シャルル・ルクレールが、フェラーリとのF1契約を複数年延長した理由を明かし、フレデリック・バスール代表への絶大な信頼が決断を後押ししたと語った。
2019年からフェラーリでF1を戦うルクレールにとって、スクーデリアでワールドチャンピオンになるという目標は今も変わっていない。2026年シーズン前半には苦しい時期も経験したが、それでもフェラーリのプロジェクトとバスールへの信頼に揺らぎはなく、「これが正しい決断だということに疑いはなかった」と強調している。
「ここが自分の居場所」フェラーリとの契約延長
2026年シーズン序盤、ルクレールはモナコ、バルセロナ、オーストリアの3戦で2度のリタイアと8位という厳しい結果に直面した。
その一方で、28歳のルクレールはフェラーリとの新たな複数年契約に合意。「今後数シーズン」にわたって赤いマシンをドライブすることが決まった。
F1公式ポッドキャスト『Beyond The Grid』に出演したルクレールは、契約延長について「ただ、それが正しいと感じた」と説明した。
「それ以上の説明が必要ないこともあると思う。僕にとって、今はここが自分の居場所なんだ。ここにいると心地いいし、いい結果を出したいというモチベーションを一番強く感じられる。それだけこのチームが大好きだからだ」
「2019年にF1チームに加入してからもう何年も経っているけど、フェラーリファミリーの一員になったのはそれよりも前だ。フェラーリと一緒にワールドチャンピオンになるという究極の目標を諦めたくない」
ルクレールは、現在のフェラーリが示している開発姿勢も将来への期待につながっていると語る。
「このプロジェクトを信じているし、チームの一人ひとりを信じている。今年は僕たちがイノベーションを示しているシーズンだと思う。生産計画でも非常にアグレッシブだし、投入しているアップグレードについてもそうだ。それが将来に大きな希望を与えてくれている」
バスールへの絶大な信頼「200%信じている」
契約延長を決断するうえで大きな要素となったのが、フェラーリF1代表を務めるフレデリック・バスールの存在だった。
「フレッドも、僕が再び契約した大きな理由のひとつだ。僕はフレッドを200%信じている」
「僕たちはもう何年も前からお互いを知っているし、ずっと大好きだったチームで彼と一緒に仕事ができるのは特別なことだ。だから僕にとって、これが正しい決断だということに疑いはなかった」
ルクレールとバスールの関係はF1以前にまでさかのぼる。2016年にルクレールがGP3に参戦したARTグランプリを率いていたのがバスールだった。
「もうずっと昔からフレッドを知っているような感覚なんだ。彼は、一度話しただけでもそういう感じになる人だ。たぶん価値観なんだと思う。最初から自然とうまくいく何かがあって、それを完全に説明することはできない」
「最初に話したときから、ずっと前から知っているように感じていた。だから当然、僕たちの絆は単なる仕事上の関係やビジネス上の関係よりも強い」

ハミルトンとの違いに苦しんだ2026年前半
2026年シーズン前半、ルクレールが苦戦する一方で、チームメイトのルイス・ハミルトンは好調だった。ハミルトンはカナダGPとモナコGPで2位に入り、バルセロナではフェラーリ加入後初勝利を挙げた。
ルクレールは当時、自分のマシンのセットアップを見直すか、自身のドライビングスタイルをマシンに合わせる必要があると考えていたという。しかし、7度のF1ワールドチャンピオンであるハミルトンの走り方をそのままコピーすることはできないと説明する。
「『ルイスはこうしている。じゃあ僕も同じことをしよう』というほど簡単じゃない。ルイスは信じられないほど才能のあるドライバーだし、彼自身の自然なドライビングスタイルを持っている。その特定のスタイルでは世界最高だ」
「それを再現するのはものすごく難しい。だから僕は、自分のドライビングスタイルにもう少し合うマシンにする方法を探すことに力を入れた。データの中から、うまく機能していない部分もいくつか見つけた。ただ、F1では物事がいつも白か黒かというほど単純ではない」
データを見ればすぐに答えが見つかるわけではないともルクレールは説明する。
「コンピューターの前に座ってデータを見て、『ここで0.15秒失っている。じゃあこれを変えよう』というような簡単な話じゃない。直感やフィーリングなんだ」
「『これがマシンの中で自分を少し不快にさせている部分かもしれない。この感覚を改善できればパフォーマンスもついてくる』と考えるようなものだ」
シルバーストンで見つけた転機
転機となったのはイギリスGPだった。ルクレールはシルバーストンでマシンにいくつかの変更を施し、それが「正しい方向」に進んだと感じた。そして決勝では今季初勝利を挙げた。
それ以降、ルクレールが意識しているのは、マシンの挙動について考えすぎないことだという。
「マシンは常に変化している。だからメルボルンで感じていたものに完全に戻れるわけではない。すべてが進化している。でも僕の目標は、マシンに乗ったときに考えすぎないことだ」
「考えすぎているときは、それだけでタイムを失っていると分かる。僕たちのスポーツでは、マシンで起きていることに反応することよりも、先を予測してマシンを感じることの方が重要だからだ」
「コーナーに入るとき、マシンがどう動くのかを正確に分かっていなければならない。そうすれば、いちいち考えすぎる必要がなくなる」
ルクレールは、ドライバーが最大限の能力を発揮するためには、いわゆる「フロー状態」に入ることが重要だと考えている。
「考えすぎることはパフォーマンスを殺すと思う。物事が自然に起きるとき、それがレーシングドライバーやアスリートが言う『フロー状態』なんだと思う」
「すべてが自然に流れているときこそ、自分のポテンシャルを100%使えている。いろいろなことを考えなければならなくなると、そこから難しくなる」
フェラーリはメルセデスを逆転できるのか
フェラーリは現在、F1コンストラクターズ選手権で2位につけているが、首位メルセデスとの差は87ポイントとなっている。
残るシーズンでフェラーリがメルセデスを逆転できるかについて、ルクレールは2026年マシンではアップグレードによって勢力図が大きく変化するため「予測するのは非常に難しい」と語った。
「そこについて考えることに、あまりエネルギーを使いたくない。このチャンピオンシップはアップグレードによって決まると思う。それくらい、このマシンではアップグレードの影響が大きい」
「以前よりダウンフォースがかなり少なくなっているから、このマシンにダウンフォースを少し加えるだけでも、コース上でのフィーリングに与える影響はずっと大きい。だから勢力図は、良い方向にも悪い方向にもあっという間に変わる可能性がある」
そのため、ルクレールはタイトル争いの可能性を計算するのではなく、一戦ずつに集中していくという。
「僕は一戦一戦に集中している。そのチャンピオンシップを本当に狙えるのかという長期的なことは、あまり考えていない。でも、可能性が完全になくなるまでは信じ続けるよ。どうなるか見てみよう」
「チャンピオンシップは、いつか達成したい夢だ。特に赤いチームと一緒にね。それはもう何年も前から僕が抱いている夢だ」
「僕たちは近づいていると感じている。それがいつになるのかは分からない。でも、できるだけ早く実現してほしいと思っている」
苦しい2026年シーズン前半を経験しても、ルクレールがフェラーリへの信頼を失うことはなかった。バスールへの「200%」の信頼、積極的な開発姿勢、そしてフェラーリでF1ワールドチャンピオンになるという長年の夢。そのすべてが、ルクレールにとって契約延長を迷う余地のない決断にした。
