ランド・ノリスは、2026年F1スペインGPで勝利を逃したことに強い悔しさを示した。ポールポジションからレースを支配していたマクラーレンのノリスだったが、バーチャル・セーフティカー(VSC)のタイミングに翻弄されて3位。「今日は完璧なレースをした」と語り、自分にもチームにも落ち度はなかったと強調した。
マドリンクで初開催されたF1スペインGPで、ノリスはスタートから首位をキープ。
序盤にアンドレア・キミ・アントネッリの攻撃を退けると、その後はタイヤを管理しながらリードを築き、勝利に向けてレースをコントロールしていた。
しかし、ランス・ストロールがマシントラブルでコース脇にストップしたことでVSCが導入されると状況が一変。ノリスはVSC発動時にすでにピット入口を通過しており、その直後にアントネッリとマックス・フェルスタッペンがタイムロスの少ないピットストップを行った。
「完璧なレース」もVSCで約20秒を失う
ノリスはレース後、自身のパフォーマンスについて迷いなく言い切った。
「今日は完璧なレースをしたと感じている。タイヤマネジメントもすごく良かったし、他のみんなより一歩先にいたと感じていた」
「予選は完璧だった。パフォーマンスという意味ではレースも完璧だったし、大きな差で僕たちが一番速かった」
それだけに、ドライビングとは無関係の要因で勝利を失ったことへの落胆は大きかった。
「パフォーマンスとはまったく関係のない形で負けるのは、とにかくフラストレーションがたまる。グリッド全体で、VSC中にピットストップをするチャンスがなかったのは僕だけだった。それによってレースタイムを20秒くらい失った」
FIAのレース後記者会見でも、ノリスは今回の敗戦について、自分たちが勝利を「逃した」という表現とは少し違うとの考えを示した。
「僕たちが何かをして勝利を失ったわけではない。今日はただ、信じられないほど不運だった」
「これまでのレースでは、それで得をしたこともあれば、損をしたこともある。それもレースだ。でも、勝利を争っているときにはなかった。VSCだけが理由で勝利を失ったのは、おそらく今回が初めてだと思う」
ノリスは「今日はもっといい結果に値したと思う」としながらも、優勝したアントネッリと2位のフェルスタッペンの走りには敬意を示した。
「キミとマックス、おめでとう。2人ともいいレースをした。ただ今日は運が僕たちの側になかった」

ピット入口通過のわずか5秒後にVSC
ノリスにとって決定的だったのは、VSCが導入されたタイミングだった。
記者会見では、ノリスがピット入口を通過してからわずか約5秒後にVSCが発動したことについて、ストロールの停止を見て事前にピットへ入る判断はできなかったのかとの質問が出た。
これにノリスは反論した。
「僕にどうやって分かるんだ? 答えが必要だよ」
ピットウォールから情報を受け取る可能性を指摘されると、ノリスはチームと確認する必要があるとしながら、自身やマクラーレンに責任があるとの見方を否定した。
「それならピットウォールと話さないといけない。僕はただマシンを運転しているだけで、そういうことは分からない」
「チームのせいではないし、僕のせいでもない。それだけだ。ただ不運だった」
VSCが終了したあとも、そのまま走り続けることは現実的な選択肢ではなかったという。
「そのラップの終わりにはピットに入らなければならなかった。それが唯一のチャンスだった」
「それでも全員のタイヤが冷えているから、ある程度はピットロスを減らすことができた。ミディアムは完全に終わっていて、ハードは素晴らしかった」
ノリスはVSC終了後にハードタイヤへ交換したが、アントネッリとフェルスタッペンの後方へ下がることになった。
13~14秒を取り戻してフェルスタッペンに迫る
ハードタイヤに交換したノリスは、そこから猛烈な追い上げを開始した。
前方ではシャルル・ルクレールがハードタイヤでロングスティントを続けており、アントネッリとフェルスタッペンがその後方でタイムを失ったこともあって、ノリスは急速にギャップを縮めた。
「ペースはものすごく強かった。ハードでは、彼らが前で詰まっていたこともあるけど、13秒か14秒、あるいはそれ以上を取り戻したと思う」
最終的にはフェルスタッペンの背後まで迫ったものの、オーバーテイクが難しいマドリンクでは決定的なチャンスを作れなかった。
「マックスを捕まえようとして、いい戦いはできた。でも、ここでは抜くのが難しい。彼もほとんどミスをしなかった」
フェルスタッペン自身も「マシンを真ん中に置いておけばうまくいく」と語っており、ノリスを抑え切るにはコース特性が有利に働いたことを認めている。
ノリスは3位という結果を受け入れながらも、純粋な速さでは勝利できるレースだったとの考えを変えていない。
「僕たちが今日勝利に値したとは思っているけど、こういうこともレースでは起こる。受け入れて、次でもう一度やるしかない」

VSCルールに「もっと公平にできる」
今回の出来事を受け、ノリスはVSC中のピットストップを巡るルールについても問題を提起した。
VSCやセーフティカーの導入タイミングによってピットストップの損失時間が大幅に変化する問題は、以前からドライバー間で議論されてきたという。
「これについては何年も前から、いろいろなドライバーが何度も話してきた。もちろん、変更することによるデメリットもあると思う」
「過去には僕もこれで勝ったことがあるし、負けたこともある。シーズン全体で見れば、それがいいことなのか悪いことなのかは分からない。時間が経てば均等になるのかもしれない」
それでも今回は、単なる数ポイントではなく勝利そのものを失った。
「もちろん今回は勝利を失ったから、余計につらい」
「今日はドライバーとして、これ以上いい仕事をするためにできることは文字どおり何もなかった。ポールを獲って、レースをリードして、それでも自分ではコントロールできないことで負ける。それがレースの勝敗を決めるべきではないと思う」
ノリスは改善策として、VSC発動後に全員が一度ピットストップの機会を得られるようにする方法や、原則としてピット入口を閉鎖する案などを挙げた。
「少なくとも1周はカバーして、全員にピットストップをする機会を与えることもできる。あるいはピット入口を閉じて、パンクなどの場合を除いて誰も入れないようにすることもできる」
「もっとシンプルで、全員にとって公平にするためにできることはいくつかあると思う。ただ、これはもっと大きな議論が必要だ」
一方で、雨天時にVSCが出た場合など、タイヤ交換を認める必要が生じるケースもあり、単純にピットを閉鎖すれば解決する問題ではないことも認めている。
「雨が降っていてVSCが出て、自分がスリックを履いていたらピットに入れるのか、という問題もある。複雑なテーマだ」
「でも、ドライバー全員で話せば、みんなが求めているのは同じだと思う。それは全員にとって公平であることだ」
フェルスタッペンもノリスの意見に同調し、自身も過去に同様の状況で勝ったことも負けたこともあるとしたうえで、「将来的にもっと良くできるかもしれない」と語った。
「こんな形で勝利を失うべきではない」
ノリスは今回、自分が不利益を受けたからといって一方的にルール変更を要求しているわけではないことも強調した。
「今日は僕が文句を言っているけど、次は僕がその恩恵を受けて勝つかもしれない。だから受け入れるしかない」
それでも、ドライバーのパフォーマンスとは関係のないタイミングだけで勝敗が大きく動く状況には疑問を残した。
「僕はただ、こんなことが誰にも二度と起きてほしくない。こういう形で勝利を失うべきではないと思う」
結果は3位に終わったものの、ノリスにとってマドリンクで示した速さは大きな収穫だった。
「この週末から持ち帰れるポジティブなものはたくさんある。日曜日のペースがあることは明らかだし、今日は僕たちが誰よりも良かった。それは安心できることだ」
「チームは素晴らしい仕事をしている。僕たちは懸命に取り組んでいるし、これからもそうしなければならない。トップで戦うのは簡単ではない」
ポールポジションからレースを支配しながら、わずかなVSC発動のタイミングによって勝利を逃したノリス。それでも、マクラーレンの純粋なレースペースには確かな手応えを得た。
「ポジティブなことだらけの一日だった。ただひとつのことが、すべてを台無しにした」