ルイス・ハミルトンは、F1イタリアGPで起きたシャルル・ルクレールとの一件について、2人だけで直接話し合い、問題を解決したことを明かした。
モンツァではオープニングラップの第1~2コーナーでフェラーリの2台が激しく争い、アウト側のハミルトンがグラベルへ押し出されて順位を落とした。レース後、ハミルトンはフェラーリにはチームメイト同士の戦い方を定める「ルールがない」と不満を表明していたが、スペインGPを前に両者は対立を収束させた。
ハミルトンとルクレールが1対1で話し合い
イタリアGPでは、ハミルトンが第1コーナーでルクレールのイン側に並び、第2コーナーまでサイド・バイ・サイドの攻防が続いた。
しかし、コーナー出口でルクレールが通常のレーシングラインへ戻ったことで、ハミルトンはグラベルへ押し出される形となった。4番手から大きく順位を落としたハミルトンは、最終的に6位まで挽回した一方、ルクレールは2周目のパラボリカでクラッシュしてリタイアした。
レース直後、ルクレールが2人の戦いについて「僕たちはやりすぎた」と表現したのに対し、ハミルトンは「そこに“僕たち”はない」と反論。さらに、メルセデス時代にはニコ・ロズベルグとの間に明確な交戦ルールが存在していたとして、フェラーリの対応に疑問を呈していた。
だが、マドリードでハミルトンは、ルクレールと直接話し合ったことで問題はすでに解決したと説明した。
「素晴らしいと思うのは、僕たちが話し合いを避けなかったことだ」
「僕たちは面と向かって座った。本当に彼と僕の2人だけで話をして、お互いにオープンかつ正直に意見を伝えた。それで問題は解決したし、もう前に進むことができる」
ハミルトンは、自らの非を認めたルクレールの姿勢についても高く評価している。
「彼の成熟度を示していると思うし、健全なことだと思う。これは僕たちが時間をかけて築いてきた関係だからね」
「もちろん、フラストレーションが生まれることはあるだろうし、これからもコース上でかなり接近する場面はあると思う。僕たちはペースという意味でも非常に近いからね」
「僕たちはどちらも同じくらい勝ちたいと思っているし、チームのためにいい仕事をしたいという気持ちも同じだ」
バスールとも話し合い フェラーリ内部で問題を整理
ハミルトンはルクレールだけでなく、週明けにはフェラーリF1のチーム代表フレデリック・バスールとも話し合ったという。
「本当にポジティブだった。月曜日にはフレッドとも話して、物事を整理するための話し合いをした」
「当然、意見が違うことはある。でも最終的には一緒になって、前に進むための道を見つけることができる」
ハミルトンは、こうした率直なコミュニケーションが可能になったこと自体が、フェラーリ加入後の約15カ月で築いてきた重要な進歩だと考えている。
「この15カ月ほどで僕たちが到達した場所のポジティブな部分のひとつだと思う。今はチーム内部で本当にいいコミュニケーションが取れているし、シャルルと僕の間でも同じだ」
また、モンツァでの一件そのものについても、F1の歴史を振り返れば特別な出来事ではないと強調した。
「このスポーツの歴史を見れば、こういうことは以前にも起きている。だから、それほど大きなことではない」
フェラーリに新たな“交戦ルール”はまだなし
一方、モンツァでハミルトンが問題視したフェラーリの交戦ルールについては、スペインGPまでに新たな取り決めが設けられたわけではない。
チームとの話し合いで具体的なルールが決められたのかと問われると、ハミルトンは「そうではない」と認めた。
「いずれ、どうすればもっと良くできるかについて話すことになると思う。でも、まだ状況を変えるための時間はほとんどなかった。2日間ですべてを変えることはできない」
ハミルトンによれば、問題はドライバー2人の取り決めだけではなく、フェラーリという巨大な組織の仕事の進め方にも関係している。
「今週末に向けてすぐ変えられるようなことではない。非常に多くの要素が動いているし、大勢の人が関わっている。長い間存在してきた文化もある。大きなものを動かすのは簡単ではないんだ」
「だから一歩ずつ進んでいく。その最初が話し合うことだ」
重要なのは、まずチーム内部で問題の存在を認識し、そこから解決策を構築していくことだとハミルトンは説明する。
「問題を認識するところから始まる。それはチーム内部ですでにできている。あとは一緒に解決策を見つけて、それをどう実行していくかということになる」
「一晩ですべてが変わるわけではない。おそらく何かを試して、それでも完璧には機能しないこともあるだろう。でも最終的には、僕たちがいるべき場所までたどり着けると思う」

ナンバー1待遇を要求したわけではない
モンツァを終え、ハミルトンはドライバーズ選手権首位のキミ・アントネッリとの差が76ポイントまで拡大した。
ハミルトンは以前からタイトル争いに向けてフェラーリにさらなるサポートを求めてきたが、それはルクレールより自分を常に優先するナンバー1待遇を要求しているという意味ではないと強調した。
「実際、それは僕が求めていることとは少し違う」
「重要なのは、チームとして最大限の結果を得られるように、きちんと仕事を遂行することだ。お互いに争って4位と5位で終わることではない」
「一緒に仕事をすることで表彰台を獲得して、もっと多くのポイントを取れるかもしれない」
メルセデスとの性能差も依然として課題
もっとも、フェラーリが直面している問題はチーム運営だけではない。
ハミルトンは、2026年のF1でメルセデスが依然として大きなパフォーマンス上の優位性を持っており、特にストレートでフェラーリがタイムを失っていると説明した。
「前回のレースを見れば、メルセデスはストレートだけで1周あたり0.6秒も速かった。ほとんどのサーキットでも、僕たちはストレートだけで0.3~0.4秒を失っている」
「だから、その差を考えれば、僕たちは本当に素晴らしい仕事をしてきたと思うし、マシンも改善し続けている。エンジンにも改良を加えてきた」
「最新のアップデートだけですべての差を一気に埋められるような魔法の解決策ではないことも分かっていた」
それでも、フェラーリが着実に前進していることについてハミルトンは前向きに捉えている。
「僕にとってポジティブなのは、僕たちが進歩し続けていることだ。彼らは本当に、本当に速い。だから簡単ではない」
そのため、ハミルトンはメルセデスだけを追いかけるのではなく、まずフェラーリ自身が毎週末のパフォーマンスを最大化することが重要だと考えている。
「彼らだけに集中するのではなく、今の僕にとって彼らは最優先ではない。僕たちの優先事項は、自分たちがどうすればベストを尽くして、週末を最大限に生かせるかということだと思う」
「彼らが素晴らしい週末を過ごすこともあれば、ミスをする週末もあるかもしれない」
「僕たちが自分たちの一貫性に集中して、毎週末を最大限に生かすことができれば、いつか彼らの弱点やミスを利用できるチャンスが来るかもしれない」
モンツァで表面化したフェラーリのチームメイト間の問題は、少なくともハミルトンとルクレールの間では決着した。ルクレール自身も第2コーナーで「やりすぎた」と認めており、両者は関係を損なうことなくスペインGPへ向かう。
一方で、明確な交戦ルールやチームとしてのレース運営には改善の余地が残る。タイトル争いでメルセデスを追うフェラーリにとって、2人の速さを互いの足を引っ張る方向ではなく、最大限のポイント獲得につなげられるかが今後の重要な課題となる。
