2026年F1第13戦イタリアGPでは、モンツァならではの高速レイアウトと2026年型パワーユニットのエネルギー制約が重なり、例年以上に激しいオーバーテイク合戦が繰り広げられる可能性がある。
アストンマーティンのトラックサイドエンジニアリング責任者を務めるマイク・クラックは、エネルギーマネジメントとスリップストリームが大きな役割を果たすことで、抜いては抜き返す展開が増え、「史上最多」のオーバーテイクを記録する可能性があると予想。「F1というよりMotoGPのようになる」と表現した。
モンツァで深刻になる2026年F1のエネルギー問題
超高速サーキットとして知られるモンツァは、2026年F1カレンダーのなかでも特にエネルギー面で厳しいサーキットになるとみられている。
2026年型F1マシンでは電動パワーの重要性が大幅に高まっており、長い全開区間が続くモンツァでは、ラップ全体にわたって十分な電気エネルギーを供給し続けることが難しくなる。
そのため、ドライバーは単純にアクセルを踏み続ければいいわけではなく、どこでエネルギーを使い、どこで温存するかを考えながら走る必要がある。
このエネルギー管理によって、2026年シーズン序盤の高速サーキットで見られた、前後のマシンの位置関係が頻繁に入れ替わる、いわゆる「ヨーヨー」のようなレース展開がモンツァでより顕著になる可能性がある。
スリップストリームが予選でも重要に
クラックは、エネルギー不足を補う手段としてスリップストリームの重要性が高まると考えている。
木曜日にモンツァで、今年はトウ(スリップストリーム)が重要になるかと質問されたクラックは「そう思う」と答えた。
「ここでは予選ラップでも基本的にエネルギーが不足する。その影響によって、みんながトウを探すことになると思う」
「2019年のような状況にならないことを願っている。少なくともQ1ではそうならないと思うが、その先で何が起こるかは分からない」
2019年のイタリアGP予選では、各ドライバーがスリップストリームを得ようとしてコース上で位置取りを争った結果、Q3終盤に大半のマシンが時間内に最後のアタックを開始できない異例の事態が発生した。
クラックは、今年も前を走ることを避けようとする動きが強まる可能性があるとみている。
「おそらく誰も先頭を走りたくないだろう。近年よりも、そういう場面は増えると思う」
トウの有無でエネルギー戦略も変化
問題をさらに複雑にするのが、単純にスリップストリームの効果を計算するだけでは十分ではないという点だ。
チームは単独走行時と前車を追走している状況の両方について、エネルギーの展開方法を最適化する必要がある。
「モデルを検証するという意味でも間違いなく興味深い作業になる。しかし、運用面でどう管理するかを見ることも重要だ」
「効果が大きい、小さいと言うだけなら簡単だが、実際には誰かの後ろを走れる位置にいなければならない」
「今週末はエネルギー面でかなり多くの制約がある。各チームがどう対処するのかを見るのは興味深い」
クラックによれば、まずチームはトウを使わない状態でのエネルギーデプロイメントを決め、そのうえでスリップストリームに入った場合の設定や運用を考える必要がある。

決勝は「抜いて抜き返す」展開か
こうした特徴は予選だけでなく、決勝のオーバーテイクにも大きな影響を与える可能性がある。
前車のスリップストリームに入れば空気抵抗を減らすことができ、ストレートで必要となるエネルギーを抑えながら速度を伸ばせる。一方、先頭に出たマシンは自ら空気抵抗を受けるため、エネルギー面で不利になる可能性がある。
その結果、一度オーバーテイクを成功させても、次のストレートでは今度は抜かれた側がトウを利用して反撃するという展開が生まれやすくなる。
クラックは決勝について次のように予想した。
「レースではどれだけ簡単にオーバーテイクできるのか。そして特に、抜いたり抜き返したりする展開は、おそらくここで史上最多になると思う。F1というよりMotoGPのようになるだろう」
MotoGPではスリップストリームを利用した順位変動が頻繁に発生し、同じライダー同士が何度もポジションを入れ替える展開も珍しくない。クラックは、2026年のモンツァではF1でもそれに近い状況が生まれると考えている。
高速モンツァで再び問われる2026年F1の特性
直近のハンガリーGPとオランダGPでは、サーキット特性からエネルギーマネジメントの影響は比較的小さかった。
一方、全開区間の長いベルギーGPでは、エネルギー管理によってマシンの挙動やレースの戦い方が大きく左右され、一部のドライバーから批判も出ていた。
そしてモンツァは、その問題がさらに明確に表れる可能性のある舞台だ。
長いストレートで電気エネルギーをどう配分するのか。単独走行とスリップストリーム走行で戦略をどう変えるのか。そして先頭に立つことが本当に有利なのか。2026年F1イタリアGPでは、従来のモンツァ以上にエネルギーマネジメントと位置取りが勝負を左右することになりそうだ。
クラックの予想通りなら、今年のモンツァでは単純に「抜けるレース」になるだけではない。オーバーテイクした直後に立場が逆転し、再び抜き返される――そんなMotoGPを思わせる激しいポジション争いが、2026年F1の新たな特徴として浮き彫りになる可能性がある。
