カテゴリー: F1カナダGP

  • ウィリアムズF1 カナダGPでリザーブ交代 ビクター・マルタンスが帯同

    ウィリアムズF1 カナダGPでリザーブ交代 ビクター・マルタンスが帯同

    ウィリアムズは今週末の2026年F1カナダGPを前に、リザーブドライバー体制を変更した。

    ルーク・ブラウニングが日本で開催されるスーパーフォーミュラ第4戦に参戦するため、カナダGPではビクター・マルタンスがリザーブドライバーを務める。

    ビクター・マルタンスが約1年ぶりにF1週末の現場へ
    24歳のフランス人ドライバーであるビクター・マルタンスは、今季ウィリアムズでテスト&開発ドライバーを務めている。今回の短期的な役割変更により、サーキット現場での業務に復帰するのは約1年ぶりとなる。

    ウィリアムズの広報担当者は、今回の変更について次のように説明した。

    「ビクターは2025年初めにアトラシアン・ウィリアムズF1チーム・ドライバー・アカデミーの一員としてチームに加わり、2026年にはテスト&開発ドライバーの役割に昇格した」

    「彼はファクトリーでアレックス・アルボンとカルロス・サインツと密接に作業し、レース週末にはマシン開発とセットアップの改善に貢献してきた」

    「ビクターが現場での役割を担うのは、チームで2025年F1スペインGPのFP1を走行して以来初めてとなる」

    ビクター・マルタンスにとって今回のカナダGPは、単なる代役起用ではなく、ファクトリーで積み重ねてきた開発作業をグランプリ週末の現場に接続する機会となる。ウィリアムズにとっても、ブラウニング不在の週末に備えた実務的な体制変更となった。

  • マクラーレンF1 “マカレナウイング”投入へ カナダGPでメルセデスと全面対決

    マクラーレンF1 “マカレナウイング”投入へ カナダGPでメルセデスと全面対決

    マクラーレンは今週末の2026年F1カナダGPで、MCL40に大規模なアップグレードパッケージを投入することを明らかにした。舞台となるジル・ヴィルヌーヴ・サーキットでは、メルセデスも今季初の本格アップデートを投入する予定となっており、タイトル争いを左右する重要な週末になる可能性が高まっている。

    マクラーレンはマイアミGPですでに7種類のアップデートを導入していたが、アンドレア・ステラ代表が事前に説明していた通り、開発計画は“2段階構成”となっていた。

    カナダではフロア、シャシー、フロントウイング、リアウイング、ボディワーク、ヘイロー、ロールフープに至るまで新コンポーネントが投入される予定だ。

    「シーズン開幕時に説明した通り、マイアミはMCL40にパフォーマンスを加える最初の大きなステップだった」とマクラーレンは説明した。

    「その流れは今週末のモントリオールでも継続される。フロア、シャシー、フロントウイング、リアウイング、ボディワーク、ヘイロー、ロールフープに新コンポーネントを投入する」

    今回のパッケージで最も注目されているのが、新型リアウイングだ。パドックでは、これがフェラーリSF-26で話題となった“マカレナウイング”コンセプトをマクラーレン流に解釈したものだと見られている。

    2026年型フェラーリSF-26は、これまで保守的と見られてきたフェラーリのイメージを覆す空力コンセプトを採用しており、その中でも最大の注目を集めているのが、フラップ可動構造を持つ独特なリアウイングだった。

    この“マカレナウイング”は、バーレーンテスト以来ライバル勢の関心を集めており、レッドブルはすでにマイアミGPで独自解釈版をRB22に投入している。

    一方のマクラーレンは、マイアミでは主にサイドポンツーン、アンダーボディ、フロントウイングの開発を優先し、リアウイングについては大幅な変更を加えていなかった。しかし、モントリオール投入予定の“第2弾”パッケージの中心が、このフェラーリ風リアウイングになるとの噂がパドック内で急速に広がっている。

    アンドレア・ステラ率いるマクラーレンは、ここ2か月にわたってこの空力コンセプトの可能性を詳細に分析してきたとされ、MCL40に実際のメリットをもたらすとの結論に達したという。

    ただし、このリアウイングは従来型とは異なる支点構造を持つため、製造工程は非常に複雑だったとされる。カナダへ輸送するため、2台分に加えてスペアパーツも含めた生産は急ピッチで進められたという。

    しかし、現時点で実戦投入が最終決定されたわけではない。最大の障害となっているのは、カナダGPがスプリント形式で開催される点だ。

    マクラーレン F1 カナダグランプリ

    スプリント週末では、実質的に新パーツを十分検証できる時間は金曜フリー走行1回しか存在しない。これは新コンポーネント導入には大きなリスクとなる。

    もっとも、マイアミも同じスプリントフォーマットだったにもかかわらず、フェラーリ、レッドブル、そしてマクラーレン自身も大規模アップデートを投入していたことを考えれば、今回も投入に踏み切る可能性は十分にある。

    マクラーレンにとって重要なのは、このアップグレードがメルセデスとの差を縮められるかどうかだ。ステラ代表はマイアミ後、「メルセデスは1周あたりコンマ2秒ほど優位だった」と認めていた。

    実際、マイアミではランド・ノリスとオスカー・ピアストリがスプリントでワンツーを達成し、決勝でもダブル表彰台を獲得したものの、優勝したのはメルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリだった。

    そしてメルセデスは、フェラーリやレッドブル、マクラーレンとは異なり、マイアミ投入を見送り、カナダGPに今季最初の大型アップグレードを集中投入する戦略を取っている。

    マクラーレンは現在コンストラクターズランキング3位。首位メルセデスとの差は86ポイント、2位フェラーリとの差は16ポイントとなっている。

    「マイアミでは接戦だったが、チームはスプリントでワンツー、決勝でもダブル表彰台を獲得した」とマクラーレンは語った。

    「2週間のインターバルを経てチームはリフレッシュしており、この勢いを次の北米ラウンドへ持ち込みたいと考えている」

    カナダGPでは、メルセデスの大型アップデートと、マクラーレンの“マカレナウイング”導入が真正面からぶつかる可能性がある。2026年F1タイトル争いの流れを変える週末になるかもしれない。

  • フェラーリF1困惑 アップグレードがシミュレーション以下の実走結果

    フェラーリF1困惑 アップグレードがシミュレーション以下の実走結果

    フェラーリは、2026年F1カナダGPをマイアミGPで投入した大型アップグレードの“再検証の場”と位置づけている。マイアミではフロントウイング、フロア、リアウイング、ディフューザー、前後サスペンション関連を含む大規模な更新を投入したが、実走データはシミュレーションで示されていた期待値を下回った。

    ルイス・ハミルトンはマイアミGPでフェラーリ勢最上位の5位に入った一方、シャルル・ルクレールは終盤にスピンを喫し、さらにレース後のペナルティで8位に後退した。

    フェラーリはマクラーレンとレッドブルに上回られ、メルセデスの主要な対抗勢力としての立場を示せなかった。

    失敗ではないが、期待値には届かなかったアップグレード
    Motorsport.comによれば、フェラーリはマイアミGP後にアップグレードのデータを分析し、個々のパーツが明確に「機能しなかった」わけではないと判断している。ただし、全体としてはシミュレーションが示していた性能向上には大きく届かなかった。

    そのため、今週末のジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは、SF-26のアップグレードが本来のポテンシャルを発揮できるかを確認する重要なテストになる。マイアミで期待外れに終わったパッケージが、単にサーキット特性やセットアップとの相性で力を出し切れなかったのか、それとも開発の方向性そのものに問題があるのかが問われる。

    スクーデリア・フェラーリ

    カナダで浮上するバッテリー回生の課題
    一方で、カナダGPの舞台となるモントリオールは、フェラーリにとって別の課題も突きつける。低ダウンフォース仕様が求められるレイアウトであり、SF-26が抱えるバッテリー回生面の“慢性的”な問題が露呈する可能性がある。

    フェラーリは、2026年型マシンの強みのひとつであるトラクションがカナダで助けになると見ている。しかし、ハミルトンとルクレールが十分にバッテリーを回生できるようにするため、加速性能の一部を犠牲にする必要が生じる可能性もある。

    マラネロの空気を左右する週末
    マイアミGP後には、マクラーレンとレッドブルに先行されたことで、フェラーリ内部の雰囲気が悪化したとも伝えられている。さらに、マイアミで投入したアップグレードは今季のコストキャップ予算の大きな部分を使ったとされる一方、ラップタイム面で大きな成果を生まなかった。

    カナダではマクラーレンとメルセデスも新アップデートを投入する見込みであり、フェラーリにとっては比較対象がさらに厳しくなる。マイアミで見えなかったアップグレードの効果を引き出せなければ、開発計画だけでなく、チーム内の士気にも影響を及ぼす週末になる。

  • 2026年F1カナダGP5つの焦点 ラッセル反撃とADUO初評価に注目

    2026年F1カナダGP5つの焦点 ラッセル反撃とADUO初評価に注目

    2026年F1カナダGPは、今季3度目のスプリント週末としてモントリオールで開催される。タイトル争いではメルセデス勢が主導権を握るなか、ジョージ・ラッセルの反撃、キミ・アントネッリの連勝継続、そしてマクラーレンやフェラーリ、レッドブルによる追撃が大きな見どころとなる。

    さらに今週末は、2026年F1パワーユニット規則の鍵を握る「ADUO(追加開発・アップグレード機会)」の初回評価期間終了という重要な節目でもある。

    アップグレード競争、変わりやすいモントリオールの天候、そして初開催となるカナダGPのスプリント形式が重なり、シーズン序盤の流れを左右する週末になりそうだ。

    ラッセルにとって反撃の舞台となるモントリオール
    ジョージ・ラッセルは昨年のカナダGPでポールポジションから勝利を挙げ、その前年もポールから表彰台を獲得している。ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは、近年のラッセルにとって特に相性のいい舞台だ。

    開幕前はタイトル候補の一角と見られていたラッセルだが、中国GP予選での信頼性問題をきっかけに流れが変化。その間にキミ・アントネッリが中国、日本、マイアミで勝利を重ね、ランキング首位で20点差を築いた。マイアミでは苦戦したラッセルにとって、カナダは反撃への重要な一戦となる。

    カナダグランプリ F1 ジョージ・ラッセル

    メルセデスを追うマクラーレン、フェラーリ、レッドブル
    マイアミGPでは、マクラーレン、フェラーリ、レッドブルを含む複数チームが大規模なアップグレードを投入した。これにより、メルセデスとの差は前戦で明確に縮まり、上位争いはさらに接近した。

    ランド・ノリスはスプリントでマクラーレンの1-2を先導し、決勝でもアントネッリと優勝争いを展開。オスカー・ピアストリも表彰台を獲得し、マクラーレンの競争力向上を印象づけた。

    メルセデスもカナダでさらなるアップグレード投入を予定しているとみられ、マクラーレンも追加パーツを準備中だ。フェラーリやレッドブルもマイアミで得たデータを分析し、最新パッケージの理解を深めてくる。

    カナダグランプリ 2026年のF1世界選手権

    ADUOが焦点に パワーユニット勢力図を左右する制度
    今週末のカナダGPでは、「ADUO」という言葉が大きな注目を集める可能性がある。ADUOは「Additional Development and Upgrade Opportunities(追加開発・アップグレード機会)」を意味し、2026年F1パワーユニット規則の一部として導入された新制度だ。

    これは、ホモロゲーション済みパワーユニットに大きな性能差が認められた場合、追加開発を許可する仕組みで、対象は内燃エンジン(ICE)に限定される。

    FIAの評価により、最良のICEから2%超〜4%未満の差があるメーカーには、今季と来季にそれぞれ1回の追加アップグレードが認められる。4%以上の差がある場合は、それぞれ2回の追加開発機会が与えられる。

    2026年F1カナダGPは、最初の監視期間終了後に行われる最初のイベントとなるため、FIAによる評価結果とADUO適用の有無が焦点となる。

    カナダグランプリ ADUO

    壁と縁石が生むカナダGP特有の緊張感
    カナダGPは、独特の雰囲気と荒れた展開が魅力のイベントとして知られている。セントローレンス川の人工島に位置するジル・ヴィルヌーヴ・サーキットには毎年多くのファンが集まり、週末全体を特別な空気で包み込む。

    コースはシケインが多く、ウォールとの距離が極めて近い。最終シケイン外側にある「ウォール・オブ・チャンピオンズ」は象徴的な存在で、1999年にはミハエル・シューマッハ、ジャック・ヴィルヌーヴ、デイモン・ヒルという3人のワールドチャンピオンが同じ週末にクラッシュしたことで有名になった。

    2011年にはジェンソン・バトンが劇的な逆転勝利を挙げるなど、過去にも数々の名レースを生み出してきた。開催時期が5月へ移動した今年は、変わりやすい天候がさらなる波乱を呼ぶ可能性もある。

    カナダグランプリ ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット

    初開催のカナダGPスプリントが勢力図を揺さぶる
    今年のカナダGPは、スプリント形式導入後では初めてスプリント週末として開催される。金曜日にスプリント予選、土曜日にスプリントが行われることで、通常以上に重要なセッションが増える。

    一方で、チームとドライバーに与えられる準備時間は大幅に限られる。フリー走行は1時間のみであり、縁石の使い方やウォール際の攻め方が重要となるモントリオールでは、ドライバーがどれだけ早く限界域に到達できるかが大きなポイントになる。

    特に序盤から自信を持って攻められるドライバーは、スプリント週末で大きなアドバンテージを得られる可能性がある。逆に、週末を通じて徐々にペースを上げるタイプのチームには難しい条件となりそうだ。

  • キャデラックF1 カナダGPでアストンマーティン超え狙う “シンデレラ”脱却へ前進

    キャデラックF1 カナダGPでアストンマーティン超え狙う “シンデレラ”脱却へ前進

    キャデラックF1は、2026年シーズン序盤の苦戦から着実に前進を見せている。F1マイアミGPではセルジオ・ペレスとバルテリ・ボッタスのピットストップが上位水準のタイムを記録し、チーム運営面での成長を印象づけた。

    スペイン『MARCA』は、キャデラックが次戦F1カナダGPを“転機”として捉えていると報道。2026年シーズン開幕時には“グリッドのシンデレラ”とも呼ばれた新興チームだが、今ではアストンマーティンを射程圏に捉えつつあるという。

    高速コーナーを苦手とするマシン特性に対し、低速主体のモントリオールは相性が良いと分析している。

    キャデラックF1が示した“運営力”の進化
    2026年のキャデラックF1は、開幕当初こそ最後尾争いに埋もれていた。しかし、マイアミGPではチームの成熟を感じさせる場面が見られた。

    セルジオ・ペレスのタイヤ交換は2.73秒、バルテリ・ボッタスは2.96秒を記録。いずれもグランプリ全体で上位に入るタイムであり、マクラーレンのランド・ノリスが記録した最速2.43秒との差を大きく縮めている。

    グレアム・ロードンは、チームの改善を次のように語った。

    「今回のピットストップは本当に完璧だった。我々はいくつかの場面で大きな前進を果たせた」

    開幕当初は“学習期間”と見られていたキャデラックだが、徐々に“最後尾のシンデレラ”という立場から脱却し始めている。

    アストンマーティンとの差を縮める開発前進
    キャデラックにとってさらに大きいのは、開発面での前進だ。

    ロードンは、現在のアップデートについて「狙い通りに機能している」と説明。風洞データと実車挙動の相関が改善されたことを明かしている。

    「アップデートは我々の期待通りに機能している。ほぼ継続的に新パーツを投入していく予定だ」

    F1では、シミュレーション上の性能向上が実際のサーキットで再現されない“相関問題”が大きな壁となるケースが多い。フェラーリF1も現在その問題に苦しんでいると報じられている一方、キャデラックは改善傾向を見せており、中団グループだけでなくアストンマーティンとの差を縮める材料になりつつある。

    カナダグランプリ アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    弱点は高速コーナー
    一方で、マシンの課題も明確になっている。

    ボッタスは現在の弱点について次のように説明した。

    「僕たちの最大の問題は高速コーナーと中速コーナーだ」

    現在のキャデラックはローダウンフォース区間やストップ&ゴー型サーキットでは比較的競争力を発揮できる一方、高速域では依然としてダウンフォース不足に苦しんでいる。

    そのため、鈴鹿やシルバーストンのような高速サーキットよりも、低速主体の市街地系レイアウトの方がマシン特性に合っているとみられる。

    F1カナダGPは“シンデレラ脱却”の試金石
    その意味で、次戦F1カナダGPはキャデラックにとって大きな好機となる。

    ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは、低速シケインと強いブレーキングが連続する典型的な“ストップ&ゴー”サーキットであり、高速コーナー依存度は比較的低い。

    ボッタスもモントリオールでの前進に期待を示している。

    「カナダではもっと近づけることを期待している。ラップは短いし、タイム差も小さくなるはずだ」

    2026年F1グリッド最後尾の“シンデレラ”としてスタートしたキャデラックだが、カナダGPではアストンマーティンを脅かす存在へ変貌できるかもしれない。

  • セバスチャン・ベッテル 抗議の順位ボード交換…F1史に残るカナダGP裁定劇

    セバスチャン・ベッテル 抗議の順位ボード交換…F1史に残るカナダGP裁定劇

    セバスチャン・ベッテルが2019年F1カナダGPで受けた5秒ペナルティは、いまなお近代F1で最も物議を醸した裁定のひとつとして語り継がれている。

    ポールポジションからレースを支配していたベッテルは、終盤までルイス・ハミルトンの激しいプレッシャーを受け続けながらも首位をキープ。しかし、48周目のターン3〜4シケインで起きた小さなミスが、結果的に勝利そのものを失う決定打となった。

    5秒ペナルティが奪ったフェラーリF1の勝利
    ベッテルはターン3〜4でマシン後部を滑らせ、芝生へ飛び出した。その後コースへ復帰した際、フェラーリは外側へ流れ、背後にいたハミルトンは接触回避のためブレーキングを強いられた。

    スチュワードはこれを「危険な復帰」および「他車をコース外へ押し出した行為」と判断。ベッテルに5秒ペナルティを科した。

    ハミルトンとの差はフィニッシュ時点で1.3秒しかなく、チェッカーを最初に受けたにもかかわらず、優勝はハミルトンのものとなった。

    当時の裁定はパドック全体で大きな論争を呼び、現在でも「厳しすぎる裁定だった」とする声は根強い。


    “レースを盗まれた” ベッテルの怒り
    ベッテルの怒りは無線でも隠されなかった。

    「僕はどこへ行けばよかったんだ?」

    さらにベッテルは「彼らは僕たちからレースを盗んでいる」と無線で訴えた。

    レース後のパルクフェルメでも、その感情は収まらなかった。ベッテルは本来の停止位置にマシンを止めず、一度モーターホームへ戻った。

    その後戻ってきたベッテルは、順位ボードを入れ替える行動に出る。自身の空いたスペースの前に「1位」のボードを置き、ハミルトンのメルセデスの前には「2位」のボードを配置した。

    それは「本当の勝者は自分だ」という強烈な抗議だった。

    ハミルトンも複雑だった勝利
    一方のハミルトンも、後味の悪さを隠さなかった。

    「もちろん、こういう形で勝ちたかったわけじゃない」とハミルトンは語った。

    そのうえで「コースへ戻るときは、レーシングラインへそのまま戻るべきではない。安全に復帰する必要がある」と裁定自体には理解を示している。

    フェラーリはその後、裁定の再審査を求めたものの、スチュワードの判断は覆らなかった。

    セバスチャン・ベッテル 2019年 カナダグランプリ

    いまも議論が続く“2019年カナダGP事件”
    この一件は、F1における「レース裁定」と「レーシングの本質」の境界線を巡る象徴的な事件となった。

    特に近年は“レースを最後まで走って決めるべきか”という議論が強まっており、2019年カナダGPはその代表例として繰り返し引用されている。

    また、この裁定はベッテルとフェラーリの関係における転換点だったとの見方もある。2019年シーズンのフェラーリは速さを持ちながらタイトル争いを制することができず、ベッテル自身も翌年限りでチームを離れることになった。

    その意味でも、モントリオールで失われた勝利は、単なる1レース以上の重みを持つ出来事だった。

  • ジョージ・ラッセル正念場 得意のF1カナダGPで問われる“エースの証明”

    ジョージ・ラッセル正念場 得意のF1カナダGPで問われる“エースの証明”

    ジョージ・ラッセルにとって、2026年F1カナダGPは単なる“得意コース”ではない。今季タイトル争いに踏みとどまるために、絶対に結果が求められる週末になりそうだ。

    メルセデスのチームメイトであるキミ・アントネッリは、開幕からわずか数戦でF1の勢力図を変えつつある。中国GP、日本GP、マイアミGPで3連勝を飾り、ランキングではラッセルに20ポイント差をつけて首位に立った。

    そんな状況で迎えるモントリオールは、本来ならラッセルが主役でなければならない舞台だ。

    “ラッセルのサーキット”だったカナダGP
    サーキット・ジル・ヴィルヌーヴは、近年のラッセルにとって特別な場所だった。

    2025年はポール・トゥ・ウインを達成し、ファステストラップも記録。さらに2024年には、マックス・フェルスタッペンと同タイムながら先にタイムを記録したことでポールポジションを獲得している。

    高速シケインと縁石処理、そしてブレーキング精度が重要になるモントリオールは、ラッセルのドライビングスタイルに合致してきた。

    だからこそ、もし今週末もアントネッリに敗れるようなことがあれば、その意味は非常に重い。

    英Sky Sports F1のデビッド・クロフトは次のように語っている。

    「もしカナダでチームメイトのキミ・アントネッリに勝てなければ、警鐘が鳴り始めるだろう」

    厳しい表現ではあるが、現在の状況を考えれば決して大げさではない。

    同じマシンを使うチームメイトに、自身の“最強サーキット”で敗れることになれば、擁護材料は急速に減っていく。

    カナダグランプリ F1 ジョージ・ラッセル

    アントネッリが変えてしまったメルセデスの構図
    2026年シーズン開幕前、多くの関係者はアントネッリを“育成段階のルーキー”として見ていた。

    ラッセルがメルセデスのエースとしてチームを牽引し、その横で経験を積む――そんな構図が想定されていた。

    しかし現実はまったく違う。

    19歳のアントネッリは開幕から驚異的な速さを見せ、予選では継続的にラッセルを上回っている。特にマイアミGPでは、予選で0.399秒差をつけた。

    ランキングではアントネッリが100ポイント、ラッセルが80ポイント。しかも3連勝は戦略やセーフティカーに助けられた“偶然”ではなく、純粋な速さによって掴み取ったものだ。

    決勝ペースではラッセルも健闘している。開幕戦オーストラリアGPではアントネッリに約3秒差をつけて勝利した。

    だが、その後の安定感と勝負強さでアントネッリが一歩先を行っている。

    カナダGPはタイトル争いの分岐点になる可能性
    メルセデスF1代表のトト・ヴォルフは、「ラッセルはあらゆる可能性を追求する」「20ポイント差で諦めるようなドライバーではない」と擁護している。

    ただ、その言葉は逆に今週末の重要性を際立たせてもいる。

    もしラッセルがカナダGPで流れを止められなければ、“メルセデスの中心は誰なのか”という議論はさらに加速する可能性が高い。

    モントリオールは、ラッセルが反撃を開始するための理想的な舞台である一方、アントネッリ時代の到来を決定づけるサーキットになる可能性も秘めている。

  • ホンダF1 カナダGP展望 折原伸太郎「ドライバビリティを強化」

    ホンダF1 カナダGP展望 折原伸太郎「ドライバビリティを強化」

    ホンダは2026年F1シーズン第5戦カナダGPに向け、エネルギーマネジメントとドライバビリティのさらなる最適化に取り組む。

    舞台となるジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは長い直線と低速コーナーを併せ持つストップ&ゴー型レイアウトで、2026年レギュレーション下ではパワーユニット制御の完成度が大きく問われる週末となる。

    今大会はスプリントフォーマットで開催され、現地時間5月22日(金)にFP1とスプリント予選、23日(土)にスプリントと公式予選、24日(日)に決勝レースが行われる。限られた走行時間の中でセットアップとエネルギー戦略をまとめ上げる必要があり、各メーカーにとってFP1の重要性が例年以上に高まっている。

    マイアミGPの成果をカナダで継続検証
    ホンダ F1 トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアの折原伸太郎は、前戦マイアミGPで得たデータを踏まえ、モントリオールでも継続検証を行うと説明した。

    「マイアミGPでは、バッテリー振動対策の効果と、パワーユニット全体の信頼性を確認することができました。また、2026年新レギュレーションにおけるエネルギーマネジメントについて重要な学びの機会となり、カナダGPでも継続して取り組んでいきます」

    ドライバビリティ向上が週末の鍵
    折原伸太郎は、特にドライバビリティ向上が週末の重要テーマになると語る。

    「ストロール選手のホームレースでもあるモントリオールでは、ドライバーがさらに自信を持って走行できるよう、ドライバビリティとエネルギーマネジメント戦略の強化に注力します。これは週末を通じた重要な目標です。コーナー進入時により高いスピードを維持できるような自信を持つことができれば、ラップタイムの向上につなげられます」

    ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットでは、バックストレートへ向かう低速コーナーやターン1〜2の立ち上がりでのトラクション性能が重要となる。2026年仕様のパワーユニットでは、MGU-Kによる回生とデプロイメント制御がラップタイムに与える影響も大きく、ドライバーが安心してアクセルを踏める特性づくりが鍵になる。

    ホンダ F1 カナダグランプリ

    スプリント週末で重要となる60分FP1
    さらに、スプリント週末特有の制約も大きなポイントとなる。

    「カナダはスプリントレースのフォーマットで開催されるため、FP1が非常に重要になります。今大会では通常通り60分のセッションとなるため、時間内にあらゆる要素を最適化する必要があります。また、このサーキットは長い直線があり、この区間に向けたデプロイメントの最適化も重要です」

    「バックストレートの手前には低速コーナーがありますし、ターン1、2も同様に低速で難しいセクションです。加えて、ウェットコンディションとなる可能性や気温の低下も考慮しなければなりません。こうした条件下ではグリップの確保が難しく、MGU-Kの制御精度やトルク供給の精度など、ドライバビリティの重要性がさらに高まります」

    マイアミGPで確認した信頼性改善を実戦で再び証明できるか。そして、2026年F1で重要性を増すエネルギーマネジメント戦略をどこまで洗練できるか。ホンダにとってカナダGPは、今後を占う重要な検証の場となる。

  • F1カナダGP スプリント初開催も完売ならず チケット高騰と拡張戦略の現実

    F1カナダGP スプリント初開催も完売ならず チケット高騰と拡張戦略の現実

    2026年F1カナダGPは、モントリオールで初めてスプリント形式が導入される歴史的な週末となるが、主催者は開催直前の段階でチケットが完売していないことを認めた。

    今年のカナダGPにはF2とF1アカデミーも加わり、サーキット・ジル・ビルヌーブは改修後初の大規模拡張イベントを迎える。しかし、Le Journal de Montrealによれば、テラス席、スイート、グランドスタンド、ホスピタリティ関連のパッケージには依然として空きが残っている。

    スプリント初開催でも残る空席
    カナダグランプリのジャン=フィリップ・パラディ会長兼CEOは、今年の販売状況について、単純な需要低下ではなく、収容力と商品構成の拡大が背景にあると説明した。

    「今年はいくつかのエリアと商品で収容力を増やした。特にスイート、ビーチにあるCGVエクスペリエンス・プラットフォームで増やしている」

    「一般入場、コンサート付きのCGVエクスペリエンス、テラス席、そしてホスピタリティエリアのクラブパッケージにはまだチケットが残っている。これらは企業グループ向けのものではない」

    一方で、昨年のレース後には大幅なチケット価格の引き上げが行われ、一部の3日間グランドスタンドパッケージは約20%値上がりしたと報じられている。個別日程のチケットも現在販売中であり、需要の鈍化と価格上昇の影響が重なっている可能性がある。

    2035年までの契約延長を見据えた大型投資
    主催者側は、チケットが残っている状況を認めつつも、今回の拡張は長期的な成長戦略の一部だと位置づけている。モントリオールは2035年までF1開催契約を延長しており、世界各地の常設型パドックや大型ホスピタリティ施設に対抗する必要があった。

    サンドリーヌ・ガルノーCOOは、近代化の必要性を強調した。

    「数年前から話し合っていた。特に世界中のホスピタリティ施設を見たあとで、その必要性を感じていた」

    「常設パドックに対抗するには、収容力を増やして競争力を持ち、より近代的になる必要があった」

    「我々は巨大なスポーツイベントを開催している。必要な構造物を備えなければならない」

    “スーパ―サタデー”で週末価値を引き上げる狙い
    今年のカナダGPは、モントリオール初のスプリント週末としても注目される。パラディは、金曜から日曜まで競争要素を増やすことで、観客にとっての価値が高まると説明した。

    「モントリオールのファンは、世界最高のドライバーたちを見たいと思っている」

    「個人的には、マシンをテストしている人たちを見るより、本当の競争を見るほうが素晴らしいと思う。ステファノ(ドメニカリ)に同意している。これは他のすべての主催者にも勧めたい。週末に追加の意味を生み出し、一種の“スーパーサタデー”を作るからだ」

    さらに、今季序盤にバーレーンとサウジアラビアのF2ラウンドが中止された影響により、F2が急きょモントリオールのサポートレースに加わった。F1アカデミーも含め、今年のカナダGPは例年以上に厚いレースプログラムとなる。

    それでも開催直前に完売へ届いていない事実は、F1人気の低下というより、チケット価格の上昇、ホスピタリティ拡張、そして観戦商品の高額化が、伝統あるグランプリにも現実的な影響を与え始めていることを示している。

  • アストンマーティンF1 AMR26に“最初の変化” ホンダとギア制御を改良

    アストンマーティンF1 AMR26に“最初の変化” ホンダとギア制御を改良

    アストンマーティンF1は、苦戦が続くAMR26の改善に向けて、ホンダ製パワーユニットとギア制御の統合見直しを進めている。カナダGPでは、その成果として“最初の変化”が見られる可能性がある。

    『Motorsport.com Italia』によると、アストンマーティンはAMR26のギア制御とホンダ製パワーユニットの統合改善に取り組んでいるという。

    2026年F1シーズン序盤、AMR26はエイドリアン・ニューウェイが全面的に関与した最初のアストンマーティンF1マシンとして大きな期待を集めていた。しかし実際には、空力性能だけでなく、パワーユニットやトランスミッションの統合面でも深刻な課題を抱えているとみられている。

    メルセデス依存からの脱却で露呈した課題
    アストンマーティンは、これまでメルセデスからパワーユニットだけでなくギアボックスやリアサスペンションも供給を受けていた。事実上、リアエンド全体をメルセデスに依存する構造だった。

    しかし、ホンダとのワークス提携開始によって状況は一変した。シルバーストンのチームは、リアエンド全体を自ら設計・開発する必要に迫られた。

    特に大きかったのは、自社製トランスミッション開発への挑戦だ。新設された専門部門は経験不足にも直面しており、AMR26ではシフトチェンジの遅さや唐突さがドライバビリティを悪化させているという。

    ホンダPUとの統合でも苦戦
    問題はギアボックスだけではない。ホンダ製パワーユニット側でも、性能面と信頼性面の両方で苦戦が続いていると報じられている。

    特に問題視されたのは振動だった。有害な振動がシャシー側にも伝わり、バッテリー系統にまで影響を与えていたという。まずはその“有害な周波数”を抑え込むことが最優先課題になっていた。

    ホンダは2020年末に一度F1撤退を決断しており、その後に再参戦を決めた経緯もあって、開発体制の再構築には時間を要したとされる。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    マイアミで投入された“見えない改善”
    F1マイアミGPでアストンマーティンが大規模アップデートを投入しなかったことには批判も集まった。しかし実際には、シルバーストンでは電子制御によるギア管理改善に取り組んでいたという。

    狙いはシフト時間の短縮だったが、ドライバーの不満を見る限り、期待された成果には届かなかったようだ。

    AMR26は依然としてブレーキング時の不安定さを抱えており、加速時もギア同期が難しい状況が続いているとされる。

    カナダGPが“最初の転機”になるか
    その後、エンジンとギアボックスは日本のホンダ施設でダイナミックベンチテストを実施。さくらで進められた電子制御面の細かな調整によって、モントリオールでは改善が期待されている。

    ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットはストップ&ゴー特性が強く、トラクション性能がラップタイムに直結するコースだ。ギア制御とパワーユニットの統合精度が向上すれば、AMR26にとって今季初の“小さな前進”になる可能性がある。

    ただし、これはまだ本格的な反撃というよりも、問題解決への第一歩に近い。ニューウェイの革新的な設計思想だけでなく、ホンダとの連携や組織全体の成熟度も、アストンマーティンF1の将来を左右する重要な要素になっている。