カテゴリー: ホンダF1

  • ホンダF1 “約30億円救済”の実態 FIA新制度は「未来予算の前借り」

    ホンダF1 “約30億円救済”の実態 FIA新制度は「未来予算の前借り」

    ホンダが2026年F1パワーユニットで深刻な苦境に直面するなか、FIAが導入する“救済措置”の詳細が明らかになってきた。最大1900万ドル(約30億円)の追加支出枠は一見すると大型支援に見えるが、その実態は単純な優遇策ではない。

    制度の核心は、“未来の開発予算を前借りする”仕組みにある。

    今回の措置は、2026年F1レギュレーションに盛り込まれた「追加開発・アップグレード機会(ADUO)」制度に基づくものだ。これは、新規パワーユニットメーカーが競争力で大きく遅れた場合、一定の追加開発機会を与えるために導入された救済システムである。

    ホンダは最大級の支援対象になる可能性
    ADUOでは、基準となるメーカーから2%以上遅れていると判断された場合、追加アップグレードが認められる。

    2〜4%の遅れなら今季1回、翌年1回。4%以上なら今季2回、2027年にも2回の追加開発が可能となる。

    さらに、ベンチテスト時間も遅れ幅に応じて拡大される。

    最大230時間の追加ベンチテスト
    ベンチテスト時間は、性能差に応じて段階的に追加される仕組みとなっている。

    ■ 2〜4%遅れ:追加70時間
    ■ 4〜6%遅れ:追加110時間
    ■ 6〜8%遅れ:追加150時間

    従来は、8%以上遅れているメーカーに対する追加時間は190時間が上限だった。

    しかし今回の制度変更で、その上限が撤廃された。

    これにより、10%以上遅れているメーカーには最大230時間の追加ベンチテストが認められることになる。

    現時点でホンダは、この“最大区分”に該当する可能性があるとみられている。

    “約30億円救済”の内訳
    話題となっている1900万ドル(約30億円)の追加支出枠は、2つの制度で構成されている。

    まず1つ目が、コストキャップ上限の調整による追加支出余地だ。

    これまでの制度では、2〜4%遅れのメーカーに300万ドル、8%以上遅れのメーカーに800万ドルまで追加支出が認められていた。

    しかし今回の変更で、10%以上遅れているメーカーには最大1100万ドルまで拡大されることになった。

    そして、さらに注目されているのが、追加800万ドル分の“ローン型”支援制度である。

    実態は“未来予算の前借り”
    この800万ドルは、単純に与えられる救済金ではない。

    ルール上では「救済措置」とされているが、実際には将来のコストキャップ枠を前倒しで使う仕組みとなっている。

    たとえば2026年と2027年に追加で800万ドルを使った場合、その分は2028年以降の3年間で返済しなければならない。

    しかも返済は単年集中が認められておらず、3年間に分散する必要がある。

    各年には総額の20〜50%を割り当てなければならず、会計処理で一気に帳消しにするような抜け道も禁止されている。

    つまりホンダは、短期的に大規模投資を行えば、その代償として将来の開発予算が圧迫されることになる。

    ホンダ F1 本田技研工業

    前倒し重視か 将来重視か
    ルールでは、メーカー側がどれだけ前倒し支出を行うかを選択できる。

    たとえば、800万ドルを2026年と2027年に均等配分して使う方法もあれば、初年度に600万ドル、翌年に200万ドルという形で“前倒し重視”の投資を行うことも可能だ。

    ただし、その分だけ将来的な返済負担は重くなる。

    返済は3年間に分散しなければならず、1年で全額を返済することも認められていない。

    つまり、短期的な回復を優先すればするほど、後年の開発余力は削られていくことになる。

    FIAとライバル勢の“絶妙なバランス”
    今回の制度は、ホンダを一方的に優遇するものではない。

    ライバルメーカーは、ホンダがかつてマクラーレン時代の苦戦から立て直し、レッドブルとともにタイトル獲得へ到達した歴史を知っている。

    そのため、今回の制度設計では「短期回復のための支援」は認めつつ、「将来的な独走」にはつながらないよう制約が設けられた。

    ホンダにとっては、今すぐ開発を加速させて競争力回復を急ぐのか、それとも将来の開発余力を残しながら慎重に進めるのか、大きな戦略判断が迫られる。

    最初の重要な判断材料となるのは、次戦カナダGP後に予定されているFIAの性能評価だ。

    そこでホンダがどれほどの遅れと認定されるかによって、実際に利用できる救済措置の範囲が決まることになる。

  • アストンマーティンF1 “AMR26を日本残留” ホンダ振動問題克服の舞台裏

    アストンマーティンF1 “AMR26を日本残留” ホンダ振動問題克服の舞台裏

    アストンマーティンとホンダが2026年F1シーズンで直面していた“深刻な振動問題”に対し、異例ともいえる対策を講じていたことが明らかになった。

    マイアミGPでは2台とも完走を果たし、フェルナンド・アロンソも「振動は解消された」と手応えを口にした。その裏では、日本GP後にアストンマーティンが1台のAMR26を日本に残し、ホンダのさくら施設で静的テストを行うという異例の対応が取られていた。

    ホンダ単体では発生しなかった“破壊的振動”
    2026年型パワーユニットを巡っては、シーズン開幕当初からアストンマーティン・ホンダが深刻な信頼性問題に苦しんでいた。

    問題の中心にあったのは、シャシーとパワーユニットが組み合わさった際に発生する“ハーモニック共振”だった。ホンダ側のテストベンチでは確認されず、実車に搭載した際のみコンポーネント破損につながる振動が発生していたという。

    ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治は日本GP時点で、単体テストでは問題が確認されていないことを説明していたが、今回のマイアミGPではその対策が大きく前進した形となった。

    アストンマーティンが日本にAMR26を“置いて帰国”
    今回の改善において大きな役割を果たしたのが、アストンマーティンが日本に1台のAMR26を残したことだった。

    マイク・クラックは、ホンダがさくら施設で実車を用いたダイノテストを実施したことを明かした。

    「我々は1台のレースカーをさくらに残してダイノテストを行った」

    「ホンダは巨大企業であり、こうした問題の解析においてレーシングチーム以上の経験を持っている」

    「実車があったことで、振動の伝達経路を調査できた。これは本物のレースカーでしか確認できない部分だった」

    クラックは、シャシー側とパワーユニット側の両方で対策を進めた結果、マイアミで大きな改善が見られたと説明した。

    アロンソ「今の問題はギアボックス」
    マイアミGP後、フェルナンド・アロンソはパワーユニットについては「問題なかった」と説明。その一方で、新たな課題としてギアボックス挙動を挙げた。

    「問題はなかった。正直、週末を通して問題だったのはエンジンよりギアボックスだった」

    「ダウンシフトやアップシフト時の挙動がかなり奇妙だった。あまりコントロールできていなかった」

    「だからカナダGPへ向けた修正の最優先事項はギアボックスだ」

    アロンソは、重ブレーキングが多いカナダではギアボックス改善が必要になると語っている。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    マイアミでアップデートを投入しなかった理由
    マイアミGPでアストンマーティンが空力アップデートを投入しなかった理由も、この信頼性対策にあった。

    シャシーや空力を変更すると、振動問題との因果関係を切り分けづらくなるため、チームはA/B比較を優先。まずは“正常に走れる基準”を確立することを最優先した。

    その結果、スプリントと決勝を通じて大きなトラブルなく走破できたことは、チームにとって大きな前進となった。

    ようやく始まった“本当の開発”
    これまでのアストンマーティン・ホンダは、性能開発以前に信頼性問題への“火消し”に追われていた。

    しかしマイアミで一定のベースラインを確立できたことで、ようやく本来の性能開発やエネルギーマネジメント最適化へ進める段階に入った。

    HRCの折原伸太郎は次のステップについてこう語った。

    「次はエネルギーマネジメントやドライバビリティの最適化に集中できます」

    「まだパワーユニットには改善の余地が多く残されていますが、それが次のステップになります」

    クラックも「ようやく学習できる段階に入った」と説明する。

    「シーズン序盤から我々は走行距離で大きく遅れている」

    「しかし信頼性が確保されれば、他車とレースをしながら多くを学べるようになる」

    「タイヤ理解も含め、ようやく本来の開発サイクルに入れるようになった」

    マイアミGPで見えたのは単なる完走ではない。アストンマーティンとホンダが、ようやく“スタートライン”に立ったことを意味していた。

  • 角田裕毅 ハースF1移籍説で浮上した“ホンダ対トヨタ”問題

    角田裕毅 ハースF1移籍説で浮上した“ホンダ対トヨタ”問題

    角田裕毅の2027年F1復帰に向けた動きが注目を集めている。2025年限りでレッドブルのレギュラーシートを失った角田裕毅は、現在はレッドブルのリザーブ兼テストドライバーとして活動しているが、パドックではすでに来季の去就を巡る憶測が広がり始めている。

    その有力候補として名前が挙がっているのがハースF1チームだ。しかし、その移籍説には“日本メーカー同士の巨大なライバル関係”という複雑な事情が絡んでいる。

    角田裕毅は現在、マックス・フェルスタッペンやアイザック・ハジャーを舞台裏で支える役割を担っている。それでも本人はフルタイムでのF1復帰を目指しており、2027年に向けて複数チームとの関連が報じられている。

    中でもハースF1チームとの関係は以前から噂されてきた。小松礼雄代表が角田裕毅を高く評価しているとされ、エステバン・オコンのパフォーマンス次第ではシート交代の可能性も取り沙汰されている。

    ハースF1移籍の障害となる“トヨタとの関係”
    しかし、そこで浮上しているのがハースF1チームとトヨタの関係だ。

    トヨタはハースF1チームへの投資を拡大し、タイトルスポンサーとして深く関与している状況にある。そのため、ホンダ支援ドライバーである角田裕毅を受け入れることに対し、内部的な抵抗が生まれる可能性が指摘されている。

    ブラジル人ジャーナリストのジュリアン・セラソリはUOL Esporteで次のように語った。

    「私が気になるのはトヨタとホンダの問題です。トヨタが本当にホンダに一泡吹かせたいと思っているのか、あるいはホンダ側が角田裕毅をそこへ行かせるのかという点です。彼はホンダのドライバーですから。これは非常に大きなライバル関係です」

    「さらに同じ文脈として、トヨタはF1への投資を拡大しています。ハースへの投資だけでなく、自分たちの“角田裕毅”を育てるために若手ドライバー育成にも力を入れています」

    「もし角田裕毅を乗せるのであれば、『ではなぜ我々は自前の若手育成にこれだけの資金を投じているのか?』という疑問が内部で出てくるはずです」

    角田裕毅 ハースF1チーム トヨタ

    角田裕毅のF1復帰はハース以外にも可能性
    ハースF1チームとの結び付きは強く見える一方で、トヨタとの関係性が実際に障害となるのであれば、角田裕毅の復帰ルートは大きく制限される可能性もある。

    一方で、アルピーヌF1も候補として名前が挙がっている。フランコ・コラピントの将来には依然として不透明感があり、2026年末にドライバー市場が再び動く可能性もあるためだ。

    ただ、レッドブル復帰の道は現状では極めて厳しいとみられている。マックス・フェルスタッペンとアイザック・ハジャーの体制が機能しているうえ、レーシングブルズではアービッド・リンドブラッドの昇格期待も高まっている。

    2027年は、角田裕毅にとってF1キャリアの行方を左右する重要なシーズンになりそうだ。

  • ホンダ EV関連損失1.4兆円で4239億円赤字 北米計画見直し

    ホンダ EV関連損失1.4兆円で4239億円赤字 北米計画見直し

    ホンダは5月14日に発表した2026年3月期決算で、EV市場環境の急変を受けて四輪電動化戦略を大幅に見直したことを明らかにした。

    北米向けEVモデルの開発中止や製造終了、中国市場での商品計画修正などにより、EV関連損失は総額1兆4536億円規模に達した。営業損益は4143億円の赤字、最終損益も4239億円の赤字へ転落している。

    EV市場失速で戦略を全面修正
    ホンダは決算資料の中で、EV市場環境が「日々激しく変化し、先行きが不透明な状況」と説明した。

    特に米国では、EV補助金見直しや化石燃料規制の緩和によってEV市場の拡大スピードが鈍化。販売奨励金の増加やEV販売台数の減少が進み、中国市場では新興EVメーカーとの競争激化が進行しているという。

    こうした状況を受け、ホンダは北米で生産予定だった一部EVモデルについて、上市および開発中止を決定。共同開発していたEVモデルについても製造終了や生産台数削減に踏み切った。

    さらに2026年3月12日には、四輪電動化戦略そのものを見直し、追加のEV計画停止を決断したことも開示している。

    “1兆円超”のEV関連損失
    今回の決算で最大の焦点となったのは、EV関連損失の規模だ。

    ホンダは売上原価に1兆479億円、研究開発費に3978億円、持分法投資損益に1241億円などを計上。EV関連損失は総額1兆4536億円に達した。

    特に大きかったのは、北米EV計画の中止に伴う減損処理だ。

    北米EV向け製造設備や開発資産について、ホンダは「売却および他への転用は困難」と判断。回収可能価額をゼロ評価とし、5213億円の減損損失を計上した。

    加えて、上市前に開発中止となったEVモデルに関連する開発資産についても3314億円の除却損失を計上している。

    関税と米国政策転換も直撃
    決算資料では、米国政府の政策転換も重要な要因として挙げられている。

    ホンダは、関税やEV税制優遇措置廃止、排出規制緩和などによって経済合理性が大きく変化したと説明。不利な契約に対する引当金として1062億円を計上した。

    さらに、部品供給契約や業務提携契約に関する補償費用などを含む引当金として5610億円を計上。EV戦略見直しがサプライチェーン全体へ波及している実態も浮き彫りとなった。

    それでもホンダは黒字回復を予想
    一方でホンダは、2027年3月期には黒字回復を見込んでいる。

    通期見通しでは、営業利益5000億円、親会社株主に帰属する当期利益2600億円を予想。EV関連損失についても、2026年3月期の1兆4536億円規模から5000億円規模へ縮小する見通しを示した。

    今回の決算は、世界的なEV市場減速と政策転換が、自動車メーカーの戦略をいかに大きく揺さぶっているかを象徴する内容となった。

  • ホンダF1に“約30億円救済” ライバル勢が撤退危機を警戒

    ホンダF1に“約30億円救済” ライバル勢が撤退危機を警戒

    ホンダが2026年F1シーズンで深刻な苦境に直面するなか、F1陣営内では“異例の救済措置”が必要との見方が広がっている。

    アストンマーティンとの新体制でF1へ復帰したホンダだが、2026年型パワーユニットは出力不足と信頼性問題に苦しみ、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールは開幕から下位争いを強いられている。

    さらにAMR26側も深刻な振動問題を抱えており、ドライバーの健康面への懸念まで浮上。エイドリアン・ニューウェイがホンダ側のパフォーマンス不足に不満を示したことで、両者の関係悪化説まで報じられる状況となっている。

    そんな中で浮上しているのが、F1側による“追加支援”だ。

    F1全体がホンダ支援を容認する背景
    The Raceのジョン・ノーブルによると、F1陣営ではホンダの状況を「放置できない問題」と認識する空気が強まっているという。

    背景にあるのは、2026年型PUレギュレーションで導入されたADUO(追加開発機会)制度だ。

    通常、この制度ではベンチマークから2%遅れているメーカーに年間1回、4%遅れている場合には年間2回の追加アップグレード機会が認められる。

    しかし、ホンダはその基準を大きく超える“10%遅れ”に達しているとみられており、F1側は特別措置の拡大を認める方向に傾いている。

    報道によると、ホンダには以下の支援が認められる見通しだ。

    ■ 開発予算上限を1100万ドルへ拡大
    ■ 800万ドルの特別追加支援を付与
    ■ 合計1900万ドル(約30億円)の追加開発余地
    ■ PUテストベンチ使用時間を190時間から230時間へ拡大

    今回の措置は単なる開発優遇ではなく、「ホンダにF1を撤退されては困る」という危機感が背景にあるとの見方も出ている。

    ホンダF1 / 本田技研工業

    “ホンダ撤退”はF1全体のリスク
    現在のF1は、2026年新レギュレーションへの移行に伴い、PUメーカーの維持を重要課題としている。

    アウディの参戦によってメーカー色は強まった一方、複雑化したハイブリッドPUと莫大な開発コストは各メーカーに大きな負担を与えている。

    その中でホンダのような大手メーカーが撤退すれば、F1全体の信頼性や将来計画にも影響を及ぼしかねない。

    ジョン・ノーブルはThe RaceのYouTubeチャンネルで次のように語っている。

    「ホンダが問題を解決できず、F1に背を向けるリスクを各チームとメーカーは懸念していた。ホンダのような大手自動車メーカーを失うことは、F1全体にとって利益にならない」

    この動きは、2026年型PUレギュレーションそのものへの不満がパドック内で強まっていることも示している。

    FIAはすでにマイアミGPからエネルギー回生制限を緩和。さらに2027年以降には内燃エンジン比率を高める方向での議論も進められている。

    アストンマーティン・ホンダの未来は
    問題は、今回の支援で状況を立て直せるかどうかだ。

    アストンマーティン内部では失望感が広がっているとも報じられており、ニューウェイの厳しい発言もチーム内の緊張感を象徴している。

    一方でホンダ側は関係悪化説を否定しており、HRCさくらを中心に振動対策と信頼性改善を急いでいる。

    ただ、今回の“約30億円救済”は、単なる技術支援というよりも「F1全体でホンダをつなぎ止めるための延命措置」という側面が強い。

    2026年レギュレーションは始まったばかりだが、F1はすでに“次の方向転換”を模索し始めている。

    Photo:Honda Racing

  • アストンマーティンF1 “異例の問題”で開発停滞 アップグレード遅延を説明

    アストンマーティンF1 “異例の問題”で開発停滞 アップグレード遅延を説明

    アストンマーティンは、2026年F1マイアミGPにAMR26の空力アップグレードを持ち込まなかった理由を説明した。開幕4戦を終えてコンストラクターズ選手権最下位、獲得ポイントなしという厳しい状況にあるなか、チームは新パーツ投入よりも信頼性、振動低減、ドライバビリティ改善を優先している。

    フェラーリが11点、マクラーレンとレッドブルがそれぞれ7点のアップデートを投入し、他チームも少なくとも1点の開発アイテムを持ち込んだ一方で、アストンマーティンはAMR26に空力面の新パーツを用意しなかった。

    空力アップデートより優先された「異例の問題」
    元チーム代表で現在はチーフ・トラックサイド・オフィサーを務めるマイク・クラックは、空力開発の投入時期について明言を避けた。

    「我々はこの数週間、数か月で見てきた。特に、信頼性、振動の低減、ドライバビリティの改善に関して進歩を遂げてきたやり方を考えれば、すでにかなり大きなアップグレードを行ってきたと思う」

    「そして、その方向で作業を続けなければならない。だから、次のレースなのか、その次のレースなのか、あるいはいつになるのかという話には引き込まれたくない」

    「シーズンが始まったとき、我々には多くの問題があった。異例の問題だった。しかし、我々がリソースを投入したスピードはかなり注目に値するものだったと思う」

    「さらに前進できることを期待できるし、そうなると考えている。ただし、埋めなければならない差が大きいことも認めなければならない。これは決して1週間でできる作業ではないかもしれない」

    アストンマーティンの開幕戦からの問題は深刻だった。シーズン序盤は技術的トラブルによって両ドライバーの走行時間が制限され、マイアミGP前までの完走扱いは鈴鹿でのフェルナンド・アロンソの18位のみだった。

    なかでもパワーユニットのバッテリーに起因する振動問題は大きな焦点となり、中国GPではアロンソが不快感を理由にリタイア。アロンソとランス・ストロールの双方が、神経への影響を懸念する状況にまで発展していた。

    マイアミGPでは、アロンソが15位、ストロールが17位でフィニッシュし、チームとして今季初の2台完走を達成した。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    「今のパッケージから引き出せるものがまだある」
    フェルナンド・アロンソは、空力アップデートが夏休み明けまで投入されない可能性にも言及している。そうしたなかで、なぜ開発投入を遅らせる価値があるのかを問われたクラックは、現行パッケージの使いこなしがまだ不十分だと説明した。

    「『戦略は何か』『計画は何か』を認識しなければならない」

    「ここトラックでの我々の仕事は、持っているものから最大限を引き出すことだ。マイアミでは、何らかの理由で、すべてが最適だったとは言えないと思う」

    「うまくやったとは思うが、もっと良くできたはずだ。同じことはエネルギーにも当てはまるし、ドライバビリティにも当てはまる」

    「だから、現時点のこのパッケージから引き出すべきものは多い。全員のモチベーションを保ち、その作業を続けることが重要だ。そして、大きなステップが来るのを待つことになる」

    アストンマーティンにとって、空力アップデートの遅れは単なる開発停滞ではなく、AMR26が抱える根本的な問題への対応を優先した結果でもある。信頼性、振動、ドライバビリティという基盤を整えなければ、新パーツを投入しても本来の効果を測ることは難しい。

    ただし、ライバルがすでに大規模なアップデート競争に入っているなかで、アストンマーティンが「大きなステップ」を待つ時間的余裕は限られている。マイアミでの2台完走は前進ではあるが、ポイント圏外という現実は変わっておらず、AMR26が次に示すべきなのは、完走だけでなく競争力の明確な改善となる。

  • フェルナンド・アロンソ アストンマーティンF1の2027年飛躍を確信「疑いはない」

    フェルナンド・アロンソ アストンマーティンF1の2027年飛躍を確信「疑いはない」

    フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は、ホンダとの新体制で苦戦が続く2026年F1シーズンについて、現在が「一年で最も厳しい時期」だと認めながらも、2027年にはチームがより強い状態になると断言した。

    アストンマーティンとホンダのパッケージは開幕から速さと信頼性の両面で課題を抱え、今月初めのマイアミGPで初めて2台完走を果たしたものの、ポイント圏内には届かなかった。

    アロンソが断言した2027年への確信
    来年のマシンがより競争力を持つと予想しているかと問われたアロンソは、RacingNews365を含むメディアに対して明確に答えた。

    「100%だ。疑いはない」

    「そうでなければ、僕たちは後退することになる」

    アストンマーティンは2026年の現実的な目標を再設定している段階にあるが、アロンソは現在の苦戦をプロジェクト初年度特有の痛みとして捉えている。

    「僕たちは厳しい瞬間、厳しい状況にいる。一年で最も厳しい部分だ」

    「今シーズンを通じて、改善が入ってきて、いくつかの問題を修正できれば、僕たちはどんどん良くなっていくと確信している」

    「パワーユニットも含めて、そういったすべてのことだ」

    「来年、2年目になれば、このプロジェクトは1年目よりも準備が整ったものになる。そこに疑いはない」

    フェルナンド・アロンソ アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    初年度の混乱をどう乗り越えるか
    アストンマーティンは、2026年からホンダと組む新体制に移行したが、開幕から信頼性不足とパフォーマンス不足が重なり、完走そのものが課題となるレースも続いた。

    マイアミGPで2台完走を果たしたことは小さな前進だった一方、まだポイント争いには届いておらず、チームにとっては速さよりもまず基礎的な安定性を取り戻す段階にある。

    アロンソの発言は、今季を諦めるものではなく、2026年を「修正と学習の年」と位置づけたうえで、2027年に向けた立て直しを強調するものだ。

    ホンダとの2年目が真価を問うシーズンに
    アロンソが「2年目」を強調した意味は大きい。新しいパワーユニット、新しい車体コンセプト、新しい運用体制は、初年度から完成形に到達することは難しい。

    それでも、アロンソは改善の余地が明確にあるからこそ、2027年にはプロジェクトがより整った状態になると見ている。現在の苦戦は結果だけを見れば厳しいが、チームが問題を特定し、改善を積み重ねられるかどうかが今後の焦点となる。

    アストンマーティンとホンダにとって、2026年は期待外れのスタートとなった。しかしアロンソの言葉は、チーム内部がまだこのプロジェクトの将来性を失っていないことを示している。

  • BARホンダ “隠し燃料タンク”で2戦出場停止 F1史に残る異例処分

    BARホンダ “隠し燃料タンク”で2戦出場停止 F1史に残る異例処分

    2005年5月12日、BARホンダがF1史上でも異例の2戦出場停止処分を科されてから、ちょうど21年を迎えた。“隠し燃料タンク”問題として知られるこの騒動は、現在でもF1界で語り継がれる代表的な技術規則違反のひとつとなっている。

    発端となったのは、2005年F1サンマリノGP後の車検だった。ジェンソン・バトンが3位、佐藤琢磨が5位でフィニッシュしたBARホンダだったが、FIAは車両内部に残された約15リットルの燃料を問題視。最低重量規定を巡る解釈が大きな波紋を呼ぶことになった。

    「空」とされたタンクに残っていた約15リットルの燃料
    問題は、BARホンダが燃料タンクを完全に空にしたと主張した後に発覚した。FIAはその後、タンク内の隠された区画に約15リットルの燃料が残っていることを確認した。

    この燃料を除いた状態でジェンソン・バトンのマシンを計量すると、重量は594.6kgだった。当時の最低重量である600kgを5.4kg下回っており、FIAはBARホンダが最低重量規定を実質的に回避していたと判断した。

    当時のFIA会長マックス・モズレーは、この件について厳しい見解を示した。

    「彼らはタンクに15リットルを残したまま、それが空だと我々に伝えた」

    BARホンダ側は燃料システムの構造上、その燃料は通常使用できないものだと主張したが、FIAの判断は覆らなかった。結果として、チームはサンマリノGPから失格となり、続くスペインGPとモナコGPの2戦を欠場することになった。

    技術的解釈と規則違反の境界線
    この一件が特異だったのは、単なる重量不足ではなく、燃料システムの設計そのものが問題視された点にある。燃料を搭載した状態では最低重量を満たしていても、実際には燃料を抜いた車体重量が規定を下回っていたため、FIAは競技上の優位性につながる重大な違反と見なした。

    F1では技術的な創意工夫が競争力の源泉となる一方で、その解釈が規則の限界を超えた場合には厳しい処分が下される。BARホンダの“隠し燃料タンク”問題は、その境界線を象徴する事例となった。

    ジェンソン・バトンと佐藤琢磨がポイント圏内でフィニッシュしたサンマリノGPの結果は取り消され、BARホンダはシーズン序盤の貴重な2戦を失った。チームにとっては競争力を示し始めた矢先の大きな痛手であり、F1史に残る異例の出場停止処分として記憶されている。

  • アストンマーティンF1は“史上最悪の失敗” ホンダPU危機でFIAが救済措置拡大

    アストンマーティンF1は“史上最悪の失敗” ホンダPU危機でFIAが救済措置拡大

    2026年F1シーズンで深刻な低迷に苦しむアストンマーティンとホンダのパートナーシップが、パドック内で大きな議論を呼んでいる。そうした中、FIAは新世代パワーユニット規則における「追加開発・アップグレード機会(ADUO)」の支援範囲を拡大した。

    背景には、一部メーカーの性能不足が想定以上に深刻化している現実があるとみられており、特に苦戦が続くホンダ陣営への影響が注目されている。

    スペインの著名F1解説者アントニオ・ロバトは、現在のアストンマーティンを極めて厳しい言葉で批判した。

    「F1史上もっとも深刻な失敗」
    「私の意見では、今のアストンマーティンの失敗は、F1史上もっとも深刻なチームの失敗だ」とロバトは語った。

    「彼らには最先端の施設、最高の風洞、新しいシミュレーター、他チームから獲得した空力担当者、エイドリアン・ニューウェイがいる。大きな期待があった。それなのに、ホンダとのパートナーシップが機能しないことで、すべてを台無しにしている」

    「これは惨事だ。本当の惨事だ」

    アストンマーティンは、2026年F1レギュレーションに向けて莫大な投資を行ってきた。シルバーストンの新ファクトリー、新風洞、新シミュレーターに加え、エイドリアン・ニューウェイ加入によって“次世代王者候補”として期待されていた。

    しかし現実には、2026年シーズン開幕から深刻な競争力不足に直面。ホンダ製パワーユニットの出力不足やエネルギーマネジメント問題が取り沙汰され、アストンマーティンはコンストラクターズランキング最下位争いに沈んでいる。

    FIAが救済制度を拡大
    こうした状況を受け、FIAはADUO制度の適用範囲を拡大した。

    ADUOは、性能面で後れを取るパワーユニットメーカーに対し、追加のダイノ稼働時間や開発自由度、予算上限の緩和を与える制度だ。過去のF1エンジン時代のように、劣勢メーカーが長期にわたって固定化されることを防ぐ目的で導入された。

    今回の変更では、支援対象となる性能差の上限が8%から10%へ引き上げられた。さらに2026年限定で800万ドルの追加支出枠も認められている。

    FIAは評価スケジュールも修正。当初予定されていた第6戦、第12戦、第18戦後ではなく、最初の正式評価はカナダGP後に行われ、その後ハンガリーGP、メキシコGP後にも評価が実施される。

    「これらのADUO期間は、競技カレンダーに重大な変更があった場合、FIAによって調整される可能性がある」とFIAは説明した。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダF1

    ホンダ危機を示唆する異例の措置
    今回の改定は、FIAが一部メーカーの遅れを想定以上に深刻視していることを示唆している。

    パドックでは、特にホンダが2026年F1パワーユニット競争で大きく出遅れているとの見方が強まっている。アストンマーティンの低迷は、単なるシャシー性能だけでなく、エネルギー回生やパワーデリバリーの問題とも結びつけられている。

    一方、メルセデスのジョージ・ラッセルは、ADUO拡大による勢力図変化について慎重な見方を示した。

    「もちろん、僕たちは風洞の時間も、ダイノの時間ももっと欲しい」

    「それでも僕はチームを信頼しているし、それが僕たちを助けるとはまだ思っていない。ただ、害になるとも、状況をあまりにも大きく変えるとも思っていない」

    また、レッドブル・フォードの新パワーユニット計画にも注目が集まっている。ローラン・メキースは以前、社内エンジンプログラムが「悪夢のシナリオ」になり得る懸念があったことを認めつつも、現在は期待以上の進展があると説明していた。

    FIAによる今回のADUO拡大は、2026年F1シーズンの勢力図がまだ固定化されていないことを示している。そして、その制度変更の背景にアストンマーティンとホンダの危機があることは、もはやパドック内で隠しきれないテーマとなりつつある。

  • アストンマーティンF1を支える“ストロール資金”に限界説 中国メーカー参入の現実味

    アストンマーティンF1を支える“ストロール資金”に限界説 中国メーカー参入の現実味

    アストンマーティンF1の財務不安を巡り、中国自動車大手ジーリー(浙江吉利控股集団)による買収観測が広がっている。ローレンス・ストロールによる度重なる資金注入に対し、投資家の不信感が強まりつつあるとされ、中国メーカーによるF1参入シナリオにも注目が集まっている。

    2026年シーズンのアストンマーティンは、トラック上でも深刻な苦戦が続いている。

    ホンダ製パワーユニットの出力不足や振動問題に加え、レース完走すら難しい状況が続き、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールはコーナー区間で意図せずバッテリーを温存してしまうほどの性能不足に直面している。

    だが、本当の危機はサーキットの外側にある。

    8度目の“緊急資金注入”で広がる不安
    英テレグラフ紙によると、ローレンス・ストロール陣営は最近、アストンマーティンに追加で5000万ポンド(約106億円)を投入した。上場企業化以降、これで8回目の“緊急資金注入”となる。

    ストロールは2020年の参画以降、事実上アストンマーティンを個人資金で支えてきた。さらに近年は、エイドリアン・ニューウェイ、エンリコ・カルディレ、そしてアウディF1のジョナサン・ウィートリー獲得など、大規模な投資を続けている。

    しかし、その負担は想定を超え始めているとされる。

    報道では、共同投資家の間で「このプロジェクトは本当に成立するのか」という疑念が広がっており、“ローレンス・ストロールが撤退する可能性”まで噂され始めている。

    株式市場でも状況は厳しい。アストンマーティンの時価総額は約4億3000万ポンド(約912億円)まで低下し、一部では「事業継続性そのもの」に疑問符が付けられているという。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    ジーリーが“最有力候補”として浮上
    こうした中で名前が浮上しているのが、中国自動車大手ジーリーだ。

    ジーリーは現在、アストンマーティン株の17%を保有しており、これまでも同社の資金調達を支援してきた。関係者の間では、仮にストロールが撤退した場合、既存株主の中で最も買収に動きやすい存在と見られている。

    もし実現すれば、中国メーカーによる本格的なF1チーム所有という新時代が到来する可能性がある。

    さらに、FIA会長モハメド・ビン・スライエムが「中国メーカーによるF1参戦を望んでいる」と公言していることも、この流れを後押ししている。

    BYDも水面下で接触か
    興味深いのは、アストンマーティンに関心を示しているのがジーリーだけではない点だ。

    BYDもF1パドック内で接触を進めているとされ、アストンマーティン、あるいは別チームを通じた参戦ルートを模索しているとの見方が出ている。

    特にレッドブル陣営は、レーシングブルズ売却の可能性を完全には否定しておらず、BYDやジーリーと接触したとの報道も浮上している。

    つまり現在のF1では、「中国メーカーが既存チームを買収して参戦する」という構図が現実的なシナリオとして語られ始めている。

    アストンマーティンF1は“未来への投資”だったはずが…
    本来、アストンマーティンF1プロジェクトは、ニューウェイ加入、新ファクトリー、新風洞、ホンダとのワークス提携によって、“次世代王朝”を築く計画だった。

    しかし現実には、2026年シーズン序盤の時点でマシン性能、PU性能、財務状況のすべてが不安定化している。

    しかも、F1全体では2028年以降のレギュレーション変更やV8回帰議論も進行中であり、巨額投資の回収シナリオそのものが不透明になりつつある。

    その状況で、中国メーカーが“既存チーム買収”という近道を狙うのは極めて合理的な動きとも言える。

    アストンマーティンの危機は、単なる1チームの経営問題ではなく、F1の資本構造そのものが変化し始めている兆候なのかもしれない。