角田裕毅が、2027年のF1シート獲得に向けて強烈なアピールを送った。レーシングブルズから1戦限りでF1復帰を果たした角田裕毅は、自身の実力をパドックに示せたとの手応えを口にし、まだ来季のラインナップを決めていないチームに「僕に電話してください!」と冗談交じりに売り込んだ。
2026年はF1のレギュラーシートを失い、レッドブル・レーシングのリザーブドライバーとして過ごしてきた角田裕毅。
2026年をレッドブル・レーシングのリザーブドライバーとして過ごしてきた角田裕毅にとって、オランダGPは昨年12月のアブダビGP以来となるF1実戦だった。慣れないVCARB-03を駆りながらセッションを重ねるごとにペースを上げ、決勝ではポイント獲得まであと一歩の11位。1戦限りのチャンスを、自身を再びF1パドックのレーダーに載せる機会へと変えた。
2025年の苦境から再びF1のレーダーへ
角田裕毅は2025年、レッドブルでやや悲惨ともいえるシーズンを経験した。その状況を考えれば、再びF1のレースシートへ戻る道が開けるとは想像しにくかった。
しかし、慣れないVCARB-03で堅実なパフォーマンスを見せたオランダGPは、角田裕毅にとって各チームへの名刺代わりとなった。
現在F1のレギュラーシートを持たないドライバーの中でも、角田裕毅は最も経験豊富かつ有力な候補の一人だ。ザントフォールトでの走りは、その事実をF1パドックにあらためて印象づけるものとなった。
レッドブル陣営にはF2選手権をリードするニコラ・ツォロフをはじめとした若手が次のチャンスを待っており、角田裕毅が同陣営で再びレギュラーシートを得る道は容易ではない。
一方、レッドブル以外に目を向ければ、ザントフォールトで走る前よりも可能性は広がったと考えられる。
F1以外では、これまで長年にわたって築いてきたHondaとの強いつながりを背景に、将来的にインディカーへ向かう可能性もある。それでも今回のオランダGPで角田裕毅が明確にしたのは、F1のレギュラーシートを再び手にしたいという意思だった。
TPCとRB22シミュレーターで実戦感覚を維持
昨年12月のアブダビGPを最後にF1レースから離れていた角田裕毅だが、この8カ月間を何もせずに過ごしていたわけではない。
レッドブルの旧型車を使用したTPC(Testing of Previous Car)で実車を走らせることで感覚を維持するとともに、ミルトン・キーンズのシミュレーターでは現行マシンのRB22を数多くドライブしてきた。
このシミュレーター作業は単にコースを走る感覚を維持するだけではなく、2026年のFordパワーユニットをどのように使うかについて理解を深める機会にもなった。
一方、レーシングブルズのVCARB-03については事情が違った。
オランダGPへの出場決定が直前だったため、角田裕毅がVCARB-03をシミュレーターで初めて試せたのはレース週の水曜日。それでも、この事前走行によって実際にザントフォールトでマシンに乗り込む前に最低限の準備を整えることができた。
わずか1時間のフリー走行を終えると、すぐにスプリント予選へ突入。SQ1を13番手で通過し、SQ2では12番手となった。
この時点でチームメイトのアービッド・リンドブラッドとの差は0.360秒。初めて実車で走らせるVCARB-03であることを考えれば、悪くないスタートだった。
「最後の数ミリ秒を追い求める感覚が恋しかった」
スプリントで24周を走った経験も大きかった。決勝を想定した各種手順やエネルギーデプロイメントなど、レッドブルとは異なるシステムを実戦のなかで学ぶことができた。
「本当に、本当に役に立ちました。特に決勝に向けて、レース前にあれを経験できたのは良かったです」
角田裕毅はスプリントについて語った。
「すべての手順やデプロイメントのマネジメントがかなり違います。だから決勝に向けて重要だったと思いますし、24周のすべてのラップで学ぶことができました。それを予選でも証明できたと思います」
土曜日の予選では、その適応がタイムにも表れた。
Q1を8番手で突破し、Q2では12番手。リンドブラッドとの差はスプリント予選の0.360秒からわずか0.102秒まで縮まった。
「正直、本当にうれしいです。この予選はすごく楽しめました」
「昨日のスプリント予選も悪くはなかったですけど、まだ限界がどこにあるのか分かっていませんでした。僕にとってはまだ新しいマシンでしたから」
「でも今回はちゃんとした予選という感じで、マシンをもっと信頼してコーナーに飛び込んでいくことができました。まだ4セッション目くらいですし、もっと改善できるところがたくさんあるのも分かっています」
そして、久々にF1の予選を全力で攻める感覚を味わった喜びを口にした。
「正直、この感覚が恋しかったです。最後の数ミリ秒、最後のコンマ数秒を追い求めるような感覚です。本当にすごく楽しんでいます」
「セッションごとにどんどん近づいています。もう1セッション、もう1ラウンドあればと思いますけどね。でも、まだ決勝というもう1セッションがありますし、ポイントにも近いので楽しみです」

決勝では最後までポイント争い
決勝では、角田裕毅と元チームメイトで友人でもあるピエール・ガスリーが長時間にわたってポイント圏を争った。
最終的にはガスリーが10位で最後の1ポイントを獲得し、角田裕毅は11位。惜しくもポイントには届かなかった。
それでも、8カ月近くF1レースから離れ、初めて乗るマシンで臨んだ週末としては大きな手応えが残った。
「正直、自分が予想していたよりも速く進歩できたと思います」
「昨年のアブダビ以来、8カ月の間に4回しか走っていませんでした。それを考えれば、かなりうまくできたと思います」
リザーブ期間中も自身を実戦に対応できる状態に保ってくれたレッドブルへの感謝も口にした。
「レッドブルには感謝しています。シミュレーターなどを通して、かなりいい状態を保たせてくれました」
「全体的に本当に楽しめましたし、自分にできる限り100%を出せたと思います。かなりうまくやれたと思います」
一方で、急きょ異なるチームのマシンをドライブする難しさについては「ほとんどすべて」がチャレンジだったと振り返る。
「デプロイメントやボタン、すべてについて学ぶことがたくさんありました。手順も全部違います」
「今回のレースはデグラデーションの面でも難しかったです。デグラデーションの特性がかなり違っていたので、それに適応するのは大変でした」
それでもレーシングブルズのサポートによって、短期間でパフォーマンスを引き出すことができた。
「正直、チームが本当にたくさんサポートしてくれて、できるだけ速く走れるようにしてくれました」
「もちろんポイントを獲れなかったのは残念です。でも、最後の数周までトップ8、トップ9あたりと戦えたことを考えれば、受け入れられる結果だと思います」
「パドックに自分が何をできるか示せた」
角田裕毅にとって今回のオランダGPで最も重要だったのは、2026年のF1マシンでも自分が何をできるのかを各チームに直接見せられたことだった。
「自分に何ができるかは分かっています」
「そして、たった1レース、数セッションだけでしたけど、パドックのほとんどの人たちに、自分に何ができるのかをかなり示せたと思います」
「ポイントに近いところで戦うことができました。もちろん結果としてはポイントを獲れた方が良かったですけど、そのために自分ができることはすべてやったと思います」
レースに出場する機会を得たこと自体にも大きな意味があった。
「こういう機会がある方が、何の機会もなくて、このレギュレーションで自分に何ができるのかをパドックに見せられないより、間違いなくいいです」
「だから全体的にポジティブだったと思いますし、自分が見せたパフォーマンスもポジティブだったと思います」
2027年へ「僕に電話してください!」
そして角田裕毅は、2027年のF1シートをまだ確定させていないチームに向けて、自らを売り込んだ。
「ここからは僕のマネージャーと、まだ来年のラインナップを決めていない他のチーム次第です。僕を起用したいと思ってくれるかどうかですね。でも、僕をチームに加えるべきだと思います!」
さらに別の取材では、同じ質問に冗談を交えながら、よりストレートなメッセージを送った。
「僕に電話してください!」
角田裕毅が2027年のF1レギュラーシートを手にできる可能性は、依然として限られている。しかし、ザントフォールトに来る前と後では、その立場は確実に変わった。
1戦限りの復帰でセッションを重ねるたびにVCARB-03への理解を深め、レギュラードライバーとの差を縮め、決勝では最後までポイントを争った。角田裕毅は与えられたわずかなチャンスを使って、自分が今もF1で戦えるドライバーであることをパドックに示した。
あとは、その走りと「僕に電話してください!」というメッセージに応えるチームが現れるかどうかだ。