カテゴリー: スクーデリア・フェラーリ

  • ロブ・スメドレー「フェラーリF1の95%は王座の獲り方を理解していない」

    ロブ・スメドレー「フェラーリF1の95%は王座の獲り方を理解していない」

    フェラーリF1は2026年シーズン開幕当初こそタイトル争いの有力候補と見なされていたが、マイアミGPでは大規模アップグレードが期待外れに終わり、再び組織的な問題が議論の中心となっている。

    そうしたなか、元フェラーリのレースエンジニアであるロブ・スメドレーが、現在のフェラーリには「タイトルを勝ち取る方法を理解している人間がほとんどいない」と厳しい見解を示した。

    「勝ち方を知る人間」が減ったフェラーリ
    ロブ・スメドレーは2004年にフェラーリへ加入し、2006年から2013年まではフェリペ・マッサのレースエンジニアを務めた。

    在籍期間中、フェラーリはコンストラクターズタイトル3回、ドライバーズタイトル2回を獲得している。

    しかし2008年以降、フェラーリは長期的にタイトル争いを制することができず、メルセデス、レッドブル、そして現在はマクラーレンにも主導権を奪われる状況が続いている。

    スメドレーは『ハイ・パフォーマンス・レーシング』ポッドキャストで、こう語った。

    「ワールドタイトルから遠ざかれば遠ざかるほど、それを取り戻すのは難しくなる」

    「だからこそ、2021年以降のレッドブルの復活や、これから起きるであろうメルセデスの復活が理解できる。彼らには“どうやって勝つか”という比較的新しい記憶が残っているからだ」

    「フェラーリの中にも、我々が圧倒的に勝っていた時代を知る人間は5%か10%はいる。そういう人たちは勝ち方を理解している」

    「でも、1勝や2勝しか経験していない人たちばかりになると難しくなる。これは終わりがなく、非常に厳しい世界なんだ」

    フェラーリ内部に広がる“自己不信”
    スメドレーが特に問題視したのは、フェラーリ内部に存在する“自己不信”だった。

    「勝ち方を知っている集団が継続して存在しているかどうかは、本当に大きな違いになる」

    「フェラーリのように長い間タイトルを獲れていないチームでは、自信が高くない。自己不信が多すぎるんだ」

    「外向きには『我々は勝てる』『タイトルを獲れる』といくら話していても関係ない」

    「組織の中に2%や3%でも疑念が存在すれば、それだけで勝てなくなる」

    この発言は、単なる技術不足ではなく、“勝者の文化”そのものが薄れているという指摘でもある。

    マイアミGPのアップグレード失敗が象徴
    フェラーリはマイアミGPで11点に及ぶアップグレードを投入したが、結果的には大きな前進にはつながらなかった。

    ルイス・ハミルトンは6位、シャルル・ルクレールはレース終盤のペナルティもあり8位に終わっている。

    スメドレーによれば、フェラーリ内部では現在も「何が機能し、何が機能しなかったのか」を分析している段階だという。

    「数人と話したが、メルセデスについて以前話したのと同じことだ。大規模パッケージを投入すれば、うまくいく部分もあれば、機能しない部分もある」

    「問題は、マイアミ後の彼らが“全体として機能した”とは考えていても、期待したレベルには届かなかったことだ。前進できていない」

    「風洞では前進するはずだった。だから今は総合的なゲインを検証している段階なんだ」

    「実際の向上幅は期待値に遠く及ばなかった。つまり、“逆にマシンを遅くしているパーツを付けてしまったのではないか?”という疑問が出てくる」

    2026年F1タイトル争いで問われる“組織力”
    2026年のフェラーリF1は、シャルル・ルクレールとルイス・ハミルトンという強力なドライバーラインアップを擁している。

    しかしスメドレーの指摘は、現在のF1ではドライバーだけではタイトルを獲れないことを示している。

    レッドブルやメルセデスが長期政権を築けた背景には、技術だけでなく「勝利を当たり前にする組織文化」が存在していた。

    フェラーリは2026年もタイトル争いに踏みとどまっているが、本当に必要なのは新パーツではなく、“勝ち方を知る組織”を再構築することなのかもしれない。

  • シャルル・ルクレールはフェラーリではF1ワールドチャンピオンになれない?

    シャルル・ルクレールはフェラーリではF1ワールドチャンピオンになれない?

    シャルル・ルクレールはワールドチャンピオン級の才能を持っている――だが、現在のフェラーリではタイトル獲得は難しいかもしれない。そう語ったのは、元F1ドライバーのラルフ・シューマッハだ。

    ラルフ・シューマッハはSky Deutschlandのインタビューで、ルクレールの能力自体は高く評価しながらも、フェラーリの組織構造や現状の体制に疑問を投げかけた。

    また、その流れの中でマックス・フェルスタッペンの将来についても言及し、フェラーリ移籍の可能性には否定的な見解を示している。

    「ルクレールには才能がある」 それでもフェラーリでは難しい理由
    ラルフ・シューマッハは、ルクレールがタイトルを争える実力を持っていることに異論はないと強調した。

    「マクラーレンなら間違いなく可能だ。昨年のランド・ノリスと同じようにね。それについては疑いようがない」

    一方で、フェルスタッペン級の“絶対的支配力”を持つタイプではないとも指摘した。

    「彼はマックス・フェルスタッペンか? いや、違う」

    それでもルクレール本人については高く評価している。

    「彼にはポテンシャルがあると思う。それに、人間的にも本当に素晴らしい人物だ」

    しかし問題は、フェラーリというチームの構造そのものだという。

    「フェラーリはフェラーリだ。そして、フレデリック・バスールひとりでは十分ではない」

    「だから問題になるのは、このチーム、この体制の中で彼が本当にワールドチャンピオンになれるのかということだ」

    フェルスタッペンでもフェラーリでは機能しない?
    ラルフ・シューマッハは、理論上はフェルスタッペンであればフェラーリでも成功できる可能性はあると認めた。

    「可能性としては何だってあり得る」

    「多くのドライバーがフェラーリに行きたがる。F1において特別なブランドだからね」

    しかし、実際にはフェルスタッペンの性格や現在の環境を考えると、フェラーリ移籍は現実的ではないと見ている。

    「マックスはメルセデスで非常に快適に感じていると思う」

    ラルフ・シューマッハは、フェルスタッペンが最近取り組んでいるGT3活動や、そこで関わるチーム、そしてメルセデス製エンジンとの関係性にも言及した。

    「GT3の体制や、そこで協力しているチーム、さらにメルセデスのエンジンもある。彼らは常に最高のエンジンを作っている」

    「だから、私はそれをほとんど想像できない」

    “ミハエル時代”との決定的な違い
    さらにラルフ・シューマッハは、現在のフェラーリではフェルスタッペンのようなドライバーでさえ機能しない可能性があると分析した。

    「マックスは、ある意味でこの構造に従わなければならなくなる。でも彼はそういうタイプではない」

    長年フェルスタッペンを支えてきたレースエンジニア、ジャンピエロ・ランビアーゼがマクラーレンへ移籍する可能性が報じられていることも、その見方を強めている。

    「彼自身も、チームリーダーとして振る舞うことに慣れている」

    「だが、今うまく機能していないチームに単独で入っていっても、ドライバーとしてそれをコントロールすることはできないだろう」

    その上でラルフ・シューマッハは、兄ミハエル・シューマッハがフェラーリ黄金時代を築いた当時との違いを挙げた。

    「兄は当時、一緒に働く優秀なグループを連れて行った」

    「だが、ドライバーひとりだけで行くのでは十分ではないと思う」

    そして最後に、フェルスタッペンの将来的な選択肢についてこう締めくくった。

    「私の考えでは、彼が行けるのはメルセデスかマクラーレンだけだ」

  • ルイス・ハミルトン 現代F1ルーキーとの差「カートにテレメトリーはなかった」

    ルイス・ハミルトン 現代F1ルーキーとの差「カートにテレメトリーはなかった」

    ルイス・ハミルトンは、カート時代からテレメトリーやシミュレーターに囲まれて育った現代の若手とは異なり、“純粋な才能”だけでF1まで駆け上がった世代だった――。

    2012年GP2王者ダビデ・バルセッキは、現代F1ルーキーたちの育成環境が劇的に進化した一方で、ハミルトンやフェルナンド・アロンソの世代は、より“感覚”と“才能”に依存していたと指摘した。

    2026年シーズンのF1では、アービッド・リンドブラッドをはじめ20代前半の若手ドライバーが次々と台頭している。だがバルセッキは、現在の若手が享受している高度なサポート体制は、ハミルトンがF1デビューした2007年当時には存在しなかったと強調している。

    “才能だけ”でF1頂点に迫ったハミルトン世代
    ダビデ・バルセッキは Formula1.it に対し、現代の若手育成は“完全にプロフェッショナル化”されていると語った。

    「若いドライバーは時として安定感を欠くものだ。波があるし、それはどのスポーツでも同じだ。精神的な成熟が追いつかず、シーズンを通して最高レベルを維持できないこともある」とバルセッキは語った。

    「ただ、ひとつ明確に言えるのは、今の若者たちは昔よりはるかに準備が整っているということだ。22歳前後でF1に来た時点で、すでにピークに近い状態にある」

    さらにバルセッキは、ハミルトンやアロンソ、キミ・ライコネンらの世代が、現在とは比較にならないほど“アナログ”な環境で成長したと説明した。

    「当時はそんな環境じゃなかった。ハミルトンがF1に来た頃、カートにテレメトリーなんてまだ存在していなかった」

    「彼は自分の才能だけで、デビューイヤーからいきなりタイトル争いをした。あとわずかで世界王者だった」

    現代ルーキーは“F1仕様”で育っている
    現在の若手ドライバーたちは、ジュニアカテゴリー時代から膨大なデータ解析環境の中で育っている。

    「今トップカテゴリーに来る若手たちは、幼い頃からテレメトリー、エンジニア、オンボード映像、カメラに囲まれて育っている」

    「走行ラインを研究し、フィジカルトレーニングを行い、心理学者もつく。そして何よりシミュレーターがある。ハミルトン、アロンソ、ライコネンの世代には存在しなかったものだ」

    近年のF1では、オスカー・ピアストリやキミ・アントネッリのような若手が急速に成長しているが、それでもハミルトンが2007年に見せた衝撃的な完成度には簡単には到達できていない。

    ハミルトンはルーキーイヤーの2007年、フェルナンド・アロンソと同ポイントでシーズンを終え、わずか1ポイント差でタイトルを逃しただけだった。17戦中12回の表彰台という驚異的な安定感を見せ、F1史上でも屈指の新人シーズンとして語り継がれている。

    “新世代向き”のF1になったとの見方も
    現在のF1は、2022年以降のグラウンドエフェクト世代マシンや複雑なエネルギーマネジメントにより、従来とは大きく異なるドライビング特性が求められている。

    そのため、一部では「過去のF1マシン経験に縛られていない若手のほうが適応しやすい」という見方も出ている。

    実際、マックス・フェルスタッペン、ランド・ノリス、シャルル・ルクレール、ジョージ・ラッセルら、1990年代後半生まれの世代が近年のF1を支配している。

    フェラーリでハミルトンのチームメイトを務めるシャルル・ルクレールは、ハミルトンより13歳年下であり、一部ではこの世代差がパフォーマンス差にも影響しているとの指摘もある。

    もっとも、こうした“若手有利説”を裏付けるには、まだ十分なサンプルが存在しているわけではない。とはいえ、現代F1が「経験」より「適応力」を重視する方向へ変化していることは、確実にパドック全体で意識され始めている。

  • フェラーリF1困惑 アップグレードがシミュレーション以下の実走結果

    フェラーリF1困惑 アップグレードがシミュレーション以下の実走結果

    フェラーリは、2026年F1カナダGPをマイアミGPで投入した大型アップグレードの“再検証の場”と位置づけている。マイアミではフロントウイング、フロア、リアウイング、ディフューザー、前後サスペンション関連を含む大規模な更新を投入したが、実走データはシミュレーションで示されていた期待値を下回った。

    ルイス・ハミルトンはマイアミGPでフェラーリ勢最上位の5位に入った一方、シャルル・ルクレールは終盤にスピンを喫し、さらにレース後のペナルティで8位に後退した。

    フェラーリはマクラーレンとレッドブルに上回られ、メルセデスの主要な対抗勢力としての立場を示せなかった。

    失敗ではないが、期待値には届かなかったアップグレード
    Motorsport.comによれば、フェラーリはマイアミGP後にアップグレードのデータを分析し、個々のパーツが明確に「機能しなかった」わけではないと判断している。ただし、全体としてはシミュレーションが示していた性能向上には大きく届かなかった。

    そのため、今週末のジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは、SF-26のアップグレードが本来のポテンシャルを発揮できるかを確認する重要なテストになる。マイアミで期待外れに終わったパッケージが、単にサーキット特性やセットアップとの相性で力を出し切れなかったのか、それとも開発の方向性そのものに問題があるのかが問われる。

    スクーデリア・フェラーリ

    カナダで浮上するバッテリー回生の課題
    一方で、カナダGPの舞台となるモントリオールは、フェラーリにとって別の課題も突きつける。低ダウンフォース仕様が求められるレイアウトであり、SF-26が抱えるバッテリー回生面の“慢性的”な問題が露呈する可能性がある。

    フェラーリは、2026年型マシンの強みのひとつであるトラクションがカナダで助けになると見ている。しかし、ハミルトンとルクレールが十分にバッテリーを回生できるようにするため、加速性能の一部を犠牲にする必要が生じる可能性もある。

    マラネロの空気を左右する週末
    マイアミGP後には、マクラーレンとレッドブルに先行されたことで、フェラーリ内部の雰囲気が悪化したとも伝えられている。さらに、マイアミで投入したアップグレードは今季のコストキャップ予算の大きな部分を使ったとされる一方、ラップタイム面で大きな成果を生まなかった。

    カナダではマクラーレンとメルセデスも新アップデートを投入する見込みであり、フェラーリにとっては比較対象がさらに厳しくなる。マイアミで見えなかったアップグレードの効果を引き出せなければ、開発計画だけでなく、チーム内の士気にも影響を及ぼす週末になる。

  • フェラーリF1代表 FIAのスタート手順“土壇場変更”を批判「フェアではない」

    フェラーリF1代表 FIAのスタート手順“土壇場変更”を批判「フェアではない」

    フェラーリF1代表のフレデリック・バスールは、2026年シーズン開幕直前にFIAが導入したスタート手順変更について「フェアではない」と不満を示した。フェラーリは新世代パワーユニットの弱点を見越して独自の技術的アプローチを採用していたが、その優位性が“安全上の理由”によるルール変更で失われたと考えている。

    2026年型F1パワーユニットではMGU-Hが廃止され、ターボの回転維持が難しくなったことで、スタート時のレスポンスが大きな課題となっていた。

    フェラーリはこの問題を重視し、最高出力の一部を犠牲にしてでも発進性能を優先する設計を選択。その結果、開幕戦からシャルル・ルクレールやルイス・ハミルトンが好スタートを見せ、ハースF1チーム勢も一定の恩恵を受けていた。

    フェラーリが選んだ“スタート優先”の技術的妥協
    フレデリック・バスールによると、フェラーリは2026年型パワーユニット開発の段階で、スタート性能を最重要テーマとして扱っていたという。MGU-H廃止によってターボラグが増大し、エンジン始動や発進時の加速性能に影響が出ることを早い段階から想定していたためだ。

    そのためフェラーリは、より小型のターボを採用し、立ち上がり性能を優先する方向へ舵を切った。ピークパワーでは不利になる可能性を受け入れつつも、グリッド上でポジションを守ることを重視した形だ。

    「スタートは断トツで最も重要なテーマだった」とバスールはThe Raceに語った。

    「妥協案はこうだ。1周あたり0.1秒を得るか、それともスタートで5ポジション失うか。エンジニアたちに聞けば、“なら良いスタートを選ぶ”という話になる」

    実際、冬季テストやシーズン序盤では、フェラーリ勢が他チームよりも安定してスタートを決めていた。これは偶然ではなく、レギュレーションを踏まえたうえで意図的に構築された設計思想だった。

    FIAが導入した“青色ランプ”延長手順
    しかしFIAは開幕直前、スタート前に青色ランプを5秒間点滅させる追加手順を導入した。これは各チームがターボ回転を維持しやすくするための措置であり、スタート時のエンジン失速や発進不能リスクを軽減する狙いがあった。

    バスールは、この変更によってフェラーリが積み上げてきた優位性が失われたと考えている。

    「この青いライトがなければ、中国GPのグリッドにはまだ止まったままのマシンがいたはずだ」

    一方でバスールは、安全上の判断である以上、最終決定権がFIA側にあることも認めている。

    「安全上の理由を持ち出すことはできる。それはFIAの権利であり、我々は受け入れるしかない」

    「最終的には安全を理由にした決定だった。彼らの管轄だ。たとえ全員が反対していても、彼らは決めることができる」

    “ルールに合わせてクルマを作れ”との矛盾
    バスールが特に不満を抱いているのは、この問題が“グレーゾーン活用”ではなく、フェラーリがルールを正面から解釈した結果だった点にある。

    フェラーリは以前からFIA側とこの問題について議論しており、その際に返ってきたのが「クルマをルールに合わせるべきであり、ルールをクルマに合わせるべきではない」という説明だったという。

    「私は1年前にFIAへ行き、この件について話をした。スポーティング諮問委員会でも、パワーユニット諮問委員会でも議論した」

    「その時のFIAの返答は、“ルールに合わせてクルマを設計すべきであり、あなたのクルマのためにルールを作るべきではない”というものだった。我々はその考え方を評価していた」

    だがその後、多くのチームが危険性を主張し始めたことで状況が変わった。

    「グリッドの半分、40%ほどのチームが“非常に危険だ”と騒ぎ始めた。政治的にはうまいやり方だったが、フェアプレーではなかった」

    フェラーリが感じる“後出し変更”への不満
    バスールは今回の件について、安全性向上そのものを否定しているわけではない。ただ、シーズン直前の変更によって、フェラーリが意図的に行った技術的妥協が無意味になったことに強い不満を抱いている。

    「我々にとってはかなり厳しい話だった」

    「安全上の理由で彼らが行ったことは理解している。しかし別の方法として、“危険だと判断されるならピットレーンスタートにする”という選択肢もあったはずだ」

    「我々は特定の基準を持ってエンジンを開発した。そしてある意味では、彼らは土壇場でルールを変えたんだ」

  • ルイス・ハミルトン F1政治構造に問題提起「ドライバーにも席を」

    ルイス・ハミルトン F1政治構造に問題提起「ドライバーにも席を」

    ルイス・ハミルトン(フェラーリF1)が、F1のレギュレーション策定においてドライバー側にも正式な発言権を与えるべきだと訴えた。しかし、フレデリック・バスールやジェームス・ボウルズらチーム代表陣は、現状でもドライバーの意見は十分に反映されているとの見解を示している。

    2026年F1シーズンでは、パワーユニット調整や2027年F1レギュレーションの方向性を巡り、FIAや各メーカー、チーム間で議論が続いている。

    その中でハミルトンは「ドライバーにも正式な“席”が必要だ」と主張。F1コミッションにおける意思決定構造そのものに問題提起を行った。

    ハミルトンが求める“正式な発言権”
    ハミルトンはマイアミGPの週末、4月に行われたF1関係者会合について言及。2026年F1マシンや2027年F1レギュレーションに関する議論が進む一方で、ドライバーは正式な“ステークホルダー”ではないため、投票権を持たない現状に疑問を呈した。

    ハミルトンは、F1コミッションの中にドライバーの恒久的な代表枠を設けるべきだと訴えている。

    これは単なる不満ではなく、近年のF1が抱える“競技性とショー性のバランス”にも直結するテーマだ。特に2026年F1パワーユニットでは、エネルギーマネジメントやデプロイメント制御がレース展開を左右しており、実際にマシンを操るドライバー側の感覚を規則へどう反映するかが重要視されている。

    フレデリック・バスール「ドライバーは除外されていない」
    一方で、フェラーリF1のチーム代表フレデリック・バスールは、“ドライバー排除論”には否定的な立場を取った。

    「ドライバーたちはここ数週間のエンジン規則変更の議論にも参加していた。うまく機能していたと思う」とフレデリック・バスールは語った。

    「もちろん彼らは異なる視点を持っているし、妥協点を見つけるのは簡単ではない。ただ、彼らは議論の一部だ。我々も彼らの意見を聞き、FIAとのレギュレーション協議へフィードバックを持ち込んでいる」

    「彼らはまったく排除されていない」

    フレデリック・バスールの考え方は明確だ。ドライバーは“投票者”ではなく、“重要な助言者”として機能しているという立場である。

    つまり、ドライバー → チーム → FIAという既存の伝達構造によって、現場の意見は十分に反映できているという認識だ。

    ルイス・ハミルトン(スクーデリア・フェラーリ)

    ジェームス・ボウルズ「これ以上増やせば議論が止まる」
    ウィリアムズF1のチーム代表ジェームス・ボウルズも、より現実的な視点からハミルトン案に慎重姿勢を示した。

    ジェームス・ボウルズは、GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の役割を例に挙げ、カルロス・サインツがニコラス・トンバジスから直接意見を求められていたことを明かした。

    「カルロスは実際に相談を受けていた。ニコラス・トンバジスは彼を議論に加え、規則変更前に意見を確認していた」とジェームス・ボウルズは説明した。

    ただし、正式な投票組織へドライバーを追加することには懸念を示す。

    「正直、すでにテーブルには人が多すぎる。議論が堂々巡りになってしまうからだ。我々をさらに5人増やしても助けにはならない」

    さらにジェームス・ボウルズは、“メーカー寄り”の議論になる危険性にも触れた。

    「重要なのは、特定のパワーユニットメーカーの方向へ偏らないことだ。本当に必要なのは、ドライバー全体の意見を聞く仕組みだと思う」

    F1が抱える“誰が競技を作るのか”という問題
    今回の議論は、単なる政治的な対立ではない。

    2026年F1レギュレーション以降、F1はエネルギーマネジメント重視の方向へ急速に進んでいる。さらに2030年以降にはV8復活論まで浮上しており、FIA・メーカー・チーム・ドライバーそれぞれの思惑が複雑に絡み始めている。

    ハミルトンが求めているのは、“現場の感覚”をもっと制度側へ直接反映させる仕組みだ。

    一方でチーム代表側は、現在のF1政治構造ですら意思決定に時間がかかっており、さらに権限主体を増やせばレギュレーション策定そのものが停滞しかねないと警戒している。

    つまり対立点は、「ドライバーの意見が必要かどうか」ではない。

    その声を、“どの立場で”“どこまで制度化して”取り込むべきなのか――そこにある。

  • セバスチャン・ベッテル 抗議の順位ボード交換…F1史に残るカナダGP裁定劇

    セバスチャン・ベッテル 抗議の順位ボード交換…F1史に残るカナダGP裁定劇

    セバスチャン・ベッテルが2019年F1カナダGPで受けた5秒ペナルティは、いまなお近代F1で最も物議を醸した裁定のひとつとして語り継がれている。

    ポールポジションからレースを支配していたベッテルは、終盤までルイス・ハミルトンの激しいプレッシャーを受け続けながらも首位をキープ。しかし、48周目のターン3〜4シケインで起きた小さなミスが、結果的に勝利そのものを失う決定打となった。

    5秒ペナルティが奪ったフェラーリF1の勝利
    ベッテルはターン3〜4でマシン後部を滑らせ、芝生へ飛び出した。その後コースへ復帰した際、フェラーリは外側へ流れ、背後にいたハミルトンは接触回避のためブレーキングを強いられた。

    スチュワードはこれを「危険な復帰」および「他車をコース外へ押し出した行為」と判断。ベッテルに5秒ペナルティを科した。

    ハミルトンとの差はフィニッシュ時点で1.3秒しかなく、チェッカーを最初に受けたにもかかわらず、優勝はハミルトンのものとなった。

    当時の裁定はパドック全体で大きな論争を呼び、現在でも「厳しすぎる裁定だった」とする声は根強い。


    “レースを盗まれた” ベッテルの怒り
    ベッテルの怒りは無線でも隠されなかった。

    「僕はどこへ行けばよかったんだ?」

    さらにベッテルは「彼らは僕たちからレースを盗んでいる」と無線で訴えた。

    レース後のパルクフェルメでも、その感情は収まらなかった。ベッテルは本来の停止位置にマシンを止めず、一度モーターホームへ戻った。

    その後戻ってきたベッテルは、順位ボードを入れ替える行動に出る。自身の空いたスペースの前に「1位」のボードを置き、ハミルトンのメルセデスの前には「2位」のボードを配置した。

    それは「本当の勝者は自分だ」という強烈な抗議だった。

    ハミルトンも複雑だった勝利
    一方のハミルトンも、後味の悪さを隠さなかった。

    「もちろん、こういう形で勝ちたかったわけじゃない」とハミルトンは語った。

    そのうえで「コースへ戻るときは、レーシングラインへそのまま戻るべきではない。安全に復帰する必要がある」と裁定自体には理解を示している。

    フェラーリはその後、裁定の再審査を求めたものの、スチュワードの判断は覆らなかった。

    セバスチャン・ベッテル 2019年 カナダグランプリ

    いまも議論が続く“2019年カナダGP事件”
    この一件は、F1における「レース裁定」と「レーシングの本質」の境界線を巡る象徴的な事件となった。

    特に近年は“レースを最後まで走って決めるべきか”という議論が強まっており、2019年カナダGPはその代表例として繰り返し引用されている。

    また、この裁定はベッテルとフェラーリの関係における転換点だったとの見方もある。2019年シーズンのフェラーリは速さを持ちながらタイトル争いを制することができず、ベッテル自身も翌年限りでチームを離れることになった。

    その意味でも、モントリオールで失われた勝利は、単なる1レース以上の重みを持つ出来事だった。

  • オリバー・ベアマン フェラーリF1電撃デビューの“代償”「首が完全に壊れた」

    オリバー・ベアマン フェラーリF1電撃デビューの“代償”「首が完全に壊れた」

    オリバー・ベアマン(ハース)は、2024年F1サウジアラビアGPでの衝撃的なフェラーリF1デビューについて振り返り、「首が完全に壊れた」と当時の過酷な身体的負担を明かした。

    カルロス・サインツJr.が虫垂炎の緊急手術を受けたことで、当時18歳だったベアマンは急遽フェラーリからF1デビューを果たすことになった。準備期間はほとんどなかったが、予選ではQ3進出まで0.036秒差の11番手。そして決勝ではランド・ノリスやルイス・ハミルトンを抑え切り、7位入賞という鮮烈な結果を残した。

    F2とF1の“別次元”の肉体負荷
    しかし、その舞台裏では想像以上の苦闘があった。

    ベアマンはF1公式サイトのインタビューで、F2とF1の差について率直に語っている。

    「FP3での最初のラップは、前日にF2で記録したポールポジションのラップより12秒くらい速かった」

    「最初のランの時点で、もう首は完全に壊れていた。だから正直、レースを楽しみにする余裕なんてなかった。あれは本当に痛かった」

    F1マシン特有の高速コーナリングによる横Gは、F2とは比較にならないレベルだったという。

    隣にいたエステバン・オコンも「F1が首に与える負荷は、実際に経験するまで分からない」と同意しており、ベアマンもそれに強くうなずいた。

    「本当にその通りだ。僕にとってF2は身体的には簡単だった。首なんて問題にもならなかった」

    「でもF1で1レース走っただけで、頭の中は首のことしかなかった。あれは本当にクレイジーなステップだった。でも楽しい一日だったし、楽しい夜でもあった」

    オリバー・ベアマン スクーデリア・フェラーリ

    “フェラーリF1デビュー”でも緊張する余裕はなかった
    ベアマンにとって、このレースは単なるF1デビューではなかった。世界最高峰チームであるフェラーリF1から、いきなり実戦投入された異例のデビュー戦だった。

    だが本人は、「緊張している暇すらなかった」と振り返る。

    「ストレスを感じている余裕なんてなかった。とにかく首に耐えながら走っていたんだ」

    当時、父親もフェラーリのガレージ奥から息子の走りを見守っていたという。

    「父もかなり緊張していたと思う。でもあの日を一緒に共有できたことは、本当に特別だった」

  • ラファエル・カマラがフェラーリF1初走行 F2ルーキーに異例の抜擢

    ラファエル・カマラがフェラーリF1初走行 F2ルーキーに異例の抜擢

    ラファエル・カマラ(フェラーリ育成)が、ハンガロリンクで初めてF1マシンをドライブした。フェラーリF1はTPC(旧型車テスト)として2025年型SF-25を使用し、今季FIA F2に参戦するブラジル人ルーキーに初のF1体験を与えた。

    FIA F3王者からF2へ昇格したばかりのカマラだが、フェラーリはすでに本格的な育成段階へ進めている。FRECA、F3と連続タイトルを獲得し、F2でも開幕から安定して表彰台を重ねるなど、その昇格スピードは異例とも言える状況だ。

    フェラーリが早期F1テストを実施した理由
    カマラは2021年からフェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)に所属している。今回のF1初走行について、単なる“ご褒美テスト”ではなく、フェラーリ側が将来的な候補として本格評価を始めた側面も見えてくる。

    近年のフェラーリ育成は、F2で結果を出した段階で積極的にTPCを与える傾向が強まっている。実際、同席したディーノ・ベガノヴィッチもすでにアブダビでSF-25を経験済みだった。

    一方で、カマラはまだF2初年度。通常であればF1初走行は翌年以降になるケースも多いが、フェラーリはかなり早い段階でF1適応を確認し始めている。

    ラファエル・カマラ「フェラーリは多くを教えてくれた」
    「2021年にフェラーリへ加入して、アカデミーに入った。それ以来、彼らは本当に助けてくれた」

    「特に選手権の戦い方や準備の方法、シーズン全体への向き合い方だ。それだけじゃなく、毎週末のアプローチや、サーキット外での準備、メンタル面やフィジカル面についても学んだ」

    「責任感についても理解できるようになったと思う。若い頃は、その重要性になかなか気づけないこともある。でも彼らは本当にその部分を助けてくれた」

    「素晴らしいパートナーシップだ。ここ数年は僕のシングルシーターキャリアにおいて本当に良い時間だったし、一緒にやっている仕事で彼らを誇りに思わせたい。今季も良い1年になることを願っている」

    F2開幕直後の段階でF1テストへ進んだことは、フェラーリがカマラを“長期育成枠”ではなく、比較的早い段階でトップカテゴリーへ引き上げる可能性を視野に入れていることを示しているとも言える。

    ベガノヴィッチも再びSF-25をドライブ
    同じFDA所属のディーノ・ベガノヴィッチも今回のテストに参加した。ベガノヴィッチは2025年アブダビのポストシーズンテストですでにSF-25を経験しており、今回は再確認に近い走行となった。

    「ブダペストで再びスクーデリア・フェラーリのF1に乗れて本当に、本当に嬉しい」

    「素晴らしい2日間だった。再びマシンに戻れて最高だった。アブダビ以来しばらく時間が空いていたから、本当に楽しめた」

    「いつだって素晴らしい感覚だし、次の機会が待ちきれない」

  • F1開発戦争激化 フェラーリの“排気トリック”を7チームが模倣

    F1開発戦争激化 フェラーリの“排気トリック”を7チームが模倣

    フェラーリが先行して投入した空力コンセプトをライバル勢が相次いで模倣し、2026年F1シーズンの開発競争が序盤から一気に激化している。

    新レギュレーション導入からわずか数戦で、各チームはリアウイングや排気周辺の空力処理に集中。マクラーレンはフェラーリ発の“マカレナ”リアウイングに独自解釈を加える可能性があり、レッドブルもマイアミで攻撃的な仕様を投入した。

    フェラーリの排気ウイングが開発競争の火種に
    ドイツのAuto Motor und Sportによれば、フェラーリはバーレーンテストで排気口の後方にウイング要素を配置し、高温の排気ガスを利用して追加のダウンフォースを生み出す手法を導入した。

    ライバル勢はこの発想に強く反応した。排気ガスをダウンフォース生成に使うことは、すでに許されない領域だと考えられていたためだ。

    フェラーリはFIAが定める“リーガリティボックス”の範囲内で、リアアクスル周辺のサスペンション形状とドライブシャフトの配置を工夫。排気ガスの流れを活用できる余地を見つけたとされる。

    同誌によれば、この効果は1周あたり「数コンマ」に相当する可能性があるという。

    マイアミで7チームが追随
    このコンセプトはすでにグリッド全体へ広がり始めている。

    Auto Motor und Sportは、マイアミGPの時点で7チームが同様の原理に基づいてマシンを変更していたと報じた。

    ウィリアムズは排気流の中に細く高いエレメントを配置し、アルピーヌは平たく幅広いウイングレットを採用。マクラーレンとレッドブルはテールパイプ下端をバッフルで覆い、メルセデスは排気口にダブルウイングを取り付けたとされる。

    一方で、フェラーリのオリジナルに近い形で再現できたのはハースF1チームだけだという。ハースF1チームはフェラーリとリアサスペンション構造を共有しているため、この配置を成立させやすい。

    “マカレナ”リアウイングも模倣対象に
    フェラーリ発の革新的なリアウイング、通称“マカレナ”も注目を集めている。

    マクラーレンCEOのザク・ブラウンは、ライバルのリアウイング設計を詳しく調査していることを認めた。

    「もちろん見ている。想像できると思うが、すべてのチームは互いに何をしているかを見ている」

    「賢いアイデアだし、有益になる可能性があると考えている。だから、別のチームが使っているのを見ても驚きはない」

    フェラーリが先鞭をつけたこのコンセプトには、レッドブルもマイアミで独自の攻撃的な解釈を持ち込んだ。

    メルセデスはカナダで“W17 2.0”投入へ
    一方、チャンピオンシップ首位のメルセデスは、マイアミでの大規模アップデート競争には本格参戦しなかった。

    La Gazzetta dello Sportによれば、メルセデスはW17が開幕時点でベンチマークとなっていたため、序盤戦では大型開発を意図的に温存していたという。

    しかし、フェラーリ、マクラーレン、レッドブルがマイアミで相次いで大規模アップデートを投入したことで、メルセデスもカナダGPに向けて大幅な改良パッケージを準備している。

    同紙は「メルセデス2.0」という表現がすでに出ていると報じた。

    このパッケージには、空力、メカニカル、ローンチシステムの変更が含まれるとされる。さらに、開幕4戦中3勝を挙げながらスタートに不安定さを見せているキミ・アントネッリを支援するため、ステアリングホイールのクラッチシステムも改良される見込みだ。

    2026年F1の開発競争は、単なるアップデート投入の速さだけでなく、ライバルの発想をどれだけ早く読み取り、自チームの構造に落とし込めるかが問われる段階に入っている。フェラーリの着想を起点に、カナダGPでは勢力図がさらに動く可能性がある。