アストンマーティンF1 AMR26失敗の原点 ニューウェイ「開発はほぼ未着手だった」

アストンマーティンF1 AMR26失敗の原点 ニューウェイ「開発はほぼ未着手だった」

アストンマーティンF1は、2026年シーズン前半に深刻な苦戦を強いられたAMR26について、その開発の出発点から大きな問題を抱えていた。テクニカル・マネージング・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイは、自身がチームに加入した時点で2026年マシンの作業がほとんど進んでいなかったことを明かしている。

ハンガリーGPでは大規模アップデートを施したAMR26Bを投入し、ようやく改善の兆しを見せ始めたアストンマーティン。

しかし、そこに至るまでの約半年間は苦難の連続だった。67歳のニューウェイは、2026年マシンの失敗につながった背景として、新レギュレーションへの準備不足に加え、新風洞への移行に伴う開発開始の遅れがあったと振り返った。

ニューウェイ加入時には2026年マシンの開発がほとんど進まず
2026年のF1では、シャシーとパワーユニットの双方で大幅なレギュレーション変更が導入された。各チームは2025年1月1日から、風洞やCFD(数値流体力学)を使用した2026年マシンの本格的な空力開発を開始することが認められていた。

ニューウェイがアストンマーティンで正式に仕事を始めたのは2025年3月1日。ライバルチームがすでに2カ月にわたって新規則に基づく空力開発を進めていた時期だった。

だが、ニューウェイがシルバーストンで目にした状況は、期待していたものとは異なっていた。

「2026年のマシンについては、ほとんど作業が進められていなかった」

ニューウェイは2025年6月にそう明かしている。

「もちろん、それまでに行われていた作業にも役立つ部分はあった。ただ、それ以降の方がはるかに大きな進歩を遂げている。これほど広範囲で根本的なレギュレーション変更に取り組むのは大きな挑戦だし、期限というものは思っている以上に早く迫ってくる」

ニューウェイは、自身の加入が3月だったことだけを出遅れの理由にはしていない。正式なレギュレーションが確定する以前から、各チームには準備を進めるだけの情報があったと考えている。

「レギュレーションの最終版が出たのは1月1日だった。ただ、それ以前でも、きちんとした仕事を進められるだけのことは十分に分かっていたと思う。実際、多くのチームはそうしていたはずだ」

「だから、そこから少なくとも4カ月遅れてしまえば、どうしても追いつこうとする立場になる。ただ、それが我々の置かれていた状況だった」

新風洞を待つために開発開始をさらに2週間延期
アストンマーティンの出遅れには、もうひとつ大きな要因があった。シルバーストンの新ファクトリーに建設した自前の風洞が、2026年マシンの開発開始時点ではまだ使用できる状態になっていなかったことだ。

それまでアストンマーティンは、ブラックリーにあるメルセデスの風洞を借りて開発を行っていた。

そのため、まずブラックリーでAMR26の開発を始め、シルバーストンの新風洞が完成した段階で移行することも可能だった。しかし、チームは別の道を選択した。

ハンガリーGPでAMR26Bを投入した後、ニューウェイは改めて当時の状況を説明した。

「現実として、私が加入したときには、すぐに作業を始められるようなモデルが何も準備されていなかった」

さらにアストンマーティンは、メルセデスの風洞を短期間だけ使用するのではなく、自前の設備が完成するまで待つことを決断した。

「正しい判断だったのか、間違っていたのかは分からない。ただ、我々は自分たちの風洞が使えるようになるまで、さらに2週間ほど開始を遅らせることにした」

「ブラックリーでごく短期間だけ作業を始め、その後でもう一度シルバーストンへ移すよりは、その方がいいと判断したということだ」

この判断には理由があった。

異なる風洞を短期間で切り替えれば、それぞれの設備から得られるデータの相関を確認する必要がある。2026年のような大規模なレギュレーション変更では、マシンの基本コンセプトを決める重要な時期に、設備間の差を検証するための時間を費やすことになりかねない。

新しい風洞も完成すれば終わりではなかった
さらに、新風洞は完成した瞬間から最大限の能力を発揮できるわけではない。

実際の開発に使用しながらデータの精度や再現性を検証し、CFDや実車との相関を構築する必要がある。ニューウェイによれば、アストンマーティンでも新設備を本格稼働させるまでに相当な作業が必要だった。

「かなり大掛かりな立ち上げ作業だった。そういう意味では、すべてが最初から少し後手に回った状態で始まった」

「そうなれば、できることをやるしかない。そして、そのまま前へ進んでいく。それだけだ」

ニューウェイの言葉からは、当時の状況を誰かの責任として断定するというより、すでに発生していた遅れを現実として受け入れ、その中で可能な限り開発を進めてきたという姿勢がうかがえる。

しかし結果として、2026年マシンの空力開発そのものが遅れていたうえ、新風洞の完成を待つためにさらに時間を失い、その設備を立ち上げるための作業も必要になった。

アストンマーティンは、新レギュレーションへの対応でライバルを追いかけるところからAMR26の開発を始めることになった。

開幕後に露呈したAMR26の問題
その影響は2026年シーズンが始まると明確になった。

AMR26は期待された競争力を発揮できず、アストンマーティンはシーズン前半を通じて厳しい戦いを強いられた。新しいホンダ製パワーユニットにも課題があり、車体側だけに原因を求めることはできないものの、シャシーについても基本的な開発方向を修正する必要に迫られた。

特に大きかったのは、開発期間そのものが不足していたことだ。

新規則の初年度は、各チームが異なるコンセプトを模索するため、初期段階で選択した方向性がその後の開発余地を大きく左右する。スタートが遅れれば、単純に風洞で試せるパーツの数が減るだけではなく、失敗したコンセプトを検証して修正するための時間も少なくなる。

ニューウェイが語った「常に追いつこうとする立場」という言葉は、AMR26が置かれていた状況を端的に表している。

アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

ハンガリーで投入したAMR26Bが反撃への第一歩
それでも、アストンマーティンはシーズン中の開発を継続した。

ハンガリーGPでは16項目に及ぶ変更を盛り込んだAMR26Bを投入。細かなパーツ変更にとどまらず、マシンの基本的な挙動を改善することを狙った大規模なアップデートとなった。

決勝ではランス・ストロールが13位、フェルナンド・アロンソが14位に終わり、ポイント獲得には届かなかった。それでもアロンソはアップデート後のマシンについて、以前より挙動を予測しやすくなったと評価している。

チーム側も、AMR26Bによってようやく開発の方向性に手応えを得始めた。

ニューウェイの説明を踏まえれば、AMR26Bには単なる通常のシーズン中アップデート以上の意味がある。

開発初期の遅れによって十分に検証できなかったマシンを理解し、問題点を洗い出しながら、本来あるべき開発方向へと戻していく。その成果がようやく形になり始めたのがハンガリーだったと見ることができる。

2027年はニューウェイが最初から関与するマシンへ
AMR26の苦戦を、ニューウェイ加入以前の準備不足だけで説明することはできない。

2026年からワークス体制を組むホンダの新パワーユニットにも複数の課題があり、新しいファクトリーやシミュレーション設備など、アストンマーティンという組織そのものが大きな変革の途上にある。

それでも、ニューウェイ自身が指摘するように、2026年マシンの開発がライバルより遅れた状態で始まったことは大きなハンディキャップとなった。

現在は状況が異なる。

シルバーストンの新風洞は稼働し、ニューウェイも開発体制の中心にいる。2026年シーズンを通じて得られる実戦データも、翌年のマシン開発へ直接生かすことができる。

何より、加入時に「ほとんど作業が進められていなかった」というAMR26とは違い、2027年マシンではニューウェイが開発の早い段階から深く関与できる。

AMR26Bで見え始めた改善がシーズン後半にどこまで進むのか。そして、開発初期からニューウェイの思想を反映できる2027年マシンがどこまで競争力を高めるのか。

AMR26で露呈した出遅れを繰り返さないことが、アストンマーティンにとって最初の条件となる。2026年の苦戦を経て開発環境がようやく整った今、2027年こそニューウェイ加入の真価が問われるシーズンとなる。