アストンマーティンF1 メルセデスとPU供給を協議か ホンダに圧力

アストンマーティンF1 メルセデスとPU供給を協議か ホンダに圧力

アストンマーティンが、将来的なF1パワーユニット(PU)の供給を巡ってメルセデスと協議しているとスペイン紙『SPORT』が報じた。2026年からワークス体制を組むホンダとの関係を直ちに見直す動きではないものの、期待する水準に届いていないホンダPUへの圧力を強める意味合いもあるという。

その動きを象徴するものとしてSPORTが伝えたのが、メルセデスのCEO兼チーム代表を務めるトト・ヴォルフのアストンマーティン訪問だ。

ヴォルフはF1オランダGP決勝当日の朝、ザントフォールトのパドックにあるアストンマーティンのモーターホームを訪れており、6月のスペインGPに続いて今季2度目の訪問だったという。

ヴォルフがアストンマーティンを再訪
F1のパドックでは、他チームの首脳がモーターホームを訪れること自体は珍しいことではない。しかしSPORTは、今回のヴォルフの訪問について、これまでの両陣営の動きを踏まえれば単なる社交的なものとは限らないと指摘している。

ヴォルフは6月のスペインGPでもアストンマーティンを訪問していた。一方、アストンマーティンのオーナーであるローレンス・ストロールも、それ以前のオーストラリアGPでメルセデスを訪れていたという。

そしてオランダGPでは、決勝の数時間前となる日曜日の朝にヴォルフが再びアストンマーティンを訪問。SPORTは、ヴォルフのイニシャルが入ったスクーターがアストンマーティンのモーターホーム脇に置かれていたことも伝えている。

同紙によれば、メルセデスのホスピタリティはアストンマーティンから約100メートル離れており、こうした一連の訪問が繰り返されていることから、両者の間で何らかの協議が行われている可能性に注目している。

メルセデスだけではない? 将来のPU供給先を模索
SPORTは、メルセデスが将来的にアストンマーティンへPUを供給する可能性について両者が話し合っていると報道。さらに、アストンマーティンが接触しているPUメーカーはメルセデスだけではないとしている。

ただし、現時点でアストンマーティンからホンダに対して最後通告が突きつけられたわけではなく、ホンダとの提携解消が決まったわけでもない。

また、2027年からPUを変更するとの見方についてSPORTは「時期尚早」としており、仮に変更が実現するとすれば2028年になるとの見方を示している。

アストンマーティンは2026年からホンダとワークス体制を構築し、それまで使用していたメルセデスPUから離れた。3年前に決定したこの計画は、カスタマーチームではなくワークスチームとしてF1世界選手権を戦うための重要な戦略だった。

しかしSPORTは、ホンダが期待されたパフォーマンスを発揮できなければ、その方針が再び変更される可能性があると伝えている。

背景にホンダ新PUへの不満
こうした動きの背景にあるとされるのが、2026年型ホンダPUのパフォーマンスだ。

ホンダはシーズン開幕以降、PUの改善を続けており、オランダGPでは新たな仕様を投入した。しかし、その進化についてホンダ側も「小さな一歩であり、革命ではない」と説明しており、アストンマーティンが期待したほどの成果にはつながらなかった。

一方で、アストンマーティンのシャシー側は大きく前進している。エイドリアン・ニューウェイの指揮のもと、AMR26には直近2戦で合計21点の新パーツが投入され、フェルナンド・アロンソはマシンの改善について「4秒差だったところから、今では1.4秒差になった」と説明している。

シャシーが改善するにつれて、相対的にPU側の弱点が目立つ状況になっている。

アロンソもオランダGP後、新しいホンダPUについて期待していた結果が得られなかったことを認めた。

「シャシーについては、進んでいる方向に満足しています。でも、エンジンについてはもう少し待つ必要があります」

「今週末は期待していた結果にならなかったと思います。ドライバビリティやギアチェンジなど、最初のエンジンで少し改善できていた部分が、この2基目では少し振り出しに戻ってしまいました。だから、これから2、3戦をかけて最適化していく必要があります」

アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

「結果はストレートの長さに左右される」
アストンマーティンのマイク・クラックも、今後のレースではサーキットのストレートの長さが結果を左右する可能性があると語り、PU性能が大きな要素になることを示唆している。

「これから厳しいレースが続く。我々の結果は各サーキットのストレートがどれだけ長いかに左右されるだろう。ただ、このパッケージについては走るたびに理解が深まっていくし、パワーユニットについても同じことが言える」

ランス・ストロールもホンダに対して改善を求めている。

「ドライバビリティとパワーは、次に徹底的に取り組まなければならない部分だ」

アロンソ、クラック、ストロールの発言からも、アストンマーティン側がホンダにさらなる改善を求めていることは明らかだ。

ローレンス・ストロールはホンダの改善を待つ姿勢
もっとも、SPORTによれば、ローレンス・ストロールは現段階でホンダとの関係を打ち切るような急進的な考えを持っているわけではない。

ホンダがバーレーンでのプレシーズンテスト以降、一定の進歩を遂げていることも評価しており、まずは開発を続ける時間を与える考えだという。

その一方で、メルセデスを含む他のPUメーカーと話し合うことは、将来に向けた選択肢を確保すると同時に、ホンダへさらなる改善を促す手段にもなる。

SPORTはこれを、アストンマーティンからホンダに対する「今はあなたと一緒にいるが、これがうまくいかなければ……」というメッセージに近いものだと表現している。

つまり、現時点でアストンマーティンとホンダの“離婚”が決まっているわけではない。ただし、ホンダが十分な進歩を示せなかった場合に備え、アストンマーティンが別の選択肢を探り始めているというのがSPORTの報道だ。

次戦イタリアGPが行われるモンツァは、ストレートでの性能が特に重要になるサーキットだ。AMR26のシャシーが進歩を続けるなか、ホンダPUがどこまでその性能に応えられるか。今後の数戦は、2028年以降も続くことを前提としてスタートしたアストンマーティンとホンダの関係にとって、重要な期間となりそうだ。