ウィリアムズF1代表のジェームス・ボウルズは、女性ドライバーが最高峰まで到達するためには、F1アカデミーだけでなく、さらに早い段階から育成の裾野を広げる必要があると語った。特に重視しているのが、モータースポーツの出発点となるカートでの若手発掘と資金面を含めた支援だ。
F1アカデミーによって女性ドライバーの活躍に注目が集まる一方、ボウルズは、F1を目指せる人材を増やすには育成カテゴリーに到達する以前の「パイプライン」そのものを拡大する必要があると指摘。
ウィリアムズでは実際に若い女性カートドライバーへの投資を進めているという。
F1アカデミーは「灯台」 根本的な解決には早期育成が必要
ウィリアムズはこれまで、ジェイミー・チャドウィックを支援するなど、女性ドライバーのキャリア形成に関わってきた。チャドウィックはプロのレーシングドライバーとしてキャリアを築いており、女性にも道が開かれていることを示す存在のひとりだ。
しかし、若い女性ドライバーの多くが競技生活の早い段階で壁に直面する現実もある。
F1アカデミーやウィリアムズの取り組みによって、育成過程における男女間の差を縮められるかと問われたボウルズは、明確に肯定した。
「短く答えるなら、イエスだ」
そのうえでボウルズは、F1アカデミーの存在意義を高く評価しながらも、それだけですべての問題を解決できるわけではないと強調した。
「私はF1アカデミーが大好きだし、スージー・ヴォルフと、そこに関わっているすべての人々を称賛している。ただ、私たちは若いカートドライバー、特に若い女性にも投資している。松井沙羅は私たちにとってその一例であり、これは本当の意味での投資だ」
ボウルズによれば、女性ドライバーが途中で競技を離れる理由は、単純に実力不足だけではない。十分な能力を持ちながら、資金を確保できずにキャリアを続けられなくなるケースもあるという。
「本当に不足しているものについて言えば、その指摘は正しい。途中で辞める人もいるし、率直に言えば、必要なレベルの才能を持っていない人もいる。しかし一方で、必要な能力を備えているにもかかわらず、資金が必ずしもついてこない人もいる」
だからこそ、ボウルズはF1アカデミーを女性ドライバー育成の最終的な答えではなく、より大きな取り組みを世間に示す存在と位置づけている。
「F1アカデミーは私にとって重要だが、それはあくまで灯台のような存在だ。本当に重要なのは、若い才能に対して草の根レベルから投資することだ」

F1に届く才能を生み出すには「母数」が必要
ボウルズが特に重要視しているのが、才能を発掘し、育成カテゴリーへ送り込んでいく「パイプライン」だ。
F1ドライバーになるための競争は極めて厳しく、その選別はシングルシーターに乗り始めるよりはるか以前、カート時代から始まっている。
「不足しているのは、多くの分野と同じようにパイプラインだ。男性ドライバーだけを見ても、F1に到達するドライバーのほぼ全員が、カートで何度もヨーロッパ王者や世界王者になっている。そして通常はF4で1年目、遅くとも2年目には勝つ。そこから先でも何度もチャンピオンになる。そうやってF1までたどり着く」
つまり、将来的にF1へ到達できる女性ドライバーを生み出すためには、最終段階に近いカテゴリーだけを支援するのではなく、その候補となるドライバーの絶対数を増やさなければならない。
「そのパイプラインには何万人もの人々がいて、そこから選抜されていく。だから、そこにいる人の数が多ければ多いほど、才能を見つけ出せる可能性も高くなる」
現状では女性ドライバーの母数そのものが小さく、そこから世界最高峰に到達できるほどの才能を見つけ出す確率も必然的に低くなる。ボウルズは、才能が自然に現れるのを待つのではなく、チーム側が積極的に発掘と育成に関与すべきだと考えている。
「この分野における私たちの責任は、そのパイプラインを改善し、才能を見つけ、そこに投資していくことだ」
F1アカデミーが女性ドライバーに目標と活躍の場を提供する一方、ボウルズが描く育成策の核心は、そのさらに下にあるカート世代の拡充にある。F1を目指せる女性の数そのものを増やし、才能があっても資金不足によって道を断たれるケースを減らすことが、将来的に女性ドライバーがF1へ到達する可能性を高めるとの考えだ。
