」

    ホンダは、2026年F1スペインGPで初開催を迎えるマドリンクにおいて、特徴的なバンクコーナー「モニュメンタル(La Monumental)」がパワーユニット(PU)の潤滑システムにとって大きなチャレンジになると警戒している。

    ホンダ・レーシング(HRC)でトラックサイドオペレーションを統括する折原伸太郎は、現地で実際にコースを確認。

    横方向だけでなく垂直方向にも大きなGが加わるモニュメンタルでは、まず安全マージンを確保した設定から走行を開始し、実走データを確認しながら予選に向けて段階的に限界を引き上げる方針を明らかにした。

    モニュメンタルを現地確認「かなり厳しく興味深い」
    マドリードに新設されたマドリンクは全長5.416km、22のコーナーで構成される。そのなかでも最大の特徴となるのが、約550mにわたって続くバンクコーナーのモニュメンタル(La Monumental)だ。

    最大24%のバンクを持つこの区間では、通常のコーナリングによる横方向のGだけでなく、バンクによって垂直方向にも特殊な荷重が加わる。

    折原伸太郎はスペインGPを前に実際にマドリンクを歩き、モニュメンタルを確認した。

    「昨日、サーキットを下見して、このバンクコーナーも確認しました。かなり厳しく、興味深い区間です」

    そしてホンダのPUという観点から、特に注意しなければならないポイントとして潤滑システムを挙げた。

    「パワーユニットに関して最も興味深いポイントは、おそらく潤滑システムです」

    「このコーナーでは横方向だけでなく垂直方向にもGを受けます。そのため、潤滑システムにとっては本当のチャレンジになります」

    ホンダPUは安全マージンを確保して走行開始
    F1のパワーユニットは、激しい加減速やコーナリングによって大きなGを受ける環境でも、各部へ安定してオイルを供給し続けなければならない。

    特にマドリンクは今回がF1初開催であり、実際のF1マシンがモニュメンタルを走った際にどのような負荷が発生するのかについて、過去のグランプリから得られた実走データは存在しない。

    そのためホンダは、金曜日の走行開始時点から限界を狙うのではなく、潤滑システムに一定の安全マージンを持たせる。

    「そのため、最初は潤滑について慎重な設定から始めて、状況を評価することになると思います」

    重要になるのは、FP1とFP2で実際にPUに加わる負荷を確認することだ。

    シミュレーションによる事前準備は行われているものの、実際の路面状況やマシンの挙動を含めたデータを収集し、その結果を基に設定を最適化していく。

    「そこから予選に向けて、段階的にそのマージンを減らしていきます」

    つまりホンダは、安全側の設定からスタートし、実走によってモニュメンタルでの負荷を確認。そのデータに問題がないことを確かめながら、予選に向けてPUをより攻めた領域へ近づけていくことになる。

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    モンツァではホンダとのドライバビリティ改善に手応え
    ホンダとアストンマーティンは、純粋な出力だけではなく、ドライバーがパワーを扱いやすくするためのドライバビリティについても改善を続けている。

    アストンマーティンのマイク・クラックは、前戦F1イタリアGPのモンツァで、この領域に明確な進歩があったと評価した。

    「モンツァで踏み出したステップには満足している。以前にも言ったが、ドライバビリティは非常に重要なテーマだ。エンジンだけではないし、シャシーだけでもない。本当に両方を組み合わせたものだ」

    クラックによれば、ドライバビリティにはPUの特性だけでなく、シフトダウンやブレーキング、タイヤの状態、コーナーへの進入速度など、さまざまな要素が絡み合う。

    「シフトダウン、ブレーキ、タイヤの状態、どのくらいの速度で進入するのかなど、多くの要素が関係している。ただ、モンツァで我々が一緒に踏み出したステップには本当に満足している」

    モンツァでアストンマーティンの絶対的な競争力が高かったわけではないこともクラックは認めている。それでも、壁が近く、ドライバーが自信を持って限界へ近づかなければならないマドリンクでは、扱いやすさの改善には大きな意味があるという。

    「モンツァでのパフォーマンスが素晴らしかったわけではない。それは明らかだ。ただ、このようなサーキットでは、それを手にしていることはいいことだ。自信につながるからだ」

    「壁がこれほど近いところでプッシュするには自信が必要だ。だから、これはいいステップだった」

    ドライバビリティ改善に終わりはない
    一方でクラックは、ホンダとのドライバビリティ改善が完成したわけではないことも強調する。

    折原伸太郎にも同意を求めながら、シーズンを通して継続してきた改善作業を今後も進めていく考えを示した。

    「伸太郎も私に同意すると思うが、ドライバビリティが十分に良くなるということは決してない。常に改善できる」

    「我々はシーズンを通してやってきたように、これからもそこに取り組んでいく。ただ、我々がこのステップを踏み出せたことには満足している」

    初開催のマドリンクでは、シミュレーションだけでは完全に把握できない要素が数多く残されている。なかでもモニュメンタル(La Monumental)は、最大24%のバンクと長い旋回時間によって、ホンダPUにこれまでとは異なる負荷を与える可能性がある。

    ホンダはまず安全マージンを確保してFP1をスタートし、実際に発生する横方向と垂直方向のG、それによる潤滑システムへの影響を確認する。そのデータを基に一歩ずつマージンを削り、予選で最大限のパフォーマンスを引き出すことを目指す。

    モンツァで手応えを得たドライバビリティの改善とともに、未知のモニュメンタルへの対応は、ホンダとアストンマーティンにとって初開催F1スペインGPの重要な技術テーマとなる。

  • ホンダF1 2027年PUで「大きな一歩」 大幅進化へロードマップ

    ホンダF1 2027年PUで「大きな一歩」 大幅進化へロードマップ

    ホンダ・レーシング(HRC)は、2027年F1シーズンに向けてパワーユニット(PU)を大幅に進化させる方針を示した。F1イタリアGPではアストンマーティンの最高速不足が改めて浮き彫りとなったが、HRCの折原伸太郎は開幕戦に向けて「もう一度、大きな一歩を踏み出す」と語った。

    一方、今季中にエンジンの大規模アップデートを投入する予定はないという。

    モンツァではこれまで課題となっていたドライバビリティ改善策に一定の成果が確認されており、次戦F1スペインGPでは、その進歩がより生きることが期待されている。

    ホンダは2027年に向けて「ロードマップ」を策定
    高速区間が大部分を占めるモンツァでは、ホンダ製PUのパワー不足がフェルナンド・アロンソとランス・ストロールのラップタイムに大きく影響した。

    F1イタリアGP決勝後、Mundo Deportivoは折原伸太郎に対し、このパワー差を解消するために2027年には現在のPUを捨て、完全に新しいエンジンを造る必要があるのかと質問した。

    折原伸太郎は、具体的な設計変更には踏み込まなかったものの、すでに明確な開発計画が存在すると説明した。

    「エンジンを開発するためのロードマップがあり、現在自分たちがどこにいるのかも分かっています。そのロードマップに基づいて、開幕戦に向けてもう一度、大きな一歩を踏み出します」

    ただし、2027年開幕時点ですべての差を解消できるかについては慎重な姿勢を示した。

    「開幕戦までにすべての差を取り戻せるかどうかを言うのは難しいですが、開幕戦に向けてそのギャップを縮めるために引き続き取り組んでいます。ただ、以前にも申し上げたように、今年はエンジンの大きなアップデートはありません」

    モンツァでドライバビリティ改善策を確認
    一方、モンツァではポジティブな材料もあった。HRCが事前にベンチテストで確認していたドライバビリティ改善策を実車に投入し、ドライバーからも好意的なフィードバックが得られたという。

    「このイベントの前にも申し上げたように、僕たちにとって重要だったのは、対策が実際のコースでどのように機能するかを確認することでした。ベンチでテストしてポジティブな挙動を確認していました」

    「その対策をサーキットに持ち込みました。ドライバーからもポジティブなフィードバックを受けましたし、データからもポジティブな部分を確認できました」

    折原伸太郎は、この進歩が次戦F1スペインGPの舞台となるマドリンクで重要になると考えている。

    「マドリードに向かう前としてはポジティブな一歩です。あそこではドライバビリティがかなり重要になります。ですから、いい方向性を見つけられたと思います。それは僕たちにとってポジティブな部分です」

    ホンダ・レーシング

    アストンマーティンも改善を評価
    アストンマーティンのマイク・クラックも、モンツァでは結果に表れにくかったものの、マシンの扱いやすさが改善したことを評価した。

    「そう思う。折原もドライバビリティについて話したが、これはシーズン開幕当初からずっと懸念事項だったと思う。我々は進歩したと思っている」

    「外から見ている皆さんには分かりにくいだろうし、このサーキットの特性によって少し隠れてしまったかもしれない。しかし、彼が言ったように、マドリードに向けてこの部分で小さな一歩を踏み出せたことを非常にうれしく思っている。マシンの予測可能性が高まり、ドライバーがもう少し限界に近づけるようになる」

    「マシンに一貫性があれば、ドライバーは限界に近づける。マシンに一貫性がなければ、ドライバーはマージンを残さなければならない。だから、その観点ではポジティブな一歩だった」

    「ここでの全体像はあまりポジティブではない。しかし、この週末から持ち帰ることのできるポジティブな部分はいくつかあると思う」

    F1スペインGPではモンツァより好転を予想
    次戦F1スペインGPについて、クラックはシミュレーション上ではモンツァよりアストンマーティンに適したコースになるとの見通しを示した。

    「マドリードではもっと良くなるか? そうだ。シミュレーションの観点では、ここよりも良い状況になるはずだと思っている」

    「フェルナンドも以前話していたと思うが、残りのカレンダーには我々により適したサーキットもあれば、そうではないサーキットもある。ここが難しくなることは分かっていた。来週はもっと良い状況になることを期待している」

    「ただ、最終的にどこに位置するのかを言うのはいつも難しい。我々もこのサーキットを知らないからだ。持っているのはシミュレーターのデータだけだ」

    マドリンクではタイヤデグラデーションも重要な要素になると予想される。アストンマーティンはザントフォールトでタイヤをうまく管理し、アロンソが18番手から9位まで順位を上げている。

    「チャレンジになると思う。皆さんが笑っているのが見える。我々も楽しみにしている」

    「先ほど言ったように、興味深いものになるだろう。最終的に違いを生むのは必ずしもタイヤデグラデーションだけではない。しかし、我々のデグラデーションが良ければ、それを生かす。ライバルと比較して非常に高いデグラデーションを抱えてスタートするより、ずっといい」

    バクーとラスベガスでは再び苦戦を覚悟
    一方、アロンソは残りのF1カレンダーのなかで、バクーとラスベガスではモンツァと同様、パワー不足が大きな弱点になる可能性を指摘している。

    クラックも、この2戦が難しいものになることを認めた。

    「そうだ。皆さんは適切な候補を選んだ。この2つは簡単ではない。それは分かっている。しかし、だからといって諦めるわけではない」

    「できる限りのことをする。バクーは紙の上では我々にそれほど適していなくても、いつも多くのインシデントが起きる。だから、いつ何が起きてもおかしくない。そしてラスベガスは昨年、とても寒く、雨も降った。我々が諦めることはない」

    アロンソは、エイドリアン・ニューウェイによって進化したアストンマーティンのシャシーにはシンガポールが比較的適している可能性があるとの見方についても慎重な姿勢を示した。

    「特定のサーキットを挙げたくはない。それにシンガポールはもちろんスプリントだから、さらに難しくなる。すべてを正しく機能させるための時間がないからね」

    「通常、このようなサーキットでは走るにつれて路面にラバーが乗り、ドライバーも慣れていく。どんどんウォールに近づいていかなければならないし、最初から近づきすぎてしまうこともある。理論上は僕たちにより適したサーキットに見えたとしても、簡単な週末になるという意味ではない」

    「だから、常に集中して、あらゆる面でプロフェッショナルに準備し、それからすべてを100%実行して、何を達成できるかを見る必要があると思う。ザントフォールトではポイントを獲れるとは思っていなかった。まずまずの状況にはなれると思っていたけど、レースではいつだって何かが起こり得る」

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    アロンソの予選ではERSに異常信号
    折原伸太郎は、F1イタリアGP予選でアロンソのPUに発生したトラブルについても説明した。データ上でERS回路に異常を示す信号が確認されたため、予防措置として一部コンポーネントを取り外したという。

    「予選ではデータに異常な信号を確認しました。ERSの回路で通常とは異なる何かが起きていることを示しているように見えました」

    「そこでデータを確認し、コンポーネントも慎重に点検しました。予防措置としていくつかのユニットを取り外し、一部のパーツを検査のためにさくらへ送り返しました」

    「現時点では何が起きたのかは分かっており、根本原因を調査しています。HRCに残っているコンポーネントは良好な状態で、引き続き検査を進めます」

    決勝でアストンマーティン2台がリタイア
    決勝ではアロンソとストロールの両方がリタイアした。クラックによれば、アロンソはコースを外れた際にフロアを損傷。ストロールには油圧系のトラブルが発生した。

    「フェルナンドの場合はレーシングラインを外れ、縁石と石によってフロアにいくらかダメージを負った」

    「ランスの場合は油圧を失った。油圧フルードが失われ、回復させることもできなかったため、コース上でマシンを止めなければならなかった」

    記者から「それはホンダではなく、アストンマーティン側の問題ですね」と確認されると、クラックは両者を明確に切り分けることを拒んだ。

    「アストンマーティン側、ホンダ側というものは存在しない。油圧系の故障が起きたのであり、我々はその原因を突き止めなければならない」

    モンツァでは依然としてPUの絶対的なパフォーマンス不足という厳しい現実が示された一方、ホンダはドライバビリティ改善という一歩を確認した。2026年中の大規模なPUアップデートは予定されていないが、HRCはすでに2027年開幕を見据えたロードマップを進めており、そこで「大きな一歩」を実現できるかがアストンマーティンの競争力を左右することになりそうだ。

  • HRC US新社長にケルビン・フー就任 デビッド・ソルターズは退任

    HRC US新社長にケルビン・フー就任 デビッド・ソルターズは退任

    ホンダ・レーシング・コーポレーションUSA(HRC US)は、ケルビン・フーが新社長に就任すると発表した。現社長のデビッド・ソルターズはモータースポーツ業界を離れ、テクノロジー系スタートアップ企業に移る。新体制は2026年9月12日付で発足する。

    フーはこれまでHRC USの副社長を務め、インディカーやIMSAをはじめとする幅広いプログラムに携わってきた。ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント(HPD)時代から組織を支え、ソルターズと約6年間にわたって緊密に仕事をしてきた人物である。

    デビッド・ソルターズがHRC USを退任
    ソルターズは2020年、当時のHPDの社長に就任。2015年にチーフエンジニア兼エンジン技術責任者としてHPDに加入し、2019年にはテクニカルディレクターへ昇進した。

    ホンダ加入以前には、フェラーリのF1プログラムで内燃エンジンのパワーユニット開発責任者、メルセデス・ベンツ・ハイパフォーマンス・エンジンズ(旧イルモア)でF1エンジン開発責任者を務めたほか、コスワース・レーシングではCARTインディカー向けエンジンの開発・設計エンジニアを務めた経歴を持つ。

    HRC USのトップとして、ソルターズはインディカー・シリーズで3度のマニュファクチャラーズタイトルと5度のドライバーズタイトル獲得を指揮。2022年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権では、チーム、ドライバー、マニュファクチャラーの各タイトルを制した。

    また、競技プログラムの電動化と近代化も推進。2023年のIMSAにアキュラARX-06 LMDhを投入し、2024年にはハイブリッドシステムを搭載したインディカーの導入に携わった。

    さらに、アパレルやパフォーマンスパーツ、ビンテージのホンダ/アキュラ・レーシングカーとコレクターを結びつけるヘリテージ・レーシング・プログラムなどを扱う新たな事業部門の立ち上げも主導した。

    ソルターズは退任にあたり、次のように語った。

    「ホンダ・レーシング・コーポレーションUSAの素晴らしいスタッフ、我々のレーシングチーム、そして才能あるドライバーたちに心から感謝したい。米国におけるホンダのレーシングヒストリーに、みんなと一緒に新たな歴史を加えられたことを光栄に思っている」

    「ホンダ・レーシングは11年前、私と家族にカリフォルニアへ移る機会を与えてくれた。私たちは米国市民になるという栄誉にも恵まれ、ホンダファミリーの一員として本当に素晴らしい人生経験をすることができた」

    「HRC USはこれまで以上に強い組織になっている。素晴らしいチームがあり、インディカーには非常にエキサイティングな未来があり、さらに多くのクールな新プロジェクトも控えている。今こそケルビンにバトンを渡す最高のタイミングだ。私たちはこの6年間、緊密に仕事をしてきた。ケルビンはHRC USのチームを支え、未来へ導いていく理想的な人物だ」

    ケルビン・フーが9月12日付で新社長に就任
    新社長となるフーは、副社長としてHRC USの活動を支え、ホンダがこれまで記録したインディアナポリス500での17勝のうち4勝に携わった。

    フーは2015年にHPDへ加入。当初はシャシー設計、エアロダイナミクス、パフォーマンスエンジニアリング部門を統括した。2020年にプログラムディレクターとなり、2021年には副社長へ昇進した。

    ホンダでモータースポーツの世界に入る以前は、防衛・航空宇宙産業でキャリアを築いた。ミシガン大学で機械工学の学士号と修士号を取得し、その後カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得してポスドク研究員を務めた。さらにウィスコンシン大学マディソン校でもポスドクを経験した。

    その後、HRテキストロンに研究開発エンジニアとして入社してプロダクトマネージャーまで昇進し、ITTエアロスペースではエンジニアリングディレクターを務めた。

    フーは新社長就任について次のようにコメントした。

    「HRC USに加入したとき、いつかこの素晴らしい組織を率いる機会を与えられるとは想像もしていなかった。本当に身の引き締まる思いだ」

    「HPDとHRC USでのキャリアを通じて、NSX GT3、アキュラDPiレーシングカー、LMDhのエンジンと車両の開発から、レーシングチームとの長期的なパートナーシップ構築まで、幅広いプログラムに携わる幸運に恵まれた」

    「デビッド・ソルターズには、リーダーシップ、友情、そして指導に心から感謝したい。デイブは常に我々全員に、もっと大きく考え、もっと速く動き、そして自分たちが根っからの競争者であることを決して忘れないよう求めてきた」

    「彼は真のレーサーだ。そのビジョンと献身によって、HRC USは今日の世界トップクラスの組織へと形作られた。その影響は今後何年にもわたって残り続けるだろう」

    インディカー継続と新事業を軸にHRC USの次章へ
    HRC USは今後も北米モータースポーツを重要な活動領域と位置づける。特にインディカーについては参戦継続を改めて決定しており、フーはシリーズの成長に期待を示した。

    「これからのHRC USの未来をとても楽しみにしている。我々は最近、インディカーへのコミットメントを更新した。シリーズは成長を続け、北米モータースポーツにおける地位をさらに強固なものにしている」

    「新たなビジネス事業によって、ホンダのレーシングファンにこれまで以上のサービスを提供できる体制も整っている。我々はこれからもイノベーションと競争に取り組み、モータースポーツの未来を形作る人材と技術の育成に力を注いでいく」

    「ホンダのレーシングスピリットは、常に既成概念に挑み、限界を押し広げることにある。HRC USを率い、みんなと一緒にその物語の次の章を書いていくことを楽しみにしている」

    ソルターズの退任によってHRC USはひとつの節目を迎えるが、その後任にはHPD時代から技術開発と事業運営の双方を熟知するフーが就く。インディカー、IMSA、新規ビジネスを含むHRC USの次の時代を、新たなリーダーとして率いることになる。

  • ホンダF1 新PUで想定以上の燃焼変化「HRC Sakuraで制御対策」

    ホンダF1 新PUで想定以上の燃焼変化「HRC Sakuraで制御対策」

    ホンダ・レーシング(HRC)は、F1オランダGPで投入した新スペックのパワーユニット(PU)について、狙い通りの性能向上を確認する一方、予想以上に大きな燃焼特性の変化によってドライバビリティに課題が生じたことを明らかにした。

    HRCはザントフォールトで得た走行データとドライバーからのフィードバックを栃木県さくら市の開発拠点に持ち帰り、制御面の改善作業を実施。

    パワーへの要求が非常に高いモンツァで行われる2026年F1イタリアGPでは、その対策が狙い通り機能するかを確認することが最大の焦点となる。

    新スペックで性能向上もドライバビリティに課題
    アストンマーティンは前戦オランダGPでホンダの新しいPUスペックを投入した。フェルナンド・アロンソは決勝で9位に入り、ポイント獲得を果たしている。

    HRCの折原伸太郎はイタリアGPを前に、Motorsport Weekを含むメディアに対し、新スペックではダイナモで確認していた性能向上を実際のコース上でも確認できたと説明した。

    「オランダでエンジンに新しいスペックを投入しました。性能面で一歩前進したことを確認しています。ダイナモで確認していた通りの結果だったので、そこはポジティブな点でした」

    一方で、新スペックへの変更によってPUの特性も変化し、ドライバビリティについて新たに改善すべき部分が明らかになった。

    「その一方で、ドライバビリティについて改善できる部分が見つかりました。そのため、変換特性をアップデートして準備しています」

    ホンダ・レーシング

    予想以上だった燃焼特性の変化
    ホンダは2026年シーズン開幕戦でもドライバビリティの問題に直面しており、その後、パワーデリバリーを滑らかにするための専用の制御ツールを開発してきた。

    しかし、今回の新スペックでは燃焼特性の変化が想定以上に大きく、それまでに用意していた制御では十分に対応できなかったという。

    「燃焼の違いが我々の予想よりもはるかに大きかったです。そのため、新しい燃焼に対してより適切に制御できるよう、制御用の新しいツールを調整する必要がありました」

    HRCはザントフォールトで収集したデータとドライバーからのフィードバックをさくらの開発拠点に持ち帰り、ダイナモを使って対策を進めた。

    「データの設定と新しいツールを準備し、新しい変換特性に適応させて、より良いドライバビリティを得られるようにしました。ただ、それでも満足できるドライバビリティには十分ではありませんでした。そこがオランダで見つかった明確な改善ポイントです」

    モンツァで対策効果を確認
    高速のモンツァは、2026年型PUにとってシーズンでも特に厳しいサーキットのひとつとなる。長い全開区間によって内燃エンジン(ICE)への要求が高く、電気エネルギーの展開を含めたPU全体の性能がラップタイムに大きく影響する。

    折原は、新スペックによる性能向上を確認しているものの、モンツァでは現実的な期待値を持つ必要があると語った。

    「ここモンツァでは内燃エンジンに対する要求がかなり大きいです。エンジンに新しいスペックを投入して性能向上を確認できたとしても、このコースでは現実的に考える必要があります。内燃エンジンにとって非常にチャレンジングなコースになると思います」

    そのうえで、イタリアGPではザントフォールト後に準備したドライバビリティ改善策の確認を最優先する。

    「すべてのデータをダイナモに持ち帰り、ドライバーからのフィードバックもダイナモに反映しました。HRC Sakuraでは制御を改善し、より良いドライバビリティを得るためのテストを行っています。ですから、モンツァでの我々の主な焦点は、その対策を確認することです」

    信頼性を犠牲にした性能追求はせず
    「スピードの神殿」と呼ばれるモンツァでは最高速性能が重要になるが、ホンダはラップタイムを求めるために信頼性を犠牲にしてPUを限界以上まで攻める考えはない。

    折原は、現在の信頼性には満足しており、性能を最大化するためにリスクを取る必要はないと強調した。

    「我々は常に信頼性と性能の間で良いバランスポイントを見つける必要があります。信頼性テストの結果を見る限り、現時点では信頼性に満足していますし、性能面でも最大限を引き出すためにリスクを取る必要はありません」

    ホンダにとってモンツァは、新スペックで得た純粋な性能向上を生かしながら、ザントフォールトで表面化したドライバビリティの問題をどこまで解消できたかを見極める重要な週末となる。

  • ホンダF1 人材不足解消「レッドブル時代の重要エンジニアも復帰」

    ホンダF1 人材不足解消「レッドブル時代の重要エンジニアも復帰」

    ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長は、2026年F1シーズン序盤の苦戦につながった要因のひとつだった人材面の問題について、現在はすでに解消したと明かした。さらに、レッドブルとのプロジェクトで成功を支えた重要なエンジニアもF1プロジェクトに復帰しているという。

    アストンマーティン・ホンダは、新レギュレーションが導入された2026年に厳しいスタートを切った。

    ホンダは新型パワーユニット(PU)の開発開始でライバルに後れを取り、その背景には2021年末のF1撤退に伴う開発体制の縮小もあった。

    しかし、渡辺康治社長は現在のHRCについて「人数という意味でも、能力という意味でも十分なエンジニアを採用することができた」と説明。2027年に向けた巻き返しへの体制は整ったとの認識を示している。

    2021年のF1撤退で生じた開発の空白
    ホンダは2021年限りでF1への正式参戦を終了。当時F1プロジェクトに所属していた多くのエンジニアは、量産車や先進技術などホンダ社内の別部門へ異動した。

    その後もHRCを通じてレッドブルへのPU供給と技術支援を継続したものの、F1プロジェクト自体は以前より大幅に縮小されていた。

    渡辺康治社長は以前、2022年3月末にエンジニアをホンダの各部門へ戻し、2023年4月にF1復帰が承認されてから再び人材を集め始めたため、体制を100%まで戻すには時間が必要だったと説明している。

    新規則に向けて早い段階から開発を続けていたライバルに対し、この空白期間はホンダにとって大きなハンデとなった。

    渡辺康治社長は今回、2026年シーズン序盤の苦戦について、その事実を改めて率直に認めた。

    「私たちは開発を始めたのが非常に遅かったので、その遅れを取り戻す必要があります」

    「遅れを取り戻すのは簡単ではありません。予算制限がありますし、それ以外にもさまざまな制約があります」

    2023年からPUメーカーにもコストキャップが導入されたことで、単純に人員や予算を投入してライバルとの差を埋めることもできない。

    人材不足「今はもう問題ではありません」
    しかし、F1復帰当初に抱えていた人材面の問題については、すでに状況が大きく変わっている。

    「はい、以前は問題がありました。しかし、今はもう問題ではありません」

    「人数という意味でも、能力という意味でも、十分なエンジニアを採用することができました。ですから、今は大丈夫です」

    ホンダは2026年F1復帰に向けて社内から経験者を呼び戻すだけでなく、新たなエンジニアの採用も進めてきた。英国にもHRC UKを設立し、アストンマーティンの本拠地であるシルバーストンとの連携を強化する体制を構築している。

    レッドブル時代の重要エンジニアが復帰
    さらに注目されるのが、レッドブルとのF1プロジェクトを経験したエンジニアの復帰だ。

    ホンダはレッドブルとのパートナーシップでF1世界選手権を制し、マックス・フェルスタッペンのタイトル獲得を支えるなど大きな成功を収めた。

    その時代にプロジェクトを支えた人材が、現在のアストンマーティン・ホンダのF1プロジェクトにも戻ってきているのかと問われた渡辺康治社長は認めた。

    「はい、そうです」

    ただし、レッドブル時代のスタッフ全員が復帰したわけではない。

    「全員ではありません。ただ、当時そこで仕事をしていた重要な人たちはF1プロジェクトに戻ってきています」

    ホンダにとって重要なのは単純な人数だけではない。F1のPU開発や実戦運用を経験し、レッドブルとともにタイトルを争った経験を持つ人材が戻ったことで、新たに加わったエンジニアへノウハウを伝えていくことも可能になる。

    「私たちは完全に準備できています」
    人員の再構築を進めてきたHRCについて、成功を目指すために必要な体制は整ったのか。

    渡辺康治社長の答えは明確だった。

    「もちろんです。私たちは完全に準備できています」

    一方で、組織を立て直したからといって、すぐにトップメーカーとの差を埋められるわけではないとも強調する。

    「すべてのチームが毎日進化しています」

    「追いつくということは、相手よりも速いペースで進化しなければならないということです。それは簡単なことではありません」

    ホンダが追いかけているライバルも開発を続けている。現在存在する性能差を縮めるためには、ライバルを上回る速度で開発を進めなければならない。

    ホンダ・レーシング

    スペック2は「最初の一歩」
    その巻き返しに向けた具体的な一歩となったのが、F1オランダGPで投入された新仕様PUだ。

    ホンダは2026年シーズン序盤からPUの性能やドライバビリティなどで苦戦してきたが、ザントフォールトでアップデートを投入した。

    ただし、渡辺康治社長は今回のスペック2を完成形とは位置づけていない。

    「もちろんです。今回のスペック2は、状況を改善するための最初の一歩です」

    「そして、毎年少しずつ近づいていきます。私たちの目標は勝つことです」

    つまり、今回のアップデートは一度でライバルとの差を埋めるためのものではなく、今後続いていく開発のスタート地点という位置づけだ。

    ADUOを活用してライバルを追撃
    ホンダが差を縮めるうえでもうひとつ重要になるのが、ADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)だ。

    ADUOは、F1のPUメーカー間に一定以上の性能差が確認された場合、後れを取っているメーカーに追加の開発機会を認める仕組みである。

    渡辺康治社長も、この制度を利用して開発を加速させる必要があると語った。

    「もちろん、ADUOのレギュレーションを活用しながら開発を加速させて、近づいていかなければなりません」

    FIAが公表した最初の2回のADUO評価では、レッドブル・パワートレインズが基準となり、ホンダは4%を超える性能差があるカテゴリーに入ったことで追加開発機会を得ている。

    ホンダにとってADUOは単なる救済措置ではなく、開発開始の遅れによって生じたギャップを取り戻すために活用すべき重要な機会となる。

    2027年は「はるかに上」に
    では、人材面の立て直しを終え、スペック2を投入し、ADUOによる追加開発機会も得たホンダは、2027年にどこまで前進できると考えているのか。

    渡辺康治社長は、まず目の前の課題をひとつずつ解決していく必要があるとしながらも、来季について強い期待を示した。

    「その後、一歩ずつトップチームに近づいていきます」

    「ですから来年は、もちろん現在の状況と比べれば、はるかに、はるかに上のところにいるはずです」

    2021年のF1撤退によって生じた人材と開発の空白は、2026年のホンダに大きな影響を残した。しかし、HRCはその問題を認めたうえで組織を再構築し、現在は人数と能力の両面で必要なエンジニアを確保したとしている。

    さらに、レッドブルとともにF1タイトルを戦った時代の重要なエンジニアもプロジェクトに復帰した。

    スペック2の投入は渡辺康治社長が語るように、あくまで「最初の一歩」だ。人材不足を解消した新たな開発体制とADUOによる追加開発機会を生かし、ホンダは2027年に現在より「はるかに上」の位置へ進むことを目指している。

  • HRC渡辺康治社長 アロンソの2027年F1継続を熱望「ホンダにとって極めて重要」

    HRC渡辺康治社長 アロンソの2027年F1継続を熱望「ホンダにとって極めて重要」

    ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長は、フェルナンド・アロンソが2027年もF1参戦を続け、アストンマーティン・ホンダのプロジェクトに残ることを強く望んでいる。「アロンソと一緒に仕事ができることは、私たちにとって極めて重要です」と語り、開発面でもその存在が大きな力になっていることを強調した。

    2026年F1オランダGPの週末、渡辺康治社長はスペイン紙『Mundo Deportivo』の独占インタビューに応じた。

    そこで語られたのはアロンソの将来だけではない。ホンダが直面しているPU開発の遅れ、スペック2投入の意味、ADUOを活用した挽回、人材不足の解消、レッドブルとのプロジェクトを経験した重要なエンジニアの復帰、エイドリアン・ニューウェイとの協力、2027年への見通し、さらには2031年以降のF1エンジン規則まで、現在と将来のホンダF1プロジェクトについて幅広く明かした。

    セナとフェルスタッペンに続く新たな挑戦
    ホンダはF1の歴史のなかで、アイルトン・セナ、そしてマックス・フェルスタッペンとともに困難な挑戦を乗り越え、大きな成功を収めてきた。現在はアストンマーティン、そしてアロンソとともに新たな挑戦に臨んでいる。

    渡辺康治社長は、そうした困難そのものがホンダを強くしてきたと説明する。

    「基本的に、一つひとつの挑戦が私たちをより強くしてきました。そして、あらゆる成功の裏には数え切れないほどの挑戦があります」

    「セナのときもそうでしたし、マックスのときもそうでした。成功は一つひとつの挑戦を乗り越えた先にやってきます。そのことを私たちの誰も疑っていません」

    現在は日本のHRC Sakura、英国のHRC UK、そしてシルバーストンに本拠を置くアストンマーティンが一体となり、競争力向上へ向けて作業を続けている。

    「HRC Sakura、HRC UK、そしてシルバーストンのアストンマーティンのメンバーが一緒になって、困難を乗り越えるために取り組んでいます」

    「私たちはまさに挑戦の真っただ中にいます。そして、成功へ向かっているところです」

    ホンダ新PU「何をすべきなのかは分かっています」
    アロンソはホンダが現在抱えている問題を解決し、トップレベルのPUを作り上げることについて「時間の問題」だとして、その技術力への信頼を公に示してきた。

    ホンダはその期待に応えるため、開発のペースを上げている。渡辺康治社長によれば、少なくとも改善すべき方向性について迷いはない。

    「私たちは今、そこへ到達するまでの時間を短くする、そのプロセスの真っただ中にいます」

    「パワーユニット、つまりエンジンと電気系について、開発で何をしなければならないのかは分かっています。ですから今は、それを実現するために取り組んでいます」

    ただし、どれほどの時間が必要なのかについては慎重だった。

    「正確にいつとは言えません(笑)」

    「では、ホンダが最高のエンジンのひとつを作れるようになるのはいつだと思うか」と改めて問われても、答えは変わらなかった。

    「これは誰に聞かれても同じ答えになります。いつになるのかは言えません」

    スペック2は「状況改善への最初の一歩」
    その一方で、オランダGPで投入した新仕様PU、いわゆるスペック2は、ホンダにとって重要な転換点になる。

    2026年序盤から苦戦してきたホンダにとって、このアップデートは単純な性能向上だけを意味するものではない。今後トップレベルへ近づいていくための開発の出発点でもある。

    「もちろんです。今回のスペック2は、状況を改善するための最初の一歩です」

    「そして、毎年少しずつ近づいていきます。私たちの目標は勝つことです」

    ホンダはザントフォールト投入の新PUで、燃焼室やプレチャンバー、潤滑システムなどICE内部を中心に手を入れ、性能だけでなく信頼性の改善にも取り組んでいる。

    開発開始の遅れ「追いつくのは簡単ではありません」
    渡辺康治社長は、2026年シーズン序盤にホンダが厳しい状況に陥った背景についても率直に認めた。

    大きな要因のひとつは、新しいF1パワーユニットの開発開始がライバルより遅かったことだ。

    「私たちは開発を始めたのが非常に遅かったので、その遅れを取り戻す必要があります」

    しかし、現在のF1では単純に資金や人員を大量投入すれば追いつけるわけではない。

    「遅れを取り戻すのは簡単ではありません。予算制限がありますし、それ以外にもさまざまな制約があります」

    そこで重要になるのが、メーカー間の性能差に応じて追加開発機会を認めるADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)だ。

    「もちろん、ADUOのレギュレーションを活用しながら開発を加速させて、近づいていかなければなりません」

    人材不足は解消「今はもう問題ありません」
    ホンダのF1復帰プロジェクトでは、PUそのものだけでなく、開発を担う人材の確保も大きな課題だった。

    だが、渡辺康治社長によれば、その問題については状況が変わったという。

    「はい、以前は問題がありました。しかし、今はもう問題ではありません」

    「人数という意味でも、能力という意味でも、十分なエンジニアを採用することができました。ですから、今は大丈夫です」

    HRCのF1プロジェクトでは新たな人材を増強すると同時に、過去にレッドブルとのプロジェクトに携わった経験者も戻ってきている。

    レッドブル時代の重要エンジニアがF1プロジェクトに復帰
    レッドブルとのパートナーシップ時代にホンダはF1タイトルを獲得し、そのプロジェクトには多くの経験豊富な技術者が携わっていた。

    渡辺康治社長は、当時の人材が現在のアストンマーティンとのF1プロジェクトに戻ってきていることを認めた。

    「はい、そうです」

    ただし、当時のスタッフ全員が戻ったわけではない。

    「全員ではありません。ただ、当時そこで仕事をしていた重要な人たちはF1プロジェクトに戻ってきています」

    HRCの新太郎・折原エンジニアも、レッドブルとのプロジェクト経験者が復帰し、新たに加わった人材も2026年のテストや実戦を通して経験を積んでいると説明しており、ホンダは2027年から2028年に向けた開発体制に自信を深めている。

    「私たちは完全に準備できています」
    人材面の立て直しを終えたことで、ホンダは成功へ向けて必要な体制が整ったと考えている。

    「もちろんです。私たちは完全に準備できています」

    ただし、準備が整ったことと、すぐにライバルへ追いつけることは別問題だ。

    「すべてのチームが毎日進化しています」

    「追いつくということは、相手よりも速いペースで進化しなければならないということです。それは簡単なことではありません」

    トップメーカーも開発を止めることはない。現在あるギャップを縮めるには、ホンダ自身がライバルを上回る開発速度を維持する必要があるという認識だ。

    2027年「今よりはるかに上にいるはずです」
    アストンマーティンではニューウェイ主導によるシャシー開発も進み、2026年シーズン途中からマシンの競争力に改善が見え始めている。

    では、PU側のホンダは2027年をどのように見ているのか。

    渡辺康治社長はまず、インタビューが行われたオランダGPで投入した新PUを確実に機能させることが先決だとした。

    「まずは今日、そしてこの日曜日に集中するべきだと思っています。このザントフォールトでのレースはかなり重要ですから」

    そのうえで、今後については明確な期待を示した。

    「その後、一歩ずつトップチームに近づいていきます」

    「ですから来年は、もちろん現在の状況と比べれば、はるかに、はるかに上のところにいるはずです」

    フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    アロンソによるホンダ擁護「私たちにとって非常に重要でした」
    ホンダが苦しい状況に置かれてきたなか、アロンソはメディアに対して繰り返しホンダへの信頼を表明してきた。

    渡辺康治社長は、その姿勢がホンダにとって非常に大きな意味を持っていたと明かした。

    「ホンダにとって、それは非常に重要でした」

    「アロンソは素晴らしいドライバーです。そして、彼と一緒に仕事ができることは、私たちにとって極めて重要です」

    ホンダが高く評価しているのはアロンソの速さや経験だけではない。PUを含めたマシンの挙動を分析し、それを技術陣へ正確に伝える能力も重要視している。

    「彼のクルマについてのコメントは非常に正確です」

    「そして、そのコメントが本当に私たちの開発を前に進める助けになっています」

    実際、アロンソはシーズン前半からPUのドライバビリティやエネルギー供給、シフト操作などについて細かなフィードバックを行い、ホンダ側もそのデータを新仕様PUの最適化につなげてきた。

    ホンダはアロンソの2027年F1継続を熱望
    そのアロンソは、2027年もF1ドライバーとして参戦を続けるかどうかをまだ決めていない。

    アストンマーティン側もアロンソの判断を待っている状況だが、ホンダの希望は明確だ。

    「はい、もちろんです。私たちはアロンソと一緒に仕事を続けたいと思っています」

    渡辺康治社長は、アロンソが持つ並外れた情熱についても強調した。

    「これほど素晴らしい情熱を持ったドライバーと一緒に挑戦できることは、ホンダにとって非常に、非常に重要です」

    そして、現在の競争力がホンダの求める水準ではないことも認めながら、その状況をアロンソとともに変えていきたいと語った。

    「今はまだ私たちが望んでいるポジションにはいません」

    「しかし、アロンソと一緒に、F1のトップチームのひとつになることが私たちの目標です」

    「2027年も続けてくれることを期待しています」
    さらに「アロンソは2027年も続けると思うか」と問われると、渡辺康治社長は率直に希望を口にした。

    「はい、そう願っています。彼が続けてくれることを期待しています」

    アロンソとホンダがともに勝利を手にした場合、それがどのような意味を持つのかという質問への答えも明快だった。

    「私たちは歴史を作ることになります」

    「アロンソにとっての歴史ですし、ホンダにとっての歴史にもなります」

    アロンソは2027年の去就について、自身がF1マシンを運転していて競争力や楽しさを感じられるかなどを判断材料にするとしており、ドライバーを続けるかどうかは本人の決断に委ねられている。

    ニューウェイとの連携「非常に緊密に仕事をしています」
    アストンマーティン・ホンダのもうひとつの重要な存在がニューウェイだ。

    ニューウェイとの協力によってチームはさらに強くなるのかと問われた渡辺康治社長は、これまで語ってきた「挑戦によって強くなる」というホンダの考え方を改めて示した。

    「チームをもっと強くできると思います」

    「先ほども申し上げたように、一つひとつの挑戦が私たちをより強くしてきました。そして間違いなく、エイドリアンとチームと一緒に、私たちはさらに強くなっています」

    ニューウェイとの実際の仕事についても、良好な関係を築けているという。

    「私たちは非常に緊密に、そして非常にうまく一緒に仕事をしています」

    新規則 新パートナー 新燃料「最初からひとつのチームになるのは簡単ではない」
    ただし、アストンマーティンとホンダが最初から完全にひとつの組織として機能できたわけではない。

    2026年にはF1の技術規則が大きく変わり、ホンダにとってアストンマーティンは新たなパートナーとなった。さらに新しい燃料への対応も必要だった。

    「もちろん、現在の新しいレギュレーション、新しいパートナー、そして新しい燃料があります」

    「そういう状況ですから、最初からひとつのチームになるのは簡単ではありません」

    実際、シーズン序盤は両者にとって非常に厳しいスタートとなった。しかし、その困難が逆にコミュニケーションを深めるきっかけにもなったという。

    「非常に難しいスタートになりましたので、そうした状況を乗り越えるために、私たちは非常に緊密で、深い話し合いを続けてきました」

    「その結果、私たちのコミュニケーションはずっと良くなりました」

    アロンソとF1王座獲得「そのためにこのプロジェクトにいるのです」
    渡辺康治社長は、現在の厳しい状況だけを見ているわけではない。

    その先には、アストンマーティン、ホンダ、そしてアロンソによるF1ワールドチャンピオン獲得という大きな目標がある。

    「もちろん夢見ています」

    「そのために私たちはこのプロジェクトを開発していますし、アストンマーティン、そしてアロンソとのパートナーシップを築いたのです」

    「なぜそう思わないのでしょうか?」

    では、アストンマーティンとアロンソとともに勝てると100%確信しているのか。

    渡辺康治社長は、結果そのものを保証することはできないとしながらも、目標については一切の曖昧さを残さなかった。

    「100%保証できる人は誰もいません」

    「ただ、私たちの目標が勝つことであることは100%確かです」

    ホンダ・レーシング

    2031年V8案「F1の技術は最先端で持続可能であるべき」
    インタビューでは、2031年以降のF1パワーユニット規則についても質問が及んだ。

    議論されているV8エンジン復活の可能性について、渡辺康治社長はまず正式な提案が届いていないことを強調した。

    「あなたはどう思いますか?(笑)」

    「非常にシンプルです。まず、私はまだFIAから正式な提案を何も受け取っていません」

    「もちろんニュースは読んでいます。ただ、その段階ですので、今は明確な回答をすることはできません」

    一方で、将来のPU規則を考えるうえでホンダが重視する基本的な考え方については説明した。

    「F1は世界最高峰のモータースポーツカテゴリーです」

    「ですから、私たちはF1の技術は最先端であるべきだと考えていますし、持続可能でなければならないとも考えています。それは重要なことです」

    ただし、V8を含めた将来のPUコンセプトそのものを拒絶しているわけではない。

    「ただ、そのようなパワーユニットをどのように実現していくのかについて議論することには、私たちは完全にオープンです」

    「まず競争力を取り戻し その先のさらに大きなものを目指します」
    最後に渡辺康治社長は、現在の厳しい状況でもホンダ、アストンマーティン、アロンソを応援するファンに向けてメッセージを送った。

    「これはとても重要なことです」

    「皆さんの応援が私たちに力を与えてくれています。ですから、スペインのファンの皆さんのサポートと声援に感謝しています」

    そして、現在地を率直に認めたうえで、ホンダが進もうとしている道筋を示した。

    「今は明らかに、私たちが望んでいるポジションにはいません」

    「しかし、まずはもう一度戦えるところまで戻り、競争力のある状態を取り戻します」

    「そしてその後も、さらに大きなものを目指して取り組み続けます」

    ホンダは2026年の苦戦を一時的な失敗として片づけるのではなく、開発開始の遅れや人材面の問題を認めたうえで立て直しを進めている。スペック2はその「最初の一歩」であり、ADUOによる追加開発、人員増強、レッドブル時代の経験者の復帰、アストンマーティンやニューウェイとの連携強化を通じて、2027年には「はるかに上」の位置を目指す。

    そして、その挑戦の中心にホンダが残ってほしいと願っているのがアロンソだ。正確なフィードバックと豊富な経験、そして渡辺康治社長が繰り返し強調する「並外れた情熱」を持つアロンソとともにトップへ戻り、勝利し、最終的にはF1タイトルを獲得する。それが現在のアストンマーティン・ホンダが描く将来像であり、渡辺康治社長はその実現によって「アロンソにとっても、ホンダにとっても歴史を作る」ことを目指している。

  • ホンダ・レーシングがコミケ初出展 アストンマーティンF1ショーカーも展示

    ホンダ・レーシングがコミケ初出展 アストンマーティンF1ショーカーも展示

    HRC(ホンダ・レーシング)は、8月15日・16日に東京ビッグサイトで開催される「コミックマーケット108」に初出展することを発表した。

    世界最高峰のモータースポーツで培ってきた挑戦の精神をより多くの人に届けることを目的とし、ビジョンクリエイターの河森正治氏とのコラボレーションプロジェクト「情熱駆動」を中心に、モータースポーツとエンターテインメントを融合したブースを展開する。

    会場となる南3・4ホールのNo.2231ブースでは、アストンマーティンF1のショーカー展示をはじめ、河森氏デザインの特別仕様シミュレーター「Honda eMS SIM-01」の初公開・販売、VTuber・戌神ころねとのコラボグッズなど、多彩なコンテンツが用意される。

    アストンマーティンF1ショーカーを展示
    ブースでは、ホンダ製パワーユニット「RA626H」を搭載するアストンマーティンF1のショーカー(AMR26)を展示。2026年シーズンからホンダとパワーユニットパートナーシップを結ぶアストンマーティンのF1マシンを間近で見ることができる。

    アストンマーティンF1ショーカー

    1300万円の特別仕様シミュレーターを初公開
    目玉企画の一つとなるのが、河森正治氏がデザインを手掛けた世界に1台だけの特別仕様シミュレーター「情熱駆動 Honda eMS SIM-01」だ。

    HRCが本物のフォーミュラカーをベースに製作した筐体へ、コミックマーケット108開催を記念したスペシャルリバリーを施したもので、会場で初公開されるほか、税別1300万円で販売される。

    また、「Honda eMS SIM-01」の振動ステージでは、レーシングカー特有の振動やサウンドを体感できる体験イベントも実施される。

    河森正治氏やVTuberとのコラボ企画も
    「情熱駆動」プロジェクトでは、Honda/HRCのモータースポーツへの情熱を河森氏ならではの世界観で描いた新ビジュアルを公開。会場限定グッズも販売される。

    さらに、Honda eMSと人気VTuber・戌神ころねの描き下ろしコラボビジュアルも初公開。こちらもコミックマーケット108限定グッズとして販売される予定だ。

    来場者向けには、Honda公式LINEとHonda Racing公式Xをフォローした人を対象に、鈴鹿サーキットで人気の土産「タイヤカスさきいか」をプレゼントするキャンペーンも実施。アンケート回答者には限定スマートフォン壁紙も配布される。

    河森正治 × ホンダ・レーシング戌神ころね × ホンダ・レーシング

    トークステージも開催
    会場では「HRC PASSION DRIVEN STAGE」も実施される。

    8月15日は「REAL × CYBER ~Honda/HRCの情熱とは?~」をテーマに、河森正治氏、TVアニメ監督の福田己津央氏、HRC代表取締役社長の渡辺康治氏が登壇。

    8月16日は「REAL × ENTERTAINMENT ~レースがつなぐ情熱~」をテーマに、HRCレーシングドライバーの佐藤蓮と声優の和泉風花が出演し、モータースポーツとエンターテインメントの魅力について語る。

    今回のコミックマーケット初出展は、HRCがモータースポーツファンだけでなく、アニメやゲーム、VTuberなど幅広いカルチャー層へアプローチする新たな取り組みとなる。展示や体験コンテンツを通じて、HondaとHRCが掲げる「情熱駆動」の世界観を発信する。

  • ホンダとアストンマーティンF1が結束強化「信頼関係は日に日に強まっている」

    ホンダとアストンマーティンF1が結束強化「信頼関係は日に日に強まっている」

    2026年シーズンに苦戦が続くホンダとアストンマーティンだが、両者の関係はむしろ強化されているようだ。ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長は、バルセロナ・カタルーニャGP期間中に両陣営による「チームギャザリング(懇親会)」が開催され、率直な意見交換を通じて信頼関係を深めたことを明かした。

    アストンマーティンは2026年の新レギュレーション導入とともにホンダ製パワーユニットを搭載したが、ここまでの戦績は期待を大きく下回っている。

    それでも渡辺社長は、困難な状況だからこそホンダの挑戦する精神が試されていると強調した。

    バルセロナで開催されたチームギャザリング
    ホンダとアストンマーティンの提携は、2026年シーズン開幕当初から厳しい現実に直面している。

    フェルナンド・アロンソがモナコGPでチーム初ポイントを獲得したものの、多くのレースではキャデラックと最後尾争いを繰り広げる状況が続いている。スペインGPではアロンソとランス・ストロールの両名が完走できず、厳しい週末となった。

    そうした中、渡辺社長はホンダが公開した動画の中で、スペインGPで実施されたチームギャザリングについて語った。

    「2026年シーズンのスタートは私たちにとって非常に厳しいものでした。現在の順位は私たちが望んでいるものではありません」

    「しかし、困難な時こそホンダとHRCのDNAであるチャレンジ精神が必要になります」

    2015年の苦境と重ね合わせるホンダ
    渡辺社長は、ホンダがF1に復帰した2015年の苦しい時代を引き合いに出し、現在の状況も乗り越えられると語った。

    「2015年にも私たちは厳しいスタートを経験しました。しかし、決して諦めることなく強くなりました」

    「チームの全員が2026年型パワーユニットの改善に向けて努力を続けています」

    現在のホンダは、FIAのADUO(追加開発・アップグレード機会)制度によって認められた最大2回分のICE(内燃機関)開発枠を獲得している。ただしホンダ側は、アップグレードによって劇的な改善が得られるわけではないとの見方も示している。

    ホンダ・レーシング

    「日に日に強くなる関係」
    渡辺社長はアストンマーティンとの協力体制についても前向きな評価を示した。

    「アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラワンチームとの関係は日に日に強くなっています」

    「先日のスペイングランプリではチームギャザリングを開催し、率直なコミュニケーションを取って信頼関係を強化する素晴らしい機会となりました。多くのチームメンバーと直接話ができたことも非常に良かったです」

    さらに、「ひとつのチームとして、この強固な基盤の上に立ち、共に努力を続けていきます。どんな状況でも決して諦めません」と語った。

    ニューウェイ主導の大型アップデートに期待
    アストンマーティンは、他チームが激しい開発競争を繰り広げる中で、エイドリアン・ニューウェイ主導による大規模アップデートパッケージの投入に注力している。

    チームは小規模な改良を重ねるのではなく、夏以降に導入予定のAMR26Bへ開発リソースを集中させており、その判断はチーム内でも支持されている。

    ここまでの結果は失望を伴うものとなっているが、ホンダとアストンマーティンはバルセロナでの対話を通じて結束を強めた。アップグレード版パワーユニットとAMR26Bが投入される今後数戦が、この提携の真価を占う重要な局面となりそうだ。

  • ホンダF1危機 MotoGP部門にも波及の懸念 HRC体制に影響か

    ホンダF1危機 MotoGP部門にも波及の懸念 HRC体制に影響か

    ホンダの2026年F1シーズンの厳しいスタートは、アストンマーティンだけでなく、同社のもうひとつの主要モータースポーツプログラムであるMotoGPにも影響を及ぼす可能性があると指摘されている。

    F1とMotoGPの両プログラムは現在、ホンダ・レーシング(HRC)の統合体制の下で運営されており、2026年に発生したF1パワーユニット問題が、二輪部門のリソースや意思決定にも波及する懸念が浮上している。

    ホンダはMotoGPパドックにおいて最も影響力の大きいメーカーのひとつであり、その規模は明確な利点でもある。たとえば、ここ数カ月にわたりメーカー連合(MSMA)とMotoGP Sports Entertainment(旧ドルナ)の間で生じている緊張関係に対して、ホンダは比較的距離を保つ姿勢をとってきた。

    両者は2027年から2031年まで適用される新しい商業契約を巡って交渉を続けているが、ホンダはドゥカティ、ヤマハ、アプリリア、KTMが形成するブロックとは距離を置き、あたかも自らには直接関係のない問題であるかのような振る舞いを見せている。

    しかし現実はそれほど単純ではない。世界有数の自動車グループに属するということは財務的な強みを意味する一方で、自社の直接的な領域の外で生じた問題に巻き込まれる可能性も伴う。

    現在ホンダが最も早急に鎮火しなければならない“火”は、F1で発生している。

    アストンマーティンF1の深刻なPU問題
    2026年からホンダのパワーユニットを搭載するアストンマーティンは、開幕戦オーストラリアGPで深刻な問題に直面した。

    チームオーナーのローレンス・ストロールが招聘した技術責任者エイドリアン・ニューウェイは、メディアに対してパワーユニットの問題を率直に指摘した。

    ニューウェイは、チームが正常なプレシーズンテストを完了できなかった原因がエンジンにあると説明した。バーレーンで行われた6日間の冬季テストにおいて、アストンマーティンの2台が走行した距離は合計2,111kmにとどまった。

    これに対してメルセデスは8台で21,551km、フェラーリは6台で16,121kmを走破しており、差は歴然としていた。

    ニューウェイによれば、エンジンから発生する振動がバッテリーを損傷させるだけでなく、シャシーを通じてステアリングホイールに伝わり、ドライバーの手にも影響を及ぼしているという。

    アストンマーティンのランス・ストロールは、その状況を次のように表現した。

    「どう比較すればいいのか分からない。椅子に座って自分に電気ショックを与えるようなものだと思えばいい。それにかなり近い」

    カナダ人ドライバーのストロールとフェルナンド・アロンソはいずれも、2026年F1開幕戦オーストラリアGPで完走扱いとはならなかった。

    ホンダF1 F1 ホンダ・レーシング

    HRC内部で懸念されるMotoGPへの影響
    現時点でホンダは、この問題によるブランドイメージへの影響を抑えるための積極的な発信は行っていない。

    しかし、さくらの施設にあるHRC本部では、すでに警戒アラートが発せられ、解決策の模索が急がれていると見られている。そして、その影響はすでに別のレース部門にも及び始めているという。

    ホンダの四輪と二輪の両部門に関係するある幹部は次のように語った。

    「MotoGPにも間違いなく影響は出る。我々はF1と同じ組織構造を共有している。今はまず、その問題の解決に努力を集中させることになる」

    自動車業界全体が減速するなかでも、ホンダの二輪事業は比較的堅調な販売実績を維持している。

    しかし、それでもMotoGP部門を率いる石川譲と本田太一にとっては、4月1日に塚本光が退任した後の体制の中で、自分たちの主張を強める材料にはなりにくい可能性がある。

    日本企業特有の組織文化も影響する。

    日本のチームと長く仕事をしてきた関係者は次のように説明する。

    「日本の企業文化では、上層部からの指示に対して部下が異議を唱えることは非常に珍しい」

    MotoGP復調のタイミングで起きたF1問題
    皮肉なことに、このF1の“火事”が起きたのは、MotoGPにおけるホンダが数字の上では回復の兆しを見せ始めていた時期だった。

    昨シーズン、ホンダは2024年と比較して最も改善幅の大きかったメーカーとなり、獲得ポイントは35%増加。これによりコンセッションランクはDからCへと引き上げられた。

    2週間前に開催されたMotoGP開幕戦タイGPでは、ジョアン・ミルがVR46ドゥカティのファビオ・ディ・ジャンアントニオと5位争いを繰り広げていた。しかし残り5周でリアタイヤが崩壊し、結果を残すことはできなかった。

    2027年にはMotoGPで大規模なレギュレーション変更も予定されている。そうした状況の中で、HRC首脳部がF1問題の解決に向けてどのような判断を下すのか、MotoGPスタッフの間では不安が広がっている。

    HRC統合体制の中心にいる渡辺康治
    この状況の中で最も大きな責任を負う立場にあるのが、HRC社長の渡辺康治だ。

    渡辺康治の指導の下、ホンダは2022年に二輪と四輪のレース活動を単一の組織に統合した。目的はリソースの最適化と技術シナジーの創出、とりわけ当時深刻な低迷に陥っていたMotoGPの競争力を引き上げることだった。

    渡辺康治は2