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  • ホンダF1振動問題の技術構造 エンジン起振と車体共振の連鎖

    ホンダF1振動問題の技術構造 エンジン起振と車体共振の連鎖

    2026年F1プレシーズンテストで露呈したホンダの“異常振動”問題。その発生源はエンジン側にあると断定されながらも、実際にダメージが及んだのはバッテリーシステム系だった。単体の不具合ではなく、エンジン起振が車体側の条件と重なり合うことで増幅される“複合共振”の構造が、今回の本質とみられている。

    さくらの施設ではモノコック搭載状態に近い条件で振動解析が進められているが、伝達経路と共振条件の特定は容易ではない。

    開幕を目前に控えるなか、ホンダF1は設計変更ではなく現行仕様の最大化と振動抑制で信頼性を成立させるという、極めて難しい局面に立たされている。

    起振源はエンジン だが問題は“車両全体”
    会見で武石伊久雄は「起振源がエンジンなのは間違いありません」と明言した。

    この発言は、振動の一次入力がエンジン回転に同期していることを示唆する。しかし同時に武石は、「トランスミッションやエンジンなど1個に限定できれば攻め込みやすいのですが、それぞれが連携しながら振動を発生させていると思われます」とも語っている。

    つまり、エンジン単体の欠陥という単純な構図ではない。エンジンから発生した振動が、ギアボックス、マウント、シャシー剛性、さらには路面入力と絡み合い、特定の条件下で増幅される構造が存在している可能性が高い。

    問題の本質は「振動がある」ことではなく、「どの経路を通り、どの条件で危険域に入るか」という連鎖構造にある。

    バッテリー“システム系”損傷という重い事実
    テスト中に発生した異常は、安全上看過できないレベルだった。

    「詳細は避けますが、そのまま走行してはいけないような異常です。漏電の危険性という意味で走るのをやめました」と武石は説明している。

    ここで重要なのは、バッテリーそのものが設計不良と断定されたわけではないという点だ。

    「バッテリーそのものが問題かどうかは分かりません」とも語っており、セル内部なのか、搭載部の剛性や締結条件なのか、あるいは周辺系統なのかは特定されていない。

    しかし、漏電リスクが発生するレベルのダメージである以上、信頼性が成立していない状態にあることは明確だ。これではパフォーマンス評価や回生最大化といった議論に進むことはできない。

    Sakuraでの解析が示す“共振経路”の複雑さ
    現在、さくらの施設ではモノコック搭載状態に近い条件で振動解析が行われている。

    「センサーやゲージを貼りながら測定しており、バッテリーの振動数値は確認しています。再現もできるかなと思っています」と武石は述べた。

    PU単体ベンチではなく、車両条件に近い状態での解析が必要になっているという事実は、問題が車両全体の固有振動と結びついていることを示している。

    単体性能の改善ではなく、車両としての成立性が問われている段階にある。

    ホンダ F1 本田技研工業

    設計変更より“現行最大化”という現実
    3月1日のホモロゲーションを前に、大幅な設計変更は現実的ではなかった。

    「当面は今承認を取ったものを最大化させるオペレーションに注力します。それ以上はもうできないという状況ですね」と渡辺康治は語った。

    武石も「バッテリーを2階建てから1階建てにするような話は今からはできません」と明言している。

    つまり短期的には、現行仕様の範囲内で振動の抑制、伝達経路の管理、運用面での最適化を組み合わせて信頼性を確保するしかない。

    回生出力の憶測よりも優先されるもの
    一部で報じられたMGU-Kの回生能力に関する憶測については、「そのような話は聞いていません」と否定された。

    「350kW/250kWの話とは関係ないと思います」と武石は述べている。

    しかし現段階で重要なのは、最大回生出力の達成ではない。振動による損傷リスクを排除し、車両を走らせ続けられる状態を作ることが前提条件となる。

    開幕までに何を成立させるか
    「長引く可能性も否定できません」と武石は率直に語った。

    一方で、「問題が解決すれば、本来のポテンシャルは出てくると思います」とも述べている。

    開幕戦オーストラリアGPに向けての現実的な目標は、最大パフォーマンスではなく、振動条件を管理下に置き、バッテリーシステムの耐久性を成立させることだ。

    エンジンを起点とする振動が、どの経路を通って車体共振を引き起こし、どの条件で損傷に至るのか。その連鎖構造を解き明かせるかどうかが、2026年ホンダF1の序盤戦を左右することになる。

  • ホンダF1が現状説明 アストンマーティンF1苦戦の背景「振動問題が影響」

    ホンダF1が現状説明 アストンマーティンF1苦戦の背景「振動問題が影響」

    ホンダ・レーシング(HRC)が東京都内でF1活動に関する記者会見を実施し、ホンダF1としてアストンマーティンF1に供給している2026年規定パワーユニットの現状について説明した。

    エイドリアン・ニューウェイが設計を手がけたAMR26と、HRCの新型PU「RA626H」への期待は大きかったが、バーレーンでのプレシーズンテストは周回数、タイムともに伸び悩み、最終日は関連パーツ不足も重なり実質6周のみで終了するなど、不安を残す内容となった。

    会見では渡辺康治社長と武石伊久雄専務が、技術的課題と今後の対応方針を語った。

    「想定どおりにはいかなかった」テストを総括
    渡辺社長は、今回のテストについて率直な認識を示した。

    「プレシーズンテストは我々にとって非常に厳しい内容でした。期待していたパフォーマンスを十分に引き出せず、いくつかの課題が浮き彫りになったと受け止めています」

    一方で、課題が明確になった点は前向きに捉えているという。

    「実走のなかで問題点がはっきりしたことは大きな収穫です。現在はHRCのエンジニアと現場スタッフが、これまで以上に密に連携しながら、開幕戦に向けて改善作業を進めています」

    アストンマーティンとの関係についても強調した。

    「パートナーとは率直に意見を交わしながら、ワンチームとして解決策を具体化しているところです。状況は簡単ではありませんが、挑戦をやめるつもりはありません」

    異常振動とバッテリー系統の課題
    武石専務は、テスト中に表面化した技術的なポイントを説明した。

    「走行中に通常とは異なる振動が確認されました。その影響で、バッテリーシステム周辺にダメージが及んだ可能性があります」

    ただし、バッテリー単体の設計不良というよりも、複合的な要因が絡んでいるという。

    「レギュレーション変更に伴うPUの仕様変化や、車体側との組み合わせ、路面からの入力など、複数の要素が重なっていると分析しています。現時点では一点に絞り込めているわけではありません」

    現在は栃木県のHRC Sakuraで、実車に近い環境を再現したベンチを用いて振動の再現・解析を実施。アストンマーティンのエンジニアも加わり、対策を急いでいるという。

    「モノコックを想定したベンチ設備で振動を再現しながら、原因究明と対策の両面を進めています。開幕戦、そして鈴鹿での日本GPまでには、少なくとも戦える状態に持っていきたいと考えています」

    また、一部で報じられた最高回転数の制限やMGU-K回生出力に関する見方については、いずれも走行プログラム上の運用であり、エンジンそのものの重大な欠陥によるものではないとの認識を示した。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダF1

    再参戦までの“空白”とコストキャップの現実
    会見では、技術的課題に加え、組織面の背景についても触れられた。

    ホンダは2021年末で一度F1正式参戦を終了。その後2023年に再参戦を決断したが、その間にエンジニアの異動などがあり、体制の再構築が必要だったことは事実だという。

    さらに現在はPUマニファクチャラーにもコストキャップが適用されており、無制限に開発できる状況ではない。限られた予算と時間のなかで組織と開発を同時に立て直していることが、今回の立ち上がりに影響している可能性も否定しなかった。

    3月1日のホモロゲーション登録については、まず信頼性と耐久性を重視した仕様で臨む方針だとしている。

    「難しいからこそ挑戦する」ホンダの決意
    最後に渡辺社長は、新ワークス体制での挑戦に対する思いを語った。

    「アストンマーティンと正式なワークス活動ができることは大きなチャレンジであり、やりがいでもあります。確かに厳しい状況ですが、ここで立ち止まることはありません」

    「新しいチーム、新しい燃料やオイルなど、すべてが新しい挑戦です。難易度は高いですが、だからこそ取り組む価値があると考えています」

    武石専務も次のように締めくくった。

    「どれだけ時間がかかるかは現時点では断言できませんが、我々は必ず勝ちを目指します。一歩一歩改善を積み重ね、できるだけ早く結果を出せるようにしていきます」

    2026年F1開幕戦オーストラリアGPは3月6〜8日に開催される。厳しいスタートとなったアストンマーティンF1とHRCだが、“ワンチーム”での立て直しに挑む。

  • ホンダ、インディカーと複数年契約更新 2028年からチーム・チャーター取得

    ホンダ、インディカーと複数年契約更新 2028年からチーム・チャーター取得

    ホンダは、NTTインディカー・シリーズと複数年にわたるエンジンサプライ契約を更新し、2027年シーズン以降も参戦を継続することを発表した。

    ホンダおよびホンダ・レーシング・コーポレーションUSA(HRC US)は、30年以上にわたる北米オープンホイールレースでの実績を基盤に、2028年から始まる新たなインディカー時代へ挑む。

    2028年シーズンからは、ダラーラ製の新シャシーが導入される予定だ。これにあわせてHRC USは、新開発の2.4リッターV6ツインターボ・ハイブリッドエンジンを供給する。本パワーユニットは、全マニュファクチャラー共通となる低電圧ハイブリッドシステムと組み合わされ、現行のダラーラDW12シャシーおよび2.2リッターV6ツインターボ・ハイブリッドエンジンを置き換える。

    今回の新契約の一環として、ホンダとシボレーの両マニュファクチャラーは、2028年シーズンから「チーム・チャーター」を取得する。エンジン供給メーカーとしては初の施策となる。

    これによりHRC USは、2028年からのフルシーズン参戦体制の構築に向けて準備を本格化。人的育成と技術開発のさらなる強化を図る方針だ。

    ホンダは1994年のCART参戦以来、北米オープンホイールレースで数々の成功を収めてきた。これまでに通算298勝、ドライバーズタイトル21回、マニュファクチャラーズタイトル11回、インディアナポリス500で16勝を記録している。

    2025年シーズンは歴史的な一年となり、シーズン中10連勝、全17戦中12勝を挙げた。ドライバーズ、マニュファクチャラーズ、ルーキー・オブ・ザ・イヤーの全タイトルを獲得し、インディアナポリス500でも勝利を収めている。

    ホンダ・レーシング・コーポレーションUSAの社長、デビッド・ソルターズは次のように述べた。

    「ホンダファン、そして関係者の皆様に、NTTインディカー・シリーズへの参戦継続を発表できることを大変うれしく思います。インディカーが持つ歴史と競争精神に深い敬意を払いながら、30年以上にわたる取り組みを今後も継続できることを誇りに感じています」

    「本契約は、北米オープンホイールレースの最高峰の舞台において、人材と技術をさらに成長させる大きな原動力となります」

    「また、インディカーとFOXとのパートナーシップにより、レースの魅力は一層高まっています。インディカーの未来は非常に明るく、ホンダがその成功に重要な役割を果たせることを光栄に思います」

    ■ ホンダ・レーシング・コーポレーションUSA(HRC US)について
    HRC USは、北米におけるホンダおよびアキュラのモータースポーツ活動を統括するレーシングカンパニーである。1993年にホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント(HPD)として設立され、2024年にHRC USへ名称変更した。

    現在はインディカーやIMSAスポーツカー選手権をはじめ、将来のF1パワーユニット開発など、次世代のホンダ・モータースポーツ活動を担っている。

    インディカー・シリーズ

    2028年インディカー新レギュレーションのポイント
    ・ダラーラ製新シャシーを導入(現行DW12は2012年導入)
    ・2.4リッターV6ツインターボ・ハイブリッドへ移行
    ・全メーカー共通の低電圧ハイブリッドシステムを採用
    ・マニュファクチャラーによるチーム・チャーター取得制度を新設

    なお、現行のDW12シャシーは2012年に導入され、2.2リッターV6ツインターボエンジンも同時に採用された。2024年半ばからは低電圧ハイブリッド化が進められている。

    チーム・チャーターとは、参加チームやメーカーの出走権や条件を明文化した制度であり、取得すると毎レースへの一定台数の出走が保証されるほか、分配金などの権利が付与されるのが一般的だ。

    2028年に向けて、インディカーはシャシー、パワーユニット、そして参戦制度の三位一体での刷新を進める。ホンダはその中心的存在として、新時代の技術競争に挑む。

  • ホンダF1 渡辺康治「アストンマーティンとワンチームで挑戦する第一歩」

    ホンダF1 渡辺康治「アストンマーティンとワンチームで挑戦する第一歩」

    ホンダは、2026年F1シーズン開幕に向け、ワークスパートナーであるアストンマーティンとの新たな挑戦を本格的にスタートさせる。その第一歩として、ホンダ・レーシング代表取締役社長の渡辺康治が、両者の協業体制と2026年シーズンへの決意を語った。

    シャシーとパワーユニットの両方が刷新される2026年F1に向け、ホンダはアストンマーティンとワンチームとなり、新型パワーユニット「RA626H」の開発を進めている。

    渡辺康治は、この難しくもエキサイティングな挑戦を「ともに踏み出す第一歩」と位置づけ、ワークス体制で戦う意義を強調した。

    アストンマーティンが発表した新型F1マシン「AMR26」は、ホンダが開発した2026年F1レギュレーション対応パワーユニット「RA626H」を搭載する。ホンダは同チームとともに、2026年シーズンを戦うワークス体制を本格的にスタートさせる。

    AMR26は、マネージング・テクニカル・パートナー兼チーム代表を務めるエイドリアン・ニューウェイが、アストンマーティンで初めて設計を手がけたF1マシンであり、英国シルバーストンに完成した最新拠点「AMRテクノロジーキャンパス」で開発が進められている。

    ホンダはアストンマーティンとともに、2月11日から13日、18日から20日にかけてバーレーンで実施される計6日間のプレシーズンテストに臨み、実戦に向けた最終調整を行う。その後、3月8日にオーストラリアで開催される2026年シーズン開幕戦に挑戦する。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダ F1

    エイドリアン・ニューウェイは、2026年シーズンについて次のようにコメントしている。

    「2026年は、F1史上初めてシャシーとパワーユニットの規則が同時に変わる稀有な年です。新しい規則下での最適解はすぐには見つかりませんが、マシンの開発が進むに伴い理解が深まってくるはずです。AMR26では全体のパッケージとしての完成度を重視し、強固な基本性能の確立と今後の開発ポテンシャルの高さ、そしてドライバーが一貫してパフォーマンスを引き出せることに注力しました」

    また、ホンダ・レーシング代表取締役社長の渡辺康治は、次のように語っている。

    「シャシーもパワーユニットもすべてが新しくなる2026年のF1シーズン開幕に向けて、ホンダ/ホンダ・レーシングはワークスパートナーとして、アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラワン・チームのAMR26に搭載するパワーユニット『RA626H』の開発を進めてきたました。アストンマーティンとワンチームとなり、この難しくも世界で最もエキサイティングな挑戦の第一歩をともにできることを、うれしく思います

    ホンダは、新世代F1レギュレーションのもとで再びワークスとして世界最高峰に挑む2026年シーズンを、アストンマーティンとともに戦い抜く。

  • エイドリアン・ニューウェイ、ホンダF1の評価は「年末に聞いてほしい」

    エイドリアン・ニューウェイ、ホンダF1の評価は「年末に聞いてほしい」

    エイドリアン・ニューウェイは、アストンマーティンとホンダF1による新たなパートナーシップについて、現時点での評価を保留した。2026年F1シーズンに向けた準備が進む中で、同氏は「結論を出すのはまだ早い」と慎重な姿勢を示している。

    アストンマーティンは長年続いたメルセデス製パワーユニットからホンダF1へと切り替え、大きな転換点を迎えている。

    ニューウェイは、チーム、燃料パートナー、そしてホンダF1との連携が重要になるとしたうえで、その成否については「年末に改めて聞いてほしい」と語った。

    約50年に及ぶF1キャリアを持つエイドリアン・ニューウェイは、2026年F1シーズンに向けて初めて、F1マシンの設計という技術的役割とチーム全体を統括する立場を同時に担っている。67歳の英国人であるニューウェイは、2024年末にアストンマーティンで現在の肩書きを与えられた。前チーム代表であったアンディ・コーウェルがチーム内で別の役職に就いたことを受けての人事だった。

    F1におけるチーム代表は、従来ニューウェイが携わってきた純粋な技術業務よりも、はるかに幅広い責任を伴う。それでも本人は、その役割の変化を冷静に受け止めている。

    「僕にとっては、ほとんどが肩書きに過ぎない」

    ニューウェイは、アストンマーティンの公式コンテンツ『Undercut』のインタビューでそう語った。

    「チーム代表としての僕の仕事は、チーム文化と、我々がどのように協力していくかという方向性を示すことだ。あらゆるレベルで、人を成長させることが重要なんだ」

    この考え方は、アストンマーティンが大きな飛躍を目指す今シーズンにおいて、重要な意味を持つ。AMRテクノロジー・キャンパスは現在も拡張が続いており、新しい風洞施設が完全稼働したのは2025年4月になってからだった。

    さらにチームは、長年使用してきたメルセデス製パワーユニットに代わり、2026年からホンダF1を新たなパワーユニットパートナーとして迎える。すべてを軌道に乗せるための時間的プレッシャーは非常に大きく、ニューウェイ自身もレッドブル・レーシングを離れた後、2025年3月になってようやく、このプロジェクトに本格的に加わった。

    エイドリアン・ニューウェイ アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム) ホンダ F1

    「非常に慌ただしい10か月だった」

    ニューウェイは、開発初期をそう振り返る。

    「我々は大きな遅れを抱えた状態でスタートした。ほとんどのチームは2025年1月の時点で、すでに新車のモデルを風洞に入れていたが、我々がそれを始められたのは4月だった」

    その遅れは大きな負担となったものの、ニューウェイは、この1年でチームが強く結束したと感じている。

    「彼らの仕事を楽にしたわけではないが、皆が自分たちの限界を超えて取り組んでくれた」

    その結束は、アストンマーティン内部にとどまらない。燃料パートナーであるアラムコ、そして新たなパワーユニットパートナーとなるホンダF1も、このプロジェクトにおいて重要な役割を担っている。

    「アラムコの技術的な知見がなければ、ホンダF1のエンジン開発は制限を受けてしまう。そうなれば、我々の開発も同様だ」

    ニューウェイは、3者による協力体制の重要性を強調する。

    「これは複雑だが、不可欠なパートナーシップだ。我々は、さらに発展させていくための基盤を築こうとしている。そのためには、信頼と忍耐、そして協力が必要になる」

    では、その取り組みは最終的に成功するのか。その問いに対し、ニューウェイは慎重な姿勢を崩さなかった。

    「それについては、年末にもう一度聞いてほしいね」

  • ホンダ新パワーユニット始動 アストンマーティンF1、AMR26初走行の舞台裏

    ホンダ新パワーユニット始動 アストンマーティンF1、AMR26初走行の舞台裏

    アストンマーティンF1は、バルセロナで行われたシェイクダウンの最終前日に2026年型マシンAMR26を初走行させた。チーフ・トラックサイド・オフィサーのマイク・クラックは、この節目の瞬間について「少し遅れての到着にはなったが、誇りに思い、喜ぶことができる」と語っている。

    AMR26は水曜夜にカタルーニャ・サーキットへ搬入され、メカニックたちは新たなパワーユニットパートナーであるホンダとともに、木曜の初走行に向けた最終準備に追われた。

    AMR26がバルセロナに到着するまでには、舞台裏で慌ただしい動きがあった。シルバーストーンのファクトリーでは、技術陣が夜間作業も含めた対応を続け、少なくとも1日分の走行を実現するため、マシンを時間内にスペインへ送り出す必要があった。

    出発のゴーサインが出たのは水曜早朝。チームのロジスティクス担当は、最寄りの国際空港であるバーミンガムから、サーキットへのアクセスが最も良いジローナ空港までの緊急輸送を短時間で手配することを求められた。

    ただし、問題は輸送手段だった。AMR26を収めた大型コンテナを搭載できる航空機を確保する必要があり、最初に確保できたのが、ウクライナの貨物航空会社が運航する機体だった。

    用意されたのは、1972年製のアントノフAn-12BP。半世紀以上前に製造された4発プロペラ機が、エイドリアン・ニューウェイ設計による最新F1マシンを運ぶという、対照的な組み合わせとなった。

    この“空のベテラン”は任務を問題なく完遂し、ミッドランズからカタルーニャまでのフライトは3時間足らずで終了。到着時には、その姿を目撃したファンが写真を撮影し、SNSに投稿する様子も見られた。

    パドックでは「博物館級の機体が、現代F1でも屈指の最先端プロジェクトを運んできた」と冗談交じりに語る関係者もいたが、結果的に輸送自体が遅延の原因になることはなかった。AMR26が“少し遅れて”バルセロナ入りした背景には、こうした綱渡りのような舞台裏があった。

    ホンダF1 アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    現地時間17時ごろ、デイ4の残り1時間というタイミングで、ランス・ストロールがエイドリアン・ニューウェイによる初のアストンマーティン設計車でピットを離れ、インスタレーションランを兼ねた探索的な走行で4周を記録した。

    この日を振り返り、クラックは次のように語っている。

    「新車が出るたびにそうだが、いつも感情が高ぶるし、本当にエキサイティングな瞬間だ。ここ数日、非常に多くのハードワークが注ぎ込まれてきた。まだやるべき仕事は山ほどあるが、今日はひと息ついて、マシンをコースに送り出せたことを喜んでいいと思う」

    「とても感情的で、チームにとって素晴らしい瞬間だった。全員が注いできた努力への賛辞でもある。F1は容赦なく、常に前を見続けなければならないし、これからもさらに多くのハードワークが待っているが、それを楽しみにしている」

    新車と新たなワークスエンジン契約という形でプロジェクトが進んだ点について、クラックはこう続けた。

    「我々は少し特別な状況にある。新しいパワーユニットパートナーとしてホンダを迎え、長い年月を経て自分たちで初めてギアボックスを製作し、そこに新シャシーレギュレーションと新パワーユニットレギュレーションが重なっている」

    「最悪のケースとも最高のケースとも言えるが、チームとしてはワークスチーム、ファクトリーチームになるという大きな変化だ。それがこれらのレギュレーションと同時に訪れた。さらにエイドリアンが加わったことで、すべてがとてもエキサイティングで、大きな変化がある」

    「F1は待ってくれないから、準備ができていなければならない。今回は少し遅れたが、このテストには間に合った。だから、この達成を誇りに思い、喜んでいいと思う」

    ホンダとの新たな関係性についても、クラックは率直に語っている。

    「まだ新しい関係だし、以前のパートナーと長い付き合いがあった分、人を知り、名前を覚え、どのように一緒に仕事をするのか、期待値や責任の範囲は何なのか、そういったことを学んでいく必要がある」

    「ただ、良いスタートだった。お互いに笑顔もあった。我々の目標は、この時間を使ってできるだけ統合を進め、どうやって一緒に仕事をしていくかを学ぶことだ。彼らはレーサーで、とてもオープンだし、こちらからチャレンジすることもできる。本当に良い関係で、これを続けていくのが楽しみだ」

    ストロールもまた、コックピットからの初体験について短く言葉を残し、金曜の走行をチームメイトのフェルナンド・アロンソに託した。

    「良い感触だった。数週間ぶりにクルマに戻れて良かったし、今日クルマを走らせるために、みんなが本当に良い仕事をしてくれた。メカニックもチーム全員も、フルプッシュで準備してくれて、長い一日だった」

    「一日の終わりに少し周回できて、フィーリングも良かった。このマシンには本当に多くの時間が費やされてきたから、実際にステアリングを握れて、新しいホンダのパワーユニットや、この新世代のクルマに慣れ始めることができたのは良かったし、とてもワクワクしている」

  • ニューウェイの「設計余地を残す哲学」 アストンマーティンF1躍進の伏線

    ニューウェイの「設計余地を残す哲学」 アストンマーティンF1躍進の伏線

    エイドリアン・ニューウェイ独自の仕事術をスカイスポーツF1のクレイグ・スレイターが明かした。アストンマーティンが新たなデザイン総責任者兼チーム代表に迎えたニューウェイのやり方が、2026年F1シーズンに向けたマシン開発に大きな影響を与えているという。

    エイドリアン・ニューウェイは2025年3月にアストンマーティンへ加入したが、昨季マシンの開発には関与せず、全面刷新される2026年F1レギュレーションに向けた新車に専念してきた。

    ウィリアムズ、マクラーレン、レッドブルで計25回の世界タイトル獲得に貢献してきた設計の巨匠が指揮を執る体制となった一方で、アストンマーティンは今週、バルセロナでのプレシーズンテスト初日には走行できず、木曜開始でわずか2日間の走行になることを明かしている。

    この非公開シェイクダウンは5日間にわたって行われ、その後2月にはバーレーン・インターナショナル・サーキットで6日間の公式テストが予定されている。後者はテレビ中継も行われる重要な走行機会だ。

    スレイターによれば、アストンマーティンの新車が準備に時間を要している背景には、ニューウェイ特有の「設計余地を最後まで残す」哲学があるという。

    「彼らはマシンのリアエンド全体を自分たちで作らなければならず、これはこれまでやってこなかったことだ。周囲から聞く話では、これがエイドリアン・ニューウェイ流への適応なんだ」とスレイターはスカイスポーツF1のテスト特集番組で語った。

    「彼は設計のエンベロープを最後まで開けておく。だから部品の確定が遅くなり、製造も遅れる。木曜か金曜になっても、ガレージで組み上げ作業を続けている可能性があると思う」

    さらにスレイターは、ニューウェイを迎えた以上、その流儀に従うのは当然だと強調する。

    「でも、それがエイドリアンのやり方なんだ。エイドリアン・ニューウェイを雇っておいて、彼のやり方を無視するなんてことはしないだろう。だから理にかなっている」

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム 本田技研工業

    アストンマーティンはタイトル争いへ基盤作り
    アストンマーティンにはニューウェイだけでなく、元フェラーリのエンリコ・カルディレも加わり、技術陣の陣容は大きく強化された。ニューウェイとカルディレは、チームを将来的なタイトル争いの常連へと押し上げることを目指している。

    ただし、現時点でチーム内部から聞こえてくる声は、2026年から即座にチャンピオンシップを争うというものではない。加えて、2026年F1シーズンからはホンダとの新たなパワーユニット提携が始まる。ホンダは近年、レッドブル・レーシングとともに大きな成功を収めてきたメーカーだ。

    たとえ2026年にタイトル争いの中心にいなくとも、アストンマーティンは昨季より確実に上位で戦うことを期待している。2025年は表彰台なしでコンストラクターズランキング7位に終わっており、ニューウェイ流の“最後まで詰める設計”が、その巻き返しの起点となる可能性は十分にある。

  • アストンマーティン・ホンダF1、初回テストに間に合わず 木金のみ走行

    アストンマーティン・ホンダF1、初回テストに間に合わず 木金のみ走行

    アストンマーティン・ホンダは、2026年F1シーズン最初の公式走行機会となるバルセロナでのシェイクダウンテストにおいて、許可されている3日間のうち少なくとも1日を使用できない見通しとなった。チームは木曜と金曜の2日間のみ走行する意向を明らかにしている。

    F1は今週、カタルーニャ・サーキットで5日間の非公開プレシーズンテストを実施する。

    各チームは月曜から金曜までの中から任意の3日間を選んで走行できるが、ウィリアムズは2026年マシンの準備遅れにより、今回のテストを完全に欠席する唯一のチームとなっている。

    アストンマーティンもまた準備が綱渡りの状況にあり、月曜と火曜の走行を欠席することはすでに報じられていた。チーム広報は「AMR26は今週後半にバルセロナへ到着し、我々の意向としては木曜と金曜に走行する予定だ」と述べており、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールが走行できるのは2日間に限られる見込みだ。

    月曜の初日には、メルセデス、アウディ、アルピーヌ、キャデラック、レーシングブルズ、ハースF1チーム、レッドブル・レーシングの7チームがすでに走行を開始した。フェラーリとマクラーレンは火曜からの合流を予定しており、マクラーレンは水曜まで初走行を遅らせる可能性もあるとされている。

    今回のバルセロナテストではライブタイミングが公開されておらず、午後のラップタイムに関する信頼できる情報はほとんど存在しない。そもそもこの週の主眼はパフォーマンス追求ではなく、2026年仕様の新型パワーユニットを含む車両全体の信頼性確認と走行距離の積み重ねにある。

    本田技研工業 アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    AMR26は、エイドリアン・ニューウェイがマネージング・テクニカル・パートナーとして初めて全面的に監修したマシンであり、シルバーストン拠点に新設された風洞施設で開発された最初の車両でもある。ニューウェイは2025年末の内部体制再編を経て、チーム代表の役割も兼任している。

    さらにアストンマーティンは、2026年からホンダ製パワーユニットを使用するワークスチームへと移行する予定であり、ローレンス・ストロールが率いる体制への期待は高まっている。一方で、今回テスト参加が遅れる理由について公式な説明はなされておらず、マシンの重量超過やパワーユニット側の問題、あるいはニューウェイが極めてタイトな設計スケジュールを要求することで知られている点など、さまざまな憶測が飛び交っている。

    限られた2日間の走行で、アストンマーティンがどこまでAMR26の基礎作業を進められるかは、2月のバーレーン公式テスト、そして新時代初年度の開幕戦に向けた重要な指標となりそうだ。

  • アストンマーティン・ホンダF1、AMR26組み立て難航 舞台裏に広がる緊張

    アストンマーティン・ホンダF1、AMR26組み立て難航 舞台裏に広がる緊張

    アストンマーティン・ホンダF1は、2026年F1新レギュレーション初年度に投入するAMR26の準備で、舞台裏に緊張感が広がっている。複数の関係者の情報によれば、マシンの組み立て作業が想定以上に難航しており、バルセロナで行われる最初のプレシーズンテストへの参加計画にも不透明感が残っている。

    AMR26は設計段階から攻撃的な選択が多く、シャシーのクラッシュテストや重量管理などで課題を抱えてきたとされる。

    現在もシルバーストンでは作業が続いているものの、走行開始が週の後半にずれ込む可能性が指摘されており、アストンマーティン・ホンダF1は新時代の幕開けを前に、時間との厳しい戦いを強いられている。

    クラッシュテストと重量問題が開発を圧迫
    AMR26の遅れの背景には、複数回にわたるシャシーのクラッシュテスト不合格がある。関係者の話では、最終段階で導入された設計変更の影響もあり、ホモロゲーションに至るまでに想定以上の時間を要したという。

    加えて、AMR26はシーズン開幕時点で重量超過を抱える見通しとされている。余剰重量は10kgを超える可能性があり、これは同じく重量面で課題を抱えるレーシングブルズと近い状況だ。一方で、アルピーヌはすでに最低重量付近に達しているとされ、序盤戦においては数コンマ規模の性能差につながる可能性がある。

    ニューウェイ流の“極限設計”、今回は代償も
    AMR26の設計を主導したエイドリアン・ニューウェイは、今回も他チームとは異なるアプローチを選択したとされる。空力面だけでなく、メカニカルレイアウトにおいても一部の判断が最終局面で下され、結果として組み立て工程が複雑化した。

    レギュレーション初年度において、限界まで突き詰めた設計をギリギリまで仕上げる手法は、ニューウェイの過去のプロジェクトでも見られた特徴だ。ただし今回は、クラッシュテストの再実施や重量対策が重なり、バルセロナテストのスケジュールそのものに影響を及ぼす事態となっている。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダ技研工業

    バルセロナは短期戦、開幕前から削られる走行時間
    現時点で、アストンマーティン・ホンダF1がバルセロナで走行を開始できるのは、早くても水曜日、状況次第では木曜日になる可能性が高いと見られている。その場合、確保できる走行日は最大でも2日間に限られる。

    2026年はパワーユニットとシャシーの双方が大きく刷新されるため、初期テストでの走行距離は例年以上に重要となる。信頼性確認や基本的なセットアップ作業が後手に回ることは、その後の開発計画全体にも影響を及ぼしかねない。

    他チームも苦戦、2026年F1は想定以上の難易度
    こうした問題は、アストンマーティン・ホンダF1だけに限られたものではない。ウィリアムズはクラッシュテスト不合格と重量問題を理由に、バルセロナテストを欠席する決断を下した。

    フェラーリもまた、SF-26の準備過程でクラッシュテストに起因する遅れを経験しており、年明け直後に再テストを実施してようやくホモロゲーションにこぎ着けている。いずれのケースも、新世代F1マシンの設計と製造が、各チームにとって想定以上の負荷となっていることを示している。

    2026年F1シーズンは、開幕前から各陣営の対応力と開発体制が試される厳しい局面を迎えている。AMR26が限られた準備期間の中でどこまで完成度を高められるのか、アストンマーティン・ホンダF1にとって、バルセロナはすでに正念場となりつつある。

    Source: AutoRacer.it

  • ホンダF1、エンジン論争でFIAに明確な姿勢「解釈の余地は議論すべき」

    ホンダF1、エンジン論争でFIAに明確な姿勢「解釈の余地は議論すべき」

    ホンダ・レーシングの渡辺康治社長は、現在進行中のF1パワーユニットを巡る問題について、明確な姿勢を示した。

    新たなレギュレーションサイクルを土台とする新シーズン開幕が数週間後に迫るなか、エンジンメーカーの一部では不満が高まっている。その背景にあるのが、新レギュレーションに含まれる50:50のV6ハイブリッドエンジンにおける圧縮比を巡る、いわゆる「抜け穴」の存在だ。

    圧縮比の上限は16:1と定められており、その測定は周囲温度(アンビエント)で行われる。この点こそが、問題の抜け穴が見つかったとされる部分である。

    メルセデスとレッドブル・フォードのパワートレイン・プロジェクトは、周囲温度を上回る条件下で圧縮比を高める方法を見出したとされ、これが性能面での優位につながる可能性が指摘されている。

    この手法によって、1周あたりで大きなゲインが生まれる可能性があり、メルボルンのアルバート・パーク・サーキットで行われる開幕戦では、1周あたりコンマ3〜4秒の差になるとの予測も出ている。

    他の3つのOEMであるアウディ、フェラーリ、ホンダは、バルセロナで行われる最初のプレシーズンテストを前に、FIAとの会合に臨んだ。

    アストンマーティンに独占供給するパワーユニットのローンチの場で、渡辺康治社長はこの状況に対する日本メーカーとしての立場を語った。

    「今年は新しいレギュレーションが始まる年であり、その解釈や運用についても、今回の件に限らず多くの要素が議論の対象になると考えています」

    「ですので、現時点ではすべてを切り分けて考えていきたいと思っていますが、我々としては、開発にあたってレギュレーションを順守し、それに沿って取り組んでいるという点を明確にしたいです」

    「レギュレーションというのは、すべてが細部まで明確に書かれているわけではありません。そのため新しいレギュレーションの中で、各パワーユニットごとに新しい技術の可能性を探っていくことになります」

    ホンダ技研工業 F1 ホンダ

    渡辺康治社長は、ルールには「解釈の余地」が残されていることを認めたうえで、ホンダ自身も「異なるアイデア」を持っており、それについてFIAの判断を仰ぎたい考えを示した。

    「解釈の余地は多く残されていますし、それもまたレースの一部だと思っています。FIAにとっては、それが良いのか悪いのかを判断する立場になります」

    「ホンダとしては、さまざまなアイデアを持っていますので、それが受け入れられるのか、それとも問題があるのかを理解するために、FIAと話し合いたいと考えています」

    「そのような形で進めていくつもりですし、レギュレーションに関わる事柄については、常にFIAと協議していきたいと考えています」