アストンマーティンF1幹部 ホンダ新PU投入も「結果はストレートの長さ次第」

アストンマーティンF1幹部 ホンダ新PU投入も「結果はストレートの長さ次第」

アストンマーティンF1は、F1オランダGPでホンダの新スペック・パワーユニット(PU)を投入し、フェルナンド・アロンソが9位に入って2ポイントを獲得した。しかし、チーフ・トラックサイド・オフィサーのマイク・クラックは、今後の成績について「結果は各サーキットのストレートの長さに左右される」と認めた。

数カ月にわたって開発されてきたホンダの新PUは、アストンマーティンにとって後半戦の巻き返しに向けた重要なアップデートだった。

一方、ザントフォールトではドライバビリティなどの問題も浮上。クラックの発言からも、ストレート性能が依然として今後の競争力を左右する大きな要素であることがうかがえる。

新PU投入も残ったストレート性能への懸念
F1オランダGPは、アストンマーティンとホンダにとって大きな転換点になることが期待されていた。

ホンダは数カ月にわたって開発を進めてきた新スペックPUをザントフォールトで投入。アストンマーティン側でもエイドリアン・ニューウェイを中心にAMR26の改善が進められ、シャシーとPUの両面から競争力を引き上げることが狙いだった。

決勝ではアロンソが2ストップ戦略を機能させて9位でフィニッシュ。今季2度目のポイント獲得を果たし、ニューウェイもアロンソの走りを高く評価した。

しかし、新PUの投入によってすべての問題が解決したわけではない。

決勝後、スペインの『AS』などの取材に応じたクラックは、アストンマーティンの今後の競争力について次のように語った。

「我々は予選よりもレースの方がわずかに強い。ただ、結果は各サーキットのストレートの長さに左右されることになる」

「厳しいレースが待っているが、このパッケージについてはこれからますます理解を深めていくことができる。パワーユニットについても同じだ」

クラックはホンダPUのパワー不足を直接指摘しているわけではない。それでも、アストンマーティンが今季を通じてストレートスピードに苦しんできたなか、新PU投入後も「ストレートの長さ」が結果を左右すると語ったことは注目に値する。

ホンダの新スペックPUには、これまでの弱点を改善することも期待されていた。しかし、少なくともザントフォールトでの初戦を終えた段階では、ストレートの長いサーキットほど厳しくなるという構図を完全に覆すまでには至っていないことが、クラックの発言からうかがえる。

ホンダ新PUでドライバビリティの問題が再浮上
ストレート性能だけでなく、新PUではドライバビリティにも改善すべき部分が残された。

アロンソとランス・ストロールは予選後、エンジンブレーキやパワーデリバリーの一貫性について問題を訴えている。

特にエンジンブレーキの挙動はドライバーにとって予測しづらく、コーナー進入時のマシンコントロールにも影響した。ストロールはその状態を「宝くじ」と表現するほどだった。

新スペックPUでは特性が変化したため、それまで旧仕様で積み重ねてきた制御やマッピングについても、新たな仕様に合わせて最適化を進める必要がある。

マイク・クラック(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

ホンダHRC折原伸太郎「ドライバビリティには改善の余地」
ホンダ・レーシング(HRC)のトラックサイド・エンジニアリング責任者を務める折原伸太郎も、決勝後、新PUのドライバビリティには改善の余地が残されていることを認めた。

「ドライバビリティには改善の余地があり、それが今後のレースでも引き続き我々が重点的に取り組む部分です。今回の第2仕様を投入するために必要だった作業量を考えれば、2ポイントを獲得できたのは良い結果です」

「レース終盤では、ガスリーに対するアドバンテージを維持することに集中し、そのためにエネルギーマネジメントを最適化しました。良い結果ですし、これからの改善に集中しています」

アロンソは終盤、背後から迫るピエール・ガスリーを抑えて9位を守り切った。ホンダ側もエネルギーマネジメントを最適化しながら、そのポジションを維持することに注力していた。

新PUの初戦で2ポイントを持ち帰ったことは成果である一方、ホンダ自身もさらなる改善が必要であることを認識している。

アロンソ「振り出しに戻った」
アロンソは決勝後、新スペックPUへの変更によって、それまで旧仕様で改善してきた問題の一部が再び表面化したとの見方を示した。

シーズンを通じてアストンマーティンとホンダはPUの問題への対応を続け、旧仕様では徐々に改善を進めてきた。しかし、大きく仕様を変更したことで、ドライバビリティなどを新たなPUに合わせて再び最適化する必要が生じている。

アロンソはこの状況について「振り出しに戻った」と表現した。

新PUそのものを否定しているわけではない。新しい仕様から最大限の性能を引き出すため、エンジンブレーキやパワーデリバリーを含めた制御を改めて煮詰めていく必要があるということだ。

クラックが「このパッケージについてはこれからますます理解を深めていくことができる」とし、「パワーユニットについても同じだ」と語ったことも、その最適化がまだ途上にあることを物語っている。

ストレートの長いサーキットで問われる新PUの真価
ザントフォールトでの9位は、アストンマーティンとホンダにとって一定の成果となった。シャシー面でもニューウェイによる改善が進み、アロンソはそれをポイントという結果につなげた。

一方で、「結果は各サーキットのストレートの長さに左右される」というクラックの言葉は、新PU投入後のアストンマーティンが置かれている状況を端的に表している。

ストレートの比重が大きくなれば、PUのパワーやエネルギーマネジメントがラップタイムに与える影響も大きくなる。そこに今回浮上したドライバビリティの改善も加わるため、ホンダには新スペックをさらに煮詰めていく作業が求められる。

オランダGPはホンダ新PUの最初の実戦にすぎない。アロンソの9位という結果を足掛かりに、ホンダとアストンマーティンが新しいパッケージへの理解をどこまで深められるか。今後のF1では、特にストレートの長いサーキットでその進化が試されることになる。