フェラーリF1 12歳のアントネッリの獲得を逃す「マールボロが拒否」説

フェラーリF1 12歳のアントネッリの獲得を逃す「マールボロが拒否」説

フェラーリが少年時代のアンドレア・キミ・アントネッリを育成ドライバーとして獲得しなかった背景には、当時チームと強い関係を持っていたフィリップモリスの意向があったと、F1ジャーナリストのロジャー・ブノワが明かした。

現在メルセデスでF1タイトルを争うアントネッリは、12歳でメルセデスの育成プログラムに加入した。しかし、その前に本人が加入を希望していたのはフェラーリだったという。

ブノワによれば、フェラーリ側が獲得を見送った理由のひとつは、未成年のアントネッリをたばこ関連のプロモーションに活用できなかったことにあった。

12歳のアントネッリを「マールボロが拒否」
アントネッリがメルセデスと契約したのは12歳のときだった。当時からカート界で高く評価されていた逸材だったが、その才能に最初に目を付けたチームのひとつがフェラーリだった。

Motorsport MagazinのYouTubeチャンネルで、長年F1を取材してきたスイス人ジャーナリストのロジャー・ブノワは、当時の経緯についてこう語っている。

「アントネッリは当時12歳だった。フェラーリ・アカデミーに断られて、それからメルセデスに行った」

「フェラーリは彼を獲得できる立場にあった。何より本人がフェラーリに行きたがっていたからね。しかし、フェラーリは彼を断った。より正確に言えば、マールボロが断ったんだ。広告に使うことができなかったことなどが理由だった。それに、当時はまだアカデミーの体制も整っていなかった」

マールボロを展開するフィリップモリスとフェラーリの関係は1980年代までさかのぼり、長年にわたってF1チームの主要スポンサーとして大きな存在感を持ってきた。

ブノワの主張では、12歳だったアントネッリは成人向け商品の広告活動に起用できないため、スポンサー側にとって十分なマーケティング価値を持たせることが難しかったという。

なお、これはブノワによる証言であり、フェラーリやフィリップモリスが公式に認めた説明ではない点には留意する必要がある。

フェラーリ側は「受け入れる体制がなかった」と説明
一方、フェラーリ側からは異なる説明も示されている。

当時のフェラーリのチーム代表は、アントネッリを獲得しなかった理由について、将来的にF1ドライバーになれるだけの体格まで成長するかを疑問視したからではなく、若いカートドライバーを受け入れて育成するための「ストラクチャー」がチームになかったためだと説明している。

フェラーリ・ドライバー・アカデミーが正式に設立されたのは2009年末。初期の代表的な所属ドライバーを見ても、ジュール・ビアンキとセルジオ・ペレスは20歳、シャルル・ルクレールは18歳で加入しており、12歳という非常に若い段階から育成する現在のメルセデスのような仕組みとは異なっていた。

したがって、アントネッリを逃した経緯については、フェラーリ側が説明する「育成体制の不足」と、ブノワが証言する「スポンサー側の事情」という複数の要素が存在していた可能性がある。

現在はフェラーリがアントネッリ獲得を熱望?
結果としてアントネッリを獲得したのはメルセデスだった。12歳から長期的に育成を続け、その後F1へと昇格させた。

そして状況は大きく変わった。ブノワによれば、かつて獲得を見送ったフェラーリは現在、アントネッリを将来的に迎え入れることを強く望んでいるという。

「だから今では、もちろん彼を何としてでも欲しがっている。ただし、今後3年間で彼がフェラーリにいる姿を見ることはないだろう」

アントネッリ自身も過去にフェラーリを「巨大なチーム」と表現し、将来的にフェラーリで走る可能性を否定してはいない。

ただし、現時点でメルセデスを離れることは考えていない。幼少期から自らを支えてF1まで導いたメルセデスとの関係は深く、現在はタイトルを争えるマシンも手にしている。

フェラーリが逃したイタリアの逸材
イタリア人ドライバーであり、本人もフェラーリ入りを望んでいたというアントネッリ。それでも12歳の少年はマラネロではなくメルセデスの育成プログラムを選ぶことになった。

当時フェラーリに低年齢のドライバーを育成する十分な体制がなかったことは、フェラーリ側の説明とも一致する。一方でブノワの証言が事実なら、そこには長年チームを支えてきたスポンサーの商業的事情も影響していたことになる。

かつて獲得できる立場にありながら見送ったアントネッリが、いまやF1を代表する存在へと成長し、フェラーリ側が将来の獲得を望んでいるとされるのは皮肉な巡り合わせだ。現時点ではメルセデスとの結び付きが極めて強いものの、イタリア人スターとフェラーリという組み合わせは、今後もF1ドライバー市場の大きなテーマになりそうだ。