カテゴリー: メルセデスF1

  • アストンマーティンF1 ホンダ移行は“ワークス化” メルセデス「送り出した」

    アストンマーティンF1 ホンダ移行は“ワークス化” メルセデス「送り出した」

    トト・ヴォルフは、アストンマーティンが2026年にメルセデスとの関係を解消し、ホンダと提携した理由を明かした。

    2026年の新レギュレーション初年度、メルセデスは開幕2戦で連続ワンツーフィニッシュを達成するなど好スタートを切っている。一方でアストンマーティンはホンダとの新体制で苦戦しており、両者は対照的なスタートとなっている。

    ヴォルフ「我々の決定ではなかった」
    「アストンマーティンは長年にわたってメルセデスのカスタマーでありパートナーだった」とトト・ヴォルフは語った。

    「そして我々は現在もロードカー部門にはエンジンやその他のコンポーネントを供給している。だから、アストンマーティンと組まないというのはメルセデスの決定ではなかった」

    「ホンダ、そしてパートナーのアラムコとともにワークスチームになるという意識的な決定だったのだと思う。だから我々は彼らを送り出さなければならなかった」

    アストンマーティンはワークス化を選択
    アストンマーティンはメルセデスのカスタマーとして残るのではなく、ホンダとともにワークス体制へ移行する道を選んだ。

    その結果、現在はパワーユニットの信頼性やパフォーマンス面で課題を抱えているとされる。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム 本田技研工業

    ニューウェイ「今はホンダと進むしかない」
    エイドリアン・ニューウェイはオーストラリアでの取材に対し、現状を受け入れる姿勢を示した。

    「我々は今ホンダといる。明らかに、我々の焦点はホンダとともに可能な限り良い状態に持っていくことだ」

    「現実的に言えば、今シーズンはまずこの振動問題を克服して信頼性を確保することだ。そしてそこから特に内燃エンジンでどれだけパフォーマンスを追加できるかを見ることになる」

    「同時にホンダは2027年のエンジンにも取り組む必要がある。2027年に向けて内燃エンジン出力の大きな向上が必要であり、それが彼らの最優先事項になる」

    メルセデスはアルピーヌと新関係
    メルセデスはアストンマーティンに代わり、2026年からアルピーヌへの供給を開始した。

    マクラーレンやウィリアムズへの供給も継続しており、カスタマー供給体制は維持されている。

    今回のヴォルフの発言により、アストンマーティンとの関係解消はメルセデス主導ではなく、ワークス体制を目指したアストンマーティン側の決断だったことが明らかになった。

  • メルセデスF1 アルピーヌF1チーム買収に待った FIA介入で構図一変か

    メルセデスF1 アルピーヌF1チーム買収に待った FIA介入で構図一変か

    メルセデスのトト・ヴォルフがアルピーヌへの出資を検討している問題が、F1パドックで大きな波紋を広げている。エンストン拠点の同チーム株式を巡る争いは、単なる投資案件にとどまらず、F1全体の構造に影響を及ぼしかねない状況となっている。

    2026年にメルセデス製パワーユニットを搭載するアルピーヌに対し、ヴォルフが出資すれば関係強化につながる一方、「2チーム支配」という極めてデリケートな問題をはらんでいる。

    アルピーヌ株式売却を巡る三つ巴の構図
    現在、Otro Capitalが保有する24%の株式売却を巡り、複数の候補が浮上している。

    クリスチャン・ホーナーの関与が長らく報じられてきたが、ここにきてトト・ヴォルフも正式に関心を示した。さらに元チーム代表オトマー・サフナウアーの名前も取り沙汰されており、争いは混戦状態となっている。

    アルピーヌ側は当初よりもヴォルフ案に傾いているとも報じられ、ルノーCEOが承認すれば、ヴォルフが「オペレーションの完全な主導権」を握る可能性もあるとされている。

    FIAが介入の可能性 利益相反が最大の障壁
    しかし、この取引に対して最も大きな懸念として浮上しているのが「利益相反」だ。

    メルセデスがアルピーヌに出資すれば、実質的に2チームをコントロールする構図となる。これは現在のレギュレーションやF1コミッションの枠組みに抵触する可能性がある。

    ジャーナリストの報道によれば、この問題はFIAだけでなくEUレベルの規制にも発展する可能性があり、取引そのものが阻止される可能性があるという。

    また、この動きはカスタマーチーム構造にも影響を及ぼす。メルセデスが供給先を2チームに絞る方針を取れば、マクラーレンがエンジン供給を失う可能性も浮上している。

    「Bチーム化」否定も広がる不信感
    ヴォルフはアルピーヌをメルセデスの「Bチーム」にする意図はないと強調している。

    しかし、レッドブルとレーシングブルズの関係を巡る議論が続く中、F1関係者の間では同様の構図が再び生まれることへの警戒感が強い。

    マクラーレンのザク・ブラウンがこれまで一貫して「複数チーム体制」を批判してきたように、他チーム首脳がこの動きを歓迎しない可能性は高い。

    実際、メルセデスのライバル勢はこの交渉の行方を注視しており、F1全体のパワーバランスを左右する案件として警戒を強めている。

    アルピーヌF1チーム

    アルピーヌの決断がF1勢力図を左右する
    最終的な判断はアルピーヌ側に委ねられている。

    資金力と技術連携の強化というメリットを取るのか、それともスポーツとしての独立性や政治的リスクを重視するのか。

    今回の買収劇は単なるチームの将来を超え、2026年F1の勢力図そのものを揺るがす決断となる可能性がある。

    TokyoDrift2026

  • メルセデスF1 日本GPで“狼柄”特別リバリーを投入「野獣を解き放つ」

    メルセデスF1 日本GPで“狼柄”特別リバリーを投入「野獣を解き放つ」

    メルセデスF1は2026年F1日本GPに向け、特別リバリーを公開した。レーシングブルズ、TGRハースF1チームに続く鈴鹿仕様となり、W17には大胆な“狼”のパターンがあしらわれている。

    メルセデスは火曜日にソーシャルメディアを通じてレンダリング画像を公開し、「野獣を解き放つ」をテーマにした新デザインをお披露目した。このリバリーは、ジョージ・ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリのマシンに装着され、鈴鹿での金曜プラクティスから使用される。

    鈴鹿で3連勝を狙うメルセデスF1
    2026年シーズンのメルセデスはここまで開幕2戦で好調を維持しており、日本GPでは開幕からの3連勝を狙う週末となる。

    そうしたなかで投入される今回の特別リバリーは、シルバーアローのイメージに“狼”のモチーフを重ねたものとなった。鈴鹿ではすでに複数チームが特別カラーリングを発表しており、メルセデスもその流れに加わった形だ。

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ日本グランプリ

    “野獣を解き放つ”新デザインを披露
    公開されたW17の特別リバリーは、マシン全体に大胆な狼柄を取り入れたデザインが特徴となっている。

    メルセデスはこの日本GP仕様について、「野獣を解き放つ」というキャッチコピーとともに発信。鈴鹿の週末で、ジョージ・ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリの2台がこの特別カラーで走行する。

  • アントネッリF1初優勝の裏で波紋 ヴォルフ無線にシュタイナー「自己宣伝だ」

    アントネッリF1初優勝の裏で波紋 ヴォルフ無線にシュタイナー「自己宣伝だ」

    2026年F1中国GPで、アンドレア・キミ・アントネッリが自身初優勝を飾った直後の無線メッセージが、パドック内で波紋を広げている。

    メルセデスのチーム代表トト・ヴォルフが送った言葉に対し、元ハースF1チーム代表のギュンター・シュタイナーが強い違和感を示し、「自己宣伝に過ぎない」と批判した。

    ヴォルフの無線発言が物議
    アントネッリの優勝直後、ヴォルフはチーム無線で、起用当初に向けられた批判に触れながら次のように語った。

    「彼は若すぎる」「メルセデスに乗せるべきではない」「もっと小さなチームで経験を積むべきだ」──そうした声があった中で、「さあキミ、勝利だ」と締めくくった。

    18歳でメルセデスに抜擢されたアントネッリは、その期待と批判を背負いながら、参戦2年目でグランプリ初優勝を達成した。

    シュタイナー「主役はドライバーだ」
    しかし、この無線についてシュタイナーはポッドキャスト番組内で疑問を呈した。

    「完全に自己宣伝だ」

    「まるで『自分の判断は間違っていなかったと皆に分からせたい』と言っているようだった」

    「トトはそんなことをする必要はないはずだ。でも少しコンプレックスがあるのかもしれない」

    さらにシュタイナーは、勝利の主役が誰であるべきかを強調する。

    「勝ったのはあの若者だ。今さら説明する必要はない」

    「誰もがそれを見て、感じて、理解している。わざわざ『みんなが自分を疑っていたからだ』と言う必要はない」

    「最終的にやったのはキミであって、トトではない。我々はそこを尊重しなければならない」

    評価と演出のバランス
    今回の発言は、若手起用の成功を強調する意図と、チーム代表としての自己評価の表現が入り混じったものと受け取られている。

    アントネッリの歴史的勝利が称賛される一方で、その瞬間におけるチーム側のメッセージのあり方についても、F1の舞台では常に議論の対象となる。

  • フェラーリF1 メルセデスはPU性能を隠している?開発ルール巡る駆け引き

    フェラーリF1 メルセデスはPU性能を隠している?開発ルール巡る駆け引き

    フェラーリは、2026年F1シーズン序盤におけるメルセデス製パワーユニットの優位性を強く意識している。特に注目しているのは、単純な出力差だけでなく、追加開発機会を左右する評価制度のなかで、メルセデスが意図的に真の実力を見せ切っていない可能性だ。

    今季の新レギュレーションでは、パワーユニットの絶対性能だけでなく、FIAが定めた追加開発・アップグレード機会制度への対応が極めて重要になっている。

    フェラーリは、2026年F1シーズン序盤におけるメルセデス製パワーユニットの優位性を強く意識している。特に注目しているのは、単純な出力差だけでなく、追加開発機会を左右する評価制度のなかで、メルセデスが意図的に真の実力を見せ切っていない可能性だ。

    今季の新レギュレーションでは、パワーユニットの絶対性能だけでなく、FIAが定めた追加開発・アップグレード機会制度への対応が極めて重要になっている。フェラーリは、メルセデスがこの制度をめぐる駆け引きの中で、フェラーリを開発対象ラインの外に留めようとしているのではないかとみている。

    フェラーリが疑うメルセデスの“出し惜しみ”
    開幕2戦までの内容から、冬の段階でささやかれていたメルセデス製パワーユニット優勢説には十分な根拠があったことが示されている。

    特にワークスのメルセデスは、電力マネジメント面でも優位性を見せている。一方で、同じメルセデス製パワーユニットを使うマクラーレン、アルピーヌ、ウィリアムズは、その運用をまだ完全には使いこなせていない。

    新レギュレーション初期には、大手メーカー勢が優位に立つのはある意味で当然でもある。ただし今季は、パワーユニットそのものの性能だけでなく、追加開発・アップグレード機会制度との兼ね合いで、どのように性能を管理するかが大きなテーマになっている。

    FIAはオーストラリアGP以降、内燃エンジンがどれだけの出力を発生しているかを基準に、各メーカーの性能を比較する専用指数でパワーユニットを評価している。その比較対象となる現時点のベンチマークは、明らかにメルセデス製パワーユニットだ。

    当初、この最初の評価チェックポイントは第6戦マイアミGP後に設定されていた。しかし、バーレーンGPとサウジアラビアGPの中止により、最初のリセットがいつ行われるのかは再協議の対象になっている。

    フェラーリとメルセデスの争いは、この期限までにどこまで有利な立場を築けるかという点に集中している。

    追加開発制度をめぐる駆け引き
    エンジンメーカーは、基準性能に対してどの程度遅れているかによって、追加アップグレード機会を得られる。

    基準から2%以上4%未満遅れていれば、今季中に1回、さらに2027年に1回のアップグレードが認められる。4%以上遅れていれば、今季に2回、2027年にも2回のアップグレードが可能になる。

    実際には、この対象に入るには約20馬力の差が必要になるとされる。FIAは独自の手法で測定を行っているが、その分析メカニズムは公表していない。

    そのなかでフェラーリは、メルセデスが本来の性能の一部を意図的に抑え、フェラーリが2%の閾値を下回らないようにして、追加開発制度の発動を防ごうとしていると考えていることで知られている。

    アウディ、レッドブル・パワートレインズ、ホンダは、この制度による開発機会を得る可能性が高いとみられている。

    もっとも、レギュレーション上はサンドバッギングを防ぐ仕組みもある。FIAは裁量で開発枠を取り消すことができるほか、各メーカーのテストベンチでシミュレーションを通じて数値を確認することも可能だ。

    メルセデスについては、4チーム分の実走データをFIAが取得できる点も判断材料になる。

    フェラーリは新しい内燃エンジンを準備か
    この問題で最も興味深いのがフェラーリの立場だ。マラネロでは新しい内燃エンジン仕様の開発が進められているとされており、現行性能では最高レベルで戦うには不十分だと判断していることを示している。

    フェラーリは、自分たちのパワーユニットが少なくともメルセデスより15馬力ほど低いと見積もっており、最低でも2%、場合によっては4%の範囲で追加開発対象になる可能性が高いとみている。

    一方で、メルセデスが出力を抑えている理由は、単純な政治的駆け引きだけではない可能性もある。信頼性面にまだ懸念があり、ピークパワーの使用を保守的にしている可能性もあるからだ。

    それでもオーストラリアと中国では、メルセデスのW17がピークパワーをより長く維持できる強みを示した。エネルギー回生効率が高いため、全開走行中にバッテリーを充電するためのスーパークリッピングの必要性を減らせていることが、その背景にある。

    フェラーリにとって追加開発資格を得られることは重要だ。パワーユニット技術責任者のエンリコ・グアルティエリ率いるグループは、最大の弱点が内燃エンジン側にあると考えており、新しい内燃エンジン開発を進めるためにも、その権利が必要になる。

    シャシー性能ではフェラーリ優位との見方も
    これまでのところ、フェラーリ製パワーユニットはグリッド上で2番手の存在とみられている。ただし効率面でのメルセデスとの差は明確であり、その一方でSF-26は空力面ではグリッド最良のマシンのひとつとの評価もある。

    フレデリック・バスール代表が、フェラーリはアップグレード条件を満たす見通しだと示唆していることを前提に、仮にその差が資格取得に必要な最低ラインである2%だとする。そして開幕2戦でのフェラーリの“スーパ―タイム”がメルセデス比で100.948%だったことを当てはめると、シャシー性能自体はメルセデスより約1%優れている計算になる。

    ただしマラネロ内部では、通常条件では2026年の大半のサーキットでメルセデスのほうが速いという認識が定着しているようだ。つまりフェラーリにとって今季は実質的に移行期間であり、2027年に勝利を争うには新しいエンジンが不可欠ということになる。

    モンツァでの走行が意味するもの
    フェラーリは来月、モンツァで200kmのフィルミングデーを実施する予定だ。バーレーンGPとサウジアラビアGPの中止によって生まれた空白期間を利用し、第4戦マイアミGPの前に走行する見込みとなっている。

    このサーキットを選んだのは、カレンダーの中でもとりわけエネルギーマネジメントが厳しく問われるコースで、さらなるデータ収集を進める狙いが明確だからだ。

    もしシーズン序盤から追加開発対象になることができれば、フェラーリは熱効率側の対策を前倒しで進め、2026年終盤にその成果を実戦で評価することが可能になる。

    現時点では、フェラーリが4%以上の大幅な遅れに該当する可能性は低いとみられている。その領域に入る可能性が高いのは、レッドブル・パワートレインズ、アウディ、そして当然ホンダだと考えられている。

  • 鈴鹿で野宿した少年がF1へ メルセデス日本人エンジニア桑原克英の軌跡

    鈴鹿で野宿した少年がF1へ メルセデス日本人エンジニア桑原克英の軌跡

    ジョージ・ラッセルのパフォーマンスエンジニアを務める桑原克英は、2026年F1日本GPを迎える鈴鹿で、かつて16歳の少年としてグランドスタンドの下に段ボールを敷いて一夜を明かした思い出を振り返った。

    いまではメルセデスの一員としてF1パドックに立つ桑原克英だが、その道のりは日本の学生フォーミュラ、スーパーGT、トヨタの耐久レース活動、そして欧州転身を経て築かれたものだった。鈴鹿は、そんなキャリアの原点と現在をつなぐ特別な場所となっている。

    16歳の鈴鹿で過ごした忘れられない一夜
    2005年の日本GP。予選を終えたファンが日曜の決勝を楽しみにサーキットを後にするなか、16歳だった桑原克英には帰るつもりがなかった。

    「ホテルのような宿泊先を取るお金があまりなかったんです」と桑原克英は振り返った。

    「だから土曜の朝に現地へ行って、第1コーナーのグランドスタンドの下で段ボールの上に寝て、そのまま一晩過ごしたんです」

    「16歳で体力が無限にあるような時期なら気にならないんです。そうしていたのは僕だけじゃなかったので、別に平気でした」

    その翌日、桑原克英は当時を代表する名勝負のひとつをはっきりと見届けた。キミ・ライコネンが17番グリッドから追い上げ、最終ラップで首位を奪って優勝した2005年日本GPだった。

    2026年はメルセデスの一員として鈴鹿へ
    2026年、桑原克英は再び日本に戻ってくる。ただし、グランプリを見るために鈴鹿で夜を明かす必要は、もうない。

    「2024年の日本GPは、ジョージと本格的に仕事をするようになった初期のレースのひとつでした。2023年にも何戦か一緒に仕事をしていました。2024年のイモラから、彼のガレージ側でフルタイムで働くようになりました」

    日本GPは1980年代からF1カレンダーの常連だが、日本人が継続的にパドックで存在感を示してきたわけではない。桑原克英は、その状況を少しずつ変えつつある存在だ。

    「世界のこちら側で生まれると簡単じゃないんです。チャンスはかなり限られています」と桑原克英は語った。

    「僕は26歳になるまで海外に出たことすらなかったので、乗り越えなければならない壁がたくさんありました」

    横浜の大学で始まったモータースポーツ人生
    さらに時間をさかのぼると、桑原克英のモータースポーツへの道は横浜の大学時代に本格化した。

    「出発点はフォーミュラ・スチューデントでした。あれによって、レーシングカーを作って走らせるには何が必要なのかを知ることができました。いろいろな意味で、あれが自分のプロとしてのキャリアの始まりだったと思っています」

    当時の桑原克英にとってF1はまだ遠い存在だったが、日本国内には進むべき選択肢がいくつもあった。

    「幸運にも、トヨタのスーパーGTプログラムの一員として仕事を得ることができました。本当にうれしかったです」

    現場を拠点とした桑原克英の仕事は信頼性に重点を置くもので、フォーミュラ・スチューデント時代に学んだことを実践しながら、業界のなかで成長を続けていった。

    そして日本各地を回り、F1日本GP開催経験のある3つのサーキットも訪れた。富士、TI英田(現・岡山)、そしてもちろん鈴鹿だった。

    欧州行きで開けた新たな道
    やがて、欧州から声がかかった。

    「2015年に向けて、当時のトヨタの耐久レースプログラムに関わるため、マネージャーが僕をヨーロッパへ行かせることに決めてくれました」と桑原克英は語る。

    「それはF1以外のキャリアのなかで、自分にとって最大のステップでした。ヨーロッパで現場の人たちがどう働いているのかを見ることができました」

    「当時、そのシリーズはかつてないほど強力で、LMP1にはポルシェ、トヨタ、アウディ、日産といった大きな名前が参戦していました」

    まだF1ではなかったが、グリッドにはF1との強い結びつきがあった。パフォーマンスエンジニアとなっていた桑原克英は、その中心にいた。

    「セバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、そしてフェルナンド・アロンソもそのプログラムに関わっていました。僕は彼らとも仕事をすることができました」

    レーシングポイントを経てメルセデスへ
    こうしてF1とのつながりは確かなものとなり、次の一歩を踏み出す時が来た。

    ドイツからイギリスへ。そしてトヨタからレーシングポイントへ。最初にF1を夢見てから20年、桑原克英はついにその舞台へたどり着いた。

    「2020年にはシミュレーターテストエンジニアでした。そこに3年間いて、そのあとメルセデスで働くために応募しました。アンドリュー・ショブリンとリキ・ムスコーニからオファーをもらえたのは本当に幸運でした」

    こうして桑原克英はF1パドックにしっかりと根を下ろした。そこにはハースF1チームの小松礼雄、そしてレッドブル・レーシングの角田裕毅といった日本人の姿もある。

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ 桑原克英

    次の世代へのメッセージ
    では、モータースポーツの仕事を目指す次世代の日本のファンに、どんな助言を送るのか。

    「自分には絶対に無理だとずっと思っていました。でも、このスポーツを心から愛していて、その方向をしっかり見ていれば、チャンスはあります」と桑原克英は語った。

    「最初の仕事からF1に飛び込む必要はありません。そこに至るまでの道を積み上げていけばいいんです。特に日本には素晴らしいレースカテゴリーがたくさんありますから」

    「目標に集中し続ければ、実現する可能性はあります」

    鈴鹿は原点であり、特別な場所
    桑原克英の物語は、多くのF1関係者と同じように、ひとつの円を描くように原点へ戻ってきた。2013年に初めて鈴鹿を訪れた彼は、2026年にはジョージ・ラッセルのパフォーマンスエンジニアとしてその場所に立つ。

    鈴鹿は、さまざまな意味で特別なサーキットだ。

    「もちろん僕はひいき目があります。でもF1に入るまでは、チームやドライバーが外向きに鈴鹿について語ることが、本当にその通りの気持ちだとは分かっていませんでした」と桑原克英は語った。

    「誰もが、最高のサーキットで最高のファンがいると言いますし、周りの人たちと話してみても、本当にその通りのようです」

    「高速で流れるようなコーナーが続くレイアウトは、ドライブするうえでも本当に魅力的です」

    「それに歴史を見ても、あそこで多くの記憶に残るタイトル決定の瞬間が生まれてきました」

    「いまは桜の季節に開催が移って、見た目には本当に素晴らしいです。ただ、個人的には少し寂しいところもあります。僕の誕生日は10月13日で、以前はちょうどその頃にレースが行われていたので」

  • メルセデスF1のアルピーヌ株取得報道に見解 ウィートリー「利益相反はない」

    メルセデスF1のアルピーヌ株取得報道に見解 ウィートリー「利益相反はない」

    アウディのチーム代表を即時退任したジョナサン・ウィートリーが、メルセデスによるアルピーヌ株取得報道について「利益相反は見当たらない」との見解を示した。

    中国GP週末には、トト・ヴォルフがアルピーヌの株式取得を狙っているとの憶測が広がったが、その後、関心を示しているのはヴォルフ個人ではなくメルセデスであることが明らかになった。アルピーヌはすでにメルセデス製パワーユニットのカスタマーチームとなっており、この動きが新たな議論を呼んでいる。

    メルセデスの出資報道にも冷静な見方
    報道では、米ヘッジファンドのオトロ・キャピタルが保有するアルピーヌ株24%をめぐり、メルセデス側が取得を検討しているとされている。ワークスチームの地位を昨季限りで手放したアルピーヌにとって、現在のパワーユニット供給元であるメルセデスは有力な候補とみられている。

    ただし、フラビオ・ブリアトーレは、この24%という比率について、実質的には経営を左右する立場にはならないとの認識を示した。

    「レッドブルはこの10年か15年、すでにこの分野の先駆者だった」とブリアトーレは語った。

    「メルセデスでは、あるグループがオトロの24%を買おうとしている。普通は、ひとつの会社が75%を持っていれば決定権を持ち、25%は同乗者にすぎない。これが現実だ」

    ウィートリー「ガバナンスは非常に明確」
    この件について、FIA公式記者会見でブリアトーレの隣に座っていたウィートリーも見解を求められた。ブリアトーレはその場で冗談交じりに、ウィートリーにも意見を促した。

    これに対しウィートリーは、F1の統治体制は明確であり、懸念すべき問題はないとの考えを示した。

    「私はとても満足している。見ての通り、このスポーツには非常に、非常に明確なガバナンスがある。我々の側から見て、利益相反や懸念はまったくない」とウィートリーは述べた。

    さらにウィートリーは、この動きを一歩引いた立場から見守っているとも明かした。

    「正直に言えば、私はただ見ているだけだ。ポップコーンを食べながら、この展開を楽しんでいる」

    新天地を前にしても変わらぬ個人的見解
    ウィートリーはすでにアウディのチーム代表職を離れることが決まっており、今後はアストンマーティンで同職に就く見通しとなっている。ただ、今回の発言はあくまで本人の個人的見解ではあるものの、現行ルールの枠内で今回の動きに問題はないという認識をはっきり示した形だ。

    メルセデスによるアルピーヌ株取得が実現するかどうかはなお不透明だが、少なくともウィートリーは、この件を“懸念材料”ではなく、F1の新たな駆け引きとして受け止めているようだ。

  • キミ・アントネッリ F1初優勝も「表彰台に上がるべきか分からなかった」

    キミ・アントネッリ F1初優勝も「表彰台に上がるべきか分からなかった」

    メルセデスのキミ・アントネッリは、2026年F1中国GPで自身初優勝を飾り、19歳にして新時代の主役として大きな注目を集めた。

    レース内容と結果が称賛を浴びる一方で、表彰式では思わぬハプニングが発生し、若き勝者は一瞬戸惑う場面を見せることになった。

    表彰台での“名前ミス”に困惑
    表彰式でマイクを握ったボブ・コンスタンドゥロスが、アントネッリを「キミ・ライコネン」と誤って紹介する場面があった。

    「信じられなかった」とキミ・アントネッリはSportMediasetに語った。

    「表彰台に上がろうとしていたところで、それを聞いたんだ。上がっていいのかどうか分からなくて、完全に混乱していた」

    周囲も笑いに包まれた一幕
    この出来事について、元F1ドライバーでGPDA会長のアレックス・ブルツも反応を示した。

    「これは本当に面白い話だ」とブルツはORFに語った。

    「彼(ボブ)はただ間違えただけだ。もっと勝てば、誰もが彼がイタリア出身のアンドレア・キミ・アントネッリだと分かるようになるだろう」

    急速に高まる評価とフェラーリとの縁
    このエピソードの裏で、アントネッリは急速に評価を高めている。

    イタリアではすでに次世代スターとして注目され、将来的なフェラーリ移籍の可能性も取り沙汰されている。

    「フェラーリとはコンタクトがあった。10歳か11歳の頃だった」とアントネッリは明かした。

    「でも最終的にはメルセデスが先だった。彼らがチャンスを与えてくれて、2017年末にトト・ヴォルフが僕たちに連絡してきた。本当に感謝している」

    初勝利の余韻と静かな祝福
    初優勝の余韻は、今もなお続いている。

    「祝っているし、今も楽しんでいる。初めての勝利だから、一生忘れないと思う」

    「僕のキャリアで最も特別な勝利だ。だからこそ、その瞬間を楽しむのは当然だった」

    レース後の夜についてもこう振り返った。

    「日曜の夜は眠れなかった。移動中もトロフィーの写真を抱きしめていたんだ」

    一方で祝賀は控えめだった。

    「10人くらいの友人と小さなパーティーをしただけだ」

    タイトルよりも“勝ち続けること”
    周囲の期待が高まる中でも、本人は冷静さを保っている。

    「タイトルのことは考えていない。どうやって勝ち続けるかだけを考えている」

    “キミ”という名前の由来
    なお、ミドルネームの「キミ」については、ライコネンとの直接的な関係はないという。

    「両親はイタリア風の名前をもう一つ付けたくなかっただけなんだ」

    「何か違うものを望んでいて、友人が提案してくれた名前を気に入って、それで決まった」

  • メルセデスF1代表「政治的な刃が向けられる」 支配的スタートに警戒

    メルセデスF1代表「政治的な刃が向けられる」 支配的スタートに警戒

    メルセデスは2026年F1シーズン開幕から圧倒的な強さを見せ、オーストラリアGPと中国GPで2戦連続のワンツーフィニッシュを達成した。ジョージ・ラッセルが開幕戦メルボルンで優勝し、中国ではアンドレア・キミ・アントネッリがF1初勝利を挙げるなど、完璧に近いスタートを切っている。

    こうした状況の中で、チーム代表のトト・ヴォルフは、今後はトラック外での「政治的な戦い」が激化する可能性に言及し、ライバル勢からの圧力に警戒感を示した。

    「現時点では勝てるマシンがある」とトト・ヴォルフは語った。

    「だが、これから数週間、数か月のうちにどんな“政治的な刃”が出てくるか見ていこう」

    メルセデスを取り巻く主な政治的争点
    ヴォルフは具体的な内容には踏み込まなかったが、現在のF1パドックではいくつかの重要な議論が進行している。

    そのひとつが、2026年の新レギュレーションに関する見直しだ。エネルギーのデプロイメントや回生に関する調整が議論されているが、短期的な大幅変更は予定されていない。

    さらに、6月1日から導入予定の圧縮比規制の強化も焦点となっている。これはパワーユニットを高温・低温の両条件でテストするもので、ライバル勢はメルセデスがレギュレーションの解釈を利用して優位性を得ていると主張している。ただし、メルセデスはその見方を否定している。

    また、新たなADUO(追加開発機会)も勢力図に影響を与える可能性がある。最初の評価はシーズン第6戦後に予定されており、他チームが巻き返す契機となる可能性がある。

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    スタート手順を巡る対立も激化
    もうひとつの論点はレーススタートの手順だ。2026年のパワーユニット変更によりスタートが複雑化し、安全面の懸念からF1は5秒間の「プレスタート」手順を導入した。

    しかし依然としてさらなる調整を求める声があり、議論は続いている。

    この問題を巡ってはフェラーリが独自の解決策を開発し、実際にスタートで優位性を発揮している。シャルル・ルクレールとルイス・ハミルトンはともに2列目からロケットスタートを決め、レース序盤で主導権を握った。

    これに対し、ランキング首位のジョージ・ラッセルはフェラーリの姿勢を「利己的だ」と批判。一方でフェラーリ側は、すでに妥協を強いられているとの立場を取っている。

    圧倒的なパフォーマンスでシーズンをリードするメルセデスだが、その優位性は技術だけでなく、今後の政治的駆け引きによっても左右される局面に入ろうとしている。

  • メルセデスF1 ブラッドリー・ロードを副チーム代表に昇格 組織強化へ

    メルセデスF1 ブラッドリー・ロードを副チーム代表に昇格 組織強化へ

    メルセデスF1は、長年チームに在籍してきたブラッドリー・ロードを副チーム代表に昇格させた。

    これまで最高広報責任者を務めていたロードは、近年ますます表舞台に立つ機会が増えており、トト・ヴォルフが現場を離れている際には、スカイ・スポーツでチーム代表として対応したり、メディアの取材に応じたりしてきた。

    ガレージでは、ヴォルフの隣でオン・トラックの状況を見守る姿もたびたび見られており、今回の人事は、すでに実務上進んでいた役割分担を正式に反映したものとなる。メルセデスはこれを、拡大を続けるF1とチーム運営に対応するための組織強化と位置づけている。

    ヴォルフを支える新たな副チーム代表
    トト・ヴォルフは、今回の人事について次のように説明した。

    「我々のチームとF1の成長に伴い、我々のオペレーションの範囲と、それに伴う上級レベルでの責任は大きく拡大してきた」

    「したがって我々は、この機会に、実際にはしばらく前から現場で機能していた変化を正式な形にすることにした」

    「私の役割と全体的な責任は1ミリたりとも変わらないが、副チーム代表としてのブラッドリーの仕事は、我々のリーダーシップグループの能力をさらに高め、チーム代表兼CEOとしての私を引き続き支えてくれることになる」

    「ブラッドリーは我々の組織に長く在籍し、献身的に尽くしてきたメンバーであり、このチームが現代F1で最も成功したチームになるうえで重要な役割を果たしてきた。このように組織体制を整えることで、我々のリーダーシップグループはそれぞれが最も大きな価値を加えられる分野に完全に集中でき、急速に成長するこのスポーツの要求に最適化された体制になる」

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    ベネトン時代から続くロードのキャリア
    ブラッドリー・ロードは、2001年にベネトンのプレスオフィサーとしてF1パドックでのキャリアをスタートさせた。2008年には一時的にメディア側へ移り、『F1レーシング』の特集編集者を務めたが、2010年にルノーでコミュニケーション職として現場に復帰した。

    その後、2011年にメルセデスへ加わり、現在に至るまでチームの広報と対外対応を担ってきた。近年は単なる広報責任者にとどまらず、トラックサイドでも存在感を高めており、今回の副チーム代表就任はその延長線上にある人事といえる。

    後継体制をにらむ布石との見方も
    ヴォルフはこれまでも後継者計画の重要性をたびたび口にしてきた。今回の人事について、チーム側はあくまで「継続的な成長の中で組織を強化するためのもの」であり、後継計画そのものではないと説明している。

    ただ一方で、この昇格が将来的にヴォルフがチーム指揮から退く局面を見据えた布石になる可能性を感じさせるのも事実だ。少なくとも、メルセデスF1がトップマネジメントの層を厚くし、将来を見据えた体制整備を進めていることは明らかだ。