カテゴリー: ホンダF1

  • アストンマーティンとホンダの2026年F1シーズンに向けた“秘密兵器”

    アストンマーティンとホンダの2026年F1シーズンに向けた“秘密兵器”

    2023年シーズン序盤8戦で躍進を遂げた後、アストンマーティンF1チームは2シーズンにわたり中団に低迷してきた。タイトル獲得を目標に掲げるチームにとって、これらの結果は満足できるものではなかった。

    アストンマーティンの流れを変えるため、チームオーナーのローレンス・ストロールは一連の重要な人材獲得を主導した。シルバーストンのチームには、エイドリアン・ニューウェイ、エンリコ・カルディーレ、そしてアンディ・コーウェルといった重鎮が加わっている。

    2026年を見据えると、チームにとって最大級の課題のひとつが、初めて“マニュファクチャラー”として戦うことだ。ホンダとのパートナーシップは不可欠であり、すでに2026年に向けた体制変更を促している。

    しかし、見落とされがちでありながら極めて重要な存在が、アストンマーティンの燃料サプライヤーであるアラムコだ。

    アストンマーティンとホンダがアラムコとの提携で得る可能性
    新レギュレーション下では、多くの要素がシーズンを通じて影響を及ぼす。空力面では、ライバルに対して優位性を築くため、エンジニアは有利な領域を見極めて活用するという循環的な作業に直面する。

    それでも、2026年を真に変革的なものにしているのはパワーユニットの側面だ。

    2022年以降、エンジンの信頼性は非常に高く、リタイアは年々減少している。このほぼ“防弾”とも言える信頼性により、レースは予測しやすくなり、セーフティカーの出動頻度も減ってきた。

    しかし、この状況は変わる見込みだ。2026年エンジンは、従来型から大きく方向転換した存在となる。こうした重要な主戦場を見据え、アストンマーティンは2023年初頭にホンダと2026年レギュレーションに向けた提携に合意した。

    アストンマーティンの視点では、日本のメーカーと組むことで開発プロセス全体を完全に掌握できる。もしマクラーレンF1やウィリアムズF1のようにメルセデス製パワーユニットを使い続けていれば、トップレベルのエンジンを享受できたかもしれない。

    しかしその一方で、ブラックリーのファクトリーから供給されるコンポーネントに合わせてマシン設計を調整する必要があった。アストンマーティンは、ホンダとの提携を見過ごせない機会だと判断した。

    この協業の可能性をさらに高める変数が燃料サプライヤーである。F1グリッド全体では、チームごとに異なるサプライヤーが燃料を供給している。

    アストンマーティンの供給元がアラムコである点は注目に値する。2026年には持続可能燃料が使用され、これはF1にとって大きな前進となる。

    要するに、燃料そのものが持続可能な供給源から統合的に設計される必要がある。一定の規定はあるものの、サプライヤーにはこの要件を満たすための大きな自由度が与えられている。

    特定の燃料サプライヤーが他よりも効率的なブレンドを開発する可能性があると見られており、この分野での開発自由度はレギュレーションでも認められている。エンジンとの相互作用次第では、サプライヤーによっては追加の馬力を引き出すこともあり得る。

    ここで、アストンマーティンがアラムコと組む利点が生きてくる。アラムコはすでに持続可能燃料の使用経験を有しており、昨シーズンにはF2マシンに供給していた。

    そのため、アラムコは2026年用燃料に多大な投資と開発を行ってきた。ホンダ製エンジンにさらなるエネルギーとパワーをもたらす燃焼特性を持つ燃料を供給することが期待されている。

    マニュファクチャラー各社が多方面で開発を進めるシーズンにおいて、この分野はアストンマーティンとホンダが静かに自信を持てる要素だ。信頼性と効率性に優れた持続可能燃料を生み出してきた豊富な実績は、アストンマーティンにとって貴重な武器となり得る。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム F1 本田技研工業 HRC

    ニューウェイ、カルディーレ、コーウェルが担う役割
    もちろん、2026年シーズンに向けた課題はパワーユニット開発だけではない。アストンマーティンは目標達成のため、革新的な空力パッケージを投入しなければならない。

    この点で違いを生む存在として期待されているのがエイドリアン・ニューウェイだ。66歳の名デザイナーは、かつてフェラーリF1のテクニカルディレクターを務めたエンリコ・カルディーレと協働している。

    昨季終盤には、アンディ・コーウェルがチーム代表からチーフ・ストラテジック・オフィサーへと配置転換された。この変更により、彼はホンダとの連携や開発により深く関与する立場となった。ニューウェイは、この調整がアストンマーティンの上層構造を最適化する最良の方法だと見ている。

    ホンダは過去5年で数々のタイトルを獲得してきた実績あるマニュファクチャラーであり、レッドブル・レーシングとの成功はアストンマーティンが再現を目指すものだ。2026年は、その基盤を築く年となる。

    総じて、ホンダはメルセデスに挑む最有力メーカーのひとつと見なされている。アラムコとの独自のパートナーシップといった利点が決定的な差を生むかどうかは、時が示すことになる。

  • ホンダ、2026年F1パワーユニットで再定義される内燃エンジンと電動の関係

    ホンダ、2026年F1パワーユニットで再定義される内燃エンジンと電動の関係

    2026年F1レギュレーションは、ホンダにとって単なる「復帰プロジェクト」ではない。内燃機関(ICE)と電動システムの関係性が根本から変わるこの新時代は、ホンダが過去の延長線ではなく、発想そのものを組み替えることを迫られる挑戦でもある。

    ICEは簡素化され、燃料は100%持続可能燃料へ移行する。エンジン単体の絶対性能ではなく、エネルギー全体をどう使い切るかが問われる時代において、ホンダはゼロベースに近い開発アプローチを選んでいる。

    「単純化されたICE」はホンダにとって不利か、有利か
    2026年向けICEは、FIAの方針により、あえて“複雑にできない”設計が求められる。

    高精度な燃焼監視センサーは禁止され、ノックセンサーによる管理へ移行する。可変吸気システムも廃止され、吸気管長は固定。さらに圧縮比は18:1から16:1へ引き下げられる。

    これらは一見すると「開発の自由度を奪う制約」に見えるが、ホンダにとっては必ずしも不利とは限らない。なぜなら、2026年のICEは限界性能を攻める存在ではなく、電動側を成立させるための“エネルギー供給装置”として再定義されているからだ。

    ピークパワーよりも、
    ・燃焼の安定性
    ・ノック耐性
    ・電動システムとの協調

    こうした領域こそ、ホンダがこれまで培ってきた制御技術が活きる分野でもある。

    100%持続可能燃料という最大の未知数
    2026年PU開発で、ホンダが最も難題と捉えているのが燃料だ。

    バイオ燃料とe-fuelを組み合わせた100%持続可能燃料は、従来燃料と比べてノッキングを起こしやすく、燃焼を安定させること自体が難しい。ホンダのPU開発責任者・角田哲史は次のように語っている。

    「新しい燃料はノッキングを起こしやすく、性能を引き出すのが難しい。ほぼゼロからの再スタートで、内燃機関はまったく新しいコンセプトになる」

    さらに燃料使用量はkg/hではなく、3000MJ/hというエネルギー量で制限される。これは、燃料の“量”ではなく“質”がそのまま性能に直結することを意味する。

    発熱量が高くても燃焼効率が低ければ意味はなく、ICEと電動系を含めたトータル効率が問われる。ホンダはまさに、この全体最適の構築に注力している。

    ホンダ・レーシング F1 本田技研工業

    予算上限を使い切らなかったホンダの現実
    日本からの情報では、ホンダは2023年・2024年ともに、2026年PU開発に割り当てられた予算上限を完全には使い切っていないとされている。

    これは
    ・レギュレーションの確定を待ち、無駄な初期投資を避けていた
    ・後半フェーズにリソースを集中させる判断をしていた

    といった、戦略的・構造的な理由による可能性が高い。

    それでもホンダが「伸び代」を期待される理由
    重要なのは、ホンダが「短期間で差を詰める前例」を持っている点だ。

    2015年からの第4期F1参戦では苦戦を強いられたが、最終年となった2021年初頭には、メルセデスPUに匹敵するレベルまで性能を引き上げた。しかも当時は、現在のような厳格な予算上限は存在していなかった。

    今回は、
    ・ICEの単純化
    ・電動比率の拡大
    ・燃料特性の刷新

    という“リセット条件”が揃っている。これは、過去の経験値がそのまま優位に働かない領域でもある。

    2026年F1はホンダにとって「再挑戦」ではなく「再定義」
    2026年F1のパワーユニットは、もはや内燃機関の性能競争ではない。

    エネルギーをどう作り、どう使い、どう無駄なく変換するか――その思想そのものが問われる。

    ホンダは、かつての成功体験をなぞるのではなく、「2026年型F1とは何か」を一から定義し直す立場にある。

    その答えが正しければ、2026年のグリッドでホンダPUは、単なる追い上げ役ではなく、再び基準点となる可能性を秘めている。

  • ホンダF1初勝利60周年 1965年カバーオールが完全復刻された舞台裏

    ホンダF1初勝利60周年 1965年カバーオールが完全復刻された舞台裏

    ホンダが1965年のF1メキシコGPで初勝利を挙げてから60年。その節目にあたる記念イベントにおいて、当時のメカニックが着用していたカバーオールが、細部に至るまで忠実に復刻された。

    数千時間に及ぶ調査と2度の日本渡航を経て実現したこのプロジェクトは、単なる記念品の制作にとどまらず、ホンダが積み重ねてきたF1の歴史と文化を「着られる形」で現代に甦らせる試みとなった。

    クルマ文化とは何か
    クルマ文化は、特定のジャンルや価値観に限定されるものではない。旧車、量産車、エキゾチックカー、あるいはよりニッチな自動車の世界に至るまで、その根底には「自動車文化が重要である」という共通認識が存在する。では、クルマ文化とは何を指し、どこまでを内包するものなのか。その問いは、しばしば明確な定義を持たないまま語られてきた。

    今回のプロジェクトは、その問いに対し、ひとつの具体的な答えを提示するものだった。

    パトリック・カレロとHonda Vintage Culture
    このプロジェクトを主導したのは、Honda Vintage Cultureを手がけるパトリック・カレロである。カレロとの接点が生まれたのは、2024年のモントレー・カーウィーク終了後だった。ラグナ・セカで行われた、ホンダ初のF1優勝車によるデモンストレーション走行の取材時、日本から車両とともに帯同したチームの一部が、彼の制作したアイテムを着用していたことが、そのきっかけとなった。

    この偶然の出会いが、のちにホンダF1初勝利60周年を巡る象徴的なプロジェクトへと発展していく。

    デザインとホンダを結ぶ原点
    カレロは幼少期からモノづくりに親しみ、15歳でレコーディングアーティストのロゴを手がけていた。カーネギーメロン大学ではグラフィックデザイン、インダストリアルデザイン、ビジネスを学び、これまでに40台以上のホンダおよびアキュラを所有してきた経歴を持つ。

    木製カー・トイ「Automoblox」で成功を収めた後、ホンダとの関係が生まれた。カレロは当時を次のように振り返っている。

    「大学に入った頃、本気でカーデザイナーになることを考えていた。Car Styling Magazineを定期購読していて、当時は1冊25ドルくらいしたと思う。その後は別の道に進んだけど、Automobloxを通じて、クルマをデザインするという夢やアイデアにもう一度戻ることができた。それがホンダにつながった。」

    「僕のアイデア、あるいは提案はこうだった。『アメリカの家庭のリビングルームに入り込めたら、どれだけクールだろう?』って。大企業は消費者とつながるために、テレビ広告などに莫大なお金を使っている。でも、新しいホンダ・オデッセイを買った人が、同時にAutomobloxのオデッセイも手に入れたらどうだろう。オデッセイのAutomobloxがクルマと一緒についてきたらどうだろう、ってね。」

    「Automobloxのプロジェクトで本当にクールだったのは、ホンダが実車が公開される1年半も前に、オデッセイのCADデータを渡してくれたことだ。最終的にそのプロジェクトは実現しなかったけど、ホンダブランドをアメリカのリビングルームに届け、消費者とブランドをつなぐという考え方こそが、まさに僕の専門分野なんだ。」

    “着たいホンダ”という発想
    その後、カレロはホンダファンが身に着けられるプロダクトの必要性を感じるようになった。

    「ホンダのTシャツやフーディーを着てもらいたかった。でも、誰かに『なんでアコードやオデッセイの服を着ているの?』って思われるようなものにはしたくなかった。ホンダのクールな側面について語る必要があった。それで、豊かなレースの歴史に焦点を当てた。」

    この発想から、ヴィンテージ・アキュラのTシャツ、HRCジャケット、ヴィンテージF1ギア、ウォールポスターなど、Honda Vintage Cultureのラインアップが形成されていった。

    1965年、ホンダF1初勝利という原点
    ホンダがF1で初めて勝利を挙げたのは1965年のメキシコGPだった。アメリカ人ドライバー、リッチー・ギンサーが、チャンピオンシップホワイトに塗られたV12エンジン搭載のRA272を駆り、日本メーカーとして初のF1勝利を達成した。

    この歴史的瞬間から60年を迎えるにあたり、カレロはホンダに対して自ら提案を行った。

    「60周年が近づいているから、『何かできると思う』と連絡したんだ。『サポートしたいし、いくつかアイデアがある』ってね。」

    「1960年代のホンダチームジャケットのオリジナル写真を30〜40枚ほど見つけたけど、特に1965年に焦点を当てた。それでレプリカのジャケットを作ったら、『レースに間に合うように用意できる?』って聞かれた。」

    「ジャケットの次に、幹部がメキシコで着るポロシャツのアイデアが出て、それも急いで用意した。そして一番のクラウンジュエルがカバーオールだった。これは最初から絶対にやりたかった。とにかく徹底的なリサーチが必要だと分かっていた。」

    本田技研工業 F1

    カバーオール復刻への徹底した調査
    「Motorsport Imagesと連絡を取り、ライセンス契約を結んだ。そうすることで、アーカイブ写真に深く入り込むことができた。おそらく何万枚という写真を見た。その中で、1960年代のオーバーオールを見た瞬間、『これは信じられない。これは本当にすごい』と思った。」

    「チームは1964年から1965年にかけてこのカバーオールを着用していた。でも調べていくと、同じものが二輪チームでも使われていたことが分かった。1958年か1959年頃からだ。違いは袖に“Car Racing Team”と書かれていたかどうかだけだった。」

    「ホンダのライセンス部門の関係者が、モテギの博物館で展示されているカバーオールの写真を見せてくれた。ガラスケース越しに見たとき、『なんてことだ、これは本当にすごい』と思った。」

    「アーカイブへのアクセスを許可してもらい、展示されていないものも含めて実物を出してもらった。写真を大量に撮り、いつか必ず作るつもりだった。」

    「同時に、2着のセナのスーツも出してきた。ただし密閉されたバッグから出すことは許されなかった。それでも手に持つことができただけで衝撃的だった。」

    細部に宿る再現性
    「最初のサンプルは、市販ブランドのパターンを使った。でも気に入らなかった。」

    「2度目の日本行きで、さらに細部を撮影し、何百もの寸法を測った。背中の“Honda Motor Tokyo”と袖の文字はフラットベッドスキャナーで取り込んだ。アートワークは完全に同一だ。」

    「オリジナルは古くて少し不完全だけど、その不完全さも含めて再現した。当時はCADなんてなかったから、地元の作業着屋が持っていた文字を使って縫っていた。」

    「写真が白黒ばかりで、色や素材を判断するのも簡単じゃなかった。」

    「縫い目の幅、ステッチのパターン、バックルやストラップの寸法まで全部測った。サプライヤーが短期間で信じられないパターンを作ってくれたことには本当に感謝している。」

    ホンダ・レーシング F1

    メキシコで甦った歴史
    完成したカバーオールは航空便で日本へ届けられ、その後メキシコへ運ばれた。記念イベントでは、角田裕毅がステアリングを握り、RA272が1965年に歴史を刻んだ同じサーキットを走行した。V12エンジンは13,000回転まで回り、当時を彷彿とさせるサウンドを響かせた。

    それは、ホンダが過去だけでなく、現在、そして未来においても、オープンホイールレースという最も複雑で競争の激しい舞台をDNAとして持つメーカーであることを示す瞬間だった。

    「歴史は作れない」
    「ライセンス部門の人たちには本当に感謝している。ホンダ・ヘリテージ・コレクション・ミュージアムの人たちも信じられないほど協力的だった。」

    「カバーオールは航空便で日本に届けられ、予定どおり間に合った。幹部たちはそれを着てメキシコのサーキットに向かい、本当に満足してくれた。」

    「ホンダの情熱なしでは、これを成し遂げることはできなかった。ナイジェル・マンセルのウィリアムズF1を走らせるときも、ホンダは私の装備を着てくれている。」

    「この話を伝えることが重要だと思っている。ホンダのアジアの競合は、同じ物語を語ることができない。存在しなかった歴史は作れない。こうしたブランドエクイティは、エンスージアストの未来にとって極めて重要だ。」

  • ホンダ、2026年のアストンマーティンF1提携初年度は「基礎固めの年」

    ホンダ、2026年のアストンマーティンF1提携初年度は「基礎固めの年」

    ホンダは、2026年から始まるアストンマーティンF1とのパートナーシップを前に、その初期目標を明らかにした。ホンダ・レーシング(HRC)代表の渡辺康治が語っている。

    ホンダは2021年末をもってF1から正式に撤退したが、その後もレッドブルが使用するパワーユニットのIP提供という形でF1への関与を続けてきた。その契約は2025年シーズン終了をもって完了し、ホンダは2026年からアストンマーティンとともにフルワークス体制でF1に復帰する。

    このホンダとの契約は、シルバーストンを拠点とするアストンマーティンにとって大きな成果であり、長い歴史の中で初めてワークスチームの地位を得ることになる。

    2026年の成功とは何か
    渡辺康治は、アストンマーティンとの初年度におけるホンダの目標について、英国と日本の緊密な統合を最重要視していると説明した。

    「私にとっての成功の定義は、2026年が、アストンマーティンとホンダが築いてきたパートナーシップが、計画どおりに機能していることを確認する年になることです。ひとつの統合されたチームとして機能しているかどうかが重要だと考えています」

    と、アストンマーティンのウェブシリーズ『Undercut』の中で述べた。

    「我々が目指してきた価値観を共有できているか、そしてパフォーマンス目標を達成できているかを、しっかりと確認していく必要があります」

    ホンダは2026年を基礎固めの年と位置付ける
    渡辺康治は、ホンダのF1復帰が長期的な視点に基づくものであり、2021年にレッドブルとともに収めた成功を再現することを目標としていると語った。

    「我々が予測できず、コントロールできないのは、競合他社の状況です」

    「それが分からない段階では、シーズンにおける自分たちの内部目標を達成すること以上の話はできません」

    「もちろん、長期的には、このパートナーシップの究極の目標、そして我々の成功の定義は、世界選手権を勝ち取ることです」

    「長期的な視点を持つことが非常に重要だと考えています。我々とアストンマーティンの関係は、単なる技術的な協力関係を超えています。共通のビジョンを共有しています。AMRテクノロジーキャンパスには大きな情熱があり、同時に非常に高いクオリティも備わっています」

    「そこにホンダの開発力と、勝てるパワーユニットを提供できる能力が組み合わされば、2026年だけでなく、2027年、2028年、そしてその先においても、F1で成功できるポテンシャルがあると考えています」

    本田技研工業 F1 アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    F1という過酷な世界で求められる結束
    ホンダはF1復帰に伴うリスクも十分に認識しており、渡辺康治はどのような状況下でもパートナーとの結束が不可欠であると強調した。

    「我々はいま、非常に特別な何かの始まりに立っています」

    「パートナーを信頼し、尊重し、ともに改善し続けることが非常に重要です」

    「ホンダは何十年にもわたり、さまざまなチームにエンジンやパワーユニットを供給してきました。非常に良い結果を出した日や年もあれば、厳しい日や年もありました」

    「サーキットで何が起ころうとも、我々がひとつの存在であり続けることが重要だと考えています」

    「F1は非常に厳しい世界です。結果が期待どおりでなければ、改善が難しくなることもあります。それでも、パートナーとの信頼と尊重の関係を維持することは、絶対に欠かせません」

  • ローレンス・ストロール 「ホンダF1には時間を与える。期待は非常に高い」

    ローレンス・ストロール 「ホンダF1には時間を与える。期待は非常に高い」

    ローレンス・ストロールは今、近年に行ってきた巨額の投資を踏まえて冷静さを説いている。勝つためのすべてのピースが揃っていると認めつつも、結果を出すには時間が必要だという考えだ。そのため、ホンダにも新たな現実に適応するための時間を与えるとしている。

    モータースポーツでも人生でも、優先順位や時間に対する捉え方は人それぞれだ。わずかな時間も無駄にせず結果を求める者もいれば、時間をかけて種をまき、土壌を整え、適切な時期に実を収穫しようとする者もいる。

    アストンマーティンでは、まさにその対照が見られる。フェルナンド・アロンソは、これまで投入されてきた多大なリソースを背景に、チームを一刻も早く頂点へ押し上げようとする。一方でストロールは、段階的に目標を達成していく姿勢を崩していない。

    この二つの視点は正反対だが、どちらも理解できる。アストゥリアス出身のアロンソは来年7月29日に45歳を迎える。いまなおF1に参戦し続けていること自体がスポーツ界の奇跡とも言える存在であり、その才能が時間とともにほとんど色あせていないことを示している。ただし本人も、勝利や長年追い続けてきた3度目の世界タイトルを手にする機会が、そう多く残されていないことを理解している。

    一方のストロールは、起業家としての思考を持つ。すべてを一度に手に入れるのはほぼ不可能だと分かっている。エイドリアン・ニューウェイ、アンディ・コーウェル、エンリコ・カルディレといった一流エンジニアの存在、最新鋭のインフラが整っていたとしても、すべてを噛み合わせ、部門間のダイナミクスを調整するには時間が必要だ。

    さらに忘れてはならないのが、ホンダのパワーユニット供給だ。2026年から日本のメーカーは、レッドブル・レーシングおよびレーシングブルズとの契約終了後、シルバーストンのチームに独占供給する。

    本田技研工業 F1 アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    「来年、大きなレギュレーション変更を迎えることを心待ちにしている。これはまた一歩前進になる。ホンダをパワーユニットのパートナーに迎え、我々は初めてワークスチームになる。まったく新しい経験になるだろう」とストロールはスペイン版Motorsport.comに語った。

    「パワーユニットに合わせてシャシーを設計することと、カスタマーエンジンをただ受け取ることはまったく違う。すべてを実現するには時間と忍耐が必要だ」

    さらにこう続けている。

    「来年使うのは新しいパワーユニットだ。ホンダがそのパワーユニットを開発するために、必要な時間を与えなければならない」

    時間が必要であることを強調しつつも、カナダ人は期待が「非常に高い、極めて高い」ことを認めた。

    「今は、全員が集まり、来年導入される新しく刺激的なレギュレーションを、我々の非常に高い、可能な限り高い期待に見合うものにするために働く時間を与える必要がある」

  • ホンダがF1をやめなかった理由 渡辺康治が語るアストンマーティンとの覚悟

    ホンダがF1をやめなかった理由 渡辺康治が語るアストンマーティンとの覚悟

    ホンダ・レーシング・コーポレーション(HRC)の社長である渡辺康治が、ホンダがF1参戦を継続する理由、アストンマーティンに魅力を感じた点、そしてこのパートナーシップの最終目標について語った。

    ホンダは2015年から2017年にかけてマクラーレンにパワーユニットを供給したが、性能と信頼性の問題から、マクラーレンはルノーへ移行した。2018年にトロ・ロッソと組み、状況は改善し、2019年からはレッドブルと提携。

    渡辺康治はアストンマーティンのインタビューで、「ホンダはおそらくF1なしでは生きられないと思っています」と述べ、継続の理由をそう表現した。さらに、「技術面に目を向けますと、2026年のパワーユニット規則の変更が、我々がF1に戻る決断をするうえで重要な要因でした」と語っている。

    2026年からは電動モーターの比重が高まり、内燃機関との出力配分はおよそ50/50になる。

    「電動モーターの出力は120kWから350kWへと、ほぼ3倍に増えます。そこに持続可能燃料の要件が加わり、将来の駆動システムに対するホンダの哲学と完全に一致しています」と渡辺康治は理由を挙げた。

    「これは我々の企業戦略にも合致しています。モータースポーツの頂点は、技術を磨き、技術力を高め、それを世界的な舞台で示す場です。ホンダの将来にとって非常に重要だと考えています」

    本田技研工業 F1 アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    パートナー選択と最終目標
    ホンダが最終的にアストンマーティンを選んだ理由について、渡辺康治はチームオーナーであるローレンス・ストロールの存在を挙げる。

    「我々は常にパートナー選びに慎重です。このケースでは、チームのリーダーシップ、そしてローレンス・ストロールの情熱とビジョンに強い印象を受けました」と述べた。

    「彼は非常に競争心が強く、常に勝利を目指しています。その姿勢は非常に印象的です。AMRテクノロジー・キャンパスの新施設にもその志向が表れていますし、近年、経験豊富な人材で組織を強化してきた点からも、それが見て取れます。チーム内の関与度と集中力は非常に高く、それがこの協業を我々にとってとても魅力的なものにしています。非常にワクワクする挑戦でもあります」

    2026年はパワーユニット面で大きな変化があるため、具体的な予測は難しいという。渡辺康治は2026年を、「アストンマーティンとホンダの協業が、意図した通りに一体のチームとして機能することを確認する年です」と位置づける。

    「我々の中核となる価値観が実行され、設定したパフォーマンス目標を達成できるようにしなければなりません」と語った。

    「我々が予測できず、影響も及ばないのは、ライバルがどの位置にいるかという点です。それが分かるまでは、シーズンにおける内部目標以上のことは見通せません。しかし長期的には、このパートナーシップの究極の目標、そして成功の定義は、世界選手権を勝ち取ることです」

  • ホンダ、アストンマーティンF1でニューウェイと再会「頻繁に意見を交換」

    ホンダ、アストンマーティンF1でニューウェイと再会「頻繁に意見を交換」

    ホンダは、8シーズンにわたるレッドブル陣営との関係を終え、2026年からはアストンマーティンF1への単独パワーユニット供給を開始する。日本メーカーにとって、この新たなパートナーシップは大きな転換点となる。

    このタイミングでアストンマーティンの技術部門は大幅な再編を迎えている。2025年初頭には、長年レッドブルでマシン設計を率いてきたエイドリアン・ニューウェイが加入し、2026年にはチーム代表職を引き継ぐ予定となっている。

    一方、元メルセデスのエンジン専門家であるアンディ・コーウェルはチーム代表の座を離れ、チーフ・ストラテジー・オフィサーとして組織全体を支える立場に就く。

    ホンダ側も、この体制を高く評価している。ホンダ・レーシング(HRC)社長の渡辺康治は、アストンマーティンの公式インタビューで次のように語っている。

    「アンディとは非常に良い関係にあります。シルバーストンで起きていることや、さくらの施設での作業について、いつでも電話で話せる存在です。」

    「パワーユニットの開発と供給は完全にHRCの責任ですが、アンディはエンジン開発に伴う課題や、現代のシステムがいかに繊細で複雑かをよく理解しています。その知見は非常に価値があります。彼のこれまでの実績に対する敬意はとても大きいです。」

    ホンダとアストンマーティンの間では、すでに継続的な議論が行われているという。

    「ホンダとアストンマーティンの間では、多くの議論が行われています。」

    「パワーユニットの目標を定める際、彼は当然のように非常に野心的な要求を提示してきます。エンジン開発の専門家がチーム上層部にいることは大きな強みです。シャシーとエンジンの間には調和が必要で、アンディの役割はそれを可能にしています。」

    ニューウェイとの再会と緊密な連携
    アストンマーティンでは、渡辺康治にとって見慣れた存在とも再び仕事をすることになる。それがニューウェイだ。長年レッドブルで設計を担ってきた英国人デザイナーと、再び同じプロジェクトで向き合うことになった。

    「彼がアストンマーティンと契約した直後の最初のミーティングでは、かなり笑い合いました。『また一緒ですね』と思ったのを覚えています。」

    「彼がいること自体が本当に刺激的ですし、その能力に対する敬意は言うまでもありません。エンジン開発については、我々には我々のプロセスとスケジュールがあります。一方で、エイドリアンは初日からシャシーで同じ目標に向かっています。だからこそ、両者が交わる部分で緊密に協力し、頻繁に意見を交わしています。」

    渡辺康治は、ニューウェイとのやり取りについても具体的に言及している。

    「エイドリアンとは頻繁に意見交換をしていますが、その内容は集中的な議論、提案、フィードバックが中心です。」

    「ただし、常に焦点は勝利にあります。部品や開発について技術的な議論をする場合でも、必ず長期的な視点で『どうやって勝つか』を考えています。細部の作業の話もあれば、ライバル分析、人材マネジメント、さらには予算制限の中でどう最適化するかといった財務の話に及ぶこともあります。」

    F1は人のスポーツ
    最後に渡辺康治は、ニューウェイが過去に語った言葉に強い共感を示した。

    「彼は以前のインタビューで、『自分にとって最も重要なのは人です。F1は人のスポーツです』と言っていました。その言葉が強く印象に残っています。」

    「私も完全に同意しています。技術や開発の話を多くしますが、すべては人のアイデア、情熱、そして努力から始まります。それはホンダにも間違いなく当てはまります。」

    ホンダとアストンマーティンは、2026年F1レギュレーションという大きな節目を前に、技術と人を軸とした新たな挑戦に踏み出そうとしている。

  • ホンダ含む3社がFIAに説明要求 メルセデスの2026年F1エンジン手法に疑念

    ホンダ含む3社がFIAに説明要求 メルセデスの2026年F1エンジン手法に疑念

    2026年F1レギュレーションを巡り、早くもパワーユニット開発をめぐる政治的な動きが表面化している。メルセデスとレッドブルが、2026年F1エンジン規則の「グレーゾーン」を突いた開発手法を用いているとされ、ライバルのホンダ、フェラーリ、アウディがFIAに対して正式な説明を求めた。

    プレシーズンテストはまだ数週間先だが、すでに各陣営は“実力隠し”と抗議の可能性を視野に入れた神経戦に入っている。大きな優位性が確認されれば、他チームが技術的抗議に踏み切るのは避けられない状況だ。

    メルセデスとレッドブルが注目される理由
    レッドブルのパワートレイン部門は軽視できない規模に成長している。ミルトンキーンズを拠点とする同部門には約600人規模のエンジニアが集結しており、その中にはメルセデスから引き抜かれた技術者も多数含まれている。

    この背景から、メルセデスとレッドブルが2026年F1パワーユニットにおいて「同一の発想」を共有していると見られている。問題となっているのは、FIAテクニカルレギュレーションに記載された圧縮比に関する規定だ。

    「エンジンのいかなるシリンダーも、幾何学的圧縮比が16.0を超えてはならない。この値を算出する手順は、別途定められた文書に示される。」

    従来は最大18.0だった圧縮比は、2026年F1規則で16.0へと引き下げられた。これは新規メーカー参入を促進するための措置の一環とされている。

    しかし、圧縮比の測定はガレージ内で車両が静止した状態で行われる。一方、走行中は温度上昇による金属の熱膨張が発生する。この点こそが、今回の論争の核心となっている。

    メルセデスとレッドブルは、静止状態では規定どおり16.0を満たしつつ、走行中には実質的に18.0に近い圧縮比を実現できる設計を見いだしたと理解されている。熱膨張を利用することで「規則順守」と「性能向上」を同時に狙う手法だ。

    この解釈が2026年F1で合法と判断されれば、決定的なアドバンテージになり得る。

    国際自動車連盟,F1 フォーミュラ1エンジン メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    ホンダ・フェラーリ・アウディが突きつける規則解釈
    『The Race』によれば、ホンダ、フェラーリ、アウディの3メーカーは、この問題についてFIAに共同書簡を送付し、公式な見解を求めたという。

    FIAが取り得る選択肢はいくつか考えられる。最も直接的なのは、メルセデスとレッドブルの手法を明確に禁止する形で規則を修正することだ。ただし、これはメルセデスのカスタマーチーム3チームを含め、甚大な影響を及ぼす。プレシーズン直前という時期を考えれば、極めて過激な判断となる。

    別の選択肢として、2026年F1シーズンはこの手法を認めつつ、2027年F1から修正を義務づける妥協案も考えられる。しかし、これはホンダ、フェラーリ、アウディにとって到底受け入れ難い。数コンマのラップタイム差であっても、タイトル争いでは致命的になり得るからだ。

    彼らが根拠として挙げるのが、2026年F1レギュレーションC.1.5項である。

    「F1マシンは、競技期間中のいかなる時点においても、本規則のすべてに完全に適合していなければならない。」

    静止時だけでなく、走行中も含めた“常時順守”が求められる以上、熱膨張によって実質的に圧縮比が変化する設計は規則違反だ、という主張だ。

    FIAの判断が左右する2026年F1の序盤戦
    FIAがこの共同書簡にどう対応するかは、2026年F1開幕前から大きな意味を持つ。対応次第では正式な抗議が提出され、シーズン開幕前から政治的混乱に陥る可能性もある。

    大規模なレギュレーション変更期に、極端な解釈や政治闘争が発生するのはF1では珍しくない。今回のエンジン論争も、その典型例と言える。

    2026年F1に向けた舞台裏の攻防は、今後12か月にわたって続いていく可能性が高い。メルセデス、レッドブル、そしてホンダ、フェラーリ、アウディの思惑が交錯する中で、FIAの裁定が新時代の勢力図を左右することになる。

  • ホンダ 2026年F1エンジンのパフォーマンスにおける「決定的要因」を特定

    ホンダ 2026年F1エンジンのパフォーマンスにおける「決定的要因」を特定

    ホンダは、F1の新たなレギュレーション時代に向けて、まったく新しいパワーユニットの開発を進めている。レッドブルおよびレーシングブルズとの関係を終え、現在は新たなワークスパートナーであるアストンマーティンF1とシナジーを組んで作業を行っている。

    ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治は、新世代パワーユニットにおける重要なポイントと、その運用面での鍵について、あらためて詳しく語った。

    「新しいエンジンには、排気ガスの熱エネルギーを電気エネルギーに変換するMGU-Hが搭載されていません。つまり、ある程度のターボラグと付き合っていく必要があります」と渡辺康治は述べた。

    「もうひとつの課題は、エネルギー貯蔵容量をほぼ変えずに、電動モーターの出力を3倍にすることです。ここでの鍵は、エネルギーマネジメントをどれだけ効率的にできるかという点になります。これは新レギュレーションの中で、最も難しい技術課題です」

    「効率は、新しい時代のF1における決定的な要素になります。ホンダは、世界でも最先端のバッテリー技術を持っていることを誇りに思っています。この強みを最大限に活かしながら、エネルギーマネジメント性能をさらに高めていくことが重要になります」

    「また、2026年からはパワーユニットに年間1億3000万ドルのコストキャップが導入され、設計、製造、供給に関わるすべてのコストが対象になります」

    「これは非常に重大なテーマであり、技術的に大きな変化が進む中で、パワーユニットサプライヤーの働き方そのものが大きく変わることを意味しています」

    「私たちは、これらの課題をしっかりと乗り越えられると確信しています。ホンダは1964年からF1で経験を積み重ねてきました。アストンマーティンとひとつのチームとして取り組むことで、新しいF1の時代において非常に競争力のある存在になれると考えています」

    渡辺康治は、電動出力の増加が2026年型パワーユニットの設計だけでなく、マシンの使い方そのものをどのように変えていくのかについても説明した。

    「出力配分が50対50になることで、より多くの電気エネルギーをどのように効率よく生み出し、蓄え、そしてどこでどの程度使うのかを決める必要があります」

    「これは新しい話ではありません。現行のパワーユニットでも、エネルギーをどこで回収し、どこで使うかを慎重に管理する必要がありますが、2026年にはそれがさらに重要になります」

    「エネルギーの使用パターンはコーナーごとに異なり、ひとつのサーキットだけでも何千ものパターンが存在します。私たちはHRCの中で、パワーユニットから得られる2万以上のデータフロー・パラメータを管理し、最適なエネルギー使用パターンを定義するソフトウェアを自社開発してきました」

    「こうした作業は、一般の方々の注目を集めるものではありません。しかし、走行テストが制限されている現代のF1において、私たちが開発しているデジタル技術やシミュレーションは、極めて重要な役割を果たしています」

    「特に2026年は電動エネルギーの比重が高まり、回生とデプロイの管理がさらに複雑になります。これは非常に大きな技術課題であり、現時点ではおそらくプロジェクトの中で最も重要な課題です」

    本田技研工業 F1 フォーミュラ1エンジン

    ホンダは現時点で、V6ハイブリッドパワーユニットを他チームに供給する予定はない。アストンマーティンとの唯一無二のパートナーシップこそが、勝利につながると考えているためだ。

    「現時点では、他チームへの供給は考えていません。私たちはアストンマーティンとともに勝利を目指すことに集中したいと考えています。将来的に、複数チームへの供給がフィードバックの面で有益だと判断した場合には、もちろん検討することになるでしょう」

    渡辺康治は、競技面だけでなく、市販車にも波及するF1由来のシナジーという観点からも、アストンマーティンとの提携がホンダにとって重要である理由を説明した。

    「100%持続可能な先進燃料への移行は、スポーツにとって重要であるだけでなく、持続可能な社会を実現する上でも幅広い意味を持っています。グローバルな自動車メーカーとして、カーボンニュートラルはホンダにとって非常に重要なテーマです」

    「アストンマーティンとの技術提携に加えて、アラムコやバルボリンとも協力関係を結んでおり、最先端の持続可能燃料と潤滑油の開発に緊密に取り組んでいます」

    「ここでアンディが、新たにストラテジーディレクターとして関わってきます。ホンダは、レース用燃料や潤滑油で蓄積してきた知見を共有しながら、非常に先進的な技術を一緒に開発しています」

  • 角田裕毅のF1復帰に悲観的見解「唯一の希望ホンダとのリンクが断たれた」

    角田裕毅のF1復帰に悲観的見解「唯一の希望ホンダとのリンクが断たれた」

    角田裕毅は、2026年シーズンに向けてレッドブルのレースシートを失い、F1フル参戦から一歩退く立場となった。この決定を受け、スカイスポーツのテッド・クラビッツは、角田裕毅の将来について「気の毒に思う」と語りつつ、再びF1のレースシートに戻る道は極めて険しくなったとの見方を示している。

    レッドブルは、レーシングブルズからアイザック・ハジャーを昇格させ、2026年は角田裕毅に代えて起用することを決断した。これにより、角田裕毅は2026年シーズン、レッドブルおよびレーシングブルズのリザーブドライバーとして登録される。

    レッドブルはこの12か月で3度目となるNo.2ドライバー交代を選択した。角田裕毅は2025年3月、リアム・ローソンとシートを入れ替える形でレッドブルに昇格したが、その前の2024年12月にはローソンがセルジオ・ペレスの後任として起用されていた。

    レッドブルは、2025年開幕2戦でマシン適応に苦しんだローソンに早々に見切りをつけ、再びレーシングブルズへ戻した。そして残る22戦と5回のスプリントイベントを角田裕毅に託し、マックス・フェルスタッペンのドライバーズタイトル獲得を支える役割を期待した。

    しかし、角田裕毅がレッドブルで挙げたポイントは22戦と5スプリントを通じてわずか30点にとどまった。これを受け、ミルトンキーンズのチームはアブダビでの最終戦を前に、2026年はハジャーをレーシングブルズから昇格させる決断を下した。ハジャーにとってはF1グリッドでの2期目となる。

    リザーブ転向がF1復帰の道を閉ざす可能性
    レッドブルは、2025年最終戦ヤス・マリーナを前に、2026年に向けてハジャーが角田裕毅に代わることを正式発表した。角田裕毅は2026年、レッドブルおよびレーシングブルズのリザーブドライバーに就任する。一方、リアム・ローソンは新契約を得て、姉妹チームでアービッド・リンドブラッドとコンビを組むことになった。

    クラビッツは、角田裕毅が2026年にレッドブルのリザーブドライバーという立場を受け入れたことで、F1のフル参戦シートに戻る可能性が事実上断たれたのではないかと危惧している。特に問題視したのは、角田裕毅がホンダとのつながりを「断ち切った」ように見える点だ。ホンダは2026年からレッドブルを離れ、アストンマーティンと組むことが決まっている。

    スカイスポーツのF1ポッドキャストで、クラビッツは次のように語った。

    「残念なのは、角田裕毅について一言触れさせてほしいということだ。良いドライバーで、F1にとって素晴らしいキャラクターで、感じのいい若者だ。でも、彼が再びF1のレースシートに戻れるかどうか、正直分からない。本当に戻ってほしいと思っているが、どうやって可能なのかが見えない」

    「彼はホンダのリザーブドライバーですらない。レッドブルのリザーブドライバーなんだ。つまり、アストンマーティンと何らかの形で復帰を目指すうえで役立ったかもしれないホンダとのリンクを、自ら断ち切ったように見える。だから、レッドブルの枠内に戻る未来も見えない」

    「彼の責任ではなかった」と擁護
    クラビッツは、角田裕毅が置かれた状況そのものが不運だったと強調する。

    「残念なのは、これは彼の責任ではなかったということだ。彼はレッドブルを助けるために、トロ・ロッソ、私がそう呼び続けているが、アルファタウリではなくレーシングブルズから移ってきた」

    「リアムとうまくいかなかったから彼が呼ばれ、チームが望むことはすべてやった。確かにイモラでのクラッシュは痛手で、そこから流れが決定づけられた部分はある」

    「それでも彼は、アブダビではランド・ノリスを芝生側に押し出そうとしたり、牽制したり、鼓舞したりと、できることはすべてやった。その結果、自分自身に5秒ペナルティが科された。それでもだ。だから私は本当に角田裕毅が気の毒だと思っている」

    角田裕毅 F1 ホンダ 本田技研工業

    ホンダ移籍が「命綱」と見られていた理由
    ホンダが2026年からアストンマーティンと組むことは、角田裕毅にとってF1に残るための「命綱」になると広く見られてきた。角田裕毅自身も「チャンスはあると思う」と語っているが、25歳の彼は2026年にどのカテゴリーで走ることになるのか、まだ分かっていない。

    角田裕毅は2021年、当時アルファタウリと呼ばれていたレーシングブルズでF1デビューを果たし、5年間にわたりF1で戦ってきた。ホンダは2017年から彼を支援し、2019年にレッドブル陣営入りする際も重要な役割を果たしてきた。角田裕毅は、ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト出身ドライバーの中でも、最も成功した存在の一人だ。

    将来的には、2027年にアストンマーティンでシートが空く可能性もある。フェルナンド・アロンソとランス・ストロールはいずれも2026年末で契約が切れる予定だからだ。ただし、アストンマーティンは2026年シーズンを通して、ジャック・クロフォードがリザーブドライバーを務めることをすでに確認している。

    角田裕毅が再びF1グリッドに戻るためには、多くの条件が味方する必要がある。報道によれば、ホンダは2026年も角田裕毅をF1に残すための契約案をレッドブルに提示したものの、レッドブル側がこれを拒否したとも言われている。ホンダは引き続き旧型車テスト(Testing of Previous Car/旧型車テスト)向けにエンジン供給を行う予定だ。

    レッドブルは2026年から初めて自社製パワーユニットを使用する。これは2020年にホンダがF1撤退を発表したことを受け、クリスチャン・ホーナーがレッドブル・パワートレインズを設立した結果である。その後、2026年F1レギュレーションを見据え、ホンダはアストンマーティンと新たなパートナーシップを結ぶことになった。