アストンマーティンとホンダが2026年F1シーズン後半戦の巻き返しに向けて投入する新スペック・パワーユニット(PU)は、ハンガロリンクで行われた初テストで明確な前進を確認した一方、当初期待されていた性能向上には届かなかったと報じられている。
新PUは今週末のF1オランダGPで実戦投入される予定だ。アストンマーティンはハンガリーGPで大幅改良型シャシー「AMR26B」を投入し、マシン側では大きな改善を果たした。
次に焦点となるのは、シーズン前半から大きな課題となってきたホンダPUがどこまで差を縮められるかだ。
ホンダが狙った「30馬力増」 初期テストでは届かず
イタリア版『Motorsport.com』の情報として伝えられたところによれば、ホンダは新スペックPUによって約30馬力の出力向上を目標としていた。
しかし、7月にハンガロリンクで非公開に行われたテストでは、得られた数値がその目標を「大幅に下回った」という。
それでも、従来仕様と比較すれば明確な「ステップアップ」は確認されているとされる。問題は、その改善幅がアストンマーティン側が期待するラップタイム約0.5秒の短縮につながる水準に達しているかどうかだ。
今回のアップデートは内燃機関(ICE)が中心となる。燃焼効率やフリクション、ターボ周辺などの改善に重点が置かれる一方、電気系についても改良が盛り込まれる。
ハンガリーでのテストは実戦投入前にデータを収集する重要な機会となったが、新PUの能力を最大限に引き出すには、複数のグランプリを通じたセッティングと制御の最適化が必要になる可能性がある。
AMR26Bとは異なり「即効性」は限定的か
アストンマーティンはハンガリーGPでAMR26Bを投入し、従来型から推定約1.8秒という大幅なラップタイム改善を果たした。
シャシー側のアップデートが投入直後から効果を示したのに対し、PUについては事情が異なる。ICEそのものの性能だけでなく、エネルギーマネジメントやドライバビリティ、冷却、車体との統合などを最適化する必要があり、性能を完全に引き出すまでには時間を要する。
その意味で、オランダGPは新スペックPUの完成形を評価する場というより、ホンダにとって実戦環境での「回復フェーズ」を本格的に開始する週末になる。
さらにフェルナンド・アロンソとランス・ストロールにはPU交換によるグリッド降格ペナルティを受ける可能性もあり、その場合、ザントフォールトでの週末は結果以上に新PUのデータ収集を優先する意味合いが強まる。
後方グリッドからのスタートとなれば、雨などによる波乱がない限りポイント獲得のハードルは高くなる。
ホンダにはライバル以上の開発機会
ホンダが抱える課題の大きさは、FIAの追加開発機会にも表れている。
2026年F1パワーユニット規則では、基準となるICE性能から一定以上遅れているメーカーに対して、追加の開発機会を認めるADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)が設けられている。
ホンダはベンチマークとされるレッドブル・フォードのICEに対して10%以上の差があると評価され、追加で約1100万ドルの開発費と230時間のベンチテストが認められているとされる。
これはホンダにとって大きなアドバンテージである一方、ライバルが開発を停止するわけではない。
フェラーリとアウディにも2026年と2027年にそれぞれ複数回のアップデート機会があり、メルセデスにもシーズンごとの開発枠が与えられている。そのため、ホンダが追いかけている目標そのものも動き続けることになる。
ただし、現在の性能差が大きいからこそ、ホンダにはライバルよりも大きな改善余地が残されているとも言える。

ニューウェイの指摘と重なるホンダの出遅れ
ホンダが2026年シーズン序盤から苦戦している背景には、新レギュレーションへの準備期間の不足もある。
ホンダは一度F1から撤退する方針を決め、その後に2026年からアストンマーティンと組んで正式復帰することを決断した。そのため、新規則PUの開発開始時点でメルセデスやフェラーリなどに対して遅れを取った。
さらに、アストンマーティンのチーム代表兼マネージングテクニカルパートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイはシーズン序盤、ホンダ側にF1経験の少ない人材が配置されていたことも課題のひとつだったと指摘していた。
ホンダ側もその後、F1プロジェクトに十分な経験を持たないスタッフがいたことを認めており、現在は開発体制そのものを含めて立て直しを進めている。
過去を振り返れば、ホンダが2015年にマクラーレンとF1へ復帰してから、レッドブルとともに勝利を争えるPUを完成させるまでには数年を要した。
ただし今回は追加開発制度が存在し、アストンマーティンとのワークス体制も構築されている。前回と条件は大きく異なる。
ハンガリーで確認された数値が当初の30馬力という目標を大幅に下回ったとしても、重要なのは新スペックが従来型から明確な前進を果たしている点だ。
ザントフォールトで投入される新PUがどこまで実戦で性能を発揮できるのか。そしてホンダが追加開発枠を生かし、シーズン後半にどこまでトップメーカーとの差を縮められるのか。AMR26Bで改善の兆しを見せたアストンマーティンにとって、次の焦点はホンダ側の開発スピードとなる。
