カテゴリー: ホンダF1

  • ホンダF1 PUハードウェア改良 アストンマーティン振動問題に根本対処へ

    ホンダF1 PUハードウェア改良 アストンマーティン振動問題に根本対処へ

    アストンマーティンとホンダは、2026年F1シーズン開幕から深刻な苦戦を強いられてきたが、マイアミGPに向けて重要な転機を迎えている。ホンダはパワーユニットにハードウェア変更を投入し、車体側でも改良が進められた。

    開幕3戦では振動問題とバッテリーの信頼性が大きな課題となり、グリッド最後尾に沈む場面もあった。こうした状況を受け、両者は短期的な対策だけでなく、根本的な改善に踏み込んでいる。

    ホンダPUに初のハードウェア変更 信頼性改善へ
    ホンダはこれまでメカニカルな対策を積み重ねてきたが、マイアミGPではついにハードウェア変更に踏み込んだ。

    F1トラックサイドエンジニアの折原伸太郎は、詳細こそ明かさなかったものの「信頼性のための変更」であることを認めている。今季はこれまで正式なスペック変更は行われておらず、今回が実質的な初のアップデートとみられる可能性もある。

    今回の変更の主目的は、ドライバーに不快感を与えていた深刻な振動の抑制と、バッテリーを含む信頼性の改善だ。性能向上ではなく、あくまでレギュレーション上許可されている信頼性改善の範囲に収まる。

    振動問題は“原因対処”へ シルバーストンでは不可能だった開発
    これまでの対策は、いわば症状を抑える応急処置に近いものだった。

    鈴鹿ではステアリングコラム周辺の試験パーツが振動低減に効果を示したが、これはレースには使用されず、マイアミにも持ち込まれていない。今回の変更は、振動の発生源そのものに対処することを狙ったものだ。

    マイク・クラックは次のように説明している。

    「振動を減らすための大規模なパッケージに取り組んできた。発生源だけでなく、ドライバーを含むすべてのシステムに対して対策を行っています」

    さくらの施設での“実車連動テスト”が転機に
    今回の改善の鍵となったのが、日本のさくらの施設で行われた開発だ。

    アストンマーティンは鈴鹿戦後にマシンを日本へ残し、ホンダは車体と接続した状態でエンジンをテストすることが可能になった。これまでできなかった「シャシー連動でのベンチテスト」が実現したことで、振動の原因解析が大きく進んだ。

    折原伸太郎は次のように語っている。

    「振動については良い進展がありました。そしてその対策を今回のイベントに導入しています」

    「バッテリー側でも良い進展があり、ドライバーの振動についても改善が見られています」

    さらに、折原自身が実際にマシンに乗り込んで振動を体感するテストも行われており、現場レベルでの検証が強化された。

    4週間での開発は限界も “大規模改良は進行中”
    もっとも、今回のアップデートが完全な解決策ではない可能性もある。

    折原は「大規模なハードウェア変更を実装するには4週間は短いです」と認めており、今回の改善はあくまで途中段階だ。それでも「さくらで非常に懸命な作業が行われました」と強調している。

    つまり、マイアミ仕様は“応急処置+本格改善の入口”という位置づけだ。

    パフォーマンス解放はFIA判断待ち ADUOも焦点
    現時点でホンダは、性能向上のためのアップグレードを投入できない。

    これはFIAが各メーカーのアップグレード枠(ADUO含む)をまだ確定していないためであり、シーズン中の開発制限の扱いも議論中だ。

    折原は将来の改善について問われると、

    「いくつかアイデアはありますが、説明はできません」

    と述べるにとどめている。

    つまり、現段階では「問題の特定と信頼性回復」が優先されており、本格的な性能改善は制度確定後に本格化する見通しだ。

  • ホンダF1救済のADUO規則修正案 投票が直前で停止 暗雲漂う

    ホンダF1救済のADUO規則修正案 投票が直前で停止 暗雲漂う

    2026年F1シーズンにおけるパワーユニット規則の焦点となっているホンダ救済策が、予想外の形で足踏みを強いられている。アストンマーティンとの新体制で苦戦が続く中、追加開発機会を与えるための規則修正案が検討されていたが、その採決が直前で停止されたことが明らかになった。

    この問題は単なる技術論争ではなく、各メーカーの利害が絡む政治的な駆け引きの様相も呈している。

    ホンダの苦戦は広く認識されている一方で、ライバルに有利となるルール変更への慎重姿勢が、今回の決定に影響を与えた可能性が高い。

    ホンダ救済の柱 ADUO規則緩和案の中身
    議論の中心となっているのは、ADUO(追加開発・アップグレード機会)制度の見直しだ。

    現行レギュレーションでは、ADUOによるアップグレードはシーズン内で累積できず、FIAが適格と判断した最初の1回に限って付与される仕組みとなっている。

    「ADUOのホモロゲーションアップグレードはシーズン内で累積されず、本条項の基準に従ってFIAが適格と判断した最初の機会にのみ付与される」と規則には明記されている。

    今回の提案は、この制限を緩和することで、ホンダに複数回の開発機会を与えるというものだった。これにより段階的な改善が可能となり、シーズン中の巻き返しを現実的なものにする狙いがあった。

    特に重要視されていたのがコストキャップ面での緩和であり、追加リソース投入によって開発の自由度を高める効果が期待されていた。

    PUAC投票は異例の「集計後停止」
    この規則修正案は、F1のパワーユニット諮問委員会(PUAC)で投票にかけられていた。

    PUACはFIAとFOMが合わせて1票を持ち、これに各エンジンメーカー(キャデラックを含む)が加わる構成となっている。

    規則変更には“スーパー・マジョリティ”が必要であり、FIA/FOMの賛成に加え、メーカー側では1社を除くすべての支持が求められる。

    当初、この投票結果はマイアミGP週末に公表される見込みだった。

    その中で、ホンダのトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアである折原慎太郎は、状況について次のように語っている。

    「我々はFIAの決定を待っている。最終的な判断には従うことになる」

    しかし、その後に明らかになったのは、メーカー側にも予期されていなかった展開だった。投票はすでに集計された後で停止され、公表自体が見送られたという。

    支持不足か 再調整の可能性
    この異例の判断について公式な説明は出されていないが、関係者の間ではいくつかの見方が浮上している。

    ひとつは、提案が必要な支持を得られなかった可能性だ。

    一部メーカーが現行案に難色を示し、修正なしでは賛成に回れない状況だったとみられている。

    これは、ホンダ救済の必要性が理解されつつも、競争バランスを崩すリスクへの警戒が依然として強いことを示している。

    ADUO適用タイミングも揺らぐ
    今回の問題は、ADUO制度全体の運用にも影響を及ぼしている。

    そもそも、どのメーカーにADUOが適用されるかを判断する最初の基準時期についても確定していない。

    カナダGP後まで延期される可能性と、当初の「第6戦終了後(現在はモナコGP)」を維持する案が並存している状況だ。

    この不確定要素は、開発スケジュールを左右する重大な問題であり、ホンダにとっては巻き返しのタイミングそのものが揺らいでいることを意味する。

    規則変更が実現するかどうか、そしてその内容がどこまで踏み込んだものになるのか。今回の投票停止によって、ホンダ救済を巡る議論は新たな局面に入った。

    Source: The Race

  • アストンマーティン・ホンダF1 マイアミGPで車体軽量化とPU改良も効果限定

    アストンマーティン・ホンダF1 マイアミGPで車体軽量化とPU改良も効果限定

    アストンマーティンはマイアミGPを前に、AMR26に複数の改良を投入した。ホンダ製パワーユニットのハードウェアアップデートに加え、車体の軽量化やドライバビリティ改善など、幅広い対策が施されている。

    ただし、その内容はあくまで最低限の競争力確保を目的としたものであり、ポイント争いに直結するような大幅な戦力向上には至っていない。現場責任者の発言からも、依然として根本的な課題が残されていることが明らかになった。

    振動対策へPUハードウェア改良 さくらの施設で継続開発
    アストンマーティンのトラックサイド責任者マイク・クラックは、今回のアップデートの背景について次のように説明した。

    「我々はレース後にマシンをさくらの施設へ残し、抱えている問題に取り組み続けた。そして今回、信頼性を改善するためのパッケージを持ち込んだ」

    ホンダのトラックサイド責任者である折原慎太郎も、振動対策の進展について言及している。

    「振動を測定するための静的テストを実施し、多くのデータを収集することができました」

    「パワーユニットのハードウェア面でも改善を行っています」

    今回の改良の中心は、これまで問題となってきた振動の低減にある。パワーユニット単体だけでなく、車両全体での対策が進められている。

    軽量化とドライバビリティ改善も同時進行
    アップデートはパワーユニットにとどまらず、シャシー側にも及んでいる。クラックは車両全体の改善についても言及した。

    「我々は信頼性だけでなく、車重やドライバビリティの改善にも取り組んだ。それは大きな課題だった」

    「クルマには変更がある。振動を根本から低減するための取り組みに加え、すべてのシステムでその影響を軽減するための広範なパッケージを導入した」

    ステアリングを含む複数の領域に手が入れられており、ドライバーの扱いやすさ向上も狙いとなっている。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダF1

    それでも遠いポイント圏 首脳陣は現実認める
    今回の改良によってグリッド降格ペナルティが発生することはないが、戦力面での大幅な前進にはつながっていない。

    ホンダ側はFIAのADUO適用の可能性について問われても、「いくつかアイデアはあります」と述べるにとどめ、具体的な方向性は明かさなかった。

    一方でクラックは現状を冷静に受け止めている。

    「シーズン中に大きく差を縮めるのは非常に難しい。これは開発競争だ。我々は競争力を持つチームであり、グリッド後方にいるべきではない」

    「改善は必要だが、同時に現実的でなければならない。経験豊富な2人のドライバーが後方にいる状況にはフラストレーションがあるし、それをマネジメントしなければならない」

    改良は確かに進んでいる。しかし、それは巻き返しというよりも“最低ラインへの復帰”に近い。AMR26の根本的な課題は、依然としてチームの前に立ちはだかっている。

    Source: AS

  • なぜホンダPUだけ振動?アストンマーティンF1で共振が起きている理由

    なぜホンダPUだけ振動?アストンマーティンF1で共振が起きている理由

    アストンマーティン(アストンマーティンF1)が2026年シーズン序盤に抱えている振動問題について、ひとつの疑問がある。なぜホンダPUだけに症状が出ているのか、という点だ。

    同じ新世代パワーユニットを使用するレッドブルやアウディでは大きな問題が報じられていない中で、アストンマーティンだけが振動に苦しんでいるように見える。

    この現象は本当にホンダPU固有の問題なのか。それとも別の要因があるのか。現時点で出ている情報と過去の事例をもとに整理してみる。

    PU単体ではなく“実車でだけ悪化”している
    まず気になるのは、振動がエンジン単体テストでは目立たず、実車で顕著になっている点だ。

    この点は、問題の本質を示している。もしパワーユニットそのものに根本的な欠陥があるのであれば、ダイナモ上のテスト段階で症状は再現されるはずだ。

    しかし実際にはそうなっていない。つまり振動はPU単体ではなく、車体と組み合わさることで初めて問題として顕在化していると考えられる。

    エンジンマウントやギアボックス、サスペンション、さらにはフロア構造まで含めた“統合された状態”の中で、振動が増幅されている構図だ。

    ニューウェイ設計の“攻め”が影響しているのか
    AMR26はエイドリアン・ニューウェイが関与したとされる、非常に攻めた設計思想のマシンとみられている。

    空力性能を最優先したタイトなパッケージングや独自性の強い構造は大きなポテンシャルを秘める一方で、振動の逃げ場を制限する方向に働く可能性がある。

    さらに、現時点では最低重量を上回る状態にあるとされ、構造の最適化が完全に煮詰まっていない段階にある可能性もある。こうした設計途中のバランスが、振動の伝達や増幅に影響していると見る方が自然だ。

    共振が実車で発生している
    今回の現象を説明するうえで最も重要なのが共振だ。

    2026年のパワーユニットは電動比率の増加によってトルクの出方が複雑化しており、周期的な振動が発生しやすい特性を持つ。

    この振動と車体構造の固有振動数が一致すると、振動は一気に増幅される。

    ダイナモでは問題が出ず、実車でのみ症状が現れているという事実を踏まえると、アストンマーティンではこの共振が実際に発生していると考えるのが自然だ。

    ホンダF1 アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    ホンダは過去にも同じ現象を経験していた
    さらに注目すべきは、ホンダ自身が過去に同様の現象を経験している点だ。

    2017年に公開された開発レポートの中で、ホンダはダイナモでは発生しなかった振動が実車で発生した事例を説明している。

    当時はダイナモ上ではパワーユニットが剛性の高い状態にあるため共振は起きなかったが、実車ではギアボックスやタイヤと組み合わさることで慣性モーメントが変化し、その結果として共振が発生したとされている。

    つまり振動はパワーユニット単体の問題ではなく、車体との組み合わせによって初めて顕在化した現象だった。

    今回との共通点と違い
    この2017年のケースと今回の状況はよく似ている。

    いずれもダイナモでは問題が出ず、実車で振動が発生し、車体との組み合わせによって共振が起きている点は共通している。

    ただし当時は新コンセプト導入直後であり、パワーユニット自体の設計や信頼性にも課題があったのに対し、今回は車体側の設計や統合の影響がより大きい可能性がある。

    同じ共振という現象でも、その背景は必ずしも同じではない。

    レッドブルやアウディで起きていない理由
    同じく初年度のパワーユニットを使用しているレッドブルやアウディで問題が顕在化していない点も、この現象を理解するヒントになる。

    両者はパワーユニットの特性を前提に車体設計を進めているとみられるが、アストンマーティンは新しいPU、新体制、新コンセプトが同時に立ち上がっている段階にある。

    統合設計が完全に最適化されていない状態でシーズンに入っていることが、共振という形で表面化している可能性は高い。

    “ホンダだけの問題”ではない
    ここまで見てくると、今回の振動問題は単純にホンダPUの問題と断定するのは適切ではない。

    むしろ、パワーユニットの振動特性とシャシー構造、そして設計思想が重なった結果として、アストンマーティンという特定の条件下で共振が発生していると考える方が自然だ。

    過去にも同様の現象が確認されていることを踏まえれば、「ホンダだけに起きている異常」と見るのではなく、パワーユニットと車体のマッチングによって生じた現象と捉えるべきだろう。

    今回の共振は、F1における統合設計の難しさを改めて示している。

  • ホンダF1救済へADUO規則見直し 「1回制限」撤廃案が浮上

    ホンダF1救済へADUO規則見直し 「1回制限」撤廃案が浮上

    ホンダF1が、2026年F1シーズン序盤の苦境から立て直すため、追加開発機会をさらに得られる可能性が浮上している。The Raceによると、F1首脳陣とパワーユニットメーカーの間で、ADUO(追加開発・アップグレード機会)の運用を見直す議論が進められている。

    アストンマーティンとの新体制で開幕を迎えたホンダは、振動問題によってパフォーマンスと信頼性の両面で苦しんでいる。

    現行のADUO規則でも一定の救済措置は用意されているが、ホンダの遅れが大きい場合、それだけでは十分な回復につながらない可能性がある。

    ホンダだけを助けるべきとの空気
    F1は極めて競争の激しい環境であり、ライバルを助ける規則変更には本来慎重な姿勢が強い。それでもパドック内では、ホンダを現在の位置に留めておくことに誰も利益を得ないとの見方が広がっているという。

    メルセデスのチーム代表であるトト・ヴォルフも先週、アップグレード制度について、実質的にホンダだけが対象になるべきだとの考えを示した。

    「私には、問題を抱えているエンジンメーカーが1社あるように見える。我々はそこを助ける必要がある」

    「だが、それ以外はほぼ同じ範囲にいる」

    ADUOの“1回限り”規定が焦点
    現行規則では、パワーユニットメーカーがシーズン中の指定された評価期間で基準値から遅れていると判断された場合、追加開発機会が認められる。

    内燃エンジンがベンチマークから2%遅れていれば、2026年に1回、2027年に1回のアップグレードが可能になる。遅れが4%以上であれば、2026年に2回、2027年にさらに2回のアップグレードが認められる。

    さらにADUOの対象となったメーカーには、パワーユニットのコストキャップ上の追加支出枠や、ベンチテストの自由度も与えられる。

    ただし現行規則では、ADUOはシーズン中に累積しない。つまり一度追加開発機会を得たメーカーは、そのシーズン中に再び同じ救済を受けることはできない。

    ホンダF1 本田技研工業

    追加救済ならホンダの回復幅が拡大
    今回議論されているのは、この上限を見直す案だという。これにより、大きく遅れているメーカーが、1度の救済だけで回復を制限される状況を避けられる可能性がある。

    たとえばホンダが2026年の第2評価期間でも4%以内の性能差に収まらなかった場合、再び開発機会とコストキャップ上の自由度を得られる可能性がある。そうなれば、さらなるアップグレード投入も認められることになる。

    ただし、この規則変更にはパワーユニット諮問委員会での特別多数の支持が必要となる。現在の5メーカーのうち4社に加え、FOMとFIAの支持が必要とされる。

    マイアミGPでは短期対策を投入
    ホンダはADUO規則の見直しを待つ一方で、短期的な改善作業も続けている。

    ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアである折原伸太郎は、日本GP後にアストンマーティンAMR26の1台をさくらの研究開発施設に残し、振動問題の理解を進めたことを明らかにした。

    「いくつか進展があり、マイアミ、そしてシーズン後半に向けてさらなる対策を実施できるようになりました」

    「現実的には、この進展がトラック上でのパワーユニット性能に目に見える影響を与えることはありません。ですから、ここで大きな前進を期待すべきではありません」

    ホンダにとって、マイアミGPでの対策はあくまで信頼性と問題理解に向けた一歩にとどまる。より大きな回復には、ADUO制度の運用見直しを含めた中長期的な開発機会が鍵になる。

  • アストンマーティン・ホンダF1に拡大する課題 ギアボックスにも新たな懸念

    アストンマーティン・ホンダF1に拡大する課題 ギアボックスにも新たな懸念

    アストンマーティン・ホンダの2026年F1シーズン序盤の苦戦は、ホンダ製パワーユニットや冷却面の課題だけにとどまらない可能性がある。スペイン紙『Marca』によれば、アストンマーティンが今季から導入した初の自社製ギアボックスも、新レギュレーション下で要求される負荷に苦しんでいるという。

    シルバーストンを拠点とするアストンマーティンは、これまでメルセデスから供給を受けていたトランスミッションから自社設計へと切り替えた。

    しかし、エネルギー回生の比重が高まった2026年F1では、パワーユニット、ギアボックス、ドライバーの操作が密接に連動するため、ひとつの弱点が車全体のパフォーマンスに波及しやすい状況になっている。

    回生重視のドライビングがギアボックスに新たな負荷
    2026年F1のドライビングで重要な特徴のひとつが、エネルギー回生を最大化するための積極的なダウンシフトだ。ブレーキング中やコーナー進入時に、時には1速まで落とすような操作が使われ、バーレーンテストではマックス・フェルスタッペンがいち早くこのテクニックを習得したドライバーのひとりとされた。

    一方で、この操作はギアボックスとパワーユニットの統合に大きな負荷をかける。カルロス・サインツは、この繊細なバランスについて次のように語っている。

    「パワーユニット、ギアボックス、そしてドライバーの好みの統合は、閉じたループでなければならないと強調したい。その2つ、あるいは3つの要素のうちひとつでも望み通りに機能しない瞬間に、問題が始まる。だから全員が適応し、正しい道を見つけなければならない」

    『Marca』によると、アストンマーティンのギアボックスは現在の形式で求められる高回転・低ギアでのコーナリングやブレーキングの負荷に「対応できていない」とされる。同紙が引用した専門家は、全面的な再設計には最大6か月を要する可能性があり、解決は7月頃までずれ込む可能性があると指摘している。

    この時期は、フェルナンド・アロンソが以前から語っていた「アストンマーティンが本当に競争力を発揮するのはシーズン後半になる」という見立てとも重なる。

    ホンダPUの振動問題が耐久性にも影響か
    もうひとつの懸念材料とされているのが、ホンダの内燃エンジンだ。報道では、高回転域で大きな振動が発生しているとされ、この問題がギアボックスの耐久性にも影響している可能性がある。

    2026年F1エンジンはすでに3月1日にホモロゲーションを迎えており、開幕序盤においてハードウェア面での大幅な仕様変更は事実上不可能な状況となっている。パフォーマンスを引き出すためのソフトウェア更新は進められているが、開幕数戦では物理的なエンジン仕様は変わらない見通しだ。

    シーズン後半には、成績が劣るメーカーを対象としたFIAのバランスメカニズムによって部分的な救済が得られる可能性もある。ただし、パドック内では、アストンマーティンが何らかの出力差を2027年まで抱える可能性もささやかれている。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    デ・ラ・ロサ「すべてはパッケージ」
    アストンマーティンのチームアンバサダーを務めるペドロ・デ・ラ・ロサは、特定の部品だけを原因とする見方には踏み込まなかった。

    「今はすべてがパッケージだ。新しいレギュレーションでは、ブレーキング性能がストレートスピードに影響する。なぜなら、ブレーキング中にどれだけ回生できるか、そしてブレーキング時の安定性が非常に大きな意味を持つからだ」

    「コーナーの頂点でもう1段ギアを落とすことができれば、次のストレートでより多くのエネルギーを使える。僕たちは、全体としてマシンをもっと堅牢にする必要があるだけだ」

    この発言が示すのは、アストンマーティン・ホンダの問題が単なるエンジン出力や冷却不足ではなく、ブレーキング、回生、ギア選択、車体安定性まで含めた統合性能の課題であるという点だ。

    アロンソは後半戦の改善に期待
    一方で、フェルナンド・アロンソは公には楽観的な姿勢を崩していない。

    「マシン発表のとき、僕たちはシーズン序盤に遅れを取るかもしれないが、後半戦は良くなるはずだと言った。今でもその意見は変わっていない」

    「メルボルンに持ち込むマシンは、テストしているものとは大きく異なるものになる。僕たちには30年のF1経験を持つ人物がいる。エイドリアン・ニューウェイはその間ずっと支配してきた。だから、いずれ僕たちは最高のマシンを手にする。時間の問題だ」

    アストンマーティン・ホンダにとって、2026年F1シーズン序盤は想定以上に複雑な課題との戦いになっている。ホンダPUの振動、ギアボックスの耐久性、回生を軸にした新しいドライビングへの適応。そのすべてがひとつのパッケージとして機能しなければ、アロンソが見据える後半戦の反攻も現実にはならない。

  • アロンソ ホンダF1に理解「忍耐が必要」アストンマーティン再建へ覚悟

    アロンソ ホンダF1に理解「忍耐が必要」アストンマーティン再建へ覚悟

    フェルナンド・アロンソが、2026年限りで満了を迎える契約の先について言及し、アストンマーティン残留の可能性を示唆した。現時点で明確な決断は下していないものの、現役続行への強い意欲をにじませている。

    ホンダとの新パートナーシップで苦戦が続く中でも、アロンソはチームの現状を冷静に受け止め、長期的な視点での成長を強調。短期的な結果にとらわれない姿勢とともに、プロジェクトへの信頼を示した。

    「引退は非常に難しい決断になる」継続への強い意思
    フェルナンド・アロンソは、現役生活に対する率直な思いを明かし、引退が容易な選択ではないことを強調した。

    「自分のやっていることが大好きだし、レースが大好きだ。3歳のときに初めてレースをして、今は44歳だから、人生の41年間をステアリングの後ろで過ごしてきた」

    「だからレースをやめる瞬間が来たとき、それは非常に厳しい決断であり、受け入れるのが難しいものになるだろう」

    「時間が教えてくれると思う。自分で感じることになるだろうが、今のところその時が来たとは感じていない。競争力もあるし、モチベーションもあるし、運転しているときは幸せだ」

    「だから、できればこれが最後のシーズンではないといいと思っている」

    将来は未定も「まだその時ではない」
    一方で、具体的な契約延長については明言を避け、あくまで自身の感覚に委ねる姿勢を示した。

    「言うのは難しい。自分で感じなければいけないが、今のところその時はまだ来ていないと思う」

    ホンダとの苦戦も「忍耐が必要」
    アストンマーティンとホンダの新体制は厳しいスタートを強いられているが、アロンソはパートナーへの信頼を崩していない。

    「ホンダがどれだけ懸命に取り組んでいるかは分かっている。みんなにとって難しい状況だが、チームとして団結し、前進するためにできるすべてのことをやっている」

    結果よりプロセスを重視する再建フェーズ
    現在のフェーズでは、順位そのものの価値は相対的に低いとし、長期的なプロジェクトとしての取り組みを強調した。

    「今年は22人が戦っている。1人が勝ち、残りの21人は厳しいシーズンになる」

    「自分にとっては、3位でも5位でも17位でも、もはやほとんど意味はない。優勝以外の順位はすべて同じように難しいものに感じる」

    「僕たちはこのチームとの旅の始まりにいる。理想的なスタートではなかったが、これはアストンマーティンとホンダの協力関係の初年度だ。これを乗り越えなければならないし、自分もできる限り貢献するつもりだ」

    Source: GMM

  • ニューウェイの“極端設計” アストンマーティンF1 AMR26の狙いと代償

    ニューウェイの“極端設計” アストンマーティンF1 AMR26の狙いと代償

    2026年F1シーズンに向けて投入されたアストンマーティンのAMR26は、エイドリアン・ニューウェイによる設計思想が色濃く反映されたマシンだ。日本GPからマイアミGPまでのインターバルを利用した技術分析により、その構造がこれまで以上に大胆であることが明らかになっている。

    現時点でのパフォーマンスは苦戦が続いているものの、その設計には明確な意図が存在する。

    特に空力効率を極限まで追求した構成は、従来のセオリーを大きく逸脱するものであり、成功すれば大きなアドバンテージを生む一方で、実装には高いリスクを伴う。

    極端なアンダーカットが生む空力ポテンシャル
    AMR26の最大の特徴のひとつが、モノコックとサイドポッドの間に設けられた大きなアンダーカットだ。これはグリッド上でも最も大きい部類に入り、リアのコークボトル形状へ向かう気流を加速させる狙いがある。

    この設計により、フロア下の空気の流速を高め、結果としてマシン全体のダウンフォース増加が期待されている。ただし、そのためには気流が剥離しないよう精密な制御が不可欠であり、設計の難易度は極めて高い。

    さらに、サイドポッド内部のラジエーターは、空力形状に合わせて横方向・縦方向の両方に湾曲させられている。これにより外側のボディワークは極端なダウンウォッシュ形状を実現しているが、そのぶん内部パッケージングは非常にタイトになっている。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム AMR26

    一体型サスペンションという大胆な選択
    フロントサスペンションでは、上下のウィッシュボーンを左右分割せず、1本の構造としてノーズを貫通させる“一体型”を採用している。現行グリッドでは唯一の構成だ。

    この設計は空力的には有利とされる。構造をスリム化できることで気流の抵抗を減らし、よりクリーンなエアフローを確保できる可能性がある。また剛性が高まれば、タイヤ接地の精度向上にもつながる。

    一方でデメリットも明確だ。単一構造であるがゆえに荷重集中によるたわみが大きくなりやすく、それを抑えるための補強が重量増につながる可能性がある。また左右独立の調整ができないため、セットアップの自由度は制限される。

    さらに、損傷時の交換作業も複雑で時間がかかるという実用面での弱点も抱えている。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム サスペンション

    マルチリンク化で弱点を補う設計思想
    AMR26のサスペンションは、見た目こそウィッシュボーンだが、実際にはマルチリンク構造となっている。前後のアームが独立してハブに接続されることで、ステアリング時のタイヤ接地特性をより細かく制御できる。

    これにより、トーやキャンバー、キャスターといったセットアップ要素をより独立して調整できるようになり、一体型サスペンションの弱点を補う狙いがある。

    結果として、極端な空力設計と機械的な制御精度の両立を図る構成となっているが、その成立には膨大なデータ解析と精密な設計が不可欠となる。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム 設計思想

    “成功すれば革命”だが成立は困難な設計
    AMR26は、空力効率を最優先に据えた結果として、従来の設計バランスを大きく崩したマシンとなっている。各要素は理論的には高いポテンシャルを持つが、それらを実走で成立させるには非常に高い完成度が求められる。

    現状のパフォーマンス不足は、その“極端さ”ゆえの難しさを示しているとも言えるが、裏を返せば開発が進めば大きく化ける余地を残している構成でもある。ニューウェイが描いたこの挑戦的なコンセプトが、今後どこまで現実の速さへと結びつくかが焦点となる。

    Source: Formula1.com

  • ホンダF1 マイアミGP展望 振動対策に進展も「大きな飛躍は期待せず」

    ホンダF1 マイアミGP展望 振動対策に進展も「大きな飛躍は期待せず」

    ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアである折原伸太郎が、2026年F1第4戦マイアミGPを前にアストンマーティンの現状と今週末に向けた見通しについて言及した。

    2026年F1第4戦マイアミGPは、アメリカ・フロリダ州マイアミのマイアミ・インターナショナル・オートドロームで現地時間5月1日(金)に開幕する。初日はフリー走行1とスプリント予選、2日(土)にスプリント決勝と公式予選、3日(日)に決勝レースが行われる。

    振動問題と信頼性の課題に苦しむAMR26は、ここまでの開幕4戦で中国GPのスプリントを含めて完走はわずか1回にとどまっている。

    日本GP以降の約4週間、ホンダとアストンマーティンは問題解決に向けて開発を進めてきたが、折原はマイアミGPで即座にパフォーマンス向上が表れる可能性については慎重な姿勢を示した。振動低減に向けた対策は強化されているものの、短期的に目に見える改善が現れる可能性は高くないとの見方だ。

    約4週間の開発で進展も“即効性なし”の現実
    折原は、日本GP後のインターバルについて、開発面では一定の前進があったと説明する。

    「日本GP以降、レースのない長いインターバルとなりましたが、その約4週間は非常に充実した時間になりました。日本とイギリスで、アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラワンチームと緊密に連携しながら多くの作業を進めてきました。」

    「日本GPでは、我々の取り組みが正しい方向に進んでいると確認でき、今後も前進し続けるための大きなモチベーションとなりました。」

    さらに、実機を用いた検証として、鈴鹿で走行したAMR26の1台をさくらの施設に残し、振動低減と信頼性向上に向けた静的テストを実施した。

    「その後、鈴鹿でレースを走行したAMR26のうち1台を初めてSakuraに残し、振動の低減と信頼性の向上を目的に、静的テストを行い、一定の進歩が見られました。」

    「これにより、マイアミおよび今後のシーズンに向けて追加の対策を投入できる見込みです。ただし、この進展がパワーユニットのパフォーマンスに目に見える形で影響することはないため、ここでの大きな飛躍は期待しないほうが現実的です。」

    ホンダ / ホンダ・レーシング

    低速コーナー主体のマイアミが突きつける課題
    マイアミ・インターナショナル・オートドロームは、2026年シーズンの中でも特徴的なレイアウトを持つサーキットのひとつだ。

    「マイアミは、2026年カレンダーの中で、初めて低速コーナーが多く登場するサーキットです。2つの長い全開区間と、複数の低速コーナーを併せ持つユニークなレイアウトで、マシンセッティングの最適解を見つけるうえで非常に興味深いコースです。」

    特に重要となるのが、低速域でのドライバビリティとエネルギーマネジメントだ。

    「PUの観点では、低速区間でのドライバビリティが重要になるため、このセクターにおけるエネルギーマネジメントの最適化が、パフォーマンス最大化の大きな鍵となります。また、この区間でのエネルギーロスをいかに削減するかも重要なポイントです。」

    高温条件とスプリント週末が試す総合力
    さらに、マイアミは今季初の高温条件でのレース週末となる。

    「加えて、マイアミは今シーズン最初の高温条件での週末でもあります。新レギュレーションの下でPUの温度を適切に管理することも不可欠です。」

    加えて、スプリントフォーマットによる準備時間の制約も大きな要素となる。

    「今週はスプリントレースも実施されるため、フリー走行は90分間のFP1のみです。限られた時間で、スプリント予選に向けて新レギュレーション下におけるすべてのデータ設定を最適化し、かつ最適な冷却仕様を決定する必要があるため、FP1はより中身の濃いセッションになると考えています。」

    限られた走行時間、低速主体のコース特性、そして高温環境という複数の要素が重なるマイアミGPは、単なる第4戦にとどまらず、各チームの総合力が問われる週末となる。

  • ホンダF1 さくらで“24時間開発”続行 マイアミGPへ総力対応

    ホンダF1 さくらで“24時間開発”続行 マイアミGPへ総力対応

    ホンダF1が、日本GP後も開発の手を緩めていない。ホンダ・レーシング(HRC)とアストンマーティンは、日本のさくら研究所で連携し、問題解決に向けた対策作業を継続している。

    次戦マイアミGPを前に、現状の改善には時間がかかることを認めつつも、現場は“24時間体制”で開発を進めている。ホンダ側の技術責任者がその舞台裏を明かした。

    さくらで続く“24時間体制”の対策開発
    ホンダF1 トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアの折原伸太郎は、現在の開発状況について次のように説明した。

    「みなさんご存知の通り、バーレーンGPとサウジアラビアGPは延期となりましたが、それでも作業が止まったわけではありません」

    「日本GPの後、アストンマーティン・アラムコF1チームのメンバーとホンダ・レーシングは、日本のさくらにあるHRC研究開発センターで共同作業を続けています」

    「東京から約3時間の場所にあるこの施設で、私たちは対策強化に向けて24時間体制で取り組んでいます」

    ホンダ(本田技研工業) メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    改善には時間も マイアミGPへ継続対応
    折原伸太郎は、現状の課題が短期で解決するものではないとしながらも、チームとしての取り組み姿勢を強調した。

    「この問題の解決には時間がかかることは理解していますが、私たちは引き続き協力して懸命に取り組んでいきます」

    「次のF1レースであるマイアミでお会いしましょう。2回目のスプリントウィークエンドとなる“サンシャインステート”でお会いできるのを楽しみにしています。ではまた」