カテゴリー: F1マシン

  • キャデラックとアウディ 同じ野望と全く異なるF1参戦戦略

    キャデラックとアウディ 同じ野望と全く異なるF1参戦戦略

    2026年F1シーズンは、新レギュレーション時代の幕開けとともに、二つの巨大自動車メーカーの本格参戦という歴史的転換点を迎えた。アウディとキャデラック。両者はともに世界王者を目標に掲げるが、その出発点とアプローチは大きく異なる。

    アウディは既存チームを引き継ぐ形で体制を構築し、キャデラックはゼロから組織を立ち上げた。目指す頂は同じでも、歩む道は対照的だ。

    アウディF1 既存基盤を再建するワークス体制
    アウディはザウバーを母体にワークス参戦を開始した。フォルクスワーゲングループにとってF1最高峰への本格参入は初となる。

    チーム代表ジョナサン・ウィートリーは今季のローンチで次のように語った。

    「我々は遊びでここに来たわけではない。非常に野心的なプロジェクトだ。我々は自分たちの立ち位置も、目指す場所も理解している。アウディをF1史上最も成功したチームにしたい。その旅は今日から始まる」

    その言葉通り、目標は明確だ。5年以内にタイトル争いに加わることを掲げている。

    しかし道のりは平坦ではなかった。2022年の参戦発表後、初動投資は十分とは言えず、体制整備は遅れた。2024年にはアンドレアス・ザイドルが退任し、マッティア・ビノットとウィートリーによる二頭体制へ移行。ヒンウィル(シャシー)とノイブルク(パワーユニット)の両拠点を再編し、ようやく再建が進み始めた。

    2025年には徐々にパフォーマンスが改善し、ニコ・ヒュルケンベルグが長年の挑戦の末に初表彰台を獲得。2026年は自社製パワーユニットの初投入という新章を迎える。

    ヒュルケンベルグは現状を冷静にこう語る。

    「まだ推測の段階だ。本当の序列はメルボルン、そして数戦を経て初めて見えてくる。今はトラック特性に左右される部分も大きい」

    「チームは冬の間ハードに働いた。初めてパワーユニットも手掛けた。忙しく、挑戦の連続だった。現状は悪くないが、改善の余地は大きい」

    現在の位置づけは中団グループ。ハースF1チーム、アルピーヌ、レーシングブルズと争い、ウィリアムズより前という評価が大勢だ。タイトル争いにはまだ距離があるが、基盤強化は確実に進んでいる。

    アウディ F1

    キャデラックF1 ゼロから築くアメリカ型プロジェクト
    一方のキャデラックF1は、全く異なる道を選んだ。既存チームを買収せず、完全新規参入。政治的逆風を乗り越え、ゼロから組織を構築した。

    当初はアンドレッティ主導の参戦計画として進んだが、F1側に拒否されるなど紆余曲折を経た。その後体制を再構築し、GMの関与を強化。独自エンジン開発(2029年投入予定)を表明し、最終的に参戦が承認された。

    チーム代表グレアム・ロードンは立ち上げの苦労をこう振り返る。

    「我々は何も持たずにスタートした。既存チームも買っていない。すべてゼロからだ。非常に困難なのは承知している」

    現在はシルバーストンに6棟の施設を構え、米国にも拠点を展開。約600人規模の体制を築き上げた。だが、チームとして共に戦う経験はまだ1年未満に過ぎない。

    ロードンは今季の現実的な見通しも隠さない。

    「新規参入チームが最後尾でなければ、むしろ既存チームのどこかに問題があるはずだ」

    実際、開幕前テストでは最後尾と見られている。ただしそれは“計画通り”の位置だ。長期視点で基盤を築く戦略であり、短期的な結果に一喜一憂しない姿勢が徹底されている。

    「我々は長年F1を戦ってきたチームと対峙している。だがチームには経験豊富な人材がいる。プラットフォームには非常に満足している。メルボルンが待ちきれない」

    キャデラック F1

    同じ頂を目指す二つの異なる挑戦
    アウディは既存組織の再生とワークス体制の確立。キャデラックは白紙からの建設とアメリカ型分散モデル。

    前者は歴史と技術基盤を再構築するプロジェクト。後者は文化と組織を創造するプロジェクトだ。

    どちらも簡単ではない。だが両者に共通するのは、2026年レギュレーションを機会と捉えた明確な意思である。

    世界王者という最終目標は同じ。しかし、その道筋は対照的だ。

    新時代のF1は、トラック上の戦いだけでなく、組織構築そのものの戦いでもある。

  • FIA 2026年F1オーバーテイクモード調整の可能性を示唆

    FIA 2026年F1オーバーテイクモード調整の可能性を示唆

    2026年F1シーズンからDRSに代わって導入された「オーバーテイクモード」について、FIAのシングルシーター部門ディレクターであるニコラス・トンバジスが、必要に応じて強化・弱体化の調整を行う可能性があると明かした。

    新レギュレーション下でのエネルギー運用は大きな議論を呼んでいるが、FIAは拙速な変更を行うつもりはない姿勢も強調している。

    オーバーテイクモードは“強すぎても弱すぎても調整”
    2026年F1では、従来のDRSが廃止され、代わって「オーバーテイクモード」が導入された。

    このモードは、前車の1秒以内に接近した場合にのみ使用可能で、追加で0.5メガジュールのエネルギーをバッテリーに供給し、より長く高い速度を維持できる仕組みとなっている。

    しかし、バーレーンで行われた2回のテストセッションでは各チームが独自のプログラムを実施していたため、実際のレース状況での有効性はほとんど検証されなかった。

    トンバジスは現時点での評価について次のように語っている。

    「サーキットによるところが大きい。現時点では、ここでそれを評価する機会はあまりなかった。明らかに各チームがそれぞれのプログラムをこなしているし、テストでリスクを取ることも望んでいないからだ」

    「だからオーバーテイクについて結論を出すのはまだ早いと思う。ただし、もし弱すぎると感じれば強化できるし、強すぎると感じれば必要に応じて弱めることも可能だ」

    国際自動車連盟 F1

    “拙速な変更はない” オーストラリア前の改訂を否定
    2026年レギュレーションには批判的な声も少なくない。マックス・フェルスタッペンは、新世代マシンのフィーリングについて懸念を示している。

    それでもトンバジスは、開幕戦オーストラリアGP前に急な変更を行う可能性を否定した。

    「現実的に考えて、オーストラリア前に何らかの変更を加えるのは非常に難しいだろう。そして、拙速に反応する理由があるとも思っていない」

    「我々は関係者と議論したいと考えている。我々がすぐに介入して何かを変えるつもりはない。基本的には良いプロダクトを持っていると考えているが、適切にフィードバックを集め、分析したい。ゲームは長い。1戦や2戦で決まるものではない」

    エネルギー配分が鍵を握る2026年F1。その中核を担うオーバーテイクモードは、シーズン序盤の実戦を経て真価が問われることになる。

  • 2026年F1パワーユニット 3月1日で何が決まる?ホモロゲーション期限を解説

    2026年F1パワーユニット 3月1日で何が決まる?ホモロゲーション期限を解説

    2026年F1レギュレーションにおける重要な節目として、3月1日がパワーユニットのホモロゲーション提出期限となる。5社のパワーユニットメーカーは、この日までにFIA(国際自動車連盟)へ正式な申請書類を提出しなければならない。

    2026年から2030年まで続く新レギュレーションサイクルの根幹を成す制度であり、この日を境に各メーカーの設計は“凍結”状態へと入る。

    ホモロゲーションとは何か
    ホモロゲーションとは、各メーカーが設計したパワーユニットが技術規則に完全適合していることをFIAが公式に承認する手続きである。

    付録C5に定められた規定に基づき、FIAに登録されたすべてのパワーユニットメーカーは、参戦初年度の3月1日までに「ホモロゲーション・ドシエ(技術提出書類)」を提出しなければならない。

    この制度は2026年から2030年まで有効であり、途中参入メーカーにも適用される。たとえば2029年にゼネラルモーターズ製パワーユニットで参戦予定のキャデラックF1チームは、2029年3月1日までに提出義務を負う。

    2026年に参戦する5社、フェラーリ、メルセデス・ハイパフォーマンス・パワートレインズ、アウディ、レッドブル・パワートレインズ、ホンダは、2026年3月1日が提出期限となる。

    提出が求められる主要構成要素
    ドシエには、パワーユニットを構成するすべての主要要素の技術仕様と詳細説明が含まれなければならない。

    対象となる主な要素は以下の通りである。

    ■ 内燃エンジン(ICE)
    ■ コントロールエレクトロニクス(PU-CE)
    ■ 排気システム(EXH)
    ■ ターボチャージャー(TC)
    ■ エナジーストア(ES/バッテリー)
    ■ MGU-K

    さらに各要素に付随する細部部品の完全な内訳と補足資料も必要となる。

    FIAは提出後最大14日以内に審査を行い、承認されたパワーユニットは封印される。封印は不正改造防止および検証容易化を目的とする。

    一部の消耗部品(フィルター、スパークプラグ、センサーなど)は非封印扱いとなるが、基本構造の変更は認められない。

    ホモロゲーションを取得していないパワーユニットは2026年F1選手権で使用することはできない。

    4月1日の追加義務
    承認後、各メーカーは参戦初年度の4月1日までに、全要素を含む「基準パワーユニット」をFIAへ提出する義務がある。

    これは提出書類の物理的参照個体として保管され、以後の比較検証に用いられる。

    カスタマーチームへの適用
    ホモロゲーションはメーカー単位で行われるため、供給先チームすべてに同一仕様が適用される。

    例えばメルセデスは自社チームに加えマクラーレン、ウィリアムズ、アルピーヌへ供給し、フェラーリはフェラーリ、ハースF1チーム、キャデラックF1チームへ供給する。

    レッドブル・パワートレインズはレッドブル・レーシングとレーシングブルズへ、アウディは自社チームのみ、ホンダはアストンマーティンへ供給する。

    技術仕様、制御ソフト、運用条件、オイルや燃料仕様も原則として統一されなければならない。

    カスタマーチームが独自の燃料・オイル供給元を希望する場合、その旨をドシエ内で明示する必要がある。

    また、2026年参戦チームに対しては、2025年8月1日までに物理インターフェース位置、熱排出量推定値、エンジン剛性などの情報提供が義務付けられている。

    ホンダF1 エンジン/パワーユニット

    アップグレードは可能か
    2026〜2030年の5年間で、性能向上を目的とした開発機会は厳しく制限されるが、完全凍結ではない。

    信頼性向上を目的とする変更は、FIA承認を経て可能である。

    また、配線、ウエストゲート位置、ターボ配置、吸気系、ホース、バルブなどの軽微な変更も条件付きで許可される。

    いかなる変更であっても、導入予定日の14日前までに更新版ホモロゲーション書類を提出しなければならない。

    3月1日が意味するもの
    3月1日は単なる提出期限ではない。

    それは2026年F1勢力図の土台が確定する日であり、5年間続く技術競争の出発点である。

    アクティブエアロ、50/50ハイブリッド配分、新世代バッテリーを軸とする2026年F1時代において、パワーユニットの設計思想が事実上固定される瞬間でもある。

    ここから先は、限られた開発ウインドウの中で、いかに効率よく改善を重ねられるかが勝敗を分けることになる。

  • 2026年F1マシン ドライバーの“純粋な才能”は差を生むのか

    2026年F1マシン ドライバーの“純粋な才能”は差を生むのか

    2026年F1レギュレーションは、ドライバーがこれまで以上に主役になることを掲げて導入された。しかし実際のところ、純粋なドライビングスキルが本当に差を生むのか――その答えは単純ではない。

    エネルギーマネジメントの比重が増す中で、FIAは「より知的な戦い」を期待している一方、現場のドライバーたちからは賛否両論が聞こえてくる。

    FIAが描く“知性で差がつくF1”
    FIAのニコラス・トンバジスは、新時代のF1についてこう語っている。

    「エネルギー管理のチェスゲームになり過ぎるのは望ましくないが、ステアリングとアクセルとブレーキだけの単純な世界でもない」

    彼は、精神的能力は過去20年間常に重要だったと強調する。ミハエル・シューマッハを例に挙げ、「圧倒的な才能だけでなく、レース中に多くのことを同時に考えられる能力が差を生んでいた」と説明した。

    つまりFIAは、“考える力”が勝敗を分ける構図を肯定している。

    実際の現場感覚 20%がドライバー、80%がエンジニア
    しかし、実走テスト後のドライバーの感触はやや異なる。

    エステバン・オコンはエネルギー管理について「20%がドライバー、80%がエンジニア」と語った。週末前に戦略が緻密に組まれ、ドライバーはそれを忠実に実行する役割が大きいという。

    現状では、ドライバーの自由裁量は限定的であり、システムに従うことが重要になっている。

    一方、アンドレア・キミ・アントネッリは接近戦では違うと語る。バトル中は相手の動きを予測し、エネルギー使用を即座に調整する必要がある。ここでは確かにドライバーの判断力が差を生む。

    フォーミュラ1カー

    “限界で戦うF1”は失われるのか
    マックス・フェルスタッペンは、新世代マシンの走らせ方がフォーミュラEに近づいていると懸念する。

    「あるコーナーを少し遅く走った方がエネルギーを回収できて、結果的にラップが速くなる? それは理にかなっていない」

    彼が求めるのは、限界で攻め続けるF1だ。遅く走ることで速くなるという構図は、スポーツの本質から外れていると感じている。

    ジョージ・ラッセルも、必ずしもコーナーを最大限の速度で抜けることが最速ではないケースがあると認めている。速く走ればエネルギー消費が増え、直線で不利になる可能性があるからだ。

    ここに、2026年F1の最大の論点がある。

    マシン特性のポジティブな側面
    2026年マシンには明確な進化もある。

    ・小型化・軽量化により接近戦が増える可能性
    ・ダウンフォース減少でドライバーの操作量が増加
    ・立ち上がりでの強烈なトルクにより、より“暴れる”挙動

    オンボード映像では、前年よりも明らかにドライバーがステアリングと格闘している様子が確認できる。これは純粋な操作技術が問われる場面の増加を意味する。

    本当に差を生むのは何か
    問題は、エネルギー管理がこれらのポジティブ要素を覆い隠してしまわないかという点だ。

    F1は「限られたエネルギーを管理する世界選手権」ではない。そうしたカテゴリーはすでに存在する。F1はあくまで、人間とマシンが極限でせめぎ合う場であるべきだ。

    アンドレア・ステラは解決策として、レース中の電動出力を250kWに抑えることや、スーパークリッピングを350kWへ拡大する案を示唆している。これにより“リフト・アンド・コースト”を減らし、不自然な減速を避けられる可能性がある。

    2026年、ドライバーは確かにより多くの判断を求められる。しかし、それが“管理能力”による差なのか、“操縦技術”による差なのかで、F1の価値は大きく変わる。

    純粋な才能が本当に報われる環境を作れるかどうか。そこが2026年レギュレーションの真価を決めることになる。

  • スーパークリッピングとは? 350kW案は2026年F1の“プランB”になり得るのか

    スーパークリッピングとは? 350kW案は2026年F1の“プランB”になり得るのか

    2026年F1は、50/50のハイブリッド配分を軸とする新レギュレーションによって、エネルギーマネジメントがこれまで以上に重要になる。その中で注目されているのが「スーパークリッピング」だ。

    バーレーンテストでマクラーレンが350kWまで引き上げてテストしたことで、この仕組みが“調整可能なレバー”として機能する可能性が浮上している。

    スーパークリッピングとは
    スーパークリッピングとは、ドライバーがアクセル全開の状態でもエネルギー回収を行う状況を指す。

    通常、全開時は最大限のパワーを後輪へ送るが、2026年F1マシンではその一部をMGU-Kを通じてバッテリーに蓄えることができる。その結果、瞬間的な最高速は低下する。つまり「全開なのに遅くなる」という現象が起きる。

    現行の2026年レギュレーションでは、この回収量は最大350kWのうち250kWに制限されている。だがマクラーレンは、350kWフル回収のテストを実施した。

    オスカー・ピアストリ(木曜)とランド・ノリス(金曜)の最速ラップを比較すると、ラップタイム差はわずか0.010秒ながら、速度プロファイルは大きく異なった。ノリスは複数のストレートで最高速が低下しており、より多くのスーパークリッピングを使用していたと推測される。

    一方、ターン12ではピアストリの速度が約20km/h低下していた。そこでも両者は全開だったが、エネルギー回収の有無が速度差として表れた。

    これが、フェルナンド・アロンソが「速いコーナーでは50km/h遅くなる」と語った背景だ。

    350kWへの引き上げは“プランB”か
    マクラーレンのアンドレア・ステラは、回収上限を350kWまで引き上げることを提案している。

    現在は250kW制限だが、350kWまで回収できれば、ドライバーがアンナチュラルなリフト・アンド・コーストを行う必要が減る可能性があるという。

    FIAのニコラス・トンバジスは具体策への言及は避けたものの、調整の可能性自体は否定していない。

    FIAが持つ主な選択肢は二つだ。

    ・レース時の電力展開を250kWに抑え、全体出力を下げる代わりにエネルギー不足を緩和する
    ・スーパークリッピングを350kWまで引き上げ、全開時の回収を増やす

    どちらもエネルギー不足状態を緩和する方向の調整となる。

    2026年のF1世界選手権

    技術よりも難しい“政治”の問題
    問題は技術よりも政治だ。

    2026年F1ではエネルギー効率が大きなパフォーマンス差を生む。もしFIAが回収量を増やせば、効率面で優位に立つメーカーのアドバンテージは薄まる。

    さらに、すべてのパワーユニットメーカーが同じように350kW回収を実装できる保証もない。特定メーカーにとっては不利な変更になる可能性もある。

    また、バーレーンのような強いブレーキングゾーンが多いサーキットでは問題が顕在化しにくいが、メルボルンやジェッダのように回収機会が限られるコースでは影響が大きくなる。

    つまり、競技バランス、メーカー利害、ファン体験の三者がぶつかる構図だ。

    FIAはまず開幕戦を見極める
    FIAは即断するつもりはない。

    トンバジスは、実際のレース状況を確認してから判断すると明言している。ガバナンスプロセスも必要なため、オーストラリアと中国の間で即時変更という可能性は低い。

    ただし、何か月も放置するとも限らない。

    もし開幕数戦で、全開にもかかわらず大幅に速度が落ちるシーンや、不自然なエネルギーマネジメントが頻発すれば、スーパークリッピング350kW化は2026年F1のプランBとして現実味を帯びることになる。

    結局のところ問われるのは、競技の純粋な技術優位性を守るのか、それともシリーズ全体の魅力を優先するのか。その判断は開幕後のレース内容次第だ。

  • フェラーリF1 2026年型SF-26の革新 他チームが模倣できない巧妙設計

    フェラーリF1 2026年型SF-26の革新 他チームが模倣できない巧妙設計

    2026年F1プレシーズンテスト2週目、フェラーリが投入したSF-26の2つの革新的ソリューションがパドックの視線を独占した。

    レギュレーションの解釈を巧みに突いた設計は、単なる奇抜さではなく、空力と機械レイアウトを高度に融合させた“模倣困難”なパッケージだ。

    排気周辺に仕込まれた小型ウイングの狙い
    フェラーリは2回目のバーレーンテスト初日、排気テールパイプ前方に小型ウイングを装着した仕様を走らせた。

    このプレートは中低速コーナーでの排気ガス流を活用し、空力的な利益を得る狙いがあると見られている。

    F1テクニカル専門家のサム・コリンズは次のように語った。

    「多くの人が注目しているのが、排気テールパイプの後方に現れたプレートだ」

    「正確な目的を特定するには風洞やCFD解析が必要だが、オイルブリーザーパイプから出る蒸気の流れを見るとヒントがある。ほぼ垂直方向に引き上げられており、あのプレートがかなり強い空力的影響を与えていることを示唆している」

    ギアボックス配置と一体化した構造
    この設計は他チームが簡単にコピーできるものではないとコリンズは指摘する。

    「フェラーリ製ギアボックスを使っていないチームにとっては、これを再現するのは非常に難しい。ディファレンシャルの位置がギアボックスケーシング内でどう配置されているかと関係しているからだ」

    「この追加プレートを空力レギュレーション上で合法化するやり方は、マラネロのエンジニアによる非常に巧妙な横断的思考の成果だ」

    理論上、フェラーリ製ギアボックスを使用するハースのみが同様の解決策を採れる可能性がある。

    スクーデリア・フェラーリ フォーミュラ1カー

    “上下反転”リアウイングという衝撃
    さらにテスト終盤、フェラーリはルイス・ハミルトン車に“上下反転”リアウイングを一時的に投入した。

    可動状態で上部フラップが180度反転する独特の構造が確認され、アクティブエアロ領域の自由度を最大限に活用した設計と見られている。

    コリンズはこう続ける。

    「少なくとも1チームが同様のアクティブエアロを準備しているという噂は聞いている。しかし多くのチームは革新的なものを見ると、風洞やCFDで試して却下したと言いがちだ」

    「実際には、多くのチームがこのフェラーリのソリューションをどうやってリアウイングのエンドプレート内部にアクチュエーターやリンク機構を組み込んでいるのかを研究しているはずだ。新しい回転式ウイングを成立させるそのエンジニアリングは実に美しい」

    レギュレーションの“余白”を最大化
    2026年レギュレーションは制限が厳格化された一方で、設計自由度の“余白”も存在する。

    フェラーリは排気流、ギアボックスレイアウト、アクティブエアロ機構を統合し、その余白を最大化した。

    プレシーズン最終日にはシャルル・ルクレールが連続アタックで最速タイムを記録。革新性とパフォーマンスの両立を示してテストを締めくくった。

    SF-26は単なる奇策ではなく、2026年勢力図を左右する本格的な武器となる可能性がある。

  • F1エンジン圧縮比問題に決着 FIAが6月1日から高温検査導入を承認

    F1エンジン圧縮比問題に決着 FIAが6月1日から高温検査導入を承認

    2026年F1シーズン開幕を目前に控え、プレシーズンを通して議論の的となってきたパワーユニットの「圧縮比」問題が制度的な決着を迎えた。FIAと全5メーカーは検査方法の修正に合意し、新たな高温条件での検査を2026年6月1日から導入することを承認した。

    今回の変更は、圧縮比16:1の測定方法を巡る論争を受けたもので、FIAは全会一致での承認を強調している。

    圧縮比16:1を巡る測定条件の問題
    2026年F1レギュレーションでは、V6内燃エンジンの圧縮比は16:1に制限されている。これは新規参入メーカー、とりわけアウディの参戦を後押しするための基本設計思想の一つだった。

    従来、FIAは圧縮比を冷間・静止条件で測定していた。しかし一部メーカーが、冷間条件では16:1を満たしながら、実走行時の高温作動状態では圧縮比を拡大できる設計を実現しているのではないかとの指摘が浮上した。

    報道ではメルセデスがこの手法を活用しているとされ、アウディを中心にホンダ、フェラーリが測定方法の是正を求めたと伝えられている。圧縮比の差による性能向上は最大13馬力、ラップあたり0.3〜0.4秒に及ぶ可能性があるとの見方もあった。

    一方でメルセデス側は、性能差は数馬力に過ぎないと主張し、パワーユニットは完全に合法であるとの立場を崩していない。

    6月1日から冷間+高温の二重検査へ
    議論を経て、FIAは5メーカー(メルセデス、フェラーリ、ホンダ、アウディ、レッドブル・フォード)による電子投票を実施。10日間の審議期間を経て、妥協案は全会一致で承認された。

    新ルールでは、2026年6月1日から圧縮比は以下の条件で管理される。

    ■ 冷間条件
    ■ 高温作動条件(130度)

    そして2027年以降は、検査は高温作動条件(130度)のみで実施される。

    FIAは声明で次のように説明している。

    「圧縮比というテーマに対し、重要な努力が払われた。このパラメータは新規参入を促進するための基本目標のひとつであり、規則上は冷間条件で16:1に制限されている。」

    「FIAは妥協案を策定し、2026年6月1日からは冷間および高温条件の双方で管理し、2027年以降は130度の作動条件のみで管理する。」

    当初は8月1日導入案もあったが、今回の決定により6レース前倒しとなった。日程上はカナダGPとモナコGPの間で適用が開始される。

    2027年の高温単独検査がもたらす設計自由度
    今回の決定で注目すべきは、2027年から冷間検査が廃止される点にある。

    一般的にパワーユニットは温度上昇に伴い圧縮比が低下する傾向にあるとされる。しかし報道では、ある設計においては高温状態で圧縮比が上昇する構造が実現されている可能性が指摘された。

    2026年は冷間と高温の双方で16:1を満たす必要があるため、設計上の自由度は限定される。しかし2027年以降は高温条件のみでの検査となることで、各メーカーが高温作動域に最適化した設計を追求しやすくなる。

    これは一部の優位性を抑制する側面を持ちながら、長期的には設計アプローチの再均衡を促す可能性もある。

    国際自動車連盟 圧縮比 フォーミュラ1カー

    メキース「求めているのは明確さ」
    2026年から自社製パワーユニットを投入するレッドブル陣営のローラン・メキースは、次のように語った。

    「我々が求めているのは明確さだ。何が許されているのかを示してほしい。それが分かれば十分だ。重要なのは、許容範囲を明確に理解することだ。そのうえで各競技者は、自分たちが最善だと考える方法で結果を目指すべきだ。」

    「これはパワーユニットに限らず、すべてに当てはまる。」

    各メーカーにとっては性能差以上に、規則の透明性が重要であるとの姿勢を示した。

    エネルギーマネジメントも継続評価へ
    FIAはまた、2026年型パワーユニットにおけるエネルギーマネジメント戦略についても、プレシーズンテストおよび序盤戦のデータをもとに技術評価を続けると明らかにした。

    2026年レギュレーションは近年最大級の変更と位置づけられており、電動比率の大幅な増加により、ドライバーはより高度なエネルギーマネジメントを求められる。

    FIAは声明で「2026年のレギュレーションは近年最大級の変更であり、プレシーズンテストおよび初期ラウンドから得られる知見を踏まえ、さらなる評価と技術チェックを継続する」と述べている。

    圧縮比問題は制度的には収束した。しかし、実際の競争力への影響が明らかになるのは6月以降だ。高温検査導入が2026年F1の勢力図にどのような変化をもたらすかは、今後の開発戦争の行方を左右する重要な焦点となる。

  • キャデラックF1 2026年マシン名称は「MAC-26」 マリオ・アンドレッティに敬意

    キャデラックF1 2026年マシン名称は「MAC-26」 マリオ・アンドレッティに敬意

    キャデラックF1チームは、2026年F1シーズンに投入する初のマシン名称を正式に発表した。マシン名は「MAC-26」。1978年F1ワールドチャンピオンのマリオ・アンドレッティにちなんで名付けられた。

    フルネームは「マリオ・アンドレッティ・キャデラック26」。キャデラックの取締役を務めるアンドレッティの功績を称えるとともに、F1という舞台に挑むアメリカンチームの象徴として位置づけられている。

    1978年王者へのオマージュ
    1978年、ロータスのドライバーとしてF1の頂点に立ったマリオ・アンドレッティ。その偉業から48年後、彼の名はキャデラックのF1マシンに刻まれることになった。

    キャデラックF1のCEOであるダン・トウリスは、名称発表に際して次のように語った。

    「我々の最初のシャシーをMAC-26と名付けたのは、マリオがF1にもたらした精神、そしてアメリカのチームがこの舞台に属しているという信念を反映したものだ」

    「彼の物語はアメリカンドリームそのものだ。我々が日々このチームを築く姿勢を象徴している」

    マリオ・アンドレッティもまた、この命名を歓迎している。

    「レースは私の人生の喜びだった」

    「キャデラックF1チームがあの年月を意味あるものとし、このような形で記録してくれるのはこの上ない名誉だ」

    「F1と永続的な絆を持てる機会を得たことを大切に思っているし、レース史における私の役割を認め続けてくれるすべての人々に心から感謝している」

    キャデラックF1の2026年体制
    キャデラックは2026年F1シーズンのプレシーズン期間を成功裏に終え、初のF1マシンで重要な走行距離を積み重ねた。

    パワーユニットは当面フェラーリ製を使用し、ゼネラルモーターズは独自パワーユニットの開発を進めている。

    ドライバーラインナップには、F1で最も経験豊富な組み合わせのひとつであるバルテリ・ボッタスとセルジオ・ペレスを起用。両者は合計16勝を誇り、ボッタスは10勝、ペレスは6勝を挙げている。

    コンストラクターズ選手権では、ボッタスが在籍した2017年から2021年のメルセデスで5連覇に貢献。さらにペレスは2022年と2023年にレッドブルでタイトル獲得に寄与した。

    MAC-26はまもなくグランプリでデビューを迎える。2026年F1開幕戦オーストラリアGPは、3月6日から8日にかけてメルボルンで開催される。

  • マクラーレンF1 2026年F1はバッテリー管理でも本質不変「最速は空力」

    マクラーレンF1 2026年F1はバッテリー管理でも本質不変「最速は空力」

    2026年F1レギュレーションでは電動出力の比率が大幅に高まり、バッテリー管理がラップタイムに直結する新時代が幕を開ける。ドライバーにはリフト・アンド・コーストや回生を意識した走りが求められるなど、これまでとは異なるアプローチが必要となる。

    それでもマクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは、開発競争の本質は変わらないと強調する。鍵を握るのは依然として空力効率であり、最速マシンは依然としてコーナーで最も速いクルマだと断言した。

    「ドライビングの観点からすると、パワーユニットを最大限に活用して最速ラップタイムを達成するためには、時に直感に反することをしなければならない」とステラは語った。

    「予選ではブレーキング前にリフト・アンド・コーストをしなければならない場面も出てくるだろう。これまでのモータースポーツ人生でやってきた運転とは違うかもしれない。あるいは高速コーナーで全開で抜けるのではなく、少し回生を選ぶ場合もある」

    新世代パワーユニットでは電動出力が大幅に増加し、ブーストやオーバーテイクモードも組み込まれる。ドライバーはラップ全体を通してエネルギーの回収と展開を管理しなければならない。

    それでもステラは、シャシー開発の方向性は大きく変わらないと明言する。

    「しかし、これはシャシーの要件を大きく変えるものではない。可能な限り多くのダウンフォースを生み出すシャシーが必要であることに変わりはない。コーナーでできるだけ速く走りたいからだ」

    「もちろん、あるフェーズではエネルギーを回収し、それを加速局面で展開することになる。しかしメルボルンで最速となるクルマは、最も空力効率に優れたクルマだ」

    2026年型マシンではアクティブエアロが導入され、ストレートモード時のドラッグが新たな重要パラメーターとなる。従来はDRS作動時の空気抵抗が焦点だったが、今後はレース中の大半でウイングが開いた状態のドラッグ特性が問われる。

    「ストレートモードではドラッグが極めて重要になる。以前のDRS作動時のドラッグのようなものだ。しかし今回はレース全体に関わる。ラップの大半でウイングが開いた状態になるからだ」

    それでも結論は変わらない。

    「メルボルンで最速のクルマは、最もダウンフォースに優れ、コーナーで最も速いクルマだ」

    マクラーレン F1

    複雑化するF1と“シンプルさ”への課題
    一方でステラは、技術的複雑さが増す中で、ファンにとって分かりやすいF1を提供する必要性も強調した。

    「内燃機関として競争力が必要であるだけでなく、回生とパワー展開の面でも非常に競争力が求められる。これは非常に複雑なF1だ」

    「我々は慣れていくだろう。しかし、これ以上の複雑さを持ち込むべきではない。ここまでで十分だ」

    「我々チーム、F1、ドライバーは、ファンに可能な限りシンプルな形でこのスポーツを届けなければならない。自己完結的なF1は誰のためにもならない」

    「もしレギュレーションに適応が必要ならば、短期的に行うべきだ。それは良いレースのためであり、同時に分かりやすいレースのためでもある」

    「これはエンターテインメントビジネスだ。自己満足のための技術ビジネスではない」

    2026年F1はエネルギーマネジメントという新たな戦場を抱えながらも、開発競争の根幹は依然として空力効率にある。バッテリー戦略が話題を集める中でも、メルボルンで勝利を掴む条件は極めて伝統的だ――最も優れた空力パッケージを持つマシンである。

  • フェルナンド・アロンソ 2026年F1マシンを辛辣批判「レンタカーのようだ」

    フェルナンド・アロンソ 2026年F1マシンを辛辣批判「レンタカーのようだ」

    フェルナンド・アロンソは2026年F1バーレーンテストでAMR26を走らせた後、新レギュレーション下のマシンについて「レンタカーのようだ」と厳しく評した。

    50対50の電動・内燃比率を採用する新パワーユニット時代に入り、エネルギーマネジメントが走りの中心となったことで、ドライバーの影響力は低下していると指摘している。

    「常にグリップの限界だが…」高速コーナーで変わった戦い方
    「常にグリップの限界で走っている。もちろんコーナーによって違うが、常に限界だ」とアロンソは語った。

    「レンタカーでも、限界まで攻めれば常にグリップの限界にいる」

    「だが特に高速コーナーでは、よりチャレンジングではなくなった。それは認めなければならない。別に悪いことではない」

    アロンソは、エネルギーを温存するために高速コーナーで意図的にスピードを落とす場面があると説明する。

    「ここ(バーレーン)の10、12や、バルセロナのいくつかのコーナーでは、エネルギーを止めて温存し、コーナーを低い速度で抜ける判断をする。そうすればストレートで多くのエネルギーを使える」

    「ドライバーの観点からすれば、コーナー手前でどのエネルギー判断をするか次第で速さが決まる。つまり今は、ドライビングスキルの影響は以前より小さい」

    「異なるF1だ」

    フェルナンド・アロンソ フォーミュラ1カー

    「シェフでも運転できる」50km/h低下の現実
    アロンソは最初のバーレーンテストでも、エネルギーマネジメントの影響を具体的な数値で示していた。

    「今は10、12を、エネルギーを無駄にしたくないから50km/h低い速度で走っている。以前は260km/hだったが、今は200km/hだ」

    「その速度ならシェフでも運転できる。だがストレートで使うエネルギーを残したいから、そこで無駄にしたくない」

    「ドライバーとしては、コーナーで時速5キロ速く走って差をつけたい。しかし今は、次のストレートでどれだけエネルギーがあるかに支配されている」

    2026年F1は、ブーストモードやオーバーテイクモード、回生量の選択など戦略的要素が強調される時代へと移行した。ランド・ノリスのように「楽しい」と評価する声もある一方で、アロンソのようにドライバー主体の戦いが薄れたと感じる意見もある。

    AMR26で周回を重ねたアロンソの発言は、2026年F1が従来とは明確に異なるカテゴリーへと変貌しつつあることを示している。