2026年F1第12戦オランダGPの決勝は、ランド・ノリス(マクラーレン)がポールポジションからスタートする。予選ではマクラーレンが速さを示した一方、土曜日のスプリントでは長いスティントでリアグリップに苦しむ場面もあり、決勝ではタイヤ戦略が勝敗を左右する可能性がある。
ピレリの分析では、最速と予想されているのはミディアムからハードにつなぐ1ストップ戦略だ。
ただし、ソフトスタートとの差はわずかで、2ストップも大きく不利ではない。さらにフェラーリとマックス・フェルスタッペンは新品ソフトを残しており、各チームのタイヤ在庫の違いも戦略に影響する。
本命はミディアム→ハードの1ストップ
ピレリがスプリントまでのデータを分析した結果、現時点で最も速いと予測されているのはミディアムでスタートし、ハードへ交換して最後まで走る1ストップだ。
理想的なピットウインドウは27~33周目。タイヤのデグラデーション、摩耗、そしてザントフォールトでのオーバーテイクの難しさを総合すると、これが最もリスクの小さい戦略になる。
ピレリのモータースポーツディレクターを務めるダリオ・マラフスキは次のように説明する。
「デグラデーションの状況、パフォーマンス、摩耗に関するすべてのデータをまとめると、1ストップ戦略が有力になると考えている」
「1ストップなのは、オーバーテイクがかなり難しそうだからだ。2ストップにするとトラフィックに引っかかる問題が出てくる可能性がある」
つまり純粋なタイヤ性能だけでなく、コース上のポジションを守ることが重要になる。
新世代F1マシンでオーバーテイクはどう変わる?
ザントフォールトでは、F1復帰初年度の2021年にはオーバーテイクが非常に難しいと考えられていた。しかし、グラウンドエフェクトカーが導入された2022年以降、さらに最終コーナーまでDRSゾーンが拡大されたことで追い抜きは増加した。
2026年は状況が再び変わっている。マシンのダウンフォースが減少し、DRSに代わってオーバーテイクモードが導入されたためだ。
決勝で実際に追い抜きが可能なら、フレッシュタイヤを生かせる2ストップの価値が高まる。一方で抜くことが難しければ、タイヤ交換回数を減らしてトラックポジションを維持する1ストップが圧倒的に重要になる。
この判断が各チームの戦略を分けるポイントになる。

ソフト→ハードもほぼ同等の速さ
興味深いのは、ミディアムスタートが圧倒的に有利というわけではないことだ。
シミュレーションでは、ミディアム→ハードの1ストップと、ソフト→ハードの1ストップとの差はレース全体で約1秒しかない。
ソフトスタートの場合、理想的なピットウインドウは26~32周目。スタート直後のグリップが高いため、特に上位グリッドでは1コーナーまでの攻防で大きな武器になる可能性がある。
その代わり、ソフトはミディアムほど第1スティントを延ばす自由度がない。セーフティカーなどが入らず、予定より長く走らなければならなくなった場合には不利になる。
さらにタイヤ在庫にも違いがある。
フェラーリ勢とマックス・フェルスタッペンは新品ソフトを残している一方、マクラーレンとメルセデスには新品ソフトが残っていない。
予選までの段階で新品ソフトを温存しなかったことからも、マクラーレンとメルセデスが決勝でソフトスタートを最優先に考えていないことがうかがえる。

2ストップならミディアム→ハード→ソフト
2ストップはトラフィックのリスクを伴うものの、シミュレーション上の総レースタイムでは1ストップと大きな差がない。
最大のポイントは、フレッシュタイヤによるペース差を使ってコース上でオーバーテイクできるかどうかだ。
最も有力な2ストップ戦略は、
ミディアム→ハード→ソフト
という組み合わせになる。
最初のピットウインドウは24~30周目、2回目は46~52周目と予想されている。終盤にソフトを投入できれば、大きなタイヤデルタを使って攻撃することが可能になる。
もうひとつの選択肢が、
ソフト→ミディアム→ミディアム
だ。
この場合は21~27周目に最初の交換を行い、45~51周目に2度目のピットストップを行うのが理想とされている。
グリッド後方など、トラックポジションを守るよりも積極的に順位を上げる必要があるドライバーにとっては魅力的な戦略となる。

ルクレールのスプリントで浮上した「ミディアム→ソフト」
土曜日のスプリントによって、さらに興味深い選択肢が浮上した。
シャルル・ルクレールが中古ソフトで強力なペースを見せたことで、ミディアムからソフトにつなぐ1ストップも現実的な候補となっている。
この戦略では、ミディアムで35~41周目まで走り、その後ソフトへ交換する必要がある。
ソフトで走る距離はかなり長くなるものの、交換直後にはハードを履くライバルに対して約0.6秒のペースアドバンテージが見込まれている。
タイヤを最後まで持たせられるなら、終盤に強力な攻撃力を得られる戦略だ。特にフェラーリは新品ソフトを残しているため、状況次第では有力なカードになる。
2025年はセーフティカーが戦略を大きく変えた
前年のオランダGPでは、オスカー・ピアストリがミディアム→ハード→ハードの2ストップで優勝した。
ただし、これは通常のレース展開によるものではない。
当初は上位勢の多くが1ストップを想定していたが、ルイス・ハミルトンが小雨のなかターン3でウォールに接触。23周目にセーフティカーが導入され、上位勢が一斉にピットへ向かった。
さらに51周目にはアントネッリが2度目のピットストップを敢行。これに反応したルクレールが翌周にピットへ入り、コースへ戻った直後に両者がターン3で接触した。
再びセーフティカーが導入され、トップ勢は53周目にもう一度タイヤを交換した。
そのため2025年の結果だけから、ザントフォールトでは2ストップが有利だったと判断することはできない。一方で、セーフティカーが入れば戦略が大きく変化することは証明されている。

雨の可能性は低いが「海岸特有のにわか雨」に注意
決勝の天気予報では、基本的に雨は予想されていない。
ただし、北海沿岸に位置するザントフォールトでは「シーエフェクト」と呼ばれる現象によって局地的な雨雲が発生することがある。
冷たい空気が比較的暖かい海面上を通過すると、下層の空気が急速に暖められて水分を取り込み、対流雲が発達する。その結果、沿岸部で突然強い雨が降る可能性がある。
スプリント終盤にも雨粒が落ち始めており、完全に無視できる要素ではない。
鍵はトラックポジションとセーフティカー
基本戦略はミディアム→ハードの1ストップ。しかし、その優位性は決して大きくない。
ソフト→ハードとの差はレース全体で約1秒にすぎず、2ストップもタイヤデルタを生かしてオーバーテイクできれば十分に成立する。さらにルクレールのスプリントでのペースから、ミディアム→ソフトという攻撃的な1ストップも候補に加わった。
ポールのノリスを筆頭にマクラーレンとメルセデスが新品ソフトを持たない一方、フェラーリとフェルスタッペンには新品ソフトが残されている。この違いがセーフティカーやレース終盤の展開で大きな意味を持つ可能性もある。
ザントフォールトでオーバーテイクがどこまで可能なのか。そしてセーフティカーや突然の雨が入るのか。2026年F1オランダGPは、単純な1ストップ勝負に見えて、状況次第で複数の戦略が成立するレースになりそうだ。
