カテゴリー: ホンダF1

  • 角田裕毅の名前がインディカー公式に登場 ディクソン後継候補の“サプライズ案”

    角田裕毅の名前がインディカー公式に登場 ディクソン後継候補の“サプライズ案”

    インディカー公式サイトの企画記事で、2027年シーズンのチップ・ガナッシ・レーシングのドライバーラインアップを予想する中、角田裕毅の名前が“サプライズ候補”として挙がった。

    これは移籍情報ではなく、編集部による「もしスコット・ディクソンがチームを離れたら誰が9号車を引き継ぐのか」という予想企画の一環だが、ホンダとのつながりを背景に角田裕毅の名前がインディカー公式で言及されたことが注目を集めている。

    4人の編集部員による後継予想
    今回の企画は、6度のシリーズチャンピオンであるスコット・ディクソンが2027年からアロー・マクラーレンへ移籍するとの報道を受け、「空席となるチップ・ガナッシ・レーシングの9号車を誰が引き継ぐのか」をテーマに、インディカー公式の4人の編集部員がそれぞれ予想を披露したもの。

    カート・キャビン氏とアーニ・スリベン氏はマーカス・アームストロングを本命に挙げ、エリック・スミス氏はデイル・コイン・レーシングで好成績を残しているデニス・ハウガーを推した。

    一方で、ポール・ケリー氏だけは「現在インディカーに参戦していないドライバー」という視点から、意外な候補を挙げている。

    ホンダとの関係から角田裕毅の名前
    ケリー氏は、チップ・ガナッシ・レーシングとホンダの強固な関係に触れたうえで、こう予想している。

    「ホンダとチップ・ガナッシ・レーシングの深い関係を考えれば、そのドライバーは、すでにマイヤー・シャンク・レーシングでテスト経験のある太田格之進のような存在かもしれない。あるいは、現在レッドブル・レーシングのテスト兼リザーブドライバーを務める元F1ドライバーの角田裕毅という可能性もある」

    角田裕毅を本命候補として報じたものではないが、「ホンダ系ドライバー」という文脈で太田格之進と並んで名前が挙げられた形だ。

    ガナッシの大胆な起用実績も理由に
    ケリー氏は、チップ・ガナッシ・レーシングがこれまでも大胆なドライバー起用で成功を収めてきた歴史にも言及している。

    1996年にはインディカー未経験だったアレックス・ザナルディを起用して2年連続シリーズ王者に導き、スコット・ディクソンやアレックス・パロウも、それぞれシリーズでの経験が浅い段階でチーム入りし、その後タイトルを獲得した。

    そうした実績を踏まえ、「次世代のエース候補を思い切って起用する可能性もある」との考えから、サプライズ候補として角田裕毅の名前を挙げたというわけだ。

    今回の企画はあくまで編集部員による予想であり、角田裕毅のインディカー転向やチップ・ガナッシ・レーシング入りを示す具体的な情報があるわけではない。それでも、インディカー公式サイトでホンダとのつながりを背景に角田裕毅の名前が自然に候補として挙げられたことは、北米でもその存在が認識されていることを示す興味深い一幕と言えそうだ。

  • アストンマーティン・ホンダF1 コストキャップがアップグレード計画に制約

    アストンマーティン・ホンダF1 コストキャップがアップグレード計画に制約

    アストンマーティンF1は2026年シーズン前半を苦しい戦いで終えようとしている。9戦を終えても大規模アップグレードを投入していない唯一のチームとなり、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールは下位争いを強いられている。

    しかし、チームはハンガリーGPで投入予定の「AMR26 B」と、続くオランダGPでのホンダ製パワーユニットアップグレードによって巻き返しを狙っている。一方で、その開発計画にはF1のコストキャップ(予算上限)が大きく影響していることを、マイク・クラックが明かした。

    コストキャップがアップグレード計画を左右
    アストンマーティンF1のサーキット責任者マイク・クラックは、シルバーストンでチーム内部ではすでにコストキャップを巡る議論が始まっていることを認めた。

    2026年型マシンはシャシーコンセプトの方向性を誤ったとされ、シーズン序盤から競争力不足に苦しんでいる。それでも、開発を無制限に続けられるわけではない。

    クラックは予算上限制度をスーパーでの買い物に例えて説明した。

    「スーパーへ行って100ユーロを持っているなら、使えるのは100ユーロだけだ。100ユーロを使い切れば、それ以上は使えない」

    さらに、クラッシュによる予期せぬ出費も考慮しなければならないと語った。

    「忘れてはいけないのは、クラッシュが起こる可能性があることだ。そのため、その100ユーロの中から一定の余裕を賢く残しておく必要がある。開発費とレース運営費のバランスを常に取らなければならない」

    現在のシルバーストン工場では、空力パーツそのものの性能だけでなく、製造コストを下げることも重要な課題になっているという。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    反撃の鍵はハンガリーGPとオランダGP
    アストンマーティンは今後2戦を今季最大の勝負どころと位置付けている。

    まずハンガリーGPでは、大幅改良版となる「AMR26 B」を投入予定。その後のオランダGPではホンダ製パワーユニットのアップグレードも予定されており、中団グループへの浮上を目指す。

    クラックは次のように期待を示した。

    「ハンガリーでは大きなアップグレードが投入される。そしてオランダではエンジンのアップグレードもある」

    もっとも、その先の開発については予算次第だという。

    「今後については様子を見る必要がある。コストキャップについて多少の議論もあるので、その後に何ができるか見極めなければならない。ただ、これが最後のアップデートになるとは思っていない」

    さらにクラックは、コストキャップ制度そのものへの不満は口にしなかった。

    「これは受け入れたルールだ。その中でベストを尽くすしかない」

    アストンマーティンはハンガリーGPで投入するAMR26 B、そしてオランダGPでのホンダ製PUアップグレードによって今季初めて本格的な反撃に打って出る。ただし、その後の開発継続はコストキャップとの兼ね合いに左右される可能性が高く、限られた予算の中でどこまで競争力を引き上げられるかが、2026年シーズン後半戦の最大の焦点となりそうだ。

  • フェルナンド・アロンソ F1ベルギーGPで警鐘「F2より遅くなる」

    フェルナンド・アロンソ F1ベルギーGPで警鐘「F2より遅くなる」

    フェルナンド・アロンソは、2026年F1レギュレーションがベルギーGPで大きな問題を露呈する可能性があると警鐘を鳴らした。高速レイアウトのスパ・フランコルシャンではエネルギーマネジメントが極めて難しくなり、状況によってはF1マシンがF2よりも遅い状態で走る区間が生まれる恐れがあるという。

    2026年レギュレーションに一貫して懐疑的な見解を示してきたアロンソは、ライバルとの攻防で電動エネルギーを使い切れば、その後はラップの大半で出力不足に陥ると指摘。

    「今年は昨年より大幅にパワーが少なく、F2よりもパワーが少ない」と語り、スパで新規則の課題が浮き彫りになるとの見方を示した。

    スパで露呈する2026年F1のエネルギー問題
    2026年のF1では、内燃エンジンの出力が抑えられる一方、電動エネルギーへの依存度が大幅に高まった。そのため、ドライバーはストレートのどこで電気エネルギーを使用し、どこで温存するかを常に判断しなければならない。

    特に問題となるのが、ラ・ソースからオー・ルージュ、ラディオンを抜け、ケメルストレートを上ってレ・コームに至るスパの序盤区間だ。

    アロンソは、ライバルとの攻防でこの区間にエネルギーを投入すれば、その後のラップを犠牲にすることになると説明した。

    「スパで最初のコーナーのラ・ソースからターン5のレ・コームまで、相手を攻撃したり守ったりするためにエネルギーを使ったら、残りのラップはフィニートだ」

    「第2セクターでは、丸々1分間にわたってエネルギーをまったく使えなくなる。今年は昨年よりも大幅にパワーが少なく、F2よりもパワーが少ないということを忘れてはいけない」

    アロンソが懸念しているのは、単に最高速度が低下することではない。電動エネルギーを使い切った状態では、後続車に対して無防備になるだけでなく、F1の下位カテゴリーであるF2に匹敵、あるいは下回る出力で走る区間が生まれる可能性がある。

    スパでは長い全開区間が続くため、通常のサーキット以上にエネルギー消費が激しい。前車を追い抜くために序盤で電力を使えば、その後はペースを大きく落とさなければならず、追い抜きを仕掛けた側が次の区間で逆に狙われる展開も考えられる。

    攻防を難しくするエネルギー管理
    2026年F1マシンでは、ドライバーがアクセルを踏み続けていても、使用可能な電気エネルギーが不足すれば出力が急激に低下する。

    スパのように長いストレートが続くコースでは、ラップ序盤のケメルストレートで攻撃にエネルギーを使うか、後半のブランシモンやバスストップ・シケインまで温存するかという選択を迫られる。

    エネルギーを温存すれば前を抜けず、使えばラップ後半で守れない。アロンソの発言は、ベルギーGPでこうした不自然な駆け引きが目立つことへの懸念を示したものだ。

    F1が最高峰カテゴリーでありながら、一時的にF2を下回るパフォーマンスしか発揮できない場面が生まれれば、2026年レギュレーションへの議論はさらに活発になるだろう。

    フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    フェラーリは新リアウイングを投入へ
    こうした懸念があるなか、フェラーリはベルギーGPで改良型「マカレナ」リアウイングを投入すると報じられている。

    イタリアメディアによれば、新しいリアウイングはスパの長いストレートで最高速度を最大11km/h向上させる可能性があるという。

    「マカレナ」と呼ばれる設計は、リアウイングの空気抵抗を特定の条件下で低減し、ストレートスピードを伸ばすことを狙ったコンセプトだ。エネルギー切れによる出力低下が懸念されるスパでは、その効果が通常以上に重要になる。

    一方で、FIAはこのコンセプトについて調査を進めている。レッドブル・レーシングではマックス・フェルスタッペンのマシンでリアウイングのトラブルが相次いでおり、安全性も焦点となっている。

    ローラン・メキースは、レッドブル・レーシングが採用している攻撃的なリアウイング設計を断念する可能性も認めている。

    タイトル争いは細部が勝負を分ける
    元ミナルディ代表のジャンカルロ・ミナルディは、フェラーリの進歩によって2026年のタイトル争いはさらに接戦になったとみている。

    「シルバーストンは、この世界選手権がどれほど拮抗しているかを改めて証明した」

    「今からシーズン終了までは、細部が違いを生むことになる」

    フェラーリはイギリスGPでシャルル・ルクレールが優勝し、チーム通算250勝を達成。マシンの競争力と信頼性を着実に高めており、ベルギーGPでも優勝候補の一角と目されている。

    レッドブル・レーシングは苦戦を覚悟
    一方、レッドブル・レーシングはベルギーGPを前に慎重な姿勢を崩していない。

    ローラン・メキースは、オーストリアGPで投入したアップデートだけでは状況を覆せないと認めた。

    「今シーズンはグランプリで勝てるとは思っていない」

    「オーストリアで投入したアップデートだけでは十分ではないことに疑いの余地はない」

    レッドブル・レーシングはリアウイングの信頼性問題に加え、マシン全体の競争力にも課題を抱えている。スパでは最高速と空力効率が重要になるだけに、苦しい戦いが予想される。

    信頼性ではフェラーリが優位
    元F1ドライバーのラルフ・シューマッハは、タイトル争いではフェラーリの信頼性が大きな武器になると指摘した。

    イギリスGPでは、メルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリがホイールシールドのトラブルに見舞われ、大量ポイントを失った。

    「現在、信頼性という点ではフェラーリが最も安定しているチームだ」

    マシン性能が接近するなかでは、信頼性がタイトル争いを左右する重要な要素となる。ベルギーGPではアロンソが警鐘を鳴らしたエネルギーマネジメントの問題に加え、各チームの空力開発や信頼性の差も勝敗を大きく左右することになりそうだ。

  • ホンダF1 新PU投入まで残り2戦でデータ収集は重要局面「知見を最大限蓄積する」

    ホンダF1 新PU投入まで残り2戦でデータ収集は重要局面「知見を最大限蓄積する」

    ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原伸太郎は、2026年F1第10戦ベルギーGPを前に、オランダGPで予定されている新パワーユニット(PU)投入まで残り2戦となる中、現行スペックで得られるデータや経験を最大限蓄積することが重要になるとの見解を示した。

    スパ・フランコルシャンは2026年シーズン最長のサーキットで、複雑なコーナーセクションを持つテクニカルコースとして知られる。

    ロングストレートと高速コーナーが組み合わさるレイアウトのため、ドライバーのアクセル操作を予測したエネルギーマネジメントの最適化が求められ、エンジニアにとっても非常にチャレンジングなサーキットだという。

    折原は、サーキットの長さに対して回生可能な電気エネルギーが非常に限られることから、「エネルギーマネジメントに関してPUマニュファクチャラーにとって重要な評価の場となります」と説明。そのため、ロングストレートでのMGU-Kの出力を含めたデプロイメント戦略がこれまで以上に重要になるほか、PUには大きな負荷がかかるため、パフォーマンスだけでなく信頼性の確保も重要なテーマになるとした。

    ホンダF1 本田技研工業

    また、オランダGPでの新PU投入まで残り2戦となることについては、「現行スペックで得られるデータや経験を最大限蓄積することも重要です」とコメント。ベルギーGPで得られた知見は、新PUを使用する今後のレースだけでなく、モンツァのようなロングストレートを持つサーキットでも活用していく考えを示した。

    さらに、ベルギーGPでは変わりやすい天候も大きなポイントになると指摘。シルバーストンではドライコンディションが続いた一方で、今回は今季初めて本格的なウェットコンディションでセッションが行われる可能性もあるとし、「天候に関しては何が起こってもおかしくないと考えています」と警戒感を示した。

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  • ニューウェイ アストンマーティンF1で反省「アロンソたちとの対話が足りなかった」

    ニューウェイ アストンマーティンF1で反省「アロンソたちとの対話が足りなかった」

    エイドリアン・ニューウェイが、アストンマーティンF1の2026年シーズンにおける課題として、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールとのコミュニケーション不足を認めた。開発方針を十分に共有できていなかったことが、チーム内の不満を招いたと率直に振り返っている。

    チームは2026年型マシンの開発を前半戦で事実上凍結し、大型アップグレードへ資源を集中する戦略を採用した。

    しかし、その狙いをドライバーへ十分に説明できておらず、ニューウェイは「我々にも責任があった」と認めた。

    ニューウェイ「ドライバーとの対話が足りなかった」
    2026年の新レギュレーション初年度、アストンマーティンは開幕9戦でわずか1ポイントと苦戦が続いている。競争力不足に加え、信頼性の問題も重なり、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールは厳しい戦いを強いられている。

    ニューウェイは、チームがドライバーとの意思疎通に十分な時間を割けなかったことを認めた。

    「フェルナンドとランスの両方と時間を取って、我々が何をしているのか、アップグレードパッケージで何を計画しているのか、そして2027年へ向けて何を考えているのかを説明してきた」

    「そう見えないかもしれないが、我々は彼らのコメントにしっかり耳を傾け、それを反映させようとしている」

    「人は自分の意見を聞いてもらえていないと感じると、とてもフラストレーションが溜まる。それは当然の人間の反応だ」

    「だから、おそらく我々はフェルナンドやランス、それにリザーブドライバーのジャック・クロフォードに対して、アップグレードで何を実現しようとしているのかを十分に説明する時間を取れなかったという点で責任があった」

    この発言は、アロンソがこれまで公の場で示してきた不満を裏付けるものでもある。ライバル勢が開発を進める中、アストンマーティンは段階的なアップデートを見送り、大型改良まで待つ方針を選択していた。

    あえて開発を止めた理由
    ニューウェイによると、この判断は慢心ではなく、将来を見据えた苦渋の決断だったという。

    チームは2026年前半の小規模アップデートを断念し、ハンガリーGPで投入予定の大規模アップグレードと、オランダGPで予定する第2弾アップデートへ開発資源を集中させた。

    ニューウェイは、その狙いを次のように説明した。

    「我々の学習曲線はライバルより遅れていた。そして、序盤戦で競争力を発揮できないことはすぐに明らかになった」

    「だから前半戦は開発を行わないという苦しい決断を下した。それによって他チームが開発を進めれば、差がさらに広がることも理解していた」

    「しかし、それによってチームの体制を整え、将来へ向けたさまざまなシステムを構築し、2026年型マシンを本格的に研究できるようになった。2026年のマシンは非常に短い期間で完成させなければならなかったからだ」

    「一歩引いてプレッシャーを和らげ、本当の問題を理解する時間を持てた。冬の間は自分たちに過度なプレッシャーをかけ過ぎていたと思う」

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    狙いは2027年への土台作り
    ニューウェイは、ハンガリーGPのアップグレードを中期計画の第一段階、オランダGPを第二段階と位置付け、その先に2027年シーズンを見据えた長期的な改革があると説明した。

    「ハンガリーで第1段階、ザントフォールトで第2段階のアップグレードを予定している。当時は中期的な計画だったが、今ではもう短期的な課題になっている」

    「そして長期的には、この冬を通じて2027年シーズンへ向けてチームをより強い体制にするための決断を進めている」

    「皆さんの忍耐と理解に感謝している。我々にとっても、パートナーにとっても現在のパフォーマンスを見るのは非常につらいことだ。しかし、この苦しい時期が遠い過去の記憶になることを願っている」

    ハンガリーGPで投入されるアップグレードは、2026年シーズンで最も注目される技術アップデートの一つとなる見込みだ。優勝争いへ一気に浮上することは期待されていないものの、前半戦を犠牲にした開発戦略が正しかったことを証明できるかどうかが、大きな焦点となる。もし期待した効果が得られなければ、ニューウェイが認めた「ドライバーとの対話不足」は、アストンマーティンが抱える問題の一端に過ぎなかったことになるだろう。

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  • ホンダF1撤退の真実 ブラウンGP共同創設者が明かす「涙の会議」と奇跡の2009年

    ホンダF1撤退の真実 ブラウンGP共同創設者が明かす「涙の会議」と奇跡の2009年

    2009年、ホンダのF1撤退を受けて誕生したブラウンGPは、ジェンソン・バトンとともにドライバーズタイトルとコンストラクターズタイトルを獲得し、モータースポーツ史に残る”奇跡”を成し遂げた。

    しかし、「1ポンドでチームを買収し世界王者になった」という有名な逸話の裏側には、700人の雇用を守るための決断や、ホンダ撤退を涙ながらに告げた日本人幹部との会談など、これまであまり語られてこなかった壮絶なドラマがあった。ブラウンGP共同創設者のニック・フライが、その舞台裏を振り返った。

    「予算削減」だと思っていた会議で告げられたF1撤退
    2008年11月28日、ロンドン・ヒースロー空港近くのホテルで、フライとロス・ブラウンはホンダ幹部との会談に臨んだ。

    当時、世界金融危機の影響で自動車業界は大きな打撃を受けており、フライたちは40~50%規模の予算削減を覚悟して会議へ向かった。

    しかし、そこで告げられたのは想像をはるかに超える決断だった。

    「ホンダはF1を続けることができない」

    小さな会議室で対面した日本人幹部は涙をこらえながら説明したという。

    フライは当時を振り返り、「ホンダにはF1で素晴らしい歴史があり、その決断がどれほど苦しいものだったかは痛いほど伝わってきた」と語る。

    しかし、その直後に待っていた次の会議では、約20人のホンダ関係者を前に「700人の従業員に工場の電気を消して帰宅するよう伝えてほしい」という趣旨の説明を受けた。

    フライは、その提案を受け入れることはできなかった。

    「そんなことはできない。時間をくれ。別の方法を探させてほしい」

    そう強く訴えたことが、ブラウンGP誕生への第一歩となった。

    ホンダ F1 撤退

    700人の雇用を守るために始まった買収交渉
    ホンダ撤退後、フライとブラウンはチーム存続へ向けて動き始める。

    最大の課題は、ホンダが巨額を投じて築いたF1チームを、なぜ譲渡する必要があるのかを納得してもらうことだった。

    そこで提示したのが「チームを閉鎖する方が高くつく」という試算だった。

    風洞設備や工作機械など、F1専用施設は他業種では価値が低く、700人規模の退職金や設備処分費用まで含めると、チームを解散させる方がはるかに多くの費用が必要になる。

    ホンダは外部コンサルタントを起用して試算を検証。その結果、フライらの見積もり以上に閉鎖コストが高額になることが判明した。

    こうして、チーム譲渡という道が現実味を帯びていった。

    一方で、フライ自身も大きなリスクを背負うことになる。

    妻のケイトとは、後に象徴的な会話を交わしたという。

    「もし全財産を失って、一生ツナ缶だけで暮らすことになっても大丈夫か?」

    夫婦で出した答えは、「それでもやってみよう」だった。

    「挑戦だと思った。信じることが何より大切だった」とフライは振り返る。

    エンジンもスポンサーもない開幕前
    チーム存続が決まっても、問題は山積みだった。

    ホンダ製エンジンの継続使用を打診したものの断られ、新たなパワーユニットを探さなければならなかった。

    最終的にフェラーリとメルセデスの双方がエンジン供給を申し出る中、メルセデス製エンジンを搭載することが決定した。

    一方でスポンサーも不足し、バージンとの契約がまとまったのはオーストラリアへ向かう飛行機に乗る直前だったという。

    資金不足から約400人を削減し、残されたスタッフは24時間3交代制で開幕戦へ向けてマシンを完成させた。

    日本人若手エンジニアが生み出したダブルディフューザー
    ブラウンGP成功の象徴として知られるダブルディフューザー。

    しかしフライは、その発想が「若い日本人空力エンジニア」から生まれたことを明かしている。

    会議で最も若い立場だったそのエンジニアは、規則を文字通り読み込み、新しい解釈を提示した。

    当初は周囲も「そんなことはできない」と考えたが、議論を重ねる中で画期的なアイデアであることが判明する。

    英語を第二言語として読んだからこそ、先入観にとらわれず条文をそのまま解釈できた可能性もあったという。

    ただしフライは、「世界王者になれた理由はダブルディフューザーだけではない」と強調する。

    「ウィリアムズもトヨタも同じコンセプトを持っていた。」

    「違いはチームだった。」

    互いを支え合い、自分の仕事だけでなく仲間の仕事も助ける文化こそが最大の強みだったと語っている。

    ブラウンGP

    開幕戦メルボルンで起きた”奇跡”
    2009年開幕戦オーストラリアGP。

    ブラウンGPはほとんどテストを行えないまま現地入りした。

    クラッシュすれば交換部品がない。

    給油担当者は実戦で給油した経験すらなかった。

    それでも予選から圧倒的な速さを見せ、ジェンソン・バトンとルーベンス・バリチェロが開幕戦で1-2フィニッシュを達成する。

    フライは「あらゆる場面で失敗する可能性があった。それでもチーム全員が期待以上の仕事をした」と振り返る。

    「喜びではなく安堵だった」世界王者獲得
    シーズン後半になると資金不足から開発競争で苦戦し、レッドブルが急速に迫ってきた。

    バトンには世界王者獲得への重圧がのしかかり、ブラジルGPまでタイトル争いは続いた。

    そして世界王者が決まった瞬間、フライが感じたのは歓喜ではなかった。

    「まず感じたのは、とてつもない安堵だった。」

    「ああ、終わった。やり遂げることができた。」

    そう振り返る彼にとって、2009年は単なるチャンピオン獲得のシーズンではなく、700人の雇用を守り、チーム全員で不可能を可能にした一年だった。だからこそ今でも、「ブラウンGP最大の武器はダブルディフューザーではなく、互いを信頼し、挑戦を許容するチーム文化だった」と言い切るのである。

  • アストンマーティンF1苦戦は想定内?バトン「ニューウェイ加入もホンダも遅かった」

    アストンマーティンF1苦戦は想定内?バトン「ニューウェイ加入もホンダも遅かった」

    アストンマーティンF1のアンバサダーを務めるジェンソン・バトンは、2026年シーズンの苦戦は「ある程度予想できたことだった」との見解を示した。エイドリアン・ニューウェイの加入時期が遅れたことに加え、2026年からパワーユニット(PU)供給を開始したホンダも開発面で不利なスタートを切らざるを得なかったことが背景にあると分析している。

    一方でバトンは、ニューウェイの手腕とホンダとのパートナーシップには揺るぎない信頼を寄せており、現在の苦戦は一時的なものだと強調。

    さらにフェルナンド・アロンソについても、チーム復活のために今後も欠かせない存在だと語った。

    苦戦は「ある意味では予想できた」
    アストンマーティンは2026年からホンダ製PUを採用し、新レギュレーション時代に向けた大型プロジェクトを始動させた。しかし、シーズン前半は期待を大きく下回るパフォーマンスに苦しみ、ハンガリーGPで投入予定の「AMR26B」に巻き返しを託している。

    こうした現状についてバトンは、驚くべき結果ではないと語る。

    「厳しい状況なのは確かだ。でも、ある意味では予想できたことでもあった。エイドリアン・ニューウェイはチームへの加入が非常に遅かったし、ホンダとの契約もかなり遅い段階で決まった。ホンダにとっては完全に新しいプロジェクトだったし、他メーカーはずっと以前からこのパワーユニットの開発を進めていた」

    ホンダは2021年末にF1ワークス活動を終了した後、2023年に復帰を決断した。そのため開発体制を再構築する必要があり、2026年PUの開発では他メーカーより準備期間が短かったとみられている。

    ニューウェイ加入の遅れも影響
    バトンは、現在の苦戦は一つの要因だけで説明できるものではないと指摘する。

    ニューウェイが本格的にチームへ加わった時期が遅れたことで、マシン開発スケジュールにも影響が生じたほか、新PUへの対応や組織体制の整備など、多くの課題を同時に抱えていたという。

    さらにアストンマーティンについても、設備投資は進んでいるものの、トップチームと互角に戦える組織としてはまだ成熟の途上にあるとの見方を示した。

    「時間はかかるし、競争力がない状況は誰にとってもフラストレーションがたまる。でも、エイドリアンとローレンス・ストロールのリーダーシップのもとで、このチームにはエキサイティングなことが待っている。良いチームになるのは時間の問題だ」

    ニューウェイは最高のエンジニア
    AMR26の苦戦を受け、一部ではニューウェイの責任を指摘する声もある。しかし、バトンはそうした見方を否定し、その能力を高く評価した。

    「彼は革新的な発想をする人物だ。本当に特別な存在だ。思いつくアイデアは驚くべきものだし、複数のチームで世界選手権を制してきた実績がすべてを物語っている。ニューウェイは最高のエンジニアだ」

    さらに、「彼は常識にとらわれず考え、限界を押し広げる。本物の天才だ。アストンマーティンは最適な人物を迎え入れたと思う。これからも彼の仕事を見続けたい」と賛辞を惜しまなかった。

    また、チーム全体についても将来性に自信を示した。

    「必要なものはすべて揃っている。ホンダという素晴らしいパートナーがいて、エイドリアンが空力開発を率い、多くの優秀な人材もいる。ただ、それは一夜にして実現するものではない。ファンがもどかしさを感じるのは理解できるけれど、F1は非常に高度な技術競争なんだ。忍耐強く待つ必要がある」

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    アロンソには残ってほしい
    バトンは、アストンマーティン復活のためにはフェルナンド・アロンソの存在も重要だと考えている。

    「フェルナンドには残ってほしい。彼には大きな敬意を抱いているし、レーシングカーで何ができるのかを証明できるドライバーだからだ。アストンマーティンでその力を示してほしい」

    契約延長の可能性については、「チームが進歩し、マシンが正しい方向へ向かっていると感じられれば、その可能性は十分あると思う」と語った。

    さらに、マクラーレン・ホンダ時代にチームメイトだったアロンソとの思い出も振り返った。

    「フェルナンドとは2年間チームメイトだった。本当に素晴らしい経験だった。彼が仕事をする姿を見るのは楽しかったし、あの頃は僕たちにとって厳しい時期でもあった。だからこそ、彼にはこれからも続けてほしい」

    最後にバトンは、アロンソが引退を選んだとしても、その決断は尊重するとしながらも、ファンとしては現役続行を望んでいると語った。

    「もちろん引退を決断したとしても、その判断は尊重する。レーシングドライバーは自分にとって最善の決断をしなければならない。でも、一人のファンとしては、これからも何年もレースを続ける姿を見たい」

    アストンマーティンはハンガリーGPでAMR26Bを投入する予定となっており、2026年後半戦の巻き返しを目指している。バトンは現在の苦戦を一時的なものと捉えており、ニューウェイ、ホンダ、そしてアロンソという強力な布陣が揃うことで、将来的にはトップ争いに加わるチームになるとの期待を示した。

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  • アストンマーティンF1 アロンソ「ハンガリーのアップグレードだけでは不十分」

    アストンマーティンF1 アロンソ「ハンガリーのアップグレードだけでは不十分」

    フェルナンド・アロンソは、アストンマーティンF1がハンガリーGPで投入する大型アップグレードについて、ファンの期待が高まる一方で「それだけでは十分ではない」と強調した。今季初の本格的な空力アップデートは重要な一歩だが、それだけで競争力を取り戻せるわけではないとの認識を示している。

    アロンソは、ハンガリーGPで重視するのは順位ではなく、AMR26の弱点を正しく理解し改善できているかどうかだと説明。2027年以降の飛躍につながる技術的な方向性を確認することが最大の目的だと語った。

    ハンガリーGPのアップグレードだけでは十分ではない
    アストンマーティンF1は、2026年シーズンで唯一、本格的な空力アップグレードを投入していないチームだ。コストキャップの制約を踏まえ、小規模な改良を繰り返すのではなく、大規模なアップデートに開発資源を集中させてきた。

    その待望のパッケージはハンガリーGPで投入される予定だが、アロンソは過度な期待を戒めた。

    「ファンは僕たちがレースに勝ち、タイトル争いをすることを望んでいると思う」

    「でも今年は、どんなアップグレードを投入しても、それだけでは十分ではない。必ず次のアップデートが必要になる。だから、チームは昼夜を問わずマシン改善に取り組んでいることを理解してほしい」

    「僕たちは良くなっていくし、いずれレースにも勝てる。でも今年ではない。今回のアップグレードは計画の第一歩であって、最後の一歩ではない」

    アロンソは、ハンガリーGPでの改善を歓迎しつつも、それで開発を終わらせるべきではないと強調した。

    重要なのは弱点を正しく理解できるか
    今季のアストンマーティンは、予選ではトップ勢から約1秒遅れまで後退している。ホンダ製パワーユニットの振動問題は改善されたものの、依然として競争力不足や信頼性の問題を抱えている。

    そのためアロンソは、ハンガリーGPで求めるものは結果そのものではなく、マシン開発の方向性が正しいことを確認することだと説明した。

    「僕にとって重要なのは、ハンガリーでこのマシンの弱点を理解し、それに対処できていると感じられることだ。特に今回投入される最初の空力パッケージが重要になる」

    「今年のマシンにはドライビング中に非常に特有の問題がある。それが改善され、マシンを限界まで攻められるようになれば、来年へ向けて明確な道筋と良い勢いを得られると思う。それが僕にとって一番大切なことだ」

    アロンソは、短期的な順位よりも、将来につながる技術的な進歩を重視している。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    再建計画は当初から長期戦を想定
    アロンソによると、チームはAMR26の競争力不足が判明した段階で、短期間で解決できる問題ではないと認識していたという。

    「それが第7戦になるのか、第12戦になるのか、それともシーズン終盤になるのかは分からなかった。でも『これが今のスタート地点だ。このままでは十分ではない』ということは分かっていた」

    「ダウンフォースも足りないし、パワーも足りない。ギアボックスも経験も足りない。だから徹底的に分析し、体制を立て直し、計画を作る必要があった」

    この考え方が、アストンマーティンF1が大型アップグレードを一度に投入する開発方針につながった。

    今回のハンガリーGPのアップグレードは、アストンマーティンF1にとって再建への重要な第一歩となる。しかしアロンソは、それだけで問題が解決するとは考えておらず、継続的な開発によって初めて将来的な優勝争いにつながるとの考えを示した。

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    ・フェルナンド・アロンソ アストンマーティンF1残留は“ハンガリーGP次第”を否定

  • ホンダF1 初コンストラクターズ王座40周年 名車FW11がグッドウッドで復活走行

    ホンダF1 初コンストラクターズ王座40周年 名車FW11がグッドウッドで復活走行

    ホンダは、F1で初めてコンストラクターズタイトルを獲得してから40周年を迎えたことを記念し、2026年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで伝説的マシン「ウィリアムズ・ホンダ FW11」を走行させた。

    1986年の黄金時代を築いたFW11は、デイモン・ヒルと道上龍がステアリングを握り、「The Rivals – Epic Racing Duels(ライバルたちの壮絶な戦い)」をテーマに開催された今年のイベントで往年の雄姿を披露した。

    ホンダ初タイトルをもたらしたFW11
    FW11は、ホンダのF1参戦史における大きな転換点となったマシンだ。

    ホンダは25年ぶりにF1へ復帰し、世界最高峰の舞台で再び頂点を目指す挑戦を開始。当時パートナーとなったのが、1978年から本格参戦を開始し、1980年と1981年にコンストラクターズ王者となっていたウィリアムズだった。

    当時のウィリアムズはカスタマーエンジンの限界を感じており、ホンダのワークスターボエンジンプログラムに将来を託した。

    しかし、この決断がすぐに結果へ結びついたわけではない。1980年代前半は各メーカーが出力競争を繰り広げる一方で、信頼性確保が最大の課題だった。

    1984年のダラスGPで初優勝を飾ったものの、度重なるリタイアが課題の大きさを物語っていた。

    「Eスペック」が流れを変えた
    転機となったのが、シーズン途中に投入されたRA165Eエンジン、通称「Eスペック」だった。

    改良型パワーユニットによって競争力は大きく向上し、翌1986年のタイトル獲得へ向けた土台が築かれた。

    そして1986年、ウィリアムズ・ホンダはシーズン9勝を挙げてコンストラクターズチャンピオンを獲得。ホンダにとってF1初の世界タイトルとなり、創業者・本田宗一郎の悲願も達成された。

    ポルトガルGPでタイトル獲得を決めた後、当時のホンダF1責任者だった桜井淑敏はレースレポートに次のように記している。

    「本田宗一郎さんがどんな表情をされるのか、早く見たい」

    デイモン・ヒルと道上龍がFW11をドライブ
    グッドウッドでは1996年F1ワールドチャンピオンのデイモン・ヒルがFW11をドライブした。

    ヒルは1990年代にウィリアムズで活躍し、1996年にドライバーズタイトルを獲得。今回の走行は、1980年代の黄金期と1990年代の成功をつなぐ象徴的なイベントとなった。

    走行後、ヒルは40年前のF1マシンならではの魅力について次のように語った。

    「40年の間にF1マシンは大きく進化した。でも、このFW11は本当に特別なマシンだ。『あのマシンさえあれば世界チャンピオンになれたのに』と言うドライバーにも会ったことがあるけれど、その理由がよく分かる。ターボが効き始めると一気に加速し、丘を駆け上がるスピードは本当に恐ろしいほどだ。素晴らしい体験だった。ホンダ、このプロジェクトに携わったすべての皆さん、そしてウィリアムズに感謝したい」

    また、道上龍もFW11でデモンストレーション走行を行い、イベントへの喜びを口にした。

    「グッドウッドに来られて本当に興奮しています。このマシンは完璧で、本当に素晴らしいです。明日はもっと攻めて走りたいと思います」

    40周年が示すホンダF1の原点
    ウィリアムズ・ホンダが頂点に立つまでの道のりは決して平坦ではなかった。

    エンジントラブルに苦しみながらも改良を積み重ね、ワークス体制としてチームと密接に協力し続けたことで、1986年にはF1最強コンビへと成長した。

    今回の40周年記念は、単なる過去の栄光を振り返るものではない。継続的な技術開発、強固なパートナーシップ、そして失敗を乗り越える粘り強さが、ホンダをF1初戴冠へ導いたことを改めて示す機会となった。

    40年前に世界の頂点へ上り詰めたFW11は、ホンダF1が築いた栄光と挑戦の歴史を象徴する存在として、今なお多くのファンを魅了し続けている。

  • アストンマーティンF1がニューウェイを信頼 MP4-20をモンスターに変えた開発秘話

    アストンマーティンF1がニューウェイを信頼 MP4-20をモンスターに変えた開発秘話

    2026年シーズンのアストンマーティンF1は、ここまでわずか1ポイントと苦戦が続いている。それでもチーム内部では悲観論よりも、エイドリアン・ニューウェイが主導する開発計画への信頼が揺らぐことはない。

    その理由を語ったのが、チーム広報で元F1ドライバーのペドロ・デ・ラ・ロサだ。かつてマクラーレンでニューウェイと仕事をした経験を持つ彼は、2005年の名車「MP4-20」が最速マシンへと進化した舞台裏を明かし、アストンマーティンも必ず復活できると確信している理由を説明した。

    「アップデートなし」でも揺るがなかったチーム
    アストンマーティンはAMR26の根本的な改善を優先するため、小規模なアップデートを繰り返すのではなく、大型パッケージをハンガリーGPまで温存してきた。

    その結果、シーズン前半は最後尾付近で苦戦を強いられたが、デ・ラ・ロサによれば、チーム内では当初からその計画が共有されていたという。

    「雰囲気が変わったとは思わない。シーズン開幕からずっと同じだ」

    「僕たちは目標から大きく離れていることを理解していた。そしてチーム全体で計画を立て、その計画に向かって取り組んできた」

    「アップデートを投入しない期間は苦しかった。でもチームの雰囲気は変わらなかった」

    「僕たちは団結し、良い仕事を続けてきた。そして何を、いつ行うのかを全員が理解していた。それが非常に重要だった」

    「簡単な状況ではなかった。こういう時こそ組織は崩れやすい。でも僕たちはまとまり続け、必ず立て直せるという自信を持ち続けてきた」

    ニューウェイは20年前と何も変わっていない
    デ・ラ・ロサは2000年代前半、マクラーレンでテストドライバーを務め、ニューウェイとともにMP4-17D、幻に終わったMP4-18、MP4-19、そしてMP4-20の開発に携わった。

    その経験から、現在のニューウェイも当時と全く変わっていないという。

    「彼は本当に優秀だ。それがエイドリアンなんだ」

    「工場でもそうだし、チーム全員やランス(ストロール)、フェルナンド(アロンソ)と話す時も、何も飾らず率直に話す」

    「だからこそ優れたリーダーなんだ。今のような状況で最も重要なのは、全員が計画を理解していることだからだ」

    「世間は彼のインタビューを見て驚くかもしれない。でも僕たちは驚いていない。チーム全員が同じ情報を共有していたからだ」

    「だからランスもフェルナンドも落ち着いて仕事を続けられている」

    MP4-20を変えた「6度」の発見
    デ・ラ・ロサは、ニューウェイの能力を象徴するエピソードとして、2005年開幕戦オーストラリアGPでの出来事を紹介した。

    当時、金曜フリー走行でMP4-20を走らせていたデ・ラ・ロサに対し、ニューウェイは最も難しいコーナーを尋ねた。

    「彼は『一番ひどいコーナーはどこだ?』と聞いてきた。僕は『ターン1だ。これ以上速く走れない』と答えた」

    「すると彼は『なぜ速く走れない?』と聞いた。僕は『もっと攻めるとアンダーステアが強くなるからだ』と説明した」

    さらにニューウェイは、ステアリングをもっと切れないのかと質問した。

    「僕は『もちろん切れる。でもある角度を超えると急にステアリングが軽くなり、フロントグリップがなくなる』と答えた」

    ニューウェイは、そのステアリング角を実際に再現するよう求めたという。

    「僕がその角度を見せると、彼はメモを取りながらこう言った」

    「『6度以上のステアリング角については風洞データがない。クルマは6度までしか設計されていない。だから君の話は完全に理にかなっている。その領域は未開拓だから改善しよう』」

    マクラーレン MP4-20

    数戦後には最速マシンへ
    ニューウェイは、その問題を解決するため数戦後にフロントウイングを改良した。

    その結果、MP4-20は2005年シーズン最速クラスのマシンへと生まれ変わった。

    「数戦後、彼はフロントウイングを改良した。それがMP4-20の物語だ」

    「僕たちは2005年最速のマシンになった」

    「チャンピオンを獲れなかったのは主に信頼性の問題だった。でも速さは間違いなく一番だった。本当にモンスターだった」

    データだけでは速くならない
    デ・ラ・ロサは、ニューウェイ最大の強みはデータだけに頼らないことだと説明する。

    「彼はドライバーと話し、質問し、フィードバックを書き留め、必ず解決策を持って帰ってくる」

    「彼はデータだけではなく、人間の感覚も信頼している」

    「当たり前に聞こえるかもしれない。でも今のF1はデータ主導の世界だ。ドライバーの話を聞くエンジニアは多いが、エイドリアンほど細部まで掘り下げる人はいない」

    「結局、ドライバーが『なぜこれ以上速く走れないのか』という理由は、センサーやデータだけでは分からないこともある。それを理解できるのが彼なんだ」

    「彼なら必ず立て直せる」
    ハンガリーGPではAMR26の大型アップデートに加え、ADUO制度によるホンダ製パワーユニットの性能向上も投入される見込みとなっている。

    デ・ラ・ロサは、現在の苦境は過去にも経験してきたものであり、ニューウェイなら再び状況を変えられると確信している。

    「彼は何が悪いのか、どの部分に問題があるのか、そしてその理由を正確に見極められる」

    「その能力があるからこそ、チーム全体が『必ず立て直せる』と信じられるんだ」

    「2003年にマクラーレンで一緒に仕事をしていた時も同じだった。エイドリアンと話をすると、『僕たちは正しい方向へ進んでいる』と誰もが確信できた」

    「彼は何をすべきかを理解し、それを実現できる人なんだ。だから僕たちは前へ進み続けるだけだ。特別な秘密なんてないよ」

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