2026年全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦の決勝が8月9日(日)、宮城県のスポーツランドSUGOで行われ、7番グリッドからスタートした福住仁嶺(NTT docomo Business ROOKIE)が優勝。レース中盤のセーフティーカー(SC)導入を巡る展開で大きく順位を上げ、今季2勝目を飾った。
2位には福住と同じタイミングでタイヤ交換を行った岩佐歩夢(TEAM MUGEN AUTOBACS)、3位にはSC導入直前にピットインしたイゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)が入り、SCが勝敗を大きく左右する一戦となった。
野尻智紀が首位を守る序盤戦
決勝は気温26度、路面温度35度という週末を通じて最も涼しいコンディションのなか、14時20分にスタートした。
ポールポジションの野尻智紀(TEAM MUGEN AUTOBACS)が好スタートを決めて首位をキープ。2番手には太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が続き、好スタートを決めたフラガは1コーナーでオーバーランしたものの3番手を維持した。
その後方には牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)、福住が続いた。岩佐は2周目に小林利徠斗(KDDI TGMGP TGR-DC)をかわして順位を上げた。
トップでは太田が野尻を激しく追走。3周目にはオーバーテイクシステムを使用して1コーナーで仕掛けたが、野尻もシステムを使って防御し、首位を守った。
13周目にタイヤ交換義務のウインドウが開くと、各車が徐々にピットへ。トップグループでは太田が19周終了時に先に動き、野尻は翌20周終了時にピットインした。
野尻は太田の前でコースへ復帰。アウトラップで太田が接近し、最終コーナーでは並びかける場面もあったが、野尻がポジションを守った。
また、坪井は25周終了時にピットイン。前半に4番手を争っていた牧野の前でコースへ戻ったものの、すでにタイヤが温まっていた牧野がアウトラップの坪井に接近し、ハイポイントコーナーでオーバーテイクして再び前に出た。
27周目のアクシデントで状況が一変
野尻と太田がタイヤ交換を終えた後、暫定トップに立ったのはフラガだった。クリーンエアを得たフラガは好タイムを連発し、その後方ではまだタイヤ交換を行っていない福住と岩佐が走行を続けていた。
そして27周目、レースの流れを決定づける出来事が起きる。
阪口晴南(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)がエンジントラブルに見舞われ、SPコーナー外側にマシンをストップ。さらにロマン・スタネック(ナビクルBuzz MK RACING)がレインボーコーナーでスピンアウトした。
SC導入の可能性が一気に高まった状況を見て、PONOS NAKAJIMA RACINGは素早く反応。トップを走っていたフラガをピットへ呼び戻した。
フラガがピットロード上のコントロールラインを通過して27周目を終え、タイヤ交換作業を行っている最中にSC導入が正式にアナウンスされた。それとほぼ同時にSCがコースへ入った。
チームの迅速な作業もあり、フラガはピット出口の第2セーフティーカーラインで野尻と太田の前に出ることに成功。その先のS字を立ち上がったところでSCの後ろについた。一見すると、SC導入を完璧に読み切ったピットストップに思われた。
ステイアウトした福住と岩佐が一気に首位と2位へ
しかし、勝負を決めたのはさらにその前を走っていた福住と岩佐だった。
2人はフラガとは異なり27周目にはピットへ入らず、そのままステイアウト。SCがコースインするよりも先にコース上を通過した。
福住と岩佐は次の周にピットインし、ピットロード上のコントロールラインを通過した時点で28周目を消化。その後コースへ復帰すると隊列の後方についたが、周回数の関係から前方を走るマシンは実質的に周回遅れという状況になった。
ここで明暗を分けたのが、SCが実際にコースへ入るタイミングと、各車がピットロード上のコントロールラインを通過したタイミングだった。
フラガはSC導入を予測して27周目にピットへ向かい、ピットロード上のコントロールラインを通過して27周を完了。その直後にSCがコースへ入った。野尻と太田に対しては先行することに成功しており、通常であれば非常に効果的なタイミングでのピットストップだった。
しかし、福住と岩佐はこの27周目にピットへ入らなかった。2台はSCがコースインする前にコース上を通過し、そのまま28周目へ突入。つまり、フラガが27周を消化した状態だったのに対し、福住と岩佐はひと足先に次の周回へ入ることができた。
その後、福住と岩佐は28周目にピットイン。ピットロード上のコントロールラインを通過して28周を完了してからコースへ復帰した。この時点で、福住と岩佐はフラガ以下のマシンに対して周回数でひとつ先に進んでいる状態となった。
見た目上は福住と岩佐が隊列の後方へ戻ったため、大きく順位を落としたようにも映った。しかし、実際には前方に並んでいたフラガ、野尻、太田らはまだ28周目を完了しておらず、福住と岩佐から見れば1周遅れに相当する状態だった。
そのため、SCによる隊列整理が進むと状況が一変する。福住が実質トップ、岩佐が2番手となり、最終的にSCの直後へ移動。フラガは3番手となり、その後方に野尻、太田が続く本来の順位へと整理された。
PONOS NAKAJIMA RACINGがSC導入を読んでフラガをピットへ呼び込んだ判断そのものは素早かった。しかし今回は、SCがコースインする直前にステイアウトして次の周回へ入った福住と岩佐の方が、結果的にさらに大きなアドバンテージを手にすることになった。
SUGOでは1周の距離が短いこともあり、わずかな時間差が「同一周回」か「1周先」かという大きな違いにつながった。SC導入を予測して先に動いたフラガと、あえてコース上に残った福住、岩佐。その判断とタイミングの差が、第8戦の勝敗を決定づけた。
福住仁嶺が岩佐歩夢の追撃を抑えてトップチェッカー
レースは35周終了時に再開。福住はSPアウト付近から加速して首位を守り、岩佐がその背後につけた。
36周目にはS字からハイポイントコーナーにかけてフラガが岩佐にプレッシャーをかけたが、岩佐が2番手を死守。一方、その後方では37周目のストレートで太田が野尻をオーバーテイクし、4番手へ浮上した。
終盤は福住、岩佐、フラガが僅差のまま周回を重ねた。福住と岩佐の差は0.7〜0.9秒前後、岩佐とフラガも0.6〜1.1秒ほどという緊迫した状況が続いた。
ファイナルラップを前に、トップ3はいずれも残していたオーバーテイクシステムを使い切って最後の攻防へ。それでも福住は岩佐に決定的なチャンスを与えず、51周を走り切ってトップチェッカーを受けた。
7番グリッドからスタートした福住は、チームのストラテジーとSC導入のタイミングを最大限に生かして大逆転。今季2勝目を手にした。
岩佐は2位、SC導入を予測して素早くピットへ入ったものの、わずかなタイミングの差で首位を逃したフラガは3位。太田が4位、野尻が5位となった。
以下、6位牧野、7位坪井、8位サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOM’S)、9位ザック・オサリバン(TEAM IMPUL)、10位佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)までがポイントを獲得した。
次戦は10月9日(金)〜11日(日)に富士スピードウェイで開催される第9戦、第10戦。ポイントリーダーの太田がタイトルを決める可能性もある大会となる。
スーパーフォーミュラ第8戦は、SC導入そのものだけでなく、「SCがいつコースインし、各車がどのタイミングでコントロールラインを通過したか」が勝敗を分けるレースとなった。フラガ陣営もSCを予測して素早く動いたが、結果的にはステイアウトを選択した福住と岩佐が最大の恩恵を受け、福住がSUGOで今季2勝目をつかみ取った。

■2026年スーパーフォーミュラ第8戦 スポーツランドSUGO 決勝正式結果
1位 #14 福住仁嶺(NTT docomo Business ROOKIE)
2位 #1 岩佐歩夢(TEAM MUGEN AUTOBACS)
3位 #65 イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)
4位 #6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
5位 #16 野尻智紀(TEAM MUGEN AUTOBACS)
6位 #5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
7位 #36 坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)
8位 #37 サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOM’S)
9位 #19 ザック・オサリバン(TEAM IMPUL)
10位 #64 佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)
11位 #3 ルーク・ブラウニング(REALIZE KONDO RACING)
12位 #7 小林可夢偉(KDDI TGMGP TGR-DC)
13位 #12 小出峻(ThreeBond Racing)
14位 #8 山下健太(KCMG)
15位 #39 大湯都史樹(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)
16位 #22 松下信治(DELiGHTWORKS RACING)
17位 #10 Juju(HAZAMA ANDO Triple Tree Racing)
18位 #53 チャーリー・ブルツ(TEAM GOH)
19位 #9 ジュリアーノ・アレジ(KCMG)
20位 #50 野村勇斗(San-Ei Gen with B-Max)
21位 #28 小林利徠斗(KDDI TGMGP TGR-DC)
NC #4 笹原右京(REALIZE KONDO RACING)
NC #38 阪口晴南(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)
NC #97 ロマン・スタネック(ナビクル Buzz MK RACING)
