カテゴリー: F1マシン

  • F1ドライバーを悩ませる“電欠リスク” 予選アタックはいまもPU次第

    F1ドライバーを悩ませる“電欠リスク” 予選アタックはいまもPU次第

    2026年F1マイアミGPの週末で、FIAが導入した新たなエネルギーマネジメント調整の効果が見え始めた一方、ドライバーたちは依然として「全開アタックを自由にできない」という問題に直面している。

    特に議論の中心となっているのが、いわゆる“スーパークリッピング”だ。これはストレート終盤で電力エネルギーが尽き、急激に加速を失う現象で、2026年F1マシンの特徴的な弱点として開幕当初から指摘されてきた。

    マイアミではエネルギー回生量(ハーベスト)制限が引き下げられたことで一定の改善が見られたものの、ドライバーたちは「問題の本質は変わっていない」と語っている。

    “速く走るほど損をする”奇妙な予選アタック
    マクラーレンのオスカー・ピアストリは、F1がスーパークリッピング緩和に向けて前進したことは認めつつも、新世代PU特有の問題は残ったままだと説明した。

    「ハーベスト制限を下げたことで、スーパークリッピングが少し減ったのは良かった」

    「でも他の問題はほとんど同じままだ」

    ピアストリが特に問題視したのは、“速く走ろうとしすぎると逆にエネルギーを使いすぎてしまう”という現象だった。

    「エネルギーを大量に使いすぎないように、かなり慎重に速く走らないといけない」

    「改善された部分もあるけど、まったく変わっていない部分もある」

    本来、予選アタックは限界まで攻め込むものだ。しかし2026年F1では、アクセル操作やエネルギー消費を細かく管理しなければならず、“全開で攻めるほど最後に失速する”という逆転現象が起きている。

    ピアストリを襲った“予想外の電欠”
    ピアストリは土曜予選Q3最後のアタックで、予期していなかった大規模なスーパークリッピングに見舞われたことを明かした。

    「本当にかなり奇妙だった」

    「Q1ではいくつか想定通りに機能していない部分があった。Q2はかなり良かった」

    「でもQ3では最初のラップが良くなくて、2回目のラップではいくつか悪かった区間があり、その一方で予想していなかった場所で大きなスーパークリッピングが起きた」

    これは2026年F1マシンの難しさを象徴している。ドライバー自身が「どこで電力が尽きるか」を完全には把握し切れず、ラップ中に突然パワーを失うケースが発生しているからだ。

    2026年F1では電動比率が大幅に高まり、PUマネジメントがラップタイムへ直接的に影響する構造となった。結果として、ドライバーの“攻め方”そのものが従来とは別物になっている。

    ランド・ノリス「早く踏むと逆に罰を受ける」
    ランド・ノリスも同様の問題を指摘した。

    特に問題となっているのはコーナー出口でのスロットル操作だ。通常なら早くアクセルを踏めばタイム向上につながるが、2026年F1ではその結果としてエネルギー消費が増え、ストレート後半で失速する場合がある。

    ノリスは、現在のPU制御が「早くアクセルを踏んだドライバーを罰している」と説明した。

    これは単なるドライバビリティの問題ではなく、“どこで電力を使うか”という戦略ゲームが予選ラップそのものに組み込まれていることを意味している。

    ウイリアムズF1でも発生した“数千分の操作差”
    この問題はトップチームだけの話ではない。

    ウイリアムズでは、アレクサンダー・アルボンがチームメイトのカルロス・サインツJr.より約0.4秒遅れて予選を終えたが、その原因は“わずかなスロットル操作の違い”だったという。

    ジェームス・ボウルズは次のように説明した。

    「アレックスについては、スタート/フィニッシュライン上の速度の一貫性に苦しんでいた」

    「バックストレートに向けてすべてを整えるため、ドライバーには非常に多くの操作を要求している」

    「それらが完璧に決まると性能差は極端になる」

    さらにボウルズは、アルボンがトラフィックの影響を受けた結果、わずかなスロットル操作変更によってラップ開始時点で数十分の数秒を失ったと明かした。

    「ほんの小さなスロットル操作の違いによって、ラップ開始時点で数十分の数秒を失った。それによって本来いるべきポジションを失った」

    2026年F1は“ドライバーの直感”だけでは戦えない
    2026年F1レギュレーションでは、PUの電動化比率拡大によってエネルギーマネジメントが極端に重要になった。

    その結果、従来のように「限界まで攻める」だけでは速く走れず、“どこで踏むか”“どこで回生するか”“どこで電力を温存するか”まで含めて1周を設計しなければならなくなっている。

    マイアミで導入されたハーベスト制限変更によってスーパークリッピングは多少改善された。しかしドライバーたちの証言を見る限り、2026年F1の予選は依然として「PUとの戦い」が続いている。

  • F1、2027年にダウンフォース削減へ 「速すぎるマシン」がエネルギー管理に支障

    F1、2027年にダウンフォース削減へ 「速すぎるマシン」がエネルギー管理に支障

    F1は、2027年マシンに向けてダウンフォース削減案の検討を進めている。2026年F1レギュレーション導入後、各チームのマシンがFIA(国際自動車連盟)の想定を上回る空力性能を発揮しており、それがエネルギー回生量に影響しているためだ。

    FIAは、現行マシンのコーナリング性能が高すぎることでブレーキング時の回生量が減り、ドライバーが望むほどフラットアウトで走れない状況につながっていると見ている。

    2027年に向けた変更は、エネルギー管理の改善に加え、タイヤにかかる負荷の増大を抑える安全面の狙いも含んでいる。

    想定以上のダウンフォースがエネルギー管理に影響
    FIAは、2026年F1マシンの初期レースを分析した結果、各チームが想定以上のダウンフォースを生み出していることが、現在のエネルギー管理問題の一因になっていると判断している。

    FIAのシングルシーター部門ディレクターを務めるニコラス・トンバジスは、The Raceの取材に対し、マシンが想定より速くなっていることが問題を複雑にしていると説明した。

    「最初から完全に正しい状態になっていなかった理由のひとつは、マシンが少し速くなっていることだ」

    「彼らは我々が予想していたよりも少し多くのダウンフォースを見つけており、その結果、ブレーキング中に回収されるエネルギーが通常よりも少し低くなっている」

    「だから、我々が望んでいたよりも少し大きな課題になっている」

    2027年に向けて3段階の削減案
    FIAは、2027年に向けてダウンフォース量を引き下げる案について、F1の技術諮問委員会で各チームと協議を始める予定だ。

    検討されているのは、フロントウイング、フロア、サイドポッド前方の構造など、マシンの重要な空力領域に手を入れる案で、削減幅は20、30、50ダウンフォースポイントの3案が中心になるとみられている。

    狙いは大きく2つある。ひとつは、コーナーでの速度を下げることでブレーキング時のエネルギー回生量を増やすこと。もうひとつは、今後の開発によってタイヤにかかる荷重が過大になり、安全上の懸念が生じることを防ぐことだ。

    安全理由ならFIAが単独で変更可能
    技術レギュレーションを変更するには、通常は各チームの支持を得たうえで正式なガバナンス手続きを通す必要がある。

    ただし、FIAがタイヤへの負荷を安全上の懸念として位置づけた場合、単独で変更を進める余地がある。F1の技術規則には、安全上の理由によるFIAの変更は「通知または遅延なしに発効できる」とする条項があるためだ。

    トンバジスは、2026年マシンの空力コンセプトそのものについては、乱気流の影響を抑えるという目的を果たしていると評価している。そのため、問題視されているのは空力パッケージ全体ではなく、あくまでダウンフォースの絶対量だ。

    「サイクルを通じて開発が続いていくことなどを考え、ダウンフォースを少し減らす選択肢はある」

    「全体として、空力の観点からは、レギュレーションはかなりうまく機能していると思う。つまり、追従性はかなり良い。グリップが制限される状況でも、マシン同士がかなり接近している場面があることからも、それは分かる。だから、その面はかなりうまく機能していると考えている」

    「だが、我々はマシンの性能を監視し続けており、当然ながらガバナンスプロセスを通じて、マシンが必要とされる性能領域におおむね収まるようにしていく」

    パワーユニット変更は2028年以降が現実的
    2027年のダウンフォース削減は、現実的な対処策として重要な意味を持つ。燃料流量の増加など、パワーユニット側のハードウェア変更は、早くても2028年以降になると考えられているためだ。

    パワーユニット設計の変更には時間がかかり、燃料タンク大型化が必要になればシャシー側の見直しも伴う。すでに一部チームにとっては、2027年に向けた対応には間に合わない段階に入っている。

    そのためFIAにとっては、マシン側、とりわけ空力面での修正が、エネルギー管理問題に対する最も現実的な手段になっている。

    国際自動車連盟 フォーミュラ1カー

    ビブの大型化にも安全上の懸念
    2027年に向けて、もうひとつ安全面から検討されている変更がある。フロア前方の「ビブ」と呼ばれる部分だ。

    FIAによる2026年マシンの初期分析では、現在のビブ設計がかなり前方まで伸びていることが確認されている。これにより、万が一あるマシンが別のマシンの上に乗り上げた場合、長いビブがヘイローの隙間に入り込み、ドライバーに接触するリスクがあると懸念されている。

    このため、FIAは来年に向けてビブのサイズをどのように縮小するかについても、各チームと協議を行う予定だ。

    2026年F1レギュレーションは、追従性の改善という点では一定の成果を示している一方で、想定以上の開発速度によって別の課題を生んでいる。2027年のダウンフォース削減案は、単なる性能調整ではなく、エネルギー管理、安全性、そして今後の開発抑制を同時に見据えた修正案として位置づけられている。

  • 「メーカーの賛成は不要」 F1にV8エンジン復活へFIA会長が強行姿勢

    「メーカーの賛成は不要」 F1にV8エンジン復活へFIA会長が強行姿勢

    F1界に激震が走る。FIA(国際自動車連盟)のモハメド・ビン・スライエム会長が、ファンの切望する「V8エンジン」の復活に向け、パワーユニットメーカーとの対立も辞さない構えを明確にした。

    スライエム会長は、2030年の導入を目標に掲げつつ、仮にメーカー側の合意が得られなかったとしても、2031年には「FIAの単独権限」でレギュレーションを強行できると言明。ハイブリッド比率50%を目指す2026年規定がスタートする前から、F1の勢力図を根底から覆す「メーカー支配からの脱却」を宣言した形だ。

    2031年は投票不要 FIAが単独で決定可能
    スライエム会長はロイター通信に対し、F1が再びV8エンジンへと回帰するのは避けられない流れであると強調した。その言葉に迷いはない。

    「それは起きる。時間の問題だ」

    特筆すべきは、これまでF1の意思決定を左右してきた「パワーユニットメーカー(PUメーカー)」の合意さえも、今後は必須ではないと明言したことだ。

    「2031年にはFIAが単独で実行できる。パワーユニットメーカーの投票は必要ない。それがレギュレーションだ」

    現在の規約では、2030年までのルール変更には6メーカー中4社の賛成が必要な「セーフガード」が存在する。しかし、スライエム会長はその期限が切れる翌2031年を“デッドライン”に設定し、法的権限を持ってV8導入を断行する構えだ。

    メーカー主導からの転換 F1の意思決定が変わる
    なぜ、FIAはここまで強硬なのか。そこには現行の2026年レギュレーション策定プロセスへの強い反省がある。

    2022年に合意された次世代ルールは、当時の自動車業界の急進的な電動化シフトを反映したものだった。しかし、現在は世界的に内燃機関(ICE)の価値が再評価されるなど、潮流が変化している。

    メーカーの顔色を伺いすぎた結果、F1は「電動比率50%」という極めて複雑で重量のあるパワーユニットを採用することになった。スライエム会長は、こうした「メーカー主導のルール作り」がレースの質やコスト面で課題を招いていると見ており、主導権をFIAの手に取り戻そうとしている。

    V型8気筒 フォーミュラ1エンジン 国際自動車連盟

    V8回帰は「軽量・単純化」の象徴
    スライエム会長がV型8気筒エンジンにこだわる理由は、ファンが求める「F1の原点」への回帰に他ならない。

    「最も人気があり、扱いやすいのはV8だ。サウンドがあり、複雑さが少なく、そして何より軽量だ」

    「ごくわずかな電動化は残るが、主役はエンジンになる」

    現在のハイブリッドシステムが抱える「重すぎる」「静かすぎる」という欠点を、100%持続可能燃料(e-fuel)を用いたV8エンジンによって解決する。これは単なる懐古主義ではなく、最新技術をファンが喜ぶパッケージで包み直す戦略と言える。

    2030年前倒し導入を狙うも最終ラインは2031年
    FIAのターゲットは2030年だが、たとえメーカーが反対し続けても、その1年後には「強制執行」という切り札が待っている。

    「我々は1年前倒し(2030年)での導入を望んでいる。しかし仮にメーカーが同意しなくても、その翌年には実現する」

    「これは支持を得るかどうかの問題ではない。実行されるのだ」

    この発言は、メーカーの撤退を恐れて妥協を繰り返してきたこれまでのF1の歴史に終止符を打つものだ。V8エンジンの復活は、マシンが奏でる咆哮だけでなく、FIAが再びF1の絶対的な統治者として君臨する時代の幕開けを象徴している。

  • FIAが2027年F1でエキゾーストウイング禁止へ フェラーリ発の技術戦争に介入

    FIAが2027年F1でエキゾーストウイング禁止へ フェラーリ発の技術戦争に介入

    国際自動車連盟(FIA)は、2027年F1シーズンに向けて「エキゾーストウイング」を禁止する案を各チームと協議する方針だ。フェラーリが今季導入したリア排気管後方の革新的なウイング構造をきっかけに、複数チームが類似コンセプトを採用し始めている。

    現行レギュレーションでは合法と判断されているものの、FIAは排気周辺で空力開発競争が過熱することを望んでいない。安全上の問題ではないため、2027年に禁止するにはチーム側の支持を得たうえで、正式な手続きを通じた規則変更が必要になる。

    フェラーリが開いた排気周辺の新たな開発領域
    フェラーリはプレシーズン最終テストで、リアのテールパイプ後方に新しいウイングソリューションを登場させた。このコンセプトは「フリック・テール・モード」と呼ばれ、熱を帯びた排気ガスを操ることを狙ったものだ。

    本来、この領域での空力的な処理は好ましくないものと見なされているが、フェラーリはギアボックス近くに追加コンポーネントを装着できる規定上の余地を使い、合法範囲内でこの設計を成立させた。

    鍵となったのは、リアクラッシュストラクチャーに対するギアボックスの配置だ。フェラーリ独自のリアエンド設計が、排気管後方にウイングを設けるためのスペースと解釈の余地を生み出した。

    ハースに続き6チームがマイアミで類似案を投入
    フェラーリからリアエンドを購入しているTGRハースF1チームも、中国GPで独自のエキゾーストウイングを採用した。一方で、他チームはギアボックス配置の違いから当初は同じアイデアを導入できなかった。

    しかし、マイアミGPを前にライバルたちは別の方法でエキゾーストウイングを成立させる手段を見いだした。マクラーレン、メルセデス、レッドブル、ウィリアムズ、アルピーヌ、キャデラックの6チームが、それぞれ異なる形のウイング案を投入した。

    各チームは、F1テクニカルレギュレーション第C3.9.2条の解釈を利用している。この条文は単一の排気テールパイプ「サポート」を認めているが、その制限については、排気テールパイプとクラッシュストラクチャーの合法範囲内に収まり、両方にまたがること以上の明確な縛りを設けていない。

    国際自動車連盟 F1

    現行仕様は合法 ただし2027年に規制強化へ
    FIAは、現在各車に搭載されているデザインが現行規則に適合していることは認めている。しかし、関係者によれば、FIAはこの領域を来年に向けて締め付けたい意向を示している。

    背景にあるのは、排気周辺で複雑な空力トリックが次々と登場することへの懸念だ。FIAは、この領域が本格的な技術開発競争に発展する前に歯止めをかける方が望ましいと考えている。

    正式な決定はまだ下されていないが、FIAはすでに意向を明確にしており、今後は各チームのテクニカルチーフと規則変更の文言について協議が行われる。

    安全問題ではないためチームの支持が必要
    エキゾーストウイングの禁止は安全上の問題として扱われるものではない。そのため、FIAが一方的に即時変更するのではなく、正式なルートで規則変更を成立させるにはチーム側の支持が必要になる。

    フェラーリが先鞭をつけたこの開発領域は、すでにマイアミGPで一気に広がりを見せた。FIAは同時に、フェラーリが今季導入したヘイローウイングについても禁止を検討しており、2026年F1レギュレーション下で生まれた細部の空力開発に対して、早くも規制強化の動きが強まっている。

    Source: The Race

  • F1にV8復活へ 2030年導入をFIA会長が断言「反対があっても実現」

    F1にV8復活へ 2030年導入をFIA会長が断言「反対があっても実現」

    FIA会長モハメド・ビン・スライエムは、F1が次の10年初頭にV8エンジンへ回帰する方針を明確にした。現行のハイブリッド主体のパワーユニットに代わり、よりシンプルで軽量な構成へと転換する可能性が高まっている。

    2026年に導入された新パワーユニットは、熱と電気をほぼ同等に扱う構造でコストや複雑性が課題とされてきた。その流れの中で、持続可能燃料を前提としたV8回帰が現実的な選択肢として急速に浮上している。

    2030年導入を視野 FIAが主導権を握る構図
    スライエムはマイアミでの取材に対し、V8回帰について強い確信を示した。

    「それは起きる。時間の問題だ」と述べ、将来的な方向性が既定路線であることを強調した。

    さらに、レギュレーション上の権限にも言及し、FIAが主導して導入可能である点を明確にした。

    「2031年にはFIAが単独で決定できる。これはルールだ」

    「我々はそれを1年前倒ししたい。外部からはその声が多い。パワーユニットメーカーは反対するが、起きるべきことは起きる」

    この発言は、仮に合意形成が不十分でも最終的には制度的に導入される可能性を示唆している。

    複雑化した現行PUからの脱却
    スライエムは今回の方針を単なるエンジン形式の変更ではなく、F1の「使命」に関わる転換と位置付ける。

    「重要なのは技術ではなくミッションだ。今のような複雑さを減らすことが目的だ」

    過去に存在したMGU-Hについても、その実用性に疑問を呈した。

    「MGU-Hには目的があったが、実際の自動車産業に利益をもたらしたメーカーはなかった」

    現在はMGU-Kのみが残る構成だが、それでもなお複雑性と重量の問題は解消されていないという認識だ。

    V10ではなくV8が現実解とされる理由
    議論の中ではV10復活の可能性も取り沙汰されてきたが、現実的な選択肢はV8に絞られている。

    「現在のメーカーにV10の市販車があるかといえば、答えはノーだ」

    その上で、V8の利点を強調する。

    「最も人気があり、扱いやすいのはV8だ。サウンドがあり、複雑さが少なく、軽量だ」

    また、完全な非ハイブリッドではなく、ごく限定的な電動化は維持される見込みだ。

    「非常に限定的な電動化になる。主役は内燃エンジンだ」

    「現在のような50対50ではない。電気の割合はごくわずかになる」

    自動車業界との整合性と軽量化の狙い
    スライエムはV8回帰の背景として、市販車との関連性も挙げる。

    「フェラーリやメルセデス、アウディ、キャデラックなど、多くのメーカーがV8を採用している」

    この点は、F1が掲げる技術的関連性の観点からも一定の説得力を持つ。また、電動化比率を抑えることでマシン重量の低減にもつながると見られる。

    合意がなくても進む既定路線
    最終的に、スライエムはこの計画が不可逆であることを強調した。

    「彼ら(メーカー)は最終的に望むようになる」

    「仮に反対があっても、2031年には実現する。これは支持が必要な話ではない。実行される」

    この発言は、F1の将来像を巡る主導権がFIAにあることを明確に示している。現行のハイブリッド路線からの大きな転換となるV8回帰は、今後の政治的・技術的議論の中心となることは確実だ。

    Source: motorsport.nextgen-auto.com

  • F1 2027年PU規則 5月中旬決断へ 電動比率40%案でメーカー攻防

    F1 2027年PU規則 5月中旬決断へ 電動比率40%案でメーカー攻防

    F1の2027年シーズンに向けたパワーユニット規則は、5月中旬までに最終判断が下される見通しとなっている。現在は内燃エンジンと電動出力の比率を見直す案が検討されており、シリーズの方向性を左右する重要な局面を迎えている。

    焦点となっているのは、パワーユニットの出力配分を60対40へ変更する構想だ。ドライバーやファンから賛否が分かれている現行レギュレーションを受け、短期的な是正と将来的な方向性の両面で議論が活発化している。

    60対40案はマシン設計に直結
    2026年から導入された新世代パワーユニットは電動エネルギーの比重が高められているが、そのバランスを見直す動きが強まっている。60対40への変更は、内燃エンジン出力を現在の約530馬力から約600馬力へ引き上げることを意味する。

    この変更により燃料消費量が増加し、より大容量の燃料タンクが必要となる。その結果、マシン全体の設計パッケージや寸法にも影響が及ぶため、技術的な調整は広範囲に及ぶことになる。

    こうした背景から、大規模な変更を承認できる期限は5月中旬とされており、各チームは短期間で判断を迫られている。

    導入にはメーカー4社の賛成が条件
    2027年からこの変更を導入するには、エンジンメーカー5社のうち少なくとも4社が賛成する必要がある。現時点で正式な会合は開かれていないものの、決断までの時間は限られている。

    仮に現行仕様を維持する判断が下された場合でも、マイアミGP直前に行われた修正の範囲内で、既存ハードウェアを前提とした改善策を議論し、導入する余地は残される。

    あるチーム代表は匿名を条件に、「2週間以内に決定が下されれば、すべてを間に合わせることは可能だ」と説明している。また燃料に関しては、最悪の場合、レース距離を数周短縮する選択肢もあり得るという。

    ホンダ、RBPT、フェラーリ、アウディが主導権争い
    今回の変更案の狙いは、2025年までのマシンで見られたような、ドライバーがより自然に戦えるレース感覚を取り戻すことにある。今季序盤に指摘されているドライビング特性への違和感を解消する狙いだ。

    各メーカーの立場については公式な発言はなく、状況は不透明なままとなっている。ただし、メルセデスは変更に消極的とみられる一方で、他メーカーが足並みを揃えた場合には対応を迫られる可能性もある。

    そのため主導権争いはホンダ、レッドブル・パワートレインズ、フェラーリ、アウディの間で展開されているとみられる。パドック内の見方では、ホンダとレッドブルは変更に前向きであり、フェラーリとアウディの判断が鍵を握る構図となっている。

    2027年のパワーユニット規則は、単なる数値の調整ではなく、F1の競技性そのものを左右する分岐点となる。5月中旬までの判断が、次世代F1の姿を決定づけることになる。

  • 2026年F1レギュレーションは想定以上に自由度大 各チームで設計差

    2026年F1レギュレーションは想定以上に自由度大 各チームで設計差

    2026年F1レギュレーションは厳格な枠組みになると予想されていたが、実際には各チームの設計に大きな自由度が残されていることが明らかになってきた。

    マクラーレンのチーフデザイナーであるロブ・マーシャルは、当初の想定とは異なり、グリッド全体で多様な解釈と独自ソリューションが生まれている現状を明かし、新規則の本質が「制約」ではなく「創造性の幅」にあると示唆した。

    厳格と見られた規則 実際は設計の余地が拡大
    ロブ・マーシャルは2026年規則について、当初はより制約の強いものになると考えていたと語った。

    「我々はこのレギュレーションがかなり厳格になると予想していた」

    「これまでは大量の数値やデータが紙に書かれていて、それがある程度、従うべき枠組みを決めていた」

    「今は非常に複雑なCADモデルが大量にあり、一見するとそれに基づいて創造性を発揮するのは難しく見える。モデルがマシンを設計してしまうように感じるからだ」

    しかし実際には、その印象とは異なる状況が広がっているという。

    各チームで分かれる解釈 個性あるコンセプトが出現
    マーシャルは、他チームのマシンを見た際の印象について次のように語っている。

    「他チームのマシンを見ると、かなり異なる解決策を採用していたし、特に興味深いものもいくつかあった」

    具体的な例として、いくつかの特徴的な設計が挙げられた。

    アウディ・アストンマーティンの独自アプローチ
    まずマーシャルが言及したのは、アウディのサイドポッドだ。

    「アウディのサイドポッドはかなり興味深い。彼らは異なる解決策を採用していて、他に似たものがない。我々は一般的なものを流用してくると思っていたが、実際にはそうではなかった」

    さらにアストンマーティンのサスペンションにも注目している。

    「アストンマーティンのサスペンションジオメトリーも非常に興味深い。リアはかなり野心的で、非常に面白い。注目すべき理由がある」

    「フロントサスペンションも非常に興味深く、おそらく昨年我々が取り組んでいたものにインスパイアされた可能性がある」

    F1レギュレーション フォーミュラ1カー

    フェラーリの“マカレナ”リアウイングも注目対象
    フェラーリの設計についても、マーシャルは複数の要素を挙げている。

    「リアウイングについては、誰もが見て『なるほど、問題ない』と思った」

    マーシャルは、いわゆる“マカレナ”と呼ばれるソリューションについて、合法性を確認したことも明かした。

    「本当に合法なのか尋ねたが、『問題ない』と言われた」

    また、排気口周辺の設計にも独創性があると評価している。

    「排気口のベンチレーションにも巧妙な設計要素があり、誰もが『これは興味深い』と思った」

    フロントウイングも統一されず 多様性が顕在化
    フロントウイングについても、当初の予想とは異なる結果になっている。

    「フロントウイングも非常に特徴的で、チームごとに形状の違いが見られる」

    「すべて同じような形になると思われていたが、実際にはそうではない」

    “規則=均一化”の前提は崩壊 設計競争が再び主軸に
    2026年F1レギュレーションは、エネルギーマネジメントやパワーユニット規定と並び、空力面でも均一化が進むと見られていた。

    しかしマーシャルの証言からは、実際には各チームが異なる解釈を持ち込み、独自のコンセプトを構築している現状が浮かび上がる。

    結果として、新時代のF1は「制約による収束」ではなく、「制約の中での分岐」が進む構図となっており、設計競争の重要性が改めて強まっていることが示されている。

    Source: GMM

  • F1 50対50配分は限界か 2027年にPU規則見直しへ 60対40転換案浮上

    F1 50対50配分は限界か 2027年にPU規則見直しへ 60対40転換案浮上

    F1は、2026年F1レギュレーションで導入された内燃エンジンとバッテリーの「50対50」に近い出力配分を見直す可能性について、早くも協議を始めている。対象は2027年、または2028年で、現行マシンが抱えるエネルギー不足と予選での全開アタック不足を根本的に解決する狙いがある。

    マイアミGPに向けてはすでに一連の規則修正が合意されているが、パドック内では、それだけで問題が完全に解決するわけではないとの見方が強い。

    関係者のひとりは、今回の修正で対応できたのは最終的に必要な対策の「約20%」にすぎないと示唆している。

    50対50配分では予選全開アタックの完全復活は困難
    F1首脳陣とパワーユニットメーカーは、現在のターボV6エンジンと4メガジュールのバッテリーが、ドライバーに各ラップを全開で攻めさせるだけの出力とエネルギーを本来は備えていると考えている。

    ただし、現状では内燃エンジンとバッテリーの出力配分が50対50に近い形になっていることで、運用上の制約が大きくなりすぎている。この配分はメーカー参入を促すうえで重要な要素とされてきたが、実際の走行ではエネルギー不足が表面化している。

    そのため、内燃エンジン側の出力を燃料流量の増加によって引き上げ、同時にバッテリー側の最大出力を下げることで、マシンをより自然に最大性能へ近づけられるのではないかという考え方が浮上している。

    450kW対300kW案で60対40へ転換する可能性
    現在検討されている案のひとつは、内燃エンジン側を50kW引き上げ、バッテリー側を50〜100kW引き下げるというものだ。

    現行の出力配分はおおむね内燃エンジン400kW、バッテリー350kWで、F1が掲げた50対50に近い構成となっている。これを450kW対300kW程度に変更すれば、比率はおよそ60対40となり、より内燃エンジン寄りのバランスになる。

    一方で、決勝ではオーバーテイクを助けるために350kWのデプロイを引き続き認める案もあり、その場合は実質的に55対45に近い形となる。

    ただし、2026年シーズン中に内燃エンジン出力を増やすことは不可能とされている。現在のエンジンは既定の出力を前提に設計されており、燃料流量を増やして馬力を引き上げれば、部品寿命が変わり信頼性問題を引き起こすためだ。

    フォーミュラ1エンジン F1レギュレーション

    変更にはメーカー4社以上の賛成が必要
    こうした見直しには、パワーユニットメーカー側のスーパーマジョリティが必要になる。つまり、5メーカーのうち4社に加え、FIAとFOMの支持が必要となる。

    メルセデスは現在の競争優位を持つ立場にあるため、必ずしも変更に前向きとは限らない。しかし、メルセデス単独では改定を阻止できない。

    マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は、長期的な視点ではハードウェア変更を検討すべきだと語った。

    「より長期的には、いくつかのハードウェア変更を検討すべきだと思う。そうすることで、シャシー面やドライビング面で必要とされる妥協を減らせるような位置に、パワーユニットの作動点を置くことができる」

    「我々はそれが可能だと考えているし、すべての関係者が貢献する意思を持ってこの議論に臨むべきだと考えている」

    レッドブルのローラン・メキース代表も、次の段階にはハードウェア変更が必要だとの見方を示した。

    「次のステップに進むにはハードウェア変更が必要だという点で、我々はアンドレアに同意している」

    「マイアミに向けた変更は良い一歩だ。正しい方向に進んでいる。誰もそれですべてが解決するとは言っていないが、良い一歩だ。そして、ドライバーたちがコース上で全開で走れるようにするため、我々は今後さらに進むことを確実に支持する」

    アウディも50対50に固執せず
    50対50の電動化比率は、アウディをF1に引き込んだ要素のひとつと見られてきた。しかし、アウディ側は必ずしもその配分に縛られているわけではない姿勢を示している。

    アウディのプロジェクトリーダーであるマッティア・ビノットは、アウディ参入の決め手は別の部分にあったと説明している。

    「アウディが参入を決めたのは、高効率エンジン、持続可能燃料、電動化の大きな比率、そしてMGU-Hの廃止があったからだ。アウディは、その知識が既存メーカーにとって競争上の優位になっていたと考えていた」

    「しかし、アウディは50対50の議論には関与していなかった」

    関係者によれば、2027年からこの見直しを導入するのであれば、メーカーが新設計に着手できるよう、今後数週間以内に決定を下す必要があるという。

    F1はマイアミGPで短期的な修正を試みる一方で、すでにその先の根本的な見直しにも目を向けている。2026年F1レギュレーションの象徴だった50対50配分は、導入からわずか1年で再検討の対象となる可能性が出てきた。

  • F1 ADUO巡る駆け引き懸念 元F1ドライバーが警鐘「危険な道に進む」

    F1 ADUO巡る駆け引き懸念 元F1ドライバーが警鐘「危険な道に進む」

    2026年F1レギュレーションで導入されたADUO(追加開発・アップグレード機会)をめぐり、元F1ドライバーのアンソニー・デビッドソンがFIAに警鐘を鳴らした。

    メルセデス製パワーユニットが開幕から優位に立つなか、ライバル陣営に開発機会を与える制度は競争均衡を目的とする一方で、運用を誤ればチーム側の“駆け引き”を誘発しかねない。

    デビッドソンは、F1がBoP(性能調整)的な領域に踏み込むことへの危うさを指摘している。

    ADUOは“救済策”か、それとも性能調整か
    ADUOは「Additional Development and Upgrade Opportunities」の略で、2026年F1レギュレーションに組み込まれた新たな制度だ。最も高性能なパワーユニットメーカーに対して一定以上の差があるメーカーに、追加の開発機会を認める仕組みとされている。

    開幕からメルセデス勢は好調で、ジョージ・ラッセルがオーストラリアGPを制し、キミ・アントネッリも中国GPと日本GPで連勝した。現時点でフェラーリがメルセデスの最も近い挑戦者とされるなか、ADUOによって差を縮める可能性が取り沙汰されている。

    しかし、デビッドソンはスカイスポーツF1の番組で、この制度が本来の目的を超えてしまうリスクを指摘した。

    「これがバランス・オブ・パフォーマンスになってしまうことは避けなければならないと思う。F1にそれが入り込む余地はないと思う。F1は、誰が最高のエンジニアで、誰がその状況の中で最も賢く資金を使えるかを競うべきものだ」

    「実質的には、それがコストキャップだ。F1におけるバランス・オブ・パフォーマンスはそれだ。全員が同じ資金の中で戦う。エンジニアリングチームが勝つべきだ」

    メルセデス優位の要因はICEだけではない
    デビッドソンは、2026年F1パワーユニットの性能差を単純にICEの出力差だけで判断することにも慎重な姿勢を示した。

    2026年F1パワーユニットでは、内燃エンジンだけでなく、電動モーター、バッテリー、エネルギー回生と放出の統合が大きな比重を占める。つまり、どのメーカーが劣っているのかを見極めるには、単なる最高出力だけでは不十分ということだ。

    「現時点では、メルセデスのパワーユニットが最も良い仕事をしているように見える。ただ、今年は複雑だ。電動モーター側と電気系、バッテリー統合のすべてが関わっているからだ」

    「だから、それはICEなのか。それとも電気系全体の統合なのか。馬力のほぼ半分を占める部分が、その優位性を与えているのかということだ」

    この指摘は、ADUOの判定が極めて難しいことを示している。どこに性能不足があり、どこまでを追加開発で補うべきなのかを誤れば、制度は救済策ではなく競争順を人為的に動かす仕組みになりかねない。

    チームの“サンドバッグ”を誘発する危険性
    デビッドソンが最も強く警戒したのは、チームがADUOを得るために意図的に実力を隠す可能性だ。

    「ここで危険な道に進むことになる可能性がある。チームが飛び上がって『ここで少し性能向上が必要だ』と言い出すかもしれない。あなたが言うように、その性能向上を得るためにサンドバッグをするかもしれない」

    「これは極めて慎重に扱わなければならない。そうでなければ、世界中の多くのカテゴリーで見られるような状況になってしまう。そこにはバランス・オブ・パフォーマンスがあり、駆け引きが行われる」

    F1は伝統的に、技術競争そのものを競技の中心に置いてきた。ADUOがその理念を補完する制度として機能するのか、それともBoP的な調整に近づくのかは、FIAの判断と透明性にかかっている。

    トト・ヴォルフは「支援対象は1社だけ」と主張
    メルセデス代表のトト・ヴォルフも、ADUOの運用について慎重な見方を示している。

    ヴォルフは、支援が必要なメーカーは1社だけだと考えており、ADUOの決定が現在の競争順位に干渉するような形になることには強い懸念を示した。

    「各チームはそれぞれの性能状況を把握しているはずだ。そして私には、問題を抱えているエンジンメーカーは1社だけに見える。我々はそこを助ける必要がある。そして他はほぼ同じ範囲にいる」

    「だから、ADUOの判断が現時点の競争序列に干渉するようなものになるなら、私は非常に驚くだろうし、失望するだろう」

    ADUOは、2026年F1の技術格差を是正するための重要な制度である一方、その線引きは非常に繊細だ。開発機会の付与が正当な救済にとどまるのか、それとも競争バランスを動かす装置になるのか。デビッドソンの警告は、FIAが制度の信頼性を保つうえで避けて通れない論点を突いている。

  • 2026年F1レギュレーション修正は不十分?“常識的判断”の代償

    2026年F1レギュレーション修正は不十分?“常識的判断”の代償

    2026年F1シーズン序盤で浮上した課題に対し、FIAと各チームはルール修正に踏み切った。しかし、その中身は抜本的な改革ではなく、あくまで現実的な調整にとどまっている。

    それでも今回の決定は、単なる“先送り”ではない。むしろ、データと合意形成に基づく「現実解」としての意味を持ち、今後の改善に向けた土台を築いたという点で重要な一歩といえる。

    “革命”ではなく“微調整”にとどまった理由
    今回のルール会議では、より踏み込んだアイデアも検討されていた。エネルギー回生量やブースト制限、さらにはアクティブエアロの調整といった大胆な案も議論の俎上に載っていたとされる。

    しかし、それらは最終的に採用されなかった。理由は明確で、「複雑すぎる」「検証不足」「導入リスクが高い」という判断だ。

    結果として選ばれたのは、既存の枠組みを維持しながら“明らかに効く部分”を調整するアプローチだった。いわば“外科手術的な修正”であり、大規模な構造変更ではない。

    データ主導で決まった“7MJ”という落としどころ
    象徴的なのが、エネルギー回生量の制限を8MJから7MJへ引き下げた点だ。

    これは単なる数値変更ではなく、各チームのシミュレーションとテレメトリ分析を踏まえた結果である。異なるサーキットでの速度変化、コーナリング特性、ストレートでの加速挙動などが詳細に検証された。

    回生量を減らせば、予選でのフラットアウト走行はしやすくなる一方で、ラップタイムは悪化する。6MJまで削ればその影響はさらに大きくなるが、パフォーマンス低下の代償が大きすぎると判断された。

    最終的に選ばれた7MJは、「改善効果と性能維持のバランス」を取った妥協点だった。

    “正しい方向”だが問題は残る
    今回の修正には明確な狙いがある。

    ・極端なエネルギーハーベスト戦略の抑制
    ・マシン間の急激な速度差の緩和
    ・スタート時の安全性向上

    いずれも現場の不満に直接対応する内容であり、方向性としては正しい。

    ただし、それで問題が解決したわけではない。

    依然として残る“ストレート減速問題”
    今季もっとも批判されている現象のひとつが、バッテリー切れによる急激な速度低下だ。

    ストレートで突然50km/hも失速する挙動は、視覚的にも違和感が強く、ドライバーからも不満が出ている。

    「スピードが一気に落ちるのを見るのは本当に辛い」とランド・ノリスが語ったように、これは競技としての魅力にも直結する問題だ。

    今回の回生制限引き下げにより多少の改善は見込まれるが、根本的な解決には至っていない。むしろ総エネルギー量が減ることで、電力切れの区間が増える可能性すらある。

    F1レギュレーション マイアミグランプリ 2026年のF1世界選手権

    “副作用”のリスクと現実検証の必要性
    シミュレーションに基づく今回の決定だが、実戦で同じ結果が得られる保証はない。

    すでに2026年マシンでは“想定外の挙動”が複数発生しており、今回の変更も新たな問題を引き起こす可能性がある。

    現時点で関係者の多くが共有している認識は明確だ。

    「これで問題が解決したわけではない」

    今回の本質は“仕組みが機能したこと”
    今回のルール修正で最も重要なのは、内容そのもの以上に「プロセスが機能したこと」にある。

    ・チームが技術的に議論
    ・データで検証
    ・合意形成を経てルール化

    この流れが成立したことで、今後のさらなる改善に向けた道筋が見えた。

    政治的対立や利害衝突で停滞するのではなく、現実的な改善が段階的に進む体制が確認された点は大きい。

    マイアミは“検証フェーズ”に過ぎない
    マイアミGPから導入される今回の変更は、あくまで第一段階だ。

    ここで重要なのは「効果が出るかどうか」ではなく、「次の改善に何をつなげられるか」である。

    本格的な解決にはさらなる修正、あるいは2027年に向けた大きな見直しが必要になる可能性が高い。

    それでも、何も変えないよりははるかに前進している。

    今回の“地味で現実的な決定”は、F1が問題解決に向けて動き出した証明でもある。