ハースF1チーム代表の小松礼雄は、オリバー・ベアマンの成長について「まだ限界が見えていない」と高く評価した。一方で、将来のF1ワールドチャンピオン候補と断言するには、勝利や表彰台を争えるマシンを手にしたときのパフォーマンスを見る必要があるとも慎重な姿勢を示している。
21歳のベアマンは、ハースでフル参戦2年目を迎え、2025年メキシコGPで4位、今季中国GPで5位に入るなど存在感を高めてきた。
フェラーリ・ドライバー・アカデミーの一員でもあり、将来的にスクーデリア・フェラーリのF1シートを獲得することを目標に掲げている。
「オリーの限界はまだ見えていない」小松礼雄が評価
小松礼雄はPA通信の取材に対し、ベアマンの潜在能力について非常に高い評価を口にした。
「僕には、オリーの限界がまだ見えていません」
「現時点では制限のようなものは感じていないですね。ただ、彼はまだ一度も表彰台に上がっていませんから、ここで僕が『ワールドチャンピオンになれるドライバーです』と言うつもりはありません」
小松礼雄が重要視しているのは、ベアマンがより競争力のあるマシンを手にしたときに、どこまで能力を引き出せるかという点だ。
「次のレベルに進んだとき、例えば競争力のあるマシンを手にして、コンスタントに表彰台や優勝を争えるようになったときに初めて、本当にワールドチャンピオンになれるだけの力があるのかを見ることができます」
「そこまで行けば、彼は間違いなく素晴らしい力を発揮してくれると思っています」
21歳とは思えない成熟度「チームをどう鼓舞するか考えた」
小松礼雄がベアマンを高く評価する理由は、純粋な速さだけではない。厳しい状況に直面した際の精神的な成熟度や、チーム全体を意識した振る舞いにも強い印象を受けているという。
その象徴として挙げたのが、今季マイアミGPでの出来事だった。
ハースはシーズン序盤に好調なスタートを切っていたが、マイアミではベアマンが自身に責任のない状況で苦しいレースを強いられ、さらにピットストップでもチーム側のミスが発生した。
それでもベアマンは苛立ちを爆発させるのではなく、無線を通じてチームを励ます姿勢を見せた。
「彼の性格について言えば、物事がうまくいっていないときでも、ただフラストレーションを溜めるようなことはありません」
「21歳ですからね。もちろん大人ではありますけど、それでもまだ若いですし、チームの中でも最年少クラスです」
「マイアミでは本当にフラストレーションの溜まるレースでした。彼自身には何の落ち度もなく、できることをすべてやっていました」
「それなのに僕たちがピットストップでもミスをして、ずっと後ろに引っかかることになってしまった。彼には何もできなかったんです」
それでもベアマンの頭に浮かんだのは、自身の不運を嘆くことではなかったという。
「それでも彼はすぐに切り替えて、『じゃあ、このチームをどうやって鼓舞しよう?』という方向に考えたんです」
「そこには素晴らしい状況認識と成熟度が表れていると思います」

ハースは「両手両足を縛られているような状態」
一方、小松礼雄はベアマンを支えるハース自体が、ライバルと同じ条件で戦えているわけではないことも強調した。
ハースは2016年にF1へ参戦して以来、グリッドで最も規模の小さいチームとして活動してきた。2026年シーズンも11チーム中7位につけているが、ジーン・ハースの所有するチームはF1のコストキャップ上限まで予算を使える状況にはなく、アップデート競争では大規模チームに後れを取らざるを得ない。
2024年からチーム代表を務める小松礼雄は、現在のハースを「両手両足を後ろで縛られている」ような状態だと表現した。
「僕のチームを見ると、本当に両手両足を後ろで縛られた状態で戦っているように感じます」
「今シーズンの最初に、彼らがどうやってあれだけのマシンを作り上げ、信頼性とパフォーマンスを実現したのか、本当に説明できないくらいです」
限られたリソースの中でも、ハースはシーズン序盤に高い競争力を示した。
小松礼雄によれば、少なくともシャシー面では一時期レッドブル・レーシングを上回っていたという。
「シャシーだけを見れば、シーズン序盤は僕たちの方がレッドブルより良かったです」
しかし、豊富な開発力を持つトップチームとの差は、その後急速に表面化した。
「ただ、やはりレッドブルはレッドブルです。4月頃に彼らがマシンへ投入したパフォーマンス向上の量は、とんでもないものでした」
「そもそも僕たちは、あの位置にいられるような状況ではなかったんです」
限られた予算と開発リソースの中でも存在感を示しているハースにとって、ベアマンの成長は今後の大きな武器となる。小松礼雄は現段階でタイトル候補という言葉を使うことには慎重だが、表彰台や優勝を争える環境を手にしたとき、ベアマンがさらに高いレベルへ到達する可能性には強い期待を寄せている。
