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  • メルセデスF1代表が「最強PU」発言 FIAのADUO判定に新たな疑問

    メルセデスF1代表が「最強PU」発言 FIAのADUO判定に新たな疑問

    メルセデスF1代表のトト・ヴォルフが「メルセデスは最も強力なパワーユニット(PU)を搭載している」と公言したことで、FIA(国際自動車連盟)のエンジン性能均衡制度「ADUO」を巡る議論が再燃している。

    2026年シーズン開幕前のFIAの評価では、レッドブル・フォードが最も高性能な内燃エンジン(ICE)を持つと判定され、メルセデスは2番手と評価された。しかし、ベルギーGP後のヴォルフの発言は、その判断に新たな疑問を投げかけるものとなった。

    ヴォルフ「最も強力なPUを持っている」
    ベルギーGPでキミ・アントネッリが今季8勝目を挙げた一方、ジョージ・ラッセルはルイス・ハミルトンとの接触でオープニングラップにリタイアを喫した。

    レース後、ヴォルフはSky Sportsのインタビューで、メルセデスの競争力について次のように語った。

    「僕たちはチームとしてベストを尽くしている。僕たちは最も強力なパワーユニットを持ち、勝てるだけの強いマシンもある」

    「誰もがミスを最小限に抑えるために全力を尽くしている。それでも人間がやっている以上、ミスは起きるものだ」

    さらにヴォルフは、今季のメルセデスは性能そのものではなく信頼性が最大の課題だと認めた。

    「それが今シーズンの物語だ。僕たちはすでにそのせいで多くのポイントを失っている。本来なら、もっと大きなリードを築いているはずだった」

    ベルギーGPではメルセデス製PUを搭載する全チームに共通するトラブルが発生していたこともヴォルフは明かしており、ラッセルもケメル・ストレートで十分なパワーが得られなかったことで、1周目の接触事故は避けられなかったとの見解を示している。

    ADUO判定との食い違いが論争を再燃
    ヴォルフの「最強PU」発言が注目を集めた理由は、FIAが導入したADUO制度との食い違いにある。

    開幕前の性能評価では、レッドブル・フォードが最も高性能な内燃エンジンを持つと判定され、追加開発の対象外となった。一方、メルセデスは2番手評価だったため、2026年に1回、2027年にも1回の追加開発機会が認められている。

    もっとも、ADUOの評価対象は内燃エンジン単体であり、ハイブリッドシステムやバッテリー性能は含まれていない。このため、総合的なPU性能ではメルセデスが上回っている可能性は以前から指摘されていた。

    レッドブルはFIAの判定に異議を唱え続けており、測定期限前にメルセデスが意図的にエンジン出力を抑えていたのではないかとの見方も一部では取り沙汰されている。

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    メキース「トトは正しい」
    ヴォルフの発言について問われたレッドブル・レーシング代表のローラン・メキースは、笑みを浮かべながら同意を示した。

    「トトは正しいと思う」

    「だから彼らはストレートで大きなアドバンテージを持っていた。それはここ数戦ずっと見てきたことだ」

    現時点でFIAがADUOの評価を見直す予定はないとみられるが、ヴォルフ自身が「最強PU」と認めたことで、次回の性能評価に向けた議論はさらに活発になりそうだ。

    また、現在の2026年型PUについては性能以上に、エネルギーマネジメントや信頼性への不満も広がっている。

    マクラーレンのオスカー・ピアストリは「予選前からコンピューターが結果を左右するようでは、まともなレースとは言えない」と厳しく批判。ランド・ノリスも「自分ではどうにもできない要素が多すぎる」と同様の懸念を示している。

    PU性能を巡る議論は、単なる出力競争ではなく、ハイブリッドシステム全体の評価方法やエネルギーマネジメントの在り方へと発展しつつあり、FIAには今後の制度見直しを求める声がさらに高まりそうだ。

  • レッドブルF1代表「有力ドライバーからも連絡が来る」 フェルスタッペン去就に言及

    レッドブルF1代表「有力ドライバーからも連絡が来る」 フェルスタッペン去就に言及

    マックス・フェルスタッペンの去就を巡る憶測が続くなか、レッドブル・レーシングのチーム代表ローラン・メキースは、F1のドライバー市場ではトップドライバーだけでなくトップチームにも多くのアプローチが寄せられると明かした。

    フェルスタッペンには2027年に向けてマクラーレン移籍の噂が絶えない一方、レッドブルも有力ドライバーから接触を受けていることを認め、現在のラインアップ維持がチームにとって理想だとの考えを示した。

    F1移籍市場は「双方向」 レッドブルにも有力ドライバーが接触
    2026年シーズン後半を迎え、F1のドライバー市場は本格的な動きを見せ始めている。

    その中心にいるのがマックス・フェルスタッペンだ。現行契約は2028年末まで残されているものの、契約解除条項の存在が報じられており、2027年に向けて去就への注目が高まっている。

    本人は「何か発表することがあればその時に話す」と繰り返しているが、マクラーレン移籍説は依然として消えていない。

    一方でマクラーレン・レーシングCEOのザク・ブラウンは、ランド・ノリスとオスカー・ピアストリのコンビに満足しているとして、フェルスタッペン獲得の可能性を否定する姿勢を示している。

    しかし、仮にフェルスタッペンがマクラーレンへ移籍した場合には、ピアストリがレッドブルへ移籍するとの見方も浮上している。

    こうした憶測についてメキースは、移籍市場ではチーム側もドライバー側も互いに接触し合うのが自然なことだと説明した。

    「これは双方向のものだ。皆さんも以前から報じていたように、ごく自然なことだと思う」

    「マックスは世界最高のドライバーだから、あらゆるチームから連絡が来るのは当然だ。同じようにトップチームであれば、多くの優秀なドライバーから連絡を受けることになる。それも自然なことだ」

    マックス・フェルスタッペンとアイザック・ハジャー(レッドブル・レーシング)

    レッドブルF1の理想はフェルスタッペンとハジャー継続
    メキースは、こうした移籍報道がチーム運営に悪影響を及ぼしているわけではないと強調した。

    チームが最優先に取り組んでいるのはマシンの競争力向上であり、それがフェルスタッペン残留につながる最善の方法だという。

    また、アイザック・ハジャーの成長にも大きな手応えを感じていると語り、現在のドライバーラインアップを維持することが理想だと明言した。

    「私たちにとって気が散るようなことではない。完全に集中しているのはマシンをできるだけ速くすることだ。そうすれば世界最高のドライバーを引き留めることができる」

    「そしてマックスの隣でアイザック・ハジャーが大きく成長していることも実感している」

    「私たちにとっては、その組み合わせが理想のラインアップだ。その体制を維持できるよう全力を尽くしている」

    2027年に向けたドライバー市場は、フェルスタッペンの決断を軸に大きく動く可能性がある。メキースは冷静な姿勢を崩していないものの、レッドブルが有力ドライバーからも魅力的な選択肢として見られていることを認めたことで、今後の移籍市場への注目はさらに高まりそうだ。

  • フェルナンド・アロンソ アストンマーティンF1に憤慨 ウェバー「狂ったようだった」

    フェルナンド・アロンソ アストンマーティンF1に憤慨 ウェバー「狂ったようだった」

    フェルナンド・アロンソの2026年F1ベルギーGPでの苛立ちは、チェッカーフラッグ後の走りにも表れていたようだ。元F1ドライバーのマーク・ウェバーは、アストンマーティンF1の苦戦を強いられるアロンソが、インラップで「マシンの中で狂ったようだった」と振り返った。

    アストンマーティンF1は今季ここまで深刻な戦闘力不足に苦しんでおり、ベルギーGPではアロンソが2周遅れの最下位でフィニッシュ。

    チームは今週末のハンガリーGPで大規模アップグレード「AMR26B」を投入する予定で、現状最後のレースとなったスパでフラストレーションは頂点に達していたようだ。

    ウェバー「マシンの中で狂ったようだった」
    ベルギーGPでアロンソは孤独なレースを強いられ、2度の周回遅れとなり最下位でチェッカーを受けた。最後尾を走っていたチームメイトのランス・ストロールもリタイアしたため、アストンマーティンF1にとっては厳しい週末となった。

    チャンネル4のベルギーGPハイライト番組で、「F1で最下位を走ることと、F1にいないことのどちらがいいか」と問われたウェバーは、アロンソの心境について次のように語った。

    「彼は間違いなくそんなことを考えている。疑いようがない」

    さらにウェバーは、チェッカー後のインラップで見せたアロンソの挙動が、彼の精神状態を物語っていたと明かした。

    「彼のインラップを見ていた。チェッカーを受けてラ・ソースまで行き、そこからピットレーンへ戻る。実際には200メートルほどしか走らない」

    「それなのに彼はアクセルを踏みつけ、マシンを横滑りさせていた。マシンの中で狂ったようだった」

    「彼にとって8月の夏休みは、いろいろ考える時間になるだろう」

    フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    AMR26B投入がアストンマーティンF1の転機となるか
    アストンマーティンF1はハンガリーGPで、エイドリアン・ニューウェイが「Bスペックカーに匹敵する」と表現した大規模アップグレードを投入する予定だ。2026年シーズン最大級とも言われる刷新であり、チームはここから巻き返しを狙っている。

    ただしアロンソ自身は、今回のアップグレードだけで自身の将来を判断することはないと明言している。契約は2026年末で満了となるが、判断材料はマシン性能ではなく、「自分がF1を楽しめているかどうか」だという。

    近年はアルピーヌ復帰説も報じられている一方で、45歳を迎えるアロンソには引退という選択肢もある。さらに、2026年の新レギュレーションについて最も厳しい批判を続けるドライバーの一人でもあり、今後の去就は依然として不透明な状況だ。

    ベルギーGPで露わになったアロンソの苛立ちは、アストンマーティンF1が置かれている苦境を象徴する場面だった。ハンガリーGPで投入されるAMR26Bが期待通りの効果を発揮できるかは、チームの巻き返しだけでなく、アロンソの将来を占う意味でも重要な週末となりそうだ。

  • ウィリアムズF1 メルセデスPUの“裏技”を分析「システムを欺いている」

    ウィリアムズF1 メルセデスPUの“裏技”を分析「システムを欺いている」

    メルセデスが2026年シーズンに見せている予選での圧倒的な加速性能。その秘密とされるパワーユニット(PU)の制御方法について、ウィリアムズF1のチーム代表ジェイムス・ボウルズが興味深い見解を示した。

    メルセデスのカスタマーチームであるウィリアムズも同じPUを搭載しているが、ワークスチームと同等のパフォーマンスを引き出せているわけではない。ボウルズは、メルセデス独自のエネルギーマネジメント手法を分析し、自チームでも再現を目指していることを明かした。

    メルセデスが見つけた「システムを欺く」エネルギー制御
    2026年のF1ではエネルギーマネジメントがラップタイムを左右する重要な要素となっている。メルセデスは、この分野でライバルを一歩リードしているとみられている。

    ボウルズによると、メルセデスはPUのエネルギー使用をより有利な区間へ配分できるよう、「システムを欺く(trick the system)」ような制御を実現しているという。

    その代償として、ドライバーはラップ終盤で一時的にアクセルを戻す必要があると分析している。実際、ベルギーGPのスパ・フランコルシャンでは、アンドレア・キミ・アントネッリとジョージ・ラッセルが最終セクターでリフトしている様子がデータ上でも確認できる。

    しかし、その結果として最終コーナーの立ち上がりでは大きなエネルギーを利用でき、長いホームストレートで卓越した加速性能を発揮していることが特徴だ。

    同じPUでもワークスとの差は埋まらず
    ウィリアムズはメルセデス製PUを使用しているものの、同じ制御戦略をそのまま利用できるわけではない。

    ボウルズはSky F1のインタビューで、その現状を次のように説明した。

    「彼らがやっているのは、実質的にはシステムを欺いて、より効率的な場所でエネルギーを使えるようにしていることだ。その代償としてリフトが必要になる。それが我々の現時点での最も有力な分析だ」

    「我々はメルセデスのカスタマーチームだが、だからといって彼らと同じものが利用できるという意味ではない」

    「だから我々も舞台裏で全力を尽くし、パワーユニットを同じように運用できる方法を見つけようとしている」

    現在のウィリアムズは、カルロス・サインツJr.とアレックス・アルボンの競争力向上に向け、このエネルギーマネジメント技術の再現に取り組んでいるという。

    2026年F1で広がるPUソフトウェア開発競争
    2026年レギュレーションでは、PUそのものの性能だけでなく、回生と放出をどのタイミングで行うかというソフトウェア制御が大きな差を生み出している。

    ボウルズの発言は、同じメルセデス製PUを搭載していても、ワークスチームだけが活用できる運用ノウハウや制御技術が存在する可能性を示唆するものだ。今後、カスタマーチームが同様の手法をどこまで再現できるかは、予選での勢力図を左右する新たな開発競争の焦点となりそうだ。

  • レーシングブルズF1代表 ニコラ・ツォロフを高評価「次に昇格するのは彼」

    レーシングブルズF1代表 ニコラ・ツォロフを高評価「次に昇格するのは彼」

    レーシングブルズF1のチーム代表アラン・パーメインが、レッドブル育成ドライバーのニコラ・ツォロフについて「次に昇格する立場にいる」と語り、2027年のF1昇格候補として最有力であることを認めた。

    ツォロフはFIA F2選手権で好調を維持しており、2027年にリアム・ローソン、アービッド・リンドブラッドとシートを争う可能性が取り沙汰されている。一方でパーメインは、現時点ではドライバーラインアップの決定を急いでいないと強調した。

    ツォロフを「次の昇格候補」と評価
    ブルガリア出身の19歳ツォロフは、F3でランキング2位となった昨年を経て今季からF2へ参戦。ベルギー大会スプリントレースでは4位に入り、3連勝こそ途切れたものの、ランキング首位を維持している。

    ランキング2位のガブリエレ・ミニに22ポイント差をつける活躍を受け、一部ではすでにレッドブル陣営のいずれかのF1チームで2027年のシートを確保したとの報道も浮上している。

    これについてパーメインは、契約が決まったとの見方は否定しつつも、ツォロフが昇格候補の筆頭であることを認めた。

    「彼は本当に素晴らしい仕事をしている」

    「彼が候補に入っているという表現では少し控えめすぎる。次の順番にいるドライバーだと言っていいだろう」

    ただし、昇格時期についてはまだ何も決まっていないと説明した。

    「それがいつになるかは正直分からない。本当にまだそのことを考えている段階ではない」

    「彼は彼の仕事を続け、僕たちは僕たちの仕事をする。そして、もしレーシングブルズに昇格させるタイミングが来れば、その時に判断する」

    ニコラ・ツォロフ

    ローソンとリンドブラッドの去就にも影響か
    パーメインの発言は、2027年以降のレーシングブルズのドライバー体制を巡る憶測が続く中で飛び出した。

    報道では、ツォロフ昇格の場合はリアム・ローソンがシートを失う可能性があると伝えられているが、ローソン本人はシーズン序盤の時点で冷静な姿勢を示していた。

    「まだそういう話をするには早すぎる」

    「今季はここまで本当にいいシーズンになっている。このクルマから学ぶことはまだ多いし、それを毎週積み重ねている。チーム全体としても良い状態にある」

    「今はその勢いを維持することが大切だし、僕自身もチームも今の状況には満足している」

    ローソンは今季開幕9戦で7度のポイント獲得を記録。2025年序盤にレッドブル・レーシングからわずか2戦で降格となった苦境を乗り越え、評価を大きく回復させている。

    一方のリンドブラッドもルーキーイヤーから安定した速さを見せており、レーシングブルズは4戦連続ダブル入賞を達成。コンストラクターズランキングでは6位につけ、5位アルピーヌとの差を1ポイントまで縮めている。

    レッドブル昇格へ2人を育成することが使命
    パーメインは、ローソンとリンドブラッドの両者が将来的なレッドブル・レーシング昇格を目標にしていると説明。その育成こそがレーシングブルズの重要な役割だと強調した。

    「速いドライバーが2人いるのは素晴らしいことだ。もちろん、いずれはマネジメントが必要になる場面もあるだろう」

    「2人の差は本当にわずかだ。理想ラップを見てもミリ秒単位の差しかない。今年いっぱい接戦が続くはずだ」

    さらに、マックス・フェルスタッペンのチームメイト、あるいは将来的な後任候補として送り出せる体制を整えることが重要だと語った。

    「2人ともレッドブル・レーシングを目指している。それは間違いない」

    「そして、僕たちチームの役割も、そのチームへ送り出せるドライバーを育てることだ」

    「具体的な話をするにはまだ早いが、2人とも昇格できる準備を整えておく必要がある」

    「もし新たなドライバーが必要になれば、1人か2人の候補から選べる状態にしておきたい」

    ツォロフの台頭によってレッドブル育成プログラムの競争はさらに激しさを増しており、2027年のドライバー市場に向けた動向は今後も大きな注目を集めそうだ。

  • ピレリが解説 2026年F1タイヤを左右するホイール開発とドライビングスタイル

    ピレリが解説 2026年F1タイヤを左右するホイール開発とドライビングスタイル

    2026年のF1では、ダウンフォースの減少やアクティブエアロ、エネルギー回生システムの影響により、タイヤを適正な作動温度へ入れる方法が従来とは異なっている。ピレリのモータースポーツ責任者を務めるダリオ・マラフスキは、特にフロントタイヤのウォームアップが難しくなったと説明した。

    さらに、自由度が拡大されたホイールの設計は、タイヤの温度と内圧を制御する重要な開発領域となっている。

    各チームの設計思想に加え、ドライバーのステアリング操作やコーナー進入時のスタイルも、タイヤの温度と摩耗に明確な違いを生み出しているという。

    2026年型F1マシンはタイヤを温めにくい
    2026年型マシンは、2025年型よりもタイヤへ伝えるエネルギーが少ない。マラフスキは、全体的なダウンフォースの減少に加え、アクティブエアロと回生ブレーキがタイヤの熱収支を変化させていると説明した。

    「簡単に言えば、2026年型マシンは発生するエネルギーが少なく、複数の要因によってタイヤへ伝わる熱も少なくなっています」

    「まず、全体的なダウンフォース量が2025年よりも低くなっています。さらにアクティブエアロがあります。ストレートでウイングが開くとダウンフォースが減少するため、高速走行中にタイヤを路面へ押しつける力も前年より小さくなります」

    回生ブレーキの割合が増えたことも、タイヤの温度に影響している。通常のブレーキで発生する熱が減り、ブレーキディスクからホイールを介してタイヤへ伝わる熱量も小さくなるためだ。

    「エネルギー回生の影響もあります。電気モーターによる回生ブレーキでは、ブレーキディスクからホイール、そしてタイヤへ伝わる熱が少なくなります」

    「その結果、タイヤの熱的な状態は低くなり、熱収支も前年とは異なります。この点はタイヤの設計段階から考慮していました」

    2026年のタイヤは前年より小型化され、形状と材料も変更された。しかし、モナコのようにタイヤへ加わる負荷が小さいサーキットでは、依然としてウォームアップに時間が必要になる。

    モナコGPの予選では、多くのドライバーがアタックラップの前に通常より1周多い準備周回を行った。

    「モナコはタイヤへの負荷が小さいサーキットです。そのため、タイヤを温める段階に少し長い時間が必要になります」

    「C5コンパウンドの性能水準も再調整しましたが、C5はモナコだけではなく、ほかのサーキットでも使用できなければなりません。そのため、モナコGPの週末には、ほぼすべてのチームが準備周回を行いました」

    特にフロントタイヤのウォームアップが難しい
    2026年型タイヤでは、温度を維持することよりも、まず適正温度へ到達させることが課題になっている。特にフロントタイヤは、リアよりも温めるのが難しい傾向がある。

    「重要なのは、タイヤを適切な温度まで到達させることです。また、フロントとリアを分けて考える必要があります」

    「多くの場合、アウトラップで適切なエネルギー量と手順を見つけ、フロントとリアの両方を理想的な作動領域へ入れなければなりません」

    「一般的には、リアタイヤよりもフロントタイヤを適切な温度へ入れるために、より多くの作業が必要です」

    フロントを積極的に温めようとするとリアタイヤへ負担が集中する可能性があり、リアを守ればフロントが十分な温度へ到達しない場合もある。

    そのバランスはマシンのセットアップだけでなく、アウトラップ中のブレーキングやステアリング操作、ドライバーごとの準備手順にも左右される。

    ホイール設計が新たな性能開発領域
    2026年はホイール設計の自由度が拡大され、各チームが独自の形状を開発できるようになった。テレビ映像では確認しにくい部分だが、マラフスキはタイヤ性能に大きな影響を与えていると説明した。

    「ホイール設計の自由度は、チームにとって明確な開発機会です。テレビでは一般の方に見えにくい部分ですが、非常に重要です」

    「ホイールの設計は前年から大きく変化しています。中空のスポークを備えたホイールも見られます。チームによっては、それを『ポケット』と呼んでいます」

    中空スポークは、ブレーキダクト周辺の冷却空気とホイールとの間で熱交換を促進するために使われている。

    「中空スポークは、ブレーキダクトから来る冷却との熱交換を促進するためのものです。各チームがこの領域を管理する方法には違いがあります」

    「どこかのチームが優れていて、別のチームが劣っているという単純な話ではありません。異なる方法を採用しているということです」

    チームによってはタイヤを積極的に温めることを重視し、別のチームは温度の上昇を抑えることを重視する。

    「あるチームにとっての目標はタイヤを温めることかもしれません。一方、別のチームにとっては冷やすことが目標になる場合があります。それはマシンのバランスによって異なります」

    「ブレーキダクト、ブレーキドラム、ホイールの設計は、タイヤを最適な作動領域へ入れるためのエンジニアリングツールになっています」

    タイヤ F1

    低い内圧を維持できるほどグリップで有利
    F1では安全上の理由から、ピレリが走行開始時と走行中の最低内圧を指定している。チームはその範囲内で、タイヤ温度の上昇による内圧増加を抑えようとしている。

    一般的にタイヤの内圧が低いほど接地面積を確保しやすく、グリップ面では有利になる。しかし、タイヤが発熱すれば内圧も上昇するため、ロングランでは温度と内圧を適正な範囲へ保つ必要がある。

    「チームは、スタート時の内圧から安定した作動内圧へ移行するまでの上昇量を効果的に制御できます」

    「特にロングランでラップタイムの安定性を分析すると、それはホイールなどを利用して内圧を制御し、スティント全体を通して最適な領域へ保つ能力によっても決まります」

    ただし、すべてのチームが低温、低内圧を目指しているわけではない。マシンの特性によっては、タイヤを積極的に発熱させる必要がある。

    「一般論としては、低い内圧で走ることはグリップ面で有利です。しかし、レースペースやマシンの性能によっては、タイヤへ多くの熱を発生させるため、内圧を低く維持することが難しいチームもあります」

    「一方で、まったく反対の問題に直面するチームもあります。すべてのチームが同じことをしているわけではありません」

    ドライビングスタイルでも摩耗に差
    タイヤの使い方は、マシンの設計だけでなく、ドライバーのコーナー進入時の操作によっても変わる。

    マラフスキは、ターンイン時に急激なステアリング操作を行い、フロントタイヤを意図的に飽和させるドライビングスタイルを例に挙げた。

    「コーナー進入時のマシン挙動を把握しにくい問題へ対応するため、一部のドライバーはターンインの瞬間にフロントタイヤを飽和させる傾向があります」

    「フロントを飽和させるというのは、非常に急激で速いステアリング操作を行い、フロントタイヤへ瞬間的に大きな舵角を与えることです」

    フロントタイヤへ大きな舵角を与えると、マシンは一度直進しようとする。その間にリアが安定し、その後にフロントタイヤが徐々にグリップを得る。

    「マシンが最初に直進しようとすることで、リアアクスルがより安定します。そして、フロントが徐々にグリップを得る形になります」

    「このようにフロントを意図的に過飽和させるドライビングスタイルは、タイヤの摩耗と温度にも影響します」

    ピレリは各レース、各セッションでタイヤの摩耗を測定しており、ドライバーによる違いも確認しているという。

    「我々は各レース、各セッションで、各チームのタイヤを分析し、摩耗量を測定しています。実際に違いが確認されています」

    ただし、摩耗パターンはドライビングスタイルだけで決まるわけではない。アンダーステア傾向を強めたセットアップや、キャンバー角の変更もタイヤの使い方へ影響する。

    「もちろん、その違いにはセットアップ上の選択も混ざっています。すべてがドライビングスタイルだけで決まるわけではありません」

    「チームがアンダーステア傾向の強いセットアップを選択する可能性もあります。また、リアを安定させるためにフロントのキャンバー角を減らす場合もあります」

    「その結果として、摩耗パターンを通じてタイヤの使い方に違いが見られます」

    2027年も5種類 C6は導入せず
    ピレリは2027年に向けてコンパウンド開発を進めているが、ドライタイヤは現在と同じ5段階を維持する。現在のC5より柔らかいC6は追加しない方針だ。

    「コンパウンドは常に開発しています。これまでのテストですでに基礎的な作業を行い、2027年に使用する可能性がある新しい材料パッケージの土台を作りました」

    「現時点でお伝えできるのは、2027年も5段階を維持するということです。追加もしませんし、削減もしません」

    ピレリはC6の導入も検討したが、モナコGPでC5を使った予選が十分に成立したことや、C6をほかのサーキットで活用しにくいことから見送った。

    「追加コンパウンドの導入については検討し、議論も行いました。しかし、モナコではC5を使用した戦いが非常にエキサイティングでした。そのため、さらに柔らかいコンパウンドを加える必要はないと考えています」

    「仮にモナコ向けにC6を用意しても、シーズンのほかのレースでは使い道がありません」

    2027年は、各コンパウンドの性能差を明確にしながら、異なるピット戦略が成立しやすい特性を目指す。

    「来年のパフォーマンス目標に合わせ、5段階のコンパウンドを再調整します」

    「最大ラップタイムという点で5段階に明確な性能差を持たせ、それに応じてデグラデーションにも段階的な違いを設けることが目標です」

    「セーフティカーやレースの中断が発生しなければ、チームとドライバーが異なる戦略を選択できる余地を作りたいと考えています」

    ピレリは、インターミディエイトとフルウエットの間を埋める「スーパーインターミディエイト」の開発も継続している。ただし、2026年はウエットテストや雨天走行の機会が少なく、2027年に導入できるかはまだ確定していない。

    2026年のF1タイヤ性能は、コンパウンドだけで決まるものではない。ダウンフォース、アクティブエアロ、回生ブレーキ、ホイールとブレーキ冷却の設計、マシンのセットアップ、ドライバーのステアリング操作が相互に影響する。中でも、タイヤの温度と内圧を管理するホイール開発は、各チームの性能差を生み出す重要な領域となっている。

  • アストンマーティンF1が示唆「今ならホンダは選ばなかったかもしれない」

    アストンマーティンF1が示唆「今ならホンダは選ばなかったかもしれない」

    アストンマーティンF1のチーム代表代行を務めるマイク・クラックは、2026年シーズン序盤の苦戦を振り返り、「今ならホンダを選ばなかったかもしれない」とも受け取れる率直な見解を示した。一方で、その苦境がアストンマーティンとホンダの結束を強め、現在では両者の関係は大きく改善したと強調している。

    アストンマーティンは今週末のF1ハンガリーGPでエイドリアン・ニューウェイ主導による初の大型シャシーアップデートを投入し、その後のF1オランダGPではホンダが改良版パワーユニットを投入する予定だ。

    苦戦が続くプロジェクトは、巻き返しへ向けた重要な局面を迎えている。

    「本当の性能を知っていたら違う選択もあった」
    2026年の新レギュレーション導入に向け、アストンマーティンとホンダには大きな期待が寄せられていた。しかし開幕するとマシンは競争力を欠き、ニューウェイがホンダの準備不足や情報共有に苦言を呈するなど、両者の関係は開幕戦メルボルンから緊張状態となった。

    クラックは当時を振り返り、結果論ではあると前置きしながらも、別の判断をしていた可能性を認めた。

    「もちろんメルボルンでは非常に大きなフラストレーションがあったし、エイドリアンからも状況についてかなり厳しいコメントがあった」

    「もし当時、本当のパフォーマンスレベルを事前に知っていたなら、チームは違う判断をしていたかもしれないし、別のパートナーを選んでいた可能性もある」

    この発言は、「今ならホンダを選ばなかったかもしれない」とも受け取れるものであり、シーズン序盤の失望の大きさを物語っている。

    苦境がホンダとの結束を強めた
    一方でクラックは、その苦しい経験こそがアストンマーティンとホンダの関係を大きく変えたと語る。

    「厳しい時期が続くことは分かっていた」

    「その件について何度も話し合いを重ねた。そして今では関係は劇的に改善している。アストンマーティンとホンダだけでなく、ガレージ、エンジニアリングオフィス、シルバーストンとさくらを結ぶ技術面での協力体制まで、あらゆる面で良くなった」

    「本当に大変だった。だが、その経験を乗り越えたことで状況は改善していった」

    さらに、厳しい戦いが両組織を一つにしたと説明した。

    「寝る時間もなく、厳しい批判にもさらされたことが、私たちを一気に結び付けた」

    「これは全員で乗り越えなければならない問題だった。もちろん時には苛立ちもあったが、感情的になっても意味はなかった」

    「こうした状況では成熟し、プロフェッショナルでなければならない。そして前へ進む必要がある」

    「再び戦えるようになった時、この半年間を振り返り、多くの学びを将来に生かしたい。それは技術だけではなく、協力体制や人間関係という面でも非常に価値のある経験になるはずだ」

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダF1

    ホンダも巻き返しへ向けて首脳会談
    ベルギーGPにはホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長も現地入りし、ローレンス・ストロール、エイドリアン・ニューウェイ、エンリコ・カルディレらと会談を行った。

    渡辺社長は、シャシーアップデートの進捗確認に加え、2027年を見据えた議論も実施したことを明かしている。

    「まずシャシーを含めたアップデートの状況を確認しました。また2027年についてもさまざまな話し合いを行いました」

    「この状況を打開するには、パワーユニットだけでなくシャシーも含めたシステム全体を改善しなければなりません。ただし、トップチームとの差を一気に縮められるわけではないことは、全員が理解しています」

    「今回のアップデートでどこまで前進できたのか、そして次のアップデートで何を目指すのかを共有しました。F1では同じ認識を持って一つのチームとして戦うことが重要です。そのためローレンスだけでなく、エイドリアンやエンリコとも直接話をしました」

    ニューウェイがベルギーGPに帯同していたかとの質問には、「はい、現地に来ています」と答えた。

    クラックは「今ならホンダを選ばなかったかもしれない」とも受け取れる率直な胸の内を明かした一方で、その苦境を乗り越えたことでアストンマーティンとホンダの協力体制はかつてないほど強固になったと強調した。ハンガリーGPのシャシーアップデート、そしてオランダGPで予定されるホンダのパワーユニット改良版は、その成果を示す重要な試金石となる。

  • ハースF1 2027年のフォルナローリ獲得でマクラーレンと基本合意との報道

    ハースF1 2027年のフォルナローリ獲得でマクラーレンと基本合意との報道

    ハースF1が2027年シーズンに向け、マクラーレンのリザーブドライバーを務めるレオナルド・フォルナローリの獲得で基本合意に達したと報じられた。

    『The Race』によると、現時点では「レター・オブ・インテント(基本合意書)」が交わされている段階であり、契約が成立したわけではない。ただし、フォルナローリは2027年のハースF1の有力候補として位置付けられているという。

    レンタル移籍が実現への条件
    報道では、フォルナローリがハースF1へ加入する場合、マクラーレンからのレンタル移籍となる見込みだとされている。

    2024年にFIA F3王者、2025年にはFIA F2王者に輝いたフォルナローリは、現在マクラーレンのリザーブドライバーを務めている。ハースF1はエステバン・オコンとの契約を見直す場合、その後任候補としてフォルナローリを真剣に検討しているという。

    一方で、契約がまとまる保証はなく、現時点では「基本合意」にとどまっていると報じられている。

    オコンは苦戦 ベアマン残留が有力
    2026年シーズンのハースF1では、オリバー・ベアマンとエステバン・オコンがレギュラードライバーを務めている。

    ベアマンは開幕から8戦で18ポイントを獲得し、ドライバーズランキング11位と好調なパフォーマンスを見せている。一方のオコンはわずか3ポイントにとどまり、ランキング16位と苦戦。こうした状況から、2027年に向けてシート喪失の可能性が取り沙汰されている。

    フェラーリ所属のベアマンについては、2027年もハースF1で走ることが広く予想されている。

    角田裕毅の名前も候補に
    ハースF1の2027年シートを巡っては、フォルナローリのほか、2025年限りでレッドブル陣営のシートを失った角田裕毅の名前も候補として報じられている。

    現時点ではフォルナローリが有力候補とされるものの、最終的なラインアップはオコンの今後の成績や、マクラーレンとの交渉次第となりそうだ。

    マクラーレン首脳も高評価
    フォルナローリは先月のスペインGPでFP1に出走し、ランド・ノリスに代わってマクラーレンをドライブ。ジョージ・ラッセルから0.853秒差の5番手タイムを記録し、高い評価を得た。

    セッション後、マクラーレンF1代表のアンドレア・ステラはフォルナローリについて次のように語っている。

    「将来的にはマクラーレンで走る可能性もあるが、まずはレオナルドとともにF1参戦の可能性を探っていきたい」

    「今回の機会は十分に値するものだった。数か月にわたって彼と仕事をしてきたが、人間性もドライバーとしての能力も非常に高く評価している。本当に興味深い才能だ」

    現時点では契約締結には至っていないものの、フォルナローリは2027年のハースF1候補として具体的な交渉が進んでいるとみられている。

  • マックス・フェルスタッペン ドメニカリCEOと会談 現行F1を「F3のようだ」と酷評

    マックス・フェルスタッペン ドメニカリCEOと会談 現行F1を「F3のようだ」と酷評

    マックス・フェルスタッペンが2026年F1ベルギーGPの週末に、F1 CEOのステファノ・ドメニカリと会談していたことが明らかになった。会談内容は公表されていないが、フェルスタッペンが繰り返し批判してきた2026年レギュレーションが話題に上った可能性がある。

    会談は、フェルスタッペンが現行F1マシンを「F3のようだ」と酷評した直後に行われたとされており、そのタイミングにも注目が集まっている。

    ベルギーGPでドメニカリCEOと会談
    オランダ紙『De Telegraaf』のエリック・ファン・ハーレン記者によると、フェルスタッペンはベルギーGP期間中にドメニカリCEOとの予定された会談に臨んだ。

    具体的な内容は明らかにされていないものの、今季たびたび問題視している2026年レギュレーションや、F1の将来について意見交換した可能性が高いとみられている。

    フェルスタッペンとドメニカリが顔を合わせるのは今季初めてではなく、F1側は現行レギュレーションへの批判や将来への懸念を示すフェルスタッペンとの対話を続けている。

    「F3のようだ」と現行F1を酷評
    フェルスタッペンはベルギーGP予選後、スパ・フランコルシャンの長い全開区間では電力マネジメントの影響で十分なパワーを使えない現状について厳しく批判した。

    「第2セクターのほとんどはエンジンだけで走っている。450〜500馬力くらいだから、ほぼF3と同じようなものだ。でもダウンフォースだけはF1なんだ」

    「だから運転していてまったく楽しくない。でも、また文句を言うつもりはない。たぶん、この部屋を出たら誰かに撃たれるだろうからね」

    さらにフェルスタッペンは、自身の考えを押し通すのではなく、現状を受け入れて戦うしかないと複雑な胸中も明かした。

    「以前も言ったように、精神的にはこの状況に適応しようとしている。もちろん、これが僕の好きなF1でも、愛しているF1でもない。でも家で何もしないよりはいい。だからベストを尽くしている」

    マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)とステファノ・ドメニカリ(F1 CEO)

    将来を左右するレギュレーション問題
    フェルスタッペンは今季、2026年レギュレーションに対する不満を繰り返し口にしており、改善されなければ将来的なF1引退の可能性にも言及している。

    一方で、レッドブル・レーシングも2026年マシンの競争力不足に苦しんでおり、フェルスタッペンの将来を巡る憶測は絶えない。チームは残留を望んでいるが、現行レギュレーションへの不満とマシン性能への失望が重なり、2027年以降の去就は依然として不透明な状況が続いている。

    今回のドメニカリCEOとの会談は詳細こそ明かされていないものの、F1を代表するドライバーとシリーズ最高責任者による重要な意見交換として、今後のレギュレーション議論にも少なからず影響を与える可能性がある。

  • 元F1ドライバーが2031年V8エンジン構想に懐疑論「実現は難しい」

    元F1ドライバーが2031年V8エンジン構想に懐疑論「実現は難しい」

    元F1ドライバーのジャン=ルイ・シュレッサーは、FIAが2031年以降の新パワーユニットとして検討を進めるV8エンジン構想について、「夢ではあるが実現するとは思えない」と懐疑的な見方を示した。

    また、2026年から導入される電動化を強めた新レギュレーションについても厳しく批判し、「F1が環境に優しいという考えはナンセンスだ」と切り捨てた。

    1983年と1988年にF1へ参戦した77歳のシュレッサーは、スペイン紙『Mundo Deportivo』のインタビューで、現在のF1が電動技術へ傾倒しすぎていると指摘。若手育成にかかる莫大なコストについても問題視し、マックス・フェルスタッペンの主張に理解を示している。

    「エンジンの40%以上が電動なのは問題」
    2026年からF1は、内燃機関と電動出力の比率をほぼ半々に近づけた新世代パワーユニットへ移行する。しかしシュレッサーは、その方向性そのものに強い違和感を抱いている。

    「電子制御がレースを支配しているのは残念だ」

    「心配なのは、エンジンの40%以上を電気系統が占めるべきではないということだ」

    さらに、F1が持続可能性をアピールしていることにも疑問を呈した。

    「F1が環境に優しいと言うのはナンセンスだ」

    「環境問題を気にするなら、レースそのものをやめればいい。半分電気で走るクルマだとか、そんなものは間違った方向へ進んでいる」

    2031年V8構想には「夢だが実現しない」
    FIAのモハメド・ビン・スライエム会長は、2031年以降に向けて、より軽量でシンプルかつ低コストなパワーユニットへの移行を提唱しており、V8エンジンに小型ハイブリッドシステムを組み合わせる案が有力候補の一つとなっている。

    しかしシュレッサーは、大手メーカーがその方針転換を受け入れる可能性は低いとみている。

    「私はあまり信じていない」

    「多くのメーカーは取締役会の支持を得るために、自社のクルマが環境に優しいというイメージを売りにしている。例えばアウディがF1に参戦した理由もそこにある」

    「BYDのようなメーカーを呼び込もうとするかもしれないが、V8は夢だし、V10ならなおさら素晴らしい。でも実現するとは思えない」

    1988年モンツァでセナと接触した真相も回顧
    シュレッサーはF1でわずか2戦の出場に終わったが、1988年イタリアGPで周回遅れとなりながらアイルトン・セナと接触し、マクラーレンのシーズン全勝を阻止した出来事で広く知られている。

    当時の場面について、シュレッサーは避けようがなかった事故だったと振り返った。

    「セナは僕のギアボックスのすぐ後ろにいて、選択肢はなかった」

    「もしアクセルを緩めていたら追突されていたかもしれない。だから単なる不運だった」

    また、そのレースへの参戦は急きょ決まったものだったという。

    「フランク・ウィリアムズから電話があり、『金曜日にイタリアへ来て運転できるか』と聞かれた」

    「『このシートを望んでいるドライバーは10人いる。でもパトリック・ヘッドが君を希望している。来なくても構わない』と言われた」

    シュレッサーはフランク・ウィリアムズについて、「いい人だったが、ぶっきらぼうだった」と振り返っている。

    なお、1983年のフランスGPではRAMからF1デビューを果たしたが、そのマシン性能については笑いながらこう語った。

    「あのクルマの最高速は、僕のツーリングカーと同じくらいだった」

    V型8気筒 F1

    若手育成費用は「異常」 フェルスタッペンにも賛同
    シュレッサーは、F1へ到達するまでに必要な資金が年々膨れ上がっている現状についても厳しく批判した。

    「今の若手カテゴリーへ進むための費用は異常だ」

    「公平ではない。F1に到達するまでの費用が高すぎるというマックス・フェルスタッペンの意見には全面的に賛成だ」

    自身の息子ルイ・シュレッサーもレーシングドライバーとして活動しているが、現状には満足していないという。

    「もっと勝たなければならない」

    「レースで十分に勝てていない。それに今のフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパは参戦費用が高すぎる」

    シュレッサーは、2031年以降のV8エンジン構想には魅力を感じながらも、自動車メーカーの戦略や環境イメージを重視する流れを踏まえれば実現は難しいと予想している。一方で、電動化が進みすぎた現在のF1や若手育成にかかるコストの高騰には強い危機感を示し、現代のF1が抱える構造的な課題に警鐘を鳴らした。